説明

自動貸金庫システム及びその管理装置

【課題】金庫ボックスが閲覧室へ呼び出された状態で、利用者が閲覧室から退室してしまう状況が発生しても、金庫ボックスに預け入れた物品を安全な状態で保護可能な自動貸金庫システム及びその管理装置を提供する。
【解決手段】自動貸金庫システム1は、金庫室8外に設けられた閲覧テーブル2と、閲覧テーブル2と金庫室8との間で金庫ボックス10を搬送する搬送機構3と、管理装置6とを備える。管理装置6は、搬送機構3を制御する搬送制御部64と、所定の異常状態を検知する異常検知部(66、67)とを有し、金庫ボックス10が閲覧テーブル2へ搬出された状態において、異常検知部(66、67)が所定の異常状態を検知したとき、利用者が搬出された状態の金庫ボックス10に接触不可能な状態である場合に搬送機構3にその搬出された金庫ボックス10を金庫室8へ搬入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動貸金庫システム及びその管理装置に関し、特に、金庫室内に収納された金庫ボックスを閲覧室に設置された閲覧テーブルへ搬出して利用者に提供する自動貸金庫システム及びその管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貴重品を収納する複数の金庫ボックスを防盗性及び防火性に優れた金庫室で保管し、利用者による貴重品の預入、閲覧または引出の際に、特定の金庫ボックスを金庫室から閲覧室へ自動搬送して利用者に提供する自動貸金庫システムが利用されている(例えば、特許文献1を参照)。
このような自動貸金庫システムでは、閲覧室内に利用者が金庫ボックスを閲覧するための閲覧テーブルが設置される。そしてその閲覧テーブルは、操作案内を表示したり、利用者が暗証番号または操作コマンドを入力するためのタッチパネルディスプレイと、金庫ボックスを提供するためのボックス提供口と、ボックス提供口を開閉するための開閉シャッタを有する。利用者は、タッチパネルディスプレイを操作することにより、その利用者に貸し与えられた金庫ボックスをボックス提供口に呼び出した上、開閉シャッタを開ける指示を行って、その金庫ボックスを露出させる。そして利用者が金庫ボックスから物品を取り出したり、金庫ボックスに物品を預け入れる等の作業を行うことが可能となる。
【0003】
また、自動貸金庫システムでは、利用者の安全及び預け入れる物品の秘匿性を確保するため、正当な利用資格を持つ利用者のみが閲覧室へ入室できるように、閲覧室の外側に認証装置が設置される。利用者が、所定の認証情報を、例えばIDカードを認証装置に読取らせることによって認証装置に入力した後、認証装置は、その認証情報に基づいて利用者が正当な利用資格を持つか否かを確認する。そして認証装置は、利用者が正当な利用資格を持つことを確認できれば、閲覧室の入口に設けられた扉の電気錠を解錠して、その利用者の閲覧室への入室を許可する。なお、特許文献1に開示されているように、利用者の待ち時間を少なくするために、閲覧室の外側に設けられた認証装置が利用者が正当な利用資格を持つことを確認した時点で、その利用者の認証情報により特定される金庫ボックスの金庫室からの搬送を開始するシステムも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−301664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、利用者が認証装置に認証処理を行わせたものの、閲覧室に入室しなかった場合、あるいは、利用者が閲覧テーブルで金庫ボックスの呼び出し操作を行った状態で、閲覧室から途中退室した場合、呼び出された金庫ボックスが金庫室から搬出された状態で放置されることになる。この場合、その金庫ボックスに保管されている物品の安全性が損なわれてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、金庫ボックスが閲覧室へ呼び出された状態で、利用者が閲覧室から退室してしまう状況が発生しても、金庫ボックスに預け入れた物品を安全な状態で確実に保護可能な自動貸金庫システム及びその管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するための本発明の一つの実施形態によれば、金庫室外に設けられた閲覧テーブルと、閲覧テーブルと金庫室との間で利用者の預託品を収納する金庫ボックスを搬送する搬送機構と、搬送機構による金庫ボックスの搬送制御を実行する管理装置とを備えた自動貸金庫システムが提供される。係る自動貸金庫システムにおいて、閲覧テーブルは、金庫室から搬出された金庫ボックスを利用者に提供するために、閲覧テーブルに形成されたボックス提供口と、ボックス提供口を開放または閉鎖する開閉部とを有する。また、管理装置は、金庫室と閲覧テーブルとの間で特定の金庫ボックスを搬送機構に搬送させる搬送制御部と、所定の異常状態を検知する異常検知部とを有し、金庫ボックスが閲覧テーブルへ搬出された状態において、異常検知部が所定の異常状態を検知したとき、利用者が搬出された状態の金庫ボックスに接触不可能な状態である場合に搬送機構にその搬出された状態の金庫ボックスを金庫室へ搬入させる。
【0008】
また本発明の一つの実施形態に係る自動貸金庫システムにおいて、異常検知部は、閲覧テーブルへ搬出された金庫ボックスが放置されている状態を所定の異常状態として検知することが好ましい。例えば、異常検知部は、金庫ボックスが搬出された状態で利用者が閲覧テーブルの操作を行わずに所定期間を経過したとき、金庫ボックスが放置されている状態であると判定できる。
【0009】
また本発明の一つの実施形態に係る自動貸金庫システムは、閲覧テーブルが設置された閲覧室への利用者の入室を規制する入室規制装置をさらに備え、管理装置は、金庫ボックスが閲覧テーブルへ搬出された状態において、異常検知部が所定の異常状態を検知したとき、利用者が搬出された状態の金庫ボックスに接触可能な状態である場合にはその金庫ボックスの搬入は行わず、閲覧室への利用者の入室を禁止するよう入室規制装置を制御することが好ましい。
【0010】
この場合において、管理装置は、利用者が閲覧室へ入室する時にその入室しようとする利用者を識別し、閲覧室への利用者の入室を禁止している間、搬出された状態の金庫ボックスを閲覧テーブルへ搬出させた利用者のみ閲覧室への入室を許可するよう入室規制装置を制御することが好ましい。
【0011】
さらに本発明の一つの実施形態に係る自動貸金庫システムにおいて、管理装置は、閲覧テーブルの開閉部が閉鎖状態である場合に利用者が搬出された状態の金庫ボックスに接触不可能な状態であると判定し、開閉部が開放状態である場合に、利用者が搬出された状態の金庫ボックスに接触可能な状態であると判定することが好ましい。
