説明

自動車に搭載される電子コントロールユニットの冷却装置

【課題】自動車のエンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットへの熱的な影響を排除しえる有効な手段を提供する。
【解決手段】電子コントロールユニット13は、エンジン本体10の側方に位置するエンジン吸気系のエアクリーナ12の近傍に配置する(図1、参照)。車両の前方に対向する開口部18aからエアクリーナ12へ外気を導く外気導入ダクト16に開口部18aから電子コントロールユニット13へ走行風を導く導風ダクト20を成形する。導風ダクト20から外気導入ダクト16への空気の逆流を防止する手段を設ける(図5,図6、参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のエンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される電子コントロールユニットは、熱的な影響の少ない車室内やトランクルーム内などに配置するのが一般的であるが、そうすると、エンジンルーム内に配置されるリレーボックス等から遠くなってしまうため、それらを結ぶハーネスが長くなるばかりでなく、その取り回しなどが複雑になって組立性も悪くなる。
【0003】
そのため、電子コントロールユニットを自動車のエンジンルーム内に熱的な影響を排除して搭載しえるようにしたものがある。特許文献1においては、吸気系のエアクリーナとこれに接続される上流側のフレッシュエアダクト(外気導入ダクト)との間に収納ボックスが介装され、収納ボックス内の収納室に電子コントロールユニットが配置される。収納ボックス内は、フレッシュエアダクトの上流部分をエアクリーナに接続するフレッシュエアダクトの下流部分と、このフレッシュエアダクトの下流部分から収納室を経由してエアクリーナに接続する冷気導入通路と、が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平05−66218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来例において、外気はフレッシュエアダクトの上流部分から収納ボックス内のフレッシュダクトの下流部分を流れてエアクリーナへ供給される一方で、外気の一部はフレッシュダクトの下流部分から冷気導入通路および収納室を流れてエアクリーナへ供給されるが、収納ボックス内の通路構成(フレッシュダクトの下流部分や収納室を経由する冷気導入通路)が階層的で屈曲部分が多く、吸気抵抗が大きくなり、エンジン出力の低下および燃費の悪化を招く可能性がある。また、収納室を通過する外気が電子コントロールユニットの発熱によって暖められ、エンジンが吸入する空気の密度が低下し、エンジン出力の低下を来す可能性もある。
【0006】
この発明は、このような課題を想定しつつ、自動車のエンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットへの熱的な影響を排除しえる有効な手段の提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、自動車のエンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットの冷却装置において、前記コントロールユニットは、エンジン本体の側方に位置するエンジン吸気系のエアクリーナの近傍に配置し、車両の前方に対向する開口部から前記エアクリーナへ外気を導く外気導入ダクトに前記開口部から前記電子コントロールユニットへ走行風を導く導風ダクトを成形し、導風ダクトから外気導入ダクトへの空気の逆流を防止する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、電子コントロールユニットは、エンジンルーム内の比較的に温度が低い領域に配置され、導風ダクトからの走行風によって冷却される。また、空気の逆流を防止する手段により、エンジンルーム内の空気(例えば、高負荷時に温度が高くなる空気)が導風ダクトからエアクリーナ側の外気導入ダクトへ吸い込まれるのを防止できる。また、導風ダクトは、走行風を受け入れて電子コントロールユニットへ導くものであり、外気導入ダクトの吸気抵抗に影響を与えることがない。これらの結果、エンジン出力を良好に確保しつつ、エンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットへの熱的な影響を排除することができる。電子コントロールユニットの配置については、エアクリーナの近傍に設定するので、導風ダクトと外気導入ダクトとの成形が簡単かつ容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】エンジンルーム内の一部平面図である。
【図2】電子コントロールユニットの設置状態を示す斜視図である。
【図3】外気導入ダクトの配置状態を示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】外気導入ダクトの斜視図である。
【図6】導風ダクトの一部斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図に基づいて、この発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1において、10はエンジン本体であり、エンジンルーム11内の中央部にクランク軸の向きが車幅方向となる横置状態に搭載され、エンジン本体10の側方(サイドフェンダ側)にエンジン吸気系のエアクリーナ12を配置される。
【0012】
電子コントロールユニット13は、エンジンを制御する機能などが設定するものであり、エアクリーナ12の近傍でエンジン本体10と反対側に配置される。つまり、電子コントロールユニット13は、エンジンルーム11内において、エンジン本体10からの熱的な影響を受けにくい領域に配置される。
【0013】
図2は、電子コントロールユニット13の設置状態を例示するものであり、電子コントロールユニット13は、エンジンルーム11側面を構成する車体パネルのインナパネル14にブラケット15を介して取り付けられる。
【0014】
