説明

自動販売機

【課題】大幅に設計変更することなく外扉の開放時には硬貨投入口への硬貨の投入を阻止した自動販売機を提供する。
【解決手段】ハンドルに連結されたスイングカム4と、当該スイングカム4に連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材5とを有し、前記ロック板101および閂部材5を前記スライダに係合させて外扉20を閉止鎖錠する扉ロック装置、前記外扉20に配設された硬貨投入口1と硬貨識別装置210とを連係する硬貨シュート211を備えた自動販売機であって、前記扉ロック装置の閂部材5に、当該閂部材5のスライド移動に応じて前記硬貨投入口1に進退移動する硬貨投入阻止片52を形成し、前記扉ロック装置により外扉20を閉止鎖錠した状態では前記閂部材5に形成した硬貨投入阻止片52が硬貨投入口1より退避して硬貨投入口1からの硬貨の投入を許容し、前記扉ロック装置を操作して前記外扉20を開放した際に前記閂部材5に形成した硬貨投入阻止片52が硬貨投入口1に進出して硬貨の投入を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動販売機の本体キャビネットの前面を開閉する外扉に形成された硬貨投入口、詳しくは外扉開放時に硬貨投入口から硬貨が投入されることを防止した自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動販売機として一般的な缶入り飲料,ペットボトル入り飲料を販売する自動販売機について図5を用いて説明する。図5は外扉を開放した状態における自動販売機の斜視図である。図に示すように、この自動販売機は、前面が開放した断熱筐体として形成された本体キャビネット10と、本体キャビネット10の前面に開閉可能に支持された外扉20とからなる。本体キャビネット10の商品収納庫の前面は開閉可能な断熱内扉30によって閉塞されている。本体キャビネット10の庫内には、断熱仕切壁により左右方向に複数の商品収納室に区分され、各商品収納室には商品を横倒し状態で収納するとともに下端部に商品搬出装置を有する商品ラックが収設され、また、各商品収納室の下端には、当該各商品収納室を冷却もしくは加熱して商品ラックに収納した商品をコールド・ホット状態に保存する冷却/加熱ユニットが配設されている。
【0003】
外扉20の前面の上部域は透明板40で覆われ、この透明板40と外扉20に開閉可能に支持された中扉60との間の空間がディスプレイ室50として形成されている。前記中扉60の前面には、本体キャビネット10の庫内に収納した商品に対応した複数の商品見本80を左右に一列に並べて載置したディスプレイ台70が上下方向に3段並べて取付けられている。前記透明板40には、各ディスプレイ台70と対峙する位置に商品選択ボタンユニット90が設けられ、商品選択ボタンユニット90は、ディスプレイ台70に載置された各商品見本80に対応して左右に一列に並べて設けた商品選択ボタン(不図示)を有している。さらに、外扉20の前面には、硬貨識別装置210に連通する硬貨投入口、紙幣識別装置220に連通する紙幣挿入口、硬貨返却口、返却レバーおよびキー付きハンドルを備えた扉ロック装置、商品取出口203などが設けられている。なお、230は硬貨回収ボックス(金庫)である。
【0004】
前記外扉20の扉ロック装置として、本体キャビネット10の前面開口部には右側壁から前方へ突き出すように上下2箇所にロック板101を設けるとともに、外扉20側には外扉20の前面に設けたハンドルに連繋した上下スライド式のスライダ、および前記ハンドルの回動操作と共に回動するスイングカムに連動して左右スライド式の閂部材を備えており、外扉20を閉じた際にロック板101が外扉20の裏面に開口したスリット穴20aに進入して前記スライダと係合する一方、閂部材がスライダと係合して外扉20を閉止位置に鎖錠する(例えば、特許文献1)。
【0005】