【0012】
また本発明の他の実施形態によれば、金庫室外に設けられ利用者の預託品を収納する金庫ボックスを利用者に提供するためのボックス提供口及びボックス提供口を開放または閉鎖する開閉部を有する閲覧テーブルと、閲覧テーブルと金庫室との間で金庫ボックスを搬送する搬送機構と、搬送機構を制御する制御装置を備えた自動貸金庫システムの管理装置が提供される。そして管理装置は、金庫ボックスが閲覧テーブルへ搬出された状態において、所定の異常状態を検知したとき、開閉部が閉鎖状態である場合に、搬送機構の制御装置に対して搬出された状態の金庫ボックスを金庫室へ搬入させる信号を送信する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自動貸金庫システム及びその管理装置は、金庫ボックスが閲覧室へ呼び出された状態で、利用者が閲覧室から退室してしまう状況が発生しても、金庫ボックスに預け入れた物品を安全な状態で確実に保護可能という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システムを図を参照しつつ説明する。この自動貸金庫システムは、何らかの事情により、利用者が預け入れる物品(預託品)を収納する金庫ボックスが閲覧室に呼び出された状態で、利用者が閲覧室から退室した、あるいは退出するような異常事態が発生したときに、その異常事態の発生を検知して、閲覧室に呼び出されている金庫ボックスを強制的に金庫室内へ搬入するものである。そしてこの自動貸金庫システムは、その異常事態が火災発生である場合には、金庫ボックスの強制搬入後に防火シャッタを閉鎖する。特にこの自動貸金庫システムは、金庫ボックスを強制的に金庫室内へ搬入する際、その強制搬入動作によって利用者が怪我しないよう、利用者が呼び出されている金庫ボックスに接触できないことを確認した上で、その強制搬入動作を実行する。
【0015】
図1は、自動貸金庫システム1の概略構成を示す。図1に示すように、自動貸金庫システム1は、閲覧テーブル2と、搬送機構3と、防火シャッタ4と、カードリーダ5と、管理装置6とを有する。以下、自動貸金庫システム1の各部について詳細に説明する。
【0016】
閲覧テーブル2は、閲覧室7にその一面が閲覧室7と金庫室8を隔てる壁面に接するように設置される。そして閲覧テーブル2は、自動貸金庫システム1の利用者が、防火壁で囲まれた金庫室8内に保管されている金庫ボックス10を閲覧するための操作を行い、また金庫ボックス10を閲覧する際に金庫ボックス10が載置されるテーブルとして機能する。
図2に、閲覧テーブル2の機能ブロック図を示す。図1及び図2に示すように、閲覧テーブル2は、操作・表示部21と、ボックス提供口22と、提供口シャッタ23と、通信部24と、制御部25とを有する。
【0017】
操作・表示部21は、例えば、タッチパネルディスプレイを有し、閲覧テーブル2の正面上部に設けられる。そして操作・表示部21は、操作案内または現在のステータス情報など、利用者に通知すべき情報を表示する。また操作・表示部21は、利用者が暗証番号または操作コマンドを入力するための操作ボタンを表示する。そして利用者が表示された操作ボタンの何れかを押下すると、操作・表示部21は、その操作ボタンに応じたコマンドまたは入力情報を制御部25へ送信する。
【0018】
なお、操作・表示部21は、スピーカなど音声により利用者に情報を伝達するための手段を有していてもよい。あるいは、操作・表示部21は、マイクロホンなど、利用者の音声を収集して、その音声に対応する信号を制御部25へ伝達する手段を有していてもよい。さらに操作・表示部21は、情報を表示するためのディスプレイ装置と、キーパッドまたはトラックボールなど、利用者が入力操作を行うための入力装置とを別個に有していてもよい。ただし、操作・表示部21は、ディスプレイ装置と入力装置とを別個に有している場合でも、利用者がディスプレイ装置に表示された情報を確認しながら所定の入力操作を実行できるように、ディスプレイ装置と入力装置とは近接して配置されることが好ましい。
【0019】
ボックス提供口22は、閲覧テーブル2の内部にまで延伸された搬送機構3の搬送コンベア31の一端の上方の位置において閲覧テーブル2の筐体26に形成された略矩形の開口である。そして利用者は、ボックス提供口22を通じて、その搬送コンベア31の一端にまで搬送されてきた金庫ボックス10を閲覧可能となっている。利用者は、ボックス提供口22に露出した金庫ボックス10の蓋を予め貸与された鍵を使って開錠して開け、金庫ボックス10内への物品(預託品)の預け入れ、あるいは取り出しを行う。ただし、金庫ボックス10自体は、ボックス提供口22から取り出せないように、ボックス提供口22の開口サイズが設定されるか、金庫ボックス10が搬送コンベア31上に固定されることが好ましい。
【0020】
提供口シャッタ23は、ボックス提供口22に取り付けられる電動式シャッタであり、制御部25からの制御信号に応じて、ボックス提供口22を開放または閉鎖する開閉部として機能する。なお、提供口シャッタ23の開閉状態を検知するために、、例えば、提供口シャッタ23がボックス提供口22を閉鎖した状態のときに、提供口シャッタ23の先端が接触する位置に近接センサ、接触センサなどの開閉検知センサ(図示せず)が設けられる。そして、その開閉検知センサは、提供口シャッタ23がボックス提供口22を閉じたことを検知すると、そのことを示す信号を、制御部25へ送信する。
【0021】
通信部24は、閲覧テーブル2と管理装置6とを通信ネットワークを介して接続するためのインターフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)などの通信規格にしたがった通信インターフェース及びその周辺回路などで構成される。そして通信部24は、閲覧テーブル2と管理装置6との間で各種信号を送受信する。
【0022】
