説明

自動車の前部構造

本発明の自動車の前部構造は、少なくとも2つの縦アームと衝撃バー(4)とラジエータ(10)とを含み、縦アームは、その下を伸びるエンジンマウント(2)のフレームへ、垂直な支柱を介して接続され、衝撃バー(4)は、エンジンマウント(2)のフレームの前において、該フレームと概ね同じ高さに位置するように、少なくとも2つの側方の支持部材(6、8)によってエンジンマウント(2)のフレームへ接続され、ラジエータ(10)は、縦アームに直交する面内を伸び、衝撃バー(4)とエンジンマウント(2)のフレームの間に位置し、ラジエータ(10)の底部の固定手段(12、14、16)と、ラジエータ(10)の頂部と縦アームとの間に配置された回転防止手段とを有する、自動車の前部構造において、ラジエータ(10)の底部の固定手段(12、14、16、17)は、衝撃バー(4)に固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部構造に関する。
【0002】
特に本発明は、少なくとも2つの縦アームと、衝撃バーと、ラジエータとを含み、上記縦アームは、上記縦アームの下を伸びるエンジンマウントのフレームへ垂直な支柱を介して接続され、上記衝撃バーは、上記エンジンマウントの上記フレームの前において、上記エンジンマウントの上記フレームと概ね同じ高さに位置するように、少なくとも2つの側方の支持部材(ボックス)によって上記エンジンマウントの上記フレームへ接続され、上記ラジエータは、上記縦アーム(自動車の縦桁)に直交する面内を伸び、上記衝撃バーと上記エンジンマウントの上記フレームとの間に位置し、上記ラジエータの底部の固定手段と、上記ラジエータの頂部と上記縦アームとの間に配置された回転防止手段とを有する、自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0003】
周知のように、ラジエータの底部は、エンジンマウントのフレームへ溶接された少なくとも2つの支持部材によって、自動車の前部構造に対して固定される。上記の回転防止手段は、自動車の縦桁へ固定される。
【0004】
自動車の安全標準規格は、所定の衝突速度(例えば、ダナー規準(Danner standards)については15km/h)以下においては、エンジンマウントが衝撃によって損傷されないことを求めている。エンジンマウントのフレームへ溶接された少なくとも2つの支持部材による、ラジエータの底部の自動車の前部構造に対する固定様式は、エンジンマウントが衝撃によって損傷されないという観点から制限される。実際、エンジンマウントとバンパーとの間に位置するラジエータは、衝撃ゾーン内にあり、従って衝撃を受けた際に力を受ける。この力は支持部材へ伝達され、これらの支持部材はエンジンマウントと衝突するようになり、エンジンマウントが損傷を受けることがある。
【特許文献1】DE 34 33 935 A1
【特許文献2】EP 1 323 566 A
【特許文献3】US 6 260 609 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点を解消して、所定の衝突速度以下においては、エンジンマウントが衝撃によって損傷されることがなく、また所定の衝突速度以上の衝撃を受けたときには、所定の衝突速度以上の衝撃を受けて、エンジンマウントの交換が必要であることを示すことが可能な、自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、本明細書の「技術分野」に記載した自動車の前部構造において、上記ラジエータの上記底部の上記固定手段は、上記衝撃バーに固定されることを特徴とする、自動車の前部構造を提供する。
【0007】
本発明の様々な特徴によれば:
−少なくとも1つの側方の支持部材(ボックス)が、上記ラジエータの上記底部の上記固定手段を形成し;
−上記衝撃バーは、2つの上記側方の支持部材(ボックス)によって上記エンジンマウントの上記フレームへ接続され、上記固定手段は、上記衝撃バーに固定された支持脚を含み、上記支持脚は、概ね水平な面内において、2つの上記側方の支持部材(ボックス)の間に位置し;
−上記支持脚は、上記エンジンマウントに面する傾斜面を有し、上記支持脚の上面は、上記エンジンマウントの上記フレームよりも充分に高く、上記支持脚のこの特異な形状は、ダナー規準によって課される限界を越えるか近い衝撃を受けた際に、エンジンマウントに痕跡を付けることを可能にするという利点を有し;
−上記支持脚は、レバーによって延伸され、上記レバーの一端は、上記エンジンマウントの上記フレームに取り付けられ;
−上記支持脚は、レバーによって延伸され、上記レバーの一端は、上記側方の支持部材に取り付けられ;
−上記側方の支持部材(ボックス)は、プラスチックの変形ボックスであり、上記変形ボックスは、自動車が衝撃を受けたときに、上記変形ボックスの圧縮を助長することを可能にする折り畳み開始要素を有し、上記側方の支持部材(ボックス)は、上記自動車の機能部品の固定に適した形状を有し;
−上記側方の支持部材(ボックス)は、ラジエータの固定に適した形状を有し;
−上記側方の支持部材(ボックス)は、固定支柱を受けることが可能な支持面を有し;
−上記支持面に、開口と、上記開口の周囲におけるフランジ端部が設けられ;
−上記支持面の上記フランジ端部の少なくとも1つは、弱化部を有し;
−各上記側方の支持部材(ボックス)は、2つの対称な半ボックスから形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、理解のために添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。これらの添付図面において:
