説明

自動車の冷却装置

【課題】走行中にエンジンルームに流入した冷却風を効率良く流動させて、車両の空気抵抗係数を下げ、しかもエンジン冷却効果を高めることができる自動車の冷却装置を提供する。
【解決手段】車両2の前壁fに形成された冷却風の流入口19、21に流入し該流入口の後方の熱交換器16及び熱交換器16を通過した冷却風Faをエンジン本体151の前壁152に沿って下向きの冷却風Fdとして流下させた上でエンジンルーム4の後方に流動させる自動車の冷却装置において、流入口19、21の下方に別途形成された前下取入口24に前開口端部261が連結され、後開口端部262が熱交換器16とエンジン本体との空間Eであって該エンジン本体の下端より下方となる位置に向けて後向き流Fbを噴出すよう形成されたダクト26を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンルーム内に装着されるエンジン及びその前方の熱交換器をエンジンルーム内に流入した冷却風で冷却する自動車の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体においては、突出部、くぼみ部分、等があると、走行時に車体表面で空気が円滑に流れなくなり、空気の渦が発生し、空気抵抗が増大する。このように空気抵抗が増大すると、走行安定性が損なわれ、燃料消費量が増大するので、空気抵抗は、極力少なくすることが望まれる。このため、空気力学的性能を考慮し、なるべく空気抵抗の少ない車体の設計が行われている。
【0003】
例えば、自動車が走行する場合、車体の下側に向かった走行風は、車体前部のエンジンルームの下部にむき出しになっているエンジン本体等とあたって空気の流れが乱れ、エンジンルームの下部の空気抵抗が大きくなる。そこで、車体下部における空気抵抗を低下させるため、一般的には車体下部においてエンジン本体等がむき出しにならないように、エンジンルームの下面を板状のアンダーカバーで覆い、車体下部を平坦化し、空気抵抗係数[CD]を低減する処理が施されている。
ところで、自動車の車体前面には冷却風取入口が設けられ、ここに流入した外気がエンジンルーム内へ冷却風として取り入れられ、これよりエンジンの熱交換器及びその後方のエンジン本体の冷却が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2010−111277号公報)には、走行時において、エンジンとモータの各冷却系の一部をなす上下2つのラジエータへ共に外気を導入する第1の外気導入部と、走行時にエンジン本体へ外気を導入する第2の外気導入部とが設けられ、第1、第2の各外気導入部における外気の導入量をそれぞれに設けたシャッタ板で調整することで、上下2つのラジエータによる冷却水による冷却とエンジン本体の冷却を適正に行なうようにしている。更に、シャッタ板の開閉調整で冷却風が上下2つのラジエータを通過してからエンジン本体の前向き壁等とぶつかり下方及び左右に流動方向を変えた後、エンジンルームの後方に抜けていく過程での流量を調整し、エンジンルーム内での冷却風を調整している。
【0005】
一方、エンジンルームの下部の流動抵抗を低減するためエンジンルームの下面をアンダーカバーで覆った場合、冷却風がエンジンルーム内を流動した上で、エンジンルーム後方へ排出される際にこのアンダーカバーが流動抵抗を増さないように考慮する必要がある。そこで、アンダーカバーの取り付けでは、エンジンルーム41の下面全体を覆うことを避け、例えば、特許文献2(特許4076099号公報)に開示されるアンダーカバーのように、車両の前壁下端に前端縁が結合され後端縁をエンジン本体の前端部の直下近傍まで延出形成し、その後方は開放してエンジンルーム下方後方への冷却風の排出を容易化している。なお、ここには、冷却ファンの後方の空気が前方の負圧側に再度回り込む流れを抑制する構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−111277号公報
【特許文献2】特許4076099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動車の車体前面の冷却風取入口よりエンジンルーム内へ流入した冷却風はエンジン本体の前向き壁とぶつかり、更にエンジンの下方及び左右に流動方向を変えた後、エンジンルームの後方に抜けていく。その際、下向きの冷却風が車体の前面下部の冷却風取入口から流入してきた冷却風と相互にぶつかり、両気流のぶつかる干渉部分で渦が発生し、流動抵抗が増し、これに起因して冷却風量が低減して、冷却効率が低下する。しかも流動抵抗の増加に起因して、空気抵抗係数が増加し、燃費低下の要因ともなっている。
【0008】
更に、エンジン本体の前側下部近傍で、下向きの冷却風と前面下部の冷却風取入口からの冷却風とが相互にぶつかった後で、その合流後の冷却風が更に後方に流動し、アンダーカバーの下面側を流動してきたアンダーカバー下側冷却風と更に衝突し、更なる流動抵抗の増加、空気抵抗係数の増加を招くという問題もある。
