説明

自動立体表示装置

光出力を誘導するレンズ素子の配列であって、前記レンズ素子は、電気光学材料を有し、電場の選択的な印加により、光出力誘導機能を維持する第1の値と、前記光出力誘導機能を排除する第2の値の間で、前記電気光学材料の屈折率が切り替えられる、レンズ素子の配列と、前記レンズ素子の上部および下部に設けられ、前記レンズ素子に前記電場を印加する電極配置と、を有するレンズ状素子配置であって、前記電極配置の少なくとも一つは、誘電体層により分離された、第1および第2の電極層を有し、各電極層は、隙間により分離された複数の電極を有し、前記各電極層の前記電極は、他の電極層の前記隙間に対して整列され、前記レンズ素子内の前記電場に対する前記隙間の影響が抑制されることを特徴とするレンズ状素子配置。切り替え可能な自動立体表示装置であって、表示を構成する表示画素の配列を有する表示パネルであって、前記表示画素は、行および列に配置される、表示パネルと、本発明によるレンズ状素子配置と、を有し、前記レンズ状素子配置は、前記表示パネルの上に配置され、前記表示画素の光出力を誘導して、立体画像を提供する、切り替え可能な自動立体表示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示を構成する表示画素の配列を有する表示パネルと、レンズ状素子のような、表示パネル上に表示画素が視認されるように配置された、複数の結像手段とを有するタイプの自動立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の自動立体表示装置は、独国2196166号に示されている。この既知の装置は、2次元の液晶表示パネルを有し、このパネルは、空間光調整器として作動し、表示を構成する、表示画素の行列配列を有する。表示画素配列の上には、相互に平行に延伸する細長いレンズ状素子の配列が配置され、これらのレンズ状素子を介して、表示画素が観測される。レンズ状素子は、素子のシートとして提供され、この各々は、細長い半円筒状レンズ素子を有する。レンズ状素子は、表示パネルの列方向に延伸し、各レンズ状素子は、2または3以上の隣接する表示画素列の各群に重なるように配置される。
【0003】
例えば、各レンズ状素子が2列の表示画素に対応している配置では、各列における表示画素は、各2次元サブ画像の垂直スライスを提供する。レンズ状シートは、これらの2つのスライスと、他のレンズ状素子に対応する表示画素列からの対応するスライスを、シートの前方にいるユーザの左目および右目に誘導し、これにより、ユーザに、単一の立体画像が観察される。従って、レンズ状素子のシートにより、光出力誘導機能が提供される。
【0004】
他の配置では、各レンズ状素子は、行方向において、3つ以上の隣接する表示画素に対応する。各群における表示画素の対応する列は、各2次元サブ画像から垂直スライスが得られるように、適正に配置される。ユーザの頭が左から右に動くと、一連の連続する、異なる立体視野により、例えば、辺りを見回すような印象が知覚的に生じる。
【特許文献1】独国特許第2196166号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の装置は、有効な3次元表示を提供する。しかしながら、立体視野を提供するためには、装置の水平解像度を犠牲にする必要があることは明らかである。この解像度の犠牲は、ある用途では、許容できない場合がある。例えば、至近距離から視認される小さなテキスト文字の表示のような場合である。このため、2次元モードと3次元(立体)モードの間を切り替えることの可能な表示装置を提供することが提案されている。
【0006】
2次元モードでは、切り替え可能装置のレンズ状素子は、「透過」モードで作動し、すなわち、これらのレンズ状素子は、光学的に透明な材料の平坦なシートと同様に作動する。得られる表示は、元来の表示パネルの解像度と同等の、高い解像度を有し、これは、至近視野距離からの小さなテキスト文字の表示に適する。当然のことながら、2次元表示モードでは、立体画像を提供することはできない。
【0007】
3次元モードでは、切り替え可能装置のレンズ状素子により、前述のような光出力誘導機能が提供される。得られる表示では、立体画像の提供が可能であるが、前述の解像度のロスは、避けられないという問題がある。
【0008】
切り替え可能な表示モードを提供するため、切り替え可能な装置のレンズ状素子は、例えば液晶材料のような、偏光された光に対して、2種類の異なる値の間で切り替え可能な屈折率を有する、電気光学材料で形成される。次に、この装置において、レンズ状素子の上部または下部に設けられた電極層に、適切な電位を印加することにより、モード間が切り替えられる。電位により、隣接する光学的に透明な層との相関により、レンズ状素子の屈折率が変化する。あるいは、隣接する光学的に透明な層が電気光学材料で形成された場合も、光学的に透明な層に対するレンズ状素子の屈折率が変化し、同じ結果が得られる。
