説明

自動製パン機

【課題】米を炊飯してできたごはんを使ってパンを作成するようにして、簡単にごはんを使ったおいしいパンができる自動製パン機を提供することを目的とする。
【解決手段】容器23に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作成する工程を有し、かつ、被調理材あるいは容器23近傍を冷却する送風ファン34を配設してある。そして、該機器で米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊飯したごはんを準備する必要がなく手軽に炊飯したごはんを製パンすることが出来、かつ、送風ファン34を有するので、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになるとともに製パンに要する時間の短縮を図ることが出来るようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で手軽にパンを焼くことができる自動製パン機に関して、米を被調理材に用いて米パンを自動的に製パンする自動製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから食パンや菓子パン等のパン作りは、温度管理が難しいイースト菌を必要とすること、さらに、捏ねを十分に行わなければ出来映えの良いものが得られず、業務用の製パン機に頼っていた。
【0003】
例えば、パン作りの一連の工程は、先ず、水を始めとして、小麦粉、塩、砂糖、スキムミルク、シヨートニングのミックス粉と、ドライイーストを水に触れないようにしてパンケース内に投入した後、それぞれの材料を十分に混合する捏ね工程と、その後、捏ね上った生地を休めて25〜32度程度に加温して発酵させて膨らませる一次発酵工程と、その後、生地を僅かの時間、捏ねて生地中の余分なガス(気泡)を抜くガス抜き工程と、その後、生地内に残ったガスをつぶさないようにして成形する生地丸め工程と、さらにその後、生地を1時間程度休ませて発酵させる二次発酵工程と、その後160〜180度で焼く焼成工程とから構成されており、これらの工程を順序よく進めなければならない。
【0004】
そこで、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行する自動製パン機ができ、一般家庭で手軽にパンを焼くことができる自動製パン機が世の中に普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図7は、特許文献1に記載された自動製パン機のレーズン入り食パンの調理工程図である。図7に示すように、従来の自動製パン機は、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて、自動的に実行するようになっていて、一般家庭で手軽にパンを焼くことができるようになっている。
【0006】
また、低コストで取り扱いが簡単な製パン機能付き炊飯器も考えられた(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図8は、特許文献2に記載された製パン機能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図である。
【0008】
図8に示すように、製パン機能付き炊飯器によれば、容器1は加熱室2内に着脱自在に設けられ、容器1の開口部は内蓋3によって選択的に塞ぐことが可能となり、練り羽根4はモータと制御部とによって選択的に回転される。そのため、内蓋3を付すことで容器1を密封して炊飯を行うことができ、内蓋3を取り外した状態で練り羽根4を回転させて製パンを行うことができる。
【0009】
従って、容器1を共通にして炊飯と製パンを行うことができるので、コスト的に有利である。また、容器1を加熱室2から取り外して洗浄作業、洗米を入れる作業などを行うことができるとともに、容器1を加熱室2に入れるだけで係合部を介して練り羽根4とモータとの連結が行われるので、取り扱いが簡単である。
【0010】
さらに、近年、食生活の欧米化、消費者の嗜好の変化等により米の消費量が低迷してきていることから、この低迷に歯止めをかけ、より米の消費量の増大を図る取り組みが推進されている。
【0011】
その推進策として、米を主原料としたこれまでの加工食品、例えば、餅、煎餅、団子等以外にも広げるべく、米を主原料にした製パン技術が開発され、米粉パンが市販されている。
【0012】
この米粉パンは、小麦粉パンに比べて、含有水分量が多く、しっとりした重みと良好な感触が得られ、また餅のように喉に詰まる恐れが少なく、更に少量を食するだけで満腹感が得られることから、消費者間で人気を博しており、更にまた、小麦粉を混入しない米粉パンは、小麦アレルギーを持つ消費者にとって待望された食材となってきている。
【0013】
そこで、より簡易に米粉パンができるように、米粉を入手しなくても、自動製パン機で、家庭にある米をそのまま粉砕してパンにする装置が考えられた(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
図9は、特許文献3に記載された従来の生地製造器の断面図、図10は、特許文献3に記載された従来の加熱調理食品生地製造工程の全体フローチャートである。
【0015】
図10に示すように、加熱調理食品生地製造方法は、所定量の穀物粒と所定量の液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程#20と、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程#30からなる。
【0016】
そして、穀物粒からパン用の生地を製造するときは、図9に示すように生地製造器11を次のように用いる。蓋12を外し、容器13の中に所定量の穀物粒と所定量の液体を入れた後、再び蓋12を嵌め込んで、粉砕前含浸工程#10を実行する。
【0017】
粉砕前含浸工程#10の間、加熱手段14で容器13を加熱し、液体(この場合は水)の温度を上げると含浸が進む。粉砕前含浸工程#10の最初でブレード15を回転させ、その後も時々ブレード15を回転させて穀物粒の表面に傷をつけると、穀物粒の吸液が促され、含浸を早く完了させることができる。
【0018】
粉砕工程#20に入ったらブレード15を高速回転させ、穀物粒を粉砕する。これにより、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料が形成される。練り工程#30ではブレード15を低速回転させ、生地原料を捏ねて一つにつながった生地を練り上げる。