制御部25は、マイクロプロセッサ、揮発性メモリあるいは不揮発性メモリ及びその周辺回路を有する。そして制御部25は、制御部25を構成するマイクロプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムに従って、閲覧テーブル2を制御する。例えば、制御部25は、管理装置6から、閲覧室7内に利用者が入室したことを知らせる信号を受信すると、操作・表示部21に、暗証番号の入力画面を表示させる。そして制御部25は、操作・表示部21を介して入力された暗証番号を管理装置6へ送信する。また制御部25は、操作・表示部21を介した利用者の操作に従って、閲覧テーブル2まで搬出された金庫ボックス10を金庫室8内に搬入するよう、搬入開始指示信号を管理装置6へ送信する。さらに、制御部25は、管理装置6から提供口シャッタ23を開放または閉鎖させる信号を受信すると、その信号に従って提供口シャッタ23を駆動する。そして制御部25は、提供口シャッタ23を開けた場合、あるいは提供口シャッタ23を閉じた場合、開閉検知センサからの信号を参照して、提供口シャッタ23の開閉状態を判断し、その開閉状態を示すボックス提供口開閉状態信号を管理装置6へ送信する。
【0023】
搬送機構3は、管理装置6からの駆動信号に応じて、金庫室8内に設置された収納ラック81から、所定位置に収納されている金庫ボックス10を取り出して、閲覧室7へ搬出する。あるいは、搬送機構3は、管理装置6からの駆動信号に応じて、閲覧室7へ搬出されている金庫ボックス10を、金庫室8内に搬入し、収納ラック81の所定位置に収納する。そのために、搬送機構3は、搬送コンベア31と、スタッカクレーン32と、それらを駆動する駆動部(図示せず)とを有する。
【0024】
搬送コンベア31は、管理装置6からの駆動信号に応じて、閲覧室7と金庫室8を隔てる壁に形成された搬入口9を経由する搬送路に沿って、金庫ボックス10を金庫室8の内部と閲覧室7内に設置された閲覧テーブル2のボックス提供口22の下方位置との間を搬送する。
スタッカクレーン32は、搬出時、複数の金庫ボックス10を収納する収納ラック81の何れかの位置から金庫ボックス10を取り出し、走行レールに沿って移動して、搬送コンベア31の金庫室8側の一端まで取り出した金庫ボックス10を運ぶ。あるいは、スタッカクレーン32は、搬入時、搬送コンベア31の金庫室8側の一端上に置かれた金庫ボックス10を保持した後、走行レールに沿って移動して、収納ラック81の所定位置にまでその金庫ボックス10を運び、その所定位置に収納する。
なお、搬送コンベア31及びスタッカクレーン32は、例えば、公知の自動貸金庫システムにおいて使用されている搬送コンベア及びスタッカクレーンの何れかにより構成することができる。そのため、ここでは、搬送コンベア31及びスタッカクレーン32の詳細な構成の説明は省略する。
【0025】
防火シャッタ4は、搬入口9に設けられ、管理装置6からの制御信号に応じて搬入口9を開閉する。そして防火シャッタ4は、耐火性能を有し、搬入口9を閉鎖することにより、金庫室8の周囲で火災が発生した時に、金庫室8内へ延焼することを防止する。そのために、防火シャッタ4は、例えば、公知の様々な電動式の防火シャッタの何れかとすることができる。
【0026】
カードリーダ5は、例えば、前室から閲覧室7への入り口に設置されたドア71の近傍で、前室に設置される。そしてカードリーダ5は、ドア71に設けられた電気錠72の施解錠制御に利用するため、利用者が所持するIDカードから、その利用者の個人識別番号を読取って管理装置6へ通知する。なお、カードリーダ5は、IDカードの種別に応じて、例えば、磁気カードリーダ、あるいは無線自動識別(RFID)システムのリーダとすることができる。
【0027】
管理装置6は、例えば、いわゆるコンピュータで構成され、自動貸金庫システム1全体を制御する。管理装置6は、金庫室8内、あるいは、閲覧室7及び金庫室8とは別個の場所に設置され、通信ネットワークを介して閲覧テーブル2、搬送機構3、防火シャッタ4及びカードリーダ5と接続される。
図3に、管理装置6の機能ブロック図を示す。図3に示すように、管理装置6は、半導体メモリ、磁気記録媒体及びそのアクセス装置、あるいは光記録媒体及びそのアクセス装置などを有する記憶部61と、管理装置6を所定の通信規格に従って通信ネットワークに接続通信インターフェース及びその制御回路を有する通信部62とを有する。
【0028】
記憶部61は、予め登録された利用者の個人識別番号及び暗証番号と、その利用者に貸し与えられた金庫ボックス10の収納ラック81内の保管位置とを関連付けて記憶する。また記憶部61は、管理装置6が有するプロセッサ上で動作する各種プログラム及びそれらプログラムが利用する各種データを記憶する。
【0029】
通信部62は、閲覧テーブル2、搬送機構3、防火シャッタ4及びカードリーダ5から、通信ネットワークを介して、現在の状態を表す状態信号、利用者により入力された暗証番号、あるいは提供口シャッタ23の開閉指示などのコマンドを表す信号を取得し、それらの信号を管理装置6のプロセッサへ渡す。また通信部62は、プロセッサから受け取った金庫ボックス10の搬送状況を知らせる信号を、通信ネットワークを介して、閲覧テーブル2に送信する。さらに通信部62は、所定の金庫ボックス10の搬送または防火シャッタ4による搬入口9の開閉を行わせるために、搬送機構3及び防火シャッタ4に対して、プロセッサから受け取った駆動信号あるいは制御信号を、通信ネットワークを介して送信する。
【0030】
また通信部62は、閲覧室7、前室あるいは自動貸金庫システム1が設置された建物内に設けられた少なくとも一つの火災検知器(図示せず)、あるいは地震検知器といった異常検知器とも通信ネットワークを介して接続され、何れかの異常検知器が異常を検知した時に出力する異常検知信号を、通信ネットワークを介して取得して、管理装置6のプロセッサへ通知する。さらに通信部62は、前室に設置された監視用カメラと通信ネットワークを介して接続され、その監視用カメラにより撮影された前室の画像を取得してプロセッサへ渡してもよい。
【0031】
また管理装置6は、管理装置6が有するプロセッサ上で動作するプログラムモジュールとして、認証制御部63と、搬送制御部64と、テーブル制御部65と、放置監視部66と、火災監視部67とを有する。
【0032】
認証制御部63は、利用者が予め登録された利用者か否か判定し、登録された利用者である場合に、利用者が前室から閲覧室7へ進入すること、あるいは、閲覧テーブル2の操作を許可する。
ここで、閲覧室7と前室との境界に設置されたドア71と、そのドア71に設けられた電気錠72は、前室から閲覧室7への通行を規制する入室規制装置を構成しており、電気錠72は、通常時において施錠されている。そして電気錠72は、通信ネットワークを介して管理装置6と接続され、管理装置6がその電気錠72に制御信号を送信することによって施解錠制御することが可能となっている。
【0033】
