説明

自動販売機

【課題】オペレーション作業中でも商品の販売を継続することができる自動販売機を提供すること。
【解決手段】自動販売機1は、商品選択部25及び商品取出し口24を有する構造体2と、商品Sを複数収納する商品収納部32を有する自販機本体3と、を備える。構造体2と自販機本体3との間には作業スペース5があり、作業スペース5には、商品選択部25によって選択された商品収納部32内の商品Sを自販機本体3から商品取出し口24へと導くシューター7が設けられる。また、作業スペース5は、オペレーター300が構造体2及び自販機本体3に対して作業可能な広さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料入り容器などの商品を販売する自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動販売機として、販売対象の商品のサンプルや金銭投入口を有する前扉と、商品を収納する商品収納部を有するキャビネット構造の自販機本体と、からなるものが一般的に知られている(例えば、特許文献1ないし4参照)。自動販売機にて消費者が購入したい商品を選択すると、その商品が商品収納部からシューターに落ち、シューターから前扉の下部にある商品取出し口へと送り出されるようになっている。
【0003】
一方、商品を商品収納部に補充する場合には、自動販売機の管理等をする人、すなわちオペレーターが、前扉を開いて、自販機本体の上部にある商品投入口から商品を投入することになる。また、自動販売機から売上金を回収したり、お釣り用のコインを補充したりする場合にも、オペレーターが、前扉を開いて、前扉の内側にある金銭回収部等にアクセスすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−282341号公報
【特許文献2】特開2009−251926号公報
【特許文献3】特開2009−211463号公報
【特許文献4】特許第3174216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、商品補充や金銭回収といったオペレーション作業中では、前扉が開けられている。このため、商品の販売を一時的に止める必要があり、販売を一時的にも止めたくない場合には、そのニーズに応えることができなかった。また、オペレーション作業そのものを消費者から見えないようにしたいというニーズがあった場合にも、従来の自動販売機の構造では、そのニーズに応えることができなかった。
【0006】
本発明は、上記ニーズに鑑みてなされたものであり、その目的は、オペレーション作業中でも商品の販売を継続することができる自動販売機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明の自動販売機は、商品選択部及び商品取出し口を有する構造体と、商品を複数収納する商品収納部を有する自販機本体と、を備えたものにおいて、構造体と自販機本体との間にある作業スペースであって、作業スペース内にてオペレーターが構造体及び自販機本体に対して作業可能な広さを有する作業スペースと、作業スペースに設けられ、商品選択部によって選択された商品収納部内の商品を自販機本体から商品取出し口へと導く商品送出し部と、を備えたものである。
【0008】
本発明によれば、従来の自動販売機にあるような前扉を開くことなく、作業スペース内にて構造体及び自販機本体に対してオペレーション作業(例えば商品収納部への商品の補充など。)を行うことができる。そして、作業スペースに商品送出し部が設けられているので、オペレーション作業中であっても、自販機本体から商品取出し口へと商品を導くことができ、商品の販売を継続することができる。
【0009】
好ましくは、自動販売機の前側及び後側は、それぞれ、構造体及び自販機本体によって構成されており、自動販売機の左右の両側は、外部から作業スペースが視認できないように構成されており、自動販売機の左右の両側の少なくとも一方には、作業スペースへの出入口が設けられるとよい。
【0010】
この構成によれば、オペレーション作業そのものを購入者(消費者)に見せないようにすることができる。また、作業スペースへの出入口を構造体及び自販機本体とは別のところに設けたので、構造体及び自販機本体の構造を複雑にしなくて済む。換言すると、既存の自動販売機の前扉を本発明における構造体に、既存の自動販売機の自販機本体を本発明における自販機本体に適用することも可能である。