【0019】
練り工程#30の冒頭で蓋12を開け、所定量のグルテンと、必要に応じ所定量の調味材料を生地原料に投入する。蓋12を閉じ、ブレード15を低速回転させて、生地原料及びそれに投入されたグルテンや調味材料を混練する。この過程で生地の温度が上昇するので、後に投入される発泡誘起材料がドライイーストである場合には、適当なタイミングで冷却手段16により容器13を冷却し、中の生地を冷やす。
【0020】
なお、冷却の場合も加熱の場合も、容器13の温度を温度センサ17で監視し、正確な温度が得られるようにする。
【0021】
発泡誘起材料を投入する時機になったら、蓋12を開けて生地に所定量の発泡誘起材料を投入する。蓋12を閉め、ブレード15を低速回転させて生地と発泡誘起材料を混練し、生地を完成させる。
【0022】
その後、生地を容器13から取り出して、あるいは生地を容器13に入れたままで、生地の発泡が進むのを待つ。所望の発泡を得られたら生地をパン焼き装置に入れ、パンを焼
く。
【0023】
このように、同一の容器13内で粉砕前含浸工程#10から練り工程#30まで進行させることにより、ある工程から他の工程に移行する際に内容物を別の容器に移し替える必要がなく、時間を短縮できる。また、穀物粒や生地原料の一部が前の工程で使用した容器の内面に残り、少しずつ目減りするという問題もなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2002−360441号公報
【特許文献2】特開2008−18122号公報
【特許文献3】特開2010−35475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、特許文献1で用いられるパンの材料は、小麦粉を主原料とするものを主としてあり、特に、米を材料として改善されたものではなく、また、特許文献2では炊飯機能は有するものの、特許文献1と同様に、製パンに関しては米を材料として改善されたものではない。
【0026】
さらに、特許文献3では、米粉を入手しなくても、より簡易に米粉パンができるように、製粉工程を経ることなく穀物粒(具体的には米粒)から加熱調理食品生地を製造する方法として、所定量の穀物粒と所定量の液体の混合物の中で粉砕ブレード15を回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程を有するようになっているが、所定量の穀物粒を粉砕するようになっているため、どうしても、粉砕に関する課題を生じてしまっていた。
【0027】
そして、粉砕に関する課題としては、液体の混合物の中で粉砕ブレード15を回転させて穀物粒を粉砕して微細粒とするためには、非常に多くの時間を要してしまうとともに、粉砕ブレード15を回転させて穀物粒を粉砕するときには、非常に大きな音が伴い、夜間に穀物粒を粉砕することがためらわれるという心配もあった。
【0028】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、該機器で米を炊飯してできたごはんを使ってパンを作成するようにして、簡単にごはんを使ったおいしいパンができる自動製パン機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動製パン機は、被調理材を収容する着脱自在の容器と、前記容器を収納する焼成室と、前記焼成室内に位置し、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、前記容器にイースト菌などの前記被調理材の残りを投入してパンを作成する工程を有し、かつ、前記被調理材あるいは前記容器近傍を冷却する冷却手段を配設した構成としてある。
【0030】
また、前記冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成
としてある。
【0031】
そして、容器に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れるようになる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にごはんを使ったおいしいパンができるようになる。
【0032】
さらに、本自動製パン機で米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊飯したごはんを準備する必要がなく手軽に炊飯したごはんを製パンすることが出来る。
【0033】
ここで、炊飯したごはんは水分量が多く、ごはんを準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ごはんに含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、べたっとしたものになったりする心配もある。
【0034】
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、製パンに適した炊飯条件で作成したごはんが得られ、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0035】
特に、米を炊飯してできたごはんに米粉を被調理材として用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の炊飯・捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0036】
また、容器を冷却する冷却手段を配設してあるので、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜冷却手段を作動することで、炊飯してごはんを炊くときにその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、炊飯したごはんを冷ます時間の短縮を図ることが出来るようになる。つまり、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになる。
【0037】
特に、パンをふくらませる働きをするイースト菌は、4℃以下になると活動が停止し60℃以上で死滅し、27℃〜30℃が活発に働く温度として、一次発酵に丁度よい温度で、再発酵(仕上げ発酵)させる時は35℃〜38℃とやや高めで発酵させるようになっており、温度管理が必要で、炊飯した直後のごはんは温度が高いため、イースト菌を投入することが出来ない。
