自動車の前部構造
【課題】この発明は、バンパフェースロア補強部支持のための部品点数の増加を抑えつつ、バンパフェースロア補強部の後方への変位を確実に防止して脚払い性能を向上させることができる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】バンパフェース11を、アッパ部11aとロア部11bとから構成し、該アッパ部11aとロア部11bとの間に開口部13を形成するとともに、バンパメッシュ12を、開口部13に位置するメッシュ本体14と、上記バンパフェース11のロア部11bの内方に位置し、該ロア部11bの下端と締結されるバンパフェースロア補強部15とから構成し、上記バンパメッシュ12には、上記バンパフェース11のロア部2のバンパフェースロア補強部15の下端から後方に延びる延出部16を設け、該延出部16をシュラウド2のロア部23に締結した。
【解決手段】バンパフェース11を、アッパ部11aとロア部11bとから構成し、該アッパ部11aとロア部11bとの間に開口部13を形成するとともに、バンパメッシュ12を、開口部13に位置するメッシュ本体14と、上記バンパフェース11のロア部11bの内方に位置し、該ロア部11bの下端と締結されるバンパフェースロア補強部15とから構成し、上記バンパメッシュ12には、上記バンパフェース11のロア部2のバンパフェースロア補強部15の下端から後方に延びる延出部16を設け、該延出部16をシュラウド2のロア部23に締結した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の前部構造に関し、特に、バンパフェースと、バンパメッシュと、上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドとを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部構造としては、従来より、バンパフェースをアッパ部とロア部とから構成し、バンパフェースのロア部の内方に、バンパフェースロア補強部を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1では、バンパフェースロア補強部を設けることにより、車両走行中に歩行者と接触した際、歩行者の脚払いが確実になされる(車両の下側へ歩行者の脚を巻き込むことを確実に防止できる)とされている。
【0004】
さらに、前記特許文献1では、車両走行抵抗を低減すべく車両の前方部下面を覆うアンダーカバーを介してバンパフェースロア補強部をクロスメンバに連結する構造が開示されている。これにより、重量増加を抑制しつつ、高い強度でもってバンパフェースロア補強部を後方にて支持することができ、車両走行中に歩行者と接触した際の脚払い性能が向上するとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−203158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アンダーカバーは、あくまでも、車両走行時の走行抵抗を低減するために設けられた部材であり、車体下部の強度の向上を目的として設けられた部材ではないため、さほど高い剛性を有するものではない。
【0007】
故に、高い強度を有するクロスメンバにバンパフェースロア補強部を連結するとはいえ、バンパフェースロア補強部を上述したようにアンダーカバーに連結した構造は、補強部の支持強度が充分であるとは言い難い。従って、車両走行中における歩行者との接触時において、バンパフェースロア補強部が後方に変位してしまうおそれがあり、バンパフェースロア補強部が脚払い性能を向上させる部材として充分機能しないおそれがある。
【0008】
さらに、前記特許文献1に開示の構造では、バンパフェースロア補強部を支持するためにアンダーカバーを設けることが必須となるため、その分、部品点数の増大を招いてしまうという問題がある。
【0009】
この発明は、バンパフェースロア補強部支持のための部品点数の増加を抑えつつ、バンパフェースロア補強部の後方への変位を確実に防止して脚払い性能を向上させることができる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車の前部構造は、バンパフェースと、バンパメッシュと、上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドと、を備え、上記バンパフェースを、アッパ部とロア部とから構成し、該アッパ部とロア部との間に開口部を形成するとともに、上記バンパメッシュを、上記開口部に位置するメッシュ本体と、上記バンパフェースのロア部の内方に位置し、該ロア部の下端と締結されるバンパフェースロア補強部とから構成し、上記バンパメッシュには、上記バンパフェースロア補強部の下端から後方に延びる延出部を設け、該延出部を上記シュラウドのロア部に締結したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、熱交換器を支持すべく高い剛性を有するシュラウドのロア部に、バンパフェースロア補強部を延出部により直接締結することで、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュにおいて高い支持剛性を得ることができ、この結果、車両が歩行者と接触した際、歩行者の脚払いを確実に実行することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドは、アッパ部、サイド部、ロア部とからなる樹脂製シュラウドであって、上記シュラウドのロア部には、他の部位より断面剛性が高い熱交換器支持部を形成し、前記延出部を上記熱交換器支持部と隣接する部位に締結したことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、専用の補強部を形成することなく、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持剛性を向上させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドのロア部の両側部に、前記熱交換器支持部を形成するとともに、該熱交換器支持部に対応して、前記シュラウドのロア部の両側部に形成した熱交換器支持部に隣接して前記延出部の締結部位を形成したことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、延出部の複数の締結部位同士が車幅方向において互いに離れて位置するため、上記締結部位が中央部寄りに設けられる場合に比べて、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