【0009】
単独でまたは組み合わせにより、表示領域の個別の位置を、2次元表示モードと3次元表示モードの間で切り替えることができるような、切り替え可能な自動立体表示装置を提供できることが望ましいことが認識されている。この方法では、3次元表示内に、1または2以上の2次元表示窓を提供することが可能となり、あるいは反対に、2次元表示内に、1または2以上の3次元表示窓を提供することが可能となる。
【0010】
そのような表示装置は、各々が複数の個別電極を有する電極層を提供し、特定の電極の組み合わせに電位を印加するアドレス方式を利用することにより、得ることができる。しかしながら、個別電極方式では、表示領域にわたって、ストライプまたは波紋状パターンのような、輝度の不均一性が生じ得ることが認められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、切り替え可能な自動立体表示装置であって、
表示を構成する表示画素の配列を有する表示パネルであって、前記表示画素は、行および列に配置される、表示パネルと、
前記表示パネルの上に配置され、前記表示画素の光出力を誘導して、立体画像を提供するレンズ素子の配列であって、前記レンズ素子は、電気光学材料を有し、電場の選択的な印加により、光出力誘導機能を維持する第1の値と、前記光出力誘導機能を排除する第2の値の間で、前記電気光学材料の屈折率が切り替えられる、レンズ素子の配列と、
前記レンズ素子の上部および下部に設けられ、前記レンズ素子に前記電場を印加する電極配置と、
を有し、
前記電極配置の少なくとも一つは、誘電体層により分離された、第1および第2の電極層を有し、各電極層は、隙間により分離された複数の電極を有し、前記各電極層の前記電極は、他の電極層の前記隙間に対して整列され、
前記レンズ素子内の前記電場に対する前記隙間の影響が抑制されることを特徴とする、切り替え可能な自動立体表示装置が提供される。
【0012】
誘電体層により分離された2つの電極層を有する電極配置を提供することにより、レンズ素子内に、より一貫性のある電場が得られることが認められている。特に、1つの層の電極を、他の層の隙間と一致するように配置することにより、より一貫性のある電場が得られる。電極は、電場を発生させる役割の他、環境側の電場からレンズ素子をシールドする。
【0013】
レンズ素子内のより一貫した電場により、より一貫性のある屈折率の切り替え(ディスプレイからの光の場合)が可能となり、表示領域にわたる、ストライプまたは波紋状パターンのような、対応する輝度の不均一性の抑制が可能となる。
【0014】
従って、本発明では、2次元表示モードと3次元表示モードの間で、局部的に切り替え可能な表示領域を有する表示装置が提供され、いずれかのモードにおける、表示の品質に及ぼす電極層の不連続性の影響が最小化される。
【0015】
電極は、平行で細長い電極であることが好ましい。
【0016】
電極は、隣接組で相互に電気的に接続され、各組は、各電極層の電極を有する。この場合、追加の駆動手段は、不要であり、使用の際には、電極は、この組においてアドレス処理される。あるいは、レンズ素子から離れた位置の電極層の全ての電極が、相互に電気的に接続されても良い。この場合、電極に電位を印加するため、追加の駆動手段が必要となり、電位は、レンズ素子の切り替えの際に、最適な屈折率を提供するように「調整」される。
【0017】
各電極層の電極は、少なくとも、他の電極層の隙間と等しい幅であることが好ましい。この場合、電極による表示領域の完全な被覆が可能となる。
【0018】
電極配置の電極層同士の間の最小間隔は、1μmから100μmの範囲であることが好ましいが、他の値であっても良い。電極同士の間の誘電体層は、いかなる光学的に透明な絶縁体を有しても良い。
【0019】
電極配置の第1および第2のものは、それぞれ、(例えば、凸状または凹状に)プロファイル化された、レンズ素子の実質的に平坦な表面と面していても良い。
【0020】
第1の電極配置の電極は、第2の電極配置の電極に対して垂直に配置されても良い。
【0021】
第2の電極配置は、前述のように、誘電体層により分離された、第1および第2の電極層を有し、第1の電極配置は、単に単一の電極層のみを有しても良い。
【0022】
