説明

自動製パン機

【課題】異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができる自動製パン機を提供すること。
【解決手段】機器本体10内部の加熱室1a内に収納され、パンなどの調理材料を収容する着脱可能な練り容器7を加熱するヒータ11と、調理異常を判定する調理異常判定手段と、前記ヒータ11を制御する制御手段25とを備え、前記制御手段25は、パンを焼き上げる焼成工程において、前記調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、以降の加熱を抑えて調理を継続するようにヒータ11を制御することにより、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に家庭用として使用される自動製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭でも簡単にパンを作ることができる自動製パン機がよく用いられるようになってきた。従来、この種の自動製パン機は、練り容器に調理材料を入れ忘れて運転した場合に機器本体の温度が異常に上がり、練り容器底部に設けた軸受けなどが熱で劣化するのを防ぐため、練り工程における練り容器温度の上昇速度が基準値以下であると練り容器内が空と判定し、運転を中止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−95322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、練り工程の制御温度は20℃前後と低温であるため、室温の影響を受けやすく、練り容器内の空検知を誤判定しやすいという課題があった。また、制御温度が低温だと、温度上昇幅が小さく、練り容器内に調理材料がある時とない時の練り容器温度の上昇速度に大きな差が出にくいため、材料の配合間違いなどで規定より少量の材料で調理した場合に容易に空検知を誤判定してしまい、調理ができないという課題があった。この場合、使用者にしてみれば、材料を入れているのに空検知してしまうため、理由がわからず、最終的には機器の故障だと判断するしかなく、材料が無駄になっていた。仮に、配合間違いだと気づいたとしても、何をどう間違ったのかまではわからず、そのまま調理を開始することもできないため、結局材料が無駄になってしまっていた。
【0005】
また、機器本体に練り容器の収納を忘れたまま調理を開始した場合にも、機器本体の温度が異常に上がり、部品の劣化や本体の溶解に至る可能性がある。このような練り容器の収納忘れに対しても、前記従来の構成を利用して練り工程で検知することは可能であるが、上記にあるように制御温度が低温であると、誤判定しやすいという課題は有したままであった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができる自動製パン機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動製パン機は、加熱室内の温度を低温から高温まで昇温させて、パンを焼き上げる焼成工程において、調理異常判定手段により、調理異常判定を行い、そこで調理異常であると判定すると、部品の劣化や本体の溶解に至らない程度に以降の加熱を抑えて、調理を継続するようにしたものである。
【0008】
これによって、温度上昇幅が大きく、室温の影響を受けにくい温度帯で異常判定を行うことができるようになるため、異常判定の精度が高まると共に、もし異常を誤判定しても、加熱を抑えて調理を行うため、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動製パン機は、パンを焼き上げる焼成工程において、調理異常判定手段により、調理異常判定を行い、そこで調理異常であると判定すると、以降の加熱を抑えて調理を継続するので、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料が無駄になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における自動製パン機の縦断面図
【図2】本発明の実施の形態1における自動製パン機の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における自動製パン機の表示操作部の正面図
【図4】本発明の実施の形態1における自動製パン機の食パンを調理する場合の調理工程図
【図5】本発明の実施の形態1における自動製パン機の練り容器内にパン材料がある場合と、ない場合の焼成工程における加熱室内の温度変化を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における自動製パン機の加熱室内に練り容器がある場合とない場合の焼成工程における加熱室内の温度変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、内部に加熱室が設けられた有底筒状の機器本体と、前記機器本体の上部開口部を開閉可能な蓋と、前記加熱室内に収納され、パンなどの調理材料を収容する着脱可能な練り容器と、前記加熱室内の温度を検知する温度検知手段と、
