自動車のフードシール構造
【課題】車両走行時のフードの振動を抑制することのできる自動車のフードシール構造を提供する。
【解決手段】自動車のフード10の前端部とその前端部に対応するグリル13との間で車両前方に開口する隙間20をシールするフードシール30を備える。フードシール30は、グリル13に配置されかつフード10に弾性的に接触するリップ部32を有する。リップ部32が、車両走行時に隙間20から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10側に押付力を付与する形状で形成される。フードシール30のリップ部32が、車両走行時に生じる隙間20の変化に追従する形状で形成される。フードシール30のリップ部32に、車両停止時においてフード10に接触する接触部よりも車両前方に延出されかつ隙間20の変化に追従する余裕部32aが形成される。
【解決手段】自動車のフード10の前端部とその前端部に対応するグリル13との間で車両前方に開口する隙間20をシールするフードシール30を備える。フードシール30は、グリル13に配置されかつフード10に弾性的に接触するリップ部32を有する。リップ部32が、車両走行時に隙間20から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10側に押付力を付与する形状で形成される。フードシール30のリップ部32が、車両走行時に生じる隙間20の変化に追従する形状で形成される。フードシール30のリップ部32に、車両停止時においてフード10に接触する接触部よりも車両前方に延出されかつ隙間20の変化に追従する余裕部32aが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードシール構造の従来例を説明する。なお、図10はフードシール構造を示す断面図、図11はその要部を示す断面図である。
図10に示すように、自動車の車体(図示しない)には、エンジンルームを覆うフード110が開閉可能に設けられている。フード110は、後端部(図10において右端部)が車体にヒンジ機構を介して回動可能に設けられているいわゆる前開き式のものである。また、フード110の下面側には、車体側に設けられるフードロック装置(図示しない)に対応するフードロックストライカ121が設けられている。フードロック装置によりフードロックストライカ121が拘束されることにより、フード110が閉止状態にロックされる。また、フード110の前端に対してフードロックストライカ121によるフード110の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置される場合がある。また、グリル113とフードロックストライカ121との間には、車体側に設けられるラジエータサポート(図示しない)を覆うラジエータサポートカバー122が配置されている。
【0003】
図11に示すように、フード110の閉止状態において、フード110の前端部とその前端部に対応するグリル113との間には、車両前方に開口する隙間(この隙間を「見切り隙間」という。)120が形成されている。見切り隙間120には、見栄え、風切り音等の対策のためにフードシール130が設けられている。フードシール130は、ゴム状弾性材により車両左右方向(図11において紙面表裏方向)に延びる長尺状に形成されている。フードシール130は、断面形状において、前記グリル113の上面に取付けられた取付部131と、その取付部131の前端部から上方へ突出されかつ後方へ湾曲するリップ部132とを有している。リップ部132は、閉止状態のフード110の下面に対して弾性的に接触する。
なお、このようなフードシール構造としては、例えば特許文献1,2等に記載されたものがある。
【0004】
【特許文献1】実開昭58−25782号公報
【特許文献2】実開昭61−105551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動車のフードシール構造によると、車両走行時(とくに高速走行時)に、見切り隙間120から吹き込む走行風(図11中、矢印Y参照)の風圧を受けたリップ部132が後方へ押し倒されやすい(図11中、二点鎖線132参照)。このように、リップ部132が後方へ押し倒されると、フード110に対するリップ部132の押付力が低下し、フード110に振動(上下方向の振動)をきたすおそれがあった。とくに、フード110の前端に対してフードロックストライカ121によるフード110の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置される場合(図10参照)には、高速走行時にフード110の前部が上方へ撓む変形が生じ、フード110が一層振動しやくなることがある。
【0006】
また、車両走行時のフード110の振動を防止する対策として、フードシール130のリップ部132の弾性反力を大きくすると、フード110が閉じにくくなったり、車両の停車(静止)時において、フード110の前部が押し上げられるためにグリル113とフード110との間の見切り隙間120の上下方向の幅(この幅を「見切り幅」という。)120W(図10参照)が広がることで見栄えが悪くなったりする等の不具合をきたすことから好ましくない。
【0007】
また、前記特許文献1のものでは、フードの閉止状態で、フードの下方へ折れ曲がった前端部の後側面に対して、フードシールのリップ部の先端部が断面で点接触状に接触しているだけにすぎない(特許文献1の第2図参照)。このため、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフードの振動抑制効果を期待することが困難である。
【0008】
また、前記特許文献2のものでは、ラジエータコアサポートとそのラジエータコアサポートに対向するフードとの間の隙間をシールするフードシールを備えている。しかしながら、ラジエータコアサポートとフードとの間の隙間は、フード前端における見切り隙間に対して断面クランク状をなしていているため、車両前方に直接的に開口する隙間になっていない(特許文献2の第1図、第3図等参照)。したがって、見切り隙間から吹き込む走行風がラジエータコアサポートに当たり、その風圧が弱められてしまうことから、リップ部が走行風の風圧を利用する構造となっていない。このため、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフードの振動抑制効果を期待することが困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、車両の停車(静止)時ではフードシールの反力を上げずに(従来の反力を維持しつつ)、走行時(特に高速時)のフードの振動を抑制することのできる自動車のフードシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする自動車のフードシール構造により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載された自動車のフードシール構造によると、自動車のフードの前端部と車体側部材との間で車両前方に開口する隙間(見切り隙間)をシールするフードシールにおけるリップ部が、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフードの振動を抑制することができる。