認証制御部63は、利用者が前室から閲覧室7へ進入する際に、カードリーダ5に読み取らせた個人識別番号を、通信部62を介してカードリーダ5から取得して、予め記憶部61に記憶されている登録識別番号と照合する。そして認証制御部63は、カードリーダ5から取得した個人識別番号が何れかの登録識別番号と一致し、閲覧室7を他の利用者が使用中ではなく、かつ後述する入室禁止モードが記憶部61に設定されていなければ、電気錠72を解錠制御し(あるいはさらにドア71を開放し)、閲覧室7への通行規制を解除する。なお、電気錠72は、解錠後一定期間が経過した後、あるいは、ドア71が一度開放された後に閉じられた時、自動的に施錠される。また認証制御部63は、その利用者に貸し与えられた金庫ボックス10の搬出処理を開始する搬出開始信号とともに、その利用者の個人識別番号を、搬送制御部64に通知する。さらに認証制御部63は、そのときの個人識別番号を、閲覧室7内にいる利用者を表す現在利用者情報として、一時的に記憶部61に記憶する。この現在利用者情報が記憶されている間、管理装置6は、閲覧室7内に利用者がいると判定する。
また認証制御部63は、閲覧テーブル2の操作・表示部21を介して提供口シャッタ23が閉じられる操作が行われ、その後、サムターンまたは解錠ボタンにより電気錠72を解錠する操作が行われると、閲覧室7は無人であると判定し、現在利用者情報を記憶部61から消去する。
【0034】
一方、認証制御部63は、カードリーダ5から取得した個人識別番号が何れの登録識別番号とも一致しない場合、その旨を通信部62を介してカードリーダ5に通知する。そしてカードリーダ5は、カードリーダ5自身に設けられたスピーカ、液晶ディスプレイなどを通じて、閲覧室7を利用できないこと及びIDカードが正当なものでないことを利用者に報知する。また認証制御部63は、閲覧室7を他の利用者が使用中である場合、その旨を通信部62を介してカードリーダ5に通知する。そしてカードリーダ5は、カードリーダ5自身に設けられたスピーカ、液晶ディスプレイなどを通じて、閲覧室7を利用できないことを利用者に報知する。
【0035】
また認証制御部63は、閲覧室7内に進入した利用者が自己に貸し与えられた金庫ボックス10を閲覧することを許可するか否かを決定するために、その利用者の暗証番号を用いて照合処理を実行する。具体的には、認証制御部63は、閲覧テーブル2の操作・表示部21を介して利用者により入力された暗証番号を、通信部62を介して取得する。そして認証制御部63は、その取得した暗証番号を、閲覧室7内にいる利用者を表す個人識別番号と関連付けて記憶部61に記憶されている暗証番号と一致するか否か確認する。そして認証制御部63は、両者が一致する場合、その旨をテーブル制御部65へ通知する。一方、認証制御部63は、閲覧テーブル2から受信した暗証番号が、閲覧室7内にいる利用者を表す個人識別番号と関連付けて記憶部61に記憶されている暗証番号と一致しない場合、閲覧テーブル2に対して暗証番号が間違っていることを示す信号を通知し、閲覧テーブル2の操作・表示部21に暗証番号が間違っている旨のメッセージを表示させる。
【0036】
搬送制御部64は、搬送機構3を制御して、金庫ボックス10の搬送処理を行う。そこで搬送制御部64は、認証制御部63から金庫ボックス10の搬出開始信号を受けとると搬出処理を実行し、搬出開始信号とともに通知された個人識別番号に関連付けられている金庫ボックス10の収納位置を記憶部61を参照することにより特定する。そして搬送制御部64は、スタッカクレーン32を制御して、収納ラック81の特定された位置に収納されている金庫ボックス10を取り出し、その金庫ボックス10を搬送コンベア31の金庫室8側の一端まで運ばせる。その後、搬送制御部64は、搬送コンベア31を制御して、搬送コンベア31の金庫室8側の一端上に置かれている金庫ボックス10を、搬入口9を通じて閲覧テーブル2のボックス提供口22の下方まで運ばせる。
【0037】
一方、閲覧テーブル2の操作・表示部21を介した利用者の提供口シャッタ23の閉鎖操作に伴う搬入開始信号を後述のテーブル制御部65から受信すると搬入処理を実行し、搬送制御部64は閲覧室7内に置かれている金庫ボックス10を金庫室8内に搬入する。そのために、搬送制御部64は、搬送コンベア31を制御して、閲覧テーブル2のボックス提供口22の下方に置かれている金庫ボックス10を搬入口9を通じて搬送コンベア31の金庫室8側の一端まで運ばせる。その後、搬送制御部64は、スタッカクレーン32を制御して、その搬送コンベア31の一端の上に置かれている金庫ボックス10を、閲覧テーブル2を操作していた利用者の個人識別番号と関連付けられている、収納ラック81の特定位置に収納する。
【0038】
また、搬送制御部64は、後述する放置監視部66若しくは火災監視部67から強制搬入信号を受信した場合も、閲覧室7内に搬出されている金庫ボックス10を金庫室8内に搬入する。ただし、利用者が金庫ボックス10に接触可能な状態で金庫ボックス10を搬入すると、利用者が怪我をしてしまうおそれがある。そこでこの場合、搬送制御部64は、利用者が閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10に接触不可能である場合に、強制搬入処理を実行する。具体的には、搬送制御部64は、搬入処理を開始する前に、閲覧テーブル2から受信した最新のボックス提供口開閉状態信号を参照する。そして、ボックス提供口開閉状態信号が閲覧テーブル2の提供口シャッタ23が閉じていることを示していれば、利用者は閲覧室2内に置かれている金庫ボックス10に触れることはできないので、搬送制御部64は、その金庫ボックス10を金庫室8内に搬入する。
一方、最新のボックス提供口開閉状態信号が提供口シャッタ23が開いていることを示していれば、利用者は閲覧室7内に搬出されている金庫ボックス10に触れることが可能である。この場合、提供口シャッタ23を強制的に閉鎖させてしまうと、利用者が怪我をしたり、または預託品が破損するおそれがある。よって、搬送制御部64は、金庫ボックス10を金庫室8内へ搬入できないことを示す搬入不可信号を、送信部62を介して閲覧テーブル2または管理装置6と通信ネットワークを介して接続された保守装置などへ送信する。さらにこの場合、管理装置6は、管理者により放置された金庫ボックス10が回収されて異常状態から正常状態に復旧するまでの間、電気錠72を施錠状態に維持して、閲覧室7に誰も入れないようにするための入室禁止モードを記憶部61に設定する。
これにより、搬送制御部64は、金庫ボックス10の強制搬入によって利用者が怪我をしてしまうことを防止できるとともに、閲覧室7内に放置された金庫ボックス10を保護することができる。
【0039】
