説明

自動車の前部構造

【課題】シュラウドの側方に配設されたヘッドランプが外部からの衝撃により上方移動してフードパネルを損傷させることを抑制することを課題とする。
【解決手段】フロントサイドフレーム21の前端部間に架設されたシュラウド22と、シュラウド22の車幅方向の側壁部22aの側方に配設されたヘッドランプ12と、閉じた状態でシュラウド22の上方を覆うフードパネル14とを有する自動車の前部構造において、ヘッドランプ12を収容するヘッドランプハウジング12aは、閉じた状態のフードパネル14の前側縁部14aの下方に位置する当接部12bを有しており、シュラウド22は、その側壁部22aの上部に、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bの上方に近接して張り出す被当接部22bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の前部構造、より詳しくは、ヘッドランプをシュラウドの側方に配設した自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の前部には、ラジエターコアや冷却ファン等を収容するシュラウドが配置される。特許文献1には、樹脂で多数の部位が一体成形された樹脂シュラウドが開示されている。この樹脂シュラウドは、車幅方向に延び、フェンダパネルやホイールハウスあるいはクロスメンバ等の車体側部材に締結されている。特に、この樹脂シュラウドは、両側部が後方に向けて延び、この後方延設部と車幅方向に延びる部分とのコーナ部にヘッドランプを取り付けるための開口が形成されている。
【0003】
しかし、これでは、シュラウドにヘッドランプを収容させることができるものの、そのために、シュラウドが車幅方向に延びる部分と前後方向に延びる部分との連結構造となり、その剛性低下が免れない。そこで、特許文献2には、ヘッドランプをシュラウドに収容せずに、シュラウドの車幅方向の側壁部の側方、つまりシュラウドの外に配設し、これにより、シュラウドの肥大化を防いで剛性確保を図ることが開示されている。特に、特許文献2には、左右1対のフロントサイドフレームの前端部間にシュラウドを架設すると共に、ヘッドランプをシュラウドの側方で支持するためのランプブラケットを、フロントサイドフレームの前端部から、後方に位置する車体側部材(例えばサスペンションタワー等)まで橋渡しした自動車の前部構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−171041号公報
【特許文献2】特開2005−206141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献2に開示の構造では、ヘッドランプがシュラウドに収容されずに、ランプブラケットで支持されるだけなので、例えば前方や側方から、つまり外部から衝撃を受けた場合に、ヘッドランプが車体の内方に移動したり車体から外れたりし易くなる。特に、自動車の前部には、エンジンルームの上方を覆うフードパネルが備えられ、このフードパネルが閉じたときにはシュラウドの上方も覆うこととなるが、例えば、この閉じた状態のフードパネルの前側縁部(フードパネルの車幅方向に延びる前縁部と前後方向に延びる側縁部とのコーナ部)の下方に、ヘッドランプを収容するヘッドランプハウジングが部分的にでも位置していると、衝撃により車体の内方に移動したり車体から外れたりしたヘッドランプハウジングがさらにはずみで上方に移動したときには、前記フードパネルの前側縁部を上方に押し上げて、フードパネルまで損傷させてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、自動車の前部構造における前記不具合に対処するもので、シュラウドの側方に配設されたヘッドランプが外部からの衝撃により上方移動してフードパネルを損傷させることのないように対策することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、左右1対のフロントサイドフレームの前端部間に架設されたシュラウドと、該シュラウドの車幅方向の側壁部の側方に配設された左右1対のヘッドランプと、閉じた状態で前記シュラウドの上方を覆うフードパネルとを有する自動車の前部構造であって、前記ヘッドランプを収容するヘッドランプハウジングに、閉じた状態の前記フードパネルの前側縁部の下方に位置する当接部が設けられ、前記シュラウドの側壁部の上部に、前記ヘッドランプハウジングの当接部の上方に近接状態で張り出して、外部から衝撃を受けたときに前記ヘッドランプハウジングの当接部と当接してヘッドランプの上方移動を規制する被当接部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