前記外扉20の前面に形成された硬貨投入口と硬貨識別装置210との間には硬貨シュート211が設けられ、当該硬貨シュート211を介して硬貨投入口から投入された硬貨は硬貨識別装置210に導かれる。前記硬貨シュート211の前面、すなわち、前記硬貨シュート211と硬貨投入口との間には硬貨投入口から浸入した水(雨水など)が硬貨シュート211を伝って硬貨識別装置210に流れ込むのを防止する防滴部材(不図示)が設けられている。当該防滴部材は硬貨シュート211に回動自在に取付けられ、常時(硬貨投入待ち状態)においては硬貨シュート211の入口前面を閉塞しており、硬貨投入時には投入硬貨に押されることにより回動して硬貨シュート211の入口を開放するように構成されている。
【0006】
また、硬貨識別装置210と硬貨回収ボックス230との間には硬貨返却・回収シュート212が設けられている。この硬貨返却・回収シュート212には、外扉20を扉ロック装置により閉止した状態においては硬貨識別装置210から払い出された硬貨(若しくは硬貨識別装置210でリジェクトされた硬貨を硬貨返却口に導き、扉ロック装置を操作して外扉20が開放した状態においては硬貨識別装置210から払い出された硬貨を硬貨回収ボックス230に導く硬貨切換機構(不図示)が配設されている。この硬貨切換機構は、硬貨返却・回収シュート212に回動若しくはスライド移動自在に取付けられ、外扉20が開放した状態においては自身の自重若しくはばねにより硬貨返却・回収シュート212から外扉20の背面側に突き出して硬貨識別装置210と硬貨回収ボックス230とを連係し、外扉20が閉じられると本体キャビネット側の構成部材(例えば、内扉30)に当接して硬貨返却・回収シュート212内に押し込まれて硬貨識別装置210と硬貨返却口とを連係するように硬貨通路を切り替えるように構成されている。
【0007】
ところで、前記硬貨識別装置210内の硬貨回収作業時,庫内への商品の補充時,メンテナンス時などにおいて外扉20が開放される。前記外扉20の開放状態においては商品を販売することができないため、硬貨識別装置210は投入硬貨を受け付けずにリジェクト硬貨と同様に硬貨返却・回収シュート212に送出するように構成されている。ところが、外扉20を開放した状態では硬貨返却・回収シュート212に設けられた硬貨切換機構が作動して硬貨識別装置210と硬貨回収ボックス230とを連係するように効果通路を切り換えているため、投入硬貨は硬貨回収ボックス230に回収されてしまう。投入硬貨が硬貨回収ボックス230に回収されると硬貨回収ボックス230内の硬貨と混在してしまうことから投入された硬貨の種類(金種)が分からなくなる。このような問題を解決するため、硬貨回収時に硬貨投入口から投入された硬貨を硬貨返却口に返却するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4524654号公報
【特許文献2】特公平7−86943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献2においては、硬貨回収時に投入硬貨を硬貨返却口に返却するため硬貨切換機構を廃止したうえで硬貨識別装置自身をスライド移動可能に配設し、常時は硬貨識別装置が硬貨返却口と連通し、硬貨回収時は硬貨識別装置を硬貨回収ボックスと連通するようにスライド移動させることにより、硬貨投入口から投入された硬貨が硬貨返却口に落下するように構成されている。このように特許文献2においては硬貨識別装置自体をスライド移動自在に設けねばならないので大幅な設計変更を必要とするという課題を有する。
【0010】
前記設計変更を僅かなものとする方策として、前記硬貨返却・回収シュート212に設けられた硬貨切換機構の構成を変更することが考えられる。すなわち、外扉20の開閉に応じて自動的に硬貨通路を切換えるように作動する硬貨切換機構について、硬貨回収時に手動で操作することにより硬貨通路を切換えるように構成することが考えられる。しかしながら、硬貨切換機構が外扉20の開閉に応じて自動的に硬貨通路を切換えことに慣れた作業員が硬貨切換機構を操作することを忘却した場合には回収硬貨が硬貨返却口に払い出されて溢れ出してしまうおそれがあり、何よりも作業員の手間がかかり作業が煩雑となるという課題を有する。
【0011】