前記練り容器を加熱する加熱手段と、調理メニューなどの調理情報を選択する選択手段と、前記温度検知手段により検知した検知温度に基づき、調理異常を判定する調理異常判定手段と、前記選択手段により選択した調理情報と前記温度検知手段により検知した検知温度に基づき、前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、パンを焼き上げる焼成工程において、前記調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、以降の加熱を抑えて調理を継続するように加熱手段を制御するものである。
【0012】
これによって、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の調理異常判定手段を温度検知手段の検知温度が第1の所定温度から第2の所定温度に到達するまでの時間が第1の所定時間よりも短い場合に、練り容器内に調理材料がないと判定するようにすることにより、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の調理異常判定手段を温度検知手段の検知温度が第3の所定温度から第4の所定温度に到達するまでの時間が第2の所定時間よりも短い場合に加熱室内に練り容器が収納されていないと判定するようにすることにより、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができる。
【0015】
第4の発明は、選択手段で選択された調理情報などの各種情報を表示する表示手段を備え、
特に、第1〜3のいずれか1つの発明の調理異常判定手段が、調理異常であると判定すると、その旨を表示するように前記表示手段を制御するようにすることにより、使用者に調理材料の入れ忘れや練り容器の収納忘れなど調理異常を伝え、次回の調理時の注意を促すことができる。また、材料の配合間違いや室温、電源電圧などの影響で誤検知したのであれば、でき上がりが通常より劣っているが材料は無駄にならないことを伝えることができ、使用者の不満を減らすことができる。
【0016】
第5の発明は、調理情報などの各種情報を報知する報知手段を備え、
特に、第1〜4のいずれか1つの発明の調理異常判定手段が、調理異常であると判定すると、その旨を報知するように前記報知手段を制御するようにすることにより、使用者に調理材料の入れ忘れや練り容器の収納忘れなど調理異常を伝え、次回の調理時の注意を促すことができる。また、材料の配合間違いや室温、電源電圧などの影響で誤検知したのであれば、でき上がりが通常より劣っているが材料は無駄にならないことを伝えることができ、使用者の不満を減らすことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における自動製パン機の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における自動製パン機の縦断面図であり、図2は、その斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1における自動製パン機の表示操作部の正面図である。図4は、本発明の実施の形態1における自動製パン機の食パンを調理する場合の調理工程図である。
【0019】
図1及び図2において、本実施の形態1における自動製パン機は、内部に加熱室1aが設けられた有底筒状の樹脂製の機器本体10を備えている。機器本体10の下部には、シャーシ2が取り付けられている。シャーシ2には、駆動部の一例であるモータ3と、容器支持台4とが取り付けられている。
【0020】
モータ3は、プーリやベルトなどを含む伝達機構5を介して、容器支持台4に回転可能に支持されたコネクタ下6に回転力を与える。コネクタ下6は、練り容器7の下部に回転可能に支持されたコネクタ上8と係合可能に構成されている。練り容器7は、加熱室1a内に収納され、パン、ケーキ、餅などの調理材料を収容する着脱可能な容器である。また、練り容器7は、コネクタ下6とコネクタ上8とが係合することで容器支持台4上に取り付けられる一方、コネクタ下6とコネクタ上8との係合が外されることで加熱室1aから取り外し可能である。
【0021】
コネクタ上8は、練り容器7の底壁から上方に向けて突出するように取り付けられている。コネクタ上8の先端部には、練り容器7内に収容された調理材料を混錬するための練り羽根9が着脱可能に取り付けられている。練り羽根9は、モータ3の回転力が伝達機構5に伝達され、コネクタ下6及びコネクタ上8が回転することで回転駆動する。