さらに搬送制御部64は、搬入口9に設けられた防火シャッタ4を制御して、搬入口9を開閉する。具体的には、自動貸金庫システム1の起動時に、搬送制御部64は、防火シャッタ4を開放し、金庫ボックス10を閲覧室7へ搬出することを可能にする。一方、自動貸金庫システム1のシャットダウン時、あるいは、後述する火災監視部67から防火シャッタ閉鎖信号を受信したとき、搬送制御部64は、防火シャッタ4を閉鎖して、金庫室8内への侵入及び延焼を防止する。なお、搬入処理の実行中である場合、搬送制御部64は、搬入中の金庫ボックス10が搬入口9を通過して金庫室8内まで搬送された後、防火シャッタ4を閉鎖する。
【0040】
テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の制御部25を介して、閲覧テーブル2の操作・表示部21に表示される操作案内画面の切り替えを行ったり、操作・表示部21を通じた利用者の操作に従って、ボックス提供口22に設けられた提供口シャッタ23を開閉させる。具体的には、テーブル制御部65は、認証制御部63から、暗証番号の認証に成功した旨の通知を受けると、閲覧テーブル2の操作・表示部21に、提供口シャッタ23を開けるための操作ボタン及び操作ガイドを表示させる。また、提供口シャッタ23を開ける操作が行われたことを示す信号を閲覧テーブル2から受け取ると、テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の制御部25に提供口シャッタ23を開放させる指示を送信して、制御部25に提供口シャッタ23を開けさせる。あるいは、操作・表示部21を通じて提供口シャッタ23を閉める操作が行われたことを示す信号(搬入開始指示信号)を閲覧テーブル2から受け取ると、テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の制御部25に、提供口シャッタ23を閉鎖させる指示を送信して、提供口シャッタ23を閉鎖させる。そしてテーブル制御部65は提供口シャッタ23が閉鎖状態である旨の開閉状態信号を受信すると、搬送制御部64へ搬入開始信号を渡す。
【0041】
放置監視部66は、何れかの利用者が閲覧室7を利用している間に、金庫ボックス10が閲覧室7内に一定時間放置されたことを放置異常状態として検出する。その放置異常状態の監視期間は、例えば、カードリーダ5によって読み取られた個人識別番号に対する認証が成功して搬出処理が実行された後、閲覧テーブル2の操作・表示部21を介して、ボックス提供口22を閉じる操作が行われて搬入処理が実行されるまでとすることができる。そして放置監視部66は、その監視期間内で、閲覧テーブル2の操作・表示部21が一定時間(例えば、10分間)操作されなかった場合、放置異常状態と判定する。具体的には、放置監視部66は、搬出処理が実行された時点で管理装置6が有するタイマを起動し、操作されていない期間を計時する。そして放置監視部66は、操作・表示部21を介して新たな操作が行われる度に、計時されている時間をリセットし、その新たな操作が行われた時刻から計時を開始する。そして放置監視部66は、搬入処理が実行された時点でタイマを停止する。
【0042】
また、閲覧室7内に人体検知センサが別途設置され、その人体検知センサから人体検知したことを表す信号を管理装置6が受信する構成とした場合、放置監視部66は、監視期間内において、人体検知センサから人体を検知したことを示す信号を一定時間(例えば、10分間)連続して受信しなかった場合、放置異常状態と判定してもよい。なお、そのような人体検知センサとして、例えば、閲覧室7内を撮影した画像から人を検出する画像センサ、あるいは赤外線センサを用いることができる。また放置監視部66は、上述のような操作・表示部21の操作及び人体検知センサによる人体検知が、共に一定時間為されなかった場合に、放置異常と判定してもよい。
放置異常が検出された場合、放置監視部66は、搬送制御部64へ強制搬入信号を送信する。
【0043】
火災監視部67は、閲覧室7、前室あるいは自動貸金庫システム1が設置された建物内に設けられた少なくとも一つの火災検知器から、通信ネットワークを介して火災が発生したことを示す火災発生信号を受信すると、火災発生異常と判定する。そして火災監視部67は、火災発生異常と判定したとき、搬送制御部64へ強制搬入信号及び防火シャッタ閉鎖信号を送信する。
さらに、火災監視部67は、閲覧室7、前室あるいは自動貸金庫システム1が設置された建物内に設けられた少なくとも一つの地震検知器から、通信ネットワークを介して、所定震度(例えば、震度5弱)以上の地震が発生したことを示す地震発生信号を受信したとき、地震発生異常と判定し、搬送制御部64へ強制搬入信号及び防火シャッタ閉鎖信号を送信してもよい。
【0044】
なお、管理装置6は、前室に設置され、閲覧室7のドアの外側を撮影する監視カメラを制御し、その監視カメラから取得した映像を、常時、あるいは金庫ボックス10の閲覧終了後などの特定の場合に閲覧テーブル2へ送信するカメラ制御部を有していてもよい。
また、管理装置6は、閲覧テーブル2の操作・表示部21を介して行われた解錠操作にしたがって、電気錠72を解錠制御する電気錠制御部を有していてもよい。
【0045】
図4及び図5を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システム1の全体動作フローについて説明する。以下に説明する動作フローは、管理装置6により制御される。
まず、利用者が、閲覧室7の外側に設けられたカードリーダ5に、自己の所有するIDカードを読取らせる。このとき、閲覧室7内に既に他の利用者いるか否かを判定し(ステップS101)、他の利用者が閲覧室7を利用中であれば、管理装置6はその閲覧室7が利用できないことを利用者に通知し(ステップS103)、閲覧室7と前室の境界に設けられたドア71の電気錠72を施錠したままとする。
【0046】
一方、閲覧室7内に他の利用者がいなければ、管理装置6の認証制御部63は、カードリーダ5が読み取った個人識別番号が、予め記憶部61に記憶されている何れかの登録識別番号と一致するか否か判定する(ステップS102)。認証制御部63は、カードリーダ5から取得した個人識別番号が何れの登録識別番号とも一致しない場合、その旨を通信部62を介してカードリーダ5に通知する。そしてカードリーダ5は、カードリーダ5自身に設けられたスピーカ、液晶ディスプレイなどを通じて、閲覧室7を利用できないこと及びIDカードが正当なものでないことを利用者に報知する(ステップS103)。その後、管理装置6は処理を終了する。
【0047】
