自動製パン器
【課題】モータ異常等でパン製造動作が中断してしまい、パン材料を無駄にしてしまうことを回避する。
【解決手段】本発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、粉砕工程または練り工程において、モータの負荷と工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。このような構成により、材料が殆ど粉砕或いは練りが終了しているにも関わらず無駄に捨ててしまうといったことを回避する。
【解決手段】本発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、粉砕工程または練り工程において、モータの負荷と工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。このような構成により、材料が殆ど粉砕或いは練りが終了しているにも関わらず無駄に捨ててしまうといったことを回避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内の製パン原料を混練ブレードで混練して練り(捏ね)上げ、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる仕組みのものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来では、このような自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これを製パン原料として用いることによってパンを製造していた。
【0004】
しかしながら、このようなミックス粉は高価であり、又、スーパー等で容易に入手できない場合もある。このような理由から、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば便利である。この点、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を原料としてパンを製造する方法を発明した(特許文献2参照)。具体的には、このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)後、パンに焼き上げる(焼成工程)ことにより、パンが生成される。
【0005】
更に、電流値が所定レベルに到達したか否かを判断することで実行中の工程を中断させることができる機能を備えた自動製パン器も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特開2011−177398号公報
【特許文献3】特開2011−130961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献3に記載の技術のように、単純に電流値を検出するのみで工程を中断させる技術を用いると、次のような問題が発生する。例えば練り工程の後半部分で異常な電流値を検出し、ユーザに材料を廃棄するようにエラー報知を行えば、練り工程が殆ど終了間近であるにもかかわらず、材料を廃棄することになる。このような問題は、材料を一目見て練り具合が分かるユーザだと、材料を廃棄することを回避することが可能かもしれないが、パンを作ったことのないユーザ或いは、練り具合がよく分からないユーザにとっては材料を廃棄すべきか否か判断するのは困難である。
【0008】
又、粉砕工程についても同様に、粉砕工程の後半部分で異常な電流値を検出し、ユーザに材料を廃棄するようにエラー報知を行えば、粉砕工程が殆ど終了間近であるにもかかわらず、材料を廃棄することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、既に殆ど練りあがった或いは粉砕が終了した材料が捨てられるといった事態を回避することが可能な自動製パン器を提供することを目的としている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了すると共に工程を開始するか否かを判定することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能であるだけでなく、自動的に続く工程を実行するため、ユーザにとって使い勝手が良い。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動製パン器であり、前記粉砕工程の進み具合は、前記粉砕ブレードによる穀物粒の粉砕回数又は粉砕時間であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明により、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了すると共に次の工程を開始するか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能であるだけでなく、自動的に続く工程を実行するため、ユーザにとって使い勝手が良い。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の自動製パン器であり、前記練り工程の進み具合は、前記練りブレードによる穀物粒の練り回数又は練り時間であることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明により、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6に記載のいずれかの自動製パン器であり、前記モータの負荷は、モータに流れる電流値或いは、モータの温度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、製パンコースの実行中に粉砕モータが発熱し、所定の電流レベルを検出できない場合、現在実行している工程によって調理の続行または終了を判断することで、本来捨てずとも良い材料を無駄にすることなく、調理成果物をユーザに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す分解概略斜視図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略側面図及び概略断面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図(ガードが取り外された場合の図)
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図
【図11】本実施形態の自動製パン器が備える蓋の構成を示す概略図
【図12】図11(b)のB−B位置における断面図
【図13】本実施形態のブロック図
【図14】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースのフロー図
【図15】本実施形態の製パンコースで用いる粉砕工程の模式図
【図16】本実施形態の製パンコースの終了・続行判定処理のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や回数等の数値はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0026】
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は蓋が閉じられた状態、図1(b)は蓋が開かれた状態を示している。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)は、操作部20が設けられた上面を有している。この操作部20は、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部とによって構成されている。なお、表示部は、例えば液晶表示パネル等によって構成される。
【0027】
また、本体10には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)を有する平面形状略矩形の箱形状に構成され、その上面が開口している。この焼成室30は、本体10の背面側に回動可能に一端が軸支されて、焼成室30の開口を覆う閉位置と該閉位置から所定角度回転された開位置との間で変位する蓋(蓋体)40によって開閉可能となっている。
【0028】
この蓋40には、焼成室30に収容されるパン容器80内の様子を外部から覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入できるように設けられるパン原料収納容器110が取付可能となっている。パン原料収納容器110の詳細、及び、パン原料収納容器110の蓋40への取付構造の詳細については後述する。
【0029】
この蓋40は、蓋40が閉じられた状態において、その上面の略全体が本体10の前面側から背面側に向けて高くなる傾斜面となっている。このために、蓋40を閉じた状態において、本体10前面寄りに配置される覗き窓41から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子が観察し易くなっている。また、蓋40を閉じた状態において本体10の背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器110は、蓋40の厚みが厚い部分に配置されることになるため、その高さを高くすることによって大きな容積を稼げるようになっている。
【0030】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定しており、図の下側が自動製パン器1の前面側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。
【0031】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されると共に、第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている。このクラッチ56の構成については後述する。
【0032】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられると共に原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速で回転する。
【0033】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部のことを、以下において第1の動力伝達部と表現することがある。
【0034】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転のものが選定され、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60を駆動すると、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0035】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部のことを、以下において第2の動力伝達部と表現することがある。第2の動力伝達部は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0036】
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0037】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に動力伝達を行い、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に動力遮断を行うようになっている。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0038】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
【0039】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能であると共に、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるストッパ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0040】
クラッチ56の切り替え(動力伝達状態と、動力遮断状態の切り替え)は、第1のクラッチ部材561から固定状態で延出するアーム部72と、永久磁石73aが内蔵された自己保持型のソレノイド(クラッチ用ソレノイド)73と、を用いて行われる。ソレノイド73のプランジャー73bは、その先端部(図3においては下部側が該当)がアーム部72に設けられる取付部72aに固定された状態となっている。アーム部72(取付部72aを含む)は金属で形成されているために、永久磁石73aに吸着可能となっている。
【0041】
図3(a)の状態から、ソレノイド73に、永久磁石73aの磁界を打ち消すように電圧を印加すると、永久磁石73aのアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する力が低下し、バネ71の付勢力によって第1のクラッチ部材561が下側に押し下げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが得られ、クラッチ56は動力伝達を行うようになる(図3(b)の状態となる)。この噛み合いが得られた状態は、バネ71の付勢力によって維持されるために、第1のクラッチ部材561を引き下げるための駆動を行った後は、ソレノイド73はオフとされる。また、この噛み合いが得られた状態では、アーム部72が引き下がるために、ソレノイド73のプランジャー73bは、ハウジング73cからの突出量(下側への突出量)が増した状態となっている。
【0042】
一方、図3(b)の状態から、ソレノイド73に、プランジャー73bを引き上げる方向の電圧(永久磁石73aの磁界を打ち消す方向の電圧とはプラスマイナスが逆となる電圧)を印加すると、バネ71の付勢力に反して、アーム部72と共に第1のクラッチ部材561が上側に引き上げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが解除され、クラッチ56は動力遮断を行うようになる(図3(a)の状態となる)。この噛み合いが解除された状態においては、ソレノイド73に内蔵される永久磁石73aがアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する。このために、第1のクラッチ部材561を引き上げるための駆動を行った後は、ソレノイド73をオフとしても、クラッチ73の噛み合いが解除された状態を維持できるので、ソレノイド73はオフされる。
【0043】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される。この場合、粉砕モータ60が例えば8000rpmで回転されるとすると、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を40000rpmで回転させようとすることになる。この場合、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わることになるため、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このため、粉砕モータ60を駆動する際には、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達されないようにする必要があり、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部に含む構成となっている。
【0044】
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部にはクラッチを設けない構成としているが、この場合には上述のようなモータ破損は生じない。これは、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみであり、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはないからである。そして、このように第2の動力伝達部に敢えてクラッチを設けない構成とすることにより、自動製パン器の製造コストを抑制している。ただし、第2の動力伝達部にクラッチを設ける構成としても勿論構わない。
【0045】
図4は、本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を前面側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成については概ね断面図で示している。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
【0046】
図4に示すように、焼成室30の内部にはシーズヒータ31(加熱手段の一例)が、焼成室31に収容されたパン容器80を包囲するように配置され、パン容器80内のパン原料(この表現にはパン生地とされたパン原料も含まれる)を加熱できるようになっている。
【0047】
また、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みは上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。
