説明

自動販売機

【課題】新たな外観形状を与える装飾部材を作業員一己で取付けることが可能な自動販売機を提供する。
【解決手段】装飾ユニット9を外扉1の上部に載置した状態で前記装飾ユニット9と外扉1とに跨る取付金具20を備え、前記装飾ユニット9を前傾姿勢に傾倒させた状態で退避位置に位置させた取付金具20が前記装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させる過程で自重により進出位置に移動する態様で装飾ユニット9に係止し、前記装飾ユニット9を外扉1の上部に載置する際、装飾ユニット9を前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具20を退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させると取付金具20が外扉1に跨るように自動的に進出位置に移動して前記装飾ユニット9の前方側への移動を阻止(仮止め)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機の上部に装飾ユニットを追加装備してその外観形状を変更可能な自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動販売機として缶入り飲料,ペットボトル入り飲料等の商品を販売する一般的な自動販売機は断熱筐体としてなる本体キャビネットの前面に片開き式の外扉が設けられ、当該外扉には額縁状の窓を形成して商品展示室が形成されている。この商品展示室の前面は透明パネルで覆われて商品展示室に展示された複数の商品見本を外部から視認できるようにされている。このような自動販売機においては商品展示室を有する外扉の表面部分が自動販売機自身の存在感や宣伝効果に大きな役割を果たしている。このため、外扉における商品展示室の形状や外扉の表面に飲料容器を描くなどのデザインを施して他の自動販売機に対して際立つように工夫されている。しかしながら、普く設置された自動販売機から分かるように、その外郭は四角柱状の角張った箱型をなしているのが一般的であり、外観上の差異はない。そこで、標準的な四角柱状の自動販売機に対して差別化を図るために外扉の上部をアーチ形に形成したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−325003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された自動販売機は外扉の上部をアーチ形に形成することにより自動販売機に新たな外観形状を与えることができる点で優れている。ところで、標準的な自動販売機の外郭を四角柱状の角張った箱型となしているのは、運搬時や倉庫への保管時に自動販売機を積み重ねることができるようにして運搬効率や保管スペース効率の向上を図るためである。したがって、上記特許文献1に記載された自動販売機のように外扉の上部をアーチ形に形成した場合、アーチ形の高さ寸法が大きい場合には積み重ねることができなくなり、アーチ形を残しつつ積み重ねを可能とするためにはアーチ形の高さ寸法を小さくせねばならず標準的な自動販売機の外観に近似してしまうという課題を有する。そこで、四角柱状の角張った箱型の自動販売機に新たな外観形状を与えるための装飾部材を標準的な自動販売機の付属部品として追加装備することができるように構成し、前記装飾部材を標準的な自動販売機に着脱自在とすることが考えられる。このように、装飾部材を着脱自在とすると、運搬効率や保管スペース効率を損なうことなく、現地において標準的な自動販売機に装着することができ、既設の自動販売機にも適用することができる。しかるに、自動販売機の外観形状を変える場合には、特許文献1にも示されるように、自動販売機のフェースである外扉に新たな外観形状を与えるのが通例である。このため、追加装備される装飾部材を自動販売機の外扉上部に装着しようとした場合、装飾部材を外扉上部に載置した状態で放置すると脱落してしまうおそれがあるので、装飾部材を外扉上部に載置した状態に保持しつつ固定(ねじ締結)せねばならない。このように、装飾部材を外扉上部に載置した状態に保持しつつ固定(ねじ締結)する作業を一人で行おうとすると一方の手で装飾部材を保持し、他方の手でねじ締結せねばならないので極めて困難であり、少なくとも二人の作業員による二人三脚の作業が必要となる。すなわち、一人が外扉上部に載置した装飾部材を保持した状態で他の一人が装飾部材を外扉にねじ締結する必要がある。このため、装飾部材を追加装備する際に少なくとも二人の作業員が現地に出向かねばならず非効率的であるという課題を有する。