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのリップ部が、見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を利用して、車両走行時に生じる見切り隙間の変化に追従して他方の部材側に押付力を付与する。これにより、車両走行時に見切り隙間の変化が生じるフードの振動を抑制することができる。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのリップ部に形成された余裕部が、車両走行時に生じる見切り隙間の変化に追従して他方の部材に常に接触することができる。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに設けられたリブ部により、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を受けたときのリップ部の反転を防止することができる。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに設けられたガイド部により、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風をリップ部へ効率良く誘導することができる。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのガイド部により、一方の部材にフードシールを取付ける取付部材を隠蔽することができる。
【0016】
また、特許請求の範囲の請求項7に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに、取付部及びガイド部を含む閉断面形状の中空筒部が形成されている。これにより、フードシールの取付部及びガイド部の剛性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
本発明の実施例1を説明する。説明の都合上、自動車の前部の構成を説明した後、フードシール構造について説明する。なお、図1は自動車の前部を示す斜視図、図2はフードシール構造を示す断面図、図3はフードシール構造の要部を示す断面図である。
図1に示すように、自動車の車体に形成されたエンジンルーム(図示しない)の前側部には、ラジエータグリル(以下「グリル」と略称する。)13、フロントバンパー14、左右一対のヘッドランプ15等が設けられている。また、車体には、エンジンルームを覆うフード10が開閉可能に設けられている。フード10は、その後端部(図示しない)が車体側にヒンジ機構を介して回動可能に設けられているいわゆる前開き式のものである。なお、図1において、矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方を示し、矢印UPRは車両上方を示している。
【0019】
図3に示すように、グリル13は、その主体をなすグリル主部13aと、そのグリル主部13aの上端部から車両後方(図3において右方)へ延びる上壁部13bと、その上壁部13bの後端部から上方へ突出する段付部13cと、その段付部13cの上端部から車両後方(図3において右方)へ延びる張出部13dとを備えている。上壁部13bには、車両左右方向に所定間隔を隔てて並ぶ取付片13eが車両後方(図3において右方)へ向けて突出されている。取付片13eは、車体側の部材にボルト18によって締着されている。また、張出部13dには、ボルト18の頭部18aに対応する切欠溝19が形成されている。なお、グリル13は、本明細書でいう「車体側部材」に相当する。
【0020】
図2に示すように、前記フード10の下面側には、前記車体側に設けられるフードロック装置(図示しない)に対応するフードロックストライカ21が設けられている。フードロック装置によりフードロックストライカ21が拘束されることにより、フード10が閉止状態にロックされる。また、フード10の前端に対してフードロックストライカ21によるフード10の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置されている。また、グリル13とフードロックストライカ21との間には、車体側に設けられるラジエータサポート(図示しない)を覆うラジエータサポートカバー22が配置されている。
【0021】
図3に示すように、前記フード10は、意匠面を構成するアウタパネル11と、そのアウタパネル11を裏面側から支持するインナパネル12とを備えている。アウタパネル11の前端部は、緩やかに下方へ湾曲されている。アウタパネル11の外周端部11aとインナパネル12の外周端部12aが重合されており、インナパネル12の外周端から張り出すアウタパネル11の端縁部11bをインナパネル12の外周端部12aの裏面側に重合状に折り返すことにより、両パネル11,12が結合されている。閉止状態におけるフード10の前端は、前記グリル13のグリル主部13aと上壁部13bとのなす隅角部に対して所定の上下方向の幅(この幅を「見切り幅」という。)20Wの見切り隙間20をもって対向している(図2及び図3参照)。また、インナパネル12は、前記グリル13の上壁部13bの後半部と対向する位置において車両左右方向(図3において紙面表裏方向)へ延びる水平板状の平板部12bを備えている。インナパネル12の前端部(外周端部12aの前側部分が相当する)と平板部12bとの間には、グリル13の上壁部13bの前半部と対向する位置において車両左右方向(図3において紙面表裏方向)へ延びる凹状湾曲部12cが形成されている。
【0022】
次に、前記見切り隙間20に、見栄え、風切り音等の対策のために配置されたフードシール30について説明する。なお、図4はフードシールを示す斜視図である。
フードシール30は、ゴム状弾性材により車両左右方向に延びる長尺状に形成されている(図1参照)。図3に示すように、フードシール30は、断面形状において、取付部31とリップ部32とリブ部33とガイド部34とを有する一体成形品からなる。以下、各部31〜34について順に説明する。
【0023】
前記取付部31は帯板状に形成されている。取付部31は、前記グリル13の上壁部13bの後半部上にクリップ40により取付けられている。クリップ40は、車両左右方向(図3において紙面表裏方向)に所定間隔毎に適数個配置されている。また、クリップ40は、グリル13の上壁部13bに形成された取付孔(図示省略)に対して弾性的に係合することによって抜け止めされている。これとともに、クリップ40の頭部40aが取付部31を上壁部13b上に押圧する。このとき、取付部31がグリル13の段付部13cに当接されることで、取付部31が車両前後方向(図3において左右方向)に関して位置決めされる。なお、クリップ40は、本明細書でいう「取付部材」に相当する。