【0022】
練り容器7の上端部には、図1に示すように、練り容器7の上部開口部よりも上方に突出する把手取付部7aが少なくとも2箇所設けられている。これらの把手取付部7aには、貫通孔が設けられており、当該貫通孔に略半円弧状の把手7bが回動可能に取り付けられている。これにより、練り容器7の着脱及び持ち運びが容易になっている。
【0023】
加熱室1aには、練り容器7を加熱する加熱手段の一例であるヒータ11と、加熱室1a内の温度を検知する温度検知手段の一例である温度センサ12とが設けられている。ヒータ11は、容器支持台4上に取り付けられた練り容器7の下部を、隙間を空けて包囲するように配置されている。ヒータ11としては、例えば、シーズヒータを用いることができる。温度センサ12は、加熱室1a内の平均的な温度を検知することができるように、ヒータ11から少し離れた位置に配置されている。
【0024】
機器本体10の上部には、機器本体10の上部開口部を開閉可能な蓋13が回動可能に取り付けられている。蓋13は、蓋本体14と、外蓋15とを備えている。蓋本体14には、レーズン、ナッツなどの副材料を収納する副材料容器16と、イーストを収納するイースト容器17とが取り付けられている。副材料容器16とイースト容器17とは、練り容器7の上方に配置されている。
【0025】
副材料容器16は、着脱可能に構成され、着脱を容易にするため凹状の摘み部16aを備えている。副材料容器16の底壁は、副材料容器16に収容された副材料を練り容器7内に投入することができるように、蓋本体14の底壁14aに対して回動可能に取り付けられた開閉板16bで構成されている。開閉板16bは、ソレノイド18に接続され、ソレノイド18が駆動することにより開放される。また、イースト容器17の底壁は、イースト容器17に収容されたイーストを練り容器7内に投入することができるように、蓋本体14の底壁14aに対して回動可能に取り付けられた開閉弁17aで構成されている。開閉弁17aは、ソレノイド(図示せず)に接続され、当該ソレノイドが駆動することにより開放される。
【0026】
外蓋15は、副材料容器16及びイースト容器17の上部開口部を開閉可能に取り付けられている。外蓋15の副材料容器16と対応する位置には、樹脂などの断熱部材で構成された副材料容器蓋15aが取り付けられている。副材料容器蓋15aの外周部には、パッキン15bが取り付けられている。
【0027】
機器本体10の上部には、図3に示すように調理メニューやレーズン、ナッツなどの副材料の投入の有無などを選択するボタンを備えた選択手段19と、選択手段19で選択された情報などの各種情報を表示する表示手段20と、調理情報などの各種情報を報知する報知手段(図示せず)と、室温を検知する室温検知手段の一例である室温センサ21とが設けられている。選択手段19は、各種動作の開始又は停止、タイマー設定なども行うことができるように構成されている。
【0028】
調理メニューには、例えば、食パンメニュー、ピザ生地メニュー、うどんメニュー、ケーキメニューなどが含まれる。表示手段20に表示する情報には、選択手段19にて選択した調理メニューや副材料の投入有無、調理が終了する時刻、異常発生などが含まれる。報知手段が報知する情報には、選択手段19による選択受付や調理終了、異常発生などが含まれる。
【0029】
また、機器本体10には、図2に示すように、製パン機の持ち運びを容易にするためのハンドル22と、先端に差込プラグ23を備えた電源コード24と、各部の駆動を制御する制御手段25とが設けられている。
【0030】
制御手段25は、内部に記憶手段(図示せず)を有し、前回調理を行った時の情報や複数の調理メニューに対応する調理プロセスを記憶している。調理プロセスとは、練り、ねかし、混ぜ、発酵、焼成などの各調理工程を順に行うにあたって、各調理工程においてヒータ11の通電率、制御温度、練り羽根9の回転速度、ソレノイドの駆動タイミングなどが予め決められている調理の手順のプログラムをいう。
【0031】
制御手段25は、選択手段19に設けられたメニューボタンにて選択された特定の調理メニューに対応する調理プロセスと温度センサ12の検知温度とに基づいて、モータ3、ヒータ11、開閉板16bを開放するソレノイド18、及び開閉弁17aを開放するソレノイド(図示せず)の駆動を制御する。
【0032】
また、内部に調理異常判定手段(図示せず)を有し、調理中の温度センサ12の検知温度に基づき、調理材料の入れ忘れや練り容器7の収納忘れといった調理異常を判定する。さらに、制御手段25は、調理時の室温に応じた調理プロセスも各メニュー毎に複数記憶しており、調理開始時に室温センサ21により検知した室温に適した調理プロセスを選択して調理を行う機能を有している。
【0033】