の前部構造において、前記フロントサイドフレームの上方に、所定の車体側部材と連結されて前記ヘッドランプハウジングを支持するランプブラケットが配設されており、該ランプブラケットの前端部に、前記シュラウドの被当接部が締結されていることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドの被当接部は、該シュラウドの側壁部からヘッドランプハウジングの当接部の上方に向けて延びる上側水平壁部と、シュラウドの側壁部に接続しながら前記上側水平壁部の前端部から下方に向けて延びる縦壁部と、シュラウドの側壁部に接続しながら前記縦壁部の下端部から後方に向けて延びる下側水平壁部とを有して、縦断面形状がコ字状に形成されており、その被当接部の内部に、前記縦壁部に接続しながら前記上側水平壁部と前記下側水平壁部との間で上下方向に延びるリブが形成されていることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドの側壁部に接続しながら前記下側水平壁部の後端部から下方に向けて延びる第2の縦壁部が形成され、前記リブは、前記下側水平壁部を越えて、前記第2の縦壁部にも連続的に形成されていることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項3又は4に記載の自動車の前部構造において、前記ヘッドランプハウジングの当接部は、前記シュラウドの被当接部の下側水平壁部と当接する水平面部と、前記シュラウドの被当接部の縦壁部と当接する縦面部とを有していることを特徴とする。
【0011】
そして、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の自動車の前部構造において、前記シュラウドの被当接部の縦壁部は、前方から斜め側方を向いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1に記載の自動車の前部構造によれば、ヘッドランプがシュラウドの側方に配設されており、且つヘッドランプを収容するヘッドランプハウジングに、閉じた状態のフードパネルの前側縁部の下方に位置する当接部が形成されている場合において、シュラウドの側壁部の上部に、前記ヘッドランプハウジングの当接部の上方に近接して張り出す被当接部を設けたから、たとえ、前方や側方等の外部から衝撃を受けて、ヘッドランプが車体の内方に移動したり車体から外れ、そのはずみでヘッドランプハウジングが上方に移動しようとしたときでも、前記シュラウドの被当接部と前記ヘッドランプハウジングの当接部との当接によってその上方移動が規制されることとなり、フードパネルまで損傷することが抑制される。しかも、既存のシュラウドに前記被当接部を設けるだけであるから、前記効果を得るために部品点数が増大することもない。
【0013】
次に、請求項2に記載の自動車の前部構造によれば、所定の車体側部材と連結されてヘッドランプハウジングを支持するランプブラケットの前端部に、前記シュラウドの被当接部を締結したから、該被当接部の剛性向上が図られ、ヘッドランプハウジングの上方移動規制機能が確保されると共に、ヘッドランプの支持剛性も向上する。
【0014】
次に、請求項3に記載の自動車の前部構造によれば、上側水平壁部と縦壁部と下側水平壁部とにより縦断面形状がコ字状に形成された前記被当接部の内部に、前記縦壁部に接続しながら上下方向に延びるリブを形成したから、前記被当接部の下方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジングの上方移動規制性能が向上する。
【0015】
次に、請求項4に記載の自動車の前部構造によれば、前記リブを下側水平壁部に連続する第2の縦壁部にも連続的に形成したから、該第2の縦壁部の前方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジングの後方移動規制性能と、前記被当接部の下方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジングの上方移動規制性能とが併せて向上する。
【0016】
次に、請求項5に記載の自動車の前部構造によれば、前記ヘッドランプハウジングの当接部に、前記シュラウドの被当接部の下側水平壁部と当接する水平面部と、前記シュラウドの被当接部の縦壁部と当接する縦面部とを形成したから、前記下側水平壁部と水平面部との当接により、ヘッドランプハウジングの上方移動が確実に規制され、前記縦壁部と縦面部との当接により、ヘッドランプハウジングの後方移動が確実に阻止されることとなって、フードパネルの損傷がより一層確実に抑制される。
【0017】