【0024】
前記リップ部32は、前記取付部31の後端部から上方へ突出されかつ前方へ湾曲する断面円弧状に形成されている。リップ部32は、その外周面の中央部が前記フード10の閉止時においてインナパネル12の平板部12bと凹状湾曲部12cとによる角部(符号、12dを付す)によって押下されることにより傾倒されている。したがって、リップ部32の高さが減少された状態となることにより、リップ部32が、フード10、詳しくはインナパネル12の角部12dに対して弾性的に接触(詳しくは線接触(断面においては点接触)する。これとともに、車両停止時において、フード10に対するリップ部32の接触部より車両前方(図3において右方)に延出する部分が、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化に追従する余裕部32aとなっている。なお、図3にリップ部32の自由状態が二点鎖線32で示されている。
【0025】
前記リブ部33は、前記リップ部32の基部から後方へ突出されている。リブ部33は、前記グリル13の段付部13c及び/又は張出部13d上に近接又は当接されている。
また、前記ガイド部34は、前記取付部31の前端部から上方へ突出されかつ後方へ傾斜されている。取付部31を含むガイド部34は、前記見切り隙間20の見切り幅20W(図2参照)とほぼ同じ高さで形成されている。また、ガイド部34は、前記クリップ40の頭部40aを隠蔽している。これにより、クリップ40の頭部40aが、見切り隙間20を通じて車両前方へ露呈しない。
【0026】
前記した自動車のフードシール構造において、図3に示すように、車両停止時(停車時)において、フード10の閉止時には、フードシール30により、フード10の前端部とグリル13との間で車両前方に開口する見切り隙間20がシールされている。このとき、フードシール30のリップ部32がフード10(詳しくは、インナパネル12の角部12d)に所定の弾性反力をもって弾性的に接触している。また、フード10を開くと、リップ部32からフード10が離れることにより、リップ部32が自由状態に弾性復元する(図3中、二点鎖線32参照)。
【0027】
また、フード10を閉止した状態での車両走行時には、フードシール30におけるリップ部32が、見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10(詳しくは、インナパネル12の角部12d)に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフード10の振動を抑制することができる。
【0028】
また、高速走行時において、フード10の前部が上方へ撓む変形を生じると、見切り隙間20が変化すなわち見切り幅20W(図2参照)が拡大する。このような場合には、フードシール30のリップ部32(余裕部32aを含む)が、見切り隙間20から吹き込む走行風の風圧を利用して、見切り隙間20(詳しくは見切り幅20W(図2参照))の変化に追従して立ち上がることで、フード10(詳しくは、インナパネル12)に押付力を付与する。なお、図5は高速走行時におけるフードシール構造を示す断面図である。なお、図5において、二点鎖線10は停車時のフード10を示し、二点鎖線32(32a)は停車時のフードシール30の余裕部32aを含むリップ部32を示す。
【0029】
このとき、フード10にフードシール30のリップ部32が常に接触した状態となるので、走行風がフード10とフードシール30との間を擦り抜けることがない。また、走行速度が速いほど、フード10に対するフードシール30のリップ部32の押付力が大きくなる。また、見切り幅20W(図2参照)の大きさによっては、フードシール30のリップ部32(詳しくは余裕部32a)が、フード10のインナパネル12の角部12dの他、平板部12b又は凹状湾曲部12cに接触する。
【0030】
また、高速走行から減速すると、フード10の前部が原状に弾性復元することにより、見切り隙間20が変化すなわち見切り幅20W(図2参照)が減少するときには、フードシール30のリップ部32がフード10により下方へ傾倒される(図3参照)。
上記したように、フードシール30のリップ部32が、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化(見切り幅20W(図2参照)の増減)に追従してフード10に押付力を付与することができる。
【0031】
前記した自動車のフードシール構造によると、自動車のフード10の前端部とグリル13との間で車両前方に開口する見切り隙間20をシールするフードシール30におけるリップ部32が、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10側に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフード10の振動を抑制することができる。
【0032】
また、フードシール30のリップ部32の弾性反力を大きくして車両走行時のフード10の振動を防止する場合と異なり、リップ部32の弾性反力の増大でフード10が閉じにくくなったり、車両停止時にリップ部32の弾性反力の増大でフード10の前部の変形によりグリル13とフード10との間の見切り幅20W(図2参照)が広がることで見栄えを損ねる等の不具合を解消することができ、品質感を向上することができる。
また、車両前方から見切り隙間20を通じて吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)をフードシール30のリップ部32でまともに受ける構成であるため、例えば前記特許文献2におけるフードシールと異なり、走行風の風圧を有効に利用することができ、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフード10の振動を効果的に抑制することができる。
【0033】
また、フードシール30のリップ部32が、見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を利用して、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化すなわち見切り幅20W(図2参照)の増減に追従してフード10側に押付力を付与する。これにより、車両走行時に見切り隙間20の変化が生じるフード10の振動を抑制することができる。このことは、フード10の前端からフード10の拘束点Pまでの距離a(図2参照)が大きく設定される自動車のフードシール構造として有効である。
