説明

自動車の下部構造

【課題】車両の通常走行時におけるサスペンションクロスメンバの支持剛性を確保しつつ、車両衝突時においては、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減して、パワーユニットのスムーズな後退を実現させ、乗員に与える衝突荷重の影響を改善することができる自動車の下部構造を提供する。
【解決手段】サスペンションクロスメンバ11に設けられた板状の後部取付面部6bの一方には、基準ピン63と、該ピン63近傍に位置するボルト孔62aとが設けられ、他方の車体1側のトンネルフレーム17には、基準ピン63が挿通される基準孔17bと、該基準孔17bの近傍に位置するボルト孔17aとが設けられ、トンネルフレーム17と後部取付面部6bとが、ボルト孔17a、62aに挿通されたボルト23Bによって締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーユニットの後方において、該パワーユニットの後退を阻害する位置で車幅方向に延設されたサスペンションクロスメンバと、該サスペンションクロスメンバを支持する板状の車体側支持部とを備えた自動車の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前面衝突時等において、車室内の乗員に与える衝突荷重の影響を抑制することを目的として、車両前部での衝突エネルギー吸収量増加を図ったものが多数提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントサイドメンバ(フロントフレーム)のサスペンションクロスメンバ取付部の下壁部において、ボルト孔の近傍に開孔を設けたものが開示されている。
【0004】
下記特許文献1では、車両の前面衝突時にボルトに所定以上の荷重が作用すると、このボルトが前記ボルト孔を拡開しながら移動して前記開孔に到達するようになっており、これによってサスペンションクロスメンバをフロントサイドメンバに対して車両後方側に大きく移動させることが可能になっている。この場合、パワーユニットのスムーズな後退がサスペンションクロスメンバによって阻害されることがないため、このパワーユニットの後退によって確実に衝突エネルギーを吸収することができる。
【0005】
また、下記特許文献2では、車体側のフロントフレームとシャシフレーム(サスペンションクロスメンバ)とを締結する締結部材としてのパイプナット上端部を車体側のプレート部材で支持させるとともに、車両の前面衝突時において所定以上の荷重が作用すると、前記プレート部材を破壊して、パイプナットとの接合を外すように構成したものが開示されている。下記特許文献2では、このような構成により、シャシフレームを車体から脱落させることを可能にしており、その結果、パワーユニットの後退がシャシフレームによって阻害されることを防止している。
【0006】
また、下記特許文献3では、フロントホイールがパワーユニットを構成するエンジンよりも前に配置された車両において、車両衝突時の衝突エネルギーによりサスペンションクロスメンバの変形を誘起させるビードを設けたものが開示されている。
【0007】
下記特許文献3では、車両の前面衝突時、サスペンションクロスメンバの変形により、サスペンションアームが車両後方に傾動してフロントホイールが後退するようになっている。このため、サイドフレームの塑性変形可能部分が増加し、結果として、衝突エネルギー吸収量の増加が図れるという利点がある。
【0008】
また、下記特許文献4では、車両の前面衝突時におけるパワーユニットの後退をサスペンションクロスメンバが阻害することを防止するものであって、車両後側がサスペンションクロスメンバに結合されていないカラーを、サスペンションクロスメンバと車体側のサイドメンバとの締結部に設けたものが開示されている。
【0009】
下記特許文献4では、車両衝突時にサスペンションクロスメンバが車両後方に変位すると、前記締結部が容易に車両後方へ回動するようになっており、これによって、締結部、つまりはサスペンションクロスメンバを車体から容易に離脱させることができるようになっている。
【0010】
また、下記特許文献5では、サブフレームを構成するサイドフレームの略中間部に屈曲促進部を設けるとともに、前記サイドフレーム中間部とサブフレームとを中間支持部材及び結合部材によって結合したものが開示されている。
【0011】
下記特許文献5では、車両の前面衝突時、パワーユニットが相対的に後方へ移動すると、前記屈曲促進部の作用により前記サイドフレームが屈曲するとともに、前記中間支持部材と前記結合手段との結合が解除され、最終的にサスペンションクロスメンバをサイドフレームから離脱させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−130827号公報
【特許文献2】特開2005−112197号公報
【特許文献3】特開平6−298121号公報
【特許文献4】特開2006−240325号公報
【特許文献5】特開2008−56191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、前記特許文献1に開示された従来技術では、パワーユニットのスムーズな後退が阻害されることがないように、車両衝突時にサスペンションクロスメンバが車両後方側へ移動できるように構成されているが、締結部の近傍に開孔を形成することで、前記締結部近傍の車両の通常走行時における剛性が低下してしまい、結果としてサスペンションクロスメンバの支持剛性を低下させる虞がある。
【0014】
また、前記特許文献1では、サスペンションクロスメンバを車体側に締結するボルトそのものの移動によって下壁部のボルト孔を拡開するようになっているが、車両衝突が発生するまでの通常状態では、ボルトは車体に対して強固に固定されているために、車両衝突発生後直ちにボルトを移動させることはできない。従って、サスペンションクロスメンバをスムーズに移動させることができないという問題がある。
【0015】
また、前記特許文献2では、サスペンションクロスメンバを車体に締結するボルトそのものの移動によってプレート部材を破壊するものであるが、前記特許文献1の場合と同様の理由により、車両衝突発生後直ちに前記プレート部材を破壊することはできず、やはりこの場合もサスペンションクロスメンバをスムーズに脱落させることができないという問題がある。
【0016】
また、前記特許文献3では、サスペンションクロスメンバと車体との連結を解除することによってパワーユニットのスムーズな後退が阻害されないようにするという発想自体がない。前記特許文献3に開示された構造のみでは、車両前部における衝突エネルギー吸収量を十分増加させることはできず、乗員に与える衝突荷重の影響を大幅に改善することはできない。
【0017】
また、前記特許文献4では、車体(サブサイドメンバ)とサスペンションクロスメンバとの締結部を車両後方へ容易に回動させることができるように、サブサイドメンバとサスペンションクロスメンバとの間に隙間が形成されている。この隙間は、車両の通常走行時における締結部近傍の剛性低下を招いてしまい、結果としてサスペンションクロスメンバの支持剛性を低下させる虞がある。
【0018】
また、前記特許文献5では、サイドフレームとサスペンションクロスメンバとを締結するためのボルトが挿通される締結孔の前部に開口が形成されている(同文献の図3参照)。この場合、車両の通常走行時におけるボルト締結部近傍の剛性低下を招いてしまい、結果としてサスペンションクロスメンバの支持剛性を低下させる虞がある。
【0019】
また、前記特許文献5では、ボルトそのものの移動によって前記中間支持部材と前記結合手段との結合を解除しているため、前記特許文献1、2の場合と同様の理由により、車両衝突発生後直ちに前記結合を解除することができず、やはりサスペンションクロスメンバをスムーズに離脱させることはできない。
