説明

自動車の前車

自動車の前車は、フレーム縦材(8)、車輪ハウジング(6)及びフェンダ(1)と、正面揺動蓋(3)とから成り、正面揺動蓋が、フェンダの縁稜(13)に同一面をなして続き、フェンダが縁稜から始まって垂直壁(15;25)を形成し、この垂直壁が車輪ハウジング(6)及び/又はフレーム縦材(8)上に支持され、物体の衝突の際正面揺動蓋(3)が下方へ撓む。衝突の場合精確に所望のように後退するフェンダの支持を行うため、垂直壁(15;25)が、車輪ハウジングと固定的に結合されている直立板(17;27)に摩擦で当接し、垂直壁(15;25)と直立板(17;27)との摩擦が、垂直壁(15;25)にある穴(16)及び直立板(17;27)にある穴(20)を貫通しかつ圧縮ばね(32)を作用させる引張り素子(21)によって発生され、両方の穴(16,20)の1つが長穴である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前車であって、それぞれの側にあるフレーム縦材、車輪ハウジング及びフェンダと、正面板を持つ横材、及び正面揺動蓋(機関覆いとも称される)から成り−正面揺動蓋が、それぞれの側で、継目をおいて、フェンダの縁稜に同一面をなして続き、フェンダが縁稜から始まって垂直壁を形成し、この垂直壁が車輪ハウジング及び/又はフレーム縦材上に支持され、物体の衝突の際正面揺動蓋が下方へ撓むものに関する。
【背景技術】
【0002】
撓む正面揺動蓋は、歩行者の衝突の際(その場合衝突する物体は人間特に頭部である)、重大な負傷の危険を和らげる。このような事故の場合、一般に被害者の上体は車両前部の周りに後下方へ揺動せしめられるので、頭部が垂直方向に正面揺動蓋へ衝突する。正面揺動蓋は、この衝突を和らげるように形成されている。
【0003】
しかし正面揺動蓋が車両の幅全体にわたって延びておらず、フェンダが車両中心の方へ非常に大きく延びており、通行人が撓む正面揺動蓋及び剛性フェンダへ衝突すると、フェンダの縁稜が頭の著しい負傷をひき起こす危険がある。
【0004】
垂直壁がエネルギを吸収しながら変形するように、この垂直壁を形成することは公知である(特開平7−285461号公報、特開平11−180350号公報、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19514324号明細書)。しかし垂直壁はその下にある構造部分即ち車輪ハウジング又は縦材と常に固定的に結合されており、特開平11−180350号公報では、そのため垂直壁が費用のかかる成形部品で形成されている。更にそれによりフェンダの交換も困難である。しかしこれらすべての解決策では、フェンダの変形が始まる際の衝突エネルギは精確には検出できず、非常に甚だしくばらついている。しかしこれは安全上の理由から不利であるだけでなく、関係する法的規定の厳密な順守も困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、これらの欠点を除去し、衝突の場合所望の値に精確に所望のように後退するフェンダの支持を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によればこれは、垂直壁が、車輪ハウジング又はフレーム縦材と固定的に結合されている直立板に摩擦で当接し、垂直壁と直立板との摩擦が、垂直壁にある穴及び直立板にある穴を貫通しかつ圧縮ばねを作用させる引張り素子によって発生され、両方の穴の1つが長穴であることによって、達せられる。一般に縁の長さにわたって、複数のこのような結合部が設けられる。摩擦は変形特性の非常に精確かつ再現可能な設定、即ちその開始のみならず、その経過も可能にする。更に例えば衝突の起こった後、フェンダの交換も非常に簡単に困難な作業なしに可能である。長穴は、両方の板の付随する変形なしに、両方の部材の相対移動を可能にする。
【0007】
なるべく直立板が、角形に曲げられて車輪ハウジング又はフレーム縦材に取付けられる脚部を形成し、角区域に隅フランジが形成されている(請求項2)。それにより衝突の場合における摩擦移動が直立板の早すぎる湾曲又は屈曲により妨げられないようにすることができる。
【0008】
本発明による思想の展開では、フェンダの垂直壁が下方へ車輪ハウジング又はフレーム縦材の所まで延び、その下縁が丸められている(請求項3)。衝突の場合丸められた縁とその下にある縦材との間隔によって決定される摩擦移動後、後方へ移動される丸められた縁の曲げ変形により、更に大きいエネルギが消費される。
【0009】
摩擦で当接する部分の長穴がある側に、摩擦板が設けられ(請求項4)、この摩擦板が、精確にわかっておりかつ再現可能な摩擦係数を持つプラスチックから成っていると、特に有利なことがわかった。その場合更にある程度の隔離及び接触腐食に対する保護が行われる。
【0010】
細部を展開されて、引張り素子が頭付きねじであり、付属するナットが、正面揺動蓋から遠い方にあるフェンダの側に取付けられている(請求項5)か、又は引張り素子が基板を持つボルトであり、この基板が正面揺動蓋から遠い方にあるフェンダの側に取付けられ、正面揺動蓋が開かれる際、ナットへ接近可能である(請求項6)更に圧縮ばねが少なくとも1つの皿ばねであり(請求項7)、この皿ばねが規格に従って構成されるか、又は半径方向スリットを持つ鐘として構成されていると、ばね力が特に精確に規定可能である。
【0011】
図により本発明が以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において左のフェンダが1で示され、右のフェンダが2で示されている。これらのフェンダの間に正面揺動蓋3(機関覆いともいう)があり、前方に車両前部の一部である正面板4が続き、後方に僅かだけ示す前窓ガラス5が続いている。
【0013】
図2には、図1では見えない部分即ち、車輪ハウジング6及びここではそれに溶接される縦材7が認められ、この縦材の上辺帯8には更に立ち帰る。自動車の他方の側にも当然同じものが存在する。正面揺動蓋3は外殻11及び内側補強体12から成り、公知のように、物体が載る際矢印9の方向に撓むように構成されている。外殻11には、継ぎ目14に中断されて、左側のフェンダ1が続いている。このフェンダは継ぎ目14の縁に縁稜13を形成し、この縁稜の所でフェンダが内方へ曲げられ、垂直壁15へ移行している。