持状態を安定させることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記延出部の両側部を前記シュラウドのロア部の下面に締結し、上記延出部の中央部には、上記シュラウドのロア部の下面より上方に突出し、前後方向に延びる突出部を形成したことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、歩行者との接触時には、突出部により延出部の中央部をシュラウドのロア部にて突っ張らせることができるため、脚払い性能をさらに向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドのロア部に、該ロア部の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部を形成し、前記突出部を上記膨出部の下面に締結したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持剛性の向上と、歩行者との接触時における、シュラウドのロア部の、延出部の中央部分に対する突っ張り性能の向上とを両立させることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記延出部の両側部に、前記シュラウドのロア部との締結部位より後方において、斜め下方に延びる組付けガイド部を形成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前記組付けガイド部により、延出部を車体前部の所定の高さ位置に案内することができ、延出部を確実にシュラウドのロア部の下面に案内できる。従って、延出部のロア部に対する組付け性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、元々高い剛性を有するシュラウドのロア部に、バンパフェースロア補強部を延出部により直接締結することで、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュにおいて高い支持剛性を得ることができる。従って、バンパフェースロア補強部支持のための部品点数の増加を抑えつつ、バンパフェースロア補強部の後方への変位を確実に防止して脚払い性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、この発明の実施形態に係る自動車の前部構造を示す前方斜視図であり、図2は、この発明の実施形態に係る自動車の前部構造におけるバンパ構造体1を示す側面図である。本実施形態における自動車の前部構造は、図1に示すように、主にバンパ構造体1と、バンパ構造体1の後方にロア部23が配設されるシュラウド2とを備えた構成である。本実施形態においてシュラウド2は、主にアッパ部21、サイド部22、ロア部23から構成された略矩形枠形状の樹脂製の部材である。なお、図中において矢印(F)は車両前方を示し、矢印(R)は車両後方を示す。
【0024】
バンパ構造体1は、図1、図2に示すように、バンパフェース11(図1においては図示を省略してある。)、バンパメッシュ12から構成され、車体前部に組付けられている。
【0025】
バンパフェース11は、図2に示すように、アッパ部11aと、ロア部11bとからなり、射出成形により一体的に成形されている。アッパ部11aとロア部11bとの間には車幅方向に長い開口部13が形成され、開口部13には格子状に成形されて外気をエンジンルーム側に導入するメッシュ本体14が車両前方側から挿入、固定されている。
【0026】
バンパフェース11のロア部11bの内方には、平面視で略円弧状のバンパフェースロア補強部15(以下、補強部15と略記する。)が車幅方向に延びるように設けられ、バンパメッシュ12は、開口部13に位置するメッシュ本体14と、上記補強部15とから構成されている。
【0027】
また、補強部15には、その下端から車幅方向に亘って後方に延びる延出部16が一体成形され、延出部16はさらに、後方に延びる2つの締結突部16a、16aが左右両側部に形成されている。
【0028】
さらに、延出部16は、車幅方向中央部に、他よりも上方に突出した突出部17が前後方向に延びるように形成されている。
【0029】
そして、本実施形態では、延出部16の締結突部16aがバンパフェース11の後方に配設されるシュラウド2のロア部23の下面にボルト24B、ナット24Nで締結され、補強部15が支持される構造となっている。
【0030】
ここで、バンパ構造体1の構成についてさらに図3、図4を用いて説明する。図3(a)、(b)は、それぞれバンパ構造体1のうち、バンパメッシュ12を示す後方斜視図、バンパメッシュ12を示す正面図である。図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3(a)におけるA−A線矢視断面図、図4(a)におけるB−B線矢視断面図、図3(a)におけるC−C線矢視断面図である。
【0031】
図3(a)において補強部15は、車幅方向左右両端部で後方に延びる側面部15aと、車両前方に向かって延びる上面部15b(図4参照)と、上面部15bから下方に延びる前面部15c(図4参照)、及び前面部15cから後方に向かって延びる下面部15dとによって外面枠が形成され、両端部の側面部15a同士を結ぶ横リブ15eが前面部15cから後方に向かって延び、さらに上面部15bと前面部15cと下面部15dとを結び、横リブ15eと略直交する複数の縦リブ15fが形成された構造を有している。なお、図4では横リブは2本としているが、1本設けられても良く、また、3本以上設けられていても良い。
【0032】
なお、横リブ15eと縦リブ15fの前方部は、前面部15cと一体的に形成され、前方部が突出した形状とされていないので、車両との接触時、歩行者の接触部位への衝撃吸収体先端部による衝撃力の集中が防止でき、接触部位の損傷度合いを低減することも可能である。
【0033】
延出部16は、下面部15dに一体成形されることにより設けられ、延出部16の締結突部16a、16aには、シュラウド2のロア部23との締結部位となるボルト孔16b、16bが形成されている。また、延出部16の締結突部16a、16aには、ボルト孔16b、16bよりも後方に、先端(車両後方)に向かうにつれて斜め下方に傾斜するガイド面16cが形成されている。
【0034】
さらに、延出部16は、図3(b)にも示すように、前後方向に延びる多数の凹凸部を車幅方向に沿って複数形成したリブ状に形成され、歩行者との接触時における、前方からの荷重に対して高い剛性を有する形状となっている。その凹凸部の中で、車幅方向中央部に位置する凹凸部が、他よりも上方に突出した前記突出部17である。さらに、この突出部17の上端面には、締結突部16aと同様にボルト孔17aが形成されている。