【0005】
そこで、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、新たな外観形状を与える装飾部材を作業員一己で取付けることが可能な自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、本体キャビネットの前面を開閉する片開き式の外扉を備えた自動販売機であって、正面視矩形状の自動販売機に対して新たな外観を与える意匠が施された装飾ユニットを前記外扉の上部に着脱自在に取付けてなる自動販売機において、前記装飾ユニットは少なくとも前記外扉の前面に位置して商品展示室にまで延在する装飾部材を備え、前記外扉の背面側であって前記装飾ユニットを外扉の上部に載置した状態で前記装飾ユニットと外扉とに跨る取付金具を備え、当該取付金具は前記装飾ユニットに退避した退避位置と前記装飾ユニットから進出する進出位置との間を移動自在であって、前記装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で退避位置に位置させた取付金具が、前記装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させる過程で自重により進出位置に移動する態様で装飾ユニットに係止され、前記装飾ユニットを外扉の上部に載置する際、装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具を退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させることにより取付金具が自重により進出位置に移動して装飾ユニットと外扉とに跨るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、本体キャビネットの前面を開閉する片開き式の外扉を備えた自動販売機であって、正面視矩形状の自動販売機に対して新たな外観を与える意匠が施された装飾ユニットを前記外扉の上部に着脱自在に取付けてなる自動販売機において、前記装飾ユニットは少なくとも前記外扉の前面に位置して商品展示室にまで延在する装飾部材を備え、前記外扉の背面側であって前記装飾ユニットを外扉の上部に載置した状態で前記装飾ユニットと外扉とに跨る取付金具を備え、当該取付金具は前記装飾ユニットに退避した退避位置と前記装飾ユニットから進出する進出位置との間を移動自在であって、前記装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で退避位置に位置させた取付金具が、前記装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させる過程で自重により進出位置に移動する態様で装飾ユニットに係止され、前記装飾ユニットを外扉の上部に載置する際、装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具を退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させることにより取付金具が自重により進出位置に移動して装飾ユニットと外扉とに跨るようにしたことによって、前記装飾ユニットを外扉の上部に載置する際に装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具を退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させて外扉の上部に載置すれば取付金具が自動的に退避位置から進出位置に移動して装飾ユニットと外扉とに跨り、これによって装飾ユニットの前方側への移動が取付金具によって阻止されるので、装飾ユニットは前後方向への移動が装飾部材および取付金具により阻止される。つまり、装飾ユニットは、装飾ユニットを外扉の上部に載置した状態で外扉に仮止めされる。したがって、外扉の上部に載置した装飾ユニットから手を離して放置しても装飾ユニットが脱落することがないので、作業員一己で装飾ユニットを装着することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1である自動販売機の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1の外扉の上部に敷設された装飾ユニットおよび保護部材を示し、(a)は外扉の上部に装飾ユニットを敷設した状態の前方右斜め上から見た斜視図、(b)は(a)の背面斜視図である。