【0014】
縦材7の上辺帯8上には直立板17が取付けられている。この直立板17は角形に曲げられた脚部18を持ち、この脚部は上辺帯8と点溶接で結合され、隅フランジ19で補強されている。直立板17と垂直壁15とを摩擦結合するため、結合素子21が、一般に複数個フェンダの長さにわたって設けられている。このような結合素子21の所に、それぞれ1つの穴16(垂直壁15にある)及び長穴20(直立板17にある)が設けられている。そこでは垂直壁15と直立板17とが互いに重なり、摩擦により互いに結合されている。一般に21で示される引張り素子は、ここでは例えばナット22′を持つ頭付きねじ22である。この引張り素子21の別の詳細は次の図により説明される。
【0015】
図2の対象の展開を示す図3において、垂直壁25は上辺帯8の近くまで下方へ延ばされている。垂直壁はそこで丸められた下縁26を形成している。縁26は、衝突の場合垂直壁の移動後に破線で示されている。ここでは直立板27は、その外方へ向く脚部28を上辺帯8に溶接され、長穴29が垂直壁25に設けられている。引張り素子21はここではねじ付きボルト30であり、直立板27を貫通し、その後ろ側を基板31により垂直壁25に取付けられ、例えば点溶接されている。ねじ付きボルト30のナット30′は、圧縮ばね32を介して、垂直壁25に対して精確にわかっている摩擦係数の適当なプラスチックから成る摩擦板33へ作用する。圧縮ばね32は、1つの皿ばねであるか又は複数の皿ばねから成ることができ、又は図示したように鐘状で場合によっては半径方向スリットを持つことができる。ねじ及び圧縮ばね32の精確にわかっているばね力及び摩擦板33のわかっている摩擦係数のため、垂直壁25と直立板27との摩擦、従って移動が始まる際の力を、非常に精確に設定することができる。
【0016】
図4の変形例では、取付け手段21を受入れるため、組立て前に直立板27上へはめられる締付けナット40が設けられている。
【0017】
図5の変形例では矢筒体50が設けられ、その中にねじ付きボルトのナット51が挿入されるか又は圧入されている。結合部の構成に対してなお多くの別の変形例が考えられる。直立板27の取付けも、縦材8におけるのと同様に車輪ハウジング6においてもよく行うことができる。重要なことは、精確に予見可能で正面揺動蓋3と同一面をなす危険な縁稜13の後退を可能にする摩擦結合である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明により構成される前車の上部の斜視図を示す。
【図2】 第1実施例の図1におけるC−C断面を示す。
【図3】 第2実施例の図1におけるC−C断面を示す。
【図4】 第2実施例の第1変形例の図1におけるC−C断面を示す。
【図5】 第2実施例の第2変形例の図1におけるC−C断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前車であって、それぞれの側にあるフレーム縦材(8)、車輪ハウジング(6)及びフェンダ(1,2)と、正面板(4)を持つ挽材、及び正面揺動蓋(3)から成り、正面揺動蓋が、それぞれの側で、フェンダの縁稜(13)に同一面をなして続き、フェンダが縁稜から始まって垂直壁(15;25)を形成し、この垂直壁が車輪ハウジング(6)及び/又はフレーム縦材(8)上に支持され、物体の衝突の際正面揺動蓋(3)が下方へ撓むものにおいて、垂直壁(15;25)が、車輪ハウジング又はフレーム縦材と固定的に結合されている直立板(17;27)に摩擦で当接し、垂直壁(15;25)と直立板(17;27)との摩擦が、垂直壁(15;25)にある穴(16)及び直立板(17;27)にある穴(20)を貫通しかつ圧縮ばね(32)を作用させる引張り素子(21)によって発生され、両方の穴(16,20)の1つが長穴であることを特徴とする、自動車の前車。
【請求項2】
直立板(17;27)が、角形に曲げられて車輪ハウジング(6)又はフレーム縦材(7)に取付けられる脚部(18;28)を形成し、角区域に隅フランジ(19)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の前車。
【請求項3】
垂直壁(25)が下方へ車輪ハウジング(6)又はフレーム縦材(7)の所まで延び、その下縁(26)が丸められていることを特徴とする、請求項1に記載の前車。
【請求項4】
摩擦で当接する部分(15,17;25,27)の長穴(16;20)がある側に、摩擦板(33)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の前車。
【請求項5】
引張り素子(21)が頭付きねじ(22)であり、付属するナット(22′)が、正面揺動蓋(3)から遠い方にあるフェンダ(1,2)の側に取付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の前車。
【請求項6】
引張り素子(21)が基板(31)を持つボルト(30)であり、この基板(31)が正面揺動蓋(3)から遠い方にあるフェンダ(1,2)の側に取付けられ、正面揺動蓋(3)が開かれる際、ナット(30′)へ接近可能であることを特徴とする、請求項1に記載の前車。
【請求項7】
圧縮ばね(32)が少なくとも1つの皿ばねであることを特徴とする、請求項1に記載の前車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−516499(P2006−516499A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501336(P2006−501336)
【出願日】平成16年1月24日(2004.1.24)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000033
【国際公開番号】WO2004/067322
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503211264)マグナ・シユタイル・フアールツオイクテヒニク・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (18)
【Fターム(参考)】