【0038】
ここで、冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯したごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、炊飯したごはんの温度を適正な温度に素早く下げることが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の自動製パン機は、米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊
飯したごはんを準備する必要がなく、手軽に炊飯したごはんで、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0040】
また、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮が図れると共に、静音化が図れるようになる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にごはんを使ったおいしいパンができるようになる。
【0041】
さらに、冷却手段を有するので、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになるとともに製パンに要する時間の短縮を図ることが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の要部断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の制御ブロック図
【図3】本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作部の表示例を示す平面図
【図4】本発明の第1の実施の形態における小麦粉を主とした従来のパンの工程図
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるごはんを用いて作成するパンの工程図
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるごはんを用いて作成するパンの工程のフロー図
【図7】従来における自動製パン機のレーズン入り食パンの調理工程図
【図8】従来における製パン機能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図
【図9】従来における生地製造器の断面図
【図10】従来における加熱調理食品生地製造工程の全体フロー図
【発明を実施するための形態】
【0043】
第1の発明の自動製パン機は、被調理材を収容する着脱自在の容器と、前記容器を収納する焼成室と、前記焼成室内に位置し、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、前記容器にイースト菌などの前記被調理材の残りを投入してパンを作成する工程を有し、かつ、前記被調理材あるいは前記容器近傍を冷却する冷却手段を配設した構成としてある。
【0044】
これによって、米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊飯したごはんを準備する必要がなく、手軽に炊飯したごはんで、できあがりが安定した製パンができるようになる。
【0045】
また、第2の発明の自動製パン機は、特に、第1の発明の冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてある。
【0046】
これによって、容器に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れるようになる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪
くなる心配もなく、簡単にごはんを使ったおいしいパンができるようになる。
【0047】
さらに、該機器で米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊飯したごはんを準備する必要がなく手軽に炊飯したごはんを製パンすることが出来る。
【0048】
ここで、炊飯したごはんは水分量が多く、ごはんを準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ごはんに含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、べたっとしたものになったりする心配もある。
【0049】
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、製パンに適した炊飯条件で作成したごはんが得られ、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0050】
特に、米を炊飯してできたごはんに米粉を被調理材として用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の炊飯・捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことでできあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0051】
また、被調理材あるいは容器近傍を冷却する冷却手段を配設してあるので、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜冷却手段を作動することで、炊飯してごはんを炊くときにその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、炊飯したごはんを冷ます時間の短縮を図ることが出来るようになる。つまり、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになる。
【0052】
特に、パンをふくらませる働きをするイースト菌は、4℃以下になると活動が停止し60℃以上で死滅し、27℃〜30℃が活発に働く温度として、一次発酵に丁度よい温度で、再発酵(仕上げ発酵)させる時は35℃〜38℃とやや高めで発酵させるようになっており、温度管理が必要で、炊飯した直後のごはんは温度が高いため、イースト菌を投入することが出来ない。
【0053】