一方、認証制御部63は、カードリーダ5から取得した個人識別番号が何れかの登録識別番号と一致した場合、記憶部61に入室禁止モードが設定されているか否かを確認し(ステップS104)、入室禁止モードが設定されている場合は、利用停止中であり、閲覧室7を利用できない旨を利用者に報知する(ステップS103)。一方、入室禁止モードが設定されていない場合、認証制御部63は、電気錠72を解錠制御し、閲覧室7への通行規制を解除する(ステップS105)。また認証制御部63は、そのときの個人識別番号を、閲覧室7内にいる利用者を表すものとして、一時的に記憶部61に記憶する。さらに、認証制御部63は、搬出開始信号及びカードリーダ5から取得した個人識別を管理装置6の搬送制御部64へ通知する。そして搬送制御部64は、搬送機構3を制御して、受け取った個人識別番号により特定される位置の金庫ボックス10を閲覧室7へ搬出する処理を開始させる(ステップS106)。一方、管理装置6のテーブル制御部65は、閲覧テーブル2の操作・表示部21に、暗証番号を入力するための操作ボタンと操作ガイドを表示させる。
【0048】
その後、管理装置6の放置監視部66は、放置異常を検出したか否か判定する(ステップS107)。ステップS107にて、放置監視部66が放置異常を検出していない場合、操作・表示部21を介して暗証番号が入力されると、認証制御部63は、その暗証番号が閲覧室7内にいる利用者を表す個人識別番号と関連付けて記憶部61に記憶されている暗証番号と一致するか否か判定する(ステップS108)。認証制御部63は、その暗証番号が、閲覧室7内にいる利用者を表す個人識別番号と関連付けて記憶部61に記憶されている暗証番号と一致しない場合、閲覧テーブル2に対して暗証番号が間違っていることを示す信号を通知し、閲覧テーブル2の操作・表示部21に暗証番号が間違っている旨のメッセージを表示させる。その後、管理装置6は、制御をステップS107へ戻す。
【0049】
一方、ステップS108において、操作・表示部21を介して入力された暗証番号が、現在利用者情報として記憶されている個人識別番号と関連付けて記憶部61に記憶されている暗証番号と一致する場合、テーブル制御部65は、操作・表示部21に、提供口シャッタ23を開けるための操作ボタン及び操作ガイドを表示させる(ステップS109)。
その後、テーブル制御部65は、利用者が操作・表示部21を介して提供口シャッタ23を開く操作を行ったか否か判定する(ステップS110)。管理装置6が、閲覧テーブル2から提供口シャッタ23を開ける操作が行われたことを示す信号を受信していない場合(ステップS110−No)、放置監視部66は、放置異常を検出したか否か判定する(ステップS111)。ステップS111にて、放置監視部66が放置異常を検出していなければ、制御はステップS110に戻される。
【0050】
一方、ステップS110において、管理装置6が、閲覧テーブル2から提供口シャッタ23を開ける操作が行われたことを示す信号を受信した場合(ステップS110−Yes)、テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の制御部25に、提供口シャッタ23を開放させるとともに、操作・表示部21に提供口シャッタ23を閉めるための操作ボタン及び操作ガイドを表示させる(ステップS112)。このとき、呼び出された金庫ボックス10が閲覧テーブル2のボックス提供口22まで搬送される搬出処理が完了していない場合は、制御部25は、搬出処理が完了するまで、提供口シャッタ23の開放を待機する。
これにより、利用者は自己に貸し与えられた金庫ボックス10を利用することが可能となる。
【0051】
ステップS112の後、放置監視部66は、放置異常を検出したか否か判定する(ステップS113)。ステップS113にて、放置監視部66が放置異常を検出していなければ、テーブル制御部65は、利用者が操作・表示部21を介して提供口シャッタ23を閉じる操作を行ったか否か判定する(ステップS114)。管理装置6が、閲覧テーブル2から提供口シャッタ23を閉じる操作が行われたことを示す信号を受信していない場合(ステップS114−No)、制御はステップS113に戻される。一方、管理装置6が、閲覧テーブル2から提供口シャッタ23を閉じる操作が行われたことを示す信号を受信した場合(ステップS114−Yes)、テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の制御部25に、提供口シャッタ23を閉鎖させる(ステップS115)。その後、テーブル制御部65は、搬送制御部64へ搬入開始信号を通知し、それを受けて搬送制御部64は、搬送機構3を制御して、閲覧室7内にある金庫ボックス10を金庫室8に搬入し、収納ラック81の利用者の個人識別番号により特定される位置に収納させる(ステップS116)。その後、管理装置6は処理を終了する。
【0052】
また、図5に示すように、ステップS107、S111あるいはS113において、放置監視部66が放置異常を検出した場合、放置監視部66は、強制搬入信号を搬送制御部64へ通知する。そして搬送制御部64は、閲覧テーブル2から受信した最新のボックス提供口開閉状態信号を参照して、提供口シャッタ23が閉じているか否か判定する(ステップS117)。搬送制御部64は、提供口シャッタ23が閉じていれば、搬送機構3を制御して、閲覧室7内にある金庫ボックス10を金庫室8内に強制搬入する(ステップS118)。そして、搬送制御部64は、搬送機構3を制御して、強制搬入した金庫ボックス10を、収納ラック81の利用者の個人識別番号により特定される位置に収納させる。
【0053】
一方、ステップS117において、提供口シャッタ23が開いている場合、搬送制御部64は、金庫ボックス10を金庫室8内へ搬入できないことを示す搬入不可信号を、送信部62を介して閲覧テーブル2または管理装置6と通信ネットワークを介して接続された保守装置などへ通報する(ステップS119)。さらに、管理装置6は、ドア71に設けられた電気錠72を施錠した状態に保ち、以降管理者により異常復旧が為されるまで、誰も閲覧室7内に入れないように利用者の入室を禁止する入室禁止モードを設定する(ステップS120)。その後、管理装置6は管理者によって解除されるまで入室禁止モードを維持する。
【0054】
次に、図6を参照しつつ、利用者が閲覧室7内にいる場合に、火災が発生した時の自動貸金庫システム1の動作フローを説明する。
【0055】
