説明

自動車の前部構造

【課題】車体の外観を良好に維持しつつ吸気取入口への水分の浸入を確実に防止する。
【解決手段】車体1の前端部に設置され、エンジンルームに走行風を導入するための開口10aが下部に形成されたバンパーフェース10と、該バンパーフェース10の後方に設置され、エンジン冷却用の熱交換器12の上部が取り付けられるシュラウドアッパ20aとを備えた自動車の前部構造において、上記シュラウドアッパ20a上に、エンジンに空気を取り込むための吸気取入口30を設置し、上記シュラウドアッパ20aの前面部に、上記バンパーフェース10との隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレート24と、この第1のシールプレート24よりも所定距離上方に位置する第2のシールプレート25とを、車幅方向に沿って設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前端部に設置され、エンジンルームに走行風を導入するための開口が下部に形成されたバンパーフェースと、該バンパーフェースの後方に設置され、エンジン冷却用の熱交換器の上部が取り付けられるシュラウドアッパとを備えた自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの燃焼室に空気を導入するための吸気取入口を上記シュラウドアッパ上に設けた構造は知られている。ただしこのような構造においては、バンパーフェース下部の開口等から流入して上方に巻き上げられた水や雪等の水分が上記吸気取入口に浸入おそれがあるため、これを防止するための部材が設けられることがある。例えば、下記特許文献1では、上記シュラウドアッパの前面部に、車体前方に突出するシールボードを設けるとともに、上記熱交換器の前方に位置するバンパーフェース(フロントバンパー)の裏側に、後方に突出する遮蔽部を設けることが行われている。このような構造によれば、上記シュラウドアッパに設けられたシールボードと、バンパーフェースに設けられた遮蔽部とによって、2重のシール効果を得ることができる。
【特許文献1】実開平7−4133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記遮蔽部のようなシール用の突起物をバンパーフェースに設けた上記特許文献1記載の構造では、上記バンパーフェースの外観を良好に仕上げることが困難になるという問題があった。すなわち、バンパーフェースは一般に樹脂成形品からなるが、このようなバンパーフェースの裏側に上記のような突起物を設けてしまうと、この突起物の設置部に成形不良、例えば樹脂成形時のひけに起因した表面の凹み等が生じ易くなり、これによって車体の外観が損なわれてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車体の外観を良好に維持しつつ吸気取入口への水分の浸入を確実に防止することのできる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車体の前端部に設置され、エンジンルームに走行風を導入するための開口が下部に形成されたバンパーフェースと、該バンパーフェースの後方に設置され、エンジン冷却用の熱交換器の上部が取り付けられるシュラウドアッパとを備えた自動車の前部構造において、上記シュラウドアッパ上には、エンジンに空気を取り込むための吸気取入口が設置されており、上記シュラウドアッパの前面部には、上記バンパーフェースとの隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレートと、この第1のシールプレートよりも所定距離上方に位置する第2のシールプレートとが、車幅方向に沿って設置されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、エンジン用の吸気取入口が上側に設置されたシュラウドアッパの前面部に、このシュラウドアッパとその前方のバンパーフェースとの隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレートと、その所定距離上方の第2のシールプレートとの2つのシールプレートを設けたため、上記バンパーフェースの下部に形成された開口等から流入して上方に巻き上げられた水や雪等の水分が上記シュラウドアッパとバンパーフェースとの間を通って上記吸気取入口に浸入するのを2重に防止することができる。しかも、上記第1および第2のシールプレートをともにシュラウドアッパ側に設けたため、バンパーフェースの裏側にシール用の突起物を設けた上記特許文献1記載の構造と異なり、上記バンパーフェースの表面にひけ等の成形不良が生じるのを効果的に防止して車体の外観を良好に維持できるという利点がある。
【0007】