ここで、冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯したごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、炊飯したごはんの温度を適正な温度に素早く下げることが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
【0054】
第3の発明の自動製パン機は、特に、第1または第2の発明の前記冷却手段は、前記焼成室に配設した吸い込み口から吸引して該機器本体外へ排出する送風ファンで構成してある。
【0055】
これによって、冷却手段は、前記容器の上部に位置し焼成室に配設した吸い込み口から吸引して該機器本体外へ排出する送風ファンで構成してあるので、加熱手段で加熱された容器および近傍の熱を効率よく排出すると同時に、容器内の被調理材から生じる水分を取り去ることが出来、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節や、水分調整をするこ
とが出来るようになる。
【0056】
例えば、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜冷却手段を作動することで、炊飯してごはんを炊くときにその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、炊飯したごはんを冷ます時間の短縮、あるいは、炊飯したごはんの水分を蒸発の促進を図ることが出来るようになる。つまり、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節や、水分調整をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになる。
【0057】
第4の発明の自動製パン機は、特に第1〜3のいずれか1つの発明の冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成する間の一部あるいは全部の期間を作動させる構成としてある。
【0058】
これによって、生米と水を投入し、炊飯してごはんを作成する炊飯時の熱が容器の上部に上がって高温となって、イースト菌などの前記被調理材の残りを投入するまでの間にイースト菌などが劣化・死滅する心配があるが、容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成する間の一部あるいは全部の期間を作動させる構成としてあるので、加熱手段で加熱される容器および近傍を冷却されて、結果、イースト菌などを劣化させないようにすることが出来るようになる。
【0059】
第5の発明の自動製パン機は、特に第1〜4のいずれか1つの発明の冷却手段は、パンを作成する工程のねり、または、発酵、ねかし、そして、焼成の間の一部あるいは全部の期間に作動させる構成としてある。
【0060】
これによって、パンを作成する工程のねり、または、発酵、ねかし、そして、焼成の間の一部あるいは全部の期間に作動させる構成としてあるので、加熱手段と合わせて細やかな温度調整出来るようになるとともにパンを作成する工程時にパン生地の余分な水分を蒸発させて、水分調整ができるようになる。
【0061】
ここで、米のでん粉粒は非常に小さく、小麦粉でん粉の約七分の一程度の粒径のため表面積が広く水分の吸収率が高い特徴があり、パンを作るにはグルテンがある程度は水を吸収することが必要なめ、小麦粉だけに比べて米を用いた場合は水分量の多い生地を作成するようになる。
【0062】
しかしながら、水分が多すぎる生地は、発酵してもスポンジ状にならずに団子状となり、焼いても膨らみが悪く変形しやすく、べとついたパンになり易くなる心配があるが、冷却手段を作動させて、パン生地の余分な水分を積極的に蒸発させることで、水分調整ができ、製パン性の向上が図れる。
【0063】
第6の発明の自動製パン機は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明において、容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、撹拌手段で被調理材を撹拌するようにした構成としてある。
【0064】
これによって、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、撹拌手段で被調理材を撹拌するようにした構成としてあるので、生米と水の状態で攪拌することで、生米の吸水を早く均一にすることができ、また、炊飯中に攪拌することで、温度分布を平均にすることができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができ、そして、製パンに適した条件で炊飯時間を短縮することが出来るようになる。
【0065】
第7の発明の自動製パン機は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明において、容器に
前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度で加熱するようにした構成としてある。
【0066】
これによって、容器に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度で加熱するようにしてあるので、炊飯時の加熱量を小さくでき、該機器の機体温度の上昇を抑えることが出来るようになる。そして、冷却は必要となるが、製パン時に用いるイースト菌を該機器の機体内に保管することが容易にできるようになるとともに、炊飯時から製パンに至るときに必要な冷却期間を短縮することができる。
【0067】
ここで、製パン時に用いるイースト菌は、温度が27〜36℃でイーストが最も活動的になり、60℃以上で死滅するため、製パン時はパンを焼成する前までつまり、イースト菌の保管、捏ね、発酵期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、炊飯時の加熱量を小さくすることで、イースト菌の冷却保管を容易にして、イースト菌の冷却手段を簡易とすることができ、イースト菌の温度管理が容易となり、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0068】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0069】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の制御ブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作部の表示例を示す平面図、図4は本発明の第1の実施の形態における小麦粉を主とした従来のパンの工程図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるごはんを用いて作成するパンの工程図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるごはんを用いて作成するパンの工程のフロー図である。