【0011】
好ましくは、商品送出し部は、商品を自販機本体から商品取出し口へと案内する滑走面付きのシューターからなるとよい。
【0012】
こうすることで、商品送出し部について、X・Y移動機構(X・Yテーブル)などの複雑な構成とすることなく、簡易な構成とすることができる。
【0013】
より好ましくは、シューターの滑走面は、商品の案内方向において商品の滑り抵抗が互いに異なる面を有するとよい。
【0014】
こうすることで、シューターの滑走面で適度な商品の滑りを確保することが可能となる。詳細には、シューターの滑走面の全面について滑り抵抗を小さくした場合、商品の滑りは良くなるが、その分、商品の種類によっては滑走速度が大きくなり過ぎて、商品取出し口に案内された際には商品価値が低下することもあり得る。一方で、シューターの滑走面の全面について滑り抵抗を大きくした場合、シューターで商品の詰りが起きる可能性もある。これに対し、上記のように、シューターの滑走面について滑り抵抗が互いに異なる面を設定することで、商品の詰りの抑制と商品価値の確保とを両立した商品の滑りを確保することが可能となる。
【0015】
好ましくは、自販機本体は、作業スペース側且つ当該自販機本体の上部領域に、商品収納部に商品を投入するための商品投入口を有し、作業スペースには、商品投入口とオペレーターとの高さレベルの差を縮めるための作業台が、オペレーターが乗降可能に設けられるとよい。
【0016】
この構成によれば、商品投入口を自販機本体における高い位置に設定した場合にも、作業台を利用することで、商品収納部への商品の補充作業を行うことが容易となる。
【0017】
より好ましくは、自販機本体は、作業スペース側に断熱扉を有しており、断熱扉は、商品投入口を覆う上側位置と覆わない下側位置との間で上下方向にスライド移動可能に構成されているとよい。
【0018】
この構成によれば、断熱扉が上下方向にスライド移動可能であるので、開き戸タイプの断熱扉に比べて、作業スペース内のスペース効率を向上することができる。また、断熱扉を上側位置に移動させておけば、商品の補充作業を行わない場合に商品収納部内の商品の温度変化を抑制することができる。一方で、断熱扉を下側位置に移動させれば商品投入口を開放できるので、商品の補充作業を行うことができる。
【0019】
好ましくは、自販機本体は、商品収納部に補充される商品を収容した商品ケースを載置可能に構成された載置エリアを有しており、載置エリアには、商品ケースがその取出し開口側を作業スペースに面して置かれたときに、取出し開口側が先上がりとなるように前記商品ケースを支持する支持部が設けられているとよい。
【0020】
この構成によれば、商品ケースから商品が取り出し易くなるため、商品の補充作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る自動販売機について、左右の側壁などを省略して内部の作業スペース及び自販機本体を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る自動販売機について、内部の作業スペースが外部から視認できない様子を購入者とともに模式的に示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る自動販売機について、オペレーション作業中に商品が購入されている様子を示す様子を模式的に示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る自動販売機の構造体の内面を示す正面図である。
【図5】実施形態に係る自動販売機を模式的に示す側断面図である。
【図6】実施形態に係る自動販売機のシューターの平面図である。
【図7】実施形態に係る自動販売機のシューターの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る自動販売機を説明する。以下では、二つの自動販売機を並列させた例を説明するが、もちろん一つの自動販売機のみを用いる態様でもよいことは言うまでもない。
【0023】