【0048】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0049】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策が施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から突き出ている)には容器側カップリング部材82aが固定されている。また、パン容器80の底部外面側には筒状の台座83が設けられており、パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0050】
パン容器支持部14の内周面と台座83の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。すなわち、パン容器80をパン容器支持部14に取り付ける際、台座83の突起がパン容器支持部14の突起に干渉しないようにしてパン容器80を下ろす。そして、台座83がパン容器支持部14に嵌り込んだ後、パン容器80を水平にひねると、パン容器支持部14の突起の下面に台座83の突起が係合するようになっている。これにより、パン容器80は上方に抜けなくなる。
【0051】
なお、この操作で、ブレード回転軸82の下端に設けられる前述の容器側カップリング部材82aと、原動軸11の上端に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)も同時に達成される。そして、このカップリングにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力が伝えられるようになる。
【0052】
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す分解概略斜視図である。図7は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
【0053】
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91と、ユニット用シャフト91に相対回転不能且つ着脱可能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付けた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される。
【0054】
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(図6及び図7の下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。また、ユニット用シャフト91の下部側には、ユニット用シャフト91を直径方向に横断する溝91aが形成されている(例えば図6参照)。ユニット用シャフト91をブレード回転軸82の上から嵌め込んだ(被せた)場合に、ブレード回転軸82を水平に貫くピン(図示せず)が溝91aに係合し、ユニット用シャフト91をブレード回転軸82に相対回転不能に連結する。
【0055】
なお、図7(b)に示すように、ブレード回転軸82(破線で示す)の上面(略円形状)の中央部に設けられる凸部82aと係合するように、ユニット用シャフト91の上部側内面の中央部には凹部91bが形成されている。これにより、ユニット用シャフト91とブレード回転軸82との中心を合わせた状態で、ブレードユニット90をブレード回転軸82に容易に取り付けることができ、ブレードを回転する際に不要なガタツキ等が発生することを抑制できる。本実施形態では、ブレード回転軸82側に凸部82a、ユニット用シャフト91側に凹部91bを設ける構成としたが、これとは逆に、ブレード回転軸82側に凹部、ユニット用シャフト91側に凸部を設ける構成としても構わない。
【0056】
米粒粉砕用の粉砕ブレード(本発明の粉砕手段の実施形態)92は例えばステンレス鋼板によって形成され、その形状は例えば飛行機のプロペラのようになっている。粉砕ブレード92の中心部には、図6に示すように、平面視略矩形状の開口92aが形成されている。粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91の下部側から、開口92aにユニット用シャフト91を嵌め込むようにして取り付けられている。
【0057】
ユニット用シャフト91の下部側は、円柱の側面を削ったような形状となっており、下から見た場合に、粉砕ブレード92の開口92aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。また、この略矩形状部分(ユニット用シャフト91の下部側部分)のサイズは、開口92aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。ユニット用シャフト91の粉砕ブレード92より下側部分には抜け止め用のストッパ部材94が嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
【0058】
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面側から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aの外面には開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
【0059】
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bが収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
【0060】
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えばパン原料としてパン容器80に投入される水等の液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。
【0061】
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置された支軸100(図6参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。
【0062】
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定配置されている。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
【0063】
ここで、混練ブレード101の動作について説明する。混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに回転し、図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢と、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード101の下縁から垂下した突起101a(図5及び図6参照)がドーム状カバー93の上面に設けられた第1のストッパ部93bに当接し、混練ブレード101はそれ以上ドーム状カバー93に対し反時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。この折り畳み姿勢では、混練ブレード101の先端がドーム状カバー93から少し突き出している。
【0064】
この姿勢(図9(a)の状態)から混練ブレード101がドーム状カバー93に対して時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図9(b)に示す開き姿勢になると、混練ブレード101の先端はドーム状カバー93から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード101の開き角度は、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93c(図8参照)によって制限される。詳細は後述する第2係合体103b(支軸100に固定される)が第2のストッパ部93cに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード101は最大開き角度となる。
【0065】
なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。
【0066】
ところで、ユニット用シャフト91には、図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から嵌め込まれ、ストッパ部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態第では、第1係合体103aとシールカバー93との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
【0067】
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態第では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
【0068】
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。カバー用クラッチ103は、混練モータ50が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転となる。)において、ブレード回転軸82とドーム状カバー93を連結する。逆に、粉砕モータ60が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転となる。)では、カバー用クラッチ103はブレード回転軸82とドーム状カバー93の連結を切り離す。以下、このカバー用クラッチ103の動作について更に詳細に説明する。
【0069】
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ブレード回転軸82が正方向回転すると、第1係合体103aと第2係合体103bは係合し、ブレード回転軸82の回転動力がドーム状カバー93に伝達される。
【0070】
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
【0071】
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93dが形成される。窓93dは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93dが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0072】
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93dに対応して計4個のリブ93eが形成されている。各リブ93eはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93eは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0073】
また、ドーム状カバー93の下面には、着脱可能なガード106が取り付けられている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザが安心して使用できるように設けるのが好ましい。
【0074】
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパ部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁にはリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される米粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0075】
ガード106は、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
【0076】
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaにドーム状カバー93の外周に形成される突起93f(実施形態では、45°間隔で計8個配置されている)を係合することによって、ガード106はドーム状カバー106に取り付けられる。なお、溝106eaと突起93fはバヨネット結合を構成するように設けられている。
【0077】
自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)内に設ける構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
【0078】
また、本実施形態の自動製パン器1では、パン容器80に水等の液体が入れられるために、ユニット用シャフト91に対してドーム状カバー93を相対回転可能とするベアリング95に液体が入り込まないように、ベアリング95は密閉する必要がある。この点、自動製パン器1では、ベアリング95がドーム状カバー93に設けられる凹状の収容部931に収容されているために、ドーム状カバーの内面側にのみシール手段(シール材97及びシールカバー98)を設ければベアリング95を密閉できる。このため、ベアリング95の上下にシール手段を設ける必要がなく、ベアリング95のシール構造の小型化が図れる。このため、自動製パン器1では、焼き上がったパンの形状に対する悪影響(例えば、パンの底面が大きく凹む等)を抑制することが可能になる。
【0079】
図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図で、図10(a)は前面側から見た場合の図、図10(b)は背面側から見た場合の図である。なお、パン原料収納容器110が取り付けられた蓋40が閉じられた状態において、本体10前面側となる方をパン原料収納容器110の前面、本体10背面側となる方をパン原料収納容器110の背面としている(以下、同様)。また、図11は、本実施形態の自動製パン器が備える蓋の構成を示す概略図で、図11(a)は蓋を斜め下から見た場合の図、図11(b)は蓋を下から見た場合の図である。図12は、図11(b)のB−B位置における断面図である。
【0080】
自動製パン器1が備えるパン原料収納容器110は、大きくは、容器本体111と、容器本体111に対して回動可能に設けられて容器本体111の開口部111aを開閉する容器蓋112と、を備えている。
【0081】
容器本体111は、その断面形状が略矩形状(図12参照)の箱形部材である。この容器本体111は、その内部に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が付着するのを抑制できるように、静電気を帯び難い、例えばアルミニウムや鉄等の金属によって形成されている。なお、粉体パン原料が容器内に付着するのをできる限り抑制するために、容器本体111の内面にはシリコンやフッ素等で構成されるコーティング層を設けるのが好ましい。更に、容器本体111内面には、リベットやネジ等の突起物(凹凸)が形成されないようにし、容器本体111内面は滑らかな面となるようにするのが好ましい。
【0082】
容器本体111には、開口部111a側縁から外向きに突出する鍔部(フランジ部)111bが形成されている(図12参照)。この鍔部111bは、容器本体111の全周に形成されている。この鍔部111bには、例えばシリコンで構成されるパッキン113が固定されている。なお、このシリコン製のパッキン113は、本発明のシール部材の実施形態である。
【0083】
パッキン113の外観は、平面形状略額縁状となっており、鍔部111b全周に固定されている。より詳細には、パッキン113は、鍔部111bを上下から挟むように取り付けられる断面コの字状の部分と、この断面コの字状の部分から突出(図12において下方に突出)し、先端側が開口部111aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返される薄肉部を有する部分と、からなっている。
【0084】
なお、パッキン113が、開口部111aへとはみ出していると、容器本体111に収納されたパン原料がパッキン113に引っ掛かり易くなって、容器内にパン原料を残留させる原因となる。このような事態を避けるために、本実施形態においては、パッキン113は、開口部111aへとはみ出さないように容器本体111に取り付けられている。また、パッキン113を容器蓋112側に固定すると、パン原料収納容器110からパン容器80にパン原料を投入する際に、パン原料がパッキン113に引っ掛かってパン原料の投入量が不適切となるので、パッキン110は容器本体111側に固定されている。
【0085】
このパッキン113は、そのコの字状の部分を挟み込むようにして容器本体111に取り付けられる容器用カバー114によって容器本体111(鍔部111b)に固定されている。この容器用カバー114は、本発明の固定部材の実施形態である。容器用カバー114は詳細には2つのパーツで構成され、この2つのパーツがパッキン113と共に鍔部111bを挟み込むように配置された上でネジ留めされることによって、容器用カバー114によるパッキン113の固定が実現されている。なお、容器用カバー部材114は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等によって形成される。