上記第1および第2のシールプレートは、上記シュラウドアッパとは別部材からなる一体成形品によって構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
このように、上記第1および第2のシールプレートを上記シュラウドアッパとは別部材によって構成した場合には、車両の前突事故時等にシールプレートのみを単独で交換することが可能であるため、車両の修理性を悪化させることなくシール性を確保できるという利点がある。また、上記第1および第2のシールプレートを一体成形品としたため、部品点数が必要以上に増加するのを回避できるとともに、シールプレートの剛性を容易に確保することができる。
【0009】
上記吸気取入口が、上記シュラウドアッパ上の車幅方向外方寄りに設置されている場合、この吸気取入口の設置部よりも車幅方向内側に、上記第1および第2のシールプレートの間の空間を仕切るように上下方向に延びる縦壁部が形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このように、第1および第2のシールプレートの間に縦壁部を設けた場合には、第1のシールプレートの上面部中央付近に溜まった水分が車幅方向外側に移動して上記吸気取入口に近づくことを上記縦壁部の存在によって防止できるため、上記水分が吸気取入口に浸入してしまう事態をより確実に回避できるという利点がある。また、上記縦壁部を設けることにより、上記第1および第2のシールプレートの剛性を効果的に向上させることができる。
【0011】
この場合、上記縦壁部の上端部から上記第2のシールプレートよりも上方に延びる延出部がさらに形成されていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このようにすれば、上記第2のシールプレートの上面部中央付近に溜まった水分が上記吸気取入口側に移動することも防止することができ、上記吸気取入口への水分の浸入をより確実に防止することができる。
【0013】
また、上記第1および第2のシールプレートの間の空間が左右両端部で開放されていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このようにすれば、第1のシールプレートの上面部側方(すなわち第1および第2のシールプレートの間の側方部)に溜まった水分をその左右両端部から排出することができるため、上記第1のシールプレートの上面部に水分が溜まること自体を抑制することができ、その結果、当該水分が吹き上げられて上記吸気取入口に浸入するのをより有効に回避できるという利点がある。
【0015】
この場合、上記第1および第2のシールプレートの左右両側部が、外側に至るほど設置高さが低くなる傾斜面部によって構成されていることが好ましい(請求項6)。
【0016】
このようにすれば、第1および第2のシールプレートの上面部に溜まった水分を積極的にその左右両端部から排出することができ、これら第1および第2のシールプレートの上面部に水分が溜まることをより効果的に抑制することができる。
【0017】
上記構成においては、上記熱交換器の下部が取り付けられるシュラウドロアと、このシュラウドロアと上記シュラウドアッパとをつなぐ左右一対のシュラウドサイドとをさらに備え、上記第1のシールプレートの左右両端部から下方に延びるサイドシール部が、上記シュラウドサイドと上記バンパーフェースとの隙間を埋めるように設置されていることが好ましい(請求項7)。
【0018】
このように、上記第1のシールプレートの左右両端部から下方に延びてシュラウドサイドとバンパーフェースとの隙間を埋めるサイドシール部を設けた場合には、上記第1および第2のシールプレートの左右両端部から排出された水分が再び車幅方向内側に吹き返されるのを防止でき、これによって上記排出された水分を上記吸気取入口から離間する方向に確実に導出することができるため、上記吸気取入口への水分の浸入をより確実に防止できる等の利点がある。
【0019】
上記第1および第2のシールプレートの前方にフロントグリルが設置されている場合、このフロントグリルの裏側から後方に突出する突出部が、上記第1および第2のシールプレートの間を車幅方向に延びるように設置されていることが好ましい(請求項8)。
【0020】
