説明

自動車およびその制御方法

【課題】空調装置による乗員室の暖房の必要から内燃機関の運転を継続するものとしても、蓄電装置の状態をより適正に保持して車両の燃費を向上させる。
【解決手段】車両要求パワーP*によってはエンジンの運転の必要はないが空調装置による暖房のためにエンジンを運転するときには、エンジンを効率よく運転する際の点火時期からバッテリの入力制限Winに応じた点火遅角量ΔEaだけ遅角した点火時期を用いてエンジンを負荷運転する(S180)。これにより、エンジンをアイドル運転するものに比して、車両の燃費を向上させることができると共にバッテリの過充電を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車としては、外気の温度と乗員室に設けられた暖房用の空気の吹き出し口における空気吹出温度とに基づいてエンジンのアイドルストップの許可および禁止を設定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、暖房中は、外気の温度が第1所定温度未満のときや空気吹出温度が第2所定温度以上のときにはエンジンのアイドルストップを禁止することにより、空調装置の暖房性能を確保しようとしている。
【特許文献1】特開2001−341515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の自動車では、空調装置による乗員室の暖房の必要からエンジンのアイドルストップを禁止することにより暖房性能を確保することができるものの、エンジンのアイドル運転を継続するために、車両の燃費が低下してしまう。また、エンジンをアイドル運転すると、回転数のフラツキにより車両の共振を生じさせる場合も生じる。こうした問題に対して、ハイブリッド自動車では、空調装置の暖房性能を確保するためにエンジンを負荷運転すると共に負荷運転による動力を用いて発電機により発電してバッテリを充電し、後にバッテリからの電力をモータに供給することにより、全体として車両の燃費を向上させることも考えられるが、バッテリの状態によってはエンジンを負荷運転するとバッテリを過充電してしまう場合が生じる。
【0004】
本発明の自動車およびその制御方法は、空調装置による乗員室の暖房の必要から内燃機関の運転を継続するものとしても車両の燃費を向上させることを目的の一つとする。また、本発明の自動車およびその制御方法は、空調装置による乗員室の暖房の必要から内燃機関の運転を継続するものとしてもバッテリなどの蓄電装置の状態をより適正な状態とすることを目的の一つとする。さらに、本発明の自動車およびその制御方法は、空調装置による乗員室の暖房の必要から内燃機関の運転を継続することにより生じ得る車両の振動を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自動車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の自動車は、
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、
走行用の動力を出力可能な電動機と、
前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段と、
前記電動機および前記発電手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記内燃機関を熱源として乗員室を暖房すると共に所定の条件に基づいて該内燃機関の運転要求として暖房用運転要求を設定する暖房手段と、
走行に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づいて前記内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求を設定するパワー用運転要求設定手段と、
前記パワー用運転要求設定手段によるパワー用運転要求が設定されていない状態で前記暖房手段による暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、前記蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて前記内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、該設定した目標負荷運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の自動車では、走行に要求される要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づいて走行用の動力を出力可能な内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求が設定されていない状態で内燃機関を熱源として乗員室を暖房する暖房手段による内燃機関の運転要求としての暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、設定した目標負荷運転状態で内燃機関が運転されると共に要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と走行用の動力を出力可能な電動機と内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段とを制御する。これにより、内燃機関を単に自立運転(アイドル運転を含む)する場合に比して車両の燃費を向上させることができる。しかも、蓄電手段の充電容量に基づいて目標負荷運転状態を設定するから、蓄電手段の状態をより適正な状態とすることができる。また、内燃機関をアイドル運転しないから、内燃機関をアイドル運転することにより生じ得る車両の振動を抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の自動車において、前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記充電容量が小さいほど前記内燃機関から出力される機械的パワーが小さくなる傾向に前記目標負荷運転状態を設定する手段であるものとすることもできる。この場合、内燃機関の回転数を変更しないものとすれば、蓄電手段の充電電力は小さくなるから、蓄電手段が満充電されるのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記内燃機関における吸入空気量,燃料噴射量,点火時期,吸気弁の開閉タイミングの少なくとも一つを用いて前記目標負荷運転状態を設定する手段であるものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の自動車において、前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記充電容量が小さいほど前記内燃機関の点火時期が遅くなる傾向に前記目標負荷運転状態を設定する手段であるものとすることもできる。内燃機関の点火時期は、通常燃費のよい時期を基準としているから、点火時期を遅くすることにより、燃費のよい点火時期に比して燃焼によるエネルギのうち熱として消費する分を多くすることになる。このため、内燃機関から出力される機械的パワーが小さくなり、蓄電手段の充電電力は小さくなるから、蓄電手段が満充電されるのを抑制することができる。また、点火時期の変更は、電圧の印加タイミングを変更することによって行なわれるから、機械的な動作を伴って行なわれる吸入空気量の変更や吸気弁の開閉タイミングの変更に比して高い応答性となる。このため、蓄電手段の充電容量の応じて迅速に対応することができる。
