説明

自動車の前部構造

【課題】熱交換器が配置される場合とされない場合とでシュラウドを共通化させつつ、熱交換器が配置される場合にはシュラウドの車体前後位置への該熱交換器の配置を実現する。
【解決手段】車体の左右両側において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム9,9と、車体前部に設けられたシュラウドパネル1と、シュラウドパネル1を取り付けるシュラウド取付部6c、6cを有し且つ上記一対のフロントサイドフレーム9,9それぞれに取り付けられる一対の取付ブラケット6,6と、上記シュラウドパネル1の車体前後位置に配置されるラジエータ2、コンデンサ3及びATオイルクーラ4とを備える自動車の前部構造であって、一対の取付ブラケット6,6はそれぞれ、ATオイルクーラ4が取り付けられる熱交換器取付部6fをさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に設けられたシュラウドと熱交換器とを備える自動車の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の前部には、エンジンルームの車体前側を区画するシュラウドが設けられており、このシュラウドにラジエータやコンデンサ等の熱交換器が取り付けられている。その一例として、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1に係る自動車の前部構造においては、シュラウドに対して車体後方からラジエータが取り付けられている。また、別の熱交換器として、インタークーラが該シュラウドに対して車体前方から取り付けられている。
【特許文献1】特開2004−237788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ラジエータはシュラウドに取り付けられるのが一般的であるが、上記インタークーラやオイルクーラ等の熱交換器は、冷却性能やエンジンルーム内に配設スペースを考慮して、車両ごとに最適な場所に配置される。つまり、インタークーラやオイルクーラ等の熱交換器は、シュラウドの車体前後位置に配置される場合もあれば、それ以外の場所に配置される場合もある。
【0005】
一方、シュラウドは、車両毎に変更することは製造コストの面から好ましくなく、できる限り、車両毎に共通化させたい部品である。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る自動車の前部構造では、インタークーラを上記シュラウドに直接取り付けているため、インタクーラがシュラウドの車体前後位置に配置されるか否かによって異なるシュラウドを作製する必要があり、製造コストの面から不利である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器が配置される場合とされない場合とでシュラウドを共通化させつつ、熱交換器が配置される場合には該熱交換器をシュラウド近傍に配置できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シュラウドをフロントサイドフレームに取り付けるための取付ブラケットを利用して、熱交換器も取り付けるようにしたものである。
【0009】
第1の発明は、車体の左右両側において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、車体前部に設けられたシュラウドと、上記シュラウドを上記各フロントサイドフレームに取り付けるためのブラケットであって上記シュラウドが取り付けられるシュラウド取付部を有し且つ上記一対のフロントサイドフレームそれぞれに取り付けられる一対の取付ブラケットと、上記シュラウドの近傍に配置される第1の熱交換器とを備える自動車の前部構造が対象である。
【0010】
そして、上記一対の取付ブラケットはそれぞれ、上記第1の熱交換器が取り付けられる熱交換器取付部をさらに有し、上記第1の熱交換器は、上記取付ブラケットを介して上記一対のフロントサイドフレームに取り付けられるものとする。
【0011】