【0070】
図1、図2に示すように、本実施の形態における自動製パン機は、機器本体21内部に設けた焼成室22と、焼成室22内に着脱自在に収納され被調理材を収容する容器(焼成ケース)23が配設してある。この容器23内には被調理材を攪拌する撹拌手段の練り羽根24が設けてあり、製パン中または炊飯時において練り羽根24により被調理材を攪拌するようになっている。
【0071】
また、機器本体21の上部には開口部を覆う開閉自在な外蓋25が設けてあり、焼成室22内の下方の容器23の外周に位置して外周部より容器23を加熱する加熱手段26が設けてある。
【0072】
そして、容器23の温度を検知して被調理材の温度を間接的に検出する温度検出手段27が容器23に当接して設けてあり、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、機器本体21上部に配設した操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、制御部29によって前記加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し前記被調理材の炊飯あるいは混合から焼成までを自動的に行うようになっている。
【0073】
なお、機器本体21の上部の外蓋25の内部には、イースト菌を自動投入するイースト菌自動投入器30と、小麦粉などの粉を投入する粉自動投入器31と、具材を投入する具材自動投入器32が配設してあり、さらに、容器23の上部に位置し焼成室22に配設した吸い込み口33から吸引して該機器本体21外へ排出する送風ファン34が設けてあり、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、所定のシーケンスで適宜、送風ファン34を作動するようにしてある。
【0074】
また、粉自動投入器31には、粉が固まって落ちにくいので、粉自動投入器31に接して振動を与えて粉を落としやすいようにバイブレーター35が設けてあり、この粉自動投入器31は炊飯したごはんを用いて作成するパンの工程の炊飯時に、一所に炊くことのできない小麦粉や上新粉あるいは餅粉などの被調理材をあとから投入する必要性があるものを、適切な投入時期に自動的に投入するものである。
【0075】
さらに、該機器の雰囲気温度などの影響で温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より低いときは、加熱手段26で加熱するとともに、温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より高いときは、被調理材の発酵時間を短縮するなど、温度検出手段27で検出する温度によって調整するようにしてある。
【0076】
そしてまた、図3に示すように、操作部28には、小麦粉を主とした従来のパンの工程と、炊飯したごはんを用いて作成するパンの工程を選択する工程選択手段36と表示部37が設けてあり、表示部37に工程毎の設定内容を表示し、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどのそれぞれの工程に共通のメニューと、上記工程の単独メニューを表示してメニュー選択手段38で選べるようになっている。
【0077】
さらに、操作部28には、炊飯したごはんを用いて作成するパンの工程のときに、該機器で炊飯する米量を設定するごはん量設定手段39と、できあがりのパンのごはんの含有割合を変化させるが割合選択手段40が設けてあり、ごはん量設定手段39で設定されたごはんの量と割合選択手段40で選択された含有割合に基づき、ごはん以外の使用する前記被調理材の量を表示部37に表示するようになっている。
【0078】
また、操作部28には、パン工程を開始させるスタートボタン41が配設してあり、上述の設定した条件で、パン工程を開始させるようになっている。
【0079】
以上のように構成された自動製パン機について、それぞれの工程のパンの作成について動作、作用を説明する。
【0080】
まず、小麦粉を主とした従来のパンの工程についてすると、図4に示すように、はじめに操作部28で小麦粉を主とした従来のパンの工程を選択して(ステップ101)、表示部37に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは小麦粉を主とした従来のパンの個別のメニューを表示して(ステップ102)、メニュー選択手段38で選択する(ステップ103)。
【0081】
つぎに、選択された内容に基づき表示部37に必要な具材の量を表示して(ステップ104)、使用者が確認して小麦粉や、イースト菌などの具材を該機器にセットし(ステップ105)、準備が完了したら、スタートボタン41を押して、該機器の製パンを開始させる(ステップ106)。該機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、小麦粉を主とした従来のパンを作成する(ステップ107)。ここでは、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略する。
【0082】
つぎに、炊飯したごはんを用いて作成する代表的なパンの工程について説明すると、図5に示すように、はじめに操作部28で炊飯したごはんを用いて作成するパンの工程を選択して(ステップ201)、つぎに、ごはん量設定手段39で該機器で炊飯する米量を設定する(ステップ202)とともに、割合選択手段40でできあがりのパンのごはんの含有割合を選択する(ステップ203)。
【0083】
つぎに、表示部37に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは炊飯したごはんを用いて作成するパンの個別のメニューを表示して(ステップ204)、メニュー選択手段38で選択する(ステップ205)。
【0084】