【0020】
この発明は、車両の通常走行時におけるサスペンションクロスメンバの支持剛性を確保しつつ、車両衝突時においては、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減して、パワーユニットのスムーズな後退を実現させ、乗員に与える衝突荷重の影響を改善することができる自動車の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明の自動車の下部構造は、パワーユニットの後方において、該パワーユニットの後退を阻害する位置で車幅方向に延設されたサスペンションクロスメンバと、該サスペンションクロスメンバを支持する板状の車体側支持部とを備えた自動車の下部構造であって、前記車体側支持部または前記サスペンションクロスメンバに設けられた板状の被支持部の一方には、ピンと、該ピン近傍に位置するボルト孔とが設けられ、他方には、前記ピンが挿通される開孔と、該開孔近傍に位置するボルト孔とが設けられ、前記車体側支持部と前記被支持部とが、前記ボルト孔に挿通されたボルトによって締結されているものである。
【0022】
この構成によれば、通常運転時には、ピンの開孔への嵌合により、ボルト孔の周囲の支持剛性を確保できる。
一方、車両の前面衝突時には、ピンの移動によって開孔を拡開させることにより、ボルト孔の周囲の支持剛性を低下させることができ、ボルトを車体から引き抜くために必要な荷重を低く抑えることができる。このため、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減できる。
つまり、通常走行時には、車体とサスペンションクロスメンバとの締結部位におけるサスペンションクロスメンバの支持剛性を確保できる一方、車両の前面衝突時には、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減できるようにしたため、パワーユニットの後退がサスペンションクロスメンバによって阻害されることなくスムーズに行われることになり、その結果乗員に与える衝突荷重の影響をより改善できる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバには、前記サスペンションクロスメンバの後退時に、前記被支持部の前記車体側支持部に対する傾斜が増加するように変形させる為の脆弱部が前記被支持部近傍に設けられているものである。
【0024】
この構成によれば、ボルトに対するねじり荷重を増加させることができ、ボルトを車体から容易に引き抜くことができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、前記ピンが、車体に対する前記サスペンションクロスメンバ位置決め用の基準ピンとされ、前記開孔が、基準孔とされるものである。
【0026】
この構成によれば、サスペンションクロスメンバの位置合わせの際に必要となる部材と、ボルト孔の周囲の支持剛性低下を生じさせる部材とを共通化することができる。
【0027】
この発明の一実施態様においては、前記車体側支持部は、前記開孔と前記ボルト孔と固定ナットとが設けられ、前記被支持部は、前記ピンが設けられるとともに、前記車体側支持部よりも高剛性とされるものである。
【0028】
この構成によれば、高い剛性を有する被支持部側に取付けられたピンの移動により開孔を容易に拡開させることができる。ここで、仮に、車体側支持部材にピンを設けることも考えられるが、この場合、開孔の拡開を容易にするためには、前記車体側支持部材を高剛性にする必要があり、該車体側支持部材の肉厚化等によって車体の重量化を招くことが考えられる。これに対し、上述した構成によれば、車両の軽量化と、車両の前面衝突時における開孔の拡開の容易化とを両立させることができる。
【0029】
この発明の一実施態様においては、前記ボルト孔の周囲に、前記ボルトのヘッド部またはナットの座面が配設され、前記開孔が、前記ボルトのヘッド部または前記ナットの座面に対し車幅方向において10mm以下に近接ないし重なって配置されるものである。
【0030】
この構成によれば、前記座面の剛性を確実に低下させることができる。
【0031】
この発明の一実施態様においては、前記ボルト孔と前記ボルトとの隙間が、前記ピンと前記開孔との隙間よりも大きく設定されているものである。
【0032】
この構成によれば、車両の前面衝突時にサスペンションクロスメンバが後退を開始した時には、隙間によってボルト孔の縁部とボルトとの接触を回避でき、その結果先ずは開孔に応力を集中させることができる。このため、ボルトによってボルト孔を拡開させる前に、ピンによって確実に開孔を拡開させることができる。
【0033】
この発明の一実施態様においては、前記サスペンションクロスメンバが、サスペンションのアームを支持するサスペンションクロスメンバ本体と、該サスペンションクロスメンバ本体から上方に延設された縦メンバとを備え、前記被支持部は、前記サスペンションクロスメンバ本体に設けられるものである。
【0034】
この構成によれば、サスペンションのアームとピンとの間の公差発生箇所を減少させることができ、サスペンションクロスメンバの位置決め精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、通常運転時には、ピンの開孔への嵌合により、ボルト孔の周囲の支持剛性を確保できる。
一方、車両の前面衝突時には、ピンの移動によって開孔を拡開させることにより、ボルト孔の周囲の支持剛性を低下させることができ、ボルトを車体から引き抜くために必要な荷重を低く抑えることができる。このため、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減できる。
つまり、通常走行時には、車体とサスペンションクロスメンバとの締結部位におけるサスペンションクロスメンバの支持剛性を確保できる一方、車両の前面衝突時には、サスペンションクロスメンバを車体から離脱させるのに必要な荷重を低減できるようにしたため、パワーユニットの後退がサスペンションクロスメンバによって阻害されることなくスムーズに行われることになり、その結果乗員に与える衝突荷重の影響をより改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施形態に係る自動車の下部構造を示す平面図。
【図2】この発明の実施形態に係る自動車の下部構造を示す側断面図。
【図3】中間部取付部材及びその周囲を示す平面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】中間部取付部材を車両前方から見た側面図。
【図6】中間部取付部材を車両後方から見た側面図。
【図7】図6のB−B線矢視断面図。
【図8】サスクロス本体の後部取付面部及びその周囲を示す平面図。
【図9】図8のC−C線矢視断面図。
【図10】図8のD−D線矢視断面図。
【図11】サスペンションクロスメンバ本体の後部取付面部を示す平面図。
【図12】(a)車両の前面衝突発生初期における挙動を示す平面図、(b)車両の前面衝突発生後期における挙動を示す平面図。
【図13】(a)車両の前面衝突発生初期における挙動を示す側断面図、(b)車両の前面衝突発生後期における挙動を示す側断面図。
【図14】車両の前面衝突時における、サスペンションクロスメンバ本体の車体に対する変位量と荷重との関係を示すグラフ。
【図15】車両の前面衝突時における、後部取付面部6b及びその周囲の状態を示す平面図。
【図16】車両の前面衝突初期における、後部取付面部及びその周囲の状態を示す図8相当の断面図。
【図17】車両の前面衝突中期における、後部取付面部及びその周囲の状態を示す図9相当の断面図。
【図18】この発明の他の実施形態に係る中間部取付部材を示す斜視図。