そこで、本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、大幅に設計変更することなく外扉の開放時には硬貨投入口への硬貨の投入を阻止した自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1に係る発明は、本体キャビネットの前面開口端部に設けたロック板と、前記本体キャビネットの前面に開閉自在に設けられた外扉に配設されるとともに上下方向にスライド移動自在なスライダと、前記外扉の前面に配置されたハンドルに連結されたスイングカムと、当該スイングカムに連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材とを有し、前記ロック板および閂部材を前記スライダに係合させて外扉を閉止鎖錠する扉ロック装置、前記外扉に配設された硬貨投入口と硬貨識別装置とを連係する硬貨シュートを備えた自動販売機において、前記扉ロック装置の閂部材に、当該閂部材のスライド移動に応じて前記硬貨投入口に進退移動する硬貨投入阻止片を形成したことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため請求項2に係る発明は、請求項1に記載の自動販売機において、常時は硬貨シュートの入口を閉塞し、硬貨投入口から投入された硬貨により押し開かれる態様で硬貨シュートに回動自在に取付けられた防滴部材を有し、前記扉ロック装置の閂部材に設けた硬貨投入阻止片により前記防滴部材を、硬貨シュートの入口を閉塞した状態にロックするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本体キャビネットの前面開口端部に設けたロック板と、前記本体キャビネットの前面に開閉自在に設けられた外扉に配設されるとともに上下方向にスライド移動自在なスライダと、前記外扉の前面に配置されたハンドルに連結されたスイングカムと、当該スイングカムに連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材とを有し、前記ロック板および閂部材を前記スライダに係合させて外扉を閉止鎖錠する扉ロック装置、前記外扉に配設された硬貨投入口と硬貨識別装置とを連係する硬貨シュートを備えた自動販売機において、前記扉ロック装置の閂部材に、当該閂部材のスライド移動に応じて前記硬貨投入口に進退移動する硬貨投入阻止片を形成したことにより、前記扉ロック装置により外扉を閉止鎖錠した状態では前記扉ロック装置の閂部材に形成した硬貨投入阻止片が硬貨投入口より退避して硬貨投入口からの硬貨の投入を許容し、前記扉ロック装置を操作して前記外扉を開放した際に前記閂部材に形成した硬貨投入阻止片が硬貨投入口に進出して硬貨の投入を阻止することが可能となり、僅かの設計変更によって外扉開放時に硬貨投入口からの硬貨の投入を防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の自動販売機において、常時は硬貨シュートの入口を閉塞し、硬貨投入口から投入された硬貨により押し開かれる態様で硬貨シュートに回動自在に取付けられた防滴部材を有し、前記扉ロック装置の閂部材に設けた硬貨投入阻止片により前記防滴部材を、硬貨シュートの入口を閉塞した状態にロックするようにしたことにより、硬貨投入口と硬貨シュートの入口との間に閂部材に形成した硬貨投入阻止片が進退移動する隙間がない場合にも外扉開放時に硬貨投入口からの硬貨の投入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動販売機を示し、(a)は硬貨投入口および扉ロック装置が配設されて外扉の要部背面斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】硬貨投入口と硬貨識別装置を連係する硬貨シュートを示し、(a)は硬貨シュートに組付けた防滴部材が待機状態にある場合の斜視図、(b)は硬貨シュートに組付けた防滴部材が動作状態にある場合の斜視図、(c)は硬貨シュートの斜視図、(d)は防滴部材の斜視図である。
【図3】扉ロック装置のスイングカムと閂部材との連係状態を示し、(a)は外扉閉止鎖錠状態の説明図、(b)は外扉開放時の説明視図である。
