説明

自動車のインストルメントパネル構造

【課題】助手席エアバッグおよびその取付け構造の小型化および収納空間の拡大、エアバッグ無仕様への選択的適用性に有利なインストルメントパネル構造を提供する。
【解決手段】主パネル面(11)および上面(12)を含むインストルメントパネル本体(1)と、その内部に車幅方向に延在するステアリングサポートメンバー(2)と、前記主パネル面の助手席に臨む上下方向中間位置に画成され、その内側に、後方ないしは斜上後方に展開可能なエアバッグモジュール(31)を搭載可能な開口部(3)とを備え、前記開口部の上側の主パネル面から上面にかけての部分に物品収納部(4,40)が設けられ、前記開口部は、主パネル面に対してインストルメントパネル本体の内部側に凹陥して画成され、周囲に断面L字状ないしは断面コ字状の補強枠(13)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインストルメントパネル構造に関し、さらに詳しくは、助手席エアバッグの選択的設置を考慮したインストルメントパネル構造に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネルに助手席エアバッグを配設する場合、インストルメントパネルの上面に配置するトップマウント(例えば特許文献1参照)や、助手席に面したパネル面の上部に配置するミッドアッパーマウント(例えば特許文献2,3参照)などのレイアウトが一般的である。
【0003】
これらのうち、トップマウントでは、助手席に面したパネル面を収納ボックスやトレーなどの設置スペースとして利用できる反面、乗員の着座位置から前方に離れてエアバッグモジュールが搭載されるため、バッグ容量を大きくする必要があり、コストおよび重量が大きくなる問題がある。また、エアバッグモジュールは、取付け強度を確保するために、車体の構造要素であるステアリングサポートメンバーにブラケットを介して取り付けられるが、トップマウントでは、エアバッグモジュールとステアリングサポートメンバーとの距離も大きいので、ブラケットも長大で重いものとなってしまう問題がある。
【0004】
一方、ミッドアッパーマウントでは、トップマウントに比べればエアバッグモジュールとステアリングサポートメンバーとの距離は小さく、乗員との距離も近いので上記のような問題は生じない。しかし、インストルメントパネルの意匠におけるメインテーマとなる部分であるため、非常時にのみ作動するエアバッグのレイアウト、インストルメントパネル構造に対する意匠面での制約が大きいうえ、インストルメントパネル上部に収納部を設置できない点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−308088号公報
【特許文献2】特開2000−190800号公報
【特許文献3】特開2009−73408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、助手席エアバッグおよびその取付け構造の小型化および収納空間の拡大、エアバッグ無仕様への選択的適用性に有利な自動車のインストルメントパネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明に係る自動車のインストルメントパネル構造は、車室前部に配設され、運転席および助手席に臨む主パネル面(11)およびその上側から前方に拡がる上面(12)を含む樹脂成形部品からなるインストルメントパネル本体(1)と、前記インストルメントパネル本体の内部に車幅方向に延在しかつ前記インストルメントパネル本体の取付け部を有するステアリングサポートメンバー(2)と、前記主パネル面の助手席に臨む上下方向中間位置に画成され、その内側に、後方ないしは斜上後方に展開可能なエアバッグモジュール(3,31)を搭載可能な開口部(13)と、を備え、前記開口部の上側の前記主パネル面から前記上面にかけての部分に物品収納部(4,40)が設けられ、かつ、前記開口部は、前記主パネル面に対して前記インストルメントパネル本体の内部側に凹陥して画成され、周囲に断面L字状ないしは断面コ字状の補強枠(13)が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインストルメントパネル構造は、上述の通り構成されているので、以下に記載されるような効果を有する。
【0009】