エアクリーナ12に接続される上流側の外気導入ダクト16は、エンジンラジエータ17の直ぐ上方へ延ばされる開口部を備える。図3〜図6に示すように、外気導入ダクト16の開口部18aは、車両の前方へ向けられる。開口部18aの奥方(底面)からエアクリーナ12の入口部(フィルタの上流側)へ延びて接続される外気導入部18bと、開口部18aの奥方(底面)から電子コントロールユニット13へ延びる端部18dが開放される導風部18cと、が設けられる。
【0015】
外気導入部18bは、開口部18aから取り入れる外気をエアクリーナ12へ導くものであり、開口部18aと共に本来の外気導入ダクト16を構成する。導風部18cは、開口部18aから受け入れる走行風が抵抗なく円滑に開放端部18dへ流れるように導くものであり、開口部18aと共に電子コントロールユニット13の冷却用の導風ダクト20を構成する。
【0016】
図1において、19はヒューズボックスであり、リレーボックスなど電装部品と共に電子コントロールユニット13の周囲に配置される。
【0017】
車両の走行中は、車両の前方から走行風が開口部18aを直進して開口部18aの奥方から外気導入部18bを円滑に流れてエアクリーナ12の入口部へ供給される一方、開口部18aを直進する走行風の一部が開口部18aの奥方から導風部18cを円滑に流れて開放端部18dから電子コントロールユニット13へ吹き出るのである。このため、電子コントロールユニット13およびその周辺を十分に冷却することができる。その場合、導風ダクト20からの走行風は、電子コントロールユニット13の発熱などを奪ってエンジンルーム11内のエンジンラジエータ17の後方を流れる走行風と共に外部へ吹き抜けるようになる。
【0018】
車両の停止時は、走行風が得られないので、エンジンルーム11内の空気(外気よりも温度高くなる)が導風ダクト20から外気導入ダクト16へ吸い込まれる可能性があり、これを防止するため、外気導入ダクト16および導風ダクト20の開口部18aは、その内部を外気導入部18b側の通路と導風部18c側の通路とに区画する隔壁21が形成される(図5、参照)。つまり、隔壁21は、導風ダクト20から外気導入ダクト16への空気の逆流を防止する手段を構成する。
【0019】
このような構成により、電子コントロールユニット13は、エンジンルーム11内の比較的に温度が低い領域に配置され、導風ダクト20からの走行風によって冷却される。また、空気の逆流を防止する手段(開口部18aの隔壁21)により、エンジンルーム11内の空気が導風ダクト20からエアクリーナ12側の外気導入ダクト16へ吸い込まれるのを防止できる。また、導風ダクト20は、走行風を抵抗なく受け入れて電子コントロールユニット13へ導くものであり、外気導入ダクト16の吸気抵抗に影響を与えることがない。これらの結果、エンジン出力を良好に確保しつつ、エンジンルーム11内に搭載される電子コントロールユニット13への熱的な影響を排除することができる。電子コントロールユニット13については、エアクリーナ12の近傍に配置するので、導風ダクト20が短くなり、外気導入ダクト16との一体成形が簡単かつ容易に可能となる。これらの一体化により、部品数や組付工数の増加が抑えられる、という効果もある。
【0020】
隔壁21により、エンジンルーム11内の空気が導風部18cから外気導入部18bへ吸い込まれるのを防止できるものの、開口部18aの前面において、導風ダクト20側からエンジンルーム11内の空気が隔壁21を乗り越えて外気導入ダクト16側へ吸い込まれたり、エンジンラジエータ17の冷却ファンに吸引されて導風ダクト20側からエンジンルーム内の空気がエンジンラジエータ17を通過するように流れることも考えられるので、導風ダクト20から外気導入ダクト16への空気の逆流を防止する手段として図6のように逆止弁22を設けると良い。
【0021】
逆止弁22は、導風ダクト20の電子コントロールユニット13へ向ける開放端部18dに配置され、走行風の流れによって開弁し、走行風の流れが無くなると閉弁するように構成される。これにより、走行風が得られない車両の停止時において、エンジンルーム11内の空気が開放端部18dへ流入するのが阻止され、エンジンルーム11内の空気が開口部18aの隔壁21を乗り越えて外気導入ダクト16側へ吸い込まれたり、開口部18aからエンジンラジエータ17の冷却ファンに吸引されてエンジンラジエータ17を通過するように流れるのも確実に防止することができる。
【0022】
この発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 エンジン本体
11 エンジンルーム
12 エアクリーナ
13 電子コントロールユニット
16 外気導入ダクト
18a 開口部
18b 外気導入部
18c 導風部
18d 開放端部
20 導風ダクト
21 隔壁
22 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルーム内に搭載される電子コントロールユニットの冷却装置において、前記コントロールユニットは、エンジン本体の側方に位置するエンジン吸気系のエアクリーナの近傍に配置し、車両の前方に対向する開口部から前記エアクリーナへ外気を導く外気導入ダクトに前記開口部から前記電子コントロールユニットへ走行風を導く導風ダクトを成形し、導風ダクトから外気導入ダクトへの空気の逆流を防止する手段を設けたことを特徴とする電子コントロールユニットの冷却装置。
【請求項2】
前記空気の逆流を防止する手段として逆止弁を前記導風ダクトの電子コントロールユニットへ延びる下流側の開口部に配置したことを特徴とする請求項1に係る電子コントロールユニットの冷却装置。
【請求項3】
前記空気の逆流を防止する手段として前記開口部を前記外気導入ダクト側と前記導風ダクト側とに仕切る隔壁を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に係る電子コントロールユニットの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196624(P2010−196624A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43865(P2009−43865)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】