【図3】分解した装飾ユニットを外扉とともに示す分解斜視図である。
【図4】図2の(b)の取付金具を示す斜視図である。
【図5】装飾ユニットの組立方法を説明する図であり、(a)はその前方右斜め上から見た斜視図、(b)はその背面斜視図である。
【図6】分解した装飾ユニットの一部を拡大して前面下方から見た斜視図である。
【図7】装飾ユニットを外扉に上部への敷設方法を説明する背面左斜め上方から見た斜視図である。
【図8】広告表示部材の装着方法を説明するための前方斜め下から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2である自動販売機に係る装飾ユニットを示す背面斜視図である。
【図10】図9の取付金具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における実施の形態である自動販売機を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこの実施の形態により限定されるものではない。
【0010】
図1は本発明の実施の形態1である自動販売機の全体構成を示す。図において、1は本体キャビネットの前面に不図示のヒンジ機構により開閉自在に軸支された片開き式の外扉である。図では外扉1に隠れて見えない前記本体キャビネットは前面が開放した断熱筐体として形成されている。この本体キャビネット1の庫内は不図示の断熱仕切壁により左右方向に複数の商品収納室に区分され、各商品収納室には缶入り飲料,ペットボトル飲料等の商品を収容するとともにその下端に後述する商品選択ボタンの操作により商品を搬出する商品払出機構を有する商品収納ラックが収設されている。また、各商品収納室の下部には当該各商品収納室を冷却もしくは加熱して商品収納ラックに収容した商品を冷却・加熱する冷却/加熱ユニットが配設されている。そして、本体キャビネットの前面開口は片開き式の断熱内扉により閉塞されている。
【0011】
前記外扉1の前面の上部域には透明パネル3で覆われ商品展示室2が設けられている。この商品展示室2内には上下方向に複数段、この実施の形態では上下方向に3段に配設された商品展示台(不図示)に商品見本4が載置され、この商品見本4に対応して透明パネル3の前面には商品選択ボタン5が配設されている。前記外扉1の略中央部における正面視右側領域には接客部6が設けられ、この接客部6には硬貨投入口61、紙幣挿入口62、返却レバー63、投入金額,庫内温度,販売中,準備中等の各種情報をディスプレイに表示する販売情報表示部64が組付けられている。また、外扉1における高さ方向略中央であって右端側(反ヒンジ機構側)にはシリンダー錠付きの主ロック装置7が設けられ、前記外扉1における下部領域には硬貨返却口1a、商品販売口1bが設けられている。そしてまた、外扉1の正面視左側領域には外扉1の下端から上端まで曲線により連続するとともに上下端部側の幅が広く中央付近の幅が狭い帯状装飾体8が敷設されている。この帯状装飾体8は合成樹脂製になり、外扉1の表面(前面)に対して前方側に突出する態様であたかも三次元的に浮き出ているような印象を与えるよう立体的に形成されている。
【0012】
前記外扉1の上部にはモジュール部品としての装飾ユニット9が着脱自在に敷設されている。前記外扉1の上部に敷設された状態の装飾ユニット9の正面側と背面側から見た拡大斜視図を図2の(a),(b)に示し、前記装飾ユニット9の分解斜視図を図3に示している。前記装飾ユニット9は図2に示すように、外扉1の横幅に一致した幅を有する薄板鋼板製の装飾部材91、外扉1の上面に固着される薄板鋼板製の取付部材92、および前記装飾部材91に前方から被せられる態様の透明な合成樹脂製の保護部材10とからなる。なお、図2の(a)における30は後述するように保護部材10と装飾部材91との間に配設される広告表示部材である。また、図2の(b)における20は取付部材92に上下方向にスライド移動自在に係止された取付金具、21は保護部材10の固定具、22は外扉1と取付部材92とに跨り、両者を固着する固定金具である。
【0013】