なお、引用文献1は走行中に冷却風取入口からの外気の導入量をシャッタ板で調整できるが、エンジンルームに流入した冷却風の流動抵抗を抑制する点や、冷却風をエンジンルームより流動抵抗を増すことなく排出させる機能は開示しない。引用文献2には冷却ファンの負圧側に再度流入する冷却風の流れを抑制するのみでエンジンルーム内での冷却風の流動抵抗を抑制することはできない。
【0009】
本発明の主たる目的は、走行中にエンジンルームに流入した冷却風を効率良く流動させて、車両の空気抵抗係数を下げ、しかもエンジン冷却効果を高めることができる自動車の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、請求項1に係る発明は、車両の前壁に形成された冷却風の流入口に流入し該流入口の後方に設けられる熱交換器と、前記熱交換器の後方に設けられるエンジン本体とを備えた自動車の冷却装置において、前記流入口の下方に別途形成された前下取入口に前開口端部が連結され、後開口端部が前記熱交換器とエンジン本体との間であって該エンジン本体の下端より下方となる位置に向けて後向き流を噴出すよう形成されたダクトを具備する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の自動車の冷却装置において、前記車両の前壁下端に前端縁が結合され前記エンジンルームの前側下部を覆うアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーの後端は前記後開口端部より後方に位置するように形成された、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の自動車の冷却装置において、前記ダクトの車幅方向の幅は前記熱交換器の車幅方向の幅と同等に設定される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3記載の自動車の冷却装置において、前記ダクトは車幅方向に並列配備される複数の分割ダクトとして形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、冷却風をダクトの後開口端部より後向き流として噴出させることで、噴出された冷却風の流速がその周囲より高く負圧化が生じるので、その後向き流に向けて熱交換器を通過してエンジン本体の前壁に沿って流下する下向きの冷却風が引き込まれて合流することで抵抗低減を図れ、その合流位置通過後の冷却風をエンジンルームの後方にスムーズに流動させることができるので、冷却風流量を増加して熱交換器及びエンジン本体の冷却効率を高められる。しかも、後向き流が下向きの冷却風を引き込み合流する際の流動抵抗が比較的小さくなるので、車両の空気抵抗係数を下げ、燃費低減を図ることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、ダクトの後開口端部より噴出する後向き流にエンジン本体の前壁に沿って流下した下向きの冷却風が引き込まれて合流した上で、その合流位置通過後の冷却風をアンダーカバーの後端上面に沿って車体後方側に案内し、更に、アンダーカバーの後端上面に沿って流動した冷却風を、アンダーカバーの下面とほぼ平行に車体前後方向後方に向かう気流とアンダーカバーの後端後方で流動抵抗が比較的小さく合流させることができ、この点で車両の空気抵抗係数をより低下させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、熱交換器通過後の下向きの冷却風とダクトからの後向き流との車幅方向の流動幅をほぼ同等とするので、下向きの冷却風を車幅方向全域でほぼ確実に引き込み合流させるよう機能でき、流動抵抗を車幅方向全域で小さくでき、この点で車両の空気抵抗係数を確実に下げることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、複数の分割ダクトを用いることで、各分割ダクトの剛性が高まり、保形性、耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の自動車の冷却装置を装備する車両の前部の要部切欠側面図である。
【図2】図1の車両の前部の概略切欠平面図である。
【図3】図1の車両の前面の正面図である。
【図4】図1の自動車の冷却装置で用いるダクトを示し、(a)は拡大平面図、(b)は拡大正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態で用いるダクトを示し、(a)は拡大平面図、(b)は拡大正面図である。
【図6】図1の車両の前部切欠下面図である。