図1に示すように、実施形態に係る二つの自動販売機1、1が、左右方向に並列している。各自動販売機1は、その前側に構造体2を備え、その後側に自販機本体3を備えている。構造体2との自販機本体3との間には、所定の広さを有する作業スペース5があり、作業スペース5の下側空間には、自販機本体3から構造体2へと商品Sを導くシューター7が設けられている。また、このシューター7を跨ぐようにして、作業スペース5にはテーブル状の作業台9が設けられている。作業台9は、並列した二つの自動販売機1、1で兼用することができる。
【0024】
ここで、自動販売機1の販売対象となる商品Sとしては、缶、瓶、紙パック、パウチ容器、プラスチックボトルなど、各種の容器にプリパッケージされた飲料であるが、これに限られるものではない。例えば、食品をプリパッケージした容器も販売可能である。要するに、容器に収納することができるものであれば、衣類を含めてどのようなものでも販売可能である。ただし、本実施形態において販売対象となる容器は、シューター7を滑る必要があるため、円筒型の容器であることが望ましい。以下の説明では、商品Sとして、PETボトルに代表される円筒型のプラスチックボトルに、コーラなどの炭酸飲料と、お茶や水などの非炭酸飲料とを入れたものを例にする。
【0025】
図2に示すように、自動販売機1は、その内部の作業スペース5等が外部から見えないように構成される。
具体的には、作業スペース5の前後には構造体2及び自販機本体3が位置しているため、自動販売機1の前後の両側からは作業スペース5を視認することができないようになる。一方、作業スペース5の左右には、少なくとも構造体2と自販機本体3との間の部分を覆う左右の壁11(奥にある左壁は図示省略する。)が設けられているため、自動販売機1の左右の両側からでは作業スペース5を視認することができないようになる。左右にある壁の少なくとも一方の壁11には、自動販売機1の外部から作業スペース5へのアクセスを可能にする出入口12が設けられている。出入口12は、例えば、開き戸タイプの扉で構成することができ、開閉用の取っ手13が取り付けられている。
【0026】
このような構成により、自動販売機1の外部に位置する購入者200は、作業スペース5の存在そのものすら確認することができなくなる。このため、図3に示すように、出入口12から作業スペース5内に入ったオペレーター300は、購入者200から見られることなく、作業スペース5内で作業することが可能となる。
【0027】
なお、自動販売機1、1を並列した場合には、構造体2,2間の部分や自販機本体3,3間の部分を含めて、前後の部分を壁15で覆うようにしてもよいが、このような壁15は、一つの自動販売機1のみを用いる態様では不要である。また、作業スペース5の上方も外部から見えないように壁で覆ってもよい。さらに、作業スペース5を外部から見えないように覆うものとして、壁以外のものを用いてもよい。いずれの場合であっても、購入者200が作業スペース5を視認することができない構成を採用すればよい。
【0028】
次に、構造体2及び自販機本体3について説明する。
構造体2及び自販機本体3は、公知の自動販売機における前扉及び自販機本体と同様の機能を備える。
【0029】
具体的には、図1に示すように、構造体2は、全体として板状の部材で構成される。そして、図2に示すように、構造体2は、例えば、上部前面に商品サンプル展示室21を、中段前面に金銭出入口22を、下部前面に金銭出入口23を、その隣に商品取出し口24を備える。
【0030】
商品サンプル展示室21は、自販機本体3に収納される商品Sのサンプルを複数示すものであり、各サンプルの下側に商品選択ボタン25を有する。商品選択ボタン25は、商品Sと1対1対応で設けられるものであり、購入者によって押される。商品選択ボタン25に代表される商品選択部は、該当の商品Sを販売するためのスイッチとして機能するものであり、ボタンに代えて、タッチパネルなどの構成を採用することもできる。金銭出入口22、23は、購入者がコインやお札を入れたり、購入者にお釣りなどを払い出したりするところである。なお、電子式のリーダーを設け、金銭に相当する電子マネーなどからも商品Sの購入ができるようにしてもよい。商品取出し口24は、構造体2の一部を前後方向に貫通して形成されたものである。また、商品取出し口24は、自販機本体3から送り出された商品Sをとどめておくことができ(図5参照)、購入者は、商品取出し口24にアクセスすることで商品Sを手にすることができる。
【0031】