【0086】
容器蓋112は、容器本体111の開口部111aよりやや面積が広く形成される略矩形状の金属プレートからなる。容器蓋112は、容器本体111と同様の理由(粉体パン原料の付着を抑制)で金属によって形成されている。また、容器本体111の場合と同様の理由で、その内面側(容器蓋112を閉じた状態を想定)にはシリコン等からなるコーティング層を形成するのが好ましい。
【0087】
容器蓋112は、その背面側両端部に設けられる取付部112aを、容器用カバー114の背面側両端部に設けられる蓋支持部114a(図10参照)に軸支することによって、回動可能に支持される。詳細には、容器蓋112は、本体容器111の長手方向と略平行な方向(図12において、紙面に対して垂直な方向)に延びる回転軸C2を中心として回動可能となっている。
【0088】
容器用カバー114には、パン原料収納容器110の前面側において、可動するロック部材115が取り付けられている。ロック部材115は、先端側がフック状に設けられて容器蓋112を外面(下面)側から支持可能なロック用フック部115aと、ロック用フック部115aから容器本体111の長手方向と略平行な方向に延びる腕部115bと、を有する構成となっている。
【0089】
腕部115bは、容器本体111の深さ方向と略平行な回転軸C1(図10(a)参照)を中心に回動可能に、容器用カバー114に軸支されている。腕部115bは、図示しない付勢部材によって、ロック用フック部115aが容器本体111側に向かうように付勢されている。このため、次のような手順で、ロック部材115によるロック状態(容器蓋112が容器本体111の開口部111aを閉じた状態(閉状態)を維持する状態)が得られる。
【0090】
まず、腕部115bに付勢方向に抗する力を付与して、ロック用フック部115aが開口部111aを覆う方向に回動される容器蓋112と当接しないようにする。そして、この状態で容器蓋112を、ロック用フック部115aによって外面側から支持できる位置まで回動し、腕部115bに付与していた力を解除する。すると、腕部115aが付勢部材の付勢力によって回動して、ロック用フック部115aが容器蓋112を外面側から支持するようになり、ロック状態(閉状態が維持された状態)が得られる。
【0091】
なお、ロック状態においては、容器蓋112の内面外周側がパッキン113と接触した状態で鍔部111bと重なり、開口部111aが完全に覆われた状態となる。このロック状態においては、パッキン113によって鍔部111bと容器蓋112との間がシールされているために、容器本体111内に外部から水分や埃等が入り込み難くなっている。
【0092】
また、このロック状態を解除して容器本体111の開口部111aを開いた状態とする場合には、腕部115bが付勢力に反して回動(回転軸C1を中心とする回動)するように外部から力を付与し、ロック用フック部115aによる容器蓋112の支持を解除すればよい。これにより、容器蓋112は重力によって回動し、開口部111aが開いた状態が得られる。
【0093】
本実施形態の自動製パン器1では、操作部20(図1参照)の下部側の本体10内に図示しない自動投入用ソレノイドが設けられている。このソレノイドが駆動すると、そのプランジャーが、蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10b(図1参照)から突出する。そして、突出したプランジャーが蓋40の側壁40aに設けられる可動部材46(図11(a)参照)を押圧する。押圧された可動部材46の動きによりロック部材115の腕部115bが押圧され、図示しない付勢部材の付勢力に反して腕部115bが回動する。これにより、ロック用フック部115aによる容器蓋112の支持が解除され、容器蓋112が重力によって回動し、開口部111aが開いた状態となるようになっている。
【0094】
この他に、容器用カバー114には、パン原料収納容器110を蓋40によって保持できるように、背面側に設けられる第1の係合部116と、前面側に設けられる(容器本体111を挟んで第1の係合部116とは反対側に設けられる)第2の係合部117と、が形成されている。この第1の係合部116及び第2の係合部117は、本発明の取付機構の実施形態である。
【0095】
第1の係合部116は、容器用カバー114の側面から外側に向けて突出する(図12において斜め上方に向けて突出する)第1の係合傾斜面116aを有する。この第1の係合部116は、背面側の両端部近傍に、それぞれ近接して2つずつ、計4つ設けられている。ただし、この係合部116の数、及び配置は一例であり、適宜変更してよい。
【0096】
第2の係合部117は、ハウジング部117aと、ハウジング部117aに、その一部が収容された取付用フック部117bと、を有する。取付用フック部117bは、ハウジング部117a内部に設けられる付勢部材17c(図12参照)によって、容器本体111の短手方向と略平行な方向外向き(図12において左向き)に付勢されている。また、取付用フック部17bは、付勢部材17cの付勢力に抗する方向(図12において右向き)に力を加えると、その方向に移動可能となっており、ハウジング部117aからの突出量が可変となっている。この取付用フック部117bは、本発明の可動式フック部の実施形態である。
【0097】
自動製パン器1の蓋40の内部にはフレーム部材42(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が収容され、このフレーム部材42は、蓋40の裏面側から内カバー43(例えば板金製)によって支持されている。フレーム部材42の、蓋40を閉状態とした場合において本体10の前面寄りとなる部分には、壁部42aによって囲まれた略矩形状(蓋40を裏面側から見た場合を想定)の貫通孔44が設けられている。壁部42aは、蓋40の上面側に配置される覗き窓41に当接して覗き窓41を支持する。
【0098】
このようにすると、覗き窓41から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子を見る場合に、壁部42aによって蓋40内部の構造が見えないようになるために、パン容器80内の様子をすっきりした状態で見ることができる。なお、本実施形態においては、デザイン面を考慮して、貫通孔44のサイズに比べて覗き窓41の方がかなり大きくなっている(この構成に限定される趣旨ではなく、例えば貫通孔44と覗き窓41は略同一サイズでもよい)。この構成の場合、壁部42aの外側において蓋40の内部構造が見えるが、例えば覗き窓41の上面の印刷処理によって、蓋40の内部構造が見えないようにできる。
【0099】
また、フレーム部材42には、蓋40を閉状態とした場合において本体10の背面寄りとなる部分に、ドーム状壁42bによって形成される凹部空間45が形成されている。この凹部空間45は、パン原料収納容器110を保持する保持部である。この保持部45内の前面(図12において左側)には、パン原料収納容器110が保持部45に保持された場合に、第2の係合部117の取付用フック部117bと係合する係合溝45aが形成されている。また、この保持部45内の背面(図12において右側)には、パン原料収納容器110が保持された場合に、第1の係合傾斜面116aと略平行となって当接する第2の係合傾斜面45bが形成されている。
【0100】
この保持部45内にパン原料収納容器110を収納する場合、ユーザは、第2の係合部117の取付用フック部117bがハウジング部117a内に引っ込む方向の力(付勢部材117cの付勢力に反する方向の力)を付与する。そして、取付用フック部117bのハウジング部117aからの突出量が減じられた状態で、パン原料収納容器110を第1の係合傾斜面116aが第2の係合傾斜面45bにぶつからないように斜めにして保持部45内に押し込む。その後、取付用フック部117bに加えていた力を抜いて、取付用フック部117bを突出させ、取付用フック部117bと係合溝45aとを係合させる。
【0101】
このようにして、パン原料収納容器110を保持部45に嵌め込むと、蓋40を閉状態とした場合において(図12の状態が該当)、第1の係合傾斜面116aと第2の係合傾斜面45bとが当接した状態となる。そして、パン原料収納容器110は、第2の係合傾斜面45bから鉛直方向上向き(図12の上向き)の力と、取付用フック部117bの係合溝45aへの係合が解除される方向と反対方向の力(図12の左向きの力)とを受けることになる。このため、保持部45内で、パン原料収納容器110は、取付用フック部117bと係合する係合溝45aと、第1の係合傾斜面116aに当接する第2の係合傾斜面45bと、によって支持され、保持部45に保持されることになる。
【0102】
なお、パン原料収納容器110を保持部45から取り外す場合には、取付用フック部117bをハウジング部117aに引っ込む方向に押圧して、取付用フック部117bと係合溝45aとの係合を解除する。そして、第1の係合傾斜面116aが第2の係合傾斜面45bによって邪魔されないように斜めに引き出せばよい。すなわち、ユーザは、取付用フック部117bの一部を押すだけで、簡単に、パン原料収納容器110の蓋40への取付及び取外しを行える。
【0103】
例えば、取付用フック部117bを有する第2の係合部117やロック部材115等を、容器用カバー114ではなく容器本体111に設ける場合、固定(リベット等を用いた固定)のために容器本体111内に凹凸が形成される可能性がある。この場合、粉体パン原料が収納される容器本体111内にパン原料が残留しやすくなって好ましくない。本実施形態の自動製パン器1では、容器用カバー114に第2の係合部117やロック部材115等を設ける構成としているので、このような問題を避けられる。
【0104】
図13は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図13に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置120によって行われる。制御装置120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory),I/O(Input/Output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置120は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置120には、時間計測機能、温度計測機能および電流検出機能が備えられており、パンの製造工程における時間・熱的な制御および電流負荷による制御が可能となっている。
【0105】
制御装置120には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路121と、粉砕モータ駆動回路122と、ヒータ駆動回路123と、第1のソレノイド駆動回路124と、第2のソレノイド駆動回路125と、が電気的に接続されている。
【0106】
混練モータ駆動回路121は、制御装置120からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路122は、制御装置120からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路123は、制御装置120からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路124は、制御装置120からの指令の下で、上述した、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路125は、制御装置120からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0107】
制御装置120は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路121を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路122を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路123を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路124を介して自動投入用ソレノイド16によるロック部材115の動作制御、第2のソレノイド駆動回路125を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0108】
次に、以上のように構成される自動製パン器1によってパンを製造する場合の自動製パン器1の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に自動製パン器1の動作を説明する。
【0109】
米粒を出発原料に用いる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図14は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図14に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0110】
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。そして、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
【0111】
また、ユーザは、パンの製造工程の途中で自動投入されるパン原料を計量してパン原料収納容器110の容器本体111に入れる。そして、収納すべきパン原料を容器本体111に収納したら、容器蓋112が容器本体111の開口部111aを閉じた状態として、ロック部材115によってロック状態とする。
【0112】
なお、パン原料収納容器110に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイーストが挙げられる。ただし、グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共にパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0113】
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器110を蓋40の保持部45に嵌め込む。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置120によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0114】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置120の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0115】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ31に通電して焼成室30の温度を高めるようにしてもよい。
【0116】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード92を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード92を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0117】
上記所定時間が経過すると、制御装置120の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。本実施形態の粉砕工程を模式したものを図15に示す。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転される。具体的には、制御装置120は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転させ、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92の高速回転を実行させる。
【0118】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置120は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。
【0119】
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もブレード回転軸82の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってドーム状カバー93の回転はすぐに阻止される。粉砕ブレード92を回転させるためのブレード回転軸82の回転に伴うドーム状カバー93の回転方向は、図9において反時計方向であり、混練ブレード101は、それまで折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合には、米粒と水が含まれる混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)に転じる。混練ブレード101が開き姿勢になると、カバー用クラッチ103は、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱するために、ブレード回転軸82とドーム状カバー93の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード101は図9(b)に示すように、パン容器80の内側壁に当るために、ドーム状カバー93の回転は阻止される。
