説明

自動給液機能カートリッジ型送液ポンプ

【課題】 溶液補給時間が短く、長時間、無脈動の安定した送液が可能で、分注機能を兼ね備えた従来の機械的機構のシリンジポンプに代わるポンプを提供すること。および後続機器の圧力損失を考慮した流量制御範囲と流量制御精度が可能であること。
【解決手段】 溶液の吸引と排出を行う分注機能を備えたガス圧力を駆動源とするポンプであり、ガス圧の増減制御によって長時間、無脈動の安定した送液を行うポンプ。ガス圧制御3と液面検出光センサー4による制御および背圧チューブ7の調整により、短時間で所定量の溶液を給液し、送液を受ける後続機器9の耐圧および圧力損失を考慮し自在な流量範囲で無脈動で送液するポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な流量制御を必要とし、分析機器や検出機器あるいは化学合成や生化学反応等の装置に接続することで、溶液中の成分の検出や原料の移送を行う送液ならびに分注を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、溶液の送液の手段としてポンプが用いられる。ポンプの駆動手段として、ガス駆動式のものは、特許文献1があげられる。また、精密運転のポンプとして非特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−000487号公報
【非特許文献1】「マイクロシリンジポンプ カタログ」、有限会社エグゼック
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶液中の物質の検出を目的とする分析、あるいは連続的に原料を混ぜ合わせて行う化学合成などにおいて、溶液を移送するために一般的にポンプが利用される。ポンプは広く活用されているが、その一部として、微少流体を用いて短時間で高精度な化学分析あるいは生化学分析が可能なマイクロ化学分析、あるいは微少原料を送液して化学合成等を行うマイクロ化学反応などを行う場合、その溶液を送液するために高精度な例えば
【非特許文献1】に示すような小型シリンジポンプを用いることが多い。
【0004】
しかし、一般にシリンジポンプは機械的な駆動源を用いるため、溶液を送液する際の周期的な脈動が避けられない。
【特許文献1】の駆動源がガス、空気圧または電気を用いたポンプも溶液を送液する手段が機械的な方法を用いるため脈動は発生する。そのため、微少流体同士を混ぜ合わせる化学反応や生化学反応、あるいは微少流体同士を混ぜ合わせる化学合成などの場合、化学分析や生化学分析などを行う際の分析精度の低下あるいは化学合成を行う場合の製造物の不均一化などの問題がある。さらに、シリンジポンプは連続的に給液できないため、それに溶液を自動的に補給する場合は送液とは逆の機械的駆動のための制御系が必要になるためそのシステムが複雑になること、その溶液補給に要する時間が長いためその送液が長時間停止してしまうこと、外部の送液部に詰りなどが生じた場合に送液吐出圧力が過剰に上昇するため後続の接続部や機器本体に漏れを生じたり破損する恐れがあること、しかもこのような従来のシリンジポンプの場合のような機械的な駆動制御を利用するポンプの場合には長時間安定して運転することが困難であるなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を有する従来のシリンジポンプなどの機械的駆動を利用する送液ポンプに対し、本発明はガス圧力の増減による所定溶液の吸引と排出を可能とし、光センサーを用いて溶液の一定量を吸引し排出できる機能を有することを特長とする送液ポンプならびに分注装置であり、機械的駆動部を減らすことによりそのシステム構成をシンプルにすることが可能であり、溶液補給を短時間で行うことできるため、送液の長時間停止を避けることが可能であること、ガス圧力を制御する方式であるため送液吐出圧力が一定となるため脈動の無い送液が可能であること、外部の送液部に詰りなどが生じても後続の接続部や機器本体に漏れを生じたり破損する恐れが無いこと、しかも長時間安定して運転することが可能であるなどの特長を有する。なお、本装置は送液流量を制御するために、ポンプカートリッジに内蔵した背圧用のチューブの内径と長さを調節するだけで背圧の制御が可能となるため、流量制御範囲と流量制御精度を自在に設定することが可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法は、ガス圧を増減することにより溶液の吸引および排出を自動で行うことが可能であり、しかも微少な流量の調整制御が可能であり、且つ、長時間、精度良く無脈動状態で送液することが可能である。また、圧力の増減制御と光センサー制御の組み合わせにより自動的にしかも数秒という僅かな時間で給液することも可能である。さらに、最大吐出圧力の制御が可能であるため、本装置の後方に接続する分析や検出あるいは化学反応などの部品や機器類の耐圧ならびに圧力損失を考慮した流量制御が可能である。この、圧力損失を考慮した流量制御は、微少流量から大流量まで対応可能である。また、本装置は、ポンプ機能のみならず、同一の原理を用いることでディスペンサー(分注)機能も有している。送液ポンプは広範囲な分野で使われており、これまでのポンプの問題点を解消できるガス圧を利用する高精度で高機能な新しい原理に基づくディスペンサー機能を有する本発明のポンプの社会に与える効果とその意義は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