【図7】図1の自動車の冷却装置の空気抵抗係数「CD」の特性を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、図2にはこの発明の第1の実施形態としての自動車の冷却装置1を適用した車両2の前部車体を示した。
図1および図2に示された車両2の前部車体は、車両の前面fの後方にエンジンルーム4が形成され、エンジンルーム4の後方にダッシュパネル5を介して車室6が形成される。エンジンルーム4はその上部がフード7で、左右側部が左右フロントフェンダー8(図3参照)で、前面fがフロントマスク9及びバンパ11で覆われる。更に、エンジンルーム4の下部前側はバンパ11の下端に連結されたアンダーカバー3で覆われている。なお、図1、図2に示すように、エンジンルーム4の下部には前後に延びる左右のサイドメンバ12や、フロントエンドクロスメンバ13や、フロントクロスメンバ14が相互に結合されて配備され、これによりエンジンルーム4の剛性が確保されている。
【0020】
なお、バンパ11は、車体の幅方向(図1で紙面垂直方向)に延びる樹脂製のバンパフェーシング111と、車幅方向に延びるリンフォース112とリンフォース112を左右のサイドメンバ12、12先端に連結する不図示のバンパブラケット、等を備えている。
【0021】
図1、2に示すように、エンジンルーム4内にはエンジン15や回転力伝達系などの各種走行操作装置が配備され、特に、前面fの直後位置で、エンジン15の前方には不図示の冷却装置に接続されたコンデンサ17とエンジン15の冷却水が循環するラジエータ18とがそれぞれの長手方向を車幅方向Y(図1で紙面垂直方向)に向けた上で、前後に並列配備される。
車両2の前面fの上部に配置されたフロントマスク9には、前向き上流入口19が左右に一対形成され、下部に配置されたバンパ11には、その下側中央部全域に前下流入口21が形成される。なお、前向き上流入口19や前下流入口21の直後には上下に並列状を成して複数の整流用のグリル191、211がそれぞれ配備され、これらにより美観及び通気性を確保している。なお、整流用のグリル191、211は不図示のアクチュエーターにより開閉作動でき、前向き上流入口19や前下流入口21の開閉率を調整可能である。
【0022】
前向き上流入口19及びその直下の前下流入口21の後方には、熱交換器16であるコンデンサ17とラジエータ18と冷却用ファン23とが配置されている。なお、コンデンサ17とラジエータ18は矩形枠状の支持枠22を介してエンジンルーム4の前部基枠の一部であるフロントエンドクロスメンバ13に支持されており、冷却ファン23はコンデンサ17とラジエータ18の後方で支持枠22に支持されている。さらに、冷却用ファン23の後方には所定幅の空間Eを介してエンジン15がその長手方向を車幅方向Yに向けて配備される。(図2参照)
ここで車両の走行時や冷却ファンの駆動時に走行風Foが前向き上流入口19や前下流入口21に流入し、コンデンサ17とラジエータ18を通過した冷却風Faは空間Eに流入する。更に、この冷却風はエンジン15の本体151の前向き壁152に当接して下方に方向転換し、下向き冷却風Fdとしてエンジン本体151の下端側に流動する。この下向き冷却風Fdによりエンジン本体151等が冷却されることより、下向き冷却風Fdの流量が多いほどエンジンの冷却効率が高くなる。ここでは、この点に着目して、下向き冷却風Fdの流動抵抗をより低減して、その流量を増加させる手段について後述する。
図1、6に示すように、バンパ11の下端は車幅方向Yに連続して湾曲した下端縁111を形成され、そこにアンダーカバー3の車幅方向Y全域の前縁部301が重ねられ、下端縁111より延出する複数の止め板112に前縁部301がそれぞれビス止めされている。
【0023】
図6に示すように、ここでのアンダーカバー3は鋼板のプレス成形品であり、前後に延びる複数のビードbを形成され保形性を保持する。なお、アンダーカバー3は樹脂成形されても良い。
ここで、アンダーカバー3はエンジンルーム4の下部全域を覆うと共に、下面303がなだらかに湾曲して形成され、これにより、走行風Foをエンジンルームの下方域を経て後方にスムーズに流動させる走行風ガイド板として機能する。更に、アンダーカバー3はその後端縁302がエンジン本体151の下端のオイルパン153の直下中央位置まで延出形成される。なお、後述するように後端縁302はダクト26の後開口端部262より後方に位置するよう延出形成されている。
【0024】
図1に示すように、バンパフェーシング111の下部には前下流入口21の下方に位置し、車幅方向Yに横長となるように扁平された前下取入口24が別途形成される。
図3に示すように、この前下取入口24は車幅方向Yの横幅Lyがほぼ、熱交換器であるコンデンサ17とラジエータ18の横幅と同等に形成され、高さh(図4、5参照)が比較的小さく形成される。
図1に示すように、アンダーカバー3と支持枠22との間に走行風Foを前下取入口24で吸入してエンジン本体151の下端前部位置に噴き出すダクト26が配備される。
