説明

自動車のドア用ライニング

【課題】自動車用ドアのドア本体に取付けられてドア本体の車室側の側面を覆うライニング本体に、ドア本体に圧接する防振部材が取付けられたドア用ライニングにおいて、防振部材の小型化を図りつつ、それを簡単な構造でライニング本体に安定よく強固に支持できるようにする。
【解決手段】ライニング本体Loのドア本体P側の側面には、該ライニング本体Loのドア本体側に延びる外周壁部1の内側面に間隔をおいて対向する対向壁部2と、それら外周壁部1及び対向壁部2間を連結する連結壁部3とが一体に突設され、ドア本体Pに圧接させる防振部材S1が、少なくとも対向壁部2及び連結壁部3の各先端部に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア、特に自動車の開口部を開閉するドアの内装部材として用いるドア用ライニングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドア用ライニングは、そのライニング本体がドア本体に取付けられてドア本体の車室側の側面を覆うように構成される(下記特許文献1を参照)。
【0003】
また、このようなドア用ライニングにおいて、ライニング本体に、ドア本体の車室側の側面に圧接する不織布、発泡ゴム等の防振部材を取付けて、ライニングのドア本体に対するガタつきを抑えたり、ドア本体内蔵スピーカの振動、車体振動等に起因したライニングの振動(ビビリ)を低減、緩和できるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで従来の上記防振部材のライニング本体への取付構造としては、例えば、図7(A)に簡略的に示すようにライニング本体のドア本体側に延びる外周壁部の先端に、外方(図では下方)に張出す延長壁部を一体に形成して、その延長壁部のドア本体との対向面に防振部材を貼着したものが知られており、また図7(B)に同じく簡略的に示すようにライニング本体の内側面の、前記外周壁部よりも内方(図では上方)部分に防振部材を貼着するようにしたものも知られている。
【0006】
そして、図7(A)の構造では、ライニング本体の外周縁に防振部材取付けのための外向き延長壁部を特別に連設する必要があるため、それだけライニング本体が大型化する不都合があり、一方、図7(B)の構造では、防振部材の取付面がドア本体より離間するため、それだけ防振部材が車幅方向(図7で左右方向)大型化する不都合がある。
【0007】
さらに何れの構造でも、ライニング本体の平面部に防振材を圧接状態で取付けるため、その平面部に十分な剛性、強度を持たせるべくライニング本体の該当部位をそれだけ頑丈に形成する必要が有った。
【0008】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、従来の上記問題を簡単な構造で解決できるようにした自動車のドア用ライニングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、自動車用ドアのドア本体に取付けられてドア本体の車室側の側面を覆うライニング本体を備え、前記ライニング本体の外周縁には、前記ドア本体側に延びるフランジ状の外周壁部が一体に連設された、自動車のドア用ライニングであって、前記ライニング本体には、前記ドア本体の車室側の側面に圧接させる防振部材が取付けられるものにおいて、前記ライニング本体のドア本体側の側面には、前記外周壁部の内側面に間隔をおいて対向する対向壁部と、それら外周壁部及び対向壁部間を連結する連結壁部とが一体に突設され、前記防振部材が、少なくとも前記対向壁部及び前記連結壁部の各先端部に支持されることを特徴とする。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1の発明の特徴に加えて、前記対向壁部の一端と前記外周壁部との間、並びに前記対向壁部の他端と前記外周壁部との間が、互いに間隔をおいて並ぶ一対の前記連結壁部でそれぞれ連結されることを特徴とする。
【0011】