管理装置6の火災監視部67は、火災発生信号を受信すると、火災発生異常と判定する。そして火災監視部67は、電気錠72を解錠する(ステップS201)。また、テーブル制御部65は、閲覧テーブル2の操作・表示部21に、火災が発生したことを知らせるメッセージを表示させる。そして、火災監視部67は、搬送制御部64へ強制搬入信号及び防火シャッタ閉鎖信号を送信する。次に、搬送制御部64は、閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10があるか否か判定する(ステップS202)。そして閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10がなければ、搬送制御部64は、防火シャッタ4を閉鎖する(ステップS205)。そして管理装置6は処理を終了する。なお、搬送制御部64は、閲覧室7内へ何れかの金庫ボックス10の搬出処理を実行した後、その金庫ボックス10を搬入処理を実行していなければ、閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10が存在すると判定できる。
【0056】
一方、ステップS202において、閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10が存在すれば、搬送制御部64は、閲覧テーブル2から受信した最新のボックス提供口開閉状態信号を参照して、提供口シャッタ23が閉じているか否か判定する(ステップS203)。搬送制御部64は、提供口シャッタ23が閉じていれば、搬送機構3を制御して、閲覧室7内にある金庫ボックス10を金庫室8内に強制搬入する(ステップS204)。そして、搬送制御部64は、搬送機構3を制御して、強制搬入した金庫ボックス10を、収納ラック81の利用者の個人識別番号により特定される位置に収納させる。また、搬送制御部64は、金庫ボックス10を搬入口9よりも金庫室8内側へ搬入した時点で、防火シャッタ4を閉鎖する(ステップS205)。なお、搬入口9を通過する金庫ボックス10を検知できるように、搬入口9にセンサを設けてもよい。この場合、ステップS204にて、センサが閲覧室7から強制搬入される金庫ボックス10が搬入口9を通過したことを検知すると、その旨を示す検知信号を管理装置6へ送信する。そして搬送制御部64は、センサからの検知信号を受信すると直ちにステップS205の処理を実行し、防火シャッタ4を閉鎖してもよい。
【0057】
一方、ステップS203において、提供口シャッタ23が開いている場合、搬送制御部64は、金庫ボックス10を金庫室8内へ搬入できないことを示す搬入不可信号を、送信部62を介して閲覧テーブル2または管理装置6と通信ネットワークを介して接続された保守装置などへ通報する(ステップS206)。これと併行して、搬送制御部64は、防火シャッタ4を閉鎖する(ステップS205)。
ステップS205の後、管理装置6は処理を終了する。
なお、自動貸金庫システム1は、管理装置6が所定震度以上の地震が発生したことを示す地震発生信号を地震検知センサから受信したときも、上記の図6に示したフローに従って、金庫ボックス10の搬入及び防火シャッタ4を閉鎖してもよい。
【0058】
以上説明してきたように、本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システムは、何らかの事情により、金庫ボックスが閲覧室に呼び出された状態で、利用者が閲覧室から退室した、あるいは退出するような異常事態が発生したときに、その異常事態の発生を検知して、閲覧室に呼び出されている金庫ボックスを強制的に金庫室内へ搬入する。そのため、この自動貸金庫システムは、金庫ボックスに預け入れた物品を安全な状態で確実に保護することができる。
さらに、この自動貸金庫システムは、閲覧室内にある金庫ボックスが搬出されている間に、火災が発生したときには、その搬出されている金庫ボックスを強制的に金庫室内へ搬入した後、自動的に防火シャッタを閉鎖する。このため、この自動貸金庫システムは、金庫ボックスに預け入れた物品を安全な状態で確実に保護することができる。
またこの自動貸金庫システムは、金庫ボックスを強制的に金庫室内へ搬入する際、利用者が呼び出されている金庫ボックスに接触できないよう、提供口シャッタが閉じられていることを確認した上で、その強制搬入動作を実行するので、その強制搬入動作によって利用者が怪我したり、金庫ボックスに収納した物品が破損することを防止できる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、この自動貸金庫システムは、搬送機構3を制御する制御装置を、管理装置6と別個に有し、その制御装置と管理装置6とが、通信ネットワークを介して接続されていてもよい。この場合、管理装置6の搬送制御部64は、搬送機構3を駆動して金庫ボックス10の搬入/搬出を行わせるために、搬送機構3を制御する制御装置に対して、収納ラック81の収納位置を示す信号とともに、搬入指示信号または搬出指示信号を送信する。またその制御装置は、管理装置6から搬入指示信号及び収納位置を示す信号を受信すると、搬送機構3を制御して、閲覧室7にある金庫ボックス10を金庫室8内へ搬入し、その金庫ボックス10を収納ラック81の所定位置に収納する。一方、その制御装置は、管理装置6から搬出指示信号及び収納位置を示す信号を受信すると、搬送機構3を制御して、収納ラック81の所定位置に保管されている金庫ボックス10を取り出し、その金庫ボックス10を閲覧室7へ搬出する。さらに、搬送制御部64は、閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10が金庫室8内に搬入されたことを、搬入口9に設置されたセンサからの信号などにより検知した後、あるいは、提供口シャッタ23が開いていることを検知した後、制御装置に防火シャッタ閉鎖信号を送信して、その制御装置に防火シャッタ4を閉鎖させてもよい。
【0060】
また、図5に示したステップS120において、閲覧室7への入室規制が実行される入室禁止モードが設定された後も、管理部6の認証制御部63は、図5に示したステップS102において、カードリーダ5に読み取られた個人識別番号が、入室規制実行時に記憶部61に現在利用者情報として記憶されている個人識別番号と一致する場合には、電気錠72を解錠して、閲覧室7への入室を許可してもよい。これにより、自動貸金庫システム1は、何等かの事情で閲覧室7内に金庫ボックス10を放置して一旦退室してしまった利用者が、自己の金庫ボックス10を放置したまま何もできなくなる事態を防止できる。
【0061】