【0034】
また、フードシール30のリップ部32に形成された余裕部32aが、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化に追従してフード10に常に接触することができる(図3及び図5参照)。
【0035】
また、高速走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧が大きくなると、その風圧をフードシール30のリップ部32が受けることにより、リップ部32が車両後方へ転動いわゆる反転しやすくなることが予想される。しかし、フードシール30に設けられたリブ部33がグリル13の段付部13c及び/又は張出部13d上に当接することによって、リップ部32の反転を防止することができる。なお、リブ部33は、必要に応じて設けられるものであるから省略することもできる(図6参照)。
【0036】
また、フードシール30に設けられたガイド部34により、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風をリップ部32へ効率良く誘導することができる(図3中、矢印Y1参照)。本実施例の場合、ガイド部34によりリップ部32へ誘導された走行風の一部が、リップ部32の基部と取付部31とガイド部34とにより取り囲まれる袋小路状の空間部35内で旋回渦を形成する(図3中、矢印Y2参照)。このため、走行風をリップ部32に効率良く作用させることができる。また、ガイド部34は、必要に応じて設けられるものであるから省略することもできる(図7参照)。
【0037】
また、フードシール30のガイド部34により、グリル13にフードシール30を取付けるクリップ40(詳しくは頭部40a)を隠蔽することができる。なお、ガイド部34とは別個に、クリップ40(詳しくは頭部40a)を隠蔽する専用のカバー部を設けてもよい。
【0038】
[実施例2]
本発明の実施例2を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図8はフードシール構造を示す断面図である。
本実施例は、図8に示すように、フードシール30のガイド部34の先端部を延出してリップ部32の基部に接続することにより、取付部31及びガイド部34を含む閉断面形状の中空筒部36が形成されている。この構成によると、フードシール30の取付部31及びガイド部34の剛性を向上することができる。
【0039】
[実施例3]
本発明の実施例3を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図9はフードシール構造を示す断面図である。
本実施例は、図9に示すように、フードシール30(図6参照)を、グリル13に代えて、フード10側、詳しくはインナパネル12の平板部12bの下面に取付けたものである。このとき、フード10の閉止状態で、フードシール30のリップ部32をグリル13の上壁部13bの上面、例えば平面部13hと斜面部13iとのなす角部13jに弾性的に当接させたものである。また、グリル13の上壁部13bの前端部上には、前記フード10の前端部に対応しかつグリル13の上壁部13bとリップ部32の余裕部32aとの間への走行風の侵入を防止する突出部13kが形成されている。
【0040】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、前記実施例では、フード10に対応する車体側部材としてグリル13を例示したが、フロントバンパー14、ヘッドランプ15等をフード10に対応する車体側部材とすることもできる。また、取付部31は、グリル13等の車体側部材又はフード10に対して、クリップ40の他、両面テープ、接着剤等を部分的にあるいは全面に配置することにより取付けられてもよい。また、リップ部32は、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する形状で形成されている限り、フード10のインナパネル12の角部12d(図3参照)、グリル13の上壁部13bの角部13j(図9参照)に限らず、平面状部あるいはその他の形状の部分に対して接触するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係る自動車の前部を示す斜視図である。
【図2】フードシール構造を示す断面図である。
【図3】フードシール構造の要部を示す断面図である。
【図4】フードシールを示す斜視図である。
【図5】高速走行時におけるフードシール構造を示す断面図である。
【図6】変更例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図7】変更例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図8】実施例2に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図9】実施例3に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図10】従来例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図11】フードシール構造の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 フード
13 ラジエータグリル(車体側部材)
20 見切り隙間(隙間)
30 フードシール
32 リップ部
32a 余裕部
33 リブ部
34 ガイド部
36 中空筒部
40 クリップ(取付部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードシール構造の従来例を説明する。なお、図10はフードシール構造を示す断面図、図11はその要部を示す断面図である。
図10に示すように、自動車の車体(図示しない)には、エンジンルームを覆うフード110が開閉可能に設けられている。フード110は、後端部(図10において右端部)が車体にヒンジ機構を介して回動可能に設けられているいわゆる前開き式のものである。また、フード110の下面側には、車体側に設けられるフードロック装置(図示しない)に対応するフードロックストライカ121が設けられている。フードロック装置によりフードロックストライカ121が拘束されることにより、フード110が閉止状態にロックされる。また、フード110の前端に対してフードロックストライカ121によるフード110の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置される場合がある。また、グリル113とフードロックストライカ121との間には、車体側に設けられるラジエータサポート(図示しない)を覆うラジエータサポートカバー122が配置されている。
【0003】