助手席乗員の正面となる主パネル面の上下方向中間位置に開口部が画成され、その内側に、後方ないしは斜上後方に展開可能なエアバッグモジュールを搭載することで、エアバッグモジュールがステアリングサポートメンバーの近くに配置され、エアバッグモジュールの取付け剛性および位置精度が容易に得られることに加えて、最小限のエアバッグで乗員に対する保護性能が得られ、かつ、乗員を早期に保護できる。また、ニーエアバッグを兼ねたエアバッグの設定も可能である。
【0010】
上記のような開口部の配置に加えて、エアバッグが小型化されたことにより、エアバッグが軽量化・簡素化され、部品コストを低減できる。また、エアバッグ仕様であっても、開口部の上側の主パネル面からインストルメントパネル上面にかけての部分に、利便性に優れた大容量の物品収納部を併設できる。
【0011】
開口部が主パネル面に対して凹陥して画成され、周囲に断面L字状ないしは断面コ字状の補強枠が形成されている構成により、エアバッグの展開方向が規制され、角度設定通りの展開が可能となる。また、開口部周囲の剛性も向上し、エアバッグの安定的な展開が可能となる。さらに、この補強枠は、エアバッグの代わりに補助収納ボックス(36)が取付けられる仕様の場合にもその取付け剛性向上に寄与する。
【0012】
上記補助収納ボックスは、助手席乗員の正面となる主パネル面の上下方向中間位置に配置されているので、小物入れとしての利便性も高いうえ、開口部周辺の補強枠(意匠面)はエアバッグ仕様の場合と共通であるので、仕様変更に伴う意匠変化が少ない。
【0013】
本発明において、前記物品収納部(40)が、前記インストルメントパネル本体に凹部(14)として形成され、前記凹部の底面に前記ステアリングサポートメンバーへの取付け部(14a)が設けられている態様では、インストルメントパネル本体の凹部がステアリングサポートメンバーに直接固定され、インストルメントパネル本体の取付け剛性が良好であることに加えて、前記凹部の底面が、ステアリングサポートメンバーから開口部上辺の補強枠に至る構造壁となり、補強枠の剛性が一層向上し、エアバッグ仕様および補助収納ボックス仕様の何れの場合にも有利である。
【0014】
本発明において、前記エアバッグモジュール(3,31)は、その基部に前記ステアリングサポートメンバーへの取付け手段(35,23)を備え、前記エアバッグモジュールの展開方向に配向された有蓋筒状のエアバッグハウジング(34)を介して前記補強枠(13)の裏面に取付け可能である態様では、例えば、エアバッグと選択的に取り付けられる前記補助収納ボックス(36)が有底筒状をなし、その底部に前記ステアリングサポートメンバーへの取付け手段(36b)を備え、入口周縁部にて前記補強枠(13)の裏面に取付け可能とすることにより、インストルメントパネル本体の主パネル面が、エアバッグ有無各仕様において、補強枠裏面に取付けられた有蓋または有底の筒状体(34,36)を介してステアリングサポートメンバーに固定されることになる。
【0015】
これにより、上述したインストルメントパネル本体の凹部(底面)の直接固定と相俟って、インストルメントパネル本体が、助手席側ではステイを用いずに主パネル面側および上面側の両方向からステアリングサポートメンバーに支持されることになり、支持部材の削減により、全体的な軽量化が図れる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施形態に係るインストルメントパネル構造を示す斜視図である。
【図2】エアバッグの展開状態を示す図1のA−A断面図である。
【図3】エアバッグ仕様における図1のA−A断面図である。
【図4】エアバッグ無仕様における図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、インストルメントパネル本体1は、車室前部に配設され、運転席および助手席に臨む主パネル面11と、その上側から前方に拡がる上面12を含み、全体が樹脂材料を用いた射出成形品で構成され、その内部に車幅方向に延在するステアリングサポートメンバー2に直接または図示しないステイを介して取付けられる。
【0018】
主パネル面11の運転席側には、図示しないメータークラスターの取付け部となる開口が設けられ、その下方には、通常、ステアリングホイールのコラムシャフト(図示せず)が挿通されるコラムホールが設けられるが、図1では省略されている。主パネル面11の車幅方向中央のセンタークラスター部(符号11で直接指示されている部分)には、図示しない空調機器やオーディオ機器の操作部等が配設される。
【0019】