また請求項3の発明は、請求項1の発明の特徴に加えて、前記対向壁部、前記外周壁部および少なくとも一対の前記連結壁部により、一端を開放した箱型支持部が構成され、その箱型支持部の前記対向壁部、前記外周壁部および少なくとも一つの前記連結壁部の各先端部に前記防振部材が支持されることを特徴とする。
【0012】
また請求項4の発明は、請求項3の発明の前記特徴に加えて、複数の前記箱型支持部が前記ライニング本体の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの前記箱型支持部に少なくとも跨がるように前記防振部材が形成されることを特徴とする。
【0013】
また請求項5の発明は、請求項3の発明の前記特徴に加えて、複数の前記箱型支持部が前記ライニング本体の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの前記箱型支持部の間に存するリブが、前記ライニング本体のドア本体側の側面に一体に突設されることを特徴とする。
【0014】
また請求項6の発明は、請求項3,4又は5の発明の前記特徴に加えて、前記ライニング本体のドア本体側の側面には、先部が該ドア本体側に突出して前記ライニング本体をドア本体に結合させる結合具を支持する結合具取付座が一体に突設され、その結合具取付座と前記箱型支持部との間を一体に接続する接続壁部が前記ライニング本体のドア本体側の側面に一体に突設されることを特徴とする。
【0015】
また請求項7の発明は、請求項6の発明の前記特徴に加えて、前記接続壁部が、これに接続される前記箱型支持部の前記連結壁部の延長線上に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ライニング本体のドア本体側の側面には、そのライニング本体の外周壁部の内側面に間隔をおいて対向する対向壁部と、それら外周壁部及び対向壁部間を連結する連結壁部とが一体に突設され、それら壁部のうち少なくとも対向壁部及び連結壁部の各先端部に防振部材が支持されるので、その支持面をドア本体に十分に近づけることができ、従って、該支持面がライニング本体の外周壁部の内方側に在っても比較的薄肉の防振部材の使用が可能となる。また、ライニング本体の外周壁部の先端からは防振部材支持のための外向き延長壁部を連設させる必要がないから、それだけライニング自体の小型化が図られる。更に、上記外周壁部と対向壁部と連結壁部とが相互に補強し合う頑丈な枠構造が得られるから、ライニング本体外周部の剛性、強度が高められるだけでなく、対向壁部及び連結壁部で防振部材を安定よく強固に支持させることができる。
【0017】
また特に請求項2の発明によれば、上記対向壁部の両端をそれぞれ連結壁部を介して外周壁部に連結したので、それら壁部で閉断面の枠構造が得られ、防振部材を一層安定よく強固に支持させることができる。
【0018】
また特に請求項3の発明によれば、上記対向壁部、外周壁部および連結壁部で構成した箱型支持部により、防振部材を一層安定よく強固に支持させることができる。その上、この防振部材で箱型支持部の開口部を塞ぐようにすれば、箱型支持部の内部が閉空間となって、そこに空気層が形成されるため、この閉空間の空気層により遮音効果乃至は吸音効果が発揮されて、ライニングのガタ付き音やビビリ音を効果的に吸収、低減することができる。
【0019】
また特に請求項4の発明によれば、複数の箱型支持部がライニング本体の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの箱型支持部に少なくとも跨がるように防振部材が形成されるので、複数の箱形支持部により防振部材の支持をより安定させることができ、また相互に離間した箱型支持部間のスペースを利用して、防振部材の取り外し作業を容易に行うことができ、張り直しの際の作業性向上が図られる。
【0020】
また特に請求項5の発明によれば、複数の箱型支持部がライニング本体の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの箱型支持部の間に存するリブが、ライニング本体のドア本体側の側面に一体に突設されるので、箱形支持部が相互に離間していても、その間のライニング本体の剛性強度を上記リブで高めることができ、またこのリブに防振部材を支持させるようにすれば、防振部材の支持が更に安定する。