【0120】
粉砕工程においては、粉砕がドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92の間でせん断されるので、効率良く粉砕できる。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93eによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕できる。
【0121】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物はリブ93eによって窓93dの方向に誘導されて、窓93dからドーム状カバー93の外に排出される。リブ93eは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93eの表面に対流しにくく、スムーズに窓93dの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入る。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
【0122】
このような機構により、粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。
【0123】
次にこの粉砕工程の制御動作を、図15を用いて具体的に説明する。図15に示しているように、粉砕工程では、粉砕ブレード92を回転させることにより水が浸み込んだ米粒を粉砕する時間(30秒)と、この時間に続く、粉砕ブレード92を回転させない時間(5分)とを1セットで、10回繰り返す。尚、最後のセットでは5分間の停止を行わないために、粉砕工程は約50分かけて行われる。
【0124】
このように粉砕工程では、粉砕ブレード92を間欠運転させている。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0125】
先ほど述べたように自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では約50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程における粉砕モータ60の負荷の大きさは、種々の要因によって大きく変動する。
【0126】
従来の装置では、負荷が大きすぎると、制御装置120が、粉砕モータ駆動回路122を介して粉砕モータ60から検出した電流値が或る閾値を超えた或いは電流値を検出しないと判定し、粉砕モータ60の駆動を停止させていた。そしてユーザに所定のエラーを報知した後、ユーザが調理中の材料を廃棄していた。しかしながら、粉砕工程がある程度進んだ状態では、このまま製パン動作を続けても、問題なく良好なパンが出来上がる場合が多い。
【0127】
本実施例装置では、このような問題を解決するために、モータに負荷がかかり過ぎて、モータの異常を検出した際に、粉砕工程がある程度進んでいれば(換言すれば、一定回数(或いは一定時間)以上の粉砕サイクルを実施していれば)、エラー報知せずにそのまま次の工程に進むことを特徴としている。
【0128】
図16は、本願発明のその特徴部分の動作を示すフロー図である。
【0129】
図16のS11ステップでは、制御装置120が、粉砕モータ駆動回路122から粉砕モータ60の駆動電流値を検出開始する。換言すれば、粉砕モータ駆動回路122が制御装置120に粉砕モータ60の駆動電流値を出力する。
【0130】
続くS12ステップでは、制御装置120が、S11ステップで受信開始した電流値の検出ができなくなったと判定すると、S13ステップへ処理を進め、そうでなければ製パンコースを続行する。尚、図示していないが、S12ステップでYの場合に、例えば、制御装置120が所定値以上の電流値を検出すると粉砕工程が終了したと判定し、次の練り工程に進む。又、S12ステップでNの場合には、粉砕モータの発熱により制御装置120が電流値を検出できずS13ステップへ処理を進める。
【0131】
S13ステップでは、粉砕工程が0サイクル目、すなわち粉砕モータが何らかの理由により故障状態になっていると制御装置120が判定すると、制御装置120は通常のエラーをユーザへ報知する。これはモータまたは電流検知手段の不良を考慮しているが、0サイクルも粉砕はできていないため、後ほど記載のエラー範囲に含めても良い。尚、粉砕工程のサイクル数は、粉砕と続く粉砕ブレード92を回転させない時間が1回経過する度に制御装置120が1サイクル終了したと判定し、図示しないフラッシュメモリ或いは制御装置120内部に搭載された記憶素子にそのサイクル数を記憶(カウント)していく。
【0132】
制御装置120は、カウントした粉砕回数が1以上と判定した場合には、S14ステップにおいて、制御装置120が、粉砕回数が所定回数(本実施例では6回)未満であるか否かを判定し、6回未満であると判定すると、制御装置120は、S17ステップにおいて異常をユーザに報知して製パンコースを終了させる。
【0133】
尚、この異常発生の要因は、周囲環境よりも、ユーザの計量失敗などによる場合が多い。このとき、米粒の粉砕状態および分量は一定の製パン性能を満たせる状態ではない可能性が高いため、材料を破棄した方が好ましい。
【0134】
S15ステップでは、制御装置120は、6サイクル以降では電動機の駆動波形を出力停止した上で、製パンコースを続行する。即ち、続く練り工程を自動的に実行する。尚、駆動波形は、温度保護装置の突然の復帰によって粉砕モータへ不本意な導通をさせないことが目的であるが、温度保護装置の復帰に時間がかかる場合などは、出力停止させなくとも良い。この制御より、ユーザに異常を報知して材料を破棄させるのではなく、製パンコースを続行する事で、一定以上の製パン性能を保ちつつ、調理成果物としてユーザへ提供することが可能となる。すなわち、ユーザの材料を無駄にすることがなくなる。
【0135】
尚、上述した各判定のサイクル数は、制御装置120に記憶している製パンコースごとに変えることが望ましい。これは、穀物粒の種類(例えば、玄米や雑穀入り米等)によって、サイクルごとの粉砕度合が変化するためである。
【0136】
又、このサイクル数は、粉砕工程ごとの温度による閾値または一定時間以内の温度上昇値等を持って判断を行っても良い。これは、モータの温度と、負荷(穀物粒等)の粉砕度合において相関を取ることが可能なためである。
【0137】
このように、図16に示す粉砕工程が終了すると、制御装置120の指令によって練り工程が開始される。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程を開始するようにしてもよい。
【0138】
練り工程の開始にあたって、制御装置120はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置120は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転させる。ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転し、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向(図9では時計方向)に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となると、カバー用クラッチ103の連結が生じ、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101は、ブレード回転軸82と一体となって正方向に回転する。
【0139】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0140】
混練ブレード101の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置120によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置120は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器110のロック部材115の腕部115bを回動させる。これにより、ロック用フック部115aが容器蓋112を支えた状態が解除され、容器蓋112が重力によって回動する。これにより、容器本体111の開口部111aが開かれて、例えば、グルテン、ドライイースといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
【0141】
上述のように、パン原料収納容器110は、パン原料が内部に残留し難いように工夫されているために、パン原料収納容器110にはパン原料がほとんど残ることなく、自動投入が完了できる。また、蓋40が閉じられた状態において、覗き窓41が前面側となり、パン原料収納容器110が背面側となるようになっており、パン原料収納容器110の容器蓋112は、背面側に向けて回動してその板状面が鉛直方向と略平行な状態(図12の状態)となる。このため、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われた後においても、覗き窓41を利用した、パン容器80内の様子の観察が行い難くなるということはない。
【0142】
なお、本実施形態では、パン原料収納容器110に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転した状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0143】
パン原料収納容器110に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(Dough)に練り上げられていく。混練ブレード101及び補完混練ブレード102が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93eも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93dから排出され、混練ブレード101及び補完混練ブレード102が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0144】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0145】
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106eb(図6参照)が上向きに傾斜しているから、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料が柱106eの前面で上方に跳ね上げられる。このために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0146】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では約15分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば前述したように、混練モータ50の負荷の大きさ(モータの電流検出量)を指標として、一定の練りサイクル数或いは時間によって終了を判断する構成等としても構わない。尚、負荷はモータの電流検出量のみならず、前述のように温度等でも構わない。
【0147】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0148】
又、練り工程においても、本実施例装置の粉砕工程と同様にある程度の練り工程が実行されていれば、制御装置120は、モータエラーを検出してもユーザにエラー報知せずに続く発酵工程を実行するように制御する。例えば、制御装置120が、モータからの電流検出値が所定レベルでないと判定した際に、混練ブレード101の回転数が所定回数を超えたか否かを判定し、所定回数回転していたと判定すると、エラー報知せずに次ぎの発酵工程を実行し、一方、所定回数回転していないと判定すると、エラー報知を行うように制御する。
【0149】
或いは、制御装置120は、混練工程の実行時間が所定時間を超えたか否かを判定し、所定時間を越えたと判定すると、エラー報知せずに次ぎの発酵工程を実行し、一方、所定時間を越えていないと判定すると、エラー報知を行うように制御するようにしても良い。
【0150】
練り工程が終了すると、制御装置120の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では約60分)放置される。
【0151】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101及び補完混練ブレード102を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0152】
発酵工程が終了すると、制御装置120の指令によって焼成工程が開始される。制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0153】
なお、パンの底には混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残るが、ドーム状カバー93とガード106は凹部81の中に収容されるように形成しているために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことはない。
【0154】
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0155】
例えば、以上においては、自動製パン器1によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を示したが、自動製パン器1は例えば小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造することも可能である。そして、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、パン原料収納容器110はレーズンやナッツ等の具材入りパンを製造する場合の具材を入れるために用いることも可能である。また、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、粉砕ブレード92は不要であるために、以上に示したのとは異なるパン容器(混練ブレードのみがブレード回転軸に取り付けられる従来型のパン容器)を用いる(パン容器の使い分けを行う)ようにしても構わない。なお、本発明は、米粒を出発原料に用いてパンを製造することのみが行える自動製パン器にも、勿論適用できる。
【0156】
また、以上に示した実施形態においては、米粒を出発原料に用いる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作を説明した。しかし、本発明の自動製パン器は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒を出発原料に使用する場合にも適用可能である。
【0157】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0159】
1 自動製パン器
10 本体
50 混練モータ
60 粉砕モータ
80 パン容器
92 粉砕ブレード
110 パン原料収納容器
111 容器本体
120 制御装置
121 混練モータ駆動回路
122 粉砕モータ駆動回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内の製パン原料を混練ブレードで混練して練り(捏ね)上げ、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる仕組みのものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来では、このような自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これを製パン原料として用いることによってパンを製造していた。
【0004】
しかしながら、このようなミックス粉は高価であり、又、スーパー等で容易に入手できない場合もある。このような理由から、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば便利である。この点、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を原料としてパンを製造する方法を発明した(特許文献2参照)。具体的には、このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)後、パンに焼き上げる(焼成工程)ことにより、パンが生成される。
【0005】
更に、電流値が所定レベルに到達したか否かを判断することで実行中の工程を中断させることができる機能を備えた自動製パン器も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特開2011−177398号公報