レンズ素子の配列は、平行なレンズ状レンズ素子の配列を有し、各素子は、実質的に行の方向で、いくつかの表示画素に重なるように配置されても良い。素子により、光出力誘導機能が提供されると、異なる画素からの光出力は、レンズ状レンズ素子により、異なる方向に放射され、これにより立体画像が知覚されるようになる。
【0023】
電気光学材料は、ネマチック液晶のような液晶材料を有しても良い。定められた偏光の光に対する液晶材料の屈折率は、電場の影響下で、容易に切り替えることができる。
【0024】
電極層は、インジウムスズ酸化物(ITO)を有しても良く、この材料は、電導性が高く光学的に透明である点で適している。
【0025】
表示装置は、さらに、制御器を有しても良く、該制御器は、電極層に電位を選択的に印加するように配置され、これによりレンズ素子に電場が印加される。制御器は、電極層に交流電位を印加するように配置されても良い。制御器は、選択された電極層の電極に、電位を選択的に印加するように配置されても良く、これにより、レンズ素子の配列の選択された部分の屈折率が切り替えられる。
【0026】
表示パネルは、液晶表示パネルであっても良い。表示画素は、長方形状であっても良く、表示画素の長辺の端部は、列方向に延伸していても良い。表示画素の行および列は、直交していても良い。表示画素は、表示画素の行列の各交点に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、単なる一例として、添付図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0028】
本発明では、2次元表示モードと3次元表示モードの間で切り替え可能な表示領域を有する表示装置が提供される。モード間の切り替えは、液晶材料で構成されたレンズ素子の配列に、電場を印加することにより行われる。2次元モードでは、レンズ素子は、通常の透明材料のシートのように挙動する。3次元モードでは、レンズ素子は、光出力誘導機能を提供し、立体画像を知覚することが可能となる。電場は、レンズ素子から離間して設置された電極層を用いて、レンズ素子に印加される。電極層をレンズ素子から離すことにより、レンズ素子内での電場の一貫性が高まる。
【0029】
図1は、既知の切り替え可能な自動立体表示装置1の概略的な斜視図であり、この装置に、本発明を適用することができる。表示装置1は、拡大図で示されている。
【0030】
既知の装置1は、アクティブマトリクス形式の液晶表示パネル3を有し、この表示パネルは、表示を構成する空間光変調器として動作する。表示パネル3は、行および列に配置された表示画素5の直交配列を有する。明確化のため、図には、少しの表示画素5のみが示されている。実際には、表示パネル3は、表示画素5の約1000の行および数1000の列を有しても良い。
【0031】
液晶表示パネル3の構造は、従来のものとほとんど同様である。特に、パネル3は、離間された一組の透明ガラス基板を有し、両者の間には、整列されたねじれネマチックまたは他の液晶材料が設置される。両基板は、両者の対面する表面に、透明インジウムスズ酸化物(ITO)電極のパターンを担持している。また、基板の外側の表面には、偏光層が設けられる。
【0032】
各表示画素5は、基板上に対向電極を有し、両者の間には、液晶材料が設置される。表示画素5の形状および配置は、電極の形状および配置により定められる。表示画素5は、隙間により、相互に規則的に離間して設置されている。
【0033】
各表示画素5は、薄膜トランジスタ(TFT)または薄膜ダイオード(TFD)のような切り替え素子に対応する。表示画素は、切り替え素子にアドレス信号を提供することにより、画像を形成するように作動する。適切なアドレス処理方式は、当業者には明らかである。
【0034】
表示画素5間の隙間は、不透明なブラックマスクにより被覆される。マスクは、光吸収材料のグリッドの形態で提供される。マスクは、切り替え素子を被覆し、個々の表示画素領域を定形する。
【0035】
表示パネル3は、光源7により照射され、光源は、この場合、表示画素配列の領域にわたって延伸する、平面バックライトを有する。光源7からの光は、表示パネル3を介して誘導され、個々の表示画素5は、光を変調して表示を構成するように駆動される。
【0036】
また表示装置1は、表示パネル3の表示側に配置された、レンズ状素子配置9を有し、この配置は、選択的に視野形成機能を実施するように制御することができる。レンズ状素子配置9は、相互に平行に延伸するレンズ状素子11の配列を有し、明確化のため、このうちの一つのみが、誇張された寸法で示されている。
【0037】
レンズ状素子配置9は、図2に、より詳しく概略的に示されている。配置9は、拡大した形態で示されている。
【0038】