図11に示すように、フード110の閉止状態において、フード110の前端部とその前端部に対応するグリル113との間には、車両前方に開口する隙間(この隙間を「見切り隙間」という。)120が形成されている。見切り隙間120には、見栄え、風切り音等の対策のためにフードシール130が設けられている。フードシール130は、ゴム状弾性材により車両左右方向(図11において紙面表裏方向)に延びる長尺状に形成されている。フードシール130は、断面形状において、前記グリル113の上面に取付けられた取付部131と、その取付部131の前端部から上方へ突出されかつ後方へ湾曲するリップ部132とを有している。リップ部132は、閉止状態のフード110の下面に対して弾性的に接触する。
なお、このようなフードシール構造としては、例えば特許文献1,2等に記載されたものがある。
【0004】
【特許文献1】実開昭58−25782号公報
【特許文献2】実開昭61−105551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動車のフードシール構造によると、車両走行時(とくに高速走行時)に、見切り隙間120から吹き込む走行風(図11中、矢印Y参照)の風圧を受けたリップ部132が後方へ押し倒されやすい(図11中、二点鎖線132参照)。このように、リップ部132が後方へ押し倒されると、フード110に対するリップ部132の押付力が低下し、フード110に振動(上下方向の振動)をきたすおそれがあった。とくに、フード110の前端に対してフードロックストライカ121によるフード110の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置される場合(図10参照)には、高速走行時にフード110の前部が上方へ撓む変形が生じ、フード110が一層振動しやくなることがある。
【0006】
また、車両走行時のフード110の振動を防止する対策として、フードシール130のリップ部132の弾性反力を大きくすると、フード110が閉じにくくなったり、車両の停車(静止)時において、フード110の前部が押し上げられるためにグリル113とフード110との間の見切り隙間120の上下方向の幅(この幅を「見切り幅」という。)120W(図10参照)が広がることで見栄えが悪くなったりする等の不具合をきたすことから好ましくない。
【0007】
また、前記特許文献1のものでは、フードの閉止状態で、フードの下方へ折れ曲がった前端部の後側面に対して、フードシールのリップ部の先端部が断面で点接触状に接触しているだけにすぎない(特許文献1の第2図参照)。このため、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフードの振動抑制効果を期待することが困難である。
【0008】
また、前記特許文献2のものでは、ラジエータコアサポートとそのラジエータコアサポートに対向するフードとの間の隙間をシールするフードシールを備えている。しかしながら、ラジエータコアサポートとフードとの間の隙間は、フード前端における見切り隙間に対して断面クランク状をなしていているため、車両前方に直接的に開口する隙間になっていない(特許文献2の第1図、第3図等参照)。したがって、見切り隙間から吹き込む走行風がラジエータコアサポートに当たり、その風圧が弱められてしまうことから、リップ部が走行風の風圧を利用する構造となっていない。このため、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフードの振動抑制効果を期待することが困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、車両の停車(静止)時ではフードシールの反力を上げずに(従来の反力を維持しつつ)、走行時(特に高速時)のフードの振動を抑制することのできる自動車のフードシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする自動車のフードシール構造により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載された自動車のフードシール構造によると、自動車のフードの前端部と車体側部材との間で車両前方に開口する隙間(見切り隙間)をシールするフードシールにおけるリップ部が、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフードの振動を抑制することができる。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのリップ部が、見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を利用して、車両走行時に生じる見切り隙間の変化に追従して他方の部材側に押付力を付与する。これにより、車両走行時に見切り隙間の変化が生じるフードの振動を抑制することができる。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのリップ部に形成された余裕部が、車両走行時に生じる見切り隙間の変化に追従して他方の部材に常に接触することができる。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに設けられたリブ部により、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風の風圧を受けたときのリップ部の反転を防止することができる。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに設けられたガイド部により、車両走行時に見切り隙間から吹き込む走行風をリップ部へ効率良く誘導することができる。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのガイド部により、一方の部材にフードシールを取付ける取付部材を隠蔽することができる。
【0016】
また、特許請求の範囲の請求項7に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールに、取付部及びガイド部を含む閉断面形状の中空筒部が形成されている。これにより、フードシールの取付部及びガイド部の剛性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
本発明の実施例1を説明する。説明の都合上、自動車の前部の構成を説明した後、フードシール構造について説明する。なお、図1は自動車の前部を示す斜視図、図2はフードシール構造を示す断面図、図3はフードシール構造の要部を示す断面図である。
図1に示すように、自動車の車体に形成されたエンジンルーム(図示しない)の前側部には、ラジエータグリル(以下「グリル」と略称する。)13、フロントバンパー14、左右一対のヘッドランプ15等が設けられている。また、車体には、エンジンルームを覆うフード10が開閉可能に設けられている。フード10は、その後端部(図示しない)が車体側にヒンジ機構を介して回動可能に設けられているいわゆる前開き式のものである。なお、図1において、矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方を示し、矢印UPRは車両上方を示している。
