説明

自動車のシャシ及び/又は支持構造

本発明は、シャシ及び/又は支持構造が全体的又は部分的に小室区画式シート構造の形式で提供される、自動車、特に乗用車のシャシ及び/又は支持構造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車、特に乗用車のシャシ及び/又は支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャシは、従来形の車両の場合、構造的強度を保証するための通常の半完成品であり、ゆえに広く採用されている。それらは、一般に形鋼材から製造され、固定手段、例えばネジ又はスポット溶接などによって互いに接続される複数の縦部材と横断部材とを有する。自動車の場合、それらは主に駆動装置、車軸及び車体を収容するために使用される。
【0003】
シャシの構成により、中空の形材も時には採用され、これらは、腐食防止のため、一般に密閉構造のものであるが、中空でない形材と比較して中空の形材のほうが質量に対する抵抗モーメントがより高いということで採用される。
【0004】
特許文献1は、自動車、特に貨物自動車の車輪領域でしぶきが逃げるのを防止する装置を開示している。この場合、自動車のシャシの縦部材と自動車のシャシとの間、又はフェンダと自動車のシャシとの間のいずれかに、ベンチュリの原理に従って、吸引効果を発生し、しぶきの逃げを減少させる吸引ラインが縦部材に沿って配置されている。特許文献1は、別に設置される吸引ラインについて言及しているが、それ以上のことは何も開示していない。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第40 07 771 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シャシ及び/又は支持構造の代わりとなる構成を明確化する課題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、独立請求項の手段により解決される。有利な実施の形態は、従属項の主題である。
【0008】
本発明は、自動車のシャシ及び/又は支持構造を中空小室区画式シート構造として設計するという総合的な考えに基づいている。ほんの2〜3の空洞(例えば、根太)しか持たない従来形の車両のホワイトボデーとは対照的に、中空小室区画式シート構造は、比較的大規模な範囲にわたるダクトシステムを提供し、その結果、特定の機能(例えば、冷気、乗員室の換気)のために車両内に通される空気量の流れを、その車両のある位置において特定の方法で放出させるようにできる新たな可能性が生まれる。このことにより、例えば、中空小室区画式ベースを経て車両の後部まで導かれているエンジンルームからの排気の一部によって、例えば、車両の周りの循環空気に強制的に影響を与えることが可能となり、そこでは車両の空気抵抗及び揚力効果が低減されるように排気が車両の車軸の傾斜に影響を与えるか又は減少させ、中空でない後部を有する車両の場合、リヤウインドウの汚れが減少する。
【0009】
さらに、中空小室区画式シート構造内に存在し、乗員室を換気及び通気することを目的とするフローダクト間の隙間は、十分に大きく、現在でも依然として必要とされているような個別に構成されるフローダクトは、恐らく省くこともでき、その結果、製造費用が低減される。さらに、乗員室を換気及び通気する自由度の大きな構造及び配置により、ドアを閉じる力の低減が、乗員室内のより急速な圧力の消失によって達成可能となる。
【0010】
中空小室区画式シートを軽金属要素として、及び/又はプラスチック要素として設計するようにできると好都合である。軽金属及びプラスチックは、一般に軽量であり、容易に機械加工できる材料である。軽量材料は、特に車両構造内で、かってないほど重要となってきている資源保護に関し非常に重要である。全重量が軽いと、同程度の乗り心地に対しより低い動力駆動装置を使用することが可能となり、ゆえにガソリンの消費量の低減も可能となる。
【0011】
例えば、ガラス繊維又は炭素繊維強化プラスチックのような、特にプラスチックや複合材料の分野での重要な展開の可能性が依然としてある。これらの繊維強化プラスチックの性能は、例えば、レーシングスポーツの分野で知られている(モノコック)。
【0012】
本発明による解決法の特に好ましい実施の形態によれば、中空小室区画式シートが、押出し形材及び/又は特に金属板の組立形材として設計されるように準備されても良い。押出し形材は、今では簡単且つ費用効率の高い方法で製造でき、他の同一押出し形材の基本体の個々の再加工が可能となる。その結果、基本的に同一である押出し形材シートの対応する再加工により、異なる車種の自動車のシャシを製造できる可能性があり、したがって、実質的な製造の簡素化を達成できる。
【0013】
対照的に、組立中空小室区画式形材は、自動車のシャシをより個々に適応させて製造できる利点がある。特に高価格部門の自動車の場合、顧客は、自動車のシャシの個々の改造を求めることが多い。組立形材の場合、これらの改造が、組立段階においてすでに考慮に入れられても良く、したがって、標準形材の複雑な再加工が回避される。
【0014】
本発明による解決法の1つの特に有利な実施の形態は、フローダクトが入口及び出口に設けられたフラップによって制御可能な構造であることを特徴とする。フローダクト内を通過する空気の特定の制御は、例えば、路面に対する自動車の接触圧力のような、自動車のある特性に影響を及ぼす利点をもたらす。例えば、フラップは、より大きな空気処理能力が低速よりも高速で可能となるように作動されても良い。自動車のシャシ内に伸びるフローダクト、及びフローダクトの流出口に取り付けられたフラップ、並びに流入及び流出口の形状は、スポイラーのものと同様の効果をもたらし、その結果、自動車の揚力効果が低減される。これらのフローダクトを通過する空気流は、ファンを利用することで補助される。