図を参照すると、レンズ状素子配置9は、一組の透明ガラス基板13、15を有し、これらの基板は、これらに対向する表面に設置された、インジウムスズ酸化物(ITO)で構成された透明電極層17、19を有することがわかる。各電極層17、19は、複数の平行な細長い電極の形態であり、各異なる層17、19の電極は、相互に垂直に配置される。細長い電極は、それらの間の小さな隙間により、独立にアドレス処理されるように配置される。
【0039】
基板13、15の間には、上部の基板13に隣接するようにして、複製技術を用いて形成された逆レンズ状構造21が設置される。また、基板13、15の間には、下側の基板15に隣接するようにして、ネマチック液晶材料23が設けられる。図に示すように、逆レンズ状構造21により、逆レンズ構造21と下側基板15の間で、液晶材料23は、平行で細長いレンズ状形状になると仮定する。また、液晶材料23と接する逆レンズ状構造21と下側基板15の表面には、液晶材料23を配向させるため、配向層(図示されていない)が設けられる。
【0040】
使用時には、図1に示すような既知の切り替え可能な表示装置1が作動し、表示出力が提供され、この個別の位置を、単独でまたは組み合わせて、2次元および3次元のモード間で、切り替えることができる。この方法では、2次元表示領域に、1または2以上の3次元表示窓を提供することができる。
【0041】
表示出力の個別位置におけるモード間切り替え機能は、液晶材料23で構成されたレンズ状素子に、電場を印加することにより提供される。この電場は、電極層17、19の電極にわたり、電位を印加することにより生じる。
【0042】
電位は、各電極層17、19における細長い電極のうち、選択された数の隣接する電極に印加される。上側電極の選定により、切り替えられる表示窓の高さが定められ、下側電極の選定により、切り替えられる表示窓の幅が定められる。
【0043】
印加電位によって、表示領域の選択位置におけるレンズ状素子が、光出力誘導機能の維持および除去の間で切り替えられる。以下、図3Aおよび3Bを参照して、これについて説明する。
【0044】
図3Aは、電極に電位が印加されてないときの、レンズ状素子配置9のある位置の概略断面図である。この状態では、表示パネルにより提供される偏光用の液晶材料23の屈折率は、逆レンズ状構造21に比べて実質的に高く、レンズ状形状となっているため、図に示すように、光出力誘導機能が提供される。
【0045】
図3Bは、電極に約50Vの交流電位が印加されているときの、レンズ状素子配置9のある位置の概略断面図である。この状態では、表示パネルにより提供される偏光用の液晶材料23の屈折率は、逆レンズ状構造21と実質的に等しく、図に示すように、レンズ状形状の光出力誘導機能は、キャンセルされる。従って、この状態では、配列は、「透過」モードで有効に作動する。
【0046】
図3Aに示すように、光出力誘導機能が維持されると、液晶材料23によって定形されるレンズ状素子は、凸状円筒状レンズとして作用し、表示パネル3から表示装置1の前方にいるユーザの目に、異なる画像または視野が提供される。従って、3次元画像を提供することができる。
【0047】
図3Bのように、光出力誘導機能が排除されると、液晶材料23により定形されるレンズ状素子は、「透過」モードで作用し、すなわち、これらは、凸状円筒状レンズの平坦シートのように作用する。従って、表示パネル3の元来のフルの解像度を用いた、高い解像度の2次元画像が提供される。
【0048】
表示モード間を切り替えるための電位は、制御器12により、レンズ状素子配置9の電極に印加される。
【0049】
前述の既知の表示装置1の構造のさらなる詳細は、米国特許第6,069,650号に認められ、これらの全内容は、本願の参照として取り入れられる。
【0050】
前述の既知の表示装置1は、2次元表示領域に、1または2以上の3次元表示窓を提供するように作動する。表示窓の寸法および位置は、電位が印加されるレンズ状配置9の電極の選択を変えることにより、簡単に調整することができる。
【0051】
前述の表示装置1の切り替えられた表示窓にわたって、好ましくない線の配列または波紋状パターンが観察されることが知られている。線の配列または波紋状パターンは、各電極層17、19において複数の電極がアドレス処理された際に、電場の不均一性により生じることが認められている。特に、隣接する電極間の隙間により、液晶材料23内の電場に不均一性が生じ、結果的に、一貫性のない屈折率の切り替えが生じることが認められている。
【0052】
本発明では、図1に示すタイプの切り替え可能な表示装置が提供されるが、この装置では、電位を設置した際に、ストライプの影響または波紋状パターンの問題は生じ難い。
【0053】