そして、請求項6に記載の自動車の前部構造によれば、前記シュラウドの被当接部の縦壁部を、前方から斜め側方に配向させたから、前方から衝撃を受けたヘッドランプハウジングは、この被当接部の縦壁部によって側方へ移動するように案内され、側方から衝撃を受けたヘッドランプハウジングは、この被当接部の縦壁部によって前方へ移動するように案内されて、いずれにおいても、衝撃によりヘッドランプが車体の内方に移動し、はずみでヘッドランプハウジングがフードパネルを上方へ押し上げることがより一層確実に抑制される。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本実施形態に係る自動車1の前部構造10を示す平面図である。この自動車1の前部構造10は、外観上、フロントバンパ11、ヘッドランプ(詳しくは、前照灯や方向指示灯等が一体に組み込まれたコンビネーションヘッドランプ)12,12、フェンダパネル13,13及びフードパネル14を含んでいる。ヘッドランプ12は、自動車1の前縁部と側縁部とのコーナ部において比較的細長く後方へ延びた形状である。フェンダパネル13,13の後方に、ドアパネル15,15が連なり、フードパネル14の後方に、フロントガラス16が立ち上がっている。
【0019】
図2は、前記自動車1の右前部の内部構造を示す拡大平面図である。左前部もこれに準じて同様である。エンジンルームと車室とを隔てる図外のダッシュパネルから、左右1対のフロントサイドフレーム21,21(右側のみ図示)が、前方へ延びている。これらのフロントサイドフレーム21,21の前端部間に、シュラウド22が、車幅方向に架設されている。本実施形態においては、シュラウド22は、多数の部位が樹脂で一体成形された樹脂シュラウドである。
【0020】
図3に示すように、樹脂シュラウド22は、上縁部を構成するアッパ部22xと、下縁部を構成するロア部22yと、側縁部を構成するサイド部22z,22zとにより、矩形の枠状に形成され、中央開口部22oに、図示しないラジエターコアや冷却ファン等が収容される。
【0021】
図4に示すように、樹脂シュラウド22は、フロントサイドフレーム21の前端部に、連結ブラケット38及びボルト37…37,39…39を用いて締結されている。図3に示したように、樹脂シュラウド22のサイド部22z,22zには、前記連結ブラケット38,38が嵌り込むだけの凹所22c,22cが形成されている。図示しないが、樹脂シュラウド22は、フロントサイドフレーム21,21の上面部にも、適宜のブラケット及び締結具を用いて締結されている。
【0022】
図2に戻り、フロントサイドフレーム21,21の上方(図4参照)かつ側方に、左右1対のアッパフレーム(所定の車体側部材)23,23(右側のみ図示)が配設されている。アッパフレーム23の上面に、ランプブラケット24のリア部材24aが、ボルト31…31を用いて締結されている。リア部材24aは、アッパフレーム23から、車体内方に湾曲しながら前方に延び、その前端部が、ランプブラケット24のフロント部材24bに重なり合って、該フロント部24bに連結されている。
【0023】
図4に示したように、フロント部材24bは、リア部材24aとの連結部から下方に延び、フロントサイドフレーム21の上面部に、連結ブラケット34とボルト35とを用いて締結されている。フロント部材24bは、フロントサイドフレーム21の内側の側面部にも、ボルト36を用いて締結されている(図2参照)。つまり、ランプブラケット24は、全体として、後方のアッパフレーム23と、フロントサイドフレーム21の前端部とに亘って、橋渡しされている。
【0024】
図2に戻り、フロントサイドフレーム21とアッパフレーム23との間には、前輪を格納するためのホイールハウス25及び前輪のサスペンションを格納するためのサスペンションタワー26が配設されている。これらの要素25,26は、周知のものであり、また、本発明の特徴部を構成するものではないので、これ以上の説明は省略する。
【0025】
図5に示すように、本実施形態においては、ヘッドランプ12は、樹脂シュラウド22の車幅方向の側壁部22a(図3及び図4参照)の側方、つまりシュラウド22の外に配設されている。その場合に、ヘッドランプ12を収容するヘッドランプハウジング12aが、前記ランプブラケット24にボルト41で締結されている。また、ヘッドランプハウジング12aは、前記シュラウド22にボルト42で締結されている。さらに、図6に示すように、ヘッドランプハウジング12aは、フェンダパネル13にボルト43で締結されている(フェンダパネル13の下縁部にはハウジング取付部13aが形成されている)。
【0026】