つぎに、選択された内容に基づき表示部37に必要な具材の量を表示して(ステップ206)、使用者が確認して容器23に水と米を所定量投入するとともに、イースト菌自動投入器30にイースト菌を、粉自動投入器31にグルテン、小麦粉等の粉品を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ207)、準備が完了したら、スタートボタン41を押して、該機器の製パンを開始させる(ステップ208)。該機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、炊飯したごはんを用いたパンを作成する(ステップ209)。
【0085】
ここで、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げの炊飯と製パンのフローは、図6に示すように、ステップ211で炊飯する。このとき、練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、炊飯のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてある(詳細の炊飯のシーケンスについては省略する)。
【0086】
また、この炊飯中には、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内の炊飯中の蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21の外へ排出する様になっている。
【0087】
そして炊飯終了すると、ステップ212で練り羽根24で練り、ステップ213で粉自動投入器31で小麦粉等の粉品を投入して、ステップ214で練りを行い炊飯したごはんと小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ212およびステップ214の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内のごはんの蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21の外へ排出して、炊飯したごはんをイースト菌の最も活動的する温度に冷却していくようになっている。尚、ステップ213の小麦粉等の粉品を投入時には、送風ファン34を停止して、送風ファン34の吸い込み口33に小麦粉等の粉品が入らないようにしてある。
【0088】
つぎに、ステップ215で、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入するとともに、ステップ216で、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入したのち、ステップ217で、第3練りを行い、ステップ218で炊飯したごはんと小麦粉等の粉品の混合品のねかしをし、そして、ステップ219で焼き上げる。さらにこのとき、ステップ217およびステップ218の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内のパン生地の水分を含む温度の高い空気を該機器本体21の外へ排出して、焼成中のパン生地の水分の微調整をおこなうようになっている。
【0089】
尚、ステップ215のイースト菌およびステップ216のレーズン等の具材を投入時には、送風ファン34を停止して、送風ファン34の吸い込み口33にイースト菌およびレーズン等の具材が入らないようにしてある。ステップ220で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
【0090】
そして、上述の炊飯したごはんを用いて作成するパンの工程で作成したパンは、添加する小麦粉やグルテン等の添加する割合にもよるが、実験によれば、ごはんと例えば小麦粉の割合が50%程度まであれば、小麦粉を主とした従来のパンの工程で作成したものとほぼ同等の膨らみが得られ、もちもちとした食感で、よりおいしく感じられた。
【0091】
そして、容器23に被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れるようになる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にごはんを使ったおいしいパンができるようになる。
【0092】
さらに、該機器で米を炊飯してできたごはんを被調理材として用いるので、炊飯したごはんを準備する必要がなく手軽に炊飯したごはんを製パンすることが出来る。
【0093】
ここで、炊飯したごはんは水分量が多く、ごはんを準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ごはんに含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、べたっとしたものになったりする心配もある。
【0094】
例えば、ごはんに含まれる水分量は一般に約60%で、これがおかゆになると約85%、おもゆでは約90%、餅では約40〜45%、赤飯では約45〜48%となり炊き方でいろいろ変化し、これが、大気に放置されたり、冷凍することで、水分が飛んでしまい、水分量がばらついてしまう心配がある。特に、ごはんに含まれる水分量が冷ます状態で置かれ、赤飯程度の水分量になったとすると、ごはん160gに対し後者の乾燥したごはんだと145gとなり、水分量は15gも少なくなってしまう。
【0095】
また、ごはん160gに相当する米を水分量を多くしすぎて炊飯してしまい、例えば10%多めになると、ごはん170gになってしまい水分量は15gも多くなってしまう。そして、レシピでごはん200gを用いるとした場合に、乾燥したごはんでは水分量が約62g、水分が10%多めのごはんでは水分量が約82gとなり、水分量が20gも大きく変化して、これを同じ条件でパンにすると、膨らみが悪くなったり、練り不十分で不均一のものができ、パンのできの悪いものが出来てしまう心配があった。
【0096】
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、製パンに適した炊飯条件で作成したごはんが得られ、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0097】
尚、上述のごはんは、水分量の多い粥状のものでも、また、水分量の少ないおこわ状のものでもまた、普通のごはんの水分量のものでもよく、目的のパンに適した水分量となるように用いるようにすればよい。
【0098】