【0021】
また特に請求項6の発明によれば、ライニング本体のドア本体側の側面には、先部が該ドア本体側に突出してライニング本体をドア本体に結合させる結合具を支持する結合具取付座が一体に突設され、その結合具取付座と箱型支持部との間を接続する接続壁部がライニング本体のドア本体側の側面に一体に突設されるので、この接続壁部により結合具取付座及び箱状支持部が相互に補強し合うこととなり、それらの全体的強度を高めることができ、またこの接続壁部に防振部材を支持させるようにすれば防振部材の支持を更に安定させることができる。
【0022】
また特に請求項7の発明によれば、前記接続壁部が、これに接続される箱型支持部の連結壁部の延長線上に延びているので、この接続壁部を特設しても箱型支持部周辺のライニング本体の構造形態が複雑化するのを極力回避でき、成形性や加工性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例に係るドア用ライニングを組み込んだドアを、ドアパネルの大部分を切欠いた状態で示す、車室と反対側から見た要部正面図
【図2】図1の2矢視部を示す拡大斜視図
【図3】図2の3−3線拡大断面図
【図4】図2の4−4線拡大断面図
【図5】本発明の第2実施例に係るドア用ライニングの要部斜視図(図2対応図)
【図6】箱型支持部(対向壁部及び連結壁部)と結合具取付座と接続壁部との関係構造の種々のバリエーションを示す概略正面図
【図7】従来例の要部を概略的に示す断面図であって、(A)は、ライニング本体の外周壁部に防振部材の取付座となる延長壁部を延設した例を示し、また(B)は、ライニング本体の、外周壁部よりも内方側の側面を防振部材の取付座とした例を示す
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
先ず、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施例を説明する。
【0026】
車体(図示せず)に開閉可能にヒンジ連結される自動車用ドアDは、ドア本体としての鋼板製のドアパネルPと、そのドアパネルPに取付けられてドアパネルPの車室側の側面を覆うライニングLとで構成される。そのドアパネルPは、ドア外板となるアウタパネルPoと、そのアウタパネルPoに結合される車室側のインナパネルPiとで中空に形成されており、その中空部には、ドアDに付属の窓ガラス昇降機構、スピーカ等(何れも図示せず)が収容されている。
【0027】
前記ライニングLのライニング本体は、ドアパネルPのインナパネルPiに着脱可能に取付けられてドアパネルPの車室側の側面を覆うライニングアウタLoと、そのライニングアウタLoに着脱可能に結合されてライニングアウタLoの車室側の側面を覆うライニングインナLiとより構成される。それらライニングアウタLo及びライニングインナLiは、その両者の相対向面の何れか一方(図示例ではライニングアウタLo)に設けた複数の係止孔10と、その何れか他方に設けた複数の弾性係止爪11を弾性係止させることで、相互に一体的に結合される。
【0028】
また、ライニングアウタLoには、ドアパネルPの車室側の側面(即ちインナパネルPi)に圧接させる防振部材S1,S2が後述する取付、支持構造を以て取付けられる。
【0029】
前記ライニングアウタLoは、その全体を合成樹脂で一体成形されるものであって、それの上端縁を除く外周縁(即ち下端縁及び前、後端縁)には、ドアパネルP側に延びるフランジ状の外周壁部1が前記外周縁に沿うように一体に連設される。そして、その外周壁部1の高さ(即ちライニングアウタLoの車室側の側面からの延出長さ)は、ライニングアウタLoの下端縁で高く、また前、後端縁では上方に向かうにつれて徐々に低くなっている。
【0030】