以下、本発明による切り替え可能な表示装置の実施例について、説明する。本発明による切り替え可能な表示装置は、図1に示したものと同様の構造を有し、従って、別個の図面は、示されていない。すなわち、装置は、前述の記載に詳しく示したように、液晶表示パネル3、光源7および制御器12を有する。
【0054】
また本発明による装置は、図1に示すように、表示パネル3の表示側に配置された、レンズ状素子配置を有する。本発明による装置のレンズ状素子配置は、図1および2に示したものと同じ機能を提供するが、その構造は、少し異なっている。
【0055】
図4には、本発明による装置のレンズ状素子配置の構造を概略的に示す。配置31の構造は、図2に示した配置9のものと同様であり、同じ構造を示す場合、適切な場所に、同じ参照符号が採用されている。
【0056】
図を参照すると、レンズ状素子配置31は、一組の透明ガラス基板13、15を有し、これらの対向する表面には、インジウムスズ酸化物(ITO)で構成された透明電極層17、19が設けられていることがわかる。各電極層17、19は、複数の離間して配置された、平行で細長い電極を有する。電極層17、19の電極は、相互に垂直になるように配置される。
【0057】
また、配置31は、誘電体逆レンズ状構造21と、基板13、15の間に設置された液晶材料23とを有する。これらの部材の各々は、前述の図2を参照して示した対応する部材と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0058】
図2に示した配置9と比べて、本発明による装置の配置31は、追加で、誘電体層33および追加の透明電極層35を有し、これらの層は、液晶材料23と下側基板15との間に設置される。
【0059】
誘電体層33は、実質的に平坦であり、光学的に透明な絶縁体で形成される。誘電体層33は、1μmから100μmの範囲の厚さを有しても良い。誘電体層33は、追加電極層35と下側電極層19とを離間する役割を果たす。
【0060】
追加電極層35は、インジウムスズ酸化物(ITO)で構成され、離間して設置された複数の細長い電極を有する。追加層35の電極は、下側電極層19の電極と平行である。追加層35の電極は、下側電極層19の電極間の隙間に整列され、平面図で見たとき、すなわち表示面に対して垂直な視野では、それらの長い端部が相互に重なり合うように配置される。
【0061】
追加の電極層35、誘電体層33、および下側電極層19は、相互に下側電極配置を形成する。上側電極層17は、上側電極配置を構成する。図に示すように、下側電極配置の電極は、隣接する組に相互に接続され、各組は、各電極層19、35からの電極を有する。
【0062】
図に示すように、液晶材料23は、逆レンズ状誘電体構造21と追加電極層35の間の、平行で、細長いレンズ状形状であると仮定する。さらに、液晶材料23と接する、逆レンズ状誘電体構造21、追加電極層35、および誘電体層33の表面には、液晶材料23を適切に配向させる配向層(図示されていない)が設置される。
【0063】
使用時には、本発明による切り替え可能な表示装置は、図1に示した既知の装置と同様の方法で、表示出力を提供するように作動する。当然のことながら、下側電極層の電極は、個々ではなく、組のみによりアドレス処理される。
【0064】
すなわち、表示領域の別個の部分は、単独でまたは組み合わせて、2次元および3次元の表示モード間で切り替えることができる。この方法では、3次元の表示領域に、1または2以上の2次元表示窓を提供することができる。
【0065】
図1に示すような既知の表示装置1の切り替えられた表示窓に観察される、好ましくないストライプの配列または波紋状パターンは、本発明による表示装置を使用する際には、存在しない。その代わり、切り替えられた表示窓は、表示領域にわたって、一貫した輝度を示すことが観察される。
【0066】
本発明による表示装置では、誘電体層33により分離された2つの電極層19、35を有する下側電極配置を提供することにより、ストライプの配列または波紋状パターンが回避される。下側電極配置の電極は、組としてアドレス処理され、各組は、誘電体層33のいずれかの側の電極を有する。平面図で見た際に、各組の電極は、交互配置となっており、これにより、液晶材料23内に、より一貫性のある電場を発生させることができる。通常、電極間の隙間の周囲に存在する電場の不一致は、回避される。
【0067】
以上、本発明の特定の実施例について説明した。しかしながら、本発明の範囲から逸脱しないで、各種変更および修正がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0068】