また、人体検知センサによって閲覧室7内に利用者がいるか否かを検出可能となっている場合、搬送制御部64は、図5に示したステップS117において、提供口シャッタ23が閉じているか否か判定する代わりに、人体検知センサから、人体が検出されたことを示す信号を受信しているか否かを判定してもよい。そして搬送制御部64は、人体が検出されたことを示す信号を受信していない場合にのみ、利用者が閲覧室7内に搬出された金庫ボックス10に接触不可能であり、強制搬入処理によって利用者が怪我をする可能性はないと考えられるため、ステップS118の強制搬入処理を実行してもよい。さらに搬送制御部64は、図5のステップS117において、提供口シャッタ23が閉じているか、人体が検出されたことを示す信号を受信していないかの何れかであれば、ステップS118の強制搬入処理を実行してもよい。
【0062】
さらに、図6に示したステップS206において、閲覧テーブル2の制御部25は、管理装置6から搬入不可信号を受信すると、操作・表示部21に、金庫ボックスを回収できないこと、及び、金庫ボックスを回収するために提供口シャッタ23を閉じる操作を行うことを促すメッセージを表示させてもよい。さらにまた、制御部25は、操作・表示部21に、提供口シャッタ23を閉じる操作ボタンを、通常時よりも大きく、あるいは色を変えて目立つように表示させてもよい。この場合、管理装置6の搬送制御部64は、ステップS206からステップS205へ制御が移行される前に、利用者が提供口シャッタ23を閉じる操作ボタンを押下するのに十分な時間(例えば、5秒間)待機してもよい。そして、その待機期間内にその操作ボタンが押下されなければ、搬送制御部64は、待機期間経過後直ちに防火シャッタ4を閉鎖し、一方、その待機期間内にその操作ボタンが押下されれば、搬送制御部64は、閲覧室7内にある金庫ボックス10を強制搬入した後、防火シャッタ4を閉鎖してもよい。
また、上記実施形態において、提供口シャッタ23に電動式シャッタを用いる構成としたが、手動式シャッタ及びシャッタを閉鎖状態に保持するロック機構を用いた構成としてもよい。この場合、閲覧テーブル2の制御部25は、管理装置6から提供口シャッタ23を開放させる信号を受信すると、ロック機構を制御してシャッタのロックを解除し、また手動シャッタの閉鎖を別途設けたセンサで検出すると、シャッタをロックする。
【0063】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システムの概略構成図である。
【図2】閲覧テーブルの概略外観図である。
【図3】管理装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システムの全体処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る自動貸金庫システムの全体処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】利用者が閲覧室内にいる場合に、火災または地震が発生した時の自動貸金庫システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 自動貸金庫システム
2 閲覧テーブル
3 搬送機構
4 防火シャッタ
5 カードリーダ
6 管理装置
7 閲覧室
8 金庫室
9 搬入口
10 金庫ボックス
21 操作・表示部
22 ボックス提供口
23 提供口シャッタ
24 通信部
25 制御部
61 記憶部
62 通信部
63 認証制御部
64 搬送制御部
65 テーブル制御部
66 放置監視部
67 火災監視部
71 ドア
72 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金庫室外に設けられた閲覧テーブルと、該閲覧テーブルと前記金庫室との間で利用者の預託品を収納する金庫ボックスを搬送する搬送機構と、該搬送機構による金庫ボックスの搬送制御を実行する管理装置とを備えた自動貸金庫システムであって、
前記閲覧テーブルは、
前記金庫室から搬出された金庫ボックスを利用者に提供するために、前記閲覧テーブルに形成されたボックス提供口と、
前記ボックス提供口を開放または閉鎖する開閉部とを有し、
前記管理装置は、
前記金庫室と前記閲覧テーブルとの間で特定の金庫ボックスを前記搬送機構に搬送させる搬送制御部と、
所定の異常状態を検知する異常検知部とを有し、
金庫ボックスが前記閲覧テーブルへ搬出された状態において、前記異常検知部が前記所定の異常状態を検知したとき、利用者が当該搬出された状態の金庫ボックスに接触不可能な状態である場合に前記搬送機構に当該金庫ボックスを前記金庫室へ搬入させる、
ことを特徴とする自動貸金庫システム。
【請求項2】
前記異常検知部は、前記閲覧テーブルへ搬出された金庫ボックスが放置されている状態を前記所定の異常状態として検知する、請求項1に記載の自動貸金庫システム。
【請求項3】
前記閲覧テーブルが設置された閲覧室への利用者の入室を規制する入室規制装置をさらに備え、
前記管理装置は、金庫ボックスが前記閲覧テーブルへ搬出された状態において、前記異常検知部が前記所定の異常状態を検知したとき、利用者が当該搬出された状態の金庫ボックスに接触可能な状態である場合には当該金庫ボックスの搬入は行わず、当該閲覧室への利用者の入室を禁止するよう前記入室規制装置を制御する、請求項1または2に記載の自動貸金庫システム。
【請求項4】
前記管理装置は、利用者が前記閲覧室へ入室する時に当該利用者を識別し、前記閲覧室への利用者の入室を禁止している間、前記搬出された状態の金庫ボックスを前記閲覧テーブルへ搬出させた利用者のみ前記閲覧室への入室を許可するよう前記入室規制装置を制御する、請求項3に記載の自動貸金庫システム。
【請求項5】
金庫室外に設けられ利用者の預託品を収納する金庫ボックスを利用者に提供するためのボックス提供口及び該ボックス提供口を開放または閉鎖する開閉部を有する閲覧テーブルと、該閲覧テーブルと前記金庫室との間で前記金庫ボックスを搬送する搬送機構と、該搬送機構を制御する制御装置を備えた自動貸金庫システムの管理装置であって、
金庫ボックスが前記閲覧テーブルへ搬出された状態において、所定の異常状態を検知したとき、前記開閉部が閉鎖状態である場合に、前記搬送機構の制御装置に対して当該金庫ボックスを前記金庫室へ搬入させる信号を送信する、
ことを特徴とする管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156137(P2010−156137A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334570(P2008−334570)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】