前記防振部材S1,S2は、可撓性を有して長い帯状に形成されており、図示例では、ライニングアウタLoの前半側の外周壁部1に沿って延びる第1防振部材S1と、ライニングアウタLoの後半側の外周壁部1に沿って延びる第2防振部材S2とに分割構成される。前記第1防振部材S1は、弾性を有し吸音、防振に好適な材料、例えば発泡ゴム(エプトシーラー)で帯板状に形成され、また前記第2防振部材S2は、同じく弾性を有し吸音、防振に好適な材料、例えば不織布で帯板状に形成される。但し、その防振部材S1,S2を同一材料で構成してもよいし或いは連続する一体物としてもよく、更には、後述する第2実施例のように3ピース以上の要素に分割構成してもよい。
【0031】
前記防振部材S1,S2を支持するために、ライニングアウタLoのドアパネルP側の側面には、一端が開放された横断面矩形状の複数の箱型支持部Bが、周方向に互いに間隔をおいて一体に突設されており、このような箱型支持部Bの先端部に防振部材S1,S2を固定、支持させることで、ライニングアウタLoの外周部を特別に補強したり厚肉に形成したりしなくても、防振部材S1,S2を安定よく強固に支持できる。
【0032】
而して、その複数の箱型支持部Bは、ライニングアウタLoのドアパネルP側の側面に一体に突設されて前記外周壁部1の内側面に間隔をおいて対向し且つ互いに周方向に間隔をおいて縦列配置された複数の対向壁部2と、その各々の対向壁部2の一端及び他端ならびに外周壁部1間を各々連結すべく同じくライニングアウタLoのドアパネルP側の側面に一体に突設された各一対の連結壁部3と、前記外周壁部1の、各対向壁部2と対応する部分とでそれぞれ構成される。
【0033】
そして、前記防振部材S1,S2は、各箱型支持部Bにおいて、少なくとも対向壁部2及び一対の連結壁部3の各先端部に(図示例では外周壁部1の先端部にも)両面接着テープ4で接合、固定される。尚、その接合、固定手段としては、図示例の両面接着テープ4に代えて、接着材を使用したり或いは適宜の係止手段を使用してもよい。
【0034】
また、図示例では、前記外周壁部1の先端面の下部に位置決め突起1aが一体に突設される。従って、この位置決め突起1aを防振部材S1,S2の下端縁に係合させることで、防振部材S1,S2の箱型支持部Bに接着すべき位置が規定されるため、防振部材S1,S2の箱型支持部Bへの接着作業を容易且つ的確に行うことができる。
【0035】
而して、本実施例のようにライニングアウタLoの外周部に、その周方向に沿って並列する複数の箱型支持部Bを間隔をおいて突設して、その並列する複数の箱型支持部Bに跨がるように防振部材S1,S2を支持させれば、防振部材S1,S2の支持をより安定させることができる。この場合、相互に離間した箱型支持部B間のスペースを利用(例えば指を引っ掛けるスペースとして利用)すれば、防振部材S1,S2の取外し作業を容易に行うことができ、経年劣化した防振部材S1,S2を新品に張り直すような場合の作業性向上が図られる。
【0036】
更にライニングアウタLoのドアパネルP側の側面には、相隣なる2つの箱型支持部Bの間において、外周壁部1に一端が接続される補強用のリブ5がそれぞれ一体に突設されており、図示例では、このリブ5の先端部にも前記防振部材S1,S2が両面接着テープ4を介して接合、固定される。そして、このようなリブ5の特設によれば、複数の箱形支持部Bが相互に離間配置されても、その相互間のライニングアウタLoの外周部の剛性強度を上記リブ5で高めることができ、また図示例のようにリブ5に防振部材S1,S2を支持させるようにすれば、防振部材S1,S2の支持を更に安定させることができる。
【0037】
またライニングアウタLoのドアパネルP側の側面には、前記対向壁部2よりも内方側において、先部がドアパネルP側に突出してライニングアウタLoをドアパネルP(即ちインナパネルPi)に結合させる複数の結合具Jが周方向に間隔をおいて配設される。その各々の結合具Jは、ライニングアウタLoの前記側面に一体に膨出形成された結合具取付座6の先端部に形成した支持孔6aにその側方開口より抜差可能に挿入、固定される基部Jmと、その基部Jmに一体に突設された弾性爪部Jaとを備えており、その弾性爪部JaをインナパネルPiの取付孔8に押し込んで弾性係止させることで、インナパネルPiにライニングアウタLo(従ってライニングL)を係脱可能に係止、固定させることができる。
【0038】
