説明

自動給脂方法及び給脂装置

【課題】電動射出成形機の被給脂箇所に、定量バルブを使用して給脂するとき、グリス圧送ポンプの無駄な稼働を防止できる、自動給脂方法を提供する。
【解決手段】設定時間グリス圧送ポンプ(41)が稼働している間に、吐出されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスが被給脂箇所(U、U、…)に給脂され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると、次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブ(50。50、…)を使用して電動射出成形機の被給脂箇所に給脂するとき、前記設定時間を周囲温度に合わせて夏期は短く、冬期は長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量バルブを使用した自動給脂方法及び給脂装置に関するもので、限定するものではないが、特に容量の異なる複数個の定量バルブを使用して機械の複数の被給脂箇所に実質的に同時に給脂するのに適した自動給脂方法及び自動給脂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸受のように2つの固体間に相対運動があると、その接触面には摩擦力が働き、接触面は摩耗し発熱する。そこで、摩耗・発熱を小さくするために接触面に油膜を作る潤滑が行われている。このような潤滑の実施に使用される分配弁あるいは定量バルブは、例えば特開平7−174251号公報、特開2002−263531号公報等に示されているように従来周知であるので詳しい説明はしないが、一方がグリス圧送ポンプに他方が被給脂箇所に連なったシリンダ、このシリンダ内に設けられている筒状部材、この筒状部材の流入端部に当接及び離間する逆止弁、前記筒状部材の外周部に設けられているピストン、このピストンを逆止弁の方へ付勢しているコイルスプリング等からなっている。このように構成されている定量バルブの、ピストンと逆止弁との間が供給側シリンダ室、ピストンとシリンダの吐出孔側が吐出側シリンダ室になっている。したがって、グリス圧送ポンプを起動してグリスを定量バルブに供給すると、逆止弁は筒状部材の流入端部に当接して供給されるグリスが筒状部材へ流入するのが阻止され、供給側シリンダ室に貯留される。貯留されるグリスの圧力によりピストンは、スプリングを圧縮して駆動される。この駆動により吐出側シリンダ室に溜められている所定量のグリスがシリンダから被給脂箇所に圧送される。ピストンが駆動され、シリンダの吐出孔が塞がれると、グリスの圧送すなわち所定量の給脂が終わる。
【0003】
上記のような定量バルブは、容量あるいは吐出量の異なるバルブが1台のグリス圧送ポンプに対してジャンクションを介して複数個並列に設けられ、そして複数箇所に略同時に給脂されるようになっているので、容量の大きい定量バルブからの給脂が終わるまで、換言するとすべての定量バルブからの給脂が終わるまでグリス圧送ポンプは稼働するようになっている。この間、圧送に寄与しない余分のグリスはリリーフ弁からグリスタンクに戻される。グリス圧送ポンプが所定時間稼働すると、あるいは設定時間稼働するとすべての定量バルブからの給脂は終わったと判断され、グリス圧送ポンプは停止する。
【0004】
グリス圧送ポンプが停止すると、供給側シリンダ室の圧力がなくなるので、ピストンはスプリングの復元力により供給側シリンダ室を狭める方向に駆動される。この狭める方向へのピストンの駆動により、供給側シリンダ室の圧力は高まり逆止弁は開き、供給側シリンダ室のグリスは、筒状部材から前回給脂され空になっている吐出側シリンダ室に供給され、次回の給脂に備えられる。以下同様にして給脂される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−257792号公報
【特許文献2】特開平11−268093号公報
【0006】
特許文献1には、上記したような分配弁あるいは定量バルブを使用した給脂方法が記載されている。すなわち、グリス圧送ポンプと、この圧送ポンプに対して複数箇所へ給脂するようになっている定量バルブとから構成され、そして例えば所定回数型開閉サイクルを実施すると、設定時間だけグリス圧送ポンプが稼働し、その間に設定回数給脂するようになっている給脂方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、給脂用ポンプ、該ポンプから射出成形機まで延びている主配管、この主配管の末端に設けられているジャンクション、ジャンクションに設けられている複数個の分配器等から構成された自動給脂装置が示されている。