上記の構成によれば、上記シュラウドを上記各フロントサイドフレームに取り付けるための取付ブラケットを利用することによって、第1の熱交換器をシュラウド近傍に配置することができ、第1の熱交換器の有無に拘わらずシュラウドを共通化させることができる。つまり、第1の熱交換器の有無によって取付ブラケットを変更すればよい。また、熱交換器取付部を、シュラウドをフロントサイドフレームに取り付けるための取付ブラケットに設けることによって、第1の熱交換器だけを取り付けるための専用の部品を設ける必要がないため、部品点数を増加させることなくシュラウドを配置することができる。また、フロントサイドフレームは剛性が高い部材であり、第1の熱交換器は一対のフロントサイドフレームに取り付けられるため、支持剛性を向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記各取付ブラケットは、上記シュラウド取付部が上下方向に間隔を有して複数箇所に設けられると共に、隣り合う各シュラウド取付部の間には肉抜き部が形成され、上記熱交換器取付部は、1又は複数の上記シュラウド取付部から延設されて形成されているものとする。
【0013】
上記の構成によれば、上記取付ブラケットには、上記シュラウド取付部が複数設けられているため、上記シュラウドの取付強度及び支持剛性を向上させることができる。また、上記取付ブラケットには上記肉抜き部が設けられているため、該取付ブラケット自体の軽量化が図られる。そして、このように肉抜き部が形成されたブラケットであっても、上記熱交換器取付部は、上記肉抜き部を避けて、1又は複数の上記シュラウド取付部を延設して形成されているため、熱交換器取付部の剛性を向上させることができ、その結果、第1の熱交換器の支持剛性を向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記シュラウドは、上記一対のフロントサイドフレームの間に配置され、上記各取付ブラケットは、上記シュラウド取付部が設けられ且つ上記シュラウドに対して車体前側から取り付けられる前壁部と、該前壁部の車幅方向外端から後方に延び且つ上記フロントサイドフレームの車幅方向内側面に対して車幅方向内方から取り付けられる側壁部とを有し、車幅方向において上記取付ブラケットの上記側壁部と上記シュラウドとの間には、該側壁部を上記フロントサイドフレームに取り付けるための作業スペースが形成され、上記肉抜き部は、上記取付ブラケットの上記前壁部のうち、上記作業スペースの車体前側に位置する部分を開口させるように形成されており、上記肉抜き部から上記作業スペースへ上記側壁部を着脱させるための工具を挿入可能に構成されているものとする。
【0015】
上記の構成によれば、上述の如く取付ブラケットの上記肉抜き部により取付ブラケットの軽量化が図られることに加えて、取付ブラケットの側壁部とシュラウドとの間に上記作業スペースが形成されると共に、上記肉抜き部が取付ブラケットの前壁部のうち、作業スペースの車体前側に位置する部分を開口させるように形成されていることによって、該肉抜き部を介して車体前方から工具を挿入して、取付ブラケットのフロントサイドフレームへの取り付け及びフロントサイドフレームからの取り外しが可能となり、サービス性を向上させることができる。
【0016】
第4の発明は、第1〜第3の何れか1つの発明において、上記シュラウドに取り付けられる第2の熱交換器をさらに備え、上記熱交換器取付部は、上記シュラウド取付部よりも車体前側位置に位置しており、上記第1の熱交換器は、車体前後方向において上記第2の熱交換器との間で間隔を有して配置されるものとする。
【0017】
上記の構成によれば、上記第1の熱交換器は、上記シュラウドよりも車体前側位置に位置することになる。つまり、上記第2の熱交換器と上記第1の熱交換器との間に間隔が確保され、両熱交換器の間に熱が滞留することを防止して、熱交換器の冷却を効率良く行って冷却性能を向上させることができる。また、この両熱交換器の間の間隔は上記取付ブラケットによって決定されるため、シュラウドや熱交換器自体の形状を変更することなく、該取付ブラケットの形状を変更することによって該両熱交換器の間の間隔の大きさを調節することができ、冷却性能の調整を容易且つ安価に行うことができる。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4の何れか1つの発明において、上記シュラウドは、上壁部と、下壁部と、該上壁部及び該下壁部の左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結する左右の側壁部とを有し、これら上壁部、下壁部及び左右の側壁部に囲まれた開口部が形成された矩形枠状部材から構成され、上記第1の熱交換器は、車体前後方向に変形可能な変形可能部材を介して上記熱交換器取付部に取り付けられると共に、車体正面視で上記矩形枠状部材の上記開口部内に配置されているものとする。
【0019】