【0015】
本発明の他の重要な特徴や利点は、従属項、図面、及び図面を参照しての図に関連する説明から明らかとなる。
【0016】
上述の特徴や、以下で説明されることになる特徴は、それぞれ記述された組合せにおけるだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組合せにおいて、又はそれら自体でも使用できることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい例示的な実施の形態が、図面で示され、以下の説明で詳細に説明されるが、同一又は同様あるいは機能的に同一の構成要素には同一の参照番号を付す。
【0018】
自動車19のシャシ6及び/又は支持構造(他は図示せず)は、図1の通り設計されている。シャシ6は、例えば、中空小室区画式底部シート1(以下では単に中空小室区画式シート1とも称される)、垂直中空小室区画式シート4、及びそれらの垂直中空小室区画式シート4を接続する中空小室区画式シート15など、複数のシート状個別要素を有する。車台14と共に中空小室区画式シート1、4、15は、自動車19の支持構造を形成する。個々の中空小室区画式シート1、4、15は、例えば溶接及び/又は接着による、適当な方法で互いに接続され、シャシ6を強化する。
【0019】
図2は、例として中空小室区画式シート15の細部を示す。図2の細部は、挙げられた他の中空小室区画式シート1、4へも転用できることは明記されるべきである。
【0020】
中空小室区画式シート15は、上部シート16と底部シート17とから構成され、底部シート17は、上部シート16と底部シート17との間にシートの2面に対して直角に伸びる仕切壁12によって接続されている。仕切壁12は、それぞれ互いに離れ、平行に伸び、基本的に長方形の断面を有するフローダクト10を作成している。この場合、仕切壁12の枚数により個々のフローダクト10の数と断面とが決まる。
【0021】
図2に示されるように、空気流5は、中空小室区画式シート15の一方の流入口2を通り、フローダクト10内に入り、再び他方の流出口3を通って出て行く。この場合、他のフローダクト10は未使用のまま、空気流5に対して個々のフローダクト10を使用することが考えられる。さらに、空気流を、例えば、垂直方向に隣接する中空小室区画式シート4に送るために、開口13を経由させて中空小室区画式シート15の面から空気流5をそらせることも可能である。
【0022】
この場合、開口13の配置は、上部又は底部シート16、17に限定されず、仕切壁12に組み込まれても良く、その結果、接続が個々のフローダクト10間で行われる。流れ方向の上流又は下流に配置され、フローダクト10の断面を閉じる閉鎖壁18と連携して、1枚又はそれ以上の仕切壁12に1つ又はそれ以上の開口13を配置することによって、空気流5に、したがって流速に有効な断面に影響を与えることも可能である。
【0023】
空気流5が、個々の流入口2を通ってフローダクト10内に入り、そこで、仕切壁12に提供された少なくとも1つの開口13のため、少なくとも2本のフローダクト10に分配され、したがって、中空小室区画式シート15から複数の流出口3を経由して再び出て来るようにすることも考えられる。したがって流動中に流動断面を変化させることによって達成できる効果は、流入口2において高速である空気流5が、複数の流出口3を経由して中空小室区画式シート15から出て来るときにはかなり低い速度となることである。
【0024】
逆の場合、ゆえに流速の増加も可能である。すなわち、空気流5が複数の流入口2を通って入り、1つの流出口3を有するたった1本のフローダクト10を形成するように仕切壁12に組み込まれた開口13によって、複数のフローダクト10が連結される。この効果は、流動方向と直角を成し、フローダクト10の断面を閉じ、流動方向の開口13の下流に配置される閉鎖壁18によって強化される。
【0025】
自動車19内を通るフローダクト10の1つの可能な経路は、図3の通り実施される。流入口2は、自動車19の前部の領域、及び中空小室区画式底部シート1の領域に提供されている。
【0026】
通常、走行方向と逆に発生する空気流5は、エンジンルーム21内に入った後、ラジエータ9に衝突し、駆動装置8の周りを流れ、前輪7の後、走行方向において中空小室区画式底部シート1に配置された流入口2を経てフローダクト10内を通過し、後輪22の方向に乗員室20下の底面に沿って導かれる。この場合、フローダクト10は、後輪22の領域でホイールハウスに沿って配置され、走行方向で後輪22の後、バンパ(図示せず)の高さで自動車の後部23まで導かれる。
【0027】
これに関して、後輪22の領域のフローダクト10に、走行方向において後輪22の後に流入口2を持たせることも考えられ、その結果、雨天走行中に起こり得るホイールハウス内でのしぶきが、吸い出され、自動車19の後部23に運ばれる。自動車の後部23において、フローダクト10内を流れる空気流5は、流出口3を通過して周囲環境に至る。
【0028】
他のフローダクト10が、自動車19のボンネット24下の流入口2’から始まり、流出口3’を有し、その流出口3’を通って空気流5が乗員室20に流入する。走行方向に見られるように、乗員室20の後部領域には、乗員室20を自動車の後部23に接続するさらなるフローダクト10への、少なくとも1つの他の流入口2”が配置されている。このさらなるフローダクト10は、自動車の後部23にさらなる流出口3”を有する。このことにより、乗員室20の継続的な又は所定の換気及び通気が保証される。
【0029】
自動車の後部23に流出口3及び3”を所定に配置することによって、自動車の後部23の汚れの低減、及び自動車19の揚力効果の低減も達成できる。同時に、空気が自動車19の周りを循環する過程で生じる空気の渦も低減され、このことにより燃料消費量を減少させることができる。
【0030】