【0035】
なお、延出部16表面の形状としては、上述したような、前後方向に延びる複数の凹凸部を形成したものに限定されない。例えば、突出部17を除く延出部16表面上において複数のリブをスラント方向に延びるように形成し、所謂ハニカム構造体としたものでもよい。
【0036】
ところで、補強部15とバンパフェース11との連結構造であるが、図4(a)に示すように、補強部15の下面部15dの後部に複数の肉厚部15gが形成され、バンパフェース11の後端部11cと連結部材18で締結されている。これにより、補強部15のみならず、バンパフェース11のロア部11bをもシュラウド2(図1参照)により連結、支持されていることになる。
【0037】
この肉厚部15gに至る補強部15の下面部15dは、図4(b)に示すように、上部方向に向かって突出した補強凸部15hを有している。つまり下面部15dは、バンパフェース11後端部11cとの締結部である肉厚部15gの前方部で三方に壁を有する立体的構造を有しているため、歩行者との接触時において締結部付近が容易に破壊しない高強度構造となっている。
【0038】
バンパフェース11のロア部11bの後端部11cの上部と補強部15との関係であるが、図4(c)に示すように、図4(a)と異なり、補強部15における下面部15dの後方に肉厚部15gが形成されておらず、バンパフェース11のロア部11bの後端部11cと締結されていない。しかし、補強部15の上方に形成された垂下面14aに係合孔14b(いずれも図3参照)が設けられ、係合孔14bにはバンパフェース11のロア部11bの上面部11dから後方に延びる爪部11eが挿通されるとともに、爪部11eは、補強部15の上面部15bの後端に形成され、且つ係合孔14bの下面である爪係合部15iと係合している。なお、爪部11eの形状は上下逆にされて、メッシュ本体14側に係合される構造であっても良い。
【0039】
次に、シュラウド2の構造及び、補強部15の支持構造について、さらに図5〜図9を用いて説明する。図5は、補強部15の延出部16とシュラウド2との締結状態を示す底面図、図6は、図5におけるD−D線矢視断面図、図7は、シュラウド2にラジエータ3を取付けた状態を示す断面図、図8は、延出部16の突出部17とシュラウド2の膨出部28の下面との締結状態を示す前方斜視図、図9は、図8におけるE−E線矢視断面図である。
【0040】
上述したように、補強部15は、図5、図6にも示すように、延出部16の左右両側の締結突部16aにおいてシュラウド2のロア部23の下面にボルト24B、ナット24Nで締結されている。具体的には、ボルト24Bが、締結突部16aのボルト孔16b、ロア部23の下面に穿設されたボルト孔23aに挿通され、ロア部23の上面からナット24Nで締め付けられている。
【0041】
元々シュラウド2は、ラジエータ3(図7参照)を支持すべく高い剛性を有する部材であるため、上述したように、バンパメッシュ12の補強部15を延出部16によりシュラウド2のロア部23に直接締結したことにより、補強部15を含むバンパメッシュ12において高い支持剛性を得ることができる。従って、車両走行中における歩行者との接触時、補強部15の変位を抑制することができるとともに、従来の技術では必要とされる、アンダーカバーといった連結部材を省略できるため、部品点数を増加させることなく脚払い性能を向上させることができる。
【0042】
なお、図6において、シュラウド2の後方で、且つロア部23と締結突部16aとの締結部位の後方に位置する部材4は、車幅方向に亘って延び、車体の左右のサイドフレーム(不図示)間を橋渡すクロスメンバである。延出部16をクロスメンバ4ではなく、クロスメンバ4の前方に位置するシュラウド2と締結することにより、延出部16自身の長さが短く抑えられた構成となっている。
【0043】
ところで、本実施形態のように、シュラウド2が樹脂製とされている場合、図5に示すように、シュラウド2のロア部2の下面においては、多数の凹凸が形成されたリブ状の部位により、他よりも断面剛性の高い支持部25が形成されている。そこで、本実施形態では、締結突部16aがこの断面剛性の高い支持部25に隣接する部位に締結されている。
【0044】
この支持部25の中心部分には挿通孔26が形成されており、この挿通孔26には、図7に示すように、熱交換器としてのラジエータ3の下部に設けられた2本の棒体31、31が嵌め込まれ、図1、図6においては便宜上図示を省略しているが、ラジエータ3は、棒体31に取付けられたマウントラバー32を介してシュラウド2のロア部23にラバーマウントされている。
【0045】
なお、ラジエータ3は、棒体31に対応して上方に延びる棒体33を上部に設けており、この棒体33は、シュラウド2のアッパ部21に形成された挿通孔27に嵌め込まれている。
【0046】
因みに、ラジエータ3としては、一側のサイドタンク34、ラジエータコア35、他側のサイドタンク36を備えた公知のものが用いられている。
【0047】
このように、シュラウド2のロア部23において、他よりも断面剛性が高い支持部25にてラジエータ3を支持することにより、ラジエータ3の支持剛性の向上を実現している。
【0048】
さらに、本実施形態においては、支持部25に隣接する部位に、延出部16の締結突部16aを締結したことにより、専用の補強部を形成することなく、補強部15を含むバンパメッシュ12の支持剛性をも向上させることができる。
【0049】
但し、本発明においては、シュラウド2が金属製のものであってもよく、この場合、ロア部23における剛性はいずれの部位も高く、断面剛性の高い部位を改めて形成することは必要とされない。従って、この場合は、延出部16との連結箇所は任意に設定することができる。
【0050】
ここで、本実施形態では、シュラウド2のロア部23において、支持部25が両側部に形成されており、且つ、延出部16において、支持部25に対応して延出部16の両側部に締結突部16aが形成され、それぞれがボルト24B、ナット24Nで締結されている。
【0051】
このように、延出部16のうち、左右両側部に形成された締結突部16aをシュラウド2のロア部23両側部に締結することにより、2箇所の締結部位同士が車幅方向において互いに離れて位置しているため、締結部位が中央部寄りに設けられる場合に比べて、シュラウド2のロア部23による補強部15の支持状態を安定させることができる。
【0052】
また、延出部16をシュラウド2のロア部23に締結した状態において、延出部16の中央部の、前記突出部17が、図8、図9に示すようにシュラウド2のロア部23の下面より上方に突出し、ロア部23の前面側に当接している。