【図19】図18のE−E線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本実施形態に係る自動車の下部構造を示す平面図であり、図2は同側断面図である。図1、図2に示すように、車両Vの車体1には、車室SとエンジンルームEとを前後に仕切るダッシュパネル2(図2参照)、このダッシュパネル2の前側に配設される左右一対のフロントサイドフレーム3が設けられている。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
【0038】
上述した一対のフロントサイドフレーム3の間には、エンジンルームEが形成され、エンジン4及びトランスミッション5等からなるパワーユニットP/Uが配設されている。なお、図1にて符号4aで示す部位は、エンジン4の排気系である。但し、本発明では、パワーユニットP/Uにエンジン4を備えることに必ずしも限定されず、例えば、モータや燃料電池を備えてもよい。
【0039】
車体1には、車幅方向に延設されたサスペンションクロスメンバ本体6(以下、サスクロス本体6と略記する。)、図1中二点鎖線で示す前輪Wと揺動可能に連結されるとともに、サスクロス本体6の左右両側にて揺動可能に支持された一対のサスペンションアーム7(図1参照)、車両前後方向に配設された左右一対のエンジンサポートメンバ8、一対のエンジンサポートメンバ8の前端部に架着されたフロントクロスメンバ9、及び、エンジンサポートメンバ8の前端部に固定された筒状の下側クラッシュカン10等が設けられている。
【0040】
本実施形態では、サスクロス本体6、エンジンサポートメンバ8、及びフロントクロスメンバ9により、サスペンションクロスメンバ11(以下、サスクロス11と略記する。)が構成されている。このサスクロス11は、所謂ペリメータフレームと呼ばれるものであり、少なくともパワーユニットP/Uの後方または直下に延設される。なお、図示の便宜上、図2ではサスペンションアーム7の図示は省略してある。
【0041】
また、左右一対のフロントサイドフレーム3は、図2に示すように車室Sの略前部からエンジンルームEの左部と右部とにおいて前後方向に延設されている。また、左右一対のフロントサイドフレーム3は、図1に示すように、車両Vの前端位置から後方へ向かって略水平状に延び、且つ後端側途中部がサスクロス本体6に略対応する位置において平面視で若干車幅方向内側に折曲した折曲部3aを有している。
【0042】
このフロントサイドフレーム3は、車幅方向内側のインナパネル31と、車幅方向外側のアウタパネル32とにより、フレーム自体で閉断面部を形成している。そして、フロントサイドフレーム3は、インナパネル31とアウタパネル32とにより、前端に開口部が形成されている。このフロントサイドフレーム3の先端には、筒状をなす上側クラッシュカン12の取付部13が固定され、さらに、上側クラッシュカン12の前端には、車幅方向に延設されたバンパーレインフォースメント14の左右両端部が固定されている。
【0043】
また、フロントサイドフレーム3において、アウタパネル32には、図1、図2に示すように、上下方向に延びる第1アウタビード32a、及び第2アウタビード32bが形成されている。
【0044】
第1アウタビード32aは、車幅方向内側への突出によりアウタパネル32の中間部前方に形成された凹ビードであり、車両Vの前面衝突時、第1アウタビード32aの部分が車幅方向外側に谷折れ変形可能となるように設定されている(図12参照)。これにより、アウタパネル32にて第1アウタビード32aを形成した位置には、車幅方向外側へ谷折れ変形する折れ曲り予定部T1が構成されている。
【0045】
また、図1、図2に示すように、第2アウタビード32bは、車幅方向内側への突出によりフロントサイドフレーム3の中間部後方に形成された凹ビードであり、車両Vの前面衝突時、第2アウタビード32bの部分が車幅方向外側に谷折れ変形可能となるように設定されている(図12参照)。これにより、アウタパネル32にて第2アウタビード32bを形成した位置には、車幅方向外側に谷折れ変形する折れ曲り予定部T2が構成されている。
【0046】
また、各フロントサイドフレーム3は、図2に示すように、その後部が後下がりに傾斜することによりキックアップ部3bが形成され、その後端部が車両前後方向に延設されたフロアフレーム15に接続されている。そして、このフロアフレーム15上には、フロアパネル16が接合されており、さらにこのフロアパネル16の前端縁はダッシュパネル2に連設されている。
【0047】
また、図1、図2に示すように、フロアフレーム15の車幅方向内側には、これと略平行するようにトンネルフレーム17が延設されている。このトンネルフレーム17は、その前端部が車幅方向外側に向かって折曲され、その折曲部位が、サスクロス11を構成するサスクロス本体6の左右後端部の略真上に位置している。そして、これらフロアフレーム15及びトンネルフレーム17は、いずれも断面ハット形状をなしており、フロアパネル16との間には、車両前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0048】
さらに、フロアパネル16の車幅方向の中央部には、図1に示すように車両の前後方向に延設されたトンネル部18が設けられている。このトンネル部18は、車室内に向かって上方へ突出しており、車体剛性の中心となるものである。
【0049】
また、上述のフロアパネル16の左右両サイドには、図1に示すように車両の前後方向に延びるサイドシル19を接合固定している。そして、トンネル部18の縦壁とサイドシル19との間を車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ20,20を設けている。このフロアクロスメンバ20,20は、断面ハット形状をなしており、該フロアクロスメンバ20とフロアパネル16との間には、車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0050】
ところで、上述したサスクロス11のうち、車幅方向に延びるサスクロス本体6には、左右の略中間部からそれぞれ車幅方向外側且つ上方へ延びる一対の中間部取付部材61を備えている。なお、図3は、中間部取付部材61及びその周囲を示す平面図であり、図4は、図3のA−A線矢視断面図、図5は、中間部取付部材61を車両前方から見た側面図、図6は、中間部取付部材61を車両後方から見た側面図、図7は、図6のB−B線矢視断面図である。なお、図中において矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0051】
中間部取付部材61は、図1〜図7に示すように、サスクロス本体6とは異なる別部材で構成された縦メンバであり、車両前面視または後面視において略逆L字状をなしている。そして、中間部取付部材61は、その下部が略上下方向に延設されてサスクロス本体6に接合される一方、上部の先端部は車幅方向外側に延設されて支持部61Aを構成している。この支持部61Aは、上下方向に延びるパイプ状取付部材21を支持している。
【0052】
パイプ状取付部材21には、上下に延びる中空部21aが形成されており、この中空部21aにボルト22Bが挿通されている。そして、このボルト22Bがフロントサイドフレーム3の下端面に接合されたパイプ状のウェルドナット22Nと螺合することで、サスクロス本体6や中間部取付部材61等を含むサスクロス11がパイプ状取付部材21を介してフロントサイドフレーム3の中間部に締結固定されている。
【0053】
ここで、パイプ状取付部材21は、フロントサイドフレーム3に対し、車両前後方向において第1アウタビード32aと第2アウタビード32bとの間に固定されている。
【0054】
一方、中間部取付部材61は、主に略逆L字状に形成された前側パネル部材61Bと後側パネル部材61Cとにより構成されており、両者の接合により、図4に示すように閉断面形状をなしている。
【0055】