【0007】
図1のガス供給ライン2において、ガス駆動源1から送られるガスは安定に保たれたまま溶液供給ライン10の給液部5まで到達する。一方、予め給液部5に満たされた溶液は調整されたガスの圧力によって、給液部5から溶液排出ライン8を送液され排出される。
【0008】
1つの溶液供給、排出ラインに対してガス圧力の調節を複数回行い徐々に所定の圧力に設定させることにより安定したガス圧を給液部5に到達させる事ができる。この安定したガス圧力が安定した送液を行ううえで重要となる。ガス圧調節器3は複数の溶液供給、排出ラインに対して各々設置される。溶液はガス圧の増減により制御できるため、各々個別に溶液の給液と送液の切り替えが可能である。また、溶液の流量はガス圧の調整により制御できるため、各溶液の供給と排出は溶液固有の粘度や表面張力などの化学的性質を配慮することにより高精度な流量制御を可能とする。
【0009】
本発明品は、溶液の液面を感知する液面検出光センサー4を給液部5に設置することで溶液吸引量および送液量を任意に設定できる。まず溶液供給切替バルブ6から給液部5に溶液が吸引されると、給液部5に設置された一方の光センサー4aが給液した溶液の液面を感知し溶液の補給をストップする。次に給液部5に満たされた溶液をガス圧で排出し、その給液部に設置された他方の光センサー4bが液面を感知した時点で溶液の排出をストップする。このように、液面検出センサー4の信号で制御することにより、所定量の溶液の給液と供給が可能となる。また、この信号制御の繰り返しにより所定量の溶液を自動的に反復供給することが可能となる。この液面検出光センサー4の信号制御を複数の供給、排出ラインに対して行うことで、複数のラインの溶液の吸入量、送液量、およびその時間の制御を同時に且つ簡便に制御することによって、送液ポンプならびにディスペンサーとして使用できる。
【0010】
ポンプが利用される化学、工業、医療などの様々な分野において使われる溶液の化学的、物理的性質は様々であるため、溶液に接する部分に用いる材質を考慮する必要がある。本発明における給液部に吸引された溶液の送液は、例えば内径20〜100μmφの背圧チューブ7の長さおよび材質を変化させることにより、送液流量を0〜1μL/分、0〜10μL/分、0〜100μL/分などの広い範囲で任意に制御でき、その制御精度は極めて高く、しかもガス圧力を駆動源としているためにモーターを用いる機械的駆動方式を原理とする一般的なポンプで問題となっている脈動の発生は本発明の場合起らない。なお、前記のようなμL/分程度の微少流量制御のみならず、mL/分レベルあるいはそれ以上の流量制御を行う場合は、給液部と背圧チューブのサイズを大型化することにより可能となる。
【0011】
図2にポンプモジュールの一例を示す。背圧チューブ6と給液部5を一体化したカートリッジ型とし、各カートリッジ17の流量制御範囲を任意に設定する。カートリッジ17とガス供給系の接続方法について図3に示す。ワンタッチ式の継手16を用いる事でポンプ収納部に外部からカートリッジ17を挿入するだけでガス供給系と溶液供給系を簡単に接続できる。様々な溶液の種類、その化学的物理的条件またそれに応じた流量および、給液量、送液量、その時間を設定したポンプモジュールを用途に応じてガス供給系に接続することにより、用途に応じたポンプをポンプ利用者自身が自由に選び自在に構築できる。本発明のポンプモジュールによれば、ポンプの利用分野や送液流量範囲などが様々に変化しても、それらの用途に合わせたポンプカートリッジ17を交換するだけで対応が可能となる。なお、給液部5などから混入した気泡は背圧チューブ7や流量計13の接続部で分離除去することにより、流体が反応するリアクター14への気泡混入を避けることができるため、高精度なポンプ機能や安定した流体混合・反応が維持できる。
【0012】
図3に本発明のカートリッジを4つ搭載したガス圧駆動ポンプの一例を示す。それぞれ流量範囲の固定したカートリッジ17を並列に複数配置し、各カートリッジに送るガス圧を各圧力調節器3で調節し、高精度な流量を設定する。溶液の吸引および排出の切り替えは、給液部に設置した液面検出光センサー4の信号でバルブ6の切り替えを自動制御することにより行う。さらに、本装置に検出器15を搭載し、検出器15からの信号を計測装置18に取り込み、また、その信号をバルブ制御装置12にフィードバックすることでサンプルの自動給液を最適なタイミングで行う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 本発明のガス圧駆動方式の分注機能を合わせ持つ送液ポンプの原理である。