【0011】
あるいは、本発明の自動車において、前記充電容量を含む前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電可能な最大電力である入力制限を設定する入力制限設定手段を備え、前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記設定された入力制限に基づいて前記目標負荷運転状態を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、蓄電手段に過大な電力を入力するのを抑制することができる。なお、蓄電手段の状態としては充電容量の他に蓄電手段の温度なども含まれる。
【0012】
また、本発明の自動車において、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と車軸とに接続され、電力と動力との入出力を伴って動力を前記出力軸と前記車軸とに出力可能な電力動力入出力手段であるものとすることもできる。また、前記発電手段は、前記出力軸と前記車軸と回転軸との3軸に接続され、該3軸のいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力する発電機とを備える手段であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の自動車の制御方法は、
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段と、前記電動機および前記発電手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、前記内燃機関を熱源として乗員室を暖房すると共に所定の条件に基づいて該内燃機関の運転要求として暖房用運転要求を設定する暖房手段と、を備える自動車の制御方法であって、
走行に要求される要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づく前記内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求がなされていない状態で前記暖房手段による暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、前記蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて前記内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、該設定した目標負荷運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の自動車の制御方法では、走行に要求される要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づいて走行用の動力を出力可能な内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求が設定されていない状態で内燃機関を熱源として乗員室を暖房する暖房手段による内燃機関の運転要求としての暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、設定した目標負荷運転状態で内燃機関が運転されると共に要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう内燃機関と走行用の動力を出力可能な電動機と内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段とを制御する。これにより、内燃機関を単に自立運転(アイドル運転を含む)する場合に比して車両の燃費を向上させることができる。しかも、蓄電手段の充電容量に基づいて目標負荷運転状態を設定するから、蓄電手段の状態をより適正な状態とすることができる。また、内燃機関をアイドル運転しないから、内燃機関をアイドル運転することにより生じ得る車両の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、乗員室21の空調を行なう空調装置90と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0018】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、電力ライン54に接続されたインバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)などを演算している。
【0022】
空調装置90は、エンジン22の冷却系に取り付けられ冷却水との熱交換を行なう熱交換器91と、外気や乗員室21内の空気を熱交換器91側に吸引すると共にこの熱交換器91による熱交換によって暖められた空気を乗員室21に吹き出させるブロワ93と、ブロワ93により吸引される空気を外気か乗員室21内の空気かに切り替える切替機構92と、乗員室21に取り付けられた操作パネル94と、装置全体をコントロールする空調用電子制御ユニット(以下、空調用ECUという)98とを備える。空調用ECU98には、操作パネル94に取り付けられてヒータのオンオフを操作するブロワスイッチ94aからのブロワスイッチ信号BSWや同じく操作パネル94に取り付けられて乗員室21内の温度を設定する設定温度スイッチ94bからの設定温度T*,操作パネル94に取り付けられて乗員室21内の温度を検出する温度センサ94cからの乗員室温Tin,乗員室21の外部に取り付けられて外気温を検出する外気温センサ95からの外気温Toutなどが入力されており、これらの入力信号に基づいて乗員室温Tinが設定温度T*となるようブロワ93を駆動制御すると共に暖房性能を確保する必要から冷却水温Twが低いときにはエンジン22の運転を要求するためのエンジン運転要求EG*を設定する。ここで、エンジン22の運転要求EG*は、例えば、冷却水温Twが第1の温度(例えば60℃)未満のときにオンとすると共に冷却水温Twが第2の温度(例えば80℃)以上のときにオフとするなど種々の手法により設定することができる。また、空調用ECU98は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、必要に応じて設定したエンジン運転要求EG*や空調装置90の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に送信する。
【0023】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0024】