ここで、図5に示したように、フードパネル14は、閉じた状態でシュラウド22の上方を覆うと共に、ヘッドランプハウジング12aの一部分は、その閉じた状態のフードパネル14の前側縁部(フードパネル14の車幅方向に延びる前縁部と前後方向に延びる側縁部とのコーナ部)14aの下方に位置している(当接部12b)。
【0027】
図7及び図8に示すように、ヘッドランプハウジング12aは、その上面に、前記当接部12bと、取付ブラケット12cとを有している。また、ヘッドランプハウジング12aは、その内側の側面に、第2の取付ブラケット12dを有している。これらの部位12b,12c,12dは、樹脂でヘッドランプハウジング12aと一体成形されている。
【0028】
そして、図5に示したように、前記第1の取付ブラケット12cが、ランプブラケット24にボルト41で締結されている。その場合に、図2に示したように、ランプブラケット24には、前記ボルト41を貫通させるための孔32(図4参照)が形成されている。また、図5に示したように、前記第2の取付ブラケット12dが、シュラウド22にボルト42で締結されている。その場合に、図9に示すように、シュラウド22には、前記第2取付ブラケット12dを下方から受支するための棚部22d(図3参照)が形成されている。
【0029】
図9に示すように、シュラウド22には、その側壁部22aの上部において、該側壁部22aを越えて側方に張り出す被当接部22bが形成されている。そして、その被当接部22bの上側水平壁部51(図3参照)の後端部が、図5に示したように、ランプブラケット24の前端部に、ボルト44で締結されている[請求項2の構成]。その場合に、図2に示したように、ランプブラケット24には、前記ボルト44を貫通させるための孔33(図4参照)が形成されている。また、図10に示すように、シュラウド22の上側水平壁部51にも、前記ボルト44を貫通させるための長孔51aが形成されている。
【0030】
ここで、図5に示したように、前記シュラウド22の被当接部22bは、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bの上方にも近接した状態で張り出すようになっている[請求項1の構成]。そして、図9及び図10に示したように、前記被当接部22bは、シュラウド22の側壁部22aから、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bの上方に向けて延びる上側水平壁部51と、シュラウド22の側壁部22aに接続しながら、前記上側水平壁部51の前端部から、下方に向けて延びる縦壁部52と、シュラウド22の側壁部22aに接続しながら、前記縦壁部52の下端部から、後方に向けて延びる下側水平壁部53とを有して、縦断面形状がコ字状に形成されている[請求項3の構成]。
【0031】
そして、特に図10に明示したように、前記被当接部22bのコ字状の内部に、前記縦壁部52に接続しながら、前記上側水平壁部51と前記下側水平壁部53との間で上下方向に延びるリブ55…55が形成されている[請求項3の構成]。
【0032】
また、図9及び図10に示したように、前記シュラウド22の側壁部22aに接続しながら、前記下側水平壁部53の後端部から下方に向けて延びる第2の縦壁部54が形成されている。そして、特に図10に明示したように、前記リブ55…55は、前記下側水平壁部53を越えて、前記第2の縦壁部54にも連続的に形成されている[請求項4の構成]。
【0033】
一方、図7及び図8に示したように、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bは、水平面部12xと、縦面部12yとを有している。これらのうち、水平面部12xは、図5並びに図11及び図12に示したように、シュラウド22の被当接部22bの下側水平壁部53と、上下方向に対面して、該方向に当接し得るようになっている。また、縦面部12yは、同じく図5並びに図11及び図12に示したように、シュラウド22の被当接部22bの縦壁部52と、水平方向に対面して、該方向に当接し得るようになっている[請求項5の構成]。
【0034】
その場合に、特に図5に明示したように、前記シュラウド22の被当接部22bの縦壁部52は、前方から斜め側方を向いている(図9及び図10参照)。つまり、縦壁部52は、自動車1の前方から斜め側方に配向している[請求項6の構成]。また、これに対応して、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bにおける縦面部12yも、前方から斜め側方を向いている(図5及び図7参照)。
【0035】