例えば、以上の記載では、3次元表示内に2次元表示窓を有する表示装置について説明した。しかしながら、本発明による装置が、2次元表示内に3次元表示窓を有することができることは、当業者には明らかであろう。
【0069】
同様に、前述の表示装置は、下側凹状表面を有する誘電体構造と接する、上部凸状表面を有する液晶材料を有する。しかしながら、代替実施例では、液晶が凹状表面を有し、誘電体構造が凸状表面を有しても良い。また、液晶材料と誘電体構造の相対位置は、表示パネルに対して、交換されても良い。
【0070】
前述の実施例では、液晶表示パネルが使用され、このパネルは、例えば、50μmから1000μmの範囲の表示画素ピッチを有する。しかしながら、有機発光ダイオード(OLED)またはカソード線管(CRT)の表示装置のような、別のタイプの表示パネルを使用しても良いことは、当業者には明らかである。
【0071】
前述の実施例は、分離した別個のレンズ状素子配置を有する。しかしながら、いくつかの実施例において、部品数の削減のため、部材の基材は、組み合わせても良い。
【0072】
前述の表示装置には、従来の自動立体表示装置で知られているような、表示画素の列方向に対して、鋭角に傾斜されたレンズ状素子を使用しても良い。
【0073】
前述の表示装置は、下側電極配置を有し、この中では、誘電体層により、一組の電極層が分離され、上側電極配置は、単一の電極層のみを有する。この装置では、上側電極配置の電極間の隙間の周囲に、電場の不一致が存在するが、これらの不一致は、隣接して配置された逆レンズ状構造を超えては広がらず、従って、これらは、液晶材料の屈折率の切り替えに影響を及ぼさない。しかしながら、代替実施例では、上側電極配置は、下側電極配置と同じ構造を有しても良く、すなわち、誘電体層により分離された2つの電極層を有しても良い。
【0074】
前述の表示装置では、下側電極配置の電極は、組として相互に接続され、その後、これらの組は、電位でアドレス処理され、2次元モードと3次元モードの間で、表示領域が局部的に切り替えられる。しかしながら、代替実施例では、電極は、組として接続されなくても良い。その代わり、追加電極層の電極のみが、電位によりアドレス処理され、下側電極層の全ての電極が、相互に電位的に接続されても良い。この電位は、工場で一定の値に調整されても良く、これにより電場の不一致が最小化される。あるいは、電位は、ユーザにより調整されても良く、または最適な電位を維持し、電場の不一致を最小化するため、フィードバック回路が設けられても良い。
【0075】
前述の実施例は、レンズ素子に電場を印加することができる、平行で細長い電極を有する。しかしながら、電極は、いかなる形態であっても良い。
【0076】
前述の記載には、「レンズ素子」という用語が使用されている。この用語は、例えば、材料が異なる屈折率を有するような、非平坦な(凸状または凹状)境界を有することにより、レンズ機能を提供することが可能な、いかなる素子をも意味することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を適用することの可能な、既知の自動立体表示装置の概略的な斜視図である。
【図2】図1に示す既知の表示装置におけるある素子の詳細概略図である。
【図3A】図1に示す既知の表示装置の作動原理の説明に使用される図である。
【図3B】図1に示す既知の表示装置の作動原理の説明に使用される図である。
【図4】本発明による自動立体表示装置のある素子の詳細概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り替え可能な自動立体表示装置であって、
表示を構成する表示画素の配列を有する表示パネルであって、前記表示画素は、行および列に配置される、表示パネルと、
前記表示パネルの上に配置され、前記表示画素の光出力を誘導して、立体画像を提供するレンズ素子の配列であって、前記レンズ素子は、電気光学材料を有し、電場の選択的な印加により、光出力誘導機能を維持する第1の値と、前記光出力誘導機能を排除する第2の値の間で、前記電気光学材料の屈折率が切り替えられる、レンズ素子の配列と、
前記レンズ素子の上部および下部に設けられ、前記レンズ素子に前記電場を印加する電極配置と、
を有し、
前記電極配置の少なくとも一つは、誘電体層により分離された、第1および第2の電極層を有し、各電極層は、隙間により分離された複数の電極を有し、前記各電極層の前記電極は、他の電極層の前記隙間に対して整列され、
前記レンズ素子内の前記電場に対する前記隙間の影響が抑制されることを特徴とする、切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項2】