【特許文献3】特開2011−130961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献3に記載の技術のように、単純に電流値を検出するのみで工程を中断させる技術を用いると、次のような問題が発生する。例えば練り工程の後半部分で異常な電流値を検出し、ユーザに材料を廃棄するようにエラー報知を行えば、練り工程が殆ど終了間近であるにもかかわらず、材料を廃棄することになる。このような問題は、材料を一目見て練り具合が分かるユーザだと、材料を廃棄することを回避することが可能かもしれないが、パンを作ったことのないユーザ或いは、練り具合がよく分からないユーザにとっては材料を廃棄すべきか否か判断するのは困難である。
【0008】
又、粉砕工程についても同様に、粉砕工程の後半部分で異常な電流値を検出し、ユーザに材料を廃棄するようにエラー報知を行えば、粉砕工程が殆ど終了間近であるにもかかわらず、材料を廃棄することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、既に殆ど練りあがった或いは粉砕が終了した材料が捨てられるといった事態を回避することが可能な自動製パン器を提供することを目的としている。
【0010】
請求項1に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了すると共に工程を開始するか否かを判定することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能であるだけでなく、自動的に続く工程を実行するため、ユーザにとって使い勝手が良い。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動製パン器であり、前記粉砕工程の進み具合は、前記粉砕ブレードによる穀物粒の粉砕回数又は粉砕時間であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明により、粉砕工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了するか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了すると共に次の工程を開始するか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能であるだけでなく、自動的に続く工程を実行するため、ユーザにとって使い勝手が良い。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の自動製パン器であり、前記練り工程の進み具合は、前記練りブレードによる穀物粒の練り回数又は練り時間であることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明により、練り工程中にモータに異常が発生しても、パン材料を無駄に捨てるといったことを回避することが可能である。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6に記載のいずれかの自動製パン器であり、前記モータの負荷は、モータに流れる電流値或いは、モータの温度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、製パンコースの実行中に粉砕モータが発熱し、所定の電流レベルを検出できない場合、現在実行している工程によって調理の続行または終了を判断することで、本来捨てずとも良い材料を無駄にすることなく、調理成果物をユーザに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図
【図4】本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す分解概略斜視図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略側面図及び概略断面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図(ガードが取り外された場合の図)
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図
【図11】本実施形態の自動製パン器が備える蓋の構成を示す概略図
【図12】図11(b)のB−B位置における断面図
【図13】本実施形態のブロック図
【図14】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースのフロー図
【図15】本実施形態の製パンコースで用いる粉砕工程の模式図
【図16】本実施形態の製パンコースの終了・続行判定処理のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や回数等の数値はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0026】
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は蓋が閉じられた状態、図1(b)は蓋が開かれた状態を示している。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)は、操作部20が設けられた上面を有している。この操作部20は、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部とによって構成されている。なお、表示部は、例えば液晶表示パネル等によって構成される。
【0027】
また、本体10には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)を有する平面形状略矩形の箱形状に構成され、その上面が開口している。この焼成室30は、本体10の背面側に回動可能に一端が軸支されて、焼成室30の開口を覆う閉位置と該閉位置から所定角度回転された開位置との間で変位する蓋(蓋体)40によって開閉可能となっている。
【0028】
この蓋40には、焼成室30に収容されるパン容器80内の様子を外部から覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入できるように設けられるパン原料収納容器110が取付可能となっている。パン原料収納容器110の詳細、及び、パン原料収納容器110の蓋40への取付構造の詳細については後述する。
【0029】
この蓋40は、蓋40が閉じられた状態において、その上面の略全体が本体10の前面側から背面側に向けて高くなる傾斜面となっている。このために、蓋40を閉じた状態において、本体10前面寄りに配置される覗き窓41から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子が観察し易くなっている。また、蓋40を閉じた状態において本体10の背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器110は、蓋40の厚みが厚い部分に配置されることになるため、その高さを高くすることによって大きな容積を稼げるようになっている。
【0030】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定しており、図の下側が自動製パン器1の前面側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。
【0031】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されると共に、第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている。このクラッチ56の構成については後述する。
【0032】
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられると共に原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速で回転する。
【0033】
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部のことを、以下において第1の動力伝達部と表現することがある。
【0034】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転のものが選定され、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60を駆動すると、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0035】
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部のことを、以下において第2の動力伝達部と表現することがある。第2の動力伝達部は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
【0036】
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
【0037】
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に動力伝達を行い、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に動力遮断を行うようになっている。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
【0038】
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
【0039】
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能であると共に、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるストッパ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
【0040】
クラッチ56の切り替え(動力伝達状態と、動力遮断状態の切り替え)は、第1のクラッチ部材561から固定状態で延出するアーム部72と、永久磁石73aが内蔵された自己保持型のソレノイド(クラッチ用ソレノイド)73と、を用いて行われる。ソレノイド73のプランジャー73bは、その先端部(図3においては下部側が該当)がアーム部72に設けられる取付部72aに固定された状態となっている。アーム部72(取付部72aを含む)は金属で形成されているために、永久磁石73aに吸着可能となっている。
【0041】
図3(a)の状態から、ソレノイド73に、永久磁石73aの磁界を打ち消すように電圧を印加すると、永久磁石73aのアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する力が低下し、バネ71の付勢力によって第1のクラッチ部材561が下側に押し下げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが得られ、クラッチ56は動力伝達を行うようになる(図3(b)の状態となる)。この噛み合いが得られた状態は、バネ71の付勢力によって維持されるために、第1のクラッチ部材561を引き下げるための駆動を行った後は、ソレノイド73はオフとされる。また、この噛み合いが得られた状態では、アーム部72が引き下がるために、ソレノイド73のプランジャー73bは、ハウジング73cからの突出量(下側への突出量)が増した状態となっている。
【0042】
一方、図3(b)の状態から、ソレノイド73に、プランジャー73bを引き上げる方向の電圧(永久磁石73aの磁界を打ち消す方向の電圧とはプラスマイナスが逆となる電圧)を印加すると、バネ71の付勢力に反して、アーム部72と共に第1のクラッチ部材561が上側に引き上げられる。これにより、第1のクラッチ部材561の爪561aと、第2のクラッチ部材562の爪562aとの噛み合いが解除され、クラッチ56は動力遮断を行うようになる(図3(a)の状態となる)。この噛み合いが解除された状態においては、ソレノイド73に内蔵される永久磁石73aがアーム部72(より正確には取付部72a)を吸着する。このために、第1のクラッチ部材561を引き上げるための駆動を行った後は、ソレノイド73をオフとしても、クラッチ73の噛み合いが解除された状態を維持できるので、ソレノイド73はオフされる。
【0043】
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される。この場合、粉砕モータ60が例えば8000rpmで回転されるとすると、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を40000rpmで回転させようとすることになる。この場合、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わることになるため、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このため、粉砕モータ60を駆動する際には、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達されないようにする必要があり、自動製パン器1は、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部に含む構成となっている。
【0044】
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部にはクラッチを設けない構成としているが、この場合には上述のようなモータ破損は生じない。これは、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみであり、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはないからである。そして、このように第2の動力伝達部に敢えてクラッチを設けない構成とすることにより、自動製パン器の製造コストを抑制している。ただし、第2の動力伝達部にクラッチを設ける構成としても勿論構わない。
【0045】
図4は、本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を前面側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成については概ね断面図で示している。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
【0046】
図4に示すように、焼成室30の内部にはシーズヒータ31(加熱手段の一例)が、焼成室31に収容されたパン容器80を包囲するように配置され、パン容器80内のパン原料(この表現にはパン生地とされたパン原料も含まれる)を加熱できるようになっている。
【0047】
また、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みは上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。
【0048】
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
【0049】
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策が施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から突き出ている)には容器側カップリング部材82aが固定されている。また、パン容器80の底部外面側には筒状の台座83が設けられており、パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
【0050】
パン容器支持部14の内周面と台座83の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。すなわち、パン容器80をパン容器支持部14に取り付ける際、台座83の突起がパン容器支持部14の突起に干渉しないようにしてパン容器80を下ろす。そして、台座83がパン容器支持部14に嵌り込んだ後、パン容器80を水平にひねると、パン容器支持部14の突起の下面に台座83の突起が係合するようになっている。これにより、パン容器80は上方に抜けなくなる。
【0051】
なお、この操作で、ブレード回転軸82の下端に設けられる前述の容器側カップリング部材82aと、原動軸11の上端に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)も同時に達成される。そして、このカップリングにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力が伝えられるようになる。
【0052】
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す分解概略斜視図である。図7は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
【0053】
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91と、ユニット用シャフト91に相対回転不能且つ着脱可能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付けた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される。
【0054】
