説明

自動車で使用するための冷凍回路

【課題】 自動車で使用するための冷凍回路を提供する。
【解決手段】 本発明は、自動車で使用するための冷凍回路に関し、冷媒圧縮機(8)と、少なくとも1台の凝縮器(10)と、少なくとも1台の調節される膨張弁(14)と、少なくとも1台の蒸発器(16)と、少なくとも1台の内部熱交換器(12)とを備え、冷媒圧縮機(8)は出力部側で加圧ライン(4)に、入力部側で吸入ライン(6)に接続され、調節される膨張弁(14)は制御変数として吸入ライン(6)の検出領域(20)における温度tEを有し、ここで、調節される膨張弁(14)の検出領域(20)は内部熱交換器(12)の出力部に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車で使用するための冷凍回路に関し、この冷凍回路は冷媒圧縮機と、少なくとも1台の凝縮器と、少なくとも1台の調節される膨張弁と、少なくとも1台の蒸発器と、少なくとも1台の内部熱交換器とを備える。冷媒圧縮機は出力部側で加圧ラインに、入力部側で吸入ラインに接続される。ここで、調節される膨張弁は、制御変数として吸入ラインの検出領域における温度tEを有する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷凍回路は十分に知られている。この種の冷凍回路の構造の最も簡単なタイプでは、加圧ラインが圧縮機の出力部から伸び、凝縮器を通り、膨張弁の入力部に至る。膨張弁において圧力が低減される。従って吸入ラインが膨張弁の出力部に接続され、蒸発器を通って延伸し、圧縮機の入力部で終端する。圧縮機は冷媒の状態を圧力および温度に関して変化させる。この場合、蒸気性の冷媒が非常に過熱されるため、圧縮機の出力部の温度は凝縮器内の凝縮温度より高い。凝縮器の入口において、冷媒は依然として非常に過熱された状態である。凝縮器は熱を周囲環境へ放出する。従って冷媒は凝縮器の出口では液状である。冷媒は特定の凝縮温度と特定の凝縮圧力を有し、それらは飽和温度および飽和圧力と呼ばれる。凝縮器の出口において、液体は過冷却される。すなわち、飽和温度より低い温度まで冷却される。膨張弁において、冷媒の状態はさらに変化する。ここで実行される圧力低減のため、冷媒は沸騰し始める。圧縮機の入口において、冷媒は液体状態と蒸気状態が混合した状態にある。蒸発器内で冷媒は熱を吸収し、従って蒸発器の出口において蒸気状態であり、このようにして、圧縮機によって吸入ラインに吸入される。圧縮機の損傷を回避するために、蒸発器の出口の冷媒は過熱された気相状態でなければならない。冷媒が蒸発器の出口で過熱状態にあることを確実にする1つの手段は、膨張弁を、調節される膨張弁として具現化することと関連している。この場合、膨張弁は制御変数として蒸発器の出口における温度tEを有する。従って冷媒が非常に過熱された状態にある場合、すなわち高温tEである場合、蒸発器に注入される冷媒が少なすぎ、冷媒の質量流量は増加し得る。反対に、蒸発器の出力部における過熱状態の温度に対して検出器温度が低下した時、弁の開口は小さくなる。この種の冷凍回路を効果的に改善する1つの手段は、内部熱交換器を加圧ラインおよび吸入ラインに設けることと関連している。この内部熱交換器によって、高圧下に冷却された冷媒が膨張弁に送られ、過熱された膨張冷媒が圧縮機に送られる。従って凝縮される冷媒はさらに過冷却され、その結果、膨張後の冷媒中の液体の比率は上昇し、ゆえにより多くの液体冷媒が蒸発に利用できる。従って内部熱交換器によって冷凍能力が向上し、また冷凍回路の効率も向上する。
【0003】
効率を改善することによって、圧縮機の動力消費量の低減をもたらすことができる。これはひいては燃料消費量および排出物の低減を達成できるという効果がある。所要動力の低減によって、より小型の圧縮機の使用が可能になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、効率をさらに改善する、自動車で使用するための冷凍回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、調節される膨張弁の検出領域が内部熱交換器の吸入側出力部に配置されるという事実によって達成される。このことにより、気体状の冷媒だけが圧縮機の入力部に存在することが確実になる。他方、冷媒が蒸発器の出力部で依然として混合/蒸気状態にあることがさらに可能になる。内部熱交換器を通過して初めて冷媒は気体状態となる。このようにして、冷媒をさらなる程度に過冷却することができ、それによって蒸発器内での熱放出を改善することが可能になる。これはひいては効率上良い効果をもたらす。さらに本発明による冷凍回路により、冷媒の冷凍能力が蒸発器全体にわたって均質に分配されることが確実になる。その理由は、冷媒は蒸発器領域全体において湿り蒸気状態にあるからである。
【0006】
有利な実施形態において、調節される膨張弁はサーモスタット形膨張弁として具現化され、吸入ラインの一部である制御ラインによって内部熱交換器の出力部に接続される。
【0007】