【図2】 ポンプカートリッジの構成図の一例である。
【図3】 カートリッジを設置したポンプの一例である。
【符号の説明】
【0014】
1 ガス駆動源
2 ガス供給ライン
3 ガス圧調節器
4a 液面検出光センサー(溶液供給時)
4b 液面検出光センサー(溶液排出時)
5 給液部
6 溶液供給切替バルブ
7 背圧チューブ
8 溶液排出ライン
9 後続機器
10 溶液供給ライン
11 溶液供給タンク
12 バルブ制御装置
13 流量計
14 リアクター
15 検出器
16 ワンタッチ継手
17 カートリッジ
18 計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧力を駆動源として利用し分注機能を合わせもつことを特長とする送液ポンプ。
【請求項2】
ガス圧力の増減により溶液の吸引と排出が可能であり分注機能を合わせもつことを特長とする送液ポンプ。
【請求項3】
ガス圧力の増減を利用した溶液の吸引と排出を可能とした送液ポンプならびに分注装置において、複数の光センサーを用いて溶液の一定量を給液部に吸引した後に排出し外部へ供給する動作を自動的に繰返し反復する機能を有し分注機能を合わせもつことを特長とする送液ポンプ。
【請求項4】
溶液の流量を制御するために給液部の後段に設置するチューブの内径と長さを調整して背圧を制御することによって流量制御の範囲と精度を自在に設定できることを特長とする、前記請求項1〜3記載のガス圧力駆動型の分注機能を合わせもつ送液ポンプ。
【請求項5】
前記請求項4記載の溶液の流量を制御するために給液部の後段に設置するチューブの内径と長さを調整して背圧を制御することによって流量制御の範囲と精度を自在に設定できるガス圧力駆動型の分注機能を合わせもつ送液ポンプにおいて、給液部、背圧チューブあるいはその後段に設置した流量計により溶液の流量を計測し、その流量値で送液の駆動源であるガス圧力の増減を測り圧力制御することにより送液流量を自動的に制御できる機能を有し分注機能を合わせもつことを特長とする、前記請求項1〜3記載のガス圧力駆動型の送液ポンプ。
【請求項6】
前記請求項4〜5記載の溶液の流量を制御するために、請求項3記載の複数の光センサーを設置した給液部の後段に設置するチューブの内径と長さを調整して背圧を制御することによって流量制御の範囲と精度を自在に設定できるガス圧力駆動型の送液ポンプならびに分注装置において、流量制御範囲に応じて給液部と背圧チューブを一体化して取り外し可能なカートリッジ型とし該カートリッジが気泡分離除去機能ならびに分注機能を有することを特長とする、前記請求項1〜5記載のガス圧力駆動型の送液ポンプ。
【請求項7】
前記請求項6記載のガス圧力駆動型の送液ポンプならびに分注装置における背圧チューブと給液部を一体化したカートリッジ型給液部において、さらに前記カートリッジにおいて流量制御された単独あるいは複数の溶液を混ぜ合わせた流路を有する流体制御カートリッジにおいて、その溶液中あるいは混合後の溶液中に含まれる物質の濃度を測定するための吸光光度検出器、発光光度検出器、蛍光光度検出器、その他の光による濃度検出器、電極等の電気化学検出器、その他の溶液接触型あるいは非接触型のセンサーを搭載し一体化したことを特長とする、前記請求項5記載のガス圧力駆動型の送液ポンプ用ならびに分注装置用の取り外し可能な流体制御用カートリッジ。
【請求項8】
溶液中あるいは混合後の溶液中に含まれる物質の濃度を測定するための吸光光度検出器、発光光度検出器、蛍光光度検出器、その他の光による濃度検出器、電極等の電気化学検出器、その他の溶液接触型あるいは非接触型のセンサーを搭載し一体化した前記請求項7記載の給液カートリッジ、あるいはそれらセンサーを搭載しない給液カートリッジについて、それらを分析または合成用の化学反応器(ケミカルリアクター)あるいは生物化学反応器(バイオリアクター)とすることを特長とする、前記請求項6記載のガス圧力駆動型の送液ポンプ用ならびに分注装置用の取り外し可能な流体制御用カートリッジ。
【請求項9】
前記請求項8記載の溶液中あるいは混合後の溶液中に含まれる物質の濃度を測定するためのセンサーを搭載し一体化した前記請求項7記載の給液カートリッジを分析または合成用の化学反応器(ケミカルリアクター)あるいは生物化学反応器(バイオリアクター)とするガス圧力駆動型の送液ポンプ用ならびに分注装置用の取り外し可能な流体制御用カートリッジにおいて、それらの濃度センサーの計測値で送液駆動ガスの圧力を増減して溶液の流量あるいは混合率を変化させる機能を有することを特長とする、前記請求項6記載のガス圧力駆動型の送液ポンプ用ならびに分注装置用の取り外し可能な流体制御用カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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