【図4】扉ロック装置の閂部材と防滴部材の連係を示し、(a)は外扉閉止鎖錠状態の説明図、(b)は外扉開放時の説明視図である。
【図5】自動販売機の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る自動販売機について添付図面を参照して説明する。なお、本発明の実施の形態に係る自動販売機が従来装置と相違する点は扉ロック装置の閂部材であり、ここでは扉ロック装置の閂部材周辺について説明することとし、また、自動販売機の全体構成は図5に示したものと同一であるので適宜図5を参照しつつ説明を行う。
【0018】
図1は本発明の実施の形態1に係る自動販売機を示し、図において20で再び外扉を示し、外扉20の前面には図1の(b)に示すように硬貨投入口1と返却レバー2からなる。前記硬貨投入口1は硬貨を投入する横長のスリット11が形成されており、このスリット11の背後には硬貨シュート211の入口(開口)が対峙するように配設されている。前記返却レバー2にはスイングレバー21が連結されており、このスイングレバー21は硬貨識別装置210の硬貨返却操作片210aに当接している。
【0019】
前記硬貨投入口1と硬貨識別装置210を連係する態様で硬貨シュート211が設けられている。この硬貨シュート211は、図2の(c)に示すように、入口(開口)211aと出口(開口)211bを備え、前記入口(開口)211aが硬貨投入口1のスリット11に対峙し、前記出口(開口)211bが硬貨識別装置210のホッパー210bに対峙するように配設されている。また、硬貨シュート211の湾曲した頭部には突起211cが形成されるとともに当該湾曲した頭部から入口211aの左右側壁の上部側は下部側よりも一段低い回動ストッパ211d,211dとして形成されている。前記硬貨シュート211の入口側には防滴部材3が回動自在に取付けられている。この防滴部材3は、図2の(d)に示すように、硬貨シュート211の入口(開口)211aに遊嵌される大きさの閉塞板31とこの閉塞板31の形状および質量よりも一回り大きくな形状および質量の取付片32とからなり、取付片32には硬貨シュート211の突起211cが遊嵌される開口穴321が形成されている。前記防滴部材3は、閉塞板31と取付片32との連結部分33で略「へ」字形に折り曲げられている。前記前記連結部分33は、硬貨シュート211の湾曲した頭部に倣って湾曲しており、また、前記連結部分33における閉塞板31寄りの左右端部には肩部331,331が形成されている。この防滴部材3は、その取付片32の開口穴321を硬貨シュート211の突起211cに嵌め込んだ上で連結部分33を硬貨シュート211の頭部に載置して取付けられる(図2の(a)参照)。
【0020】
前記防滴部材3を硬貨シュート211の頭部に載置した状態では、図2の(a)に示すように、防滴部材3の閉塞板31が硬貨シュート211の入口(開口)211aを閉塞している。この状態から防滴部材3の閉塞板31を硬貨シュート211内に押し込む、つまり、硬貨投入口1のスリット11を介して投入された硬貨により押し込まれると、図2の(b)に示すように、防滴部材3が連結部分33を支点として回動する。この後、硬貨が通過すると質量の大きな取付片32により元の状態(図2の(c)の状態)に復帰する。なお、防滴部材3回動範囲は、硬貨シュート211における入口(開口)211aの左右側壁に形成した回動ストッパ211d,211dに連結部材33の肩部331,331が当接することにより規制されているものである。
【0021】
次に、扉ロック装置は、特許文献1にも記載されているように周知のものであり、本体キャビネット10(図5参照)の前面開口端部に設けたロック板101と、外扉20に配設されるとともに上下方向にスライド移動自在なスライダ(不図示)と、前記外扉20の前面に配置されたハンドル(不図示)に連結されたスイングカム4と、当該スイングカム4に連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材5とからなり、図1の(a)では前記ロック板101を前記スライダに係合させて外扉20を閉止鎖錠した状態を示している。
【0022】