射出成形機の、複数の被潤滑箇所には給脂ユニットがそれぞれ設けられ、これらの給脂ユニットには分配器から潤滑油が供給されるようになっている。この給脂装置は、分配器を手動的に操作して、複数個の給脂ユニットに対する潤滑油の分配率を調節することができるようになっている。特に、1回当たりに吐出される給脂量を一定に保持するために、周囲温度が低い場合は給脂用ポンプの作動時間が延長され、周囲温度が高い場合は作動時間が短縮されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の給脂方法によると、設定された給脂時期になると、グリス圧送ポンプが設定時間稼働し、そして設定回数だけ給脂されるので、給脂箇所に最適なグリス量を給脂することができるという、優れた効果が認められる。しかしながら、改良すべき点も認められる。例えば、周囲温度が低い冬期はグリスの粘性が大きくなるが、このような粘性が大きいときでも不足なく給脂できるようにグリス圧送ポンプの稼働時間は設定されているので、夏期のように周囲温度が高くグリスの粘性が低いときは、グリス圧送ポンプが無駄に稼働するという問題がある。グリス圧送ポンプの無駄な運転は、エネルギの無駄になり、またポンプの寿命を短くもする。
【0009】
さらに説明すると、図2の(ア)、(イ)は、周囲温度がそれぞれ25°C、10°C、のときの、そして図3の(ア)、(イ)は、同様に周囲温度がそれぞれ5℃、0°Cのときの、前述した定量バルブからグリスが吐出され、そして満杯になり、ある圧力になるまでの時間すなわち略定量バルブが満杯になるまでの時間を示すグラフで、図3の(ウ)はそれらをまとめたグラフであるが、これらのグラフに示されているように、定量バルブが満杯になるためには周囲温度が25°Cのときは約2分22秒(144秒)、10°Cのときは3分4秒(184秒)、5°Cのときは3分36秒(216秒)、0°Cのときは5分43秒(343秒)を要する。夏期のように周囲温度が25°Cのように高いときは、グリスの粘度は低下しているので、グリス圧送ポンプから被給脂箇所までの、グリス管、グリスチューブ等内のグリスの流れ抵抗あるいは定量バルブ内の抵抗は小さく、グリス圧送ポンプは144秒間稼働すれば満杯になるが、冬期のように周囲温度が0°Cのように低く粘度が高いときには343秒間稼働する必要がある。冬期も充分に給脂するためには、グリス圧送ポンプの稼働時間は343秒以上に設定する必要がある。そうすると、温度が高い夏期には200秒ほど無駄に稼働していることになる。この無駄な運転により、エネルギの消費量は多くなり、またグリス圧送ポンプの寿命は短くなる。さらには、グリス圧送ポンプの無駄な運転中はグリスはリリーフバルブからグリスタンクに戻されているので、グリスは熱劣化する。
【0010】
特許文献2に示されている給脂方法は、周囲温度は考慮されているが、1回当たりに送出される「潤滑油の量を一定」にしようとするもので、そのために周囲温度が低く粘性が高いときは給脂用ポンプの作動時間が延長され、周囲温度が高い場合は作動時間が短縮されるようになっている。これにより、1回当たりの潤滑油の送出量は、周囲温度に関係なく一定になるという効果が得られる。しかしながら、定量バルブを使用したときの前記したようなグリス圧送ポンプの無駄な稼働、これに伴う色々な問題は認識されていないし、前記したような問題を解決するものでもない。
【0011】
したがって、本発明は定量バルブを使用した給脂方法に特有な、上記したような問題を解決した自動給脂方法及び装置を提供しようとするもので、具体的には定量バルブを使用しているにも拘わらず、省エネ的に、かつ長期間にわたって給脂することができる自動給脂方法及び自動給脂装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、設定時間だけグリス圧送ポンプを稼働して定量バルブに蓄積されている所定量のグリスを機械の被給脂箇所に吐出するとき、前記設定時間を前記機械の周辺気温、機械本体の温度等の被給脂箇所近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更するように構成される。