上記の構成の場合、車体が衝突して車体前部が後方へ変形した場合に、上記第1の熱交換器は上記変形可能部材によって取り付けられているため、該第1の熱交換器に作用する車体前方からの衝撃力は、該変形可能部材が車体後方へ変形することによって吸収される。こうして、車体前後方向の衝撃力による第1の熱交換器の破損を防止することができる。さらに、該第1の熱交換器は車体正面視で上記矩形枠状部材の開口部内に配置されているため、該変形可能部材が車体後方へ変形することに伴って該第1の熱交換器が車体後方へ変位しても、該第1の熱交換器と矩形枠状部材とが衝突することがなく、該第1の熱交換器とシュラウドとの衝突による該熱交換器の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記シュラウドを上記フロントサイドフレームに取り付ける取付ブラケットに熱交換器取付部を設けて、該熱交換器取付部に第1の熱交換器を取り付けることによって、第1の熱交換器の有無に拘わらずシュラウドを共通化することができると共に、第1の熱交換器を設ける場合には部品点数を増加させることなく該第1の熱交換器をシュラウド近傍に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1、2は、本発明の実施形態に係る自動車の前部構造が適用された自動車のフロントエンドモジュールMを示す。このモジュールMは、主として、略矩形枠状をなす樹脂製シュラウドパネル1と、図示しないエンジンの冷却水を走行風によって冷却する第2の熱交換器としてのラジエータ2と、該ラジエータ2の前方に配置される第2の熱交換器としての空調装置のコンデンサ3と、シュラウドパネル1の前方に配置されるオートマチックトランスミッションオイルを冷却する第1の熱交換器としてのATオイルクーラ4と、上記レジエータ2の後側に取り付けられる冷却用ファン5(図3参照)とで構成されている。
【0023】
上記シュラウドパネル1は、例えばガラス繊維で強化したポリプロピレン等の樹脂からなり、上記ラジエータ2(及びコンデンサ3)を保持するラジエータ保持部11を有している。
【0024】
上記ラジエータ保持部11は、上下に相対向して車幅方向に延びる上壁部11a及び下壁部11bと、該上壁部11a及び下壁部11bの左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結する左右側壁部11c,11cとを有していて、上記ラジエータ2の外形形状に対応して略矩形枠状をなしている。そして、それらの各壁部11a〜11cにより囲まれた開口部11dにコアの前面を臨ませて、ラジエータ2及びコンデンサ3が配置されるようになっている。
【0025】
上記ラジエータ2は、略矩形平板状であって、図3、4に示すようにラジエータ保持部11の上壁部11a及び下壁部11bに取り付けられている。
【0026】
また、上記コンデンサ3は、略矩形平板状であって、図3、4に示すように、ラジエータ2の前側位置に配置され、ラジエータ保持部11の下壁部11bに取り付けらると共に、図1,2に示すように、ブラケット21,21を介してラジエータ保持部11の上壁部11aに取り付けられている。尚、符号31は、コンデンサ3で冷却される冷媒をいったん蓄える受液器である。
【0027】
さらに、ラジエータ2の後側には、ファンシュラウド51を有する上記冷却ファン5が配置されている。この冷却ファン5は、左右2つ設けられている(図6参照)。
【0028】
また、上記ラジエータ保持部11の左右側壁部11c,11cそれぞれは、車幅方向外側に向かって水平に延出した車体締結部12,12を有している。各車体締結部12は、その後端及び外端から上方に立ち上がる縦壁部を有しており、この縦壁部も上記側壁部11cと一体的に連結されている。この車体締結部12,12を上記左右フロントサイドフレーム9,9の上面9a,9aにそれぞれボルト12a,12aにより締結固定することによって、シュラウドパネル1が該左右フロントサイドフレーム9,9の前端部に取り付けられるようになっている。
【0029】
さらに、シュラウドパネル1は、上記車体連結部12,12だけでなく、取付ブラケット6,6を介して上記左右フロントサイドフレーム9,9の前端部に取り付けられるようになっている。
【0030】