ここで、前側パネル部材61Bは、その下端部が図3に示すように、サスクロス本体6を構成する上側パネル部材6Aに接合される一方、上部の先端部が支持部61Aの一部を構成して車幅方向外側に延びている。そして、前側パネル部材61Bの前記先端部は、パイプ状取付部材21の側面部21bに接合、固着されており、これを支持している。
【0056】
また、前側パネル部材61Bの先端部(支持部61A)には、図5に示すように、その前部と下部との間においてパイプ状取付部材21よりも車幅方向内側に延びる切欠き部61aが形成されるとともに、上部には、切欠き部61aの形成によって相対的に車幅方向外側に突出した接合片61bが形成されている。
【0057】
この接合片61bは、図3、図5に示すように、所定の接合部位P1(図3、図5にて網掛けで示す)でパイプ状取付部材21の側面部21bの前部に接合、固着されており、これを支持している。
【0058】
また、前側パネル部材61Bの先端部の上縁部は、図3に示すように、パイプ状取付部材21の形状に合わせて略円弧状に形成されている。そして、この円弧状の上縁部は、図3に示す所定の接合部位P2でパイプ状取付部材21の側面部21bの車幅方向内側部に接合、固着されており、これを支持している。
【0059】
また、図4、図5、図7に示すように、前側パネル部材61Bの先端部には、その下部において前側、後側パネル部材61B、61Cとは異なる別部材で構成された下部支持部材61Dが取付けられている。この下部支持部材61Dは、その車幅方向内側に接合フランジ61cが形成されており、これが前側パネル部材61Bの側面に接合されている。
【0060】
下部支持部材61Dの先端部は、接合フランジ61cから車幅方向外側に延び、前側パネル部材61Bの側面から車幅方向に突設されている。そして、下部支持部材61Dの先端部は、水平に広がる平板状とされ、そこには、パイプ状取付部材21の下部21cが載置されている。下部支持部材61Dは、その先端部でボルト22B、ウェルドナット22Nによりパイプ状取付部材21の下部21cに共締めされるのみとされ、両者は溶接による接合がなされていない所謂非固着の状態となっている。
【0061】
一方、後側パネル部材61Cは、その下端部が、図3に示すように上側パネル部材6Aに接合される一方、上部の先端部が支持部61Aの一部を構成して車幅方向外側に延びている。そして、後側パネル部材61Cの前記先端部は、パイプ状取付部材21の側面部21bに接合、固着されており、これを支持している。
【0062】
また、後側パネル部材61Cの先端部(支持部61A)には、図6に示すようにその後部と下部との間においてパイプ状取付部材21よりも車幅方向内側に延びる切欠き部61d、61eが形成されるとともに、中間部には、切欠き部61d、61eの形成によって相対的に車幅方向外側に突出した接合片61fが形成されている。
【0063】
この接合片61fは、図3、図6に示すように、所定の接合部位P3(図3、図6にて網掛けで示す)でパイプ状取付部材21の側面部21bの後部に接合、固着されており、これに支持されている。
【0064】
ここで、前側パネル部材61Bと後側パネル部材61Cとは、後側パネル部材61Cの切欠き部61dから車幅方向内側に離間した所定の接合部位P4(図3、図6にて網掛けで示す。)で接合されている。一方、前側、後側パネル部材61B、61Cの上部は、図3、図6に示すように、パイプ状取付部材21の近傍に、所定距離非接合部位P5を有している。
【0065】
また、前側、後側パネル部材61B、61Cに形成された接合片61b、61fについて見てみると、図3に示すように、接合片61bの先端部の位置が他方の接合片61fの先端部よりも車幅方向外側に設定されている。
【0066】
さらに、図7に示すように、接合片61fの下端部の位置が、他方の接合片61bの下端部よりも上方に設定されており、これによって、支持部61Aにより側面部21bの後部が支持されている接合部位P3の下端部が、支持部61Aにより側面部21bの前部が支持されている接合部位P1の下端部よりも上方に位置している。
【0067】
このように、パイプ状取付部材21の側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部が、それぞれ前側パネル部材61Bの接合片21b、前側パネル部材61Bの先端部の上縁部、及び後側パネル部材61Cの接合片21fに接合される一方、パイプ状取付部材21の下部21cが非固着の状態で下部支持部材61Dの先端部と共締めされることにより、パイプ状取付部材21の下部21cが、側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部よりも車両前後方向において低い支持剛性で支持されている。なお、図中符号61gで示す部位は、ボルト22Bを挿通させるべく下部支持部材61Dに形成された挿通孔である。
【0068】
次に、図8〜図11をさらに参照して、サスクロス本体6の構成、及びその取付構造について詳細に説明する。ここで、図8は、サスクロス本体6の後部取付面部6b及びその周囲を示す平面図であり、図9は、図8のC−C線矢視断面図、図10は、図8のD−D線矢視断面図、図11は、サスクロス本体6の後部取付面部6bを示す平面図である。サスクロス本体6は、図1、図2、及び図8〜図11に示すように、左右の前端部に設けられた一対のエンジンサポート取付部6aと、左右の後端部に形成された一対の後部取付面部6bとを備えている。
【0069】
また、サスクロス本体6は、図9、図10に示すように、板状の上側パネル部材6Aと下側パネル部材6Bとにより構成されており、両者の接合により、閉断面形状をなしている。
【0070】
ここで、サスクロス本体6の後部取付面部6bは、上側、下側パネル部材6A、6Bにより板状に構成され、ボルト23Bが、トンネルフレーム17の下端面に接合されたパイプ状のウェルドナット23Nと螺合することで、トンネルフレーム17の前記折曲部位の下端面に締結固定されている。このため、サスクロス11は、その後端部がトンネルフレーム17によって車体1に支持されている。
【0071】
トンネルフレーム17は、図9、図10に示すように、その前部において両端部はダッシュパネル2に接合されることにより、該ダッシュパネル2との間に閉断面を形成している。ここで、本実施形態では、トンネルフレーム17よりも後部取付面部6bが高剛性に設定されている。
【0072】
また、トンネルフレーム17とダッシュパネル2との間の閉断面内には、トンネルフレーム17と同様断面略ハット形状をなし、該トンネルフレーム17よりも高剛性に設定された第1レインフォースメント24と、該第1レインフォースメント24の下面部から上方に向かって立設された第2レインフォースメント25(図9参照)とが配設されている。
【0073】
ここで、トンネルフレーム17及び第1レインフォースメント24には、ボルト孔17a、挿通孔24aが穿設されており、ボルト孔17aにはボルト23Bが挿通される一方、挿通孔24aには、ウェルドナット23Nが挿通されている。このウェルドナット23Nは、トンネルフレーム17の下端面、及び第1レインフォースメント24の挿通孔24aによって所定位置に固定されている。
【0074】
一方、後部取付面部6bには、図8、図9、図11に示すように、前記閉断面内において、上下に延びるボルト孔62aが形成されたカラー部材62が固定されている。このカラー部材62には、ボルト23Bが挿通されるようになっているが、ボルト孔62aの孔径は、ボルト23Bの径よりも大きく設定されており、カラー部材62とボルト23Bとの間には隙間Gが形成されている。
【0075】
