説明

自動車の乗員室用の空調装置

本発明は、乗員室が後部領域を包含する自動車の乗員室(10)用の空調装置に関する。前記空調装置は、後部領域(15)に至り、事前設定可能な温度の空気が供給される少なくとも1本の空気ダクト(18)と、後部領域に配置され、空気ダクトに接続された少なくとも1つの空気吹き出し装置(20、21)とを具備する。本発明の目的は、後部領域の空調の構成を簡単にすると共に、製造費用を低減し、後部領域(15)の環境快適性を維持することである。これを達成するために、分岐部が空気ダクト(18)とつながり、前記分岐部は、後部領域に配置された第2の空気吹き出し装置によって塞がれ、2つの空気吹き出し装置(20、21)間の空気ダクト内の空気量の流れを分配する配風要素(22)が、分岐点に配置される。前記配風要素は、空気量の流れの分配が空調装置の運転モードである冷房及び暖房に依存するように具体化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による、乗員室が後部領域を有する自動車の乗員室用の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の良く知られている暖房及び空調装置(特許文献1)では、乗員室の後部領域の前方を共に画定する前部又はフロントシートの各シートバックの後に、それぞれ空気ダクトに接続された配風室が配置されている。2本の空気ダクトが、乗員室の床に配置されている。各空気ダクト内を流れる空気は、熱交換器内で所望温度にされる。2つの熱交換器が、それぞれ乗員室の前部空間のドアコラムに配置され、前部空間を換気するための追加の空気出口穴を有する。
【0003】
同様に良く知られている空調装置(特許文献2)では、空調ボックスは、エバポレータと熱交換器とをその内部に備え、それらの内部を記載の順に通過して流れる空気流が送風機によって発生される。冷媒回路内に配置されたエバポレータにおいて、空気流は冷却され、自動車の内燃機関の冷却回路内に配置された熱交換器において、空気流は再び加熱される。熱交換器は、4つのセクターに分割され、それらの2つの上部セクターは、前部空間の左及び右半分を暖房するために設けられ、2つの下部セクターは、後部領域の右及び左半分を暖房するために設けられている。2つの下部セクターは、それらから出て来る2対の空気ダクトを有し、その一方の対が後部領域の左半分に、他方の対が後部領域の右半分に至る。各空気ダクトは、空気吹き出し装置によって塞がれており、それぞれ後部領域の左及び右半分において、一方の空気吹き出し装置は足下空間に配置され、他方の空気吹き出し装置は、後部領域の乗員に向かって直接空気が流れるように後部領域の中央平面に配置されている。
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第1 077 997 C2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第196 46 123 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、同程度の空調快適性を維持しながら、製造費用を低減するために、後部領域に関し最初に記述された種類の空調装置の構造を簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明により、請求項1に記載の特徴によって達成される。
【0007】
本発明による空調装置は、空気を後部領域の各半分に送るのにたった1本の空気ダクトしか必要なく、しかも後部領域に供給される空調された空気の足下空間及び中央平面への割り振りが維持されるという利点を有する。足下空間及び中央平面に流入する等温度の空気にもかかわらず、後部領域の乗員に快適な空間環境を提供するために、ダクト分岐部の分岐点において、空調装置の「暖房」及び「冷房」運転モードの関数として2つの空気吹き出し装置への空気の割り振りを実行する配風部材が、空気ダクト内に設けられる。この場合、「冷房」運転モードにおいて、足下空間に流入する空気量は急激に絞られるか又は完全に遮断され、「暖房」運転モードにおいて、より大量の空気が足下空間を経由して吹き込まれることが好ましい。
【0008】
本発明による空調装置の有利な実施の形態は、本発明の好都合な発展や改良と共に、さらなる請求項に明記されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を、図に示された例示的な実施の形態によって、以下により詳細に説明する。ここで、図1は、自動車の乗員室用の空調装置の概略を示す図である。
【0010】
図1では概略的にしか再現されていない空調装置は、自動車の乗員室10を空調する役割をし、前記乗員室は、2つのフロント又は前部シートと1つの後部領域又は後部ベンチシートとを備えている。その後部領域ベンチシートの代わりに、複数の個別又はダブルシートがあっても良い。フロントシートについては、シートバック11及び12のみが、さらに後部領域ベンチシートについては、シートバック13のみが破線で示されている。フロントシートの配置により、乗員室10は、空調装置によって個々に空調することができる前部空間14と後部領域15とに細分されている。この場合、前部空間14と後部領域15との両方で、乗員室10の左及び右半分の環境に対する個別設定が提供される。
【0011】