【0053】
シュラウド2のロア部23には、該ロア部23の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部28が形成されており、膨出部28の下方には、複数の凹部23bにより相対的に突出した凸面23cが最下部に形成されている。そして、延出部16とシュラウド2のロア部23との締結状態においては、この凸面23cに突出部17の直立面17bが当接した状態にある。
【0054】
さらに、膨出部28において、シュラウド2のロア部23の車幅方向の中央部にはトンネル部28bが形成されており、該トンネル部28bの内壁に断面コ字状のナット部材29Nが溶着されている。
【0055】
そして、突出部17に穿設されたボルト孔17a、膨出部28の下部に穿設されたボルト孔28aにボルト29Bが挿通され、ナット部材29Nで締め付けられ、突出部17が膨出部28に締結されている。
【0056】
これにより、歩行者との接触時には、突出部17により延出部16の中央部をシュラウド2のロア部23にて突っ張らせることができるため、脚払い性能をさらに向上させることができる。
【0057】
また、突出部17は、樹脂製材料からなる延出部16を成形する際に凸状に射出成形された部位であるため、簡素な構成でありながら、高い剛性を有する部位となっている。従って、延出部16を有する補強部15の製造コストを低減することができる。さらに、突出部17は、延出部16の前後方向に延びるように形成されているため、歩行者との接触時において、前方からの荷重に対して高い剛性を有することになる。
【0058】
さらにまた、シュラウド2のロア部23に突出部17が当接するのみではなく、上述したように、延出部16を、シュラウド2のロア部23の膨出部28の下面に締結することにより、補強部15を含むバンパメッシュ12の支持剛性の向上と、歩行者との接触時における、ロア部23の、延出部16の中央部分に対する突っ張り性能の向上とを両立させることができる。
【0059】
ここで、バンパ構造体1は、延出部16をシュラウド2のロア部23に締結する工程を経て、車体に組付けられることになるが、バンパ構造体1は、メッシュ本体14、補強部15からなるバンパメッシュ12にバンパフェース11を予め組付けることによりユニット化されている。そして、このユニット化されたバンパ構造体1が車体の前方から誘導され、前記締結の工程に入るようになっている。このバンパ構造体1の誘導時においては、図10の二点鎖線で示すように、前記締結突部16a先端のガイド面16c上をシュラウド2下部の前面側にスライドさせることにより、延出部16(バンパ構造体1)を車体前部の所定の高さ位置に案内することができ、延出部16を確実にシュラウド2のロア部23の下面に案内できるようになっている。従って、このガイド面16cにより、延出部16のロア部23に対する組付け性能が向上することになる。
【0060】
なお、上述した実施形態においては、延出部16の両側部を締結突部16aによりシュラウド2のロア部23の下面に締結しつつ、延出部16の中央部に突出部17を形成し、この突出部17を膨出部28の下面に締結した構造となっているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態の突出部17に相当する部位を延出部16の両側部に形成し、シュラウド2のロア部23側の膨出部28の両側部の下面に締結する構造としてもよい。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の熱交換器は、ラジエータ3に対応し、
以下同様に、
熱交換器支持部は、支持部25に対応し、
組付けガイド部は、ガイド面16cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施形態に係る自動車の前部構造を示す前方斜視図。
【図2】この発明の実施形態に係る自動車の前部構造におけるバンパ構造体を示す側面図。
【図3】(a)図1におけるバンパ構造体のうち、バンパメッシュを示す後方斜視図、(b)バンパメッシュを示す正面図。
【図4】(a)図3(a)におけるA−A線矢視断面図、(b)(a)におけるB−B線矢視断面図、(c)図3(a)におけるC−C線矢視断面図。
【図5】バンパフェースロア補強部の延出部とシュラウドとの締結状態を示す底面図。
【図6】図5におけるD−D線矢視断面図。
【図7】シュラウドにラジエータを取付けた状態を示す断面図。
【図8】延出部の突出部とシュラウドの膨出部の下面との締結状態を示す前方斜視図。
【図9】図8におけるE−E線矢視断面図。
【図10】バンパ構造体をシュラウドに組み付ける工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
1…バンパ構造体
2…シュラウド
12…バンパメッシュ
15…バンパフェースロア補強部
16…延出部
16c…ガイド面
17…突出部
25…支持部
28…膨出部
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の前部構造に関し、特に、バンパフェースと、バンパメッシュと、上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドとを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部構造としては、従来より、バンパフェースをアッパ部とロア部とから構成し、バンパフェースのロア部の内方に、バンパフェースロア補強部を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1では、バンパフェースロア補強部を設けることにより、車両走行中に歩行者と接触した際、歩行者の脚払いが確実になされる(車両の下側へ歩行者の脚を巻き込むことを確実に防止できる)とされている。
【0004】
さらに、前記特許文献1では、車両走行抵抗を低減すべく車両の前方部下面を覆うアンダーカバーを介してバンパフェースロア補強部をクロスメンバに連結する構造が開示されている。これにより、重量増加を抑制しつつ、高い強度でもってバンパフェースロア補強部を後方にて支持することができ、車両走行中に歩行者と接触した際の脚払い性能が向上するとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−203158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アンダーカバーは、あくまでも、車両走行時の走行抵抗を低減するために設けられた部材であり、車体下部の強度の向上を目的として設けられた部材ではないため、さほど高い剛性を有するものではない。
