説明

自動車のホーン取り付け構造

【課題】ホーンをフェンダー内等のクロージングプレートの側部に配置した場合でもホーン内の励磁コイルの温度が上昇して音圧が低下するのを防止しつつ、車両前方方向への音圧を確保することのできる自動車のホーン取り付け構造を提供する。
【解決手段】車両の前後方向に延在するとともに車両の外側が開口されている断面形状コ字状のサイドフレームと、前記サイドフレームの前記車両の外側の開口を閉鎖するように前記サイドフレームに取り付けられた車両の前後方向に延在するクロージングプレートと、前記サイドフレームの側部付近に配設されたホーンと、
を備える自動車のホーン取り付け構造であって、前記クロージングプレートの前記ホーンの近傍にはスリットが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のホーン取り付け構造に係り、特にホーンをフェンダー内のクロージングプレートの側部に配置した場合でもコイルを冷却して音圧が低下することを防止すると共に、車両前方方向への音圧を確保することができる自動車のホーン取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来警報音を発生させる自動車のホーンとして、エンジンルームの前端側のボディパネルに取り付けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。このボディパネルは車両の前端部において左右方向に延在しており、ホーンは取リ付け具を介して、警報が発する側の面を前方方向に向けて取り付けられている。
【特許文献1】特開2000−103303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここでホーンは、その内部に内蔵されている励磁コイルについて励磁とその解除を繰り返すことでダイヤフラムを振動させ、その振動により吹鳴させるとともに、この吹鳴させた音をカーリングによって音圧を増幅させて警報とするものである。
【0004】
ところで、近年、ボディパネルの造形自由度の向上、軽衝突時における修理費用の低減、フロントグリル内外観の向上、被水・雪害・塩害に対するホーンの耐久性向上等を目的にホーンをクロージングプレートとフェンダーとで形成される空間(フェンダー内)に配置する場合がある。この場合、外気が取り込まれづらく、ホーン付近の雰囲気温度が上昇するため、ホーン自体の温度も上昇することとなる。すると、ホーンに内蔵されている励磁コイル(ソレノイド)の温度も上昇して抵抗が増えるため、励磁コイルに起因して発生する電磁吸引力が小さくなりダイヤフラムを吸引する力が弱くなるため、ダイヤフラムが振動する幅が小さくなる。その結果、音圧が低下するという問題が生じていた。
【0005】
また、ホーンをフェンダー内に配置すると、所定の音圧を車両の前方方向に出すことが困難になる。
【0006】
本発明の課題は、ホーンをフェンダー内等のクロージングプレートの側部に配置した場合でもホーン内の励磁コイルの温度が上昇して音圧が低下するのを防止しつつ、車両前方方向への音圧を確保することのできる自動車のホーン取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両の前後方向に延在するとともに車両の外側が開口されている断面形状コ字状のサイドフレームと、前記サイドフレームの前記車両の外側の開口を閉鎖するように前記サイドフレームに取り付けられた車両の前後方向に延在するクロージングプレートと、前記サイドフレームの側部付近に配設されたホーンと、を備える自動車のホーン取り付け構造であって、前記クロージングプレートの前記ホーンの近傍にはスリットが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車のホーン取り付け構造において、前記ホーンは、前記クロージングプレートと前記クロージングプレートの外側に配置されるフェンダーとで形成される空間内に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、フロントグリルやバンパー開口部からサイドフレームとクロージングプレートにより形成される閉断面構造内に流入した外気をスリットを通してホーンに吹き付けることができ、音圧の低下を防止することができる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、ホーンから発せられた警報をクロージングプレートに設けられたスリットからサイドフレームとクロージングプレートにより形成される閉断面構造内に案内することができ車両前方方向への音圧を確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ホーンをフェンダー内に配置することで請求項1の効果に加え、さらにボディパネルの造形自由度の向上、軽衝突時における修理費用の低減、フロントグリル内外観向上、被水・雪害・塩害に対するホーンの耐久性向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。図1は、本実施の形態に係る自動車のホーン取り付け構造を搭載した自動車の車両前側の斜視図であり、図2は、本実施の形態に係る自動車のホーン取り付け構造の側面図である。
【0013】
図1に示すように、自動車1の前面の中央部付近には左右方向に延在するフロントグリル2が取り付けられており、フロントグリル2の下方にはバンパー開口部3が設けられている。また、フロントグリル2の側方にはヘッドランプ4が取り付けられており、ヘッドランプ4の下方にはフォグランプ5が配設されている。
【0014】
次に、本発明に関わる自動車のホーンの取り付け構造6について説明する。図1に示すように、自動車1の前後方向に延在する断面形状コ字状のサイドフレーム9が配設されており、サイドフレーム9の外側は開口されている。
【0015】
サイドフレーム9の外側の開口は、車両前後方向に延在するクロージングプレート10によって閉鎖され、サイドフレーム9と協働して閉断面構造を形成すると共に、サイドフレーム9の車体前方側の端面には、前方側開口11が形成されている。そして、クロージングプレート10の前端であって車両の外側には、薄板状のバンパーブラケット12が取り付けられている。また、クロージングプレート10には、バンパーブラケット12の取り付けられた位置よりも後方に、上下方向に延在するスリット13,13が設けられている。クロージングプレート10に設けるスリット13の数に制限はなく、その数は自動車1が衝突した際に必要とされる剛性を考慮して定められる。
【0016】
また、サイドフレーム9の前端付近であって、フェンダー14の内側には、ラジエータパネルの側壁を構成するラジエータパネルサイド15がサイドフレーム9を囲むように上下方向に延在し、ラジエータパネルサイド15の上側は車両外側に膨らんでいる。
【0017】