空調装置は、良く知られているように、空調ボックス16を有し、そのボックス16から前部空間14を換気する空気ダクト17と、後部領域15を換気する空気ダクト18とが出ている。2本の空気ダクト18は1本づつ、後部領域15の左及び右半分にそれぞれ配管されている。良く知られているのでここではさらに示されていないが、空調ボックス16には、冷媒回路内に配置されたエバポレータ、自動車の内燃機関の冷却水回路内に配置された熱交換器、及び熱交換器に続く配風器が配置され、配風器によりエバポレータ内で冷却され熱交換器内で加熱された空気が、空気ダクト17、18に分配される。エバポレータ及び熱交換器を通過して流れ、配風器に流入する空気流は、空調ボックス16の入口に配置され、選択的に自動車の周囲から新鮮な空気又は乗員室から循環空気を吸い込み、それを空調ボックス16に吹き込む送風機によって発生される。後部領域15の空調のため、2つの空気吹き出し装置20、21が、後部領域15の各半分に設けられ、空気吹き出し装置20は、足下空間に配置され、空気吹き出し装置21は、後部領域ベンチシートに着席する後部領域の乗員に向かって空気が直接流れるように中央平面に配置されている。図1は、簡潔のために、空気吹き出し装置20のすぐ隣に空気吹き出し装置21を示している。但し、実際には、それらは、空気吹き出し装置20の面の上に伸びる面内にある。足下空間に配置された空気吹き出し装置20は、後部領域15に出て来る空気ダクト18の端部を塞ぎ、一方中央平面に配置された空気吹き出し装置21は、それぞれ、空気ダクト18から出て来るダクト分岐部19の出口端部に配置されている。ダクト分岐部19の分岐は、できるだけ空気ダクト18の後部領域端部の近傍で実行される。ダクト分岐部19の各分岐点には、空気ダクト18内に流れる空気量を2つの空気吹き出し装置20、21に割り振るための配風部材22が配置されている。各配風部材22は、この場合、空気吹き出し装置20及び空気吹き出し装置21への空気量の流れの割り振りが、空調装置の「冷房」及び「暖房」運転モードの関数として行われるように設計されている。運転モードの関数として空気量の流れの割り振りは、この場合、「冷房」運転モードにおいて、足下空間の空気吹き出し装置20に到達する空気量の部分的流れが急激に絞られてほぼ完全に遮断されるようになる。それに反し、「暖房」運転モードにおいて、空調空気の所望温度の高さが増すとともに、中央平面の空気吹き出し装置21に到達する空気量の部分的流れはますます絞られる。
【0012】
説明した例示的な実施の形態において、配風部材22は、空気フラップ23と、空気フラップ23を駆動し、空気フラップ23を2つの端部位置間の所望の回転位置に移動させる回転駆動装置24とを有する。図に実線で示されている空気フラップ23の端部位置において、ダクト分岐部19は全閉され、全ての空気量の流れが空気吹き出し装置20に供給される。図に破線で示されている空気フラップ23の端部位置において、ダクト分岐部19は全開され、足下空間の空気吹き出し装置20への空気供給が完全に遮断される。回転駆動装置24は、所望/実値比較器として使用されている比較器25によって作動されるサーボモータとして設計されている。比較器25は、その入力側が温度センサ26及び温度事前選択要素27に接続され、温度事前選択要素27で設定された所望温度値を温度センサ26によって送られた実温度値と比較する。実温度値が所望温度値を上回ると、空調装置は、その「冷房」運転モードで動作し、回転駆動装置24は、作動信号を受けて、足下空間の空気吹き出し装置20への空気量の部分的流れを急激に絞る、つまり図に破線で示されている端部位置の方向に空気フラップ23を移動させる。ここではさらに示されていないが、空気量の部分的流れの絞り量を決定するために、所望/実値差の大きさが利用されても良い。反対に、温度事前選択要素27によって設定された所望温度値が温度センサ26によって送られた実温度値よりも高い場合、逆の作動信号が比較器25によって回転駆動装置24に加えられる。すると回転駆動装置24は、図に実線で示されている端部位置の方向に空気フラップ23を回転させるので、中央平面に配置された空気吹き出し装置21に到達する空気量の部分的流れが絞られる。所望/実値差の大きさは、ここでも、空気吹き出し装置21に到達する空気量の部分的流れの絞り量を決定するために使用されても良い。
【0013】
代わりに又は追加的に、回転駆動装置の作動信号は、空気量の部分的流れの絞り量が換気温度によって決定されるように、換気温度の関数として発生又は修正されても良い。さらに示されないが、換気温度は、空気ダクト18内を流れる空気流内で、又は空気ダクト18内のものと同じ等温線が存在する空調装置の他の位置で直接検出されても良い。
【0014】
本発明は、説明した例示的な実施の形態に限定されない。後部領域15の左及び右半分の空調装置の個々の設定が行われない場合、及び後部領域15に均一な空調がある場合、当然、第2の空気ダクト18には関連構成要素が全て不要となり、それらは機構上1組しか存在せず、上述の通りである。当然、後部領域半分毎に、足下空間に複数の空気吹き出し装置20及び中央平面に複数の空気吹き出し装置21を配置することも可能であり、それらは同じ空気ダクト18又はダクト分岐部19に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動車の乗員室用の空調装置の概略を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室が後部領域(15)を有し、前記後部領域(15)に至り、事前選択可能な温度の空気による作用を受けることができる少なくとも1本の空気ダクト(18)と、前記空気ダクト(18)に接続され、前記後部領域(15)に配置される少なくとも1つの空気吹き出し装置(20)とを有する自動車の乗員室(10)用の空調装置であって、
前記空気ダクト(18)は、それから出て来るダクト分岐部(19)を有し、前記ダクト分岐部(19)は前記後部領域(15)に配置された第2の空気吹き出し装置(21)によって塞がれ、分岐点には、前記空気ダクト(18)内を流れる空気量を前記2つの空気吹き出し装置(20、21)に割り振る配風部材(22)が配置され、前記配風部材(22)は、空気量の流れの割り振りが前記空調装置の「冷房」及び「暖房」運転モードの関数として行われるように設計されたことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