図4に示すように、構造体2は、その背面側(内面側)に、例えば、お札用の金銭回収部26、コイン用の金銭回収部27及びコントローラ28を備えると共に、背面上部に作業ボード29を備える。これらの金銭回収部26、27、コントローラ28及び作業ボード29は、作業スペース5内からアクセス可能に構成される。
【0032】
金銭回収部26,27は、自動販売機1による売上金が収納される。この売上金は、オペレーター300によって回収される。コントローラ28は、自動販売機1における商品管理や温度管理を含め、自動販売機1の全体を制御する。作業ボード29は、省略することもできるが、オペレーター300が自動販売機1の定期点検の結果を記入ないしはそのシートを貼るのに使用することができる。また、作業ボード29は、自販機本体3内のコラムと商品Sとの関係を示すものを記入等するのにも使用することができる。
【0033】
図5に示すように、自販機本体3は、キャビネット構造からなり、前面が開口した断面コ字状の筐体31を有する。筐体31は、上部に商品収納部32を、この商品収納部32の下方にシューター33を、シューター33の下方に加温機構34及び冷却機構35を収容する。商品収納部32、シューター33、加温機構34及び冷却機構35は、公知の自販機本体におけるものと同様に構成することができる。
【0034】
商品収納部32は、商品Sを複数収納するものであり、例えば、商品Sを横向き姿勢で収納する複数のコラム41を備える。複数のコラム41は、前後方向(奥行方向)に全部で5列設けられており、それぞれが、上下方向に延びる収納搬送路42と、収納搬送路42の上端から前方へと斜め上方に延びる収納導入路43と、を備える。収納導入路43の前面開口が、コラム41に商品Sを投入するための商品投入口44を構成する。各コラム41は、収納搬送路42及び収納導入路43に複数の商品Sを収納することができ、収納搬送路42の下端に設けた商品払出し装置(図示省略)によって、収納搬送路42内の商品Sを一つずつ重力方式で下方に放出する。このような構成からなるコラム41は、左右方向にも複数列が設けられる(図1参照)。
【0035】
シューター33は、前方へと斜め下方に延びる滑走面45を有する。滑走面45は、筐体31の奥部から筐体31の前面開口まで延びており、商品収納部32から放出された商品Sを筐体31外へと案内できるように所定の傾斜角度を有する。なお、滑走面45の前端の直上に子扉46を設け、滑走面45を転がる商品Sが、子扉46を押し開いて筐体31外へと送り出されるようにしてもよい。加温機構34及び冷却機構35は、互いに断熱区画されて配置されおり、それぞれ、商品収納部32内の商品Sをコラム41単位で所望の温度に冷却及び加温する。なお、上記の商品払出し装置、加温機構34及び冷却機構35などは、コントローラ28によって制御することができる。
【0036】
ここで、自販機本体3は、公知の自販機本体に具備されていないものとして、筐体31の前面開口に可動式の断熱扉51及び固定式の断熱板52を有すると共に、筐体31の上面53に支持突起55を有する。
【0037】
断熱扉51は、上下方向にスライド移動可能に構成されており、そのスライド移動が、筐体31の左右の内面に形成したガイド57によって案内される。断熱扉51の前面は、作業スペース5に面しており、オペレーター300がアクセス可能となっている。オペレーター300による断熱扉51のスライド操作がし易くなるように、断熱扉51の前面には、オペレーター300が把持可能なハンドル(図示省略)を設けるとよい。断熱板52は、ガイド57の下半部の奥側にあり、商品収納部32の下半部を気密に覆う。なお、図5に示す断熱扉51及び断熱板52は、図1及び図3に示すものとは若干構成が異なるが、断熱、可動及び固定などの諸機能としては同じである。
【0038】
図5に実線で示すように、断熱扉51が下側位置にあるときは、商品収納部32の上半部及び商品投入口44は、断熱扉51及び断熱板52によって覆われることなく開放される(図1及び図3も参照)。このため、オペレーター300は、作業スペース5に対して開放された商品投入口44にアクセスし、商品投入口44から商品Sを補充することができる。
【0039】