このように、第1および第2のシールプレートの間に、フロントグリルの裏側から後方に突出する突出部を設けた場合には、この突出部と上記第1および第2のシールプレートとによって迷路状のシール構造を構築することができるため、これら第1および第2のシールプレートを通り越して上記吸気取入口に水分が到達するのをより確実に回避できるという利点がある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の自動車の前部構造によれば、車体の外観を良好に維持しつつ吸気取入口への水分の浸入を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる自動車の前部構造を示している。この自動車の前部構造は、車体1の前端部に設置され、ボンネットフード5下方のエンジンルームに走行風を導入するための開口10aが下部に形成されたバンパーフェース10と、このバンパーフェース10の上端部に設置された格子状のフロントグリル14と、上記バンパーフェース10の裏面に沿って車幅方向に延びるように設置され、上記バンパーフェース10を補強するバンパーレインフォースメント15と、エンジンルームの側辺部に沿って前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム16,16と、上記バンパーフェース10およびバンパーレインフォースメント15の後方に設置され、エンジン冷却用の熱交換器12を支持するシュラウドパネル20とを備えている。上記バンパーフェース10の開口10aには、格子状に形成されたロアグリル11が挿入、固定されており、このロアグリル11の格子の隙間を通じて、エンジンルームに走行風が導入されるようになっている。
【0023】
上記シュラウドパネル20は、上記熱交換器12の上部が取り付けられるシュラウドアッパ20aと、熱交換器12の下部が取り付けられるシュラウドロア20bと、これらシュラウドアッパ20aとシュラウドロア20bとをつなぐ左右一対のシュラウドサイド20c,20cとを有した略矩形枠状の部材であり、図略の車体側部材等と連結されて車体1の前部に固定されている。
【0024】
図2および図4に示すように、上記フロントサイドフレーム16,16とバンパーレインフォースメント15との間には、左右一対のクラッシュカン18,18が介在している。このクラッシュカン18は、角筒状に形成され、車両の前突事故時等に圧縮変形することにより、バンパーレインフォースメント15を介して前方から加わる衝撃エネルギーを吸収する役割を果たすように構成されている。
【0025】
上記クラッシュカン18の後端部にはフランジ部材18aが溶接されており、このフランジ部材18aが上記フロントサイドフレーム16の前端部に溶接されたフランジ部材16aにボルト等によって締結されることにより、上記フロントサイドフレーム16とクラッシュカン18とが上記各フランジ部材16a,18aを介して結合されている。
【0026】
一方、上記クラッシュカン18の前端部にはブラケット34が溶接されており、このブラケット34のうち上記バンパーレインフォースメント15の裏面に沿うように形成された第1部位34aがボルト締結等によりバンパーレインフォースメント15に固定されている。さらに、上記ブラケット34は、上記第1部位34aと連続して形成された断面視略コ字状の第2部位34bを有しており、この第2部位34bが上記シュラウドパネル20のシュラウドサイド20cの前面部にボルト締結等により固定されている。すなわち、バンパーレインフォースメント15は、クラッシュカン18およびシュラウドパネル20の両部材に対して上記ブラケット34を介して固定されている。
【0027】
さらに、図2に示すように、上記バンパーレインフォースメント15の上端部とシュラウドアッパ20aの前面部とが支持部材38を介して連結されるとともに、シュラウドサイド20cとクラッシュカン18のフランジ部材18aとが、シュラウドサイド20cの側面部に突設された連結部36を介して連結されることにより、バンパーレインフォースメント15やシュラウドパネル20の支持剛性がより強固に確保されるようになっている。
【0028】
図2および図3に示すように、上記シュラウドパネル20のシュラウドアッパ20a上には、エンジン用の吸気ダクト32の前端部が接続される吸気取入口30が設置されており、この吸気取入口30を通じてエンジンの燃焼室に空気が取り込まれるようになっている。この吸気取入口30は、図2に示すように、シュラウドアッパ20a上の車幅方向外方寄りに設置されている。
【0029】
また、上記シュラウドアッパ20aの前面部には、上記バンパーフェース10の開口10a(より具体的にはその内部のロアグリル11の格子の隙間)から内部に流入して上方に巻き上げられた水や雪等の水分(図3の矢印A参照)が上記バンパーフェース10の裏面とシュラウドアッパ20aとの間を通って上記吸気取入口30に浸入するのを防止するための遮蔽部材22が、車幅方向に沿って延びるように設置されている。この遮蔽部材22は、上記シュラウドアッパ20aの前面部とバンパーフェース10との隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレート24と、この第1のシールプレート24よりも所定距離上方に並設された第2のシールプレート25とを有した一体成形品からなり、図略の係止ファスナー等によって上記シュラウドアッパ20aの前面部に固定されている。