このラジエータパネルサイド15の外側には図2及び図3に示すように、ボルト16,16によって、L字状ブラケット17が取り付けられており、L字状ブラケット17の他端にはボルト16によって薄板状ブラケット18が連結されている。薄板状ブラケット18の他端にはボルト16によってホーン20が連結され、サイドフレーム9の側部付近であるとともに、クロージングプレート10に設けられたスリット13,13の近傍に配設されている。即ち、ホーン20は、クロージングプレート10とクロージングプレート10の外側に配置されるフェンダーとで形成される空間内に配置されている。
【0018】
このホーン20は、警報を発する面を後方に向けられていると共に、ホーン20の警報を発する面がスリット13,13が設けられている位置よりも車両の前方側に位置するように配置されている。クロージングプレート10に設けられたスリット13の数は自動車1が衝突した際に必要とされる剛性を考慮して定められる。
【0019】
ホーン20より警報が発せられると、警報はスリット13,13を通って、サイドフレーム9とクロージングプレート10とにより協働して形成された閉断面構造内に侵入し、閉断面構造内において反射を繰り返して前方側開口11より発せられ、車両前方方向への音圧を確保することができるようになっている。
【0020】
図4は、図3に示すホーン20のIV―IV断面図である。ホーン20には、音源となるホーンコンポーネント201とホーンコンポーネント201の音を発する側に取り付けられた共鳴部となるカーリング202が備えられている。
【0021】
ホーンコンポーネント201には、段部が形成されたケーシング203が備えられている。また、ケーシング203のカーリング202を接続する側には開口部204が開口されている。ケーシング203の底部にはソレノイド205が配置されており、ソレノイド205の中心には円柱状の固定鉄心206が固定されている。固定鉄心206の開口部204側の面付近には段部が形成された柱状の可動鉄心207が配設されている。可動鉄心207のカーリング202側の端部には開口部204を遮蔽するように、薄い平板状のダイヤフラム208が取り付けられている。
【0022】
ここで、ホーン20の鳴動する原理について説明する。
【0023】
ホーンコンポーネント201は、電源が投入されると、ケーシング203の段部付近に設けられている固定接点209と可動鉄心207と一体として移動して固定接点209と接離(ON−OFF)する可動接点210がON状態となってソレノイド205が励磁される。すると、可動鉄心207は、固定鉄心206の電磁吸引力を受けて吸引されてダイヤフラム208が可動鉄心207と共に固定鉄心206側に弾性変形する。
【0024】
次に、可動接点210が移動して接点209,210がOFF状態となってソレノイド205の励磁が解除され、ダイヤフラム208はその弾性復元力によって元姿勢に復帰し、接点209,210が再びON状態になることが繰り返され、この繰返しに基づくダイヤフラム208の振動により吹鳴する。ホーン20では、この吹鳴された音がカーリング202によって共鳴され、音圧が増幅されることになる。
【0025】
以下において、本発明に係る自動車の車体のホーン取り付け構造の作用について説明する。
【0026】
自動車1の運転者が所定の操作を行いホーン20から警報が発せられると、発せられた警報はクロージングプレート10に設けられたスリット13,13からサイドフレーム9とクロージングプレート10との協働により形成された閉断面構造内に侵入し、閉断面構造内において反響を繰り返し、前方側開口11から発せられる。
【0027】
また、フロントグリル2の隙間及びバンパー開口部3からは外気が車両内に案内され、さらに前方側開口11よりサイドフレーム9とクロージングプレート10とにより協働して形成された閉断面構造内に吹き込む。そして、外気はスリット13,13からホーン20に吹き付けられ、ホーン20、特にその内部に備えられたソレノイド205は冷却されることとなる。
【0028】
以上のように、本実施の形態に係る発明によれば、フロントグリル2やバンパー開口部3からサイドフレーム9とクロージングプレート10により形成される閉断面構造内に流入した外気をスリット13,13を通してホーン20に吹き付けることができ、音圧の低下を防止することができる。
【0029】
また、ホーン20から発せられた警報をクロージングプレート10に設けられたスリット13,13からサイドフレーム9とクロージングプレート10により形成される閉断面構造内に案内することができ車両前方方向への音圧を確保することができる。
【0030】
また、ホーン20をフェンダー内に配置することでさらにボディパネルの造形自由度の向上、軽衝突時における修理費用の低減、フロントグリル内外観向上、被水・雪害・塩害に対するホーン20の耐久性向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態に係る自動車のホーン取り付け構造を搭載した自動車の車両前側の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る自動車のホーン取り付け構造の側面図である。
【図3】本実施の形態に係る自動車のホーンのラジエータパネルサイドへの取り付け方法一例を示す正面図である。
【図4】図3に示すホーンのIV−IV断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 自動車
2 フロントグリル
3 バンパー開口部
4 ヘッドランプ
5 フォグランプ
6 構造
9 サイドフレーム
10 クロージングプレート
11 前方側開口
12 バンパーブラケット
13 スリット
14 フェンダー
15 ラジエータパネルサイド
16 ボルト
17 L字状ブラケット
18 薄板状ブラケット
20 ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延在すると共に、車両の外側が開口されている断面形状コ字状のサイドフレームと、
前記サイドフレームの前記車両の外側の開口を閉鎖するように前記サイドフレームに取り付けられた車両の前後方向に延在するクロージングプレートと、
前記サイドフレームの側部付近に配設されたホーンと、
を備える自動車のホーン取り付け構造であって、
前記クロージングプレートの前記ホーンの近傍にはスリットが設けられていることを特徴とする自動車のホーン取り付け構造。
【請求項2】
前記ホーンは、前記クロージングプレートと前記クロージングプレートの外側に配置されるフェンダーとで形成される空間内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の自動車のホーン取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−1528(P2007−1528A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186676(P2005−186676)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】