前記装飾部材91は、図3に示すように水平線に沿う下辺(下縁)に対して上辺(上縁)が湾曲し、その周縁を後方に折り曲げて薄い箱型形状に形成されている。この装飾部材91は下辺(下縁)が商品展示室2の上端と前後方向に重なるように外扉1の表面に配設されるものであり、正面視右端側の上下方向の長さt0が外扉1に形成された商品展示室2の上端から外扉1の上縁までの寸法t1と略同一である一方、左端側の上下方向の長さは寸法t1よりも大きく外扉1の上端よりも上方に突出するように定められ、その正面視左端側には前記帯状装飾体8の延長軌跡に一致する形状に形成された帯状装飾体部911、この帯状装飾体部911に連なる扉頭部912が形成されている。また、装飾部材91の下縁には図5の(b),図6に示すように切欠913が形成されている。
【0014】
前記取付部材92は外扉1の横幅よりも短く、その上下方向の中間部が外扉1の上部扉枠1A(図3参照)に載置される載置部92Aとして折り曲げられ、この載置部92Aは上部扉枠1Aに腰掛けるように載置される。この取付部材92の上端部には前方に向けて折り曲げられた3個の固定片921が前記装飾部材91の湾曲面に沿うように形成されている。この固定片921の前方側への突出長さは装飾部材91の上縁(後方を向くように折り曲げられている)の長さより短く定められている。また、取付部材92の下端は前方を向くように折り曲げられて下縁92Bとして形成され、この下縁92Bの前端にはフック状の挟持部922が左右方向に3個形成されている。この挟持部922は、図6に拡大して示すように、前記下縁92Bよりも一段下方に下がった状態のフック形状をなしている。この挟持部922には、前述した装飾部材91の下縁に形成した切欠913が嵌め込まれるものである。また、前記下縁92Bの略中央部には、図3,図5の(b)に示すように、後方を向いたフック状の係合片923が切り起しにより形成され、この係合片923のフック先端は後方斜め上方に延在している。この係合片923に対応して外扉1の商品展示室2を形成する窓枠の上縁には嵌合穴2A(図3参照)が形成されているものである。
【0015】
そして、取付部材92の上部領域の背面には、図2の(b)に示すように、略Z字状に形成された取付金具20がスライド移動自在に係止されている。この取付金具20は、図4に拡大して示すように、上方の脚片には上下方向に延在する左右一対の長穴201,201が形成されるとともに左右一対の長穴201,201の間に上下一対のねじ挿通穴202,202が形成される一方、他方の脚片には左右一対のねじ挿通穴203,203が形成されている。前記取付金具20は左右一対の長穴201,201にそれぞれ挿通される段付きねじS0を介して取付部材92にスライド移動自在に取付けられている。
【0016】
前記保護部材10は装飾部材91よりも一回り大きく、装飾部材91の左右端部をカットした形状の縦断面コ字状に形成されている。この保護部材10の上縁11には、3個の固定用のスリット12(図3参照、)が形成されている。また、保護部材10の下縁13には、図5の(b),図6に示すように、切欠14および左右方向に延在するスリット15が形成されている。前記切欠14は装飾部材91の切欠913と同様に、取付部材92の挟持部922に嵌め込まれるものであり、3個の挟持部922に対応して設けられているものである。また、保護部材10の下縁13に左右方向に延在するように形成したスリット15は後述する広告表示部材30を抜き差しするものである。
【0017】
前記装飾ユニット9の組立について説明すると、まず、箱型形状の装飾部材91の背後を塞ぐように取付部材92を組付ける。この場合、取付部材92の下部に設けた挟持部922を装飾部材91の切欠913に嵌め込んだ上で取付部材92の固定片921を装飾部材91の上縁の内側に潜り込ませる。前述したように、取付部材92の下部に設けた挟持部922を装飾部材91の切欠913に嵌め込むと装飾部材91の下縁と取付部材92の下縁92Bとが重なり合い、装飾部材91および取付部材92の相互に重なる合う下縁にそれぞれ形成したリベット挿通孔にリベットR1(図6参照)を挿通させることにより両者を固定する。同様に、装飾部材91の上縁と取付部材92の固定片921にそれぞれ形成したリベット挿通孔にリベットR2,R3,R4(図3参照)を挿通させることにより両者を固着する。これにより装飾部材91と取付部材92とが一体化される。
【0018】