第2の有利な実施形態において、調節される膨張弁はサーモスタット形膨張弁として具現化され、検出器構成を備え、その検出器は検出領域に配置される。
【0008】
本発明は図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による冷凍回路を概略的に示す。
【図2】図1に従う冷凍回路の圧力−エンタルピー図を簡略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明による冷凍回路を概略的に示す。図1は図2において圧力−エンタルピー図を参照してより詳細に説明される。冷凍回路は加圧ライン4と吸入ライン6とを有する。加圧ライン4は圧縮機8の出力部を起点とする。圧縮機8は冷媒を凝縮圧力PVまで圧縮する。これは図2の状態変化Aによって示される。冷媒は凝縮圧力PVで凝縮器10まで送られる。凝縮器10において冷媒は熱を放出する。その結果冷媒は凝縮器10の出力部で液体であり、凝縮温度tVを有する。この状態の変化は図2においてBによって示される。
【0011】
凝縮器10から、冷媒は内部熱交換器12に送られ、内部熱交換器12で加圧ライン4内の冷媒は、吸入ライン6内の冷媒へ熱を放出する。これは圧力−エンタルピー図において状態変化Cによって示される。内部熱交換器12から、冷媒は調節される膨張弁14に圧力PVで送られる。膨張弁14の制御については、完全な冷凍回路の説明のあとで、以下でより詳細に説明される。
【0012】
膨張弁14において、冷媒の状態は、圧力がP0に低減され、温度が温度t0に低下するように変化する。次に冷媒は沸騰し始め、その際湿り蒸気領域と呼ばれる領域にある。これは図2において状態変化Dによって示される。
【0013】
膨張弁14の出力部から吸入ライン6が始まる。吸入ライン6で冷媒は蒸発器16に送られ、蒸発器16内で冷媒はさらなる程度まで蒸発し、熱を吸収する。従来技術と対照的に、これは一定の温度t0および一定の圧力P0で起こる。蒸発器16の出力部17において、冷媒は依然として湿り蒸気領域にあり、従来技術で一般的なように、温度がすでに高温になっているであろう過熱状態ではない。蒸発器における熱吸収の状態は図2においてEによって示されている。冷媒は次に内部熱交換器12を通過し、加圧ライン4内の冷媒から熱を吸収し、従って過熱される。これは図2において状態変化Fによって示される。冷媒は次に吸入ライン6を経由して膨張弁14を通り圧縮機8の入力部へ送られ、それにより冷凍回路2を一周する。
【0014】
本例において、内部熱交換器12の出力部から膨張弁14へ至る吸入ライン6の部分は、調節される膨張弁14の制御ライン18と呼ぶこともできる。それ自体が周知である膨張弁14は、温度tE=t0+txに応じて開口するように構成され、その開度、そして、これに応じて変化する冷媒の質量流量は、txが上昇するにつれて同じように増大する。
【0015】
適切な検出器構成が内部熱交換器12の出力部に装備された状態で、吸入ライン6を内部熱交換器12から直接圧縮機8へ繋ぐことも勿論可能である。前記検出器構成は熱交換器の出力部における温度tEを、特に、調節される膨張弁14へ適切な方法で伝える。
【符号の説明】
【0016】
2 冷凍回路
4 加圧ライン
6 吸入ライン
8 圧縮機
10 凝縮器
12 内部熱交換器
14 調節される膨張弁
16 蒸発器
17 出力部
18 制御ライン
20 検出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車で使用するための冷凍回路であって、冷媒圧縮機(8)と、少なくとも1台の凝縮器(10)と、少なくとも1台の調節される膨張弁(14)と、少なくとも1台の蒸発器(16)と、少なくとも1台の内部熱交換器(12)とを備え、前記冷媒圧縮機(8)は出力部側で加圧ライン(4)に、入力部側で吸入ライン(6)に接続され、前記調節される膨張弁(14)は、制御変数として、前記吸入ライン(6)の検出領域(20)における温度tEを有する冷凍回路において、前記調節される膨張弁(14)の前記検出領域(20)が前記内部熱交換器(12)の出力部に配置されることを特徴とする冷凍回路。
【請求項2】
前記調節される膨張弁(14)がサーモスタット形膨張弁として具現化され、前記吸入ライン(6)の一部である制御ライン(18)によって前記内部熱交換器(12)の出力部に接続されることを特徴とする請求項1に記載の冷凍回路。
【請求項3】
前記調節される膨張弁(14)が検出器構成を備えたサーモスタット形膨張弁として具現化され、その検出器が前記検出領域(20)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷凍回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−52862(P2013−52862A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187459(P2012−187459)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】