【0030】
また、図2および図5に示すように、上記遮蔽部材22には、上記シュラウドアッパ20aにおける吸気取入口30の設置部よりも車幅方向内側に、上記第1のシールプレート24の上面部から上方に延び、さらにその上の第2のシールプレート25を跨いで所定高さまで延びるように設置された縦シールプレート28が一体に形成されている。すなわち、この縦シールプレート28は、上記第1および第2のシールプレート24,25の間の空間を仕切るように上下方向に延びる縦壁部28aと、この縦壁部28aの上端部から上方に延設された延出部28bとから構成されている。
【0031】
上記第1および第2のシールプレート24,25は、その左右両側部が、外側に至るほど設置高さが低くなる傾斜面部24a,25aによって構成されている。そして、このうちの下側の傾斜面部24aの外端部からシュラウドサイド20cの内側辺部に沿って下方に延びるサイドシール部26が、上記シュラウドサイド20cと上記バンパーフェース10の裏面との隙間を埋めるように設置されている。このサイドシール部26は、上記シュラウドサイド20cの前面に固定されたブラケット34、より具体的には、ブラケット34のうち断面コ字状の第2部位34b(図4)の車内側面に締結・固定されている。一方、上記各傾斜面部24a,25aの外端部同士の間には上記サイドシール部26のような縦壁状の部材が設けられていないことから、上記傾斜面部24a,25aを含む第1および第2のシールプレート24,25の間の空間は左右両端部で開放されている。
【0032】
上記第2のシールプレート25の上面部には、車両の後方側に湾曲しながら上方に突出する左右一対の保護部材40,40が設置されている。この保護部材40は、ボンネットフード5(図1)が盗難等を目的として外部から開けられることを防止する役割を果たす。すなわち、ボンネットフード5の前端部中央付近にこのボンネットフード5を閉状態に維持するためのラッチ機構が設けられているとともに、運転席近くに設置された操作部と当該ラッチ機構とを連係するオープナケーブル(図示省略)が上記フロントグリル14の後方を通るように配索されているため、当該オープナケーブルと上記フロントグリル14との間に遮蔽物が存在しない場合には、上記フロントグリル14から工具等を挿入してこれを上記オープナケーブルに引っ掛ける等により、上記ボンネットフード5のロック状態を解除するといった行為が行われてしまうおそれがある。これに対し、上記第2のシールプレート25の上面部に上記のような保護部材40を設置した場合には、この保護部材40によって上記オープナケーブルとフロントグリル14との間を遮蔽することができるため、上記のようなロック解除操作を効果的に防止することができる。
【0033】
図3に示すように、上記フロントグリル14の裏側には、上記第1および第2のシールプレート24,25の間の高さ位置において後方に突出する突出部14aが、車幅方向に沿って延びるように設置されている。また、フロントグリル14は、その右端領域(図1において薄く塗り潰された領域)の格子の目が閉止されており、これによって水や雪等の水分が当該領域を通じて上記吸気取入口30に浸入することが防止されるようになっている。
【0034】
以上説明したように、上記実施形態によれば、エンジン用の吸気取入口30が上側に設置されたシュラウドアッパ20aの前面部に、このシュラウドアッパ20aとその前方のバンパーフェース10との隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレート24と、その所定距離上方の第2のシールプレート25とを有した二重の遮蔽部材22を設置したため、上記バンパーフェース10の下部に形成された開口10a等から流入して上方に巻き上げられた水や雪等の水分(図3の矢印A参照)が上記シュラウドアッパ20aとバンパーフェース10との間を通って上記吸気取入口30に浸入するのを2重に防止することができる。しかも、上記第1および第2のシールプレート24,25を有した遮蔽部材22をシュラウドアッパ20a側に設けたため、バンパーフェース10の裏側にシール用の突起物を設けた上記特許文献1記載の構造と異なり、上記バンパーフェース10の表面にひけ等の成形不良が生じるのを効果的に防止して車体1の外観を良好に維持できるという利点がある。
【0035】