以上のような構成により、まず、本実施形態に係る自動車1の前部構造10においては、図5に示したように、ヘッドランプ12をシュラウド22の側方に配設し、且つヘッドランプ12を収容するヘッドランプハウジング12aに、閉じた状態のフードパネル14の前側縁部14aの下方に位置する当接部12bを形成した場合において、シュラウド22の側壁部22aの上部に、前記ヘッドランプハウジング12aの当接部12bの上方に近接状態で張り出す被当接部22bを設けたから、たとえ、自動車1の前方や側方等の外部から衝撃を受けて、ヘッドランプ12が車体の内方に移動したり車体から外れ、そのはずみでヘッドランプハウジング12aが上方に移動しようとしたときでも、前記シュラウド22の被当接部22bと前記ヘッドランプハウジング12aの当接部12bとの当接にによってその上方移動が規制されることとなり、フードパネル14まで損傷することが抑制される。しかも、既存のシュラウド22に前記被当接部22bを設けただけであるから、前記効果を得るために部品点数が増大することもない。
【0036】
次に、図4及び図5に示したように、アッパフレーム(所定の車体側部材)23と連結されてヘッドランプハウジング12aを支持するランプブラケット24の前端部に、シュラウド22の被当接部22bを締結したから、該被当接部22bの剛性向上が図られ、ヘッドランプハウジング12aの上方移動規制機能が確保されると共に、ヘッドランプ12の支持剛性も向上する。
【0037】
次に、図10に示したように、上側水平壁部51と縦壁部52と下側水平壁部53とにより、縦断面形状がコ字状に形成された前記シュラウド22の被当接部22bの内部に、前記縦壁部52に接続しながら上下方向に延びるリブ55…55を形成したから、前記被当接部22bの下方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジング12aの上方移動規制性能が向上する。
【0038】
次に、同じく図10に示したように、前記リブ55を、下側水平壁部53に連続する第2の縦壁部54にも連続的に形成したから、該第2の縦壁部54の前方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジング12aの後方移動規制性能と、前記被当接部22bの下方からの荷重入力に対する耐荷重性能、つまりヘッドランプハウジング12aの上方移動規制性能とが併せて向上する。
【0039】
次に、図5、図7及び図8に示したように、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bに、シュラウド22の被当接部22bの下側水平壁部53と当接する水平面部12xを形成したから、これらの下側水平壁部53と水平面部12xとの上下方向の当接により、ヘッドランプハウジング12aの上方移動が確実に規制されることとなる。また、同じく図5、図7及び図8に示したように、ヘッドランプハウジング12aの当接部12bに、シュラウド22の被当接部22bの縦壁部52と当接する縦面部12yを形成したから、これらの縦壁部52と縦面部12yとの水平方向の当接により、ヘッドランプハウジング12aの後方移動が確実に規制されることとなる。そして、いずれにおいても、フードパネル14の損傷が、より一層確実に抑制されることとなる。
【0040】
次に、図5、図9及び図10に示したように、シュラウド22の被当接部22bの縦壁部52を、自動車1の前方から斜め側方に配向させたから、例えば、前方から衝撃を受けたヘッドランプハウジング12aは、この被当接部22bの縦壁部52によって、側方へ移動するように案内され、また、例えば、側方から衝撃を受けたヘッドランプハウジング12aは、この被当接部22bの縦壁部52によって、前方へ移動するように案内されることとなる。そして、いずれにおいても、衝撃によりヘッドランプ12が車体の内方に移動し、はずみでヘッドランプハウジング12aがフードパネル14を上方へ押し上げることが、より一層確実に抑制されることとなる。
【0041】
なお、前記各実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、なお種々の修正、変更が可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、自動車の前部構造において、シュラウドの外側方に配設されたヘッドランプが外部からの衝撃により上方移動してフードパネルを損傷させることを抑制するもので、ヘッドランプをシュラウドの外側方に配設した自動車の前部構造の技術分野において幅広い産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る自動車の前部構造を示す平面図である。
【図2】前記自動車の右前部の内部構造を示す拡大平面図である(但し、シュラウドの形状は概略であり、仮想線で示してある)。
【図3】シュラウドの全体構造を示す正面図である。
【図4】図2の範囲に対応する右側面図である(但し、シュラウドの形状は概略である)。