−図1は、本発明による前部構造の斜視図であり;
−図2は、図1の前部構造の側面図であり;
−図3は、本発明による前部構造の上面図であり;
−図4は、本発明の1実施の形態による支持脚を示す斜視図である。
【0009】
以下の記載においては、自動車の製造において従来から用いられ、図1の3面体L、V、Tによって示された方向に従う、縦、垂直、横方向を非限定的に採用する。
【0010】
自動車の前部構造1は、周知のように、垂直な支柱によって、縦アームの下を伸びるエンジンマウント2のフレームへ接続された、2つの縦アームを含む。これらの構造部材は、自動車が大きな衝撃を被ったときに、車室の中への侵入が生じないように、外力の全体を吸収する必要がある。
【0011】
また、衝撃バー4が、エンジンマウント2の前にあって、概ね同じ高さに位置するように、少なくとも2つの側方の支持部材6、8を介してエンジンマウント2のフレームへ接続される。ダナー バー(Danner bar)とも呼ばれるこの衝撃バー4と、プラスチック製の変形ボックスからなることが有利な側方の支持部材6、8は、一方では、上述のタイプの衝撃のエネルギの吸収に貢献し、他方では、この衝撃がダナー標準(Danner standard)と呼ばれる所定の規準よりも小さいエネルギを有するときには、エンジンマウント2と縦アームとの少なくとも一方を損傷することなく、衝撃バー4と側方の支持部材6、8が全衝撃を吸収するように、寸法決めされる。
【0012】
構造上の制約のために、ラジエータ(機能部品)10は縦アームに直交する面内を伸び、衝撃バー4とエンジンマウント2のフレームとの間に配置される。ラジエータ10の固定手段の一部をなす固定支柱12、14が、ラジエータ10の底部に設けられ、ラジエータ10の回転防止手段が、ラジエータ10の頂部と縦アームとの間に配置される。
【0013】
図1に示すように、ラジエータ10は、その底部において、2つの新規な支持部材、すなわち:
■ラジエータ10を衝撃バー4の第1底端部へ固定する、衝撃バー4に固定され、衝撃バー4の概ね中央部に、側方のボックスからなる側方の支持部材6、8の間に位置するように配置された、放射状の支持脚16;
■ラジエータ10を衝撃バー4の第2底端部への固定する、側方のボックスからなる側方の支持部材6、8;
によって固定される。
【0014】
ラジエータは、これらの2種類の支持部材の上に載る。(支持脚16、支持部材6、8は、固定手段に含まれる。)
図1および3に示されたように、放射状の支持脚16は、例えば溶接によって、衝撃バー4へ固定される。支持脚16は、一方では、エンジンマウント2のフレームへ向けて伸びる上面18と、他方では、衝撃バー4の底部から、エンジンマウント2のフレームへ向けられた支持脚16の上面18の端部へ向けて伸びる、垂直に対して傾斜した傾斜面20とを有する部分から形成される。支持脚16の上面18に、ラジエータ10の底部へ固定された固定支柱14を受けることが可能な開口22が設けられる。
【0015】
放射状の支持脚16と、放射状の支持脚16が固定される衝撃バー4は、放射状の支持脚16の上面18が、エンジンマウント2のフレームの高さよりも高い高さに位置するように、垂直方向に配置される。このようにして、ダナー規準(この規準は、衝撃バー4に、エンジンマウント2のフレームに衝撃を与えることなく、エンジンマウント2のフレームへ向けた、約90mmに等しい引き込みをもたらす衝撃と同等の衝撃を表す。)に規定された衝撃よりも大きい衝撃を受けた際には、放射状の支持脚16は、傾斜面20の底部においてエンジンマウント2と接触するようになる。この接触が傾斜面20の底部において生じるという事実が、衝撃の吸収に反する力を発生させることなしに、ダナー規準が超過され、エンジンマウントの交換を要することを気付かせることが充分可能な痕跡を、エンジンマウント2に付けることを可能にする。エンジンマウント2にこのような力が作用しても、修理を要することが明確にされることがなければ、エンジンマウント2が損傷を受けていても交換されない可能性があるので危険である。
【0016】
他の実施の形態によれば、放射状の支持脚は、大きな垂直方向の剛性を有するラジエータ10の固定に適した形状を有する。このことは、ラジエータの振動をより効果的に低下させることを可能にし、音響的な性能を改良することを可能にする。この目的のために、支持脚17は、上記に記載した支持脚と類似した方法で、例えば溶接によって、衝撃バー4へ固定される。支持脚17は、一方では、エンジンマウント2のフレームへ向けて伸びる上面19と、他方では、衝撃バー4の底部から、エンジンマウント2のフレームへ向けられた支持脚17の上面19の端部へ向けて伸びる、垂直に対して傾斜した面とを有する部分から形成される。支持脚17の上面19に、ラジエータ10の底部へ固定された固定支柱14を受けることが可能な開口が設けられる。更に、図4に示すように、支持脚17に、上面19から、ラジエータが固定されていない側方のボックス(側方の支持部材)8へ向けて伸びる、レバー21を設ける。このレバー21は、このようにして、レバー21の端部23がエンジンマウント2と側方のボックス8との少なくとも一方に固定されるように、支持脚17を側方へ、実質的にエンジンマウント2へ向けて、延伸する。
【0017】