特に、上記実施形態のように、第1および第2のシールプレート24,25を有した遮蔽部材22を上記シュラウドアッパ20aとは別部材によって構成した場合には、車両の前突事故時等に遮蔽部材22のみを単独で交換することが可能であるため、車両の修理コストを効果的に低減できる等の利点がある。すなわち、上記遮蔽部材22とシュラウドアッパ20aとを一体に構成してしまうと、車両の前突事故時等に上記遮蔽部材22のシールプレート24,25が変形してしまった場合に、当該遮蔽部材22だけでなく、これと一体化されたシュラウドアッパ20aも交換する必要が生じるが、上記構成のように遮蔽部材22とシュラウドアッパ20aとを別体に構成すれば、上記のような前突事故時に遮蔽部材22のみを交換すればよいため、容易かつ低コストで車両の修理を行うことができる。また、上記遮蔽部材22を、第1および第2のシールプレート24,25を一体に有した単一の部品によって構成したため、部品点数が必要以上に増加するのを回避できるとともに、シールプレート24,25の剛性を容易に確保することができる。
【0036】
また、上記実施形態のように、上記シュラウドアッパ20a上の車幅方向外方寄りに吸気取入口30を設置するとともに、この吸気取入口30の設置部よりも車幅方向内側に、上記第1および第2のシールプレート24,25の間の空間を仕切るように上下方向に延びる縦壁部28aを設けた場合には、第1のシールプレート24の上面部中央付近に溜まった水分が側方に移動して上記吸気取入口30に浸入するのを有効に回避できるという利点がある。すなわち、上記バンパーフェース10の開口10a等からエンジンルームに流入して上方に巻き上げられた水や雪等の水分の一部が上記第1のシールプレート24を通り越して上方に移動する等により、この第1のシールプレート24の上面部に水分が溜まってしまう可能性が考えられ、このような場合に、上記第1のシールプレート24の上面部中央付近は、左右両外側部と比べれば水分の溜まり易い部位であるが、上記のような縦壁部28aが第1および第2のシールプレート24,25の間に設けられていれば、この水分が第1のシールプレート24の上面に沿って吸気取入口30の設置部に近づく方向(図2では右側)に移動するのを防止できるため、上記水分がさらに上方に吹き上げられて吸気取入口30に浸入するのを有効に回避することができる。また、上記縦壁部28aを設けることにより、上記第1および第2のシールプレート24,25の剛性を効果的に向上させることができる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、上記縦壁部28aの上端部から第2のシールプレート25よりも上方に延びる延出部28bを設けたため、上記第2のシールプレート25の上面部中央付近に溜まった水分が上記吸気取入口30側に移動することも防止することができ、上記吸気取入口30への水分の浸入をより確実に防止することができる。
【0038】
また、上記実施形態のように、第1および第2のシールプレート24,25の間の空間を左右両端部で開放させるようにした場合には、第1のシールプレート24の上面部側方(すなわち第1および第2のシールプレート24,25の間の側方部)に溜まった水分をその左右両端部から排出することができるため、上記第1のシールプレート24の上面部に水分が溜まること自体を抑制することができ、その結果、当該水分が吹き上げられて上記吸気取入口30に浸入するのをより有効に回避できるという利点がある。
【0039】
さらに、上記実施形態では、上記第1および第2のシールプレート24,25の左右両側部を、外側に至るほど設置高さが低くなる傾斜面部24a,25aによって構成したため、上記第1および第2のシールプレート24,25の上面部に溜まった水分を積極的にその左右両端部から排出することができ、これら第1および第2のシールプレート24,25の上面部に水分が溜まることをより効果的に抑制することができる。
【0040】
また、上記実施形態のように、第1のシールプレート24の左右両端部(傾斜面部24aの外端部)から下方に延びてシュラウドサイド20cとバンパーフェース10との隙間を埋めるサイドシール部26を設けた場合には、上記第1および第2のシールプレート24,25の左右両端部から排出された水分が再び車幅方向内側に吹き返されるのを防止でき、これによって上記排出された水分を上記吸気取入口30から離間する方向に確実に導出することができるため、上記吸気取入口30への水分の浸入をより確実に防止できるという利点がある。また、車両の走行状態によっては、熱交換器12の後方に設置されたエンジンの熱気がエンジンルームの左右両側辺部に沿って前方に流れてくることがあるが、上記のようなサイドシール部26が設けられていれば、上記エンジンの熱気がシュラウドサイド20cの前方を通って後方に吹き返されるのを防止できるため、上記エンジンの熱気が熱交換器12に当たることに起因して熱交換器12の性能が低下するのを有効に回避できるという利点もある。
【0041】
また、上記実施形態のように、第1および第2のシールプレート24,25の間に、フロントグリル14の裏側から後方に突出する突出部14aを設けた場合には、図3の破線矢印Bに示すように、この突出部14aと上記第1および第2のシールプレート24,25とによって迷路状のシール構造を構築することができるため、これら第1および第2のシールプレート24,25を通り越して上記吸気取入口30に水分が到達するのをより確実に回避できるという利点がある。