さらにライニングアウタLoのドアパネルP側の側面には、前記結合具取付座6の下部と箱型支持部Bとの間を一体に接続する接続壁部7が一体に突設される。従って、この接続壁部7により結合具取付座6及び箱状支持部Bが相互に補強し合うため、それらの全体的強度を高めることができる。また、図2,3にも示すように、この接続壁部7に防振部材S1,S2を支持させることで、防振部材S1,S2の支持を更に安定させることができる。尚、結合具取付座6の上部とライニングアウタLoの側面間にも、別の補強リブ9が一体に接続されて結合具取付座6の剛性アップが図られる。
【0039】
また、前記接続壁部7は、図示例では、これに接続される箱型支持部Bの前記連結壁部3の延長線上に延びている。従って、その接続壁部7を特設しても箱型支持部B周辺のライニングアウタLoの構造形態が複雑化するのを極力回避できるから、ライニングアウタLoの成形性や加工性が良好である。
【0040】
次に前記第1実施例の作用を説明する。
【0041】
ライニング本体としてのライニングアウタLoのドアパネルP側の側面には、前記した外周壁部1と対向壁部2と連結壁部3とからなる一端開放の横断面矩形状の複数の箱型支持部Bが、周方向に互いに間隔をおいて一体に突設されている。従って、ライニングLの単体状態(即ちドアパネルPから分離した状態)で行われる防振部材S1,S2のライニングLへの取付けに当たっては、裏面に予め両面接着テープ4を貼付し或いは接着剤を塗布した防振部材S1,S2を、ライニングアウタLoの外周部に沿うように曲げつつ、複数の箱型支持部Bの先端部に各々圧着させるようにする。これにより、防振部材S1,S2は、複数の箱型支持部Bにそれらの先端部に跨がるようにして接着、固定される。
【0042】
そして、この接着、固定状態では、ライニングLが未だドアパネルPから分離されているので、防振部材S1,S2は、図3,4鎖線に示すような自由状態にある。この状態より、次にライニングアウタLoの結合具JをドアパネルPのインナパネルPiの取付孔8に押し込んで弾性係止させるようにして、ライニングアウタLoをインナパネルPiに異結合すると、防振部材S1,S2は、図3,4実線に示すようにインナパネルPiと各箱型支持部Bの先端部間で弾性的に圧縮された状態となる。従って、この防振部材S1,S2によれば、ライニングLのドアパネルPに対するガタつきを抑制して、そのガタつき音の発生を防止することができ、またドアパネルPに内蔵された窓ガラス昇降機構やスピーカの作動に伴う振動、更にはドアパネルPを通して伝わる車体振動等に起因したライニングLの振動(ビビリ)を効果的に抑えて、ビビリ音の吸収、低減を図ることができる。
【0043】
しかも本実施例に示すように、ライニングアウタLoのドアパネルP側の側面に、前記した外周壁部1と対向壁部2と連結壁部3とからなる箱型支持部Bが突設され、この箱型支持部B(外周壁部1、対向壁部2、連結壁部3)の先端部に防振部材S1,S2が支持されるので、その支持面をドアパネルに十分に近づけることができ、従って、該支持面がライニングアウタ外周壁部1の内側に在っても、従来例(図7(B))と比べて十分薄肉の防振部材S1,S2の使用が可能となる。また、ライニングアウタ外周壁部1の先端からは、防振部材S1,S2支持のために、従来例(図7(A))の如く外向き延長壁部を特別に連設させる必要はないから、それだけライニングアウタLo自体の小型化が図られる。更に、ライニングアウタLoの外周部において、上記外周壁部1と対向壁部2と連結壁部3とが相互に補強し合う頑丈な枠構造が得られるから、ライニングアウタLoの外周部の剛性、強度が高められるだけでなく、それら壁部1〜3で防振部材S1,S2を安定よく強固に支持させることができる。
【0044】
その上、本実施例では、防振部材S1,S2が箱型支持部Bの開口部を塞ぐ蓋の役目を果たしているため、箱型支持部Bの内部が閉空間となって、そこに空気層が形成される。これにより、ライニングアウタLoの外周部に箱型支持部Bに対応した閉空間の空気層が沿設されることとなり、この空気層が遮音効果乃至は吸音効果を発揮することから、前記したビビリ音等の吸収、低減に一層効果的である。
【0045】