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、設定時間グリス圧送ポンプが稼働している間に、該ポンプから圧送されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して機械の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると、次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブを使用して給脂するとき、前記設定時間を前記機械の被給脂箇所近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更し、それによって前記グリス圧送ポンプの無駄な運転を回避するように構成される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、設定時間グリス圧送ポンプが稼働している間に、該ポンプから圧送されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して射出成形機の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると、次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブを使用して射出成形機の被給脂箇所に給脂するとき、前記設定時間を前記射出成形機の近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更し、それによって前記グリス圧送ポンプの無駄な運転を回避するように構成され、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の給脂方法において、1台のグリス圧送ポンプに対して複数個の容量の異なる前記定量バルブを並列的に設けて、複数箇所に実質的に一度に給脂するように構成される。請求項4に記載の発明は、グリス圧送ポンプと、該グリス圧送ポンプから吐出されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して電動射出成形機の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブとを備えた給脂装置であって、前記グリス圧送ポンプの稼働時間は、前記電動射出成形機の周辺の外気温度または前記電動射出成形機本体の温度に基づいて設定されるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によると、定量バルブを使用して機械の被給脂箇所へ給脂するとき、グリス圧送ポンプの設定時間を前記機械または前記電動射出成形機の被給脂箇所近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更するので、グリス圧送ポンプの無駄な運転が避けられ、省エネ的に給脂できるという、本発明に特有な効果が得られる。換言すると、定量バルブを使用して給脂するとき避けることができなかった、無駄なグリス圧送ポンプの稼働が避けられるという効果が得られる。これにより、グリス圧送ポンプの寿命は延び、グリスの劣化の問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は電動射出成形機を示す正面図、その(イ)は定量バルブの実施の形態を示す断面図である。
【図2】周囲温度と、市販されている定量バルブの作動完了までの時間との関係を示すグラフで、その(ア)、(イ)は周囲温度がそれぞれ25℃、10℃の場合の関係を示すグラフである。
【図3】周囲温度と、同様に市販されている定量バルブの作動完了までの時間との関係を示すグラフで、その(ア)、(イ)は周囲温度がそれぞれ5℃、0℃の場合の関係を示すグラフ、その(ウ)は図2の(ア)、(イ)と図3の(ア)、(イ)をまとめて、温度と作動完了までの時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、射出装置1と型締装置20とからなる電動射出成形機E・Mについて説明する。射出装置1は、図1の(ア)に示されているように、ホッパ2をその端部に備えたシリンダバレル3、このシリンダバレル3内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、このスクリュを回転方向と軸方向とに駆動する駆動装置5とからなっている。駆動装置5は、可塑化用と射出用の両サーボモータを備え、従来周知のように構成されているが、図示の実施の形態では、射出台Kに固定的に設けられている第1、2の固定プレート6、7と、これらの固定プレート6、7の間に軸方向に移動可能に設けられている駆動プレート8とを備えている。第1、2の固定プレート6、7の間には、複数本、図示の実施の形態では2本のボールネジ10、11が所定の間隔をおいて設けられている。これらのボールネジ10、11には、ボールナット12、13がそれぞれ螺合し、その両端部はラジアルおよびスラストベアリングにより第1、2の固定プレート6、7に軸受けされている。ボールネジ10、11は駆動プレート8をフリーに貫通し、ボールナット12、13は駆動プレート8に固定的に取り付けられている。したがって、これらのボールネジ10、11を同期して所定方向に回転駆動すると、駆動プレート8の方が軸方向に移動することになる。