ここで、前記閂部材5が係合するスライダについて簡単に説明する。前記スライダは、横断面コ字形であって上下方向に延在するチャンネル部材として形成されて外扉20の反ヒンジ側の袋状の扉枠の内部に配設されており、上部側の左右両壁部に形成した上下方向の長溝に段付きねじを挿通した上で、当該段付きねじを外扉20の扉枠に固着することによって上下方向にスライド可能に支持されている。スライダの一方の壁部には前記スイングカム4が嵌入する角穴および閂部材5が嵌入する角穴がそれぞれ開口しており、スライダのコ字形基部(コ字形底面)にはロック板101が、図1の(a)におけるスリット穴20aを介して嵌入する角穴が開口している。また、ロック板101はその取付基部を本体キャビネット10に固定し、前方に突き出した部分の上縁に凹溝が形成されている。
【0023】
上記構成の扉ロック装置は、外扉20を閉じた状態ではスライダが下降してロック板101の凹溝に係合する一方、閂部材5が係合して外扉20を閉止位置に鎖錠している。この状態からキー操作により扉ロック装置のシリンダー錠を解錠した上で、ハンドルを開位置に回すとスイングレバー41が回動してスライダを上方に押し上げる。これにより、スライダとロック板101の凹溝との係合が外れるとともにスイングレバー41の回動に連動して閂部材5がスライダから離隔することにより鎖錠状態が解かれるので外扉20を自由に開くことができるようになる。
【0024】
また、扉ロック装置のスイングカム4と閂部材5との連係状態について図3を用いて説明する。図は外扉20の背面側から見たスイングカム4と閂部材5との連係を示している。スイングカム4はシリンダー錠の内筒の外周縁に形成された2個の突起S1,S2と連結されて回動自在に取付けられており、前記スライダの角穴に嵌入するスイングレバー41を備えている。このスイングカム4の外周縁には窓穴を有する連結突起42が形成されている。一方、閂部材5は左右に延在する本体51が外扉20の扉枠にスライド移動自在に取付けられ、本体51の左端が前記スライダの角穴に嵌入するものである。前記本体51には前記スイングカム4の連結突起42の窓穴に挿入係止される突起511が形成されている。前記閂部材5の本体51には本発明に係る硬貨投入阻止片52が追加装備されている。この硬貨投入阻止片52は本体51から上方に向けて立上がるとともに適宜折り曲げにより前記硬貨シュート211に載置されて待機状態の防滴部材3の取付片32の上方位置まで延在しており、スイングカム4の回動に伴って取付片32の上部に進出若しくは退避するように構成されている。図3の(a)が外扉20の閉止状態を示し、閂部材5が左方向にスライドして下降したスライダに角穴に嵌入される一方、硬貨投入阻止片52が防滴部材3の取付片32の上方位置から退避している。外扉20を開放するためキー操作によりシリンダー錠を解錠したうえでハンドルを回転させると、図3の(b)に示すように、スイングカム4が時計方向に回動してスライダを上昇させると同時に閂部材5が右方向にスライドして本体51がスライダの角穴から抜け出す一方、硬貨投入阻止片52が防滴部材3の取付片32の上方位置に進出するように構成されている。
【0025】
次に、本発明の実施の形態1に係る自動販売機の動作について、扉ロック装置の閂部材5と防滴部材3の連係を示す図4を用いて説明する。図4の(a)に示すように、外扉20の閉止状態においては、スイングカム4が反時計方向に回動して連結突起42を介して閂部材5を左方向にスライドして下降したスライダに角穴に嵌入される一方、硬貨投入阻止片52が防滴部材3の取付片32の上方位置から退避している。この状態で硬貨投入口1(図1参照)から硬貨が投入されると、図2の(b)に示すように、防滴部材3が回動して硬貨シュート211に投入硬貨を受け入れて商品の販売を行う。
【0026】