【0019】
図3に示すように、グリル13は、その主体をなすグリル主部13aと、そのグリル主部13aの上端部から車両後方(図3において右方)へ延びる上壁部13bと、その上壁部13bの後端部から上方へ突出する段付部13cと、その段付部13cの上端部から車両後方(図3において右方)へ延びる張出部13dとを備えている。上壁部13bには、車両左右方向に所定間隔を隔てて並ぶ取付片13eが車両後方(図3において右方)へ向けて突出されている。取付片13eは、車体側の部材にボルト18によって締着されている。また、張出部13dには、ボルト18の頭部18aに対応する切欠溝19が形成されている。なお、グリル13は、本明細書でいう「車体側部材」に相当する。
【0020】
図2に示すように、前記フード10の下面側には、前記車体側に設けられるフードロック装置(図示しない)に対応するフードロックストライカ21が設けられている。フードロック装置によりフードロックストライカ21が拘束されることにより、フード10が閉止状態にロックされる。また、フード10の前端に対してフードロックストライカ21によるフード10の拘束点Pが所定距離a離した位置関係をもって配置されている。また、グリル13とフードロックストライカ21との間には、車体側に設けられるラジエータサポート(図示しない)を覆うラジエータサポートカバー22が配置されている。
【0021】
図3に示すように、前記フード10は、意匠面を構成するアウタパネル11と、そのアウタパネル11を裏面側から支持するインナパネル12とを備えている。アウタパネル11の前端部は、緩やかに下方へ湾曲されている。アウタパネル11の外周端部11aとインナパネル12の外周端部12aが重合されており、インナパネル12の外周端から張り出すアウタパネル11の端縁部11bをインナパネル12の外周端部12aの裏面側に重合状に折り返すことにより、両パネル11,12が結合されている。閉止状態におけるフード10の前端は、前記グリル13のグリル主部13aと上壁部13bとのなす隅角部に対して所定の上下方向の幅(この幅を「見切り幅」という。)20Wの見切り隙間20をもって対向している(図2及び図3参照)。また、インナパネル12は、前記グリル13の上壁部13bの後半部と対向する位置において車両左右方向(図3において紙面表裏方向)へ延びる水平板状の平板部12bを備えている。インナパネル12の前端部(外周端部12aの前側部分が相当する)と平板部12bとの間には、グリル13の上壁部13bの前半部と対向する位置において車両左右方向(図3において紙面表裏方向)へ延びる凹状湾曲部12cが形成されている。
【0022】
次に、前記見切り隙間20に、見栄え、風切り音等の対策のために配置されたフードシール30について説明する。なお、図4はフードシールを示す斜視図である。
フードシール30は、ゴム状弾性材により車両左右方向に延びる長尺状に形成されている(図1参照)。図3に示すように、フードシール30は、断面形状において、取付部31とリップ部32とリブ部33とガイド部34とを有する一体成形品からなる。以下、各部31〜34について順に説明する。
【0023】
前記取付部31は帯板状に形成されている。取付部31は、前記グリル13の上壁部13bの後半部上にクリップ40により取付けられている。クリップ40は、車両左右方向(図3において紙面表裏方向)に所定間隔毎に適数個配置されている。また、クリップ40は、グリル13の上壁部13bに形成された取付孔(図示省略)に対して弾性的に係合することによって抜け止めされている。これとともに、クリップ40の頭部40aが取付部31を上壁部13b上に押圧する。このとき、取付部31がグリル13の段付部13cに当接されることで、取付部31が車両前後方向(図3において左右方向)に関して位置決めされる。なお、クリップ40は、本明細書でいう「取付部材」に相当する。
【0024】
前記リップ部32は、前記取付部31の後端部から上方へ突出されかつ前方へ湾曲する断面円弧状に形成されている。リップ部32は、その外周面の中央部が前記フード10の閉止時においてインナパネル12の平板部12bと凹状湾曲部12cとによる角部(符号、12dを付す)によって押下されることにより傾倒されている。したがって、リップ部32の高さが減少された状態となることにより、リップ部32が、フード10、詳しくはインナパネル12の角部12dに対して弾性的に接触(詳しくは線接触(断面においては点接触)する。これとともに、車両停止時において、フード10に対するリップ部32の接触部より車両前方(図3において右方)に延出する部分が、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化に追従する余裕部32aとなっている。なお、図3にリップ部32の自由状態が二点鎖線32で示されている。
【0025】
前記リブ部33は、前記リップ部32の基部から後方へ突出されている。リブ部33は、前記グリル13の段付部13c及び/又は張出部13d上に近接又は当接されている。
また、前記ガイド部34は、前記取付部31の前端部から上方へ突出されかつ後方へ傾斜されている。取付部31を含むガイド部34は、前記見切り隙間20の見切り幅20W(図2参照)とほぼ同じ高さで形成されている。また、ガイド部34は、前記クリップ40の頭部40aを隠蔽している。これにより、クリップ40の頭部40aが、見切り隙間20を通じて車両前方へ露呈しない。
【0026】
前記した自動車のフードシール構造において、図3に示すように、車両停止時(停車時)において、フード10の閉止時には、フードシール30により、フード10の前端部とグリル13との間で車両前方に開口する見切り隙間20がシールされている。このとき、フードシール30のリップ部32がフード10(詳しくは、インナパネル12の角部12d)に所定の弾性反力をもって弾性的に接触している。また、フード10を開くと、リップ部32からフード10が離れることにより、リップ部32が自由状態に弾性復元する(図3中、二点鎖線32参照)。
【0027】
また、フード10を閉止した状態での車両走行時には、フードシール30におけるリップ部32が、見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10(詳しくは、インナパネル12の角部12d)に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフード10の振動を抑制することができる。
【0028】