さらに、米を炊飯してできたごはんに米粉を被調理材として用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことでできあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0099】
そして、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作成する工程と、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作成する工程と、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、被調理材の残りにグルテンを含まない被調理材を用いてグ
ルテンを含まないパンを作成する工程を選択するメニュー選択手段38を有するので、それぞれの工程で作成したパンを使用者が簡単に選択でき、使用者の好みにあったパンを手軽に製パン出来るようになる。
【0100】
特に、それぞれの工程で作成したパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンが出来るので、メニュー選択手段38で炊飯したごはんを用いて作成するパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことが出来、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器を提供できるようになる。
【0101】
さらに、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、練り羽根24で被調理材を撹拌するようにした構成としてあるので、生米と水の状態で攪拌することで、生米の吸水を早く均一にすることができ、また、炊飯中に攪拌することで、温度分布を平均にすることができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができ、そして、製パンに適した条件で炊飯時間を短縮することが出来るとともに、次ステップの練りにスムーズに移行でき、練り時間を短縮することができるようになる。
【0102】
また、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(α化温度近傍、具体的には60〜65℃)で加熱するようにしてあるので、炊飯時の加熱量を小さくでき、該機器の機体温度の上昇を抑えることが出来るようになる。そして、冷却は必要となるが、製パン時に用いるイースト菌を該機器の機体内に保管することが容易にできるようになるとともに、炊飯時から製パンに至るときに必要な冷却期間を短縮することができる。
【0103】
ここで、製パン時に用いるイースト菌は、温度が27〜36℃でイーストが最も活動的になり、60℃以上で死滅するため、製パン時はパンを焼成する前までつまり、イースト菌の保管、捏ね、発酵期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、炊飯時の加熱量を小さくすることで、イースト菌の冷却保管を容易にして、イースト菌の冷却手段を簡易とすることができ、イースト菌の温度管理が容易となり、できあがりが安定した炊飯したごはんの製パンができるようになる。
【0104】
このように、炊飯中の攪拌と炊飯中の温度をα化温度近傍で加熱することを組み合わせてあるので、より、炊飯時間の短縮化が図れるようになる。
【0105】
また、被調理材あるいは容器23近傍を冷却する送風ファン34を配設してあるので、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜、送風ファン34を作動することで、炊飯してごはんを炊くときにその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、炊飯したごはんを冷ます時間の短縮を図ることが出来るようになる。つまり、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになる。
【0106】
特に、パンをふくらませる働きをするイースト菌は、4℃以下になると活動が停止し60℃以上で死滅し、27℃〜30℃が活発に働く温度として、一次発酵に丁度よい温度で、再発酵(仕上げ発酵)させる時は35℃〜38℃とやや高めで発酵させるようになっており、温度管理が必要で、炊飯した直後のごはんは温度が高いため、イースト菌を投入することが出来ない。
【0107】
ここで、送風ファン34は、前記容器23に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯したごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するように
した構成としてあるので、炊飯したごはんの温度を適正な温度に素早く下げることが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
【0108】
また、送風ファン34は、前記容器23の上部に位置し焼成室22に配設した吸い込み口33から吸引して該機器本体21の外へ排出する送風ファン34で構成してあるので、加熱手段で加熱された容器23および近傍の熱を効率よく排出すると同時に、容器23内の被調理材から生じる水分を取り去ることが出来、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節や、水分調整をすることが出来るようになる。
【0109】
例えば、炊飯してごはんを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜、送風ファン34を作動することで、炊飯してごはんを炊くときにその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、炊飯したごはんを冷ます時間の短縮、あるいは、炊飯したごはんの水分を蒸発の促進を図ることが出来るようになる。つまり、炊飯したごはんから製パンするときの温度調節や、水分調整をすることが出来、より炊飯したごはんの製パンを向上させることができるようになる。
【0110】
尚、吸い込み口33は、特に、撹拌手段で被調理材を撹拌するときに、被調理材の一部が飛び跳ねたり、炊飯時の沸騰による飛び跳ねなどを生じる心配があるため、周囲からのごはんなどの異物が入らないように、金網やパンチングなどの遮蔽構造を配設したり、上部から覆うように配設した上遮蔽板の内側に下方から覆うように配設した下遮蔽板を配設して迂回路を設けてもよい。