同日付で出願された別の特許出願において、本出願人は、ラジエータ10の底部の固定を可能にする側方の支持部材6の独特な形態を提示した。この側方の支持部材6は、ラジエータ10の底部を固定することを可能にする固定支柱12のための支持面32を有することができる。この支持面32の両側の縦方向の持ち上げ端部34が、衝撃を受けた際における側方の支持部材の概ね縦方向の圧縮を助長することを可能にする、折り畳み開始要素を提供する。この支持面32に、ラジエータ10の固定支柱12の通過を可能にする開口36が設けられる。側方の支持部材を形成する材料の厚さは薄いので、固定支柱12の案内を可能にするフランジ端部が、この開口36の周囲に作られる。このフランジ端部は、衝撃の際における支持部材の収縮に対する抵抗を縦方向に作り出す。この縦方向の抵抗を減少させるために、弱化部が、各縦方向のフランジ端部に設けられる。
【0018】
構造上の理由から、固定支柱12の取付け用の開口36は、側方の支持部材の上面の中心にはない。衝撃時における均一な圧縮を低コストで可能にするためと、支持部材の底部が上部よりも大きな衝撃を受け、より少なく変形することを回避するために、支持部材の底面にも開口が設けられる。支持部材の中心に対して、支持部材の底部を支持部材の上部と対称にすることにより、支持部材の底部の慣性を、支持部材の中心に対して、支持部材の上部の慣性と対称にすることが可能となり、これによって支持部材の均一な圧縮が可能になる。支持部材を、対称な2半部品から形成すると有利である。底部半部品は、支持部材を閉じる機能のみを有する。このようにして、1つの前部構造、従って少なくとも2つの側方の支持部材に対して、1つのタイプの部品のみを作ればよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの縦アームと、衝撃バー(4)と、ラジエータ(10)とを含み、上記縦アームは、上記縦アームの下を伸びるエンジンマウント(2)のフレームへ、垂直な支柱を介して接続され、上記衝撃バー(4)は、上記エンジンマウント(2)の上記フレームの前において、上記エンジンマウント(2)の上記フレームと概ね同じ高さに位置するように、少なくとも2つの側方の支持部材(6、8)によって上記エンジンマウント(2)の上記フレームへ接続され、上記ラジエータ(10)は、上記縦アームに直交する面内を伸び、上記衝撃バー(4)と上記エンジンマウント(2)の上記フレームとの間に位置し、上記ラジエータ(10)の底部の固定手段(12、14、16)と、上記ラジエータ(10)の頂部と上記縦アームとの間に配置された回転防止手段とを有する、自動車の前部構造において、上記ラジエータ(10)の上記底部の上記固定手段(12、14、16、17)は、上記衝撃バー(4)に固定されることを特徴とする、自動車の前部構造。
【請求項2】
少なくとも1つの側方の支持部材(6)が、上記ラジエータ(10)の上記底部の上記固定手段を形成することを特徴とする、請求項1に記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
上記衝撃バー(4)は、2つの上記側方の支持部材(6、8)によって上記エンジンマウント(2)の上記フレームへ接続され、上記固定手段は、上記衝撃バー(4)に固定された支持脚(16、17)を含み、上記支持脚(16)は、概ね水平な面内において、2つの上記側方の支持部材(6、8)の間に位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
上記支持脚(16、17)は、上記エンジンマウント(2)に面する傾斜面(20)を有し、上記支持脚の上面(18、19)は、上記エンジンマウント(2)の上記フレームよりも充分に高いことを特徴とする、請求項3に記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
上記支持脚(17)は、レバー(21)によって延伸され、上記レバー(21)の一端は、上記エンジンマウント(2)の上記フレームに取り付けられることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
上記支持脚(17)は、レバー(21)によって延伸され、上記レバー(21)の一端は、上記側方の支持部材(6、8)に取り付けられることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1つに記載の自動車の前部構造。
【請求項7】
上記側方の支持部材(6)は、プラスチックの変形ボックスであり、上記変形ボックスは、自動車が衝撃を受けたときに、上記変形ボックスの圧縮を助長することを可能にする折り畳み開始要素を有し、上記側方の支持部材(6)は、上記自動車の機能部品(10)の固定に適した形状を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車の前部構造。
【請求項8】
上記側方の支持部材(6)は、ラジエータ(10)の固定に適した形状を有することを特徴とする、請求項7に記載の自動車の前部構造。
【請求項9】
各上記側方の支持部材(6)は、2つの対称な半ボックスから形成されることを特徴とする、請求項7または8に記載の自動車の前部構造。

【公表番号】特表2007−533547(P2007−533547A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508947(P2007−508947)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050223
【国際公開番号】WO2005/105552
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】