メンテナンス作業のために外扉20を開放する際、キー操作によりシリンダー錠を解錠したうえでハンドルが回転させられる。前記ハンドルが回転させられると、図4の(b)に示すようにスイングカム4が時計方向に回動してスライダを上昇させると同時に連結突起42を介して閂部材5が右方向にスライドしてスライダから離隔する一方、閂部材5の硬貨投入阻止片52が硬貨シュート211に載置された防滴部材3の取付片32の上方位置に進出する。これにより防滴部材3は、図2の(a)に示すように、防滴部材3の閉塞板31が硬貨シュート211の入口(開口)211aを閉塞した状態にロックされる。したがって、硬貨投入口1(図1参照)に硬貨を投入しようとしても防滴部材3の閉塞板31により硬貨の投入が阻止され、外扉20の開放状態で硬貨が投入されることを防止することができる。
【0027】
なお、上記実施の形態においては、扉ロック装置の閂部材5に設けた硬貨投入阻止片52が硬貨シュート211に載置された防滴部材をロックするようにしたものについて説明したが、前記硬貨投入阻止片52を硬貨投入口と硬貨シュートとの間に位置させて硬貨投入口と硬貨シュートとの間に進出若しくは退避するようにすることもできる。
【0028】
前述したように本発明の実施の形態に係る自動販売機、本体キャビネット10の前面開口端部に設けたロック板101と、前記本体キャビネット10の前面に開閉自在に設けられた外扉20に配設されるとともに上下方向にスライド移動自在なスライダと、前記外扉20の前面に配置されたハンドルに連結されたスイングカム4と、当該スイングカム4に連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材5とを有し、前記ロック板101および閂部材5を前記スライダに係合させて外扉20を閉止鎖錠する扉ロック装置、前記外扉20に配設された硬貨投入口1と硬貨識別装置210とを連係する硬貨シュート211を備えた自動販売機において、前記扉ロック装置の閂部材5に、当該閂部材5のスライド移動に応じて前記硬貨投入口1に進退移動する硬貨投入阻止片52を形成したことにより、前記扉ロック装置により外扉20を閉止鎖錠した状態では前記扉ロック装置の閂部材5に形成した硬貨投入阻止片52が硬貨投入口1より退避して硬貨投入口1からの硬貨の投入を許容し、前記扉ロック装置を操作して前記外扉20を開放した際に前記閂部材5に形成した硬貨投入阻止片52が硬貨投入口1に進出して硬貨の投入を阻止することが可能となり、僅かの設計変更によって外扉開放時に硬貨投入口1からの硬貨の投入を防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…硬貨投入口、2…返却レバー、3…防滴部材、4…スイングカム、5…閂部材、10…本体キャビネット、11…スリット、20…外扉、31…閉塞板、32…取付片、41…スイングレバー、42…連結突起、51…本体、52…硬貨投入阻止片、210…硬貨識別装置、211、212…硬貨シュート、230…硬貨回収ボックス(金庫)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体キャビネットの前面開口端部に設けたロック板と、前記本体キャビネットの前面に開閉自在に設けられた外扉に配設されるとともに上下方向にスライド移動自在なスライダと、前記外扉の前面に配置されたハンドルに連結されたスイングカムと、当該スイングカムに連動して左右方向にスライド移動自在な閂部材とを有し、前記ロック板および閂部材を前記スライダに係合させて外扉を閉止鎖錠する扉ロック装置、前記外扉に配設された硬貨投入口と硬貨識別装置とを連係する硬貨シュートを備えた自動販売機において、前記扉ロック装置の閂部材に、当該閂部材のスライド移動に応じて前記硬貨投入口に進退移動する硬貨投入阻止片を形成したことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
請求項1に記載の自動販売機において、常時は硬貨シュートの入口を閉塞し、硬貨投入口から投入された硬貨により押し開かれる態様で硬貨シュートに回動自在に取付けられた防滴部材を有し、前記扉ロック装置の閂部材に設けた硬貨投入阻止片により前記防滴部材を、硬貨シュートの入口を閉塞した状態にロックするようにしたことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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