次に図5を参照して第2実施例を説明する。この実施例では、ライニングアウタLoのドアパネルP側の側面に一体に突設されて外周壁部1の内側面に間隔をおいて対向する対向壁部2が前実施例よりも周方向に長く延ばされており、その対向壁部2と外周壁部1との間が、3個以上の連結壁部3で一体に接続され、これら壁部1〜3により、一端開放の周方向に長い箱型支持部B′が、横断面梯子状の枠体として構成される。
【0046】
その箱型支持部B′は複数有って、ライニングアウタLoの外周部にその周方向に比較的広い間隔をおいて縦列配置される。その相隣なる箱型支持部Bの相互間には、前実施例と同様の構造の結合具取付座6と、ライニングアウタLoのドアパネルP側の側面に接着されてドアパネルP(インナパネルPi)に圧接させる比較的厚肉の第4防振部材S4とが互いに隣接配置されており、それら結合具取付座6及び第4防振部材S4を避けるようにして、薄肉で帯状をなす複数の第3防振部材S3が各箱型支持部B′の先端部に前実施例と同様の接着手段で個別に接着、固定される。尚、第4防振部材S4は、図7で示した従来例(B)の防振部材と基本的に同様の配置構成となっている。
【0047】
前記第3,第4防振部材S3,4の構成材料にも、第1実施例の第1,第2防振部材S1,S2と同様に吸音、防振に好適な材料、例えば発泡ゴム、不織布等が適宜選定され、また特に第4防振部材S4については、厚みが求められるため、ウレタンやスラブ等の材料であってもよい。尚、この第2実施例において、第1実施例の構成要素と同じ構造の構成要素には、第1実施例の参照符号と同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0048】
而して、この第2実施例の第3防振部材S3は、第1実施例の第1,第2防振部材S1,S2と基本的に同様の作用効果を達成することができる。更に第4防振部材S4によっても、ライニングLのガタつき音やビビリ音の低減、緩和が図られる。また特に図示例のようにライニングLの前方下部にスピーカ(図1,2,5ではスピーカ取付孔のみ図示)が配置される場合には、厚みのある第4防振部材S4で大きな振動を抑制する一方、第3防振部材S3で小さな振動を抑制することができるから、吸音、防振効果を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、前記実施例では、ライニングLのライニング本体を、ライニングアウタLoとライニングインナLiとより分割構成したものを示したが、本発明では、一体物のライニング本体を用いるようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の対向壁部2及び連結壁部3の配置構成については、第1,第2実施例に示した対向壁部2及び連結壁部3の配置構成の他、種々のバリエーションを実施可能であり、その変形例を図6を参照して簡単に説明する。
【0052】
即ち、図6(A)では、横断面梯子状の箱型支持部B′における中間連結壁部3の延長線状に延びる接続壁部7を介して箱型支持部B′と結合具取付座6とが一体に接続される。また(B)では、横断面矩形状の箱型支持部Bにおける対向壁部2の中間部より一体に立ち上がる接続壁部7を介して箱型支持部B′と結合具取付座6とが一体に接続される。また(C)では、連結壁部2が傾斜方向を交互に異ならせて斜めに延びており、箱型支持部B′の横断面形状が、等脚台形を連ねたような断面形態となっている。
【0053】
また(D)では、前記(A)において接続壁部7を省略して、結合具取付座6を対向壁部2の中間及び連結壁部3の上部に食い込ませる配置とし、その結合具取付座6の一部も防振部材S1〜S3の接着支持面に利用している。また(E)及び(G)では、前記(B)及び(C)において接続壁部7を省略して、結合具取付座6を対向壁部2の中間に食い込ませる配置とし、その結合具取付座6の一部も防振部材S1〜S3の接着支持面に利用している。
【0054】
さらに(H)(I)(J)では、対向壁部2の一部に凹部2b又は一段下がる段部2cを形成して、その凹部2b又は段部2cに結合具取付座6を配置するようにして対向壁部2に結合具取付座6を一体に接続している。尚、(H)及び(J)では、凹部2bまたは段部2cの底壁と連結壁部3との間が、水平の連結壁部3′で一体に接続されている。