【0007】
故に、高い強度を有するクロスメンバにバンパフェースロア補強部を連結するとはいえ、バンパフェースロア補強部を上述したようにアンダーカバーに連結した構造は、補強部の支持強度が充分であるとは言い難い。従って、車両走行中における歩行者との接触時において、バンパフェースロア補強部が後方に変位してしまうおそれがあり、バンパフェースロア補強部が脚払い性能を向上させる部材として充分機能しないおそれがある。
【0008】
さらに、前記特許文献1に開示の構造では、バンパフェースロア補強部を支持するためにアンダーカバーを設けることが必須となるため、その分、部品点数の増大を招いてしまうという問題がある。
【0009】
この発明は、バンパフェースロア補強部支持のための部品点数の増加を抑えつつ、バンパフェースロア補強部の後方への変位を確実に防止して脚払い性能を向上させることができる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車の前部構造は、バンパフェースと、バンパメッシュと、上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドと、を備え、上記バンパフェースを、アッパ部とロア部とから構成し、該アッパ部とロア部との間に開口部を形成するとともに、上記バンパメッシュを、上記開口部に位置するメッシュ本体と、上記バンパフェースのロア部の内方に位置し、該ロア部の下端と締結されるバンパフェースロア補強部とから構成し、上記バンパメッシュには、上記バンパフェースロア補強部の下端から後方に延びる延出部を設け、該延出部を上記シュラウドのロア部に締結したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、熱交換器を支持すべく高い剛性を有するシュラウドのロア部に、バンパフェースロア補強部を延出部により直接締結することで、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュにおいて高い支持剛性を得ることができ、この結果、車両が歩行者と接触した際、歩行者の脚払いを確実に実行することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドは、アッパ部、サイド部、ロア部とからなる樹脂製シュラウドであって、上記シュラウドのロア部には、他の部位より断面剛性が高い熱交換器支持部を形成し、前記延出部を上記熱交換器支持部と隣接する部位に締結したことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、専用の補強部を形成することなく、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持剛性を向上させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドのロア部の両側部に、前記熱交換器支持部を形成するとともに、該熱交換器支持部に対応して、前記シュラウドのロア部の両側部に形成した熱交換器支持部に隣接して前記延出部の締結部位を形成したことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、延出部の複数の締結部位同士が車幅方向において互いに離れて位置するため、上記締結部位が中央部寄りに設けられる場合に比べて、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持状態を安定させることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記延出部の両側部を前記シュラウドのロア部の下面に締結し、上記延出部の中央部には、上記シュラウドのロア部の下面より上方に突出し、前後方向に延びる突出部を形成したことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、歩行者との接触時には、突出部により延出部の中央部をシュラウドのロア部にて突っ張らせることができるため、脚払い性能をさらに向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記シュラウドのロア部に、該ロア部の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部を形成し、前記突出部を上記膨出部の下面に締結したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュの支持剛性の向上と、歩行者との接触時における、シュラウドのロア部の、延出部の中央部分に対する突っ張り性能の向上とを両立させることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記延出部の両側部に、前記シュラウドのロア部との締結部位より後方において、斜め下方に延びる組付けガイド部を形成したことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前記組付けガイド部により、延出部を車体前部の所定の高さ位置に案内することができ、延出部を確実にシュラウドのロア部の下面に案内できる。従って、延出部のロア部に対する組付け性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、元々高い剛性を有するシュラウドのロア部に、バンパフェースロア補強部を延出部により直接締結することで、バンパフェースロア補強部を含むバンパメッシュにおいて高い支持剛性を得ることができる。従って、バンパフェースロア補強部支持のための部品点数の増加を抑えつつ、バンパフェースロア補強部の後方への変位を確実に防止して脚払い性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、この発明の実施形態に係る自動車の前部構造を示す前方斜視図であり、図2は、この発明の実施形態に係る自動車の前部構造におけるバンパ構造体1を示す側面図である。本実施形態における自動車の前部構造は、図1に示すように、主にバンパ構造体1と、バンパ構造体1の後方にロア部23が配設されるシュラウド2とを備えた構成である。本実施形態においてシュラウド2は、主にアッパ部21、サイド部22、ロア部23から構成された略矩形枠形状の樹脂製の部材である。なお、図中において矢印(F)は車両前方を示し、矢印(R)は車両後方を示す。
【0024】
バンパ構造体1は、図1、図2に示すように、バンパフェース11(図1においては図示を省略してある。)、バンパメッシュ12から構成され、車体前部に組付けられている。
【0025】