【0018】
スクリュに連なっているスクリュ軸14は、第1、2の固定プレート6、7に軸受けされているが、特に駆動プレート8にはスラスト方向にも軸受けされている。これにより、駆動プレート8が射出方向に駆動されると、スクリュ軸14したがってスクリュが射出方向に駆動されることになる。スクリュ軸14の、第2の固定プレート7側はスプライン歯が形成され、このスプライン歯に可塑化用の駆動歯車15が噛み合っている。可塑化用の駆動歯車15には、図1には示されていないが、可塑化用のサーボモータの出力歯車が噛み合っている。2本のボールネジ10、11は、射出用のサーボモータにより同期して駆動されるようになっている。なお、可塑化時にはスクリュは蓄積される溶融樹脂の圧力により後退するが、あるいはサックバックされるが、そのための機構は図1には示されていない。
【0019】
型締装置20も、従来周知であるので詳しい説明はしないが、射出台K上に固定されている固定盤21、固定盤21と間隔をおいて射出台K上に軸方向に移動自在に設けられている型締ハウジング23、固定盤21と型締ハウジング23との間に設けられている4本のタイバ、これらのタイバによって軸方向に案内移動される可動盤22、可動盤22を型閉じ方向あるいは型開き方向に駆動するトグル機構30、このトグル機構30を駆動する型締シリンダユニット等から構成されている。
【0020】
トグル機構30も従来周知のように、比較的長い一対の第1のリンク31、31、比較的短い一対の第2のリンク32、32、一対の第3のリンク33、33、クロスヘッド34等から構成されている。そして、第1のリンク31、31の一方の端部は、可動盤22にトグルピンとトグルブッシュとにより結合され、他方の端部は第2のリンク32、32の一方の端部に同様にトグルピンとトグルブッシュにより結合されている。第2のリンク32、32の他方の端部は、型締ハウジング23に、そして第3のリンク33,33の端部は第2のリンク32、32とクロスヘッド34とにトグルピンとトグルブッシュとにより結合されている。
【0021】
図1には示されていないが、型締ハウジング23の略中央部には透孔が形成され、型締ハウジング23の外側に設けられている型締シリンダユニットのピストンロッドは、この透孔を通ってトグル機構30のクロスヘッド34に接続されている。したがって、型締シリンダユニットのピストンロッドによりクロスヘッド34が軸方向に駆動されると、可動盤22は型閉じ方向あるいは型開き方向に駆動される。このように構成されている固定盤21には、従来周知のように固定金型24が、そして可動盤22には可動金型25がそれぞれ取り付けられている。
【0022】
上記のように構成されている電動射出成形機E・Mの所要箇所には、すなわちボールナット12、13がボールネジ10、11と螺合している箇所、駆動歯車15がスプライン噛合している箇所、トグルピンを受けているトグルブッシュ等には給脂ユニットU、U、…が取り付けられている。これらの給脂ユニットU、U、…は、図1の(ア)では塗りつぶしの菱形で示されている。給脂ユニットU、U、…には、詳しくは後述する所定容量の定量バルブからグリスが供給されるが、本実施の形態では複数個の定量バルブは2群に分けられている。すなわち、グリス圧送ポンプ41からは銅製のグリス管42が第1のジャンクション43まで延び、この第1のジャンクション43から同様に銅製のグリス管44が第2のジャンクション45まで延びている。第2のジャンクション45には容量の異なる複数個の定量バルブ50、50、…が並列的に設けられ、そしてこれらの定量バルブ50、50、…は射出装置1に設けられている給脂ユニットU、U、…のそれぞれにナイロン(登録商標)製のグリスチューブ46、46,…により接続されている。トグル機構30のトグルブッシュにも、給脂ユニットU、U、…が設けられている。第1のジャンクション43にも容量の異なる複数個の定量バルブ50、50、…が並列的に設けられている。これらの定量バルブ50、50、…も、トグル機構30の給脂ユニットU、U、…のそれぞれにグリスチューブ46、46、…により接続されている。
【0023】