また、高速走行時において、フード10の前部が上方へ撓む変形を生じると、見切り隙間20が変化すなわち見切り幅20W(図2参照)が拡大する。このような場合には、フードシール30のリップ部32(余裕部32aを含む)が、見切り隙間20から吹き込む走行風の風圧を利用して、見切り隙間20(詳しくは見切り幅20W(図2参照))の変化に追従して立ち上がることで、フード10(詳しくは、インナパネル12)に押付力を付与する。なお、図5は高速走行時におけるフードシール構造を示す断面図である。なお、図5において、二点鎖線10は停車時のフード10を示し、二点鎖線32(32a)は停車時のフードシール30の余裕部32aを含むリップ部32を示す。
【0029】
このとき、フード10にフードシール30のリップ部32が常に接触した状態となるので、走行風がフード10とフードシール30との間を擦り抜けることがない。また、走行速度が速いほど、フード10に対するフードシール30のリップ部32の押付力が大きくなる。また、見切り幅20W(図2参照)の大きさによっては、フードシール30のリップ部32(詳しくは余裕部32a)が、フード10のインナパネル12の角部12dの他、平板部12b又は凹状湾曲部12cに接触する。
【0030】
また、高速走行から減速すると、フード10の前部が原状に弾性復元することにより、見切り隙間20が変化すなわち見切り幅20W(図2参照)が減少するときには、フードシール30のリップ部32がフード10により下方へ傾倒される(図3参照)。
上記したように、フードシール30のリップ部32が、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化(見切り幅20W(図2参照)の増減)に追従してフード10に押付力を付与することができる。
【0031】
前記した自動車のフードシール構造によると、自動車のフード10の前端部とグリル13との間で車両前方に開口する見切り隙間20をシールするフードシール30におけるリップ部32が、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を受けるとともにその風圧を利用してフード10側に押付力を付与する。これにより、車両走行時のフード10の振動を抑制することができる。
【0032】
また、フードシール30のリップ部32の弾性反力を大きくして車両走行時のフード10の振動を防止する場合と異なり、リップ部32の弾性反力の増大でフード10が閉じにくくなったり、車両停止時にリップ部32の弾性反力の増大でフード10の前部の変形によりグリル13とフード10との間の見切り幅20W(図2参照)が広がることで見栄えを損ねる等の不具合を解消することができ、品質感を向上することができる。
また、車両前方から見切り隙間20を通じて吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)をフードシール30のリップ部32でまともに受ける構成であるため、例えば前記特許文献2におけるフードシールと異なり、走行風の風圧を有効に利用することができ、車両走行時(とくに高速走行時)におけるフード10の振動を効果的に抑制することができる。
【0033】
また、フードシール30のリップ部32が、見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧を利用して、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化すなわち見切り幅20W(図2参照)の増減に追従してフード10側に押付力を付与する。これにより、車両走行時に見切り隙間20の変化が生じるフード10の振動を抑制することができる。このことは、フード10の前端からフード10の拘束点Pまでの距離a(図2参照)が大きく設定される自動車のフードシール構造として有効である。
【0034】
また、フードシール30のリップ部32に形成された余裕部32aが、車両走行時に生じる見切り隙間20の変化に追従してフード10に常に接触することができる(図3及び図5参照)。
【0035】
また、高速走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風(図3中、矢印Y参照)の風圧が大きくなると、その風圧をフードシール30のリップ部32が受けることにより、リップ部32が車両後方へ転動いわゆる反転しやすくなることが予想される。しかし、フードシール30に設けられたリブ部33がグリル13の段付部13c及び/又は張出部13d上に当接することによって、リップ部32の反転を防止することができる。なお、リブ部33は、必要に応じて設けられるものであるから省略することもできる(図6参照)。
【0036】
また、フードシール30に設けられたガイド部34により、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風をリップ部32へ効率良く誘導することができる(図3中、矢印Y1参照)。本実施例の場合、ガイド部34によりリップ部32へ誘導された走行風の一部が、リップ部32の基部と取付部31とガイド部34とにより取り囲まれる袋小路状の空間部35内で旋回渦を形成する(図3中、矢印Y2参照)。このため、走行風をリップ部32に効率良く作用させることができる。また、ガイド部34は、必要に応じて設けられるものであるから省略することもできる(図7参照)。
【0037】
また、フードシール30のガイド部34により、グリル13にフードシール30を取付けるクリップ40(詳しくは頭部40a)を隠蔽することができる。なお、ガイド部34とは別個に、クリップ40(詳しくは頭部40a)を隠蔽する専用のカバー部を設けてもよい。
【0038】
[実施例2]
本発明の実施例2を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図8はフードシール構造を示す断面図である。
本実施例は、図8に示すように、フードシール30のガイド部34の先端部を延出してリップ部32の基部に接続することにより、取付部31及びガイド部34を含む閉断面形状の中空筒部36が形成されている。この構成によると、フードシール30の取付部31及びガイド部34の剛性を向上することができる。
【0039】
[実施例3]
本発明の実施例3を説明する。本実施例は、前記実施例1の一部に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。なお、図9はフードシール構造を示す断面図である。
本実施例は、図9に示すように、フードシール30(図6参照)を、グリル13に代えて、フード10側、詳しくはインナパネル12の平板部12bの下面に取付けたものである。このとき、フード10の閉止状態で、フードシール30のリップ部32をグリル13の上壁部13bの上面、例えば平面部13hと斜面部13iとのなす角部13jに弾性的に当接させたものである。また、グリル13の上壁部13bの前端部上には、前記フード10の前端部に対応しかつグリル13の上壁部13bとリップ部32の余裕部32aとの間への走行風の侵入を防止する突出部13kが形成されている。