また、後部取付面部6bには、ボルト孔62aと略車幅方向に並んだ位置に基準ピン63が取付けられている。この基準ピン63は、上述したように、ボルト孔62aと略車幅方向に並んだ位置にあるものの、若干前方にずれている。また、基準ピン63は、その先端部が略円錐状をなして上方に突出しており、トンネルフレーム17側を指向している。その一方で、トンネルフレーム17及び第1レインフォースメント24には、図10に示すように、この基準ピン63と対応する位置に基準孔17b及び開孔24bが穿設されている。
【0076】
これら基準孔17b及び開孔24bのうち、基準孔17bは、その孔径が基準ピン63の径と略同じに設定され、通常時には略隙間なく基準ピン63と嵌合するようになっている。従って、本実施形態では、カラー部材62とボルト23Bとの隙間Gが、基準孔17bと基準ピン63との隙間よりも大きく設定されている。
【0077】
ここで、基準ピン63及び基準孔17bは、車体1に対するサスクロス11の位置決め用の基準ピン、基準孔として利用される。具体的には、サスクロス11を車体1に取付ける作業を行う際、基準ピン63を車体1側のトンネルフレーム17の基準孔17bに嵌合させることにより、後部取付面部6bの車体1に対する位置決めを行うことができ、ひいてはサスクロス11の車体1に対する位置決めを適切に行うことができるようになっている。
【0078】
また、本実施形態では、トンネルフレーム17においてボルト孔17aの周囲にウェルドナット23Nの座面が配置されており、該座面が基準孔17bと車幅方向において10mm以下に近接ないしは重なって配設されている(図11の距離δ参照。)。
【0079】
ところで、上述した基準ピン63を用いてサスクロス11の位置決めを行う以外に、例えば、サスクロス11を車体1に締結固定するためのボルトを利用して位置決めを行うことが考えられる。しかしながら、サスクロス11は、例えば、サスクロス本体6のように、上下のパネル部材によって上下方向にある程度の幅を持って形成されているために、ボルトの上端をサスクロス11から突出させてその突出部を基準ピンの代わりとして利用してようとすると、長尺なボルトが必要になる。従って、この場合、ボルトの長尺化によって製造コストの増大や車両の重量化を招くことになる。
【0080】
また、近年では、サスクロス締結用のボルト、ナットとしてテーパ部を有するものを使用し、両テーパ部同士の嵌合によってサスクロスの位置決めを行うこともある。しかしながら、テーパ部を有するボルト、ナットは世界的な規格とはなっておらず、特注品とされているのが現状である。この場合、部品調達が困難であり、大量生産に向かないという問題がある。
【0081】
また、基準ピン63に相当するものを、後部取付面部6b以外の、例えば、中間部取付部材61に設けることも考えられる。しかしながら、この場合、互いに異なる部材である中間部取付部材61とサスクロス本体6とを接合した時に公差が生じると、フロントサイドフレーム3(車体1)と中間部取付部材61との位置決めを基準ピンによって適切に行ったとしても、前記公差によって車体1に対するサスクロス本体6との位置決めが適切になされないことになる。従って、この場合、精度の高い位置決めが困難になるという問題がある。
【0082】
このような理由から、本実施形態では、サスクロス本体6の後端部に基準ピン63を設けることとし、基準ピン63を車体1側のトンネルフレーム17の基準孔17bに嵌合させることにより、後部取付面部6bの車体1に対する位置決めを可能にし、サスクロス11の車体1に対する位置決めを適切に行えるようにしている。
【0083】
また、後部取付面部6bの近傍には、図1、図2、及び図9〜図11に示すように、車幅方向に横切るようにビード6cが形成されている。このビード6cは、上側パネル部材6Aの上面部の一部を下方に突出させることにより形成された凹ビードである。
【0084】
また、このビード6cは、基準ピン63とボルト孔17aとを結ぶ線に対して前方に略平行に設けられるものの、基準ピン63の近傍には傾斜部6c1を有しており、その延び方向が車両前後方向に傾斜するように折曲されている。
【0085】
次に、図12、図13をさらに参照して車両Vの前面衝突時における挙動について詳細に説明する。図12(a)は、車両Vの前面衝突発生初期における挙動を示す平面図であり、図12(b)は、車両Vの前面衝突発生後期における挙動を示す平面図である。また、図13(a)は、車両Vの前面衝突発生初期における挙動を示す側断面図であり、図13(b)は、車両Vの前面衝突発生後期における挙動を示す側断面図である。なお、図12、図13では、図示の便宜上、サスペンションアーム7の図示は省略してある。
【0086】
先ず、車両Vの前面衝突発生初期においては、図12(a)、図13(a)に示すように、フロントサイドフレーム3の前端部に設けられた上側、下側のクラッシュカン10、12が衝突荷重によって潰れる。このクラッシュカン10、12の潰れ変形によっても吸収されない衝突荷重は、フロントサイドフレーム3の前端部から入力され、後方に向かって伝搬する。
【0087】
図12(a)に示すように、フロントサイドフレーム3の前端部に入力された衝突荷重は、前部領域を潰れ変形させ、この潰れ変形とほぼ同時に、折れ曲り予定部T1、折れ曲り予定部T2、及び両折れ曲り予定部T1、T2間の中間部を折り曲げる。
【0088】
この時、第1、第2アウタビード32a、32bが凹ビードであることにより、各折れ曲り予定部T1、T2は車幅方向外側に谷折れ変形し、他方、前記中間部は、図12に示すように、車幅方向外側に山折れ変形する。
【0089】
衝突がさらに進行すると、図12に示すように、第1、第2アウタビード32a、32bとをそれぞれ折れ曲がりの節として、フロントサイドフレーム3は、前記中間部が車幅方向外側へ大きく移動して、平面視で車体前後方向にジグザグ状に座屈状態に変形する。このようなフロントサイドフレーム3のジグザグ状の座屈変形を介して、大きな衝突エネルギーを吸収できるため、ダッシュパネル2の後退を確実に抑制し、車室空間を衝突前と同様に維持することができる。
【0090】
また、上述したようにフロントサイドフレーム3に座屈変形が発生すると、中間部取付部材61の周囲では、フロントサイドフレーム3の前部が車外側へ変位するような変形が生じる。これにより、中間部取付部材61の周囲では、パイプ状取付部材21において、図3及び図7にて太矢印αで示すような引張荷重が作用する。この引張荷重は、平面視では、図3に示すように、車外側且つ前方に向かって斜めに作用し、側面視では、図7に示すように、前方且つ上方に向かって斜めに作用する。このような引張荷重により、パイプ状取付部材21には三次元的なねじれが発生する。
【0091】
この時、支持部61Aの下部の後部において、切欠き部61eが形成されていることで、パイプ状取付部材21は、その下部21cが後方且つ車幅方向内側に変位することが可能になり、その結果パイプ状取付部材21のねじれが許容される。
【0092】
図14は、車両Vの前面衝突時における、サスクロス本体6の車体1に対する変位量Xと荷重との関係を示すグラフである。上述したような斜めの引張荷重がパイプ状取付部材21に作用して、これに三次元的なねじれが発生すると、支持部61Aにおいて、パイプ状取付部材21の下部21cが側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部よりも低い支持剛性で支持されていることにより、先ずはパイプ状取付部材21と支持部61Aの上部との接合部位P2(図3参照)に応力が集中する。そして、側面部21bの車幅方向内側部と支持部61Aとの接合が外れる(図14に示す変位量X1)。
【0093】
次に、後側パネル部材61Cの接合片61fにおける接合部位P3(図3、図6参照)が、前側パネル部材61Bの接合片61bにおける接合部位P1(図3、図5参照)よりも小さことに起因して、側面部21bの後部と接合片61f(支持部61Aの後部)との接合が外れる(図14に示す変位量X2)。
【0094】
そして、その後側面部21bの前部と前側パネル部材61Bの接合片61bとの接合部位P1に応力が集中し、側面部21bの前部と接合片61b(支持部61Aの前部)との接合が外れる(図14に示す変位量X3〜X4)。