次に、こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作、特に空調装置90により設定されるエンジン運転要求EG*のオンオフに基づく駆動制御の際の動作について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0025】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,バッテリ50の充放電要求Pb*,エンジン運転要求EG*など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の充放電要求Pb*は、バッテリ50の残容量(SOC)とその目標値である目標SOC*とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとし、エンジン運転要求EG*は、空調用ECU98から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図4に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図5にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0026】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*と車両に要求される車両要求パワーP*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。車両要求パワーP*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求Pb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
【0027】
続いて、設定した車両要求パワーP*を閾値Prefと比較する(ステップS120)。ここで、閾値Prefは、車両要求パワーP*に基づいてエンジン22を運転するか否かを判定するためのものであり、実施例ではエンジン22を比較的効率よく運転することができるパワーの下限値近傍の値を用いた。車両要求パワーP*が閾値Pref以上のときには、車両要求パワーP*をエンジンパワーPe*に設定し(ステップS130)、設定したエンジンパワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS140)。この設定は、実施例では、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインとエンジンパワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0028】
次に、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS190)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0030】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)により計算すると共に(ステップS220)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS230)、計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値としてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、前述した図8の共線図から容易に導き出すことができる。
【0031】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
【0032】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が運転されているときにはエンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで効率よく運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミング制御などの制御を行ない、エンジン22が運転停止中のときにはエンジン22を始動してエンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで効率よく運転されるように同様の制御を行なう。吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミング制御は、実施例では、エンジン22の運転ポイント(回転数Ne,トルクTe)とエンジン22が効率よく運転されるスロットル開度や燃料噴射量,点火時期,吸気バルブ128の開閉タイミングとの関係を実験などにより予め求めて制御値設定用マップとしてエンジンECU24のROM24bに記憶しておき、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とが与えられると記憶したマップから対応する制御値(スロットル開度や燃料噴射量,点火時期,吸気バルブ128の開閉タイミング)を導出し、これを用いてスロットルバルブ124を駆動したり燃料噴射弁126から燃料噴射したり点火プラグ130に電圧を印加したり可変バルブタイミング機構150を駆動するものとした。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0033】
ステップS120で車両要求パワーP*が閾値Pref未満であると判定されると、エンジン運転要求EG*を調べ(ステップS150)、エンジン運転要求EG*がオフのときには、エンジン22の運転は必要ないと判断して、エンジン22を停止するために目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに値0を設定し(ステップS200)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する(ステップS210)。そして、設定したトルク指令Tm1*を用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS220〜S240)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。値0の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が運転されているときにはエンジン22が運転を停止するよう燃料噴射制御や点火制御などの制御を停止し、エンジン22が運転停止されているときには運転停止の状態を保持する。なお、モータMG2のトルク指令Tm2*としては、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0が設定されているから、基本的には、要求トルクTr*に相当するトルクが設定されることになる。
【0034】