【0111】
そして、生米と水を投入し炊飯してごはんを作成する炊飯時の熱が容器23の上部に上がって高温となって、イースト菌などの前記被調理材の残りを投入するまでの間にイースト菌などが劣化・死滅する心配があるが、容器23に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成する間の一部あるいは全部の期間を作動させる構成としてあるので、加熱手段で加熱される容器23および近傍を冷却されて、結果、イースト菌などを劣化させないようにすることが出来るようになる。
【0112】
そして、パンを作成する工程のねり、または、発酵、ねかし、そして、焼成の間の一部あるいは全部の期間に作動させる構成としてあるので、加熱手段と合わせて細やかな温度調整が出来るようになるとともに、パンを作成する工程時にパン生地の余分な水分を蒸発させて、水分調整ができるようになる。
【0113】
ここで、米のでん粉粒は非常に小さく、小麦粉でん粉の約七分の一程度の粒径のため表面積が広く水分の吸収率が高い特徴があり、パンを作るにはグルテンがある程度は水を吸収することが必要なため、小麦粉だけに比べて米を用いた場合は水分量の多い生地を作成するようになる。
【0114】
しかしながら、水分が多すぎる生地は、発酵してもスポンジ状にならずに団子状となり、焼いても膨らみが悪く変形しやすく、べとついたパンになり易くなる心配があるが、送風ファン34を作動させて、パン生地の余分な水分を積極的に蒸発させることで、水分調整ができ、製パン性の向上が図れる。
【0115】
なお、本実施の形態においては、炊飯中には、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内の炊飯中の蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21の外へ排出する様にしたが、これは、送風ファン34は加熱手段で容器23を加熱の開始当初の温度の低い期間は作動しないようにしてもよく、また、被調理材や容器23あるいはイースト菌の温度に対応して、送風ファン34の入り・切りや能力などの作動状態を調整するようにしてもよい。
【0116】
また、炊飯したごはんを被調理材として用いてパンを作成する場合は、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作成する場合より、パンの膨らみが少なく、また、炊飯したごはんの量や被調理材などの量を調整して、容器23のパンを作成したときのパンの体積が少なくて、容器23の上部まで達してないと、どうしても、パン焼成時のパン上面への熱の伝わり方が不十分となりやすい。
【0117】
そこで、容器23の上方にできあがるパンの天面を加熱する第2加熱手段を配設するか、あるいは、容器23の上方に加熱手段26の熱を反射させる反射板を配設するようにしてもよい。
【0118】
これによれば、パンの膨らみが十分でない場合でも、容器23の側面からの加熱に加えて、容器23の上方から加熱されるので、パン焼成時にパン上面が加熱されやすくなり、パン上面の焼きムラが低減されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本発明の自動製パン機は、上記実施の形態に示した構成に限定されず種々の形態のものに適用できるものであり、小麦粉を主とした従来のパンを作成できない装置で炊飯したごはんで製パンする装置や、小麦粉を主とした従来のパンも作成でき炊飯したごはんで製パン出来る装置、などの用途に有効である。
【符号の説明】
【0120】
22 焼成室
23 容器
24 練り羽根(攪拌手段)
26 加熱手段
27 温度検出手段
28 操作部
29 制御部(制御手段)
33 吸い込み口
34 送風ファン(冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理材を収容する着脱自在の容器と、
前記容器を収納する焼成室と、
前記焼成室内に位置し、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、
前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、
操作条件を設定する操作部と、
前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、
前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成したものに、前記容器にイースト菌などの前記被調理材の残りを投入してパンを作成する工程を有し、かつ、前記被調理材あるいは前記容器近傍を冷却する冷却手段を配設した自動製パン機。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、炊飯して作成したごはんの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記焼成室に配設した吸い込み口から吸引して該機器本体外へ排出する送風ファンとした請求項1または2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し炊飯してごはんを作成する間の一部あるいは全部の期間に作動させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項5】
前記冷却手段は、パンを作成する工程のねり、または、発酵、ねかし、そして、焼成の間の一部あるいは全部の期間に作動させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項6】
前記容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、撹拌手段で被調理材を撹拌するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項7】
前記容器に前記被調理材の一部の生米と水を投入し炊飯してごはんを作成するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度で加熱するようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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