バンパフェース11は、図2に示すように、アッパ部11aと、ロア部11bとからなり、射出成形により一体的に成形されている。アッパ部11aとロア部11bとの間には車幅方向に長い開口部13が形成され、開口部13には格子状に成形されて外気をエンジンルーム側に導入するメッシュ本体14が車両前方側から挿入、固定されている。
【0026】
バンパフェース11のロア部11bの内方には、平面視で略円弧状のバンパフェースロア補強部15(以下、補強部15と略記する。)が車幅方向に延びるように設けられ、バンパメッシュ12は、開口部13に位置するメッシュ本体14と、上記補強部15とから構成されている。
【0027】
また、補強部15には、その下端から車幅方向に亘って後方に延びる延出部16が一体成形され、延出部16はさらに、後方に延びる2つの締結突部16a、16aが左右両側部に形成されている。
【0028】
さらに、延出部16は、車幅方向中央部に、他よりも上方に突出した突出部17が前後方向に延びるように形成されている。
【0029】
そして、本実施形態では、延出部16の締結突部16aがバンパフェース11の後方に配設されるシュラウド2のロア部23の下面にボルト24B、ナット24Nで締結され、補強部15が支持される構造となっている。
【0030】
ここで、バンパ構造体1の構成についてさらに図3、図4を用いて説明する。図3(a)、(b)は、それぞれバンパ構造体1のうち、バンパメッシュ12を示す後方斜視図、バンパメッシュ12を示す正面図である。図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3(a)におけるA−A線矢視断面図、図4(a)におけるB−B線矢視断面図、図3(a)におけるC−C線矢視断面図である。
【0031】
図3(a)において補強部15は、車幅方向左右両端部で後方に延びる側面部15aと、車両前方に向かって延びる上面部15b(図4参照)と、上面部15bから下方に延びる前面部15c(図4参照)、及び前面部15cから後方に向かって延びる下面部15dとによって外面枠が形成され、両端部の側面部15a同士を結ぶ横リブ15eが前面部15cから後方に向かって延び、さらに上面部15bと前面部15cと下面部15dとを結び、横リブ15eと略直交する複数の縦リブ15fが形成された構造を有している。なお、図4では横リブは2本としているが、1本設けられても良く、また、3本以上設けられていても良い。
【0032】
なお、横リブ15eと縦リブ15fの前方部は、前面部15cと一体的に形成され、前方部が突出した形状とされていないので、車両との接触時、歩行者の接触部位への衝撃吸収体先端部による衝撃力の集中が防止でき、接触部位の損傷度合いを低減することも可能である。
【0033】
延出部16は、下面部15dに一体成形されることにより設けられ、延出部16の締結突部16a、16aには、シュラウド2のロア部23との締結部位となるボルト孔16b、16bが形成されている。また、延出部16の締結突部16a、16aには、ボルト孔16b、16bよりも後方に、先端(車両後方)に向かうにつれて斜め下方に傾斜するガイド面16cが形成されている。
【0034】
さらに、延出部16は、図3(b)にも示すように、前後方向に延びる多数の凹凸部を車幅方向に沿って複数形成したリブ状に形成され、歩行者との接触時における、前方からの荷重に対して高い剛性を有する形状となっている。その凹凸部の中で、車幅方向中央部に位置する凹凸部が、他よりも上方に突出した前記突出部17である。さらに、この突出部17の上端面には、締結突部16aと同様にボルト孔17aが形成されている。
【0035】
なお、延出部16表面の形状としては、上述したような、前後方向に延びる複数の凹凸部を形成したものに限定されない。例えば、突出部17を除く延出部16表面上において複数のリブをスラント方向に延びるように形成し、所謂ハニカム構造体としたものでもよい。
【0036】
ところで、補強部15とバンパフェース11との連結構造であるが、図4(a)に示すように、補強部15の下面部15dの後部に複数の肉厚部15gが形成され、バンパフェース11の後端部11cと連結部材18で締結されている。これにより、補強部15のみならず、バンパフェース11のロア部11bをもシュラウド2(図1参照)により連結、支持されていることになる。
【0037】
この肉厚部15gに至る補強部15の下面部15dは、図4(b)に示すように、上部方向に向かって突出した補強凸部15hを有している。つまり下面部15dは、バンパフェース11後端部11cとの締結部である肉厚部15gの前方部で三方に壁を有する立体的構造を有しているため、歩行者との接触時において締結部付近が容易に破壊しない高強度構造となっている。
【0038】
バンパフェース11のロア部11bの後端部11cの上部と補強部15との関係であるが、図4(c)に示すように、図4(a)と異なり、補強部15における下面部15dの後方に肉厚部15gが形成されておらず、バンパフェース11のロア部11bの後端部11cと締結されていない。しかし、補強部15の上方に形成された垂下面14aに係合孔14b(いずれも図3参照)が設けられ、係合孔14bにはバンパフェース11のロア部11bの上面部11dから後方に延びる爪部11eが挿通されるとともに、爪部11eは、補強部15の上面部15bの後端に形成され、且つ係合孔14bの下面である爪係合部15iと係合している。なお、爪部11eの形状は上下逆にされて、メッシュ本体14側に係合される構造であっても良い。
【0039】
次に、シュラウド2の構造及び、補強部15の支持構造について、さらに図5〜図9を用いて説明する。図5は、補強部15の延出部16とシュラウド2との締結状態を示す底面図、図6は、図5におけるD−D線矢視断面図、図7は、シュラウド2にラジエータ3を取付けた状態を示す断面図、図8は、延出部16の突出部17とシュラウド2の膨出部28の下面との締結状態を示す前方斜視図、図9は、図8におけるE−E線矢視断面図である。
【0040】
上述したように、補強部15は、図5、図6にも示すように、延出部16の左右両側の締結突部16aにおいてシュラウド2のロア部23の下面にボルト24B、ナット24Nで締結されている。具体的には、ボルト24Bが、締結突部16aのボルト孔16b、ロア部23の下面に穿設されたボルト孔23aに挿通され、ロア部23の上面からナット24Nで締め付けられている。
【0041】
元々シュラウド2は、ラジエータ3(図7参照)を支持すべく高い剛性を有する部材であるため、上述したように、バンパメッシュ12の補強部15を延出部16によりシュラウド2のロア部23に直接締結したことにより、補強部15を含むバンパメッシュ12において高い支持剛性を得ることができる。従って、車両走行中における歩行者との接触時、補強部15の変位を抑制することができるとともに、従来の技術では必要とされる、アンダーカバーといった連結部材を省略できるため、部品点数を増加させることなく脚払い性能を向上させることができる。