一方の空気吹き出し装置(20)は、足下空間に配置され、他方の空気吹き出し装置(21)は前記後部領域(15)の中央平面に配置され、前記運転モードの関数としての空気量の流れの前記割り振りは、冷房モードにおいて、前記足下空間に配置された前記空気吹き出し装置(20)に到達する空気量の部分的流れが絞られるようになることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記運転モードの関数としての空気量の流れの前記割り振りは、さらに、暖房モードにおいて、前記中央平面に配置された前記空気吹き出し装置(21)に到達する空気量の部分的流れが絞られるようになることを特徴とする請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
それぞれの空気量の部分的流れの絞り量は、実温度と事前選択された所望温度との間の温度差の関数として実行されることを特徴とする請求項2あるいは3に記載の空調装置。
【請求項5】
それぞれの空気量の部分的流れの絞り量は、換気温度の関数として実行されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項6】
前記換気温度は、前記空気ダクト(18)内を流れる空気から直接、又はこれに相当する温度範囲で間接的に前記空調装置内で感知されることを特徴とする請求項5に記載の空調装置。
【請求項7】
前記配風部材(22)は、それぞれ前記空気吹き出し装置(20、21)の一方を遮断する2つの端部位置に回転可能な空気フラップ(23)と、前記空気フラップ(23)を駆動し、温度依存作動信号(27)を介して制御できる回転駆動装置(24)とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項8】
前記回転駆動装置(24)に対する前記作動信号は、温度事前選択要素(27)で設定された所望温度を前記後部領域(15)で測定された前記実温度と比較する所望/実値比較器(25)からの出力信号によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の空調装置。
【請求項9】
前記回転駆動装置に対する前記作動信号は、前記換気温度の関数であることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の空調装置。
【請求項10】
前記ダクト分岐部(19)の前記分岐点は、前記空気ダクト(18)の後部領域端部の近傍にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の空調装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室が後部領域(15)を有し、前記後部領域(15)に至り、事前選択可能な温度の空気による作用を受けることができる少なくとも1本の空気ダクト(18)と、前記空気ダクト(18)から出て来るダクト分岐部(19)と、前記後部領域(15)に配置されて、それらのうちの少なくとも1つが前記後部領域(15)の足下空間、少なくとも1つが中央平面に配置され、それぞれ前記空気ダクト(18)及びダクト分岐部(19)を塞ぐ少なくとも2つの空気吹き出し装置(20、21)と、分岐点に配置され、前記空気ダクト(18)内を流れる空気量を前記2つの空気吹き出し装置(20、21)に割り振るための制御可能な配風部材(22)とを有する自動車の乗員室(10)用の空調装置であって、
前記配風部材(22)は、前記空調装置の冷房運転における、前記足下空間に配置された前記空気吹き出し装置(20)に到達する空気量の部分的流れ、及び前記空調装置の暖房運転における、前記中央平面に配置された前記空気吹き出し装置(21)に到達する空気量の部分的流れがそれぞれ絞られるように、前記空調装置の「冷房」及び「暖房」運転モードの関数として制御されることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
それぞれの空気量の部分的流れの絞り量は、実温度と事前選択された所望温度との間の温度差の関数として実行されることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
それぞれの空気量の部分的流れの絞り量は、換気温度の関数として実行されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記換気温度は、前記空気ダクト(18)内を流れる空気から直接、又はこれに相当する温度範囲で間接的に前記空調装置内で感知されることを特徴とする請求項3に記載の空調装置。
【請求項5】
前記配風部材(22)は、それぞれ前記空気吹き出し装置(20、21)の一方を遮断する2つの端部位置に回転可能な空気フラップ(23)と、前記空気フラップ(23)を駆動し、温度依存作動信号(27)を介して制御できる回転駆動装置(24)とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の空調装置。
【請求項6】
前記回転駆動装置(24)に対する前記作動信号は、温度事前選択要素(27)で設定された所望温度を前記後部領域(15)で測定された前記実温度と比較する所望/実値比較器(25)からの出力信号によって形成されることを特徴とする請求項5に記載の空調装置。
【請求項7】
前記回転駆動装置に対する前記作動信号は、前記換気温度の関数であることを特徴とする請求項5あるいは6に記載の空調装置。
【請求項8】
前記ダクト分岐部(19)の前記分岐点は、前記空気ダクト(18)の後部領域端部の近傍にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の空調装置。

【図1】
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【公表番号】特表2006−502037(P2006−502037A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542382(P2004−542382)
【出願日】平成15年9月27日(2003.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010785
【国際公開番号】WO2004/033235
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)