主パネル面11の助手席に面した上下方向中間位置には、開口部13が画成されており、エアバッグ仕様では、開口部13の内側にエアバッグモジュール3が搭載される。開口部13の上側には、主パネル面11から上面12にかけて、跳ね上げ式のリッド4を備えたアッパーボックス40が配設され、開口部13の下側には、リッド5と一体の回転開閉式のロアーボックス50が配設されている。
【0020】
インストルメントパネル本体1およびステアリングサポートメンバー2は、空調ユニット6など関連部品と共に部組みされた状態で車室最前部に組み付けられる。例えば、インストルメントパネル本体1が、その前縁部において、ウインドシールド7(フロントガラス)用開口部の下縁を画成する図示しないカウルトップパネルに固定され、かつ、ステアリングサポートメンバー2が、その両端のブラケット21,22を介して図示しないダッシュサイドパネルに固定されることで、車体への組付けがなされる。
【0021】
エアバッグモジュール3は、図3に示されるように、エアバッグ31を折畳み状態で収容するエアバッグハウジング33、該エアバッグハウジング33の底部中央に貫通した状態で固定されたインフレータ32、折畳まれたエアバッグ31の車室側を覆い隠すエアバッグドア34から主に構成され、インフレータ32(および/またはエアバッグハウジング33)の背面に固着されたブラケット35にて、ステアリングサポートメンバー2に溶接接合等により固着された取付けブラケット23に螺子継手などで固定されている。
【0022】
エアバッグハウジング33は、金属等で半箱状(有底筒状)に形成され、その周壁部には係止片33a,33bが折曲形成されている。エアバッグドア34は、平板状の蓋部(ドア部)とその裏面側の周壁部34bが一体になった有蓋筒状をなす射出成形品で構成されており、周壁部34bのスリット(被係止部)に、エアバッグハウジング33の係止片33a,33bを係合することで、エアバッグハウジング33に結合されている。
【0023】
エアバッグドア34の周縁部34aは、周壁部34bとの接続部を越えて外方に延出しており、この周縁部34aにおいて、エアバッグモジュール3は、開口部13の裏面にビス等で固定される。また、エアバッグハウジング33の図3中上側に位置した係止片33aは、クランク状に折り返されて上方に延び、エアバッグドア34の図3中上側に位置した周縁部34aと共に開口部13の裏面に螺着されている。
【0024】
図中省略されているが、エアバッグドア34のドア部中央および周辺部(周壁部34bとの接続部に沿った部分)には薄肉部が設けてあり、エアバッグ31が展開される際には、その圧力でドア部が中央から破断すると共に折曲されて開放されるようになっている。この際、エアバッグハウジング33の係止片33a,33bは、エアバッグドア34の周壁部34bに作用する引張力に抗して該周壁部34bおよび周縁部34aを係止することで、ドア部の確実な開放を誘導すると共に、残余の部分の飛び出しを防止する。
【0025】
一方、図3に示すように、エアバッグモジュール3が取付けられる開口部13は、主パネル面11の基準意匠面に対して、インストルメントパネル本体1の内部側に凹陥して画成されている。それにより、エアバッグモジュール3の取付け面と主パネル面11の基準意匠面との間には、乗員席側に向けて僅かに拡開する周側壁が形成されており、開口部13の周囲には、基本的に断面L字状をなす補強枠(13)が形成されている。
【0026】
さらに、開口部13の上側に配設されたアッパーボックス40は、インストルメントパネル本体1の基準意匠面に対して凹部として形成され、アッパーボックス40の底面は、ステアリングサポートメンバー2にスクリュー14aで固定されている。この固定部(14a)から手前側の縁部に向けて斜めに立ち上がるアッパーボックス40の内壁14bが、開口部13の上辺の補強枠(13)に至る構造壁となり、かつ、この部分の補強枠(13)は断面コ字状(U字状)となっている。
【0027】
また、開口部13の下側では、主パネル面11の基準意匠面が乗員席から前下方に向かって離れる方向に傾斜していることで、開口部13の下辺においても補強枠(13)が断面コ字状(U字状)となっている。
【0028】
このように、開口部13の上下各辺が何れも断面コ字状(U字状)の補強枠(13)として構成され、かつ、構造壁(14b)でステアリングサポートメンバー2と結合されることで、インストルメントパネル本体1の助手席側は、開口部や収納部が多いにも拘わらず、ステイ無しで良好な取付け剛性が得られる。
【0029】
また、開口部13が主パネル面11の基準意匠面に対して凹陥して画成されているので、エアバッグドア34に乗員の身体や物品等が直接当接し難く、エアバッグドア34が過って破損する可能性も低い。さらに、エアバッグドア34の外側に、乗員席側に向けて僅かに拡開する開口部13の周側壁が形成されているので、該周壁部(13)でエアバッグ31の展開方向を規制できる利点もある。