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(図6及び図7の下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。また、ユニット用シャフト91の下部側には、ユニット用シャフト91を直径方向に横断する溝91aが形成されている(例えば図6参照)。ユニット用シャフト91をブレード回転軸82の上から嵌め込んだ(被せた)場合に、ブレード回転軸82を水平に貫くピン(図示せず)が溝91aに係合し、ユニット用シャフト91をブレード回転軸82に相対回転不能に連結する。
【0055】
なお、図7(b)に示すように、ブレード回転軸82(破線で示す)の上面(略円形状)の中央部に設けられる凸部82aと係合するように、ユニット用シャフト91の上部側内面の中央部には凹部91bが形成されている。これにより、ユニット用シャフト91とブレード回転軸82との中心を合わせた状態で、ブレードユニット90をブレード回転軸82に容易に取り付けることができ、ブレードを回転する際に不要なガタツキ等が発生することを抑制できる。本実施形態では、ブレード回転軸82側に凸部82a、ユニット用シャフト91側に凹部91bを設ける構成としたが、これとは逆に、ブレード回転軸82側に凹部、ユニット用シャフト91側に凸部を設ける構成としても構わない。
【0056】
米粒粉砕用の粉砕ブレード(本発明の粉砕手段の実施形態)92は例えばステンレス鋼板によって形成され、その形状は例えば飛行機のプロペラのようになっている。粉砕ブレード92の中心部には、図6に示すように、平面視略矩形状の開口92aが形成されている。粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91の下部側から、開口92aにユニット用シャフト91を嵌め込むようにして取り付けられている。
【0057】
ユニット用シャフト91の下部側は、円柱の側面を削ったような形状となっており、下から見た場合に、粉砕ブレード92の開口92aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。また、この略矩形状部分(ユニット用シャフト91の下部側部分)のサイズは、開口92aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。ユニット用シャフト91の粉砕ブレード92より下側部分には抜け止め用のストッパ部材94が嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
【0058】
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面側から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aの外面には開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
【0059】
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bが収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
【0060】
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えばパン原料としてパン容器80に投入される水等の液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。
【0061】
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置された支軸100(図6参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。
【0062】
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定配置されている。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
【0063】
ここで、混練ブレード101の動作について説明する。混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに回転し、図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢と、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード101の下縁から垂下した突起101a(図5及び図6参照)がドーム状カバー93の上面に設けられた第1のストッパ部93bに当接し、混練ブレード101はそれ以上ドーム状カバー93に対し反時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。この折り畳み姿勢では、混練ブレード101の先端がドーム状カバー93から少し突き出している。
【0064】
この姿勢(図9(a)の状態)から混練ブレード101がドーム状カバー93に対して時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図9(b)に示す開き姿勢になると、混練ブレード101の先端はドーム状カバー93から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード101の開き角度は、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93c(図8参照)によって制限される。詳細は後述する第2係合体103b(支軸100に固定される)が第2のストッパ部93cに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード101は最大開き角度となる。
【0065】
なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。
【0066】
ところで、ユニット用シャフト91には、図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から嵌め込まれ、ストッパ部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態第では、第1係合体103aとシールカバー93との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
【0067】
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態第では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
【0068】
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。カバー用クラッチ103は、混練モータ50が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転となる。)において、ブレード回転軸82とドーム状カバー93を連結する。逆に、粉砕モータ60が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転となる。)では、カバー用クラッチ103はブレード回転軸82とドーム状カバー93の連結を切り離す。以下、このカバー用クラッチ103の動作について更に詳細に説明する。
【0069】
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ブレード回転軸82が正方向回転すると、第1係合体103aと第2係合体103bは係合し、ブレード回転軸82の回転動力がドーム状カバー93に伝達される。
【0070】
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
【0071】
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93dが形成される。窓93dは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93dが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0072】
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93dに対応して計4個のリブ93eが形成されている。各リブ93eはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93eは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0073】
また、ドーム状カバー93の下面には、着脱可能なガード106が取り付けられている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザが安心して使用できるように設けるのが好ましい。
【0074】
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパ部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁にはリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される米粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0075】
ガード106は、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
【0076】
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaにドーム状カバー93の外周に形成される突起93f(実施形態では、45°間隔で計8個配置されている)を係合することによって、ガード106はドーム状カバー106に取り付けられる。なお、溝106eaと突起93fはバヨネット結合を構成するように設けられている。
【0077】
自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)内に設ける構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
【0078】
また、本実施形態の自動製パン器1では、パン容器80に水等の液体が入れられるために、ユニット用シャフト91に対してドーム状カバー93を相対回転可能とするベアリング95に液体が入り込まないように、ベアリング95は密閉する必要がある。この点、自動製パン器1では、ベアリング95がドーム状カバー93に設けられる凹状の収容部931に収容されているために、ドーム状カバーの内面側にのみシール手段(シール材97及びシールカバー98)を設ければベアリング95を密閉できる。このため、ベアリング95の上下にシール手段を設ける必要がなく、ベアリング95のシール構造の小型化が図れる。このため、自動製パン器1では、焼き上がったパンの形状に対する悪影響(例えば、パンの底面が大きく凹む等)を抑制することが可能になる。
【0079】
図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図で、図10(a)は前面側から見た場合の図、図10(b)は背面側から見た場合の図である。なお、パン原料収納容器110が取り付けられた蓋40が閉じられた状態において、本体10前面側となる方をパン原料収納容器110の前面、本体10背面側となる方をパン原料収納容器110の背面としている(以下、同様)。また、図11は、本実施形態の自動製パン器が備える蓋の構成を示す概略図で、図11(a)は蓋を斜め下から見た場合の図、図11(b)は蓋を下から見た場合の図である。図12は、図11(b)のB−B位置における断面図である。
【0080】
自動製パン器1が備えるパン原料収納容器110は、大きくは、容器本体111と、容器本体111に対して回動可能に設けられて容器本体111の開口部111aを開閉する容器蓋112と、を備えている。
【0081】
容器本体111は、その断面形状が略矩形状(図12参照)の箱形部材である。この容器本体111は、その内部に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が付着するのを抑制できるように、静電気を帯び難い、例えばアルミニウムや鉄等の金属によって形成されている。なお、粉体パン原料が容器内に付着するのをできる限り抑制するために、容器本体111の内面にはシリコンやフッ素等で構成されるコーティング層を設けるのが好ましい。更に、容器本体111内面には、リベットやネジ等の突起物(凹凸)が形成されないようにし、容器本体111内面は滑らかな面となるようにするのが好ましい。
【0082】
容器本体111には、開口部111a側縁から外向きに突出する鍔部(フランジ部)111bが形成されている(図12参照)。この鍔部111bは、容器本体111の全周に形成されている。この鍔部111bには、例えばシリコンで構成されるパッキン113が固定されている。なお、このシリコン製のパッキン113は、本発明のシール部材の実施形態である。
【0083】
パッキン113の外観は、平面形状略額縁状となっており、鍔部111b全周に固定されている。より詳細には、パッキン113は、鍔部111bを上下から挟むように取り付けられる断面コの字状の部分と、この断面コの字状の部分から突出(図12において下方に突出)し、先端側が開口部111aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返される薄肉部を有する部分と、からなっている。
【0084】
なお、パッキン113が、開口部111aへとはみ出していると、容器本体111に収納されたパン原料がパッキン113に引っ掛かり易くなって、容器内にパン原料を残留させる原因となる。このような事態を避けるために、本実施形態においては、パッキン113は、開口部111aへとはみ出さないように容器本体111に取り付けられている。また、パッキン113を容器蓋112側に固定すると、パン原料収納容器110からパン容器80にパン原料を投入する際に、パン原料がパッキン113に引っ掛かってパン原料の投入量が不適切となるので、パッキン110は容器本体111側に固定されている。
【0085】
このパッキン113は、そのコの字状の部分を挟み込むようにして容器本体111に取り付けられる容器用カバー114によって容器本体111(鍔部111b)に固定されている。この容器用カバー114は、本発明の固定部材の実施形態である。容器用カバー114は詳細には2つのパーツで構成され、この2つのパーツがパッキン113と共に鍔部111bを挟み込むように配置された上でネジ留めされることによって、容器用カバー114によるパッキン113の固定が実現されている。なお、容器用カバー部材114は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等によって形成される。
【0086】
容器蓋112は、容器本体111の開口部111aよりやや面積が広く形成される略矩形状の金属プレートからなる。容器蓋112は、容器本体111と同様の理由(粉体パン原料の付着を抑制)で金属によって形成されている。また、容器本体111の場合と同様の理由で、その内面側(容器蓋112を閉じた状態を想定)にはシリコン等からなるコーティング層を形成するのが好ましい。
【0087】
容器蓋112は、その背面側両端部に設けられる取付部112aを、容器用カバー114の背面側両端部に設けられる蓋支持部114a(図10参照)に軸支することによって、回動可能に支持される。詳細には、容器蓋112は、本体容器111の長手方向と略平行な方向(図12において、紙面に対して垂直な方向)に延びる回転軸C2を中心として回動可能となっている。
【0088】
容器用カバー114には、パン原料収納容器110の前面側において、可動するロック部材115が取り付けられている。ロック部材115は、先端側がフック状に設けられて容器蓋112を外面(下面)側から支持可能なロック用フック部115aと、ロック用フック部115aから容器本体111の長手方向と略平行な方向に延びる腕部115bと、を有する構成となっている。
【0089】
腕部115bは、容器本体111の深さ方向と略平行な回転軸C1(図10(a)参照)を中心に回動可能に、容器用カバー114に軸支されている。腕部115bは、図示しない付勢部材によって、ロック用フック部115aが容器本体111側に向かうように付勢されている。このため、次のような手順で、ロック部材115によるロック状態(容器蓋112が容器本体111の開口部111aを閉じた状態(閉状態)を維持する状態)が得られる。
【0090】
まず、腕部115bに付勢方向に抗する力を付与して、ロック用フック部115aが開口部111aを覆う方向に回動される容器蓋112と当接しないようにする。そして、この状態で容器蓋112を、ロック用フック部115aによって外面側から支持できる位置まで回動し、腕部115bに付与していた力を解除する。すると、腕部115aが付勢部材の付勢力によって回動して、ロック用フック部115aが容器蓋112を外面側から支持するようになり、ロック状態(閉状態が維持された状態)が得られる。
【0091】
なお、ロック状態においては、容器蓋112の内面外周側がパッキン113と接触した状態で鍔部111bと重なり、開口部111aが完全に覆われた状態となる。このロック状態においては、パッキン113によって鍔部111bと容器蓋112との間がシールされているために、容器本体111内に外部から水分や埃等が入り込み難くなっている。