一方、断熱扉51を下側位置から上側位置にスライド移動させるには、オペレーター300が、断熱扉51の両側部をガイド57に案内させながら上方へと持ち上げる。そして、断熱扉51を上側位置で固定するには、持ち上げた断熱扉51を奥側に押しやり、断熱板52の上面に載置させる。このとき、断熱扉51の背面周縁をシール部材58に強密着させるようにして、断熱扉51を奥側に押し込む。これにより、図5に破線で示すように、断熱扉51は、商品収納部32の上半部及び商品投入口44を覆うことになる(図1も参照)。この状態では、断熱扉51は、断熱板52と協働して、作業スペース5側から商品収納部32の全体及び商品投入口44を気密に覆う。このため、商品Sの補充作業をしないときには、商品収納部32内の商品Sの温度変化が抑制されるようになっている。
【0040】
このように、断熱扉51として、上下方向にスライド移動するものを採用することで、開き戸タイプの断熱扉に比べて、作業スペース5内での操作性(作業効率)及びスペース効率を向上することができる。
【0041】
支持突起55は、商品ケース60を自販機本体3の上面53に傾斜して載置するのに用いられるものである。支持突起55は、自販機本体3の左右方向に延在する角材又はブロック材で構成され、上面53に接着等により固定される。もっとも、支持突起55を筐体31と一体に構成することも可能である。
【0042】
商品ケース60は、例えば、商品収納部32に補充される商品Sを複数(例えば24個)収容したダンボール製の箱型ケースで構成される。商品ケース60の長手方向の一端側は、切り開くことが可能に構成されており、切り開かれることで内部の商品Sを取り出すための取出し開口61を構成する。取出し開口61を作業スペース5に面するようにして商品ケース60を置いたとき、取出し開口61が先上がりとなる(すなわち、商品ケース60の姿勢が前方に斜め上方となる。)ように、商品ケース60の下面が支持突起55に支持される。これにより、載置したときの商品ケース60の姿勢が水平である場合に比べて、オペレーター300にとっては、取出し開口61から商品Sを取り出し易くなり、商品収納部32への商品Sの補充作業がし易くなる。
【0043】
なお、自販機本体3の上面53には、商品ケース60の後端下部の位置を規制するストッパ63を設けることもできる。ストッパ63を設けることで、オペレーター300が商品ケース60を上面53に載せたときに、その位置決めがし易くなる。また、商品ケース60が自販機本体3の後側へと誤って落下することを防止することができる。このようなストッパ63は、支持突起55と同様に角材等で構成することができるが、支持突起55よりも小さい高さで構成される。なお、別の実施態様では、支持突起55及びストッパ63を設ける自販機本体3の載置エリアとしては、上面53以外のエリアを採用してもよい。
【0044】
次に、作業スペース5、シューター7及び作業台9について順に説明する。
【0045】
図3に示すように、作業スペース5は、その内部にてオペレーター300が構造体2及び自販機本体3に対して作業可能な広さを有する。例えば、作業スペース5の前後の幅Wは(図5参照)、500mm以上に設定される。作業スペース5内にてオペレーター300が構造体2に対して行い得る作業としては、例えば、金銭回収部26,27からの売上金の回収のほか、コントローラ28のメンテナンス、作業ボード29の活用などがある。また、オペレーター300が自販機本体3に対して行い得る作業としては、例えば、商品収納部32への商品Sの補充作業、そのための断熱扉51の開閉や商品ケース60の傾斜設置などがある。以下の説明では、これらの作業をオペレーション作業と総称する。
【0046】
図5に示すように、シューター7は、自販機本体3のシューター33と商品取出し口24とをつなぐものである。このため、シューター7は、シューター33から送り出された商品Sを商品取出し口24へと案内する滑走面71を有する。シューター7を一つの部材で構成し、前方へと斜め下方に延びる滑走面71を一つの傾斜角度で構成することもできるが、ここではシューター7を分割式の部材で構成し、滑走面71に二つの傾斜角度をもたせている。
【0047】
具体的には、図6及び図7に示すように、滑走面71は、シューター33側の滑走面72と、商品取出し口24側の滑走面74とからなる。滑走面72は、滑走面45と面一に連続するように、滑走面72の一端側にあるフランジ部75の孔76を介して自販機本体3に固定される。一方、滑走面72の他端側は、滑走面74に段差無く連続する。なお、このような連続構造となるように、滑走面72と滑走面74との境界には、滑走面72及び滑走面74を下側から支持する支持構造が設けられるとよい。滑走面74は、滑走面72よりも前後方向の長さが短く構成されており、商品取出し口24に臨む先端側74aの孔77を介して構造体2に固定される。