このように装飾部材91と取付部材92とを一体化した後、前記装飾部材91の前方から保護部材10を装着する。この場合、保護部材10の下縁13に形成した切欠14(図5の(b)、図6参照)を取付部材92の下縁92Bに形成した挟持部922に嵌合させる。なお、前記挟持部922には装飾部材91の下縁の切欠913も嵌合するように構成されているので、前記挟持部922は装飾部材91の下縁と保護部材10の下縁13を挟み込むことができるような寸法に定められているものである。次いで、装飾部材91を覆う保護部材10の上縁11に形成したスリット12にL字状に折り曲げられた固定具21の一方の脚片を差し込む。ここで、保護部材10は装飾部材91よりも一回り大きく形成されており、装飾部材91の上縁を覆う保護部材10の上縁11は取付部材92よりも背面側まで延在しており、当該上縁11における取付部材92の背面側に位置する箇所に前記スリット12が形成されている。このため、前記スリット12に差し込まれた固定具21の一方の脚片は取付部材92の背後に位置しており、前記固定具21の一方の脚片を取付部材92にねじS(図5参照)によりねじ止めすることにより前記保護部材10が保持される。これにより、装飾部材91と取付部材92および保護部材10からなる装飾ユニット9がモジュール部品として組立られる。なお、装飾部材91の前面と保護部材10の背面との間には保護部材10の下縁13に形成したスリット15の幅と略同一の隙間が形成されてなるものである。
【0019】
次に、モジュール部品として一体化された装飾ユニット9の外扉1への組付けについて図7を参照して説明する。なお、外扉1の上面の上部扉枠1Aは背面側に向けて下る一段の階段状に形成されている。また、外扉1は開放した状態にあり、作業員は外扉1の前面側にいるものとする。
【0020】
前記装飾ユニット9を外扉1の上部に敷設するにあたり、装飾ユニット9を前傾姿勢(図示矢印Q方向に前傾させた姿勢)の状態とする。この場合、装飾ユニット9を前傾姿勢に傾ける角度は、少なくとも取付部材92に段付きねじS0により係止された取付金具20が上限位置(退避位置)に維持される、つまり、上限位置(退避位置)までスライドさせた取付金具20が下降することがない角度(取付金具20と取付部材92との摩擦抵抗にもよるが、例えば45度の傾斜角)である。このように、装飾ユニット9を前傾姿勢に傾けた状態で、取付部材92の下縁92Bから後方を向いたフック状の係合片923のフック先端を外扉1の商品展示室2を形成する窓枠の上縁に形成した嵌合穴2A(図3参照)に差し込む。この場合、係合片923のフック先端は装飾ユニット9が起立状態では後方斜め上方を向くように形成されており、装飾ユニット9を前傾姿勢とすることにより係合片923のフック先端が略鉛直方向を向くので、装飾ユニット9を前傾姿勢の状態で上方へ移動(図示矢印P)させることによって係合片923のフック先端が外扉1における窓枠の嵌合穴2Aに挿入される。前記係合片923のフック先端が嵌合穴2Aに挿入されるように装飾ユニット9を前傾姿勢の状態で上方へ移動させつつ装飾ユニット9を後方側に移動させると前記係合片923が嵌合穴2Aに嵌合し、この状態で装飾ユニット9を起立姿勢に移動させる(図示矢印R)。そうすると、取付部材92の載置部92Aが前記外扉1の上面(階段状の上部扉枠1Aの上段部)に腰掛けるようになる。なお、取付部材92の下縁92Bから載置部92Aまでの長さは前記係合片923を嵌合穴2Aに嵌合させた状態で矢印R方向に移動させた際にも載置部92Aが外扉1の上部前縁と当接することなく乗り越えることができるような長さに定められているものである。
【0021】
上述のように、装飾ユニット9を矢印Rの方向に移動を開始してから取付部材92の載置部92Aが前記上部扉枠1Aの上段部に腰掛けるまで移動させる途中において上限位置(退避位置)までスライドしている取付金具20は自重により下降を開始する。そして、取付部材92の載置部92Aが前記外扉1の上面(階段状の上部扉枠1Aの上段部)に腰掛けた状態で取付金具20は取付部材92と外扉1(階段状の上部扉枠1A)とに跨るように下限位置(進出位置)まで下降する。このように、取付部材92と外扉1(階段状の上部扉枠1A)とに跨るように下限位置(進出位置)まで下降した取付金具20は、取付部材92の載置部92Aが外扉1の上面(階段状の上部扉枠1Aの上段部)に腰掛けた状態の装飾ユニット9の前方への移動を阻止することとなる(装飾ユニット9の後方への移動は装飾部材91の下縁が商品展示室2まで延在するように形成されていることにより阻止されている)。このため、作業員が装飾ユニット9から手を離しても装飾ユニット9は外扉1の上面に載置した状態から脱落することはない。つまり、下限位置(進出位置)まで下降した取付金具20によって装飾ユニット9は外扉1の上面に載置された状態に仮止めされる。そこで、作業員は装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させて外扉1の上部に載置して仮止めした上で、外扉1の背面に回り込む。