ステップS120で車両要求パワーP*が閾値Pref未満であると判定され、更にステップS150でエンジン運転要求EG*がオンであると判定されると、車両要求パワーP*によってはエンジン22の運転は必要ないが空調装置90による暖房のためにエンジン22の運転が必要と判断して、エンジンパワーPe*に閾値Prefを設定し(ステップS160)、設定したエンジンパワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS170)。ここで、エンジンパワーPe*に上述した閾値Prefを設定するのは、エンジン22を比較的効率よく負荷運転するためであり、目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、上述したように、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインとエンジンパワーPe*とに基づいて行なわれる。続いて、バッテリ50の入力制限Winに基づいてエンジン22を効率よく目標回転数Ne*と目標トルクTe*とで運転する際の点火時期からの遅角量である点火遅角量ΔEaを設定すると共にエンジンECU24に送信し(ステップS180)、設定した目標回転数Ne*を用いてモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共にトルク指令Tm1*を計算し(ステップS190)、計算したトルク指令Tm1*を用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS220〜S240)、設定した値をそれぞれ送信して(ステップS250)、駆動制御ルーチンを終了する。ここで、点火遅角量ΔEaとしては、実施例では、バッテリ50の入力制限Winと点火遅角量ΔEaとの関係を予め定めて点火遅角量設定用マップとしてROM74に記憶しておき、入力制限Winが与えられると記憶したマップから対応する点火遅角量ΔEaを導出して設定するものとした。図9に点火遅角量設定用マップの一例を示す。図示するように、実施例では、点火遅角量ΔEaをバッテリ50の入力制限Winが大きいほど(絶対値としては小さいほど)大きくなるように設定している。このように点火遅角量ΔEaを設定してエンジンECU24に送信すると、エンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで効率よく運転される吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミング制御から点火時期については点火遅角量ΔEaだけ遅角した時期を用いてエンジン22を制御する。エンジン22の回転数Neや吸入空気量,燃料噴射量を変更せずに点火時期だけを遅角すると、効率が低下することになるから、燃焼によるエネルギのうち熱として消費されるエネルギが多くなり、結果として機械的エネルギとして出力されるエネルギが小さくなる。このため、モータMG1による発電電力が小さくなるから、バッテリ50の充電電力も小さくなる。バッテリ50の入力制限Winは、上述したようにバッテリ50の残容量(SOC)が大きくなって充電可能な容量(充電容量)が小さくなると大きく(絶対値としては小さく)なるから、入力制限Winが大きいほど(絶対値としては小さいほど)大きくなるように点火遅角量ΔEaを設定することにより、バッテリ50の入力制限Winが大きいほど(絶対値としては小さいほど)、熱として消費されるエネルギを多くしてバッテリ50の充電電力を小さくすることになる。この結果、バッテリ50が過充電されるのを抑制することができ、バッテリ50の状態をより良好なものとすることができる。しかも、こうした点火時期の遅角は、点火プラグ130に電圧を印加するタイミングを変更するだけで行なうことができるから、スロットルバルブ124の動作を伴って行なわれる吸入空気量の減少や可変バルブタイミング機構150の動作を伴って行なわれる吸気バルブ128の開閉タイミングの変更によってバッテリ50の充電電力を小さくする場合に比して、高い応答性をもってバッテリ50の充電電力を小さくすることができる。また、空調装置90による暖房のためにエンジン22の運転を必要とするときにはエンジン22を負荷運転するから、空調装置90による暖房のためにエンジン22の運転を必要とするときにエンジン22をアイドル運転などの自立運転をするものに比して燃費の向上を図ることができる。さらに、エンジン22を負荷運転するから、エンジン22をアイドル運転する際に生じ得る車両の共振などによる振動を抑制することができる。
【0035】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、車両要求パワーP*によってはエンジン22の運転の必要はないが空調装置90による暖房のためにエンジン22を運転するときには、エンジン22を負荷運転するから、空調装置90による暖房のためにエンジン22の運転を必要とするときにエンジン22をアイドル運転などの自立運転をするものに比して、燃費の向上を図ることができる。しかも、バッテリ50の入力制限Winに応じた点火遅角量ΔEaを用いて点火時期を遅角してエンジン22を負荷運転するから、バッテリ50が過充電されるのを抑制することができ、バッテリ50の状態をより良好なものとすることができる。また、点火時期の遅角によりバッテリ50の充電電力を小さくするから、吸入空気量の減少や吸気バルブ128の開閉タイミングの変更によってバッテリ50の充電電力を小さくする場合に比して、高い応答性をもってバッテリ50の充電電力を小さくすることができる。もとより、エンジン22の運転の必要がなくても空調装置90による暖房のためにエンジン22の運転を継続する場合であっても、バッテリ50の入力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力することができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、車両要求パワーP*によってはエンジン22の運転は必要ないが空調装置90による暖房のためにエンジン22を運転するときには、エンジンパワーPe*にエンジン22を比較的効率よく運転することができるパワーの下限値近傍の値として設定された閾値Prefを設定してエンジン22を負荷運転するものとしたが、エンジンパワーPe*に閾値Prefより大きな値や小さな値を設定してエンジン22を負荷運転するものとしても構わない。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の電池温度Tbと残容量(SOC)とに基づく入力制限Winに応じて点火遅角量ΔEaを設定してエンジン22を負荷運転するものとしたが、バッテリ50の残容量(SOC)のみに基づいて点火遅角量ΔEaを設定してエンジン22を負荷運転するものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の入力制限Winが大きくなるほど(絶対値としては小さくなるほど)大きくなる点火遅角量ΔEaを設定してエンジン22を負荷運転するものとしたが、バッテリ50の入力制限Winが所定値以上(絶対値としては所定値未満)に至ったときに予め定めた所定値を点火遅角量ΔEaに設定してエンジン22を負荷運転するものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、車両要求パワーP*によってはエンジン22の運転の必要はないが空調装置90による暖房のためにエンジン22を運転するときには、エンジン22を効率よく運転する際の点火時期からバッテリ50の入力制限Winに応じた点火遅角量ΔEaだけ遅角した点火時期を用いてエンジン22を負荷運転することにより、バッテリ50の充電電力を小さくしてバッテリ50の過充電を抑制するものとしたが、バッテリ50の充電電力を小さくしてバッテリ50の過充電を抑制すればよいから、エンジン22を効率よく運転する際のスロットル開度からバッテリ50の入力制限Winに応じた開度だけ減少させたスロットル開度を用いてエンジン22を負荷運転するものとしたり、エンジン22を効率よく運転する際の燃料噴射量からバッテリ50の入力制限Winに応じた噴射量だけ減少させた燃料噴射量を用いてエンジン22を負荷運転するものとしたり、エンジン22を効率よく運転する際の吸気バルブ128の開閉タイミングからバッテリ50の入力制限Winに応じたタイミングだけ変更させた吸気バルブ128の開閉タイミングを用いてエンジン22を負荷運転するものとしてもよい。また、点火時期の遅角やスロットル開度の減少,燃料噴射量の減少,吸気バルブ128の開閉タイミングの変更のいずれか一つを用いてエンジン22を負荷運転するものだけでなく、これらの一部または全部を組み合わせてエンジン22を負荷運転するものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。また、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。このように、エンジンから走行用の動力を出力することができると共にエンジンを間欠運転することができ、エンジンを熱源として乗員室を暖房する空調装置を備え、空調装置による暖房のためにエンジンを運転するときにはエンジンを負荷運転することができるものであれば、如何なる構成としても構わない。