【0048】
ここで、滑走面72は、滑走面74よりも急勾配となっている。すなわち、水平面に対する、滑走面72の傾斜角度αは、滑走面74の傾斜角度βよりも大きくなっている。また、滑走面72の傾斜角度αは、シューター33の滑走面45の傾斜角度と等しくなっている。このように、商品取出し口24付近の傾斜角度を減少傾向へと調整しておくことで、商品取出し口24付近での商品Sの搬出速度を緩和することができる。なお、滑走面72,74の傾斜角度の少なくとも一方、好ましくは滑走面74の傾斜角度βは、上記の支持構造を利用することで、調節可能に構成されるとよい。
【0049】
また、滑走面72,74は、互いに異なる滑り抵抗を有している。滑り抵抗を異ならせる手法としては、公知のものを適用することができ、例えば、互いに異なる素材を使うか、あるいは同じ素材を使いながらも表面処理を互いに異ならせるかである。ここでは、滑走面72を構成する板材は、ステンレスからなり、且つ、滑走面72にテフロン(登録商標)加工が施されている。一方、滑走面74を構成する板材は、アルミニウムからなる。このような構成とすることで、シューター7で適度な商品Sの滑りを確保しようとしている。
【0050】
この点について詳述すると、本実施形態の構成とは異なり、滑走面71の全面についてテフロン(登録商標)加工を施すことでその滑り抵抗を小さくした場合には、商品Sの滑りは良くなる。しかし、炭酸飲料の商品Sについては、商品取出し口24に送り出された際にフォーミング(泡)が発生して、商品価値が低下することがあり得る。一方で、滑走面71を構成する板材としてアルミニウムを用いることで、滑走面71の全面の滑り抵抗を大きくした場合には、フォーミングは抑制される。しかし、非炭酸飲料の商品Sについて滑走面71で詰ることがあり得る。
【0051】
これに対し、本実施形態では、上流側の滑走面72では滑り抵抗を小さくできるので、商品Sの搬出速度を確保して、商品Sの詰りを抑制することができる。一方で、下流側の滑走面74では滑り抵抗を大きくできるので、商品Sの搬出速度を緩めることができる。その結果、炭酸飲料の商品Sであっても、商品取出し口24に送り出された際にフォーミングが発生することを抑制することができる。したがって、商品Sの詰りの抑制と商品価値の確保とを両立した商品Sの適度な滑りを確保することが可能となる。なお、上記した滑走面72、74の傾斜角度の調整も、フォーミングの発生の抑制につながる。
【0052】
また、図6及び図7に示すように、シューター7には、商品Sを左右方向から位置規制するための複数のガイド81〜84が設けられている。ガイド81〜84の高さは、商品Sが滑走面71の左右方向に落ちることを抑制できる高さであればよく、例えば商品Sと同程度の高さとすることができる。ガイド81,82は、滑走面71の左右の両側端に立設され、前後方向に延在する。
【0053】
ガイド83は、滑走面72,74のうち、滑走面72の中央にのみ1つ立設されている。ただし、ガイド83を左右方向に複数立設してもよい。ガイド83は、ガイド81,82と平行に前後方向に延在するが、ガイド81,82よりも短い。また、ガイド83の傾斜した前端側83aは、滑走面74に達しないように構成されている。このように、ガイド83の前端側83aが商品取出し口24及びその近傍に位置しないようにすることで、購入者200が商品取出し口24の中央の奥深くに手を入れた場合にも、その手がガイド83に接触しないようにすることが可能となる。
【0054】
ガイド84は、ガイド81の内側にて、ガイド81の上流側の途中から滑走面74の先端側にかけて前後方向に対し傾いて延在している。詳細には、ガイド84の上流端86はガイド81の内面に接触し、ガイド84の下流端87はガイド81の内面から離れて滑走面74の中央寄りに位置している。このようなガイド84は、滑走面71を滑る商品Sの向きを変えるように作用する。
【0055】
具体的には、図7に示すように、上流から滑ってきた横向きの商品Sの口部(キャップ)がガイド84に接触すると、その反力によって、商品Sは、口部が上流に向くように、縦向きへと姿勢を変えられる。その後は、商品Sは、縦向きの姿勢のまま、商品取出し口24へと滑り落ちていく。このように、商品Sを縦向きの姿勢にして滑らせることで、横向き姿勢の場合に比べて、円筒型の商品Sをその周方向に積極的に回転させなくて済む。これにより、炭酸飲料の商品Sの場合には、そのフォーミングの発生をより一層抑制することが可能となる。別の見方をすれば、複数のコラム41のうち、商品Sがガイド84に接触するような位置にあるコラム41を、炭酸飲料の商品Sを収納するのに用いることが好ましい。