そして、取付金具20のねじ挿通穴202,203(図4参照)にねじを挿入して外扉1(階段状の上部扉枠1A)に螺着する。次いで、固定金具22を取付部材92と外扉1(階段状の上部扉枠1A)とに跨るように配設した上でねじにより螺着する。これにより装飾ユニット9の外扉1の上部への敷設が完了する。上述したように、装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させて外扉1の上部に載置した際、装飾ユニット9が取付金具20により仮止めされるので、作業員は外扉側から装飾ユニット9を外扉1の上面に載置した上で、装飾ユニット9から手を離して外扉の背面に回り込むことができる。したがって、作業員一己により装飾ユニット9を外扉1の上部に敷設することが可能である。
【0022】
ここで、装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢とするために矢印Rの方向に移動させる途中において取付金具20は上限位置(退避位置)から自重により下降を開始するので、装飾ユニット9が起立姿勢に達するまでの間に下降する取付金具20の下端(他方の脚片の先端)が外扉1の階段状の上部扉枠1Aの上段部に当接する場合がある。この場合、取付金具20の下降が一時的に停止するが、矢印R方向への移動により取付金具20の下端が上部扉枠1Aの上段部を滑って移動した後、前記上部扉枠1Aの上段部を乗り越えると再び下降を開始して下限位置(進出位置)まで下降するものである。
【0023】
前述したように、装飾ユニット9を外扉1の上部に敷設した後、装飾ユニット9における装飾部材91と保護部材10との間には、図8に示すように、広告表示部材30が装着される。前記広告表示部材30は可撓性を有するプラスチック成形品としてなり、広告文字,図柄,ロゴタイプなどを表示する広告表示部31と、この広告表示部31の下端を直角に折り曲げて形成された係止部32を備えてなる。この広告表示部材30は保護部材10の下縁13に形成された左右方向に延在するスリット15を介して保護部材10と装飾部材91との間に広告表示部31を挿入しつつ、前記係止部32を取付部材92の下縁92Bに形成した挟持部922に差し込む。ここで、広告表示部材30の係止部32はその自由端が、広告表示部材30を装飾ユニット9に装着した状態で取付部材92の挟持部922の先端部分にまで延在する長さを有し、広告表示部材30の広告表示部31を保護部材10のスリット15に差し込む最終段階において広告表示部31の下端側を前方側に撓ませつつ、係止部32の自由端を取付部材92の挟持部922に圧入する。この場合、挟持部922には装飾部材91と保護部材10の下縁が嵌め込まれて挟持されており、係止部32の全体を圧入するには挟持部922を広げるような労力を必要とするのであるが、この実施の形態においては係止部32の自由端の一部のみを圧入するように定められているので、挟持部922に対して係止部32を容易に差し込むことができる。このように広告表示部材30の係止部32を取付部材92の挟持部922に係止させることにより広告表示部材30の脱落が防止される。また、広告表示部材30の交換に際しては前記係止部32を挟持部922から引き外した上で広告表示部31を保護部材10のスリット15から引き抜けばよい。
【0024】
また、装飾ユニット9の装飾部材91の表面(前面)における中央部分91a(図3参照)の領域には商品展示室2の背面を形成する中扉(不図示)と同様に白色塗装が施されているものである。このように、商品展示室2の色彩と装飾部材91の中央部分91aの色彩が同一であって、かつ、装飾部材91の下縁が商品展示室2の上端にまで延在していることによって宛ら商品展示室2が拡大された印象を与えることができる。すなわち、装飾部材91の中央部分91aと商品展示室2の色彩が同一であった場合にも装飾部材91の下縁が商品展示室2の上端まで延在していない場合には外扉1に画成された商品展示室2と装飾部材91との間が外扉1(商品展示室2の周囲のフレームであって商品展示室2の色彩とは異なる色彩が施されている)により区切られることから装飾部材91を商品展示室2の一部として印象付けることができない。かかる点、装飾部材91の色彩を商品展示室2に施された色彩と同一とし、かつ、装飾部材91を商品展示室2にまで延在させたことによって前述したように外扉1に画成された商品展示室2が装飾部材91の領域まで拡大したような印象を与えることができる。したがって、従来においては外扉1に画成された商品展示室2内に設けていた広告文字,図柄,ロゴタイプなどの表示媒体を装飾部材91の領域に移動(この実施の形態では前記表示媒体を表示した広告表示部材30が相当する)させることができる。この場合、装飾部材91は専ら広告文字,図柄,ロゴタイプなどの表示媒体の表示領域として使用できることから商品展示室2内に設けていた表示媒体よりも格段に大きく表示することができるので絶大な宣伝効果を得ることが可能となり、また、外扉1に画成された商品展示室2は広告文字,図柄,ロゴタイプなどの表示媒体の制約を受けることなく専ら商品見本4の展示に使用することができるものである。