上記各取付ブラケット6は、上下方向に長い前壁部6aと該前壁部6aの車幅方向外端から後方に延びる側壁部6bとを有する、断面く字形状のブラケットである。上記前壁部6aは、上下位置に2つのシュラウド取付部6c,6cが設けられており、その間には、前壁部6aから側壁部6cに亘って肉抜き部6eが形成されている。これらシュラウド取付部6c,6cを上記シュラウドパネル1の各側壁部11cにボルト13a、13aにより締結固定することによって、取付ブラケット6はシュラウドパネル1に取り付けられる。一方、図5に示すように、上記側壁部6bを上下2箇所で上記各フロントサイドフレーム9の車幅方向内側の内側面9bにボルト13b,13bにより締結固定することによって、取付ブラケット6はフロントサイドフレーム9に取り付けられる。こうして、シュラウドパネル1が取付ブラケット6,6を介して左右フロントサイドフレーム9,9に取り付けられる。
【0031】
このように、シュラウドパネル1及びフロントサイドフレーム9に対して、それぞれ上下方向の2箇所で取付ブラケット6を取り付けているため、それぞれに対する取付強度及び支持剛性の向上が図られる。また、取付ブラケット6は、上記肉抜き部6eにより軽量化が図られている。また、図6に示すように、取付ブラケット6にシュラウドパネル1を取り付けたときに、該シュラウドパネル1の側壁部11cと取付ブラケット6の側壁部6bとの間には空間が形成されている。この空間は、取付ブラケット6の側壁部6bをフロントサイドフレーム9の内側面9bに取り付けるための作業スペース13cとなる。そして、上記肉抜き部6eは、取付ブラケット6の上記前壁部6aのうち、作業スペース13cの車体前側に位置する部分を開口させるように形成されている。つまり、上記肉抜き部6eから作業スペース13cに工具等を挿入することによって取付ブラケット6をフロントサイドフレーム9に取り付けているボルト13bの着脱を行うことができ、その結果、サービス性を向上させることができる。
【0032】
さらに、上記取付ブラケット6は、下側のシュラウド取付部6cの内端から前方に延びた後、車幅方向内側に屈曲して延設された2つの熱交換器取付部6f、6fを有している。本実施形態では、左右の取付ブラケット6、6の各上側熱交換器取付部6f、6fに変形可能プレート8、8を介して上記ATオイルクーラ4が取り付けられている。この熱交換器取付部6f,6fは、取付ブラケット6の上下方向において肉抜き部6eではなく、シュラウド取付部6cと同じ位置で該シュラウド取付部6cを延設して形成されているため、支持剛性の向上が図られている。尚、この熱交換器取付部6fは、上側のシュラウド取付部6cと同じ位置で該シュラウド取付部6cを延設して形成してもよい。
【0033】
上記変形可能プレート8は、平板からなり、車幅方向内側部分がATオイルクーラ4に取り付けられる一方、車幅方向外側には取付ブラケット6に取り付けられるブラケット取付部8aが形成されている。ブラケット取付部8aには、その車幅方向外端から車幅方向内方へ延びるスリット8bが形成されている。そして、このスリット8bには、外周に溝が形成されたスペーサ8cが係合されており、このスペーサ8cを取付ブラケット6の上側熱交換器取付部6fに取り付けることによって、変形可能プレート8は取付ブラケット6に取り付けられる。このとき、変形可能プレート8は、厚さ方向が前後方向の向くようにして取り付けられている。
【0034】
こうして取り付けられた各種熱交換器は、図6に示すように、前から、ATオイルクーラ4、コンデンサ3、ラジエータ2、冷却ファン5の順に配置される。そして、走行風および最後方の冷却ファン5によって吸い込まれる冷却風によってATオイルクーラ4、コンデンサ3及びラジエータ2が冷却される。このとき、取付ブラケット6の熱交換器取付部6fがシュラウド取付部6cよりも前側位置に位置する、即ち、シュラウドパネル1に取り付けられているコンデンサ3及びラジエータ2とATオイルクーラ4との間に冷却風が通り抜けるだけの間隔が確保されるため、ATオイルクーラ4やコンデンサ3等を効果的に冷却することができる。
【0035】
上記実施形態によれば、ATオイルクーラ4をシュラウドパネル1の前側位置に配置しいるが、ATオイルクーラ4はシュラウドパネル1に直接取り付けられているのではなく、取付ブラケット6、6に取り付けられているため、ATオイルクーラ4をシュラウドパネル1の近傍に配置する場合としない場合とで上記シュラウドパネル1とを共通化させることができる。また、シュラウドパネル1をフロントサイドフレーム9,9に取り付けるための取付ブラケット6,6に熱交換器取付部6f,6fを形成しているため、ATオイルクーラ4を取り付けるためだけのブラケットを別途設ける必要がなく、部品点数を抑えることができる。さらに、左右の取付ブラケット6,6に跨ってATオイルクーラ4を取り付けることによって、冷却ファン5に吸い込まれる冷却風が通る場所にATオイルクーラ4を配置することができ、ATオイルクーラ4を効率良く冷却することができる。さらにまた、上記フロントサイドフレーム9,9は剛性が高い部材であり、ATオイルクーラ4は取付ブラケット6,6を介して該フロントサイドフレーム9,9に取り付けられるため、支持剛性を向上させることができる。