【0092】
また、このロック状態を解除して容器本体111の開口部111aを開いた状態とする場合には、腕部115bが付勢力に反して回動(回転軸C1を中心とする回動)するように外部から力を付与し、ロック用フック部115aによる容器蓋112の支持を解除すればよい。これにより、容器蓋112は重力によって回動し、開口部111aが開いた状態が得られる。
【0093】
本実施形態の自動製パン器1では、操作部20(図1参照)の下部側の本体10内に図示しない自動投入用ソレノイドが設けられている。このソレノイドが駆動すると、そのプランジャーが、蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10b(図1参照)から突出する。そして、突出したプランジャーが蓋40の側壁40aに設けられる可動部材46(図11(a)参照)を押圧する。押圧された可動部材46の動きによりロック部材115の腕部115bが押圧され、図示しない付勢部材の付勢力に反して腕部115bが回動する。これにより、ロック用フック部115aによる容器蓋112の支持が解除され、容器蓋112が重力によって回動し、開口部111aが開いた状態となるようになっている。
【0094】
この他に、容器用カバー114には、パン原料収納容器110を蓋40によって保持できるように、背面側に設けられる第1の係合部116と、前面側に設けられる(容器本体111を挟んで第1の係合部116とは反対側に設けられる)第2の係合部117と、が形成されている。この第1の係合部116及び第2の係合部117は、本発明の取付機構の実施形態である。
【0095】
第1の係合部116は、容器用カバー114の側面から外側に向けて突出する(図12において斜め上方に向けて突出する)第1の係合傾斜面116aを有する。この第1の係合部116は、背面側の両端部近傍に、それぞれ近接して2つずつ、計4つ設けられている。ただし、この係合部116の数、及び配置は一例であり、適宜変更してよい。
【0096】
第2の係合部117は、ハウジング部117aと、ハウジング部117aに、その一部が収容された取付用フック部117bと、を有する。取付用フック部117bは、ハウジング部117a内部に設けられる付勢部材17c(図12参照)によって、容器本体111の短手方向と略平行な方向外向き(図12において左向き)に付勢されている。また、取付用フック部17bは、付勢部材17cの付勢力に抗する方向(図12において右向き)に力を加えると、その方向に移動可能となっており、ハウジング部117aからの突出量が可変となっている。この取付用フック部117bは、本発明の可動式フック部の実施形態である。
【0097】
自動製パン器1の蓋40の内部にはフレーム部材42(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が収容され、このフレーム部材42は、蓋40の裏面側から内カバー43(例えば板金製)によって支持されている。フレーム部材42の、蓋40を閉状態とした場合において本体10の前面寄りとなる部分には、壁部42aによって囲まれた略矩形状(蓋40を裏面側から見た場合を想定)の貫通孔44が設けられている。壁部42aは、蓋40の上面側に配置される覗き窓41に当接して覗き窓41を支持する。
【0098】
このようにすると、覗き窓41から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子を見る場合に、壁部42aによって蓋40内部の構造が見えないようになるために、パン容器80内の様子をすっきりした状態で見ることができる。なお、本実施形態においては、デザイン面を考慮して、貫通孔44のサイズに比べて覗き窓41の方がかなり大きくなっている(この構成に限定される趣旨ではなく、例えば貫通孔44と覗き窓41は略同一サイズでもよい)。この構成の場合、壁部42aの外側において蓋40の内部構造が見えるが、例えば覗き窓41の上面の印刷処理によって、蓋40の内部構造が見えないようにできる。
【0099】
また、フレーム部材42には、蓋40を閉状態とした場合において本体10の背面寄りとなる部分に、ドーム状壁42bによって形成される凹部空間45が形成されている。この凹部空間45は、パン原料収納容器110を保持する保持部である。この保持部45内の前面(図12において左側)には、パン原料収納容器110が保持部45に保持された場合に、第2の係合部117の取付用フック部117bと係合する係合溝45aが形成されている。また、この保持部45内の背面(図12において右側)には、パン原料収納容器110が保持された場合に、第1の係合傾斜面116aと略平行となって当接する第2の係合傾斜面45bが形成されている。
【0100】
この保持部45内にパン原料収納容器110を収納する場合、ユーザは、第2の係合部117の取付用フック部117bがハウジング部117a内に引っ込む方向の力(付勢部材117cの付勢力に反する方向の力)を付与する。そして、取付用フック部117bのハウジング部117aからの突出量が減じられた状態で、パン原料収納容器110を第1の係合傾斜面116aが第2の係合傾斜面45bにぶつからないように斜めにして保持部45内に押し込む。その後、取付用フック部117bに加えていた力を抜いて、取付用フック部117bを突出させ、取付用フック部117bと係合溝45aとを係合させる。
【0101】
このようにして、パン原料収納容器110を保持部45に嵌め込むと、蓋40を閉状態とした場合において(図12の状態が該当)、第1の係合傾斜面116aと第2の係合傾斜面45bとが当接した状態となる。そして、パン原料収納容器110は、第2の係合傾斜面45bから鉛直方向上向き(図12の上向き)の力と、取付用フック部117bの係合溝45aへの係合が解除される方向と反対方向の力(図12の左向きの力)とを受けることになる。このため、保持部45内で、パン原料収納容器110は、取付用フック部117bと係合する係合溝45aと、第1の係合傾斜面116aに当接する第2の係合傾斜面45bと、によって支持され、保持部45に保持されることになる。
【0102】
なお、パン原料収納容器110を保持部45から取り外す場合には、取付用フック部117bをハウジング部117aに引っ込む方向に押圧して、取付用フック部117bと係合溝45aとの係合を解除する。そして、第1の係合傾斜面116aが第2の係合傾斜面45bによって邪魔されないように斜めに引き出せばよい。すなわち、ユーザは、取付用フック部117bの一部を押すだけで、簡単に、パン原料収納容器110の蓋40への取付及び取外しを行える。
【0103】
例えば、取付用フック部117bを有する第2の係合部117やロック部材115等を、容器用カバー114ではなく容器本体111に設ける場合、固定(リベット等を用いた固定)のために容器本体111内に凹凸が形成される可能性がある。この場合、粉体パン原料が収納される容器本体111内にパン原料が残留しやすくなって好ましくない。本実施形態の自動製パン器1では、容器用カバー114に第2の係合部117やロック部材115等を設ける構成としているので、このような問題を避けられる。
【0104】
図13は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図13に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置120によって行われる。制御装置120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory),I/O(Input/Output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置120は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置120には、時間計測機能、温度計測機能および電流検出機能が備えられており、パンの製造工程における時間・熱的な制御および電流負荷による制御が可能となっている。
【0105】
制御装置120には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路121と、粉砕モータ駆動回路122と、ヒータ駆動回路123と、第1のソレノイド駆動回路124と、第2のソレノイド駆動回路125と、が電気的に接続されている。
【0106】
混練モータ駆動回路121は、制御装置120からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路122は、制御装置120からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路123は、制御装置120からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路124は、制御装置120からの指令の下で、上述した、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路125は、制御装置120からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
【0107】
制御装置120は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路121を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路122を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路123を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路124を介して自動投入用ソレノイド16によるロック部材115の動作制御、第2のソレノイド駆動回路125を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0108】
次に、以上のように構成される自動製パン器1によってパンを製造する場合の自動製パン器1の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に自動製パン器1の動作を説明する。
【0109】
米粒を出発原料に用いる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図14は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図14に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0110】
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。そして、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
【0111】
また、ユーザは、パンの製造工程の途中で自動投入されるパン原料を計量してパン原料収納容器110の容器本体111に入れる。そして、収納すべきパン原料を容器本体111に収納したら、容器蓋112が容器本体111の開口部111aを閉じた状態として、ロック部材115によってロック状態とする。
【0112】
なお、パン原料収納容器110に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイーストが挙げられる。ただし、グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共にパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0113】
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器110を蓋40の保持部45に嵌め込む。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置120によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0114】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置120の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0115】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ31に通電して焼成室30の温度を高めるようにしてもよい。
【0116】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード92を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード92を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0117】
上記所定時間が経過すると、制御装置120の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。本実施形態の粉砕工程を模式したものを図15に示す。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転される。具体的には、制御装置120は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転させ、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92の高速回転を実行させる。
【0118】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置120は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。
【0119】
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もブレード回転軸82の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってドーム状カバー93の回転はすぐに阻止される。粉砕ブレード92を回転させるためのブレード回転軸82の回転に伴うドーム状カバー93の回転方向は、図9において反時計方向であり、混練ブレード101は、それまで折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合には、米粒と水が含まれる混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)に転じる。混練ブレード101が開き姿勢になると、カバー用クラッチ103は、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱するために、ブレード回転軸82とドーム状カバー93の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード101は図9(b)に示すように、パン容器80の内側壁に当るために、ドーム状カバー93の回転は阻止される。
【0120】
粉砕工程においては、粉砕がドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92の間でせん断されるので、効率良く粉砕できる。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93eによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕できる。
【0121】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物はリブ93eによって窓93dの方向に誘導されて、窓93dからドーム状カバー93の外に排出される。リブ93eは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93eの表面に対流しにくく、スムーズに窓93dの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入る。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
【0122】
このような機構により、粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。
【0123】
次にこの粉砕工程の制御動作を、図15を用いて具体的に説明する。図15に示しているように、粉砕工程では、粉砕ブレード92を回転させることにより水が浸み込んだ米粒を粉砕する時間(30秒)と、この時間に続く、粉砕ブレード92を回転させない時間(5分)とを1セットで、10回繰り返す。尚、最後のセットでは5分間の停止を行わないために、粉砕工程は約50分かけて行われる。
【0124】
このように粉砕工程では、粉砕ブレード92を間欠運転させている。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0125】
先ほど述べたように自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では約50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程における粉砕モータ60の負荷の大きさは、種々の要因によって大きく変動する。