要約すれば、本発明による構成は、下記のように特徴付けられる:
【0031】
中空小室区画式シート1、4、15を具備する支持構造は、フローダクト10の大規模なシステムとなり、その結果、空気流5は、特定の方法で自動車19内又はその周りに導かれる。自動車の空気抵抗及び揚力効果が低減され、自動車の後部23の汚れが低減される。
【0032】
さらに、現在でも構成されている独立した換気ダクトを部分的になしで済ますことができるので、製造費用を低減できる。さらに、乗員室20の換気及び通気の改良、及び乗員室20内のより急速な圧力の消失によってドアを閉じる力の低減が達成される。
【0033】
この場合、中空小室区画式シート1、4、15は、軽金属要素として、及び/又はプラスチック要素として設計されても良く、その結果、ガソリンの消費量の低減が達成される。
【0034】
例えば、路面に対する自動車19の接触圧力のような、自動車19のある特性が、フローダクト10の流入及び流出口2、3におけるフラップ(図2では示さず)によって影響を受ける。フローダクト10の流出口3及び3”に取り付けられたフラップと、流出口3及び3”の形状とが、スポイラー効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による自動車のシャシの斜視図。
【図2】本発明による中空小室区画式形材の断面図。
【図3】自動車のシャシを通るフローダクトの可能な経路を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(19)、特に乗用車のシャシ及び/又は支持構造(6)であって、
前記シャシ及び/又は支持構造(6)が、中空小室区画式シート構造として設計されていることを特徴とする自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項2】
2つ又はそれ以上の車軸を有する自動車(19)の場合、前記車軸間に配置された底部中空小室区画式シート(1)が、垂直側面中空小室区画式シート(4)と前記車軸の領域で隣接し、前記垂直シート(4)が、他の中空小室区画式シート(15)及び/又は支柱によって前記自動車の横方向に互いに強化及び/又は接続されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項3】
前記シャシ及び/又は支持構造(6)内で、フローダクト(10)が、前記自動車の前部の少なくとも1つの流入口(2)と前記自動車の後部(23)の少なくとも1つの流出口(3)との間に形成されたことを特徴とする特に請求項1あるいは2に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項4】
前記自動車(19)の前記後部(23)の前記流出口(3)が、前記後部(23)の汚れが低減されるように配置及び設計されたことを特徴とする請求項3に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項5】
前記自動車(19)の前記後部(23)の前記流出口(3)が、前記自動車の前記後部(23)における空気の渦が低減されるように配置及び設計されたことを特徴とする請求項3あるいは4に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項6】
乗員室(20)が、前記フローダクト(10)又はそれらの一部によって換気及び通気されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項7】
前記中空小室区画式シート(1、4、15)が、軽金属要素として設計されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項8】
前記中空小室区画式シート(1、4、15)が、プラスチック要素として設計されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項9】
前記中空小室区画式シート(1、4、15)が、押出し形材として設計されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項10】
前記中空小室区画式シート(1、4、15)が、特に金属板の、組立形材として設計されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項11】
前記自動車(19)の揚力効果が、前記フローダクト(10)及び/又はそれらの前記流入及び流出口(2、3)によって低減されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項12】
前記自動車(19)のダウンフォースが、前記フローダクト(10)及び/又はそれらの前記流入及び流出口(2、3)によって得られることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。
【請求項13】
前記フローダクト(10)が、前記流入及び流出口(2、3)におけるフラップによって制御可能な構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の自動車のシャシ及び/又は支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505439(P2006−505439A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548741(P2004−548741)
【出願日】平成15年10月13日(2003.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011299
【国際公開番号】WO2004/041626
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】