【0056】
なお、緩衝材を取り付けることもフォーミング防止には効果がある。例えば、商品取出し口24の商品受けの部位に緩衝材を設けてもよいし、ガイド84に緩衝材を設けてもよい。
【0057】
作業台9は、図1に示すように、シューター7を阻害しないように、作業スペース5に配置される。作業台9は、オペレーター300が乗降可能なものであれば、その構造が限定されるものではない。一例として、作業台9は、オペレーター300が乗る乗降板91と、乗降板91の四隅に垂設した四本の脚93と、を備える。乗降板91の広さは、これに乗ったオペレーター300が商品Sの補充作業を行うことが可能な広さであればよい。したがって、作業台9の前後方向の幅は、図1に示すように、作業スペース5の幅と同等ないしはこれよりも僅かに小さいものであってもよいし、作業スペース5の幅の半分程度であってもよい。
【0058】
また、作業台9の高さは、これに乗ったオペレーター300が自販機本体3上の商品ケース60に手が届いて、商品Sの補充作業を行える高さであればよい。このように構成された作業台9を作業スペース5に設けておくことで、商品投入口44を自販機本体3において高い位置(自販機本体3の上部領域)に設定した場合にも、商品投入口44とオペレーター300との高さレベルの差を縮めることができ、商品Sの補充作業性を向上できる。特に、商品ケース60を自販機本体3の上面53に置いて行う商品Sの補充作業については、その作業性を向上することができる。なお、作業台5における前後の脚93、93の間からシューター7にアクセスできるように、この脚93、93の間は開放されているとよい。
【0059】
なお、上記したように、公知の自動販売機における前扉及び自販機本体を、本実施形態の構造体2及び自販機本体3に適用することができる。しかし、本実施形態では、公知の自動販売機に比べて、構造体2と自販機本体3との間は作業スペース5の分だけ離れることになる。このため、自販機本体3内のシューター33の傾きを維持しようとするには、自販機本体3を構造体2よりも高い位置に設置する必要がある。この点に鑑みて、本実施形態では、自販機本体3の下側に台100を置いて、構造体2に対して自販機本体3の高さレベルを上げている(図1及び図5参照)。このような構成であれば、公知の自動販売機における前扉及び自販機本体を複雑化することなく、本実施形態の構造体2及び自販機本体3に適用することができる。なお、台100の高さなどは、作業スペース5の広さに応じて設計すればよい。
【0060】
以上説明した本実施形態の自動販売機1の作用効果について簡単に説明する。
【0061】
先ず、本実施形態によれば、オペレーター300が作業スペース5内でオペレーション作業をすることができると同時に、購入者200が選択した商品Sを商品取出し口24へと送り出すことができる(図3参照)。したがって、オペレーション作業中であっても、自動販売機1による商品Sの販売を継続することができる。また、オペレーション作業を購入者200に見せないようにすることができる。さらに、自動販売機1の稼働中も、随時、商品Sの補充作業を行うことができるので、自動販売機1において商品Sの売切れを生じさせないようにすることもできる。
【0062】
加えて、既存の自動販売機の構成(前扉及び自販機本体)を活用することができる。一方で、構造体2と自販機本体3とを同じような輪郭にする必要もないため、各種サイズの自動販売機1を設置することも可能である。例えば、構造体2について、既存の小型の自動販売機の前扉を活用しつつ、自販機本体3について、この小型の自動販売機よりも大きな自動販売機の自販機本体を活用することもできる。
【0063】
<変形例>
本実施形態の変形例について説明する。
構造体2は、公知の自動販売機の前扉の構成に限定されるものではなく、少なくとも商品選択部(商品選択ボタン25)及び商品取出し口24を有する限り、どのような断面構造であってもよい。
【0064】