【0025】
そして、装飾部材91の帯状装飾体部911は外扉1に敷設した帯状装飾体8の延長軌跡の形状、および同一の色彩が施されており、帯状装飾体8と一体である印象、つまり、帯状装飾体8を延長させて表示させることができる。したがって、曲線模様であって三次元的に浮き出すような印象を与える帯状装飾体8をより一層際立たせることが可能となり、他の自動販売機との差別化を図ることができる。なお、装飾部材91の表面(前面)における右端部分91b(図3参照)、および前記帯状装飾体部911に連なる扉頭部912には外扉1の表面の塗装色と同一の色により塗装されているものである。このように装飾ユニット9を構成する装飾部材91には他の自動販売機に対して新たな外観を与える意匠が施されている。
【0026】
なお、装飾ユニット9は現地(設置場所)において取付金具20,固定金具22のねじを緩めることによって自動販売機(外扉1)から取り外すことができるので、新たな装飾ユニット9と交換することもできる。さらに、既設の自動販売機にも装飾ユニット9を追加装備(後付)することもできるものである。
【0027】
次に、本発明の実施の形態2の自動販売機について図9および図10を用いて説明する。図9はこの実施の形態2における装飾ユニット9の背面斜視図、図10は装飾ユニット9を外扉1の上部に載置した状態で仮止めする取付金具20Aの斜視図である。この実施の形態2における自動販売機が実施の形態1の自動販売機と相違する点は、装飾ユニット9を外扉1の上部に載置した状態で仮止めする取付金具20Aのみであり、その他の構成は実施の形態1の自動販売機と同一であるので、実施の形態1の自動販売機と同一のものには同一の符号を付してその説明は省略する。
【0028】
図9において、20Aは、装飾ユニット9を構成する取付部材92における上部領域の背面にスライド移動自在に係止された取付金具である。この取付金具20Aは、図10に示すように、取付金具20Aの上方の脚片に上下方向に延在する上下一対の長穴20A1,20A1が形成される一方、他方の脚片には左右一対のねじ挿通穴20A2,20A2が形成されている。前記取付金具20Aの上下一対の長穴20A1,20A1は実施の形態1の取付金具20における上下一対のねじ挿通穴202,202(図4参照)と重なるように形成されているものであり、上下一対の長穴20A1,20A1の上端箇所が前記取付金具20のねじ挿通穴202,202と一致している。前記取付金具20Aは、上下一対の長穴20A1,20A1にそれぞれ挿通され、かつ、取付部材92に螺着されるねじS1,S1を介して取付部材92に係止され、ねじS1,S1を緩めることによりスライド移動自在である。
【0029】
この実施の形態2における取付金具20Aは、装飾ユニット9を外扉1へ敷設する際にねじS1,S1を緩めて取付金具20Aを上下方向にスライド移動自在とした上で取付金具20Aを上限位置(退避位置)まで引き上げた状態とする点以外は実施の形態1と同様であるので、ここでは装飾ユニット9の外扉1の上部への敷設方法の説明は省略する。この実施の形態2における取付金具20Aによれば、実施の形態1における取付金具20に対して段付きねじS0を削減することができる。
【0030】
なお、上記各実施の形態では、取付金具20,20Aを上限位置(退避位置)と下限位置(進出位置)との間をスライド移動自在としたものについて説明したが、取付金具20,20Aを回動させるようにすることもできる。例えば、図10に示した2つのねじS1,S1のうちの上方のねじS1のみを用い、長穴20A1をねじS1が挿通される丸穴とし、前記ねじS1を中心として取付金具20Aを回動させるようにすることもできる。
【0031】