前記電極は、平行で細長い電極であることを特徴とする請求項1に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項3】
前記電極は、隣接する組において、相互に電気的に接続され、
各組は、各電極層の電極を有することを特徴とする請求項1または2に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項4】
前記レンズ素子から離して設置された、前記電極層の前記電極は、相互に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項5】
各電極層の前記電極は、少なくとも、他の電極層の前記隙間と等しい幅であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項6】
前記電極層の間の間隔は、各電極層の前記電極間の最大隙間よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項7】
前記誘電体層は、光学的に透明な絶縁体を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項8】
前記電極配置の第1および第2のものは、それぞれ、プロファイル化された、前記レンズ素子の実質的に平坦な表面と面することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項9】
前記第1の電極配置の電極は、前記第2の電極配置の電極に対して、垂直に設置されることを特徴とする請求項7に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項10】
前記第2の電極配置は、前記誘電体層により分離された、前記第1および第2の電極層を有し、
前記第1の電極配置は、単一の電極層を有することを特徴とする請求項7または8に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項11】
前記レンズ素子の配列は、平行なレンズ状レンズ素子の配列を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項12】
前記電気光学材料は、液晶材料を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項13】
前記電極層は、インジウムスズ酸化物を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項14】
さらに、制御器を有し、
該制御器は、電極に電位を選択的に印加するように配置され、前記レンズ素子に前記電場が印加されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項15】
前記制御器は、前記電極層の選択された電極に、前記電位を選択的に印加するように配置され、
これにより、前記レンズ素子の前記配列の選択された位置の前記屈折率が切り替えられることを特徴とする請求項13に記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項16】
前記表示画素は、長方形状を有し、
前記表示画素の長い端部は、前記列の方向に延伸することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項17】
前記表示画素の行と列は、直交していることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項18】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。
【請求項19】
表示画素は、前記表示画素の行および列の各交点に設置されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一つに記載の切り替え可能な自動立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−520230(P2009−520230A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546703(P2008−546703)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054489
【国際公開番号】WO2007/072250
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】