次に、前記のように構成された第1の実施の形態における自動製パン機を用いて食パンを製造するときの手順及び動作の一例について、図4を参照しながら説明する。なお、自動製パン機の各種動作は制御手段25の制御の下に行われる。
【0034】
まず、使用者は、練り羽根9をコネクタ上8に取り付けるとともに、強力粉、バター、砂糖、塩、スキムミルク、水など、イーストを除く全てのパン材料を練り容器7内に入れる。そして、当該練り容器7を容器支持台4上にセットし、蓋13を閉じる。
【0035】
次いで、使用者は、外蓋15を開いて、イーストをイースト容器17に入れるとともに、使用者の好みに応じてレーズン、ナッツなどの副材料を入れた副材料容器16を蓋本体14に取り付ける。その後、外蓋15を閉じる。
【0036】
次いで、使用者は、選択手段19にて調理条件を設定する。メニューボタンでは複数の調理メニューから所望のメニューを選択する。メニューボタンは、(アップ)ボタンと(ダウン)ボタンで構成し、調理メニューは番号で選択する。(アップ)ボタンを押圧すると、メニュー番号を+1し、(ダウン)ボタンを押圧すると、メニュー番号を−1する。本実施の形態の自動製パン機では、食パンに該当するメニュー番号1を選択する。レーズン選択ボタンでは、副材料の自動投入の有無を選択する。
【0037】
本実施の形態の自動製パン機では、自動投入を実施することを意味する「あり」を選択する。また、本実施の形態の自動製パン機では、副材料の代表例としてレーズンと表示することで、使用者に分かりやすい表示としている。
【0038】
これらの各種調理条件を設定した後、選択手段19に設けられたスタートボタンを押圧するなどして、調理の開始を指示する。なお、使用者によっては、パン材料を練り容器7内に入れる前に調理メニューなどの調理条件の選択を行う場合もあるが、調理開始の指示を行わなければ、動作になんら影響はない。
【0039】
また、調理メニューや副材料の自動投入の有無の他に焼き色やタイマー設定など、必要に応じて各種調理条件を設定することができる。そして、調理が始まると、図4に示すように練り羽根9の回転により練り容器7内のパン材料を混錬する前練り工程が開始する。
【0040】
前練り工程の開始から所定時間経過して、パン材料の混錬によりパン生地が形成されると、練り羽根9の回転を停止させて、ねかし工程に移行する。この移行のタイミングで、開閉弁17aを開放するソレノイド18が駆動して、練り容器7内にイースト容器17内のイーストが自動投入される。なお、このねかし工程は省略してもよい。
【0041】
ねかし工程の開始から所定時間経過後、練り羽根9を再度回転させて、練り容器7内のパン生地を混錬する後練り工程が開始する。この後練り工程により、イーストがパン生地中に均一に練り込まれる。なお、選択手段19にてレーズン、ナッツなどの副材料の自動投入ありが選択されていた場合には、後練り工程の終了後、開閉板16bを開放するソレノイド18が駆動して、練り容器7内に副材料容器16内の副材料が自動投入される。そして、混ぜ工程に移行する。この混ぜ工程は、副材料をパン生地に混ぜ込むことを目的とする。
【0042】
よって、この工程では練り羽根9を回転させるが、後練り工程の練り羽根9の回転と比べて、緩やかに回転させる。これによって、副材料の加熱室1a内への飛び散りを抑え、副材料をパン生地中に均一に撹拌させる。
【0043】
混ぜ工程の終了後は、発酵工程に移行する。この発酵工程により、パン生地が発酵される。発酵工程では、途中数回ガス抜き工程で1分ほど練り羽根9を回転させて、ガス抜きを行う。
【0044】
ガス抜きが終了すると、成形発酵工程に移行する。成形発酵工程は、ガス抜きされたパン生地を再びスポンジ状に膨張させる工程である。また、成形発酵工程は、パン生地の温度を上げ、イーストの活性を高め、最も活性が高い状態で焼成工程が始められるようにする工程でもある。この成形発酵工程により、発酵作用によるパン生地の伸展性が増加し、芳香が生成される。この成形発酵工程は、30〜60分間行うことが好ましく、さらに、40〜50分間行うことがより好ましい。
【0045】
成形発酵工程の終了後は、焼成工程に移行する。まず、焼成1工程では、加熱室1a内の温度を検知する温度センサ12の温度が食パンメニューに対応して予め決められた温度(175℃)になるまでヒータ11への通電率を100%にして加熱し、昇温させ、以降の焼成2工程では、ヒータ11への通電率を40%にして所定の時間(40分)が経過するまで、170℃で温度維持させて、パン生地を焼き上げる。
【0046】
図5は、練り容器7内にパン材料がある場合とない場合の焼成工程における加熱室1a内の温度変化を示したものである。縦軸に加熱室1a内の温度、横軸に時間がとってあり、Aが練り容器7内にパン材料がある場合の温度変化を示し、Bが練り容器7内にパン材料がない場合の温度変化を示している。
【0047】