前述したとおり本発明によれば、本体キャビネットの前面を開閉する片開き式の外扉1を備えた自動販売機であって、正面視矩形状の自動販売機に対して新たな外観を与える意匠が施された装飾ユニット9を前記外扉1の上部に着脱自在に取付けてなる自動販売機において、前記装飾ユニット9は少なくとも前記外扉1の前面に位置して商品展示室2にまで延在する装飾部材91を備え、前記外扉1の背面側であって前記装飾ユニット9を外扉1の上部に載置した状態で前記装飾ユニット9と外扉1とに跨る取付金具20,20Aを備え、当該取付金具20,20Aは前記装飾ユニット9に退避した退避位置と前記装飾ユニット9から進出する進出位置との間を移動自在であって、前記装飾ユニット9を前傾姿勢に傾倒させた状態で退避位置に位置させた取付金具20,20Aが、前記装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させる過程で自重により進出位置に移動する態様で装飾ユニット9に係止され、前記装飾ユニット9を外扉1の上部に載置する際、装飾ユニット9を前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具20,20Aを退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させることにより取付金具20,20Aが進出位置に移動して装飾ユニット9と外扉1とに跨るようにしたことによって、前記装飾ユニット9を外扉1の上部に載置する際に装飾ユニット9を前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具20,20Aを退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニット9を前傾姿勢から起立姿勢に移動させて外扉1の上部に載置すれば取付金具20,20Aが自動的に退避位置から進出位置に移動して装飾ユニット9と外扉1とに跨り、これによって装飾ユニット9の前方側への移動が取付金具20,20Aによって阻止されるので、装飾ユニット9は前後方向への移動が装飾部材91および取付金具20,20Aにより阻止される。つまり、装飾ユニット9は、装飾ユニット9を外扉1の上部に載置した状態で外扉1に仮止めされる。したがって、外扉1の上部に載置した装飾ユニット9から手を離して放置しても装飾ユニット9が脱落することがないので、作業員一己で装飾ユニットを装着することができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0032】
1…外扉、2…商品展示室、3…透明パネル、4…商品見本、5…商品選択ボタン、6…接客部、8…帯状装飾体、9…装飾ユニット、10…保護部材、14,913…切欠、20,20A…取付金具、22…固定金具、30…広告表示部材、91…装飾部材、92…取付部材、201,20A1…長穴、911…帯状装飾体部、922…挟持部、S0…段付きねじ、S1…ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体キャビネットの前面を開閉する片開き式の外扉を備えた自動販売機であって、正面視矩形状の自動販売機に対して新たな外観を与える意匠が施された装飾ユニットを前記外扉の上部に着脱自在に取付けてなる自動販売機において、前記装飾ユニットは少なくとも前記外扉の前面に位置して商品展示室にまで延在する装飾部材を備え、前記外扉の背面側であって前記装飾ユニットを外扉の上部に載置した状態で前記装飾ユニットと外扉とに跨る取付金具を備え、当該取付金具は前記装飾ユニットに退避した退避位置と前記装飾ユニットから進出する進出位置との間を移動自在であって、前記装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で退避位置に位置させた取付金具が、前記装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させる過程で自重により進出位置に移動する態様で装飾ユニットに係止され、前記装飾ユニットを外扉の上部に載置する際、装飾ユニットを前傾姿勢に傾倒させた状態で取付金具を退避位置に移動させた上で、当該装飾ユニットを前傾姿勢から起立姿勢に移動させることにより取付金具が自重により進出位置に移動して装飾ユニットと外扉とに跨るようにしたことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−160037(P2012−160037A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19461(P2011−19461)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】