説明

自動車の前部車体構造

【課題】ホイールハウスの車幅方向内端側に接して車体前後方向に延び、かつ後部側が下方に湾曲して、後端部がフロアフレームに接続されるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームのホイールハウス側方部分に前端部が接続され、後ろ上りに延びて、後端部がホイールハウス後方の車体部材に接続される補助フレームとが備えられた自動車の前部車体構造において、ホイールハウスの後方に十分なスペースを確保できない場合でも、補助フレームを配設可能な自動車の前部車体構造を提供する。
【解決手段】補助フレーム30を、前側部材31と後側部材32とに分割すると共に、前側部材31を、ホイールハウス6を構成するパネル19のエンジンルーム13側の面に設け、後側部材32を、前端部が前側部材31の後端部に重なるように前記パネル19の反エンジンルーム13側の面に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体前部におけるホイールハウス周辺の構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部には、ホイールハウスの側方を通過して車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームが設けられている。そして、このフロントサイドフレームの前端部に車両前方から衝撃荷重が入力されたときに、この衝撃荷重を車体後部にも分散可能なように、フロントサイドフレームの後端部をフロアフレームの前端部に接続する場合があるが、一般にフロアフレームの方がフロントサイドフレームよりも低い位置に配設されるので、フロントサイドフレームの後部側を下方に湾曲させてフロアフレームの前端部に接続することとなる。
【0003】
しかし、このように構成した場合、衝撃荷重がフロントサイドフレームの前端部に入力されたときに、湾曲部に折れが生じる虞があるので、これを防止するため、例えば特許文献1には、フロントサイドフレームにおけるサスペンションタワー部(ホイールハウスにおけるサスペンションが収容される部分)の側方部分に一端が接続され、他端側がサスペンションタワーを構成するパネルのエンジンルーム側の面に沿って後ろ上りに延びて、サスペンションタワー後方の車体部材に接続される補助フレームを設けたものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−182633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホイールハウスの後方には、例えばブレーキのマスタシリンダ等の装置がダッシュパネルから該ホイールハウス側に突出して配設される場合があり、この場合、設置スペースの不足により特許文献1に記載のような補強フレームを設けるのが困難な場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、ホイールハウスの後方に十分なスペースを確保できない場合でも、補助フレームを配設可能な自動車の前部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、ホイールハウスの車幅方向内端側に接して車体前後方向に延び、かつ後部側が下方に湾曲して、後端部がフロアフレームに接続されるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームのホイールハウス側方部分に前端部が接続され、後ろ上りに延びて、後端部がホイールハウス後方の車体部材に接続される補助フレームとが備えられた自動車の前部車体構造であって、前記補助フレームは、前側部材と後側部材とに分割されていると共に、前側部材は、ホイールハウスを形成するパネルのエンジンルーム側の面に設けられ、後側部材は、前端部が前側部材の後端部に重なるように前記パネルの反エンジンルーム側の面に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、前記車体部材はダッシュパネルであり、前記補助フレームの後側部材は、後部がホイールハウスの上部に設けられたサスペンション支持部にまで拡張していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の自動車の前部車体構造において、前記ダッシュパネルと前記サスペンション支持部とを車体前後方向に連結する連結部材が備えられており、該連結部材と、前記補助フレームの後側部材の後部側とで、ダッシュパネルからサスペンション支持部に渡る閉断面構造が構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車の前部車体構造において、前記車体部材はダッシュパネルであり、該ダッシュパネルの左右にヒンジピラーが設けられていると共に、車幅方向に延びて前記左右のヒンジピラーを連結し、ダッシュパネルの前面または後面とで閉断面構造を構成するダッシュクロスメンバが備えられており、前記補助フレームの後側部材の後部が、該ダッシュクロスメンバに直接またはダッシュパネルを介して連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について説明する。
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、補助フレームは、前側部材と後側部材とに分割されていると共に、前側部材は、ホイールハウスを形成するパネルのエンジンルーム側の面に設けられ、後側部材は、前端部が前側部材の後端部に重なるように前記パネルの反エンジンルーム側の面に設けられているから、補強フレームの後半部分がホイールハウスのエンジンルーム側に突出しない。したがって、補強フレームを設けたとしても、該補強フレームと、ホイールハウスの後方に配設される例えばブレーキ装置のマスタシリンダ等との干渉を回避することができる。そして、補強フレームによりフロントサイドフレームの折れ変形を良好に抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記車体部材はダッシュパネルであり、前記補助フレームの後側部材は、後部がホイールハウスの上部に設けられたサスペンション支持部にまで拡張しているから、フロントサイドフレームから補助フレームに作用する衝撃荷重を、ダッシュパネルとサスペンション支持部とに分散させることができる。