【0095】
最後に、パイプ状取付部材21の下部21cを非固着で支持している下部支持部材61Dの接合フランジ61cと前側パネル部材61Bとの接合部に応力が集中し(図14に示す変位量X4〜X5)両者の接合が外れる。これにより、下部支持部材61D(支持部61Aの下部)による下部21cの支持状態が解除され、サスクロス本体6、つまりはサスクロス11の車両前後方向中間部が車体1から離脱することになる。
【0096】
このように、パイプ状取付部材21が前記引張荷重を受けた時、上述したように、パイプ状取付部材21の側面部21bの車幅方向内側部、前部、後部、下部の順番でタイミングをずらして支持状態を解除することにより、これらの各部位の支持状態を同時に解除する場合(図14にて二点鎖線で示すグラフ参照)に比べ、必要とされる荷重のピーク値を低く抑えることができる。
【0097】
また、図12(a)、図13(a)に示す車両Vの前面衝突発生初期においては、衝突荷重の作用により、サスクロス11の前部が後退を開始する。
【0098】
この時、サスクロス11の後方への移動に伴い、後部取付面部6bでは、ボルト23Bや基準ピン63が車両後方に押圧されるが、本実施形態では、ボルト23Bとカラー部材62との間に隙間Gが形成されていることにより、図15に示すように、カラー部材62を含む後部取付面部6bが車両後方に移動可能となる。
【0099】
このため、基準ピン63は、図15に示すようにトンネルフレーム17の基準17bを拡開しながら後方に移動することができる。その後基準ピン63が後方へ移動すると、図16に示すように、ボルト23Bとカラー部材62の前部とが接触する。なお、図15は、車両Vの前面衝突初期における、後部取付面部6b及びその周囲の状態を示す図8相当の平面図であり、図16は、車両の前面衝突初期における、後部取付面部6b及びその周囲の状態を示す図9相当の断面図である。
【0100】
このようにして基準ピン63が基準孔17bを拡開すると、トンネルフレーム17では、基準孔17bの近傍に位置するボルト孔17aの周囲の支持剛性が著しく低下することとなる。
【0101】
この時、車体1側において、トンネルフレーム17よりもレインフォースメント24が高い剛性を有していることにより、ボルト23Bには、その下端部を上方かつ後方へ変位させる方向に回転モーメントが発生する。
【0102】
また、上述したビード6cは、車幅方向に延びていることで、サスクロス11の後退に伴い荷重を受けると、他の部位よりも脆弱な脆弱部となる。従って、サスクロス11の後退時には、図17に示すように、車幅方向に形成されたビード6cを折り目にして折れ曲がり、トンネルフレーム17に対する傾斜が増加していく。そして、ボルト23B、ウェルドナット23Nは、その下端部が後方かつ上方に向かうように回動し始める。なお、図17は、車両の前面衝突中期における、後部取付面部6b及びその周囲の状態を示す図9相当の断面図である。
【0103】
そして、さらに衝突荷重が加わり、上述したような後部取付面部6bの傾斜、及びボルト23B、ウェルドナット23Nの回動が進行すると、後部取付面部6bの後端部とトンネルフレーム17との接触部が支点となり、ボルト23B及びウェルドナット23Nを、所謂てこの原理によって下方且つ後方に引き抜こうとするねじり荷重が発生する。
【0104】
この時、ボルト孔17aの周囲では、既に基準ピン63がトンネルフレーム17の基準孔17bを拡開していることによって支持剛性が低下しているため、上述したねじり荷重が作用すると、ボルト孔17aは大きく変形、拡開することとなる。このため、車両Vの前面衝突発生後期においては、ボルト23B、ウェルドナット23Nがボルト孔17aをすり抜けるか、あるいはボルト孔17aの周囲が千切れて、図12(b)、図13(b)に示すように、トンネルフレーム17から離脱する。
【0105】
これにより、後部取付面部6b、つまりはサスクロス11の後部が車体1から離脱することになり、最終的には、サスクロス11が車体1から完全に離脱する。
【0106】
このように、本実施形態では、サスクロス11の中間部において、パイプ状取付部材21の側面部21bの前部、後部及び車幅方向内側部が、中間部取付部材61の支持部61Aに支持されることで、通常走行時におけるサスクロス11の車幅方向の支持剛性を確保できる。
【0107】
一方、パイプ状取付部材21の下部21cを、側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部よりも低い支持剛性で支持することで、車両Vの前面衝突時に発生するパイプ状取付部材21のねじれを許容してパイプ状取付部材21からの中間部取付部材61の離脱を促進させることができる。
【0108】
さらに、この場合、側面部21b、下部21cの支持状態を解除するタイミングをずらすことができるため、側面部21b、下部21cの支持状態を同時に解除する場合に比べ、必要とされる荷重を低く抑えることができる。このため、中間部取付部材61のパイプ状取付部材21からの離脱を容易にすることができる。
【0109】
つまり、通常走行時には、車幅方向におけるサスクロス11の車幅方向の支持剛性を確保できる一方、車両Vの前面衝突時には、中間部取付部材61をパイプ状取付部材21から容易に離脱させることを可能にしたため、パワーユニットP/Uの後退がサスクロス11によって阻害されることなくスムーズに行われることになり、その結果乗員に与える衝突荷重の影響をより改善することができる。
【0110】
また、中間部取付部材61が、前側、後側パネル部材61B、61Cを所定部位(図3の接合部位P4参照)で接合して閉断面形状に構成されるとともに、その上部の支持部61Aが車幅方向に延設されるように構成されることで、支持部61Aにおけるサスクロス11の車幅方向の支持剛性を向上させることができる。そして、前側、後側パネル部材61B、61Cの接合部位(接合部位P4)の範囲を適宜調整することで、車両Vの前面衝突時にパイプ状取付部材21で発生するねじれに対する剛性を容易に調整することができる。
【0111】
また、このように前側、後側パネル部材61B、61Cにより中間部取付部材61を構成した場合において、この中間部取付部材61bが、前側、後側パネル部材61B、61Cの上部の接合部位P4の近傍に非接合部位P5を有することで、パイプ状取付部材21におけるねじり剛性をより低下させることができる。
【0112】
また、パイプ状取付部材21の側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部が、接合によって支持部61Aに接合される一方、パイプ状取付部材21の下部21cが、非固着の状態で下部支持部材61Dの先端部と共締めされることにより、パイプ状取付部材21の下部21cにおける支持剛性を容易に低く設定することができる。
【0113】
また、図7に示すように、後側パネル部材61Cの接合片61fとパイプ状取付部材21との接合部位P3の下端部が、前側パネル部材61Bの接合片61bとパイプ状取付部材21との接合部位P1の下端部よりも上方に位置していることで、車両Vの前面衝突時において、下部21cが後方へ移動することを許容でき、パイプ状取付部材21をさらにねじれ易くすることができる。
【0114】
また、フロントサイドフレーム3において折れ曲り予定部T1、T2を形成して、車両Vの前面衝突時、その車両前後方向中間部を車幅方向外側に折り曲げるように構成することで、車両Vの前面衝突時の衝突荷重をフロントサイドフレーム3の折れ曲がりによって確実に吸収することができる。
【0115】
そして、この場合、パイプ状取付部材21の上部には、車両前方且つ車幅方向外側に斜めの荷重が加わることになるが、本実施形態のように、支持部61Aの後部と下部との間に車幅方向内側に延びる切欠き部61eを形成したことで、前記車両前方且つ車幅方向外側の斜めの荷重を受けた時のねじれ剛性を低下させることができる。