自販機本体3の商品収納部32は、上記した複数のコラム41を有するタイプとは異なるものであってもよい。例えば、商品収納部32は、自販機本体3の前後方向に商品を複数収容する棚を、上下及び左右に複数列有するものであってもよい。このような商品収納部32の場合には、自販機本体3は、シューター33ではなく、XY移動機構によって商品収納部32から該当の商品を受け取り、自販機本体3外へと送り出すことが好ましい。
【0065】
また、自販機本体3から商品取出し口24へと商品Sを送り出すものとして、シューター7を用いたが、これ以外の構成の商品送出し部を用いることも可能である。すなわち、商品送出し部として、XY移動機構を採用することができる。この場合には、XY移動機構が、自販機本体3外へと送り出された商品Sを受け取り、それを構造体2へと移載するように商品取出し口24へと導くことになる。なお、商品送出し部にXY移動機構を用いる場合には、自動販売機1は、転動しない商品Sも販売対象とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1:自動販売機、 2:構造体、 3:自販機本体、 5:作業スペース、 7:シューター(商品送出し部)、 9:作業台、 12:出入口、 24:商品取出し口、 25:商品選択部、 32:商品収納部、 44:商品投入口、 51:断熱扉、 53:上面(載置エリア)、 55:支持突起、 60:商品ケース、 61:取出し開口、 71,72,74:滑走面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品選択部及び商品取出し口を有する構造体と、
商品を複数収納する商品収納部を有する自販機本体と、を備えた自動販売機において、
前記構造体と前記自販機本体との間にある作業スペースであって、当該作業スペース内にてオペレーターが前記構造体及び前記自販機本体に対して作業可能な広さを有する作業スペースと、
前記作業スペースに設けられ、前記商品選択部によって選択された前記商品収納部内の商品を前記自販機本体から前記商品取出し口へと導く商品送出し部と、を備えた自動販売機。
【請求項2】
当該自動販売機の前側及び後側は、それぞれ、前記構造体及び前記自販機本体によって構成されており、
当該自動販売機の左右の両側は、外部から前記作業スペースが視認できないように構成されており、
当該自動販売機の左右の両側の少なくとも一方には、前記作業スペースへの出入口が設けられている、請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記商品送出し部は、商品を前記自販機本体から前記商品取出し口へと案内する滑走面付きのシューターからなる、請求項1又は2に記載の自動販売機。
【請求項4】
前記シューターの滑走面は、商品の案内方向において商品の滑り抵抗が互いに異なる面を有する、請求項3に記載の自動販売機。
【請求項5】
前記自販機本体は、前記作業スペース側且つ当該自販機本体の上部領域に、前記商品収納部に商品を投入するための商品投入口を有し、
前記作業スペースには、オペレーターが乗降可能な作業台が設けられている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の自動販売機。
【請求項6】
前記自販機本体は、前記作業スペース側に断熱扉を有しており、
前記断熱扉は、前記商品投入口を覆う上側位置と覆わない下側位置との間で上下方向にスライド移動可能に構成されている、請求項5に記載の自動販売機。
【請求項7】
前記自販機本体は、前記商品収納部に補充される商品を収容した商品ケースを載置可能に構成された載置エリアを有しており、
前記載置エリアには、前記商品ケースがその取出し開口側を前記作業スペースに面して置かれたときに、当該取出し開口側が先上がりとなるように前記商品ケースを支持する支持部が設けられている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−134039(P2011−134039A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291849(P2009−291849)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(300009941)利根コカ・コーラボトリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】