【符号の説明】
【0055】
B,B′・・箱型支持部
D・・・・・自動車用ドア
J・・・・・結合具
P・・・・・ドア本体としてのドアパネル
Pi・・・・インナパネル
L・・・・・ドア用ライニング
Lo・・・・ライニング本体としてのライニングアウタ
S1〜S3・・防振部材として第1〜第3防振部材
1・・・・・外周壁部
2・・・・・対向壁部
3・・・・・連結壁部
5・・・・・リブ
6・・・・・結合具取付座
7・・・・・接続壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドア(D)のドア本体(P)に取付けられてドア本体(P)の車室側の側面を覆うライニング本体(Lo)を備え、そのライニング本体(Lo)の外周縁には、前記ドア本体(P)側に延びるフランジ状の外周壁部(1)が一体に連設された、自動車のドア用ライニングであって、
前記ライニング本体(Lo)には、前記ドア本体(P)の車室側の側面に圧接させる防振部材(S1〜S3)が取付けられるものにおいて、
前記ライニング本体(Lo)のドア本体(P)側の側面には、前記外周壁部(1)の内側面に間隔をおいて対向する対向壁部(2)と、それら外周壁部(1)及び対向壁部(2)間を連結する連結壁部(3)とが一体に突設され、
前記防振部材(S1〜S3)が、少なくとも前記対向壁部(2)及び前記連結壁部(3)の各先端部に支持されることを特徴とする、自動車のドア用ライニング。
【請求項2】
前記対向壁部(2)の一端と前記外周壁部(1)との間、並びに前記対向壁部(2)の他端と前記外周壁部(1)との間が、互いに間隔をおいて並ぶ一対の前記連結壁部(3)でそれぞれ連結されることを特徴とする、請求項1記載の自動車のドア用ライニング。
【請求項3】
前記対向壁部(2)、前記外周壁部(1)および少なくとも一対の前記連結壁部(3)により、一端を開放した箱型支持部(B,B′)が構成され、その箱型支持部(B,B′)の前記対向壁部(2)、前記外周壁部(1)および少なくとも一つの前記連結壁部(3)の各先端部に前記防振部材(S1〜S3)が支持されることを特徴とする、請求項1記載の自動車のドア用ライニング。
【請求項4】
複数の前記箱型支持部(B)が前記ライニング本体(Lo)の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの前記箱型支持部(B)に少なくとも跨がるように前記防振部材(S1〜S3)が形成されることを特徴とする、請求項3記載の自動車のドア用ライニング。
【請求項5】
複数の前記箱型支持部(B)が前記ライニング本体(Lo)の周方向に互いに間隔をおいて並列配置され、その相隣なる2つの前記箱型支持部(B)の間に存するリブ(5)が、前記ライニング本体(Lo)のドア本体(P)側の側面に一体に突設されることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のドア用ライニング。
【請求項6】
前記ライニング本体(Lo)のドア本体(P)側の側面には、先部が該ドア本体(P)側に突出して前記ライニング本体(Lo)をドア本体(P)に結合させる結合具(J)を支持する結合具取付座(6)が一体に突設され、その結合具取付座(6)と前記箱型支持部(B,B′)との間を一体に接続する接続壁部(7)が前記ライニング本体(Lo)のドア本体(P)側の側面に一体に突設されることを特徴とする、請求項3,4または5に記載の自動車のドア用ライニング。
【請求項7】
前記接続壁部(7)が、これに接続される前記箱型支持部(B,B′)の前記連結壁部(3)の延長線上に延びていることを特徴とする、請求項6記載の自動車のドア用ライニング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103646(P2013−103646A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249748(P2011−249748)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】