【0116】
また、支持部61Aの下部を、前側、後側パネル部材61B、61Cとは異なる別部材の下部支持部材61Dで構成したことにより、成形時におけるプレス加工が容易になる。そして、この下部支持部材61Dを車幅方向に延びるように構成することで、車幅方向における剛性を高める一方で、車両前後方向における剛性を低く設定することができる。
【0117】
また、サスクロス11の後部において、基準ピン63と、該基準ピン63が挿通される基準孔17bを穿設するとともに、サスクロス本体6をトンネルフレーム17に締結固定するためのボルト孔17a、62aを基準孔17bの近傍に設けたことで、通常運転時には、基準ピン63の基準孔17bへの嵌合により、ボルト孔17aの周囲の支持剛性を確保できる。
【0118】
一方、車両Vの前面衝突時には、基準ピン63の移動によって基準孔17bを拡開させることにより、ボルト孔17aの周囲の支持剛性を低下させることができ、ボルト23B及びウェルドナット23Nを車体1から引き抜くために必要な荷重を低く抑えることができる。このため、サスクロス11をトンネルフレーム17(車体1)から離脱させるのに必要な荷重を低減できる。
【0119】
つまり、通常走行時には、車体1とサスクロス11との締結部位におけるサスクロス11の支持剛性を確保できる一方、車両Vの前面衝突時には、サスクロス11を車体1から離脱させるのに必要な荷重を低減できるようにしたため、パワーユニットP/Uの後退がサスクロス11によって阻害されることなくスムーズに行われることになり、その結果乗員に与える衝突荷重の影響をより改善できる。
【0120】
また、サスクロス11の後退時にトンネルフレーム17に対する後部取付面部6bの傾斜角が増加するようにサスクロス11を変形させるためのビード6cを後部取付面部6bの近傍に設けたことで、ボルト23B、ウェルドナット23Nに対するねじり荷重を増加させることができる。これにより、ボルト23B、ウェルドナット23Nを車体1から容易に引き抜くことができる。
【0121】
また、ビード6cが、基準ピン63の近傍において車両前後方向、つまりは車両Vの前面衝突時において荷重が作用する方向に傾斜する傾斜部6c1を有していることで、基準ピン63の根元周辺では、前記荷重に対する強度が向上することになり、基準ピン63の移動による基準孔17bの拡開動作を安定的に行うことができる。
【0122】
ここで、ビード6cの形成についてさらに詳述すると、実際には、このビード6cを、基準ピン63と挿通孔24aとを結ぶ線に対して前方に略平行に設けることとし、より好ましくは基準ピン63よりもボルト23Bの近傍に偏るように傾斜させる。これにより、車両Vの前面衝突時には、基準ピン63の根元周辺の変形とビード6cとの協働で剛性を低下させることができ、通常走行時の剛性確保と、後部取付面部6bの曲がり易さとを両立させることができる。
【0123】
ところで、前記特許文献5(特開2008−56191号公報)では、車両の前面衝突時、パワーユニットが相対的に後方へ移動すると、前記屈曲促進部の作用により前記サイドフレームが屈曲して、中間支持部材と結合手段との結合が解除されるようにしたものが開示されているが、この従来技術では、前記サイドフレームの屈曲部が後端部から大きく前方に離間した中間部に設定されている。この場合、サスクロス後部を車体から離間させ、両者の結合を解除しようとすると、前記サイドフレームにおいて大きな変形ストロークが必要となる。
【0124】
これに対し、本実施形態では、ビード6cを後部取付面部6bの近傍に設けているため、後部取付面部6bの変形ストロークが小さくても、ボルト23B、ウェルドナット23Nを車体1から引き抜くことができる。
【0125】
また、前記特許文献4(特開2006−240325号公報)では、車両の前面衝突時におけるパワーユニットの後退をサスクロスが阻害することがないように、車両後側がサスクロスに結合されていないカラーをサスクロスと車体側のサイドメンバとの締結部に設けたものが開示されているが、この従来技術では、サイドメンバとの締結部よりも後方にサスクロスの後端部が存在しない構成となっている。この場合、サスクロス後端部とサイドメンバとの接触で形成されるべき支点が形成できないことになるため、サスクロスの折り曲げが十分に促進されず、ボルト、ナットを車体から確実に引き抜けない虞がある。
【0126】
これに対し、本実施形態では、図17に示すように、後部取付面部6bが傾斜すると、該後部取付面部6bの後端部とトンネルフレーム17との接触部が支点となって、ボルト23B及びウェルドナット23Nを下方且つ後方に引き抜こうとするねじり荷重を発生させることができる。
【0127】
また、基準ピン63及び基準孔17bを、それぞれ車体1に対するサスクロス本体6の位置決め用の基準ピン、基準孔とすることで、サスクロス11の位置合わせの際に必要となる部材と、ボルト孔17aの周囲の剛性低下を生じさせる部材とを共通化することができる。
【0128】
また、基準ピン63を中間部取付部材61ではなく、サスクロス本体6に設けたことで、サスペンションアーム7と基準ピン63との間の公差発生箇所を減少させることができ、サスクロス11の位置決め精度を向上させることができる。
【0129】
また、本実施形態では、サスクロス本体6を構成する板状の上側パネル部材6A(後部取付面部6b)に基準ピン63を設ける一方、車体側の板状のトンネルフレーム17には、基準ピン63が挿通される基準孔17bを穿設し、サスクロス本体6の後部取付面部6b(上側パネル部材6A)の剛性を車体1側のトンネルフレーム17よりも高く設定している。この場合、高い剛性を有する後部取付面部6b側に取付けられた基準ピン63の移動により基準孔17bを容易に拡開させることができる。
【0130】
ここで、本発明では、逆にトンネルフレーム17に基準ピン63を設け、サスクロス本体6に基準孔17bを穿設してもよい。この場合、ボルト孔17aの周囲にはボルト23Bのヘッド部が配置されることになるが、このボルト23Bのヘッド部と基準孔17bとは車幅方向において10mm以下に近接ないしは重なって配設されるのが好ましい。
【0131】
但し、このような構成を実際に採用すると、基準孔17bの拡開を容易にするためには、トンネルフレーム17等の車体パネルを高剛性にする必要があり、該車体パネルの肉厚化等によって車体1の重量化を招くことが考えられる。これに対し、本実施形態では、後部取付面部6b側を高剛性にすることで、車両Vの軽量化と、車両Vの前面衝突時における基準孔17bの拡開の容易化とを両立させることを可能にしている。
【0132】
また、ボルト孔17aの周囲にボルト23Bのヘッド部またはウェルドナット23Nの座面が配置される構成とし、基準孔17bを前記ヘッド部または前記座面に対し、車幅方向において10mm以下に近接ないしは重ねて配置することにより、前記座面の剛性を確実に低下させることができる。
【0133】
また、カラー部材62のボルト孔62aとボルト23Bとの隙間Gが、基準ピン63と基準孔17bとの間の隙間よりも大きく設定されていることにより、車両Vの前面衝突時にサスクロス11が後退を開始した時には、隙間Gによってカラー部材62とボルト23Bとの接触を回避でき、その結果先ずは基準孔17bに応力を集中させることができる。このため、ボルト23Bによってボルト孔17aを拡開させる前に、基準ピン63によって確実に基準孔17bを拡開させることができる。
【0134】
また、基準ピン63とボルト23Bとを後部取付面部6bにおいて略車幅方向に並べて設けているため、先ずボルト孔17aの周囲の剛性を基準ピン63の移動によって低下させてから、ボルト23Bとカラー部材62との接触後、基準ピン63とボルト23Bとの協働によって、後部取付面部6bの曲げモーメントを増加させることができる。このため、後部取付面部6bでは、基準孔17bの拡開に必要な強度を確保できる一方で、折れ曲がり易さを向上させることができる。