【0042】
なお、以上説明したような自動車の前部構造は、本発明の一実施形態であって、その具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車の前部構造を示す斜視図である。
【図2】車体前部の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】バンパーレインフォースメントとシュラウドパネル等との接続構造を示す断面図である。
【図5】遮蔽部材の一部を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車体
10 バンパーフェース
10a 開口
12 熱交換器
14 フロントグリル
14a 突出部
20a シュラウドアッパ
20b シュラウドロア
20c シュラウドサイド
24 第1のシールプレート
24a 傾斜面部
25 第2のシールプレート
25a 傾斜面部
26 サイドシール部
28a 縦壁部
28b 延出部
30 吸気取入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前端部に設置され、エンジンルームに走行風を導入するための開口が下部に形成されたバンパーフェースと、該バンパーフェースの後方に設置され、エンジン冷却用の熱交換器の上部が取り付けられるシュラウドアッパとを備えた自動車の前部構造において、
上記シュラウドアッパ上には、エンジンに空気を取り込むための吸気取入口が設置されており、
上記シュラウドアッパの前面部には、上記バンパーフェースとの隙間を埋めるように前方に突出する第1のシールプレートと、この第1のシールプレートよりも所定距離上方に位置する第2のシールプレートとが、車幅方向に沿って設置されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の前部構造において、
上記第1および第2のシールプレートは、上記シュラウドアッパとは別部材からなる一体成形品によって構成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車の前部構造において、
上記吸気取入口は、上記シュラウドアッパ上の車幅方向外方寄りに設置されており、この吸気取入口の設置部よりも車幅方向内側に、上記第1および第2のシールプレートの間の空間を仕切るように上下方向に延びる縦壁部が形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項4】
請求項3記載の自動車の前部構造において、
上記縦壁部の上端部から上記第2のシールプレートよりも上方に延びる延出部が形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項5】
請求項3記載の自動車の前部構造において、
上記第1および第2のシールプレートの間の空間が左右両端部で開放されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項6】
請求項5記載の自動車の前部構造において、
上記第1および第2のシールプレートの左右両側部が、外側に至るほど設置高さが低くなる傾斜面部によって構成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項7】
請求項5または6記載の自動車の前部構造において、
上記熱交換器の下部が取り付けられるシュラウドロアと、このシュラウドロアと上記シュラウドアッパとをつなぐ左右一対のシュラウドサイドとをさらに備え、
上記第1のシールプレートの左右両端部から下方に延びるサイドシール部が、上記シュラウドサイドと上記バンパーフェースとの隙間を埋めるように設置されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項8】
請求項1記載の自動車の前部構造において、
上記第1および第2のシールプレートの前方にフロントグリルが設置されており、このフロントグリルの裏側から後方に突出する突出部が、上記第1および第2のシールプレートの間を車幅方向に延びるように設置されていることを特徴とする自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−314008(P2007−314008A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145082(P2006−145082)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】