【0041】
実施例では、本発明の実施の形態をハイブリッド自動車20を用いて説明したが、自動車の制御方法の形態としても構わない。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自動車製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図5】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。
【図8】動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図9】点火遅角量設定用マップの一例を示す説明図である。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0045】
20,120,220 ハイブリッド自動車、21 乗員室、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 空調装置、91 熱交換器、92 切替機構、93 ブロワ、94 操作パネル、94a ブロワスイッチ、94b 設定温度スイッチ、94c 温度センサ、95 外気温センサ、98 空調用電子制御ユニット(空調用ECU)、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構。230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、
走行用の動力を出力可能な電動機と、
前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段と、
前記電動機および前記発電手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
前記内燃機関を熱源として乗員室を暖房すると共に所定の条件に基づいて該内燃機関の運転要求として暖房用運転要求を設定する暖房手段と、
走行に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づいて前記内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求を設定するパワー用運転要求設定手段と、
前記パワー用運転要求設定手段によるパワー用運転要求が設定されていない状態で前記暖房手段による暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、前記蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて前記内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、該設定した目標負荷運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する制御手段と、
を備える自動車。
【請求項2】
前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記充電容量が小さいほど前記内燃機関から出力される機械的パワーが小さくなる傾向に前記目標負荷運転状態を設定する手段である請求項1記載の自動車。
【請求項3】
前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記内燃機関における吸入空気量,燃料噴射量,点火時期,吸気弁の開閉タイミングの少なくとも一つを用いて前記目標負荷運転状態を設定する手段である請求項1または2記載の自動車。
【請求項4】
前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記充電容量が小さいほど前記内燃機関の点火時期が遅くなる傾向に前記目標負荷運転状態を設定する手段である請求項1ないし3いずれか記載の自動車。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の自動車であって、
前記充電容量を含む前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電可能な最大電力である入力制限を設定する入力制限設定手段を備え、
前記制御手段は、前記暖房運転要求時には、前記設定された入力制限に基づいて前記目標負荷運転状態を設定する手段である、
自動車。
【請求項6】
前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と車軸とに接続され、電力と動力との入出力を伴って動力を前記出力軸と前記車軸とに出力可能な電力動力入出力手段である請求項1ないし5いずれか記載の自動車。
【請求項7】
前記発電手段は、前記出力軸と前記車軸と回転軸との3軸に接続され、該3軸のいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力する発電機とを備える手段である請求項1ないし5いずれか記載の自動車。
【請求項8】
走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電手段と、前記電動機および前記発電手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、前記内燃機関を熱源として乗員室を暖房すると共に所定の条件に基づいて該内燃機関の運転要求として暖房用運転要求を設定する暖房手段と、を備える自動車の制御方法であって、
走行に要求される要求駆動力による走行用の動力を含む車両要求パワーに基づく前記内燃機関の運転要求であるパワー用運転要求がなされていない状態で前記暖房手段による暖房用運転要求が設定されている暖房運転要求時には、前記蓄電手段が満充電されるまでの充電容量に基づいて前記内燃機関の負荷運転状態である目標負荷運転状態を設定し、該設定した目標負荷運転状態で前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機と前記発電手段とを制御する、
ことを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−313948(P2007−313948A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143239(P2006−143239)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】