【0025】
図1に示すように、ダクト26は前下取入口24に前開口端部261(図4参照)が連結され、後開口端部262(図4参照)が、冷却用ファン(熱交換器16)とエンジン本体との間の空間Eの直下であってエンジン本体の下端より前側まで(図1参照)延出形成される。
このダクト26は樹脂成形され、全体は支持枠22に対しブラケット27(図1参照)を介して取り付け支持される。このダクト26は、図4に示すように、横幅Lyの方向に3分割して並列配備された分割ダクト26a、26b、26cとして形成され、これにより成形の容易化、形状剛性の保持、耐久性を確保している。
【0026】
各分割ダクト26a、26b、26cの各後開口端部262は空間Eの直下であってエンジン本体151の下端より下側の位置にまで延出形成される。しかも、各分割ダクト26a、26b、26cの後開口端部262の噴出口26exから後向き流である噴出し風Fbを吹き出した際に、図1に示すように、噴出し風Fbの中心線Lcが後エンジン本体151の下端直下に向うように形成される。なお、図4中の符号gpは整流板を示し、これらにより噴出口26exからの噴出し風Fbの直進性を保持している。このため、噴出口26exからの噴出し風Fbに直進性を付与でき、風速をその周囲の気流より早くでき、噴出し風Fbの流動域の負圧化を促進できる。
なお、このダクト26に代えて、図5に示すように、ダクト26dを一体形成しても良い。
【0027】
この場合のダクト26dは内部に隔壁gp1を複数配備し、これにより噴出し風Fbに直進性を与え、しかも、保形性を確保するようにしている。この場合、構成の簡素化を図れる。
更に、図1に示すように、ダクト26の直下にはアンダーカバー3が配備され、噴出口26exからの噴出し風Fbはエンジン本体151の下端直下とアンダーカバー3の上面の間に向けて後方に流動する。
ここでのアンダーカバー3の後端縁302はエンジン本体151のオイルパン153の直下中央位置まで延出形成されるので、後端縁302の上方を通過した噴出し風Fbは後端縁302の下方を通過した走行風Foと合流部C2で合流し、フロントクロスメンバ14の直下を後方に流出することができる。
【0028】
次に、図1の自動車の冷却装置1の作用について説明する。車両2が前進すると、フロントマスク9及びバンパ11の一部に形成された前向き上流入口19や前下流入口21に走行風Foが流入し、熱交換器16を冷却風Faとして通過し、空間Eに流入し、これにより、コンデンサ17とラジエータ18の放熱を促進して冷却効率を高く保持して冷却処理する。
更に、冷却風Faはエンジン15の本体151の前向き壁152に当接して下方に方向転換し、下向き冷却風Fdとしてエンジン本体151の下端側に流動することで、エンジン本体151等を効率よく冷却する。
一方、バンパフェーシング111の前下取入口24よりダクト26に流入した走行風Foがその中心線Lc方向であるエンジン本体151の下端直下とアンダーカバー3の上面の間を後方に流動する。
【0029】
ダクト26の噴出口26exからの噴出し風Fbは直進性を有し、その風速がその周囲の気流より早く、その噴出し風Fbの流動域が負圧化する。このため、エンジン本体151の前向き壁152に沿い下方に方向転換してくる下向き冷却風Fdが噴出口26exからの噴出し風Fbとほぼ直行する方向で衝突する。
この際、負圧化した噴出し風Fbに下向き冷却風Fdが引き込まれて合流することができ、この噴出し風Fbと下向き冷却風Fdの合流部C1での流動抵抗を大幅に低減できる。このように、冷却風流量を増加して熱交換器16及びエンジン本体151の冷却効率を高めるのに寄与できる。
【0030】
更に、合流部C1を通過した噴出し風Fbはアンダーカバー3の上面に沿い後方に流動する。ここでアンダーカバー3の後端縁302がエンジン本体151のオイルパン153の直下中央位置まで延出形成されているので、即ち、ダクト26の後開口端部262より後方に位置するよう延出形成されるので、後端縁302の上方を通過した噴出し風Fbは後端縁302の下方を通過した走行風Foと互いに合流部C2で合流する。
この際、アンダーカバー3の下側の走行風Foに対してアンダーカバー3の上側の噴出し風Fbはその流速が低いことより、上側の噴出し風Fbより下側の走行風Foの負圧化が進んでいる。このため、上側の噴出し風Fbが下側の走行風Foに引き寄せられ、合流するが、両流動方向がほぼ同一なので、合流部C2ではスムーズに合流でき衝突時の流動抵抗は低い。
【0031】