【0135】
なお、中間部取付部材61は、サスクロス本体6から上方に急激(45°以上)に傾斜させる形状となるよう一体的に形成してもよいし、上述したようにサスクロス本体6とは別部材で構成してもよい。これにより、車室フロアの低床化とバンパ高さの確保とを両立させることができる。
【0136】
この場合、車体1とサスクロス11との間において公差が発生しやすくなるが、上述した実施形態のように、サスクロス11の後端部の後部取付面部6bに基準ピン63を設けることで上述した公差を低減することができる。
【0137】
また、上述した実施形態では、前側、後側パネル部材61B、61Cによって中間部取付部材61を形成したが、上側、下側パネルによってこれを形成してもよい。
【0138】
また、上述した実施形態では、中間部取付部材61において、パイプ状取付部材21の下部21cを支持する部位を前側パネル部材61B、後側パネル部材61Cとは異なる別部材で構成したが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、図18、図19に示す中間部取付部材71のように、下部支持部材61Dに相当する下部支持部71hを後側パネル71Cに一体成形してもよい。なお、図18は、本発明の他の実施形態に係る中間部取付部材71を示す斜視図であり、図19は、図18のE−E線矢視断面図である。また、図18、図19において、図1〜図17に示す最初の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0139】
中間部取付部材71は、前側、後側パネル部材61B、61Cと同様、略逆L字状に形成された前側パネル部材71Bと後側パネル部材71Cとにより構成された縦メンバであり、両者の接合により、図19に示すように閉断面形状をなしている。
【0140】
ここで、前側パネル部材71Bは、上部の先端部(ここでは不図示)が支持部71Aの一部を構成して車幅方向外側に延びている。そして、この先端部は、パイプ状取付部材21の側面部21bに接合、固着され、これを支持している。
【0141】
一方、後側パネル部材71Cの先端部(支持部71A)には、その後部と下部との間において、パイプ状取付部材21よりも車幅方向内側に延びる切欠き部71eが形成されるとともに、中間部には、切欠き部71eの形成によって相対的に車幅方向外側に突出した接合片71fが形成されている。この接合片71fは、パイプ状取付部材21の側面部21bの後部に接合、固着され、これを支持している。
【0142】
また、この後側パネル部材71Cの先端部の下部には、切欠き部71eに連続して下部支持部71hが一体成形されている。
【0143】
この下部支持部71hは、切欠き部71eから車幅方向外側に延び、その先端部が水平に広がる平板状とされている。そして、下部支持部71hの先端部には、パイプ状取付部材21の下部21cが載置されている。下部支持部71hは、その先端部で、ボルト22B、ウェルドナット22Nによってパイプ状取付部材21の下部21cに共締めされ、両者は溶接による接合がなされていない非固着の状態となっている。なお、図中符号71gで示す部位は、ボルト22Bを挿通させるための挿通孔である。
【0144】
このように、後側パネル部材71Cに一体形成された下部支持部71hとパイプ状取付部材21の下部21cとが非固着の状態で共締めされる構成であっても、パイプ状取付部材21の下部21cを、側面部21bの車幅方向内側部、前部、及び後部よりも低い支持剛性で支持することができる。
【0145】
なお、その他の作用効果は、上述した最初の実施形態と同様である。
【0146】
また、図18、図19に示す本実施形態では、下部支持部71hを後側パネル71Cに形成したが、前側パネル部材71Bに形成してもよい。
【0147】
また、上述した実施形態では、サスクロス11としてペリメータフレームを採用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、略H型形状のサスクロスであってもよい。
【0148】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、車体側支持部は、トンネルフレーム17に対応し、
以下同様に、
被支持部は、後部取付面部6bに対応し、
脆弱部は、ビード6cに対応し、
縦メンバは、中間部取付部材61、71に対応し、
固定ナットは、ウェルドナット23Nに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0149】
6…サスペンションクロスメンバ本体
6b…後部取付面部
6c…ビード
11…サスペンションクロスメンバ
17…トンネルフレーム
17a、62a…ボルト孔
17b…基準孔
23B…ボルト
23N…ウェルドナット
61、71…中間部取付部材
63…基準ピン
P/U…パワーユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニットの後方において、該パワーユニットの後退を阻害する位置で車幅方向に延設されたサスペンションクロスメンバと、
該サスペンションクロスメンバを支持する板状の車体側支持部とを備えた自動車の下部構造であって、
前記車体側支持部または前記サスペンションクロスメンバに設けられた板状の被支持部の一方には、ピンと、該ピン近傍に位置するボルト孔とが設けられ、
他方には、前記ピンが挿通される開孔と、該開孔近傍に位置するボルト孔とが設けられ、
前記車体側支持部と前記被支持部とが、前記ボルト孔に挿通されたボルトによって締結されている
自動車の下部構造。
【請求項2】
前記サスペンションクロスメンバには、前記サスペンションクロスメンバの後退時に、前記被支持部の前記車体側支持部に対する傾斜が増加するように変形させる為の脆弱部が前記被支持部近傍に設けられている
請求項1記載の自動車の下部構造。
【請求項3】
前記ピンは、車体に対する前記サスペンションクロスメンバ位置決め用の基準ピンであり、前記開孔は、基準孔である
請求項1または2記載の自動車の下部構造。
【請求項4】
前記車体側支持部は、前記開孔と前記ボルト孔と固定ナットとが設けられ、
前記被支持部は、前記ピンが設けられるとともに、前記車体側支持部よりも高剛性である
請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車の下部構造。
【請求項5】
前記ボルト孔の周囲には、前記ボルトのヘッド部またはナットの座面が配設され、
前記開孔が、前記ボルトのヘッド部または前記ナットの座面に対し車幅方向において10mm以下に近接ないし重なって配置される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車の下部構造。
【請求項6】
前記ボルト孔と前記ボルトとの隙間が、前記ピンと前記開孔との隙間よりも大きく設定されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車の下部構造。
【請求項7】
前記サスペンションクロスメンバは、サスペンションのアームを支持するサスペンションクロスメンバ本体と、
該サスペンションクロスメンバ本体から上方に延設された縦メンバとを備え、
前記被支持部は、前記サスペンションクロスメンバ本体に設けられる
請求項3記載の自動車の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−162158(P2011−162158A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30322(P2010−30322)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】