次に、上記の定量バルブ50の実施の形態について説明する。本実施の形態によると、定量バルブ50は前記したように特開平7−174251号公報に開示されているように構成されているので簡単に説明する。図1の(イ)に示されているように、定量バルブ50は、所定容量のシリンダ51を備えている。シリンダ51の、図において下端部にはジャンクション43、45に取り付けるための雄ネジ52が形成され、上端部にはキャップ53が着脱自在に取り付けられている。キャップ53の内周面にはグリスチューブ46を取り付けるための雌ネジ54が形成されている。このように構成されているシリンダ51の内部に、キャップ53で押さえられる形で管状部材55が設けられている。管状部材55の外周面とシリンダ51の内周面との間にはピストン60が設けられている。このピストン60は、キャップ53の下端部に設けられているコイルスプリング61により下方へ押されている。また、管状部材55の下方には、グリスの圧力により軸方向に移動する逆止弁63が設けられている。
【0024】
上記のように構成されている容量の異なる、すなわち2次のグリス室66の容積の異なる複数個の定量バルブ50、50、…が用意され、必要な給脂量に見合った定量バルブ50、50、…が選択されて第1のジャンクション43に取り付けられ、そしてトグル機構30の給脂ユニットU、U、…にグリスチューブ46、46により接続されている。同様に、必要な給脂量に見合った定量バルブ50、50、…が第2のジャンクション45に取り付けられ、そして駆動装置5の給脂ユニットU、U、…に接続されている。
【0025】
図1の(ア)において塗りつぶされた丸印で示されているように、本実施の形態によると、周囲温度を計測する温度センサS、S、…は、電動射出成形機E・Mの各所、例えばグリス圧送ポンプ41の近傍、第2のジャンクション45の近傍、射出台Kの内・外、トグル機構30の近傍、駆動装置5の近傍等に設けられている。そして、これらの温度センサS、S,…で計測される温度は信号ラインt、t、…により、電動射出成形機E・Mに備わっているコントローラ40に入力されるようになっている。コントローラ40は、これらの温度センサS、S,…で計測される温度を選択して周囲温度とする機能、あるいはこれらの温度に重み付けして周囲温度を演算する演算機能、射出成形するショット数と設定ショット数とを比較する機能、所定ショットに達したら、グリス圧送ポンプ41に起動信号を出力する機能、グリス圧送ポンプ41の稼働時間を計測する機能、グリス圧送ポンプ41の稼働時間と設定時間とを比較する機能、タイマ等を備えている。
【0026】
次に、上記実施の形態の作用を説明する。コントローラ40に入力される温度により周囲温度を上記したようにして演算し、そしてグリス圧送ポンプ41が稼働する時間を設定しておく。例えば、周囲温度が0°Cのときは350秒、10°Cのときは180秒、25°Cのときは150秒のように設定しておく。または、リニア的に設定しておく。あるいは、単純に春または秋を基準にし、夏期は短く、冬期は長く設定する。給脂するまでのショット数、例えば1,000ショットを設定する。電動射出成形機の成形動作自体は、当業者には明らかであるので、詳しい説明はしないが、概略次のように作用する。ホッパ2から射出材料を供給すると共に、可塑化用電動サーボモータを起動して駆動歯車15を回転駆動する。そうすると、スクリュ軸14、したがってスクリュが回転駆動され、従来周知のようにして射出材料は溶融され、シリンダバレル3の前方に蓄積される。所定量蓄積されたら可塑化用電動サーボモータを停止する。型締シリンダユニットに圧力油を供給する。そうすると、トグル機構30により可動盤22が固定盤21に対して型締めされる。射出用電動サーボモータを起動してボールネジ10、11を同期して回転駆動する。そうすると、駆動プレート8がスクリュを射出方向に駆動する。これにより、溶融射出材料が金型24、25のキャビティに射出充填される。充填が終わったら、射出用電動サーボモータを停止する。冷却固化を待ってエジェクタピンにより成形品を突き出す。これにより、1ショットの成形が終わる。以下同様にして成形する。
【0027】
コントローラ40に設定されている1、000ショット数に達したら、コントローラ40はグリス圧送ポンプ41へ起動信号を出力する。グリス圧送ポンプ41は起動する。第1のジャンクション43から所定圧力のグリスが定量バルブ50、50、…のシリンダ51に供給される。同時に第2のジャンクション45の定量バルブ50、50、…のシリンダ51にも供給される。そうすると、逆止弁63が上昇して管状部材55の中心孔56の下端部57を閉鎖する。供給されるグリスは、逆止弁63のリップ64を押し開き、1次のグリス室65に供給される。1次のグリス室65に供給されるグリス圧によりピストン60はコイルスプリング61を圧縮しながら上方する。ピストン60が上昇するので、シリンダ51の内周面と管状部材55の外周面との間の2次のグリス室66の容積は狭められ、2次のグリス室66に前回計量されていたグリスは管状部材55の上方端部に設けられているサイド透孔58を通って管状部材55の中心孔56からキャップ53を介してそれぞれの給脂ユニットU、U、…に圧送される。
【0028】