【図5】ヘッドランプを取り付けた図2に対応する拡大平面図である。
【図6】フェンダーパネル及びヘッドランプを取り付けた図4に対応する右側面図である。
【図7】右ヘッドランプの全体構造を示す平面図である。
【図8】同、左側面図である。
【図9】シュラウドの右上角部を仰ぎ見た部分拡大斜視図である。
【図10】図9の範囲に対応する背面側から仰ぎ見た部分拡大斜視図である。
【図11】図5のX−X切断線による端面図である(ヘッドランプの内部構造は省略してある)。
【図12】図5のY−Y切断線による端面図である(ヘッドランプの内部構造は省略してある)。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車
10 前部構造
11 フロントバンパ
12 ヘッドランプ
12a ヘッドランプハウジング
12b 当接部
12x 当接部の水平面部
12y 当接部の縦面部
13 フェンダパネル
14 フードパネル
14a フードパネルの前側縁部
21 フロントサイドフレーム
22 シュラウド
22a シュラウドの側壁部
22b シュラウドの被当接部
23 アッパフレーム(所定の車体側部材)
24 ランプブラケット
51 シュラウド被当接部の上側水平壁部
52 シュラウド被当接部の縦壁部
53 シュラウド被当接部の下側水平壁部
54 シュラウド被当接部の第2縦壁部
55 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対のフロントサイドフレームの前端部間に架設されたシュラウドと、該シュラウドの車幅方向の側壁部の側方に配設された左右1対のヘッドランプと、閉じた状態で前記シュラウドの上方を覆うフードパネルとを有する自動車の前部構造であって、
前記ヘッドランプを収容するヘッドランプハウジングに、閉じた状態の前記フードパネルの前側縁部の下方に位置する当接部が設けられ、
前記シュラウドの側壁部の上部に、前記ヘッドランプハウジングの当接部の上方に近接状態で張り出して、外部から衝撃を受けたときに前記ヘッドランプハウジングの当接部と当接してヘッドランプの上方移動を規制する被当接部が設けられていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の前部構造において、
前記フロントサイドフレームの上方に、所定の車体側部材と連結されて前記ヘッドランプハウジングを支持するランプブラケットが配設されており、
該ランプブラケットの前端部に、前記シュラウドの被当接部が締結されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドの被当接部は、該シュラウドの側壁部からヘッドランプハウジングの当接部の上方に向けて延びる上側水平壁部と、シュラウドの側壁部に接続しながら前記上側水平壁部の前端部から下方に向けて延びる縦壁部と、シュラウドの側壁部に接続しながら前記縦壁部の下端部から後方に向けて延びる下側水平壁部とを有して、縦断面形状がコ字状に形成されており、
その被当接部の内部に、前記縦壁部に接続しながら前記上側水平壁部と前記下側水平壁部との間で上下方向に延びるリブが形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項4】
前記請求項3に記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドの側壁部に接続しながら前記下側水平壁部の後端部から下方に向けて延びる第2の縦壁部が形成され、
前記リブは、前記下側水平壁部を越えて、前記第2の縦壁部にも連続的に形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項5】
前記請求項3又は4に記載の自動車の前部構造において、
前記ヘッドランプハウジングの当接部は、前記シュラウドの被当接部の下側水平壁部と当接する水平面部と、前記シュラウドの被当接部の縦壁部と当接する縦面部とを有していることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項6】
前記請求項5に記載の自動車の前部構造において、
前記シュラウドの被当接部の縦壁部は、前方から斜め側方を向いていることを特徴とする自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−112322(P2007−112322A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306759(P2005−306759)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】