【0040】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、前記実施例では、フード10に対応する車体側部材としてグリル13を例示したが、フロントバンパー14、ヘッドランプ15等をフード10に対応する車体側部材とすることもできる。また、取付部31は、グリル13等の車体側部材又はフード10に対して、クリップ40の他、両面テープ、接着剤等を部分的にあるいは全面に配置することにより取付けられてもよい。また、リップ部32は、車両走行時に見切り隙間20から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する形状で形成されている限り、フード10のインナパネル12の角部12d(図3参照)、グリル13の上壁部13bの角部13j(図9参照)に限らず、平面状部あるいはその他の形状の部分に対して接触するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係る自動車の前部を示す斜視図である。
【図2】フードシール構造を示す断面図である。
【図3】フードシール構造の要部を示す断面図である。
【図4】フードシールを示す斜視図である。
【図5】高速走行時におけるフードシール構造を示す断面図である。
【図6】変更例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図7】変更例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図8】実施例2に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図9】実施例3に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図10】従来例に係るフードシール構造を示す断面図である。
【図11】フードシール構造の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 フード
13 ラジエータグリル(車体側部材)
20 見切り隙間(隙間)
30 フードシール
32 リップ部
32a 余裕部
33 リブ部
34 ガイド部
36 中空筒部
40 クリップ(取付部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前方に開口する隙間をシールするフードシールを備え、
前記フードシールは、前記フードと前記車体側部材とのいずれか一方の部材に配置されかつ前記他方の部材に弾性的に接触するリップ部を有し、
前記リップ部が、車両走行時に前記隙間から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する形状で形成されている
ことを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのリップ部が、車両走行時に生じる前記隙間の変化に追従する形状で形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのリップ部に、車両停止時において前記他方の部材に接触する接触部よりも車両前方に延出されかつ前記隙間の変化に追従する余裕部が形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記隙間から吹き込む走行風の風圧を受けたときの前記リップ部の反転を防止するリブ部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記隙間から吹き込む走行風を前記リップ部へ誘導するガイド部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのガイド部が、前記一方の部材に前記フードシールを取付ける取付部材を隠蔽するカバー部を兼ねていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項7】
請求項5に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記一方の部材に対する取付部及び前記ガイド部を含む閉断面形状の中空筒部が形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項1】
自動車のフードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前方に開口する隙間をシールするフードシールを備え、
前記フードシールは、前記フードと前記車体側部材とのいずれか一方の部材に配置されかつ前記他方の部材に弾性的に接触するリップ部を有し、
前記リップ部が、車両走行時に前記隙間から吹き込む走行風の風圧を受けるとともにその風圧を利用して他方の部材側に押付力を付与する形状で形成されている
ことを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのリップ部が、車両走行時に生じる前記隙間の変化に追従する形状で形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのリップ部に、車両停止時において前記他方の部材に接触する接触部よりも車両前方に延出されかつ前記隙間の変化に追従する余裕部が形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記隙間から吹き込む走行風の風圧を受けたときの前記リップ部の反転を防止するリブ部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記隙間から吹き込む走行風を前記リップ部へ誘導するガイド部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのガイド部が、前記一方の部材に前記フードシールを取付ける取付部材を隠蔽するカバー部を兼ねていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項7】
請求項5に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールに、前記一方の部材に対する取付部及び前記ガイド部を含む閉断面形状の中空筒部が形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−255640(P2009−255640A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104658(P2008−104658)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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