【0036】
また、上述の如く、取付ブラケット6の熱交換器取付部6fをシュラウド取付部6cよりも前側位置に形成することによって冷却風の流れるスペースを確保し、熱交換器を効率良く冷却を行うことができるが、上記シュラウドパネル1に取り付けた熱交換器(ラジエータ2やコンデンサ3)とATオイルクーラ4との間の間隔は、取付フランジ6の形状、即ち、熱交換器取付部6fをシュラウド取付部6cに対してどれだけ前側に形成するかによって決定される。よって、取付ブラケット6の形状さえ変更すれば、所望の冷却性能を達成することができ、冷却性能の調整を容易且つ安価に行うことができる。
【0037】
さらに、ATオイルクーラ4は、上述の如く、厚さ方向が前後方向を向くように配置された変形可能プレート8、8によって取付ブラケット6に取り付けられているため、ATオイルクーラ4に前側から衝撃力が作用したときには、変形可能プレート8が折れ曲がって変形することによって該衝撃力を吸収することができ、ATオイルクーラ4自体の損傷を防止することができる。また、取付ブラケット6に取り付けられた変形可能プレート8は、取付ブラケット6に取り付けられるスペーサ8cの外周の溝にスリット8bを係合させているだけである。そのため、衝撃力作用時には、変改可能プレート8自体が変形することに伴って、スリット8bがスペーサ8cの溝を摺動して抜けて、これによっても該衝撃力を逃がすことができる。そして、ATオイルクーラ4は、図2に示すように、平面視でシュラウドパネル1の開口部11d内に配置される、即ち、平面視でシュラウドパネル1とずれているため、前方からの衝撃力によって後方に変位したとしてもシュラウドパネル1と衝突することがなく、ATオイルクーラ4の損傷を防止することができる。また、この変形可能プレート8は、衝撃力を吸収するだけでなく、ATオイルクーラ4を取り付け且つ支持する部材であるが、厚さ方向が前後方向を向くように取り付けられているため、上下方向の荷重に対しては十分な支持剛性を有し、ATオイルクーラ4を十分に支持することができる。
【0038】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態1について、以下のような構成としてもよい。すなわち、上記実施形態では、取付ブラケット6に取り付けられる熱交換器としてATオイルクーラ4を採用しているが、これに限られるものではない。例えば、インタークーラを取り付けるようにしてもよいし、上記実施形態ではシュラウドパネル1に取り付けているコンデンサ3を取付ブラケット6に取り付けるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、取付ブラケット6は、く字形状断面を有するブラケットであるが、これに限られるものではない。例えば、フロントサイドフレーム9に取り付けられる側壁部6bが、上記実施形態のように前壁部6aの車幅方向外端から後方に延びる形状ではなく、前壁部6aの車幅方向外端からさらに外方に延び、フロントサイドフレーム9の前端面に取り付けられる構成であってもよい。つまり、取付ブラケット6は、シュラウド取付部6fを有し且つフロントサイドフレームの任意の場所に取り付けられる構造であれば、任意の形状を採用することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、取付ブラケット6の熱交換器取付部6f,6fのうち上側の熱交換器取付部6fのみを使用しているが、下側の熱交換器取付部6fを使用してもよく、同時に2つの熱交換器取付部6fを使用してもよい。
【0041】
さらに、上記熱交換器取付部6fは、各シュラウド取付部6cから延設されて、複数設けられてもよい。また、1つの熱交換器取付部6fが、複数のシュラウド取付部6cから延設されて形成される、即ち、上側のシュラウド取付部6cと下側のシュラウド取付部6cとからそれぞれ延設されて1つの熱交換器取付部となるように形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の前部構造が適用された自動車のフロントエンドモジュールを示す斜視図である。
【図2】自動車のフロントエンドモジュールの平面図である。
【図3】図2のIII−III線における端面図である。