【0042】
なお、図6において、シュラウド2の後方で、且つロア部23と締結突部16aとの締結部位の後方に位置する部材4は、車幅方向に亘って延び、車体の左右のサイドフレーム(不図示)間を橋渡すクロスメンバである。延出部16をクロスメンバ4ではなく、クロスメンバ4の前方に位置するシュラウド2と締結することにより、延出部16自身の長さが短く抑えられた構成となっている。
【0043】
ところで、本実施形態のように、シュラウド2が樹脂製とされている場合、図5に示すように、シュラウド2のロア部2の下面においては、多数の凹凸が形成されたリブ状の部位により、他よりも断面剛性の高い支持部25が形成されている。そこで、本実施形態では、締結突部16aがこの断面剛性の高い支持部25に隣接する部位に締結されている。
【0044】
この支持部25の中心部分には挿通孔26が形成されており、この挿通孔26には、図7に示すように、熱交換器としてのラジエータ3の下部に設けられた2本の棒体31、31が嵌め込まれ、図1、図6においては便宜上図示を省略しているが、ラジエータ3は、棒体31に取付けられたマウントラバー32を介してシュラウド2のロア部23にラバーマウントされている。
【0045】
なお、ラジエータ3は、棒体31に対応して上方に延びる棒体33を上部に設けており、この棒体33は、シュラウド2のアッパ部21に形成された挿通孔27に嵌め込まれている。
【0046】
因みに、ラジエータ3としては、一側のサイドタンク34、ラジエータコア35、他側のサイドタンク36を備えた公知のものが用いられている。
【0047】
このように、シュラウド2のロア部23において、他よりも断面剛性が高い支持部25にてラジエータ3を支持することにより、ラジエータ3の支持剛性の向上を実現している。
【0048】
さらに、本実施形態においては、支持部25に隣接する部位に、延出部16の締結突部16aを締結したことにより、専用の補強部を形成することなく、補強部15を含むバンパメッシュ12の支持剛性をも向上させることができる。
【0049】
但し、本発明においては、シュラウド2が金属製のものであってもよく、この場合、ロア部23における剛性はいずれの部位も高く、断面剛性の高い部位を改めて形成することは必要とされない。従って、この場合は、延出部16との連結箇所は任意に設定することができる。
【0050】
ここで、本実施形態では、シュラウド2のロア部23において、支持部25が両側部に形成されており、且つ、延出部16において、支持部25に対応して延出部16の両側部に締結突部16aが形成され、それぞれがボルト24B、ナット24Nで締結されている。
【0051】
このように、延出部16のうち、左右両側部に形成された締結突部16aをシュラウド2のロア部23両側部に締結することにより、2箇所の締結部位同士が車幅方向において互いに離れて位置しているため、締結部位が中央部寄りに設けられる場合に比べて、シュラウド2のロア部23による補強部15の支持状態を安定させることができる。
【0052】
また、延出部16をシュラウド2のロア部23に締結した状態において、延出部16の中央部の、前記突出部17が、図8、図9に示すようにシュラウド2のロア部23の下面より上方に突出し、ロア部23の前面側に当接している。
【0053】
シュラウド2のロア部23には、該ロア部23の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部28が形成されており、膨出部28の下方には、複数の凹部23bにより相対的に突出した凸面23cが最下部に形成されている。そして、延出部16とシュラウド2のロア部23との締結状態においては、この凸面23cに突出部17の直立面17bが当接した状態にある。
【0054】
さらに、膨出部28において、シュラウド2のロア部23の車幅方向の中央部にはトンネル部28bが形成されており、該トンネル部28bの内壁に断面コ字状のナット部材29Nが溶着されている。
【0055】
そして、突出部17に穿設されたボルト孔17a、膨出部28の下部に穿設されたボルト孔28aにボルト29Bが挿通され、ナット部材29Nで締め付けられ、突出部17が膨出部28に締結されている。
【0056】
これにより、歩行者との接触時には、突出部17により延出部16の中央部をシュラウド2のロア部23にて突っ張らせることができるため、脚払い性能をさらに向上させることができる。
【0057】
また、突出部17は、樹脂製材料からなる延出部16を成形する際に凸状に射出成形された部位であるため、簡素な構成でありながら、高い剛性を有する部位となっている。従って、延出部16を有する補強部15の製造コストを低減することができる。さらに、突出部17は、延出部16の前後方向に延びるように形成されているため、歩行者との接触時において、前方からの荷重に対して高い剛性を有することになる。
【0058】
さらにまた、シュラウド2のロア部23に突出部17が当接するのみではなく、上述したように、延出部16を、シュラウド2のロア部23の膨出部28の下面に締結することにより、補強部15を含むバンパメッシュ12の支持剛性の向上と、歩行者との接触時における、ロア部23の、延出部16の中央部分に対する突っ張り性能の向上とを両立させることができる。
【0059】
ここで、バンパ構造体1は、延出部16をシュラウド2のロア部23に締結する工程を経て、車体に組付けられることになるが、バンパ構造体1は、メッシュ本体14、補強部15からなるバンパメッシュ12にバンパフェース11を予め組付けることによりユニット化されている。そして、このユニット化されたバンパ構造体1が車体の前方から誘導され、前記締結の工程に入るようになっている。このバンパ構造体1の誘導時においては、図10の二点鎖線で示すように、前記締結突部16a先端のガイド面16c上をシュラウド2下部の前面側にスライドさせることにより、延出部16(バンパ構造体1)を車体前部の所定の高さ位置に案内することができ、延出部16を確実にシュラウド2のロア部23の下面に案内できるようになっている。従って、このガイド面16cにより、延出部16のロア部23に対する組付け性能が向上することになる。
【0060】
なお、上述した実施形態においては、延出部16の両側部を締結突部16aによりシュラウド2のロア部23の下面に締結しつつ、延出部16の中央部に突出部17を形成し、この突出部17を膨出部28の下面に締結した構造となっているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態の突出部17に相当する部位を延出部16の両側部に形成し、シュラウド2のロア部23側の膨出部28の両側部の下面に締結する構造としてもよい。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の熱交換器は、ラジエータ3に対応し、