容量の小さい、あるいは2次のグリス室66の容積が小さい定量バルブ50、50、…のピストン60は、早期にシリンダ51のキャップ53の下方端部に当接して給脂を終わる。または、ピストン60の上端部がサイド透孔58を塞ぎ給脂を終わる。しかし、容量の大きい定量バルブ50、50、…からの給脂が終わるまで、グリス圧送ポンプ41は稼働する。その間、グリス圧送ポンプから吐出される圧送に寄与しない余分のグリスは、例えばリリーフ弁からタンクに戻される。コントローラ40で演算され、設定されている時間に達すると、グリス圧送ポンプ41は停止する。そうすると、全ての定量バルブ50、50、…は、そのピストン60はコイルスプリング61の復元力により下降する。1次のグリス室65の圧力が高まり、逆止弁63は管状部材55の下端部57から離間する。2次のグリス室66は、ピストン60の下降により圧力は低下している。1次のグリス室65のグリスは、管状部材55の下端部57から中心孔56およびサイド透孔58を通って2次のグリス室66に蓄積される。これにより、次回のグリスが蓄積される。以下同様にして給脂する。
【0029】
上記実施の形態によると、容量の異なる複数個の定量バルブで複数箇所に略同時に給脂するようになっているが、1個の定量バルブで1カ所に給脂することもできる。また、上記実施の形態では定量バルブはコイルスプリングの復元力により、次回吐出するグリスが蓄積されるようになっているが、油圧により作動するピストンにより蓄積する定量バルブを適用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
E・M 電動射出成形機、 U 給脂ユニット
S 温度センサ 5 駆動装置
10、11 ボールネジ 12、13 ボールナット
30 トグル機構 41 グリス圧送ポンプ
50 定量バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定時間グリス圧送ポンプが稼働している間に、該ポンプから圧送されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して機械の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると、次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブを使用して給脂するとき、
前記設定時間を前記機械の被給脂箇所近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更し、それによって前記グリス圧送ポンプの無駄な運転を回避することを特徴とする自動給脂方法。
【請求項2】
設定時間グリス圧送ポンプが稼働している間に、該ポンプから圧送されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して射出成形機の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると、次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブを使用して射出成形機の被給脂箇所に給脂するとき、 前記設定時間を前記射出成形機の近傍の周囲温度が所定値より高いときは短い方へ、低いときは長い方へ変更し、それによって前記グリス圧送ポンプの無駄な運転を回避することを特徴とする自動給脂方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給脂方法において、1台のグリス圧送ポンプに対して複数個の容量の異なる前記定量バルブを並列的に設けて、複数箇所に実質的に一度に給脂する自動給脂方法。
【請求項4】
グリス圧送ポンプと、該グリス圧送ポンプから吐出されるグリスの圧力により前回蓄積されている所定量のグリスがグリス管あるいはグリスチューブを介して電動射出成形機の被給脂箇所に吐出され、前記グリス圧送ポンプが停止しグリスの圧力がなくなると次回吐出される所定量のグリスが蓄積されるようになっている定量バルブとを備えた給脂装置であって、
前記グリス圧送ポンプの稼働時間は、前記電動射出成形機の周辺の外気温度または前記電動射出成形機本体の温度に基づいて設定されることを特徴とする電動射出成形における自動給脂装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−24286(P2013−24286A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157860(P2011−157860)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】