【図4】図2のIV−IV線における端面図である。
【図5】フロントサイドフレームに取り付けられた取付ブラケットを車幅方向内方且つ車体後方から見た斜視図である。
【図6】図2のVI−VI線における端面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 シュラウドパネル(シュラウド)
11 ラジエータ保持部(矩形枠状部材)
11a 上壁部
11b 下壁部
11c 側壁部
11d 開口部
13c 作業スペース
2 ラジエータ(第2の熱交換器)
3 コンデンサ(第2の熱交換器)
4 ATオイルクーラ(第1の熱交換器)
6 取付ブラケット
6c シュラウド取付部
6e 肉抜き部
6f 熱交換器取付部
8 変形可能プレート(変形可能部材)
9 フロントサイドフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右両側において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、車体前部に設けられたシュラウドと、上記シュラウドを上記各フロントサイドフレームに取り付けるためのブラケットであって上記シュラウドが取り付けられるシュラウド取付部を有し且つ上記一対のフロントサイドフレームそれぞれに取り付けられる一対の取付ブラケットと、上記シュラウドの近傍に配置される第1の熱交換器とを備える自動車の前部構造であって、
上記一対の取付ブラケットはそれぞれ、上記第1の熱交換器が取り付けられる熱交換器取付部をさらに有し、
上記第1の熱交換器は、上記取付ブラケットを介して上記一対のフロントサイドフレームに取り付けられることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の前部構造において、
上記各取付ブラケットは、上記シュラウド取付部が上下方向に間隔を有して複数箇所に設けられると共に、隣り合う各シュラウド取付部の間には肉抜き部が形成され、
上記熱交換器取付部は、1又は複数の上記シュラウド取付部から延設されて形成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車の前部構造において、
上記シュラウドは、上記一対のフロントサイドフレームの間に配置され、
上記各取付ブラケットは、上記シュラウド取付部が設けられ且つ上記シュラウドに対して車体前側から取り付けられる前壁部と、該前壁部の車幅方向外端から後方に延び且つ上記フロントサイドフレームの車幅方向内側面に対して車幅方向内方から取り付けられる側壁部とを有し、
車幅方向において上記取付ブラケットの上記側壁部と上記シュラウドとの間には、該側壁部を上記フロントサイドフレームに取り付けるための作業スペースが形成され、
上記肉抜き部は、上記取付ブラケットの上記前壁部のうち、上記作業スペースの車体前側に位置する部分を開口させるように形成されており、
上記肉抜き部から上記作業スペースへ上記側壁部を着脱させるための工具を挿入可能に構成されていることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の自動車の前部構造において、
上記シュラウドに取り付けられる第2の熱交換器をさらに備え、
上記熱交換器取付部は、上記シュラウド取付部よりも車体前側位置に位置しており、
上記第1の熱交換器は、車体前後方向において上記第2の熱交換器との間で間隔を有して配置されることを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の自動車の前部構造において、
上記シュラウドは、上壁部と、下壁部と、該上壁部及び該下壁部の左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結する左右の側壁部とを有し、これら上壁部、下壁部及び左右の側壁部に囲まれた開口部が形成された矩形枠状部材から構成され、
上記第1の熱交換器は、車体前後方向に変形可能な変形可能部材を介して上記熱交換器取付部に取り付けられると共に、車体正面視で上記矩形枠状部材の上記開口部内に配置されていることを特徴とする自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38947(P2007−38947A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227474(P2005−227474)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】