【0126】
従来の装置では、負荷が大きすぎると、制御装置120が、粉砕モータ駆動回路122を介して粉砕モータ60から検出した電流値が或る閾値を超えた或いは電流値を検出しないと判定し、粉砕モータ60の駆動を停止させていた。そしてユーザに所定のエラーを報知した後、ユーザが調理中の材料を廃棄していた。しかしながら、粉砕工程がある程度進んだ状態では、このまま製パン動作を続けても、問題なく良好なパンが出来上がる場合が多い。
【0127】
本実施例装置では、このような問題を解決するために、モータに負荷がかかり過ぎて、モータの異常を検出した際に、粉砕工程がある程度進んでいれば(換言すれば、一定回数(或いは一定時間)以上の粉砕サイクルを実施していれば)、エラー報知せずにそのまま次の工程に進むことを特徴としている。
【0128】
図16は、本願発明のその特徴部分の動作を示すフロー図である。
【0129】
図16のS11ステップでは、制御装置120が、粉砕モータ駆動回路122から粉砕モータ60の駆動電流値を検出開始する。換言すれば、粉砕モータ駆動回路122が制御装置120に粉砕モータ60の駆動電流値を出力する。
【0130】
続くS12ステップでは、制御装置120が、S11ステップで受信開始した電流値の検出ができなくなったと判定すると、S13ステップへ処理を進め、そうでなければ製パンコースを続行する。尚、図示していないが、S12ステップでYの場合に、例えば、制御装置120が所定値以上の電流値を検出すると粉砕工程が終了したと判定し、次の練り工程に進む。又、S12ステップでNの場合には、粉砕モータの発熱により制御装置120が電流値を検出できずS13ステップへ処理を進める。
【0131】
S13ステップでは、粉砕工程が0サイクル目、すなわち粉砕モータが何らかの理由により故障状態になっていると制御装置120が判定すると、制御装置120は通常のエラーをユーザへ報知する。これはモータまたは電流検知手段の不良を考慮しているが、0サイクルも粉砕はできていないため、後ほど記載のエラー範囲に含めても良い。尚、粉砕工程のサイクル数は、粉砕と続く粉砕ブレード92を回転させない時間が1回経過する度に制御装置120が1サイクル終了したと判定し、図示しないフラッシュメモリ或いは制御装置120内部に搭載された記憶素子にそのサイクル数を記憶(カウント)していく。
【0132】
制御装置120は、カウントした粉砕回数が1以上と判定した場合には、S14ステップにおいて、制御装置120が、粉砕回数が所定回数(本実施例では6回)未満であるか否かを判定し、6回未満であると判定すると、制御装置120は、S17ステップにおいて異常をユーザに報知して製パンコースを終了させる。
【0133】
尚、この異常発生の要因は、周囲環境よりも、ユーザの計量失敗などによる場合が多い。このとき、米粒の粉砕状態および分量は一定の製パン性能を満たせる状態ではない可能性が高いため、材料を破棄した方が好ましい。
【0134】
S15ステップでは、制御装置120は、6サイクル以降では電動機の駆動波形を出力停止した上で、製パンコースを続行する。即ち、続く練り工程を自動的に実行する。尚、駆動波形は、温度保護装置の突然の復帰によって粉砕モータへ不本意な導通をさせないことが目的であるが、温度保護装置の復帰に時間がかかる場合などは、出力停止させなくとも良い。この制御より、ユーザに異常を報知して材料を破棄させるのではなく、製パンコースを続行する事で、一定以上の製パン性能を保ちつつ、調理成果物としてユーザへ提供することが可能となる。すなわち、ユーザの材料を無駄にすることがなくなる。
【0135】
尚、上述した各判定のサイクル数は、制御装置120に記憶している製パンコースごとに変えることが望ましい。これは、穀物粒の種類(例えば、玄米や雑穀入り米等)によって、サイクルごとの粉砕度合が変化するためである。
【0136】
又、このサイクル数は、粉砕工程ごとの温度による閾値または一定時間以内の温度上昇値等を持って判断を行っても良い。これは、モータの温度と、負荷(穀物粒等)の粉砕度合において相関を取ることが可能なためである。
【0137】
このように、図16に示す粉砕工程が終了すると、制御装置120の指令によって練り工程が開始される。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程を開始するようにしてもよい。
【0138】
練り工程の開始にあたって、制御装置120はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置120は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転させる。ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転し、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向(図9では時計方向)に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となると、カバー用クラッチ103の連結が生じ、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101は、ブレード回転軸82と一体となって正方向に回転する。
【0139】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0140】
混練ブレード101の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置120によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置120は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器110のロック部材115の腕部115bを回動させる。これにより、ロック用フック部115aが容器蓋112を支えた状態が解除され、容器蓋112が重力によって回動する。これにより、容器本体111の開口部111aが開かれて、例えば、グルテン、ドライイースといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
【0141】
上述のように、パン原料収納容器110は、パン原料が内部に残留し難いように工夫されているために、パン原料収納容器110にはパン原料がほとんど残ることなく、自動投入が完了できる。また、蓋40が閉じられた状態において、覗き窓41が前面側となり、パン原料収納容器110が背面側となるようになっており、パン原料収納容器110の容器蓋112は、背面側に向けて回動してその板状面が鉛直方向と略平行な状態(図12の状態)となる。このため、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われた後においても、覗き窓41を利用した、パン容器80内の様子の観察が行い難くなるということはない。
【0142】
なお、本実施形態では、パン原料収納容器110に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転した状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0143】
パン原料収納容器110に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(Dough)に練り上げられていく。混練ブレード101及び補完混練ブレード102が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93eも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93dから排出され、混練ブレード101及び補完混練ブレード102が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0144】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0145】
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106eb(図6参照)が上向きに傾斜しているから、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料が柱106eの前面で上方に跳ね上げられる。このために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0146】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では約15分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば前述したように、混練モータ50の負荷の大きさ(モータの電流検出量)を指標として、一定の練りサイクル数或いは時間によって終了を判断する構成等としても構わない。尚、負荷はモータの電流検出量のみならず、前述のように温度等でも構わない。
【0147】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0148】
又、練り工程においても、本実施例装置の粉砕工程と同様にある程度の練り工程が実行されていれば、制御装置120は、モータエラーを検出してもユーザにエラー報知せずに続く発酵工程を実行するように制御する。例えば、制御装置120が、モータからの電流検出値が所定レベルでないと判定した際に、混練ブレード101の回転数が所定回数を超えたか否かを判定し、所定回数回転していたと判定すると、エラー報知せずに次ぎの発酵工程を実行し、一方、所定回数回転していないと判定すると、エラー報知を行うように制御する。
【0149】
或いは、制御装置120は、混練工程の実行時間が所定時間を超えたか否かを判定し、所定時間を越えたと判定すると、エラー報知せずに次ぎの発酵工程を実行し、一方、所定時間を越えていないと判定すると、エラー報知を行うように制御するようにしても良い。
【0150】
練り工程が終了すると、制御装置120の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では約60分)放置される。
【0151】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101及び補完混練ブレード102を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0152】
発酵工程が終了すると、制御装置120の指令によって焼成工程が開始される。制御装置120はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0153】
なお、パンの底には混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残るが、ドーム状カバー93とガード106は凹部81の中に収容されるように形成しているために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことはない。
【0154】
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0155】
例えば、以上においては、自動製パン器1によって、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を示したが、自動製パン器1は例えば小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造することも可能である。そして、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、パン原料収納容器110はレーズンやナッツ等の具材入りパンを製造する場合の具材を入れるために用いることも可能である。また、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、粉砕ブレード92は不要であるために、以上に示したのとは異なるパン容器(混練ブレードのみがブレード回転軸に取り付けられる従来型のパン容器)を用いる(パン容器の使い分けを行う)ようにしても構わない。なお、本発明は、米粒を出発原料に用いてパンを製造することのみが行える自動製パン器にも、勿論適用できる。
【0156】
また、以上に示した実施形態においては、米粒を出発原料に用いる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作を説明した。しかし、本発明の自動製パン器は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒を出発原料に使用する場合にも適用可能である。
【0157】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0159】
1 自動製パン器
10 本体
50 混練モータ
60 粉砕モータ
80 パン容器
92 粉砕ブレード
110 パン原料収納容器
111 容器本体
120 制御装置
121 混練モータ駆動回路
122 粉砕モータ駆動回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、
前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、
前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了すると共に工程を開始するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動製パン器であり、
前記粉砕工程の進み具合は、前記粉砕ブレードによる穀物粒の粉砕回数又は粉砕時間であることを特徴とする自動製パン器。
【請求項4】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、
前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項5】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、
前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了すると共に次の工程を開始するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動製パン器であり、
前記練り工程の進み具合は、前記練りブレードによる穀物粒の練り回数又は練り時間であることを特徴とする自動製パン器。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のいずれかの自動製パン器であり、
前記モータの負荷は、モータに流れる電流値或いは、モータの温度であることを特徴とする自動製パン器。
【請求項1】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、
前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有する自動製パン器であり、
前記粉砕工程において、モータの負荷と前記粉砕工程の進み具合に基づいて、実行中の粉砕工程を終了すると共に工程を開始するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動製パン器であり、
前記粉砕工程の進み具合は、前記粉砕ブレードによる穀物粒の粉砕回数又は粉砕時間であることを特徴とする自動製パン器。
【請求項4】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、
前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項5】
穀物粒と液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程と、当該粉砕工程で得られた粉砕穀物粒と液体との混合物を生地原料に用いて練りブレードで生地に練り上げる練り工程と、を有する自動製パン器であり、
前記練り工程において、モータの負荷と前記練り工程の進み具合に基づいて、実行中の練り工程を終了すると共に次の工程を開始するか否かを判定することを特徴とする自動製パン器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動製パン器であり、
前記練り工程の進み具合は、前記練りブレードによる穀物粒の練り回数又は練り時間であることを特徴とする自動製パン器。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のいずれかの自動製パン器であり、
前記モータの負荷は、モータに流れる電流値或いは、モータの温度であることを特徴とする自動製パン器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−111230(P2013−111230A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259950(P2011−259950)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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