図5に示すように練り容器7内にパン材料がある場合とない場合とでは、加熱室1a内の温度変化が異なり、パン材料がない場合は、パン材料がある場合に比べて、熱容量が小さくなるため、加熱室1a内の温度上昇が早くなる。
【0048】
そこで、この現象を利用して、調理異常判定手段によりパン材料の有無を判定する。ここでは、加熱室1a内の温度が第1の所定温度Ta(50℃)から第2の所定温度Tb(90℃)まで上昇するのに第1の所定時間t1(100秒)以上の時間がかかればパン材料があると判定し、t1未満であればパン材料がないと判定するようにする。
【0049】
第1の所定時間t1は、練り容器7内にパン材料がある場合の温度上昇時間taと練り容器7内にパン材料がない場合の温度上昇時間tbの中間値としてあらかじめ設定されているものである。ここで、パン材料があると判定すれば、それ以降も正規の調理プロセスにそって、調理を継続する。
【0050】
もし、パン材料がないと判定すれば、それ以降は制御温度を焼成1工程では155℃、焼成2工程では150℃に変更して、調理プロセスを継続する。このように制御温度を下げて、加熱を抑えることで、電源電圧のばらつきや室温などに影響されずに加熱室1a内の温度を一定に保つことができ、異常を誤判定した場合でも、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めるようにする。
【0051】
図6は、加熱室1a内に練り容器7がある場合とない場合の焼成工程における加熱室1a内の温度変化を示したものである。縦軸に加熱室1a内の温度、横軸に時間がとってあり、Cが加熱室1a内に練り容器7がある場合の温度変化を示し、Dが加熱室1a内に練り容器7がない場合の温度変化を示している。
【0052】
図6に示すように加熱室1a内に練り容器7がある場合とない場合とでは、加熱室1a内の温度変化が異なり、練り容器7がない場合は、練り容器7がある場合に比べて、熱容量が小さくなるため、加熱室1a内の温度上昇が早くなる。
【0053】
そこで、この現象を利用して、調理異常判定手段により練り容器7の有無を判定する。ここでは、加熱室1a内の温度が第3の所定温度Tc(50℃)から第4の所定温度Td(90℃)まで上昇するのに第2の所定時間t2(90秒)以上の時間がかかれば練り容器7があると判定し、t2未満であれば練り容器7がないと判定するようにする。第2の所定時間t2は、加熱室1a内に練り容器7がある場合の温度上昇時間tcと加熱室1a内に練り容器7がない場合の温度上昇時間tdの中間値としてあらかじめ設定されているものである。
【0054】
ここで、練り容器7があると判定すれば、それ以降も正規の調理プロセスにそって、調理を継続する。もし、練り容器7がないと判定すれば、それ以降は制御温度を焼成1工程では155℃、焼成2工程では150℃に変更して、調理プロセスを継続する。このように制御温度を下げて、加熱を抑えることで、電源電圧のばらつきや室温などに影響されずに加熱室1a内の温度を一定に保つことができ、異常を誤判定した場合でも、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めるようにする。
【0055】
また、異常と判定した場合、その旨を知らせるために、例えば「パン材料なし」や「練り容器なし」といった表示を判定直後から表示手段20に表示したり、報知手段から選択受付や調理終了報知などの通常の報知とは異なる報知を行うようにする。
【0056】
なお、このような表示手段20への表示や報知手段からの報知は、調理終了時に行ってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0057】
以上のように、本発明の第1の実施の形態における自動製パン機においては、温度上昇幅が大きく、室温の影響を受けにくい温度帯で調理を行う焼成工程において、調理異常判定手段により、温度検知手段の検知温度に基づき、パン材料の入れ忘れや練り容器7の収納忘れなどの調理異常を判定し、調理異常であると判定すると、以降の加熱を抑えて調理を継続することにより、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、その旨を表示手段20に表示したり、報知手段から報知したりすることにより、使用者に材料の入れ忘れや練り容器の収納忘れなど調理異常を伝え、次回の調理時の注意を促すことができる。また、材料の配合間違いや室温、電源電圧などの影響で誤検知したのであれば、でき上がりが通常より劣っているが材料は無駄にならないことを伝えることができ、使用者の不満を減らすことができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本実施の形態では、調理異常判定のために使用する第1の所定温度Ta、第3の所定温度Tcを50℃、第2の所定温度Tb、第4の所定温度Tdを90℃としたが、本発明はこれに限定されない。温度Ta、Tcは成形発酵工程での制御温度以上、Tb、TdはそれぞれTa、Tc以上の温度であればよい。