【0030】
以上、エアバッグ仕様の場合について述べたが、エアバッグ無仕様の場合には、図4に示すように、エアバッグモジュール3に代えて、補助収納ボックス36が開口部13の内側に搭載される。
【0031】
図4において、補助収納ボックス36は、有底筒状をなすポケットタイプの収納ボックスとして構成されている。補助収納ボックス36の入口部の周囲にはフランジ36aが形成されており、該フランジ部36aにて補強枠をなす開口部13の裏面にビス等で固定されている。また、補助収納ボックス36の外底部には取付け片36bが一体に形成されており、該取付片36bにてビス等でステアリングサポートメンバー2に直接固定されている。
【0032】
補強枠をなす開口部13の意匠面は、先述したエアバッグ仕様と共通であるので、各仕様における意匠変化が少ない。乗員に向けて展開方向(取付け方向)が設定されるエアバッグモジュール3の特徴が、乗員に向けて入口が設定された補助収納ボックス36のレイアウトに生かされ、利便性の高い収納部を構成できる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、アッパーボックス40が、軸4aで枢支されたリッド4を備える場合を示したが、アッパーボックスをリッドのないトレータイプの収納部として構成することもできる。また、上記実施形態では、ロアーボックス50が、軸5aで枢支されたリッド5と一体の回転開閉式収納部として構成される場合を示したが、ロアーボックスを、リッドの無いポケットタイプあるいはラックタイプの収納部として構成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 インストルメントパネル本体
2 ステアリングサポートメンバー
3 エアバッグモジュール
4 リッド
5 リッド
7 ウインドシールド
11 主パネル面
12 上面
13 開口部(補強枠)
14 底面
23 取付けブラケット
31 エアバッグ
32 インフレータ
33 エアバッグハウジング
33a,33b 係止片
34 エアバッグドア
34a 周縁部
34b 周壁部
35 ブラケット
36 補助収納ボックス
36a フランジ
40 アッパーボックス
50 ロアーボックス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネル構造であって、
車室前部に配設され、運転席および助手席に臨む主パネル面およびその上側から前方に拡がる上面を含む樹脂成形部品からなるインストルメントパネル本体と、
前記インストルメントパネル本体の内部に車幅方向に延在しかつ前記インストルメントパネル本体の取付け部を有するステアリングサポートメンバーと、
前記主パネル面の助手席に臨む上下方向中間位置に画成され、その内側に、後方ないしは斜上後方に展開可能なエアバッグモジュールを搭載可能な開口部と、
を備えるものにおいて、
前記開口部の上側の前記主パネル面から前記上面にかけての部分に物品収納部が設けられ、かつ、前記開口部は、前記主パネル面に対して前記インストルメントパネル本体の内部側に凹陥して画成され、周囲に断面L字状ないしは断面コ字状の補強枠が形成されていることを特徴とする自動車のインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記物品収納部は、前記インストルメントパネル本体に凹部として形成され、前記凹部の底面に前記ステアリングサポートメンバーへの取付け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記エアバッグモジュールは、その基部に前記ステアリングサポートメンバーへの取付け手段を備えるとともに、前記エアバッグモジュールの展開方向に配向された有蓋筒状のエアバッグハウジングを介して前記補強枠の裏面に取付け可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のインストルメントパネル構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228949(P2012−228949A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98264(P2011−98264)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】