以下同様に、
熱交換器支持部は、支持部25に対応し、
組付けガイド部は、ガイド面16cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施形態に係る自動車の前部構造を示す前方斜視図。
【図2】この発明の実施形態に係る自動車の前部構造におけるバンパ構造体を示す側面図。
【図3】(a)図1におけるバンパ構造体のうち、バンパメッシュを示す後方斜視図、(b)バンパメッシュを示す正面図。
【図4】(a)図3(a)におけるA−A線矢視断面図、(b)(a)におけるB−B線矢視断面図、(c)図3(a)におけるC−C線矢視断面図。
【図5】バンパフェースロア補強部の延出部とシュラウドとの締結状態を示す底面図。
【図6】図5におけるD−D線矢視断面図。
【図7】シュラウドにラジエータを取付けた状態を示す断面図。
【図8】延出部の突出部とシュラウドの膨出部の下面との締結状態を示す前方斜視図。
【図9】図8におけるE−E線矢視断面図。
【図10】バンパ構造体をシュラウドに組み付ける工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
1…バンパ構造体
2…シュラウド
12…バンパメッシュ
15…バンパフェースロア補強部
16…延出部
16c…ガイド面
17…突出部
25…支持部
28…膨出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部構造において、
バンパフェースと、
バンパメッシュと、
上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドと、を備え、
上記バンパフェースを、アッパ部とロア部とから構成し、該アッパ部とロア部との間に開口部を形成するとともに、
上記バンパメッシュを、上記開口部に位置するメッシュ本体と、上記バンパフェースのロア部の内方に位置し、該ロア部の下端と締結されるバンパフェースロア補強部とから構成し、
上記バンパメッシュには、上記バンパフェースロア補強部の下端から後方に延びる延出部を設け、
該延出部を上記シュラウドのロア部に締結した
自動車の前部構造。
【請求項2】
前記シュラウドは、アッパ部、サイド部、ロア部とからなる樹脂製シュラウドであって、
上記シュラウドのロア部には、他の部位より断面剛性が高い熱交換器支持部を形成し、
前記延出部を上記熱交換器支持部と隣接する部位に締結した
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記シュラウドのロア部の両側部に、前記熱交換器支持部を形成するとともに、
該熱交換器支持部に対応して、前記シュラウドのロア部の両側部に形成した熱交換器支持部に隣接して前記延出部の締結部位を形成した
請求項2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記延出部の両側部を前記シュラウドのロア部の下面に締結し、
上記延出部の中央部には、上記シュラウドのロア部の下面より上方に突出し、前後方向に延びる突出部を形成した
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記シュラウドのロア部に、該ロア部の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部を形成し、
前記突出部を上記膨出部の下面に締結した
請求項4記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
前記延出部の両側部に、前記シュラウドのロア部との締結部位より後方において、斜め下方に延びる組付けガイド部を形成した
請求項4記載の自動車の前部構造。
【請求項1】
自動車の前部構造において、
バンパフェースと、
バンパメッシュと、
上記バンパフェースの後方にロア部が配設されるシュラウドと、を備え、
上記バンパフェースを、アッパ部とロア部とから構成し、該アッパ部とロア部との間に開口部を形成するとともに、
上記バンパメッシュを、上記開口部に位置するメッシュ本体と、上記バンパフェースのロア部の内方に位置し、該ロア部の下端と締結されるバンパフェースロア補強部とから構成し、
上記バンパメッシュには、上記バンパフェースロア補強部の下端から後方に延びる延出部を設け、
該延出部を上記シュラウドのロア部に締結した
自動車の前部構造。
【請求項2】
前記シュラウドは、アッパ部、サイド部、ロア部とからなる樹脂製シュラウドであって、
上記シュラウドのロア部には、他の部位より断面剛性が高い熱交換器支持部を形成し、
前記延出部を上記熱交換器支持部と隣接する部位に締結した
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記シュラウドのロア部の両側部に、前記熱交換器支持部を形成するとともに、
該熱交換器支持部に対応して、前記シュラウドのロア部の両側部に形成した熱交換器支持部に隣接して前記延出部の締結部位を形成した
請求項2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記延出部の両側部を前記シュラウドのロア部の下面に締結し、
上記延出部の中央部には、上記シュラウドのロア部の下面より上方に突出し、前後方向に延びる突出部を形成した
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記シュラウドのロア部に、該ロア部の下面より上方位置において前方に膨出する膨出部を形成し、
前記突出部を上記膨出部の下面に締結した
請求項4記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
前記延出部の両側部に、前記シュラウドのロア部との締結部位より後方において、斜め下方に延びる組付けガイド部を形成した
請求項4記載の自動車の前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−203776(P2007−203776A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21995(P2006−21995)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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