好ましくは、温度Ta、Tcは40℃〜60℃、温度Tb、Tdは80℃〜100℃である。これにより異常判定をより正確に行うことができるとともに、判定までの時間をより短くすることができ、部品や本体への影響を少なくすることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、調理異常判定のために使用する第1の所定時間t1を100秒、第2の所定時間t2を90秒としたが、本発明はこれに限定されない。時間t1は、練り容器7内にパン材料がある場合の温度上昇時間taと練り容器7内にパン材料がない場合の温度上昇時間tbの間の時間、時間t2は、加熱室1a内に練り容器7がある場合の温度上昇時間tcと加熱室1a内に練り容器7がない場合の温度上昇時間tdの間の温度であればよい。好ましくは、その中間の時間である。これにより異常判定を正確に行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態では、調理異常と判定すると、それ以降の制御温度を焼成1工程で155℃、焼成2工程で150℃に下げることで、加熱を抑えるようにしたが、本発明はこれに限定されない。部品の劣化や本体の溶解に至らない温度で、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができる温度であればよい。また、この時、制御温度を下げずにヒータ11への通電率を落とすことで(例えば、通電率を30%に変更するなど)、加熱を抑えるようにしてもよいし、そのどちらも実施するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明における自動製パン機は、異常判定の精度を上げると共に、もし異常を誤判定しても、部品の劣化や本体の溶解を防ぎつつ、食味の劣化を最小限に留めたパンを焼くことができ、材料の無駄をなくすことができるようになるため、特に、一般に家庭用として使用される製パン機として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1a 加熱室
7 練り容器
10 機器本体
11 ヒータ(加熱手段)
12 温度センサ(温度検知手段)
13 蓋
19 選択手段
20 表示手段
25 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱室が設けられた有底筒状の機器本体と、
前記機器本体の上部開口部を開閉可能な蓋と、
前記加熱室内に収納され、パンなどの調理材料を収容する着脱可能な練り容器と、
前記加熱室内の温度を検知する温度検知手段と、
前記練り容器を加熱する加熱手段と、
調理メニューなどの調理情報を選択する選択手段と、
前記温度検知手段により検知した検知温度に基づき、調理異常を判定する調理異常判定手段と、
前記選択手段により選択した調理情報と前記温度検知手段により検知した検知温度に基づき、前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、パンを焼き上げる焼成工程において、前記調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、以降の加熱を抑えて調理を継続するように加熱手段を制御するようにした自動製パン機。
【請求項2】
調理異常判定手段は、温度検知手段の検知温度が第1の所定温度から第2の所定温度に到達するまでの時間が第1の所定時間よりも短い場合に練り容器内に調理材料がないと判定するようにした請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
調理異常判定手段は、温度検知手段の検知温度が第3の所定温度から第4の所定温度に到達するまでの時間が第2の所定時間よりも短い場合に加熱室内に練り容器が収納されていないと判定するようにした請求項1または2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
選択手段で選択された調理情報などの各種情報を表示する表示手段を備え、
制御手段は、調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、その旨を表示するように前記表示手段を制御するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動製パン機。
【請求項5】
調理情報などの各種情報を報知する報知手段を備え、制御手段は、調理異常判定手段により、調理異常であると判定すると、その旨を報知するように前記報知手段を制御するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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