このように図1の自動車の冷却装置1では噴出し風Fbと下向き冷却風Fdの合流部C1での流動抵抗を大幅に低減でき、更に、噴出し風Fbと下側の走行風Foとの合流部C2での合流を衝突時の流動抵抗が少ないスムーズな状態で合流させることができるため、走行風Foの一部で熱交換器16を通過する冷却風Fa1、前向き壁152を下方に流動する下向き冷却風Fdの冷却風流量を増加できる。しかも前下取入口24よりダクト26に流入した走行風Foが噴出口26exから噴出し風Fbを直進状態で吹きだすので、これらの点より冷却風流量を増加でき、熱交換器16及びエンジン本体151の冷却効率を高めるのに寄与できる。しかも、車両の空気抵抗係数を下げ、燃費低減を図るのに寄与できる。
【0032】
なお、図7には、本発明の自動車の冷却装置1が適用される前(図7中の□印)と、適用後(図7中の■印)の冷却風の空気抵抗係数とラジエータ18の前部の冷却風Faの通過風速[m/sec]の変位の一例を示す線図である。
ここで、自動車の冷却装置1が適用される前(図7中の□印)とは、バンパフェーシング111に図1、図3に示すような前下取入口24やダクト26が配備されない構造状態であり、その際の冷却風ΔCDが(0.012)で、ラジエータ18の前部冷却風Faの通過風速が{4.75[m/sec]}の状態にあった。これに対し、適用後(図7中の■印)であるバンパフェーシング111に図1、図3に示すような前下取入口24やダクト26が配備された構造をなす状態での冷却風ΔCDが(0.006)で、ラジエータ18の前部冷却風Faの通過風速が{4.8[m/sec]}の状態に達したことを示している。
【0033】
ここで明らかなように、バンパフェーシング111に図1、図3に示すような前下取入口24やダクト26が配備された本発明が適用された状態では、適用前より冷却風ΔCDが(0.012)から(0.006)に変位し、冷却風ΔCDの値が大幅に低減した。この点より、熱交換器16及びエンジン本体151の冷却効率を高め、しかも、車両の空気抵抗係数を下げ、燃費低減を図ることができることが明らかとなった。
【0034】
上述のところで、アンダーカバー3の後端縁302がエンジン本体151のオイルパン153の直下中央位置まで延出形成されているが、場合により、図1に2点鎖線で示すように、フロントクロスメンバ14に対して所定量の隙間t1を保持した状態でフロントクロスメンバ14の直後の位置まで延出形成しても良い。この場合、噴出し風Fbと走行風Foとの合流部C2’をフロントクロスメンバ14の後方に位置させることとなるので、フロントクロスメンバ14の影響による流動抵抗の更なる増加を確実に排除でき、しかも、車両の空気抵抗係数を下げ、燃費低減を図ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車の冷却装置
2 車両
4 エンジンルーム
9 フロントマスク
11 バンパ
15 エンジン
151 エンジン本体
152 前壁
19、21 流入口
16 熱交換器
17 コンデンサ
18 ラジエータ
23 冷却用ファン
24 前下取入口
26 ダクト
261 前開口端部
262 後開口端部
26ex 噴出口
26a、26b、26c 分割ダクト
f 前壁
E 冷却用ファンとエンジン本体との間の空間
Fa 冷却風
Fb 噴出し風(後向き流)
Fd 下向き冷却風
Fo 走行風
Ly 横幅
X 前後方向
Y 車幅方向
C1,C2 合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前壁に形成された前流入口に流入し該前流入口の後方に設けられる熱交換器と、前記熱交換器の後方に設けられるエンジン本体とを備えた自動車の冷却装置において、
前記前流入口の下方に別途形成された前下取入口に前開口端部が連結され、後開口端部が前記熱交換器とエンジン本体との間であって該エンジン本体の下端より下方となる位置に向けて後向き流を噴出すよう形成されたダクトを具備する、ことを特徴とする自動車の冷却装置。
【請求項2】
前記車両の前壁下端に前端縁が結合され前記エンジンルームの前側下部を覆うアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーの後端は前記後開口端部より後方に位置するように形成された、ことを特徴とする請求項1記載の自動車の冷却装置。
【請求項3】
前記ダクトの車幅方向の幅は前記熱交換器の車幅方向の幅と同等に設定される、ことを特徴とする請求項1又は2記載の自動車の冷却装置。
【請求項4】
前記ダクトは車幅方向に並列配備される複数の分割ダクトとして形成される、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の自動車の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−126297(P2012−126297A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280767(P2010−280767)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】