したがって、衝撃荷重がより大きな場合でもフロントサイドフレームの折れ変形を良好に抑制することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、ダッシュパネルとサスペンション支持部とを車体前後方向に連結する連結部材が備えられており、該連結部材と、前記補助フレームの後側部材の後部側とで、ダッシュパネルからサスペンション支持部に渡る閉断面構造が構成されているから、ダッシュパネルとホイールハウスのサスペンション支持部との間の剛性が向上することとなる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、車体部材はダッシュパネルであり、該ダッシュパネルの左右にヒンジピラーが設けられていると共に、車幅方向に延びて左右のヒンジピラーを連結し、ダッシュパネルの前面または後面とで閉断面構造を構成するダッシュクロスメンバが備えられており、前記補助フレームの後側部材の後部が、該ダッシュクロスメンバに直接またはダッシュパネルを介して連結されているから、フロントサイドフレームから補助フレームに作用する荷重を、ダッシュクロスメンバを介してヒンジピラーにも分散させることができる。したがって、衝撃荷重がより大きな場合でもフロントサイドフレームの折れ変形を良好に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車の前部車体構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る自動車1においては、ダッシュパネル2の左右両端部にはそれぞれ、上下方向に延び、フロントドアが枢支されるヒンジピラー3(一方のみ図示されている)が設けられている。
【0019】
左右のヒンジピラー3の上端部側からはそれぞれ前方にエプロンレインフォースメント4,4が延びている。
【0020】
エプロンレインフォースメント4,4に対して平面視でほぼ平行に、かつ車幅方向内方に離間した位置で、フロントサイドフレーム5,5が車体前後方向に延びている。各フロントサイドフレーム5は、断面ハット状の外側部材と内側部材とで車体前後方向に延びる閉断面構造を形成している。
【0021】
車幅方向でエプロンレインフォースメント4とフロントサイドフレーム5との間には、前輪用のホイールハウス6が設けられている。
【0022】
フロントサイドフレーム5及びエプロンレーフォースメント4の前端部には、これらに跨ってプレート7が取り付けられ、左右のプレート7,7間には、前後方向の衝撃荷重が入力されたときに圧縮変形するクラッシュボックス8,8を介して、バンパレインフォースメント9が取り付けられている。
【0023】
ダッシュパネル2の下部は、後方へ湾曲して、下端部がフロアパネル10の前端部に接合されている。ダッシュパネル2の下部及びフロアパネル10には、車幅方向ほぼ中央において前後方向に延び、かつ上方へ膨出するトンネル部11が設けられている。
【0024】
フロントサイドフレーム5の後部側は、ホイールハウス6の側方において下方に湾曲し、後端部が、フロアパネル10の下面側で車体前後方向に延びるフロアフレーム12の前端部に接続されている。フロアフレーム12は、フロアパネル10とで車体前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0025】
ダッシュパネル2の前面(エンジンルーム13側の面)には、左右のフロントサイドフレーム5,5間においてトンネル部11の前端部に沿うように延びて、図2に示すように、ダッシュパネル2とで閉断面構造を構成する断面ハット状のロアダッシュクロスメンバ14が設けられている。
【0026】
図2、図3に示すように、ダッシュパネル2の後面(車室15側の面)の上部には、車幅方向に延びる断面ハット状のアッパダッシュクロスメンバ16が設けられている。このアッパダッシュクロスメンバ16は、該メンバ16とほぼ同一断面形状のガセット17を介してヒンジピラー3の内面を構成するインナパネル18に左右の端部が連結されている(請求項4におけるダッシュクロスメンバは、アッパダッシュクロスメンバ16とガセット17とで構成される)。詳しくは、ガセット17は、上下のフランジ17a,17aの後端部側がボルト及びナットB1,B1によりインナパネル18に締結され、フランジ17aの前端部側がアッパダッシュクロスメンバ16の端部のフランジ部16aと、ダッシュパネル2と、後述する補強部材30の後側部材32の後端部のフランジ32gと共に、ボルト及びナットB2により共締めされている。そして、これにより、ダッシュパネル2とアッパダッシュクロスメンバ16とガセット17とで左右のヒンジピラー3,3間において車幅方向に延びる閉断面構造Xが形成されている。
【0027】
図1、図2に示すように、ホイールハウス6は、車幅方向外端部がエプロンレインフォースメント4に接合されると共に車幅方向内端部がフロントサイドフレーム5に接合されたホイールハウスインナパネル19の後部側をアーチ状に上方に膨出させることにより形成されており、上部には、サスペンションダンパやコイルバネ等が収容されるサスペンションタワー部6a(19a)が、ホイールハウスインナパネル19をタワー状に上方及び車幅方向内方に突出させることにより形成されている。そして、図4に示すように、ホイールハウスインナパネル19におけるサスペンションタワー部6a部分の反エンジンルーム13側の面には、サスペンションのアッパーアーム支持用のサスペンション支持部材21,22が取り付けられている。
【0028】
図5に示すように、ダッシュパネル2と、サスペンションダンパ等の上端部が固定されるサスペンションタワー部6aのトップ部6a′(サスペンション支持部)とを、アッパダッシュクロスメンバ16の高さ位置において、車体前後方向に連結する第1連結パネル41が設けられている。この第1連結パネル41におけるサスペンションタワー部6aよりも後方の部分は、ほぼ水平な横面部41aで構成され、後端部に設けられたフランジ41bが、ダッシュパネル2にアッパダッシュクロスメンバ16の下側のフランジ16aに重ねて接合されている。
【0029】
また、図2、図5に示すように、ダッシュパネル2とサスペンションタワー部6aのトップ部6a′の間には、第1連結パネル41よりも上方において、左右のエプロンレインフォースメント4,4及びヒンジピラー3,3を車幅方向に連結するカウル部50が設けられている。
【0030】
カウル部50は、左右の端部が前方に延びてサスペンションタワー部6aのトップ部6a′に接合されるカウルフロントパネル51と、ダッシュパネル2の上方に設けられたダッシュアッパパネル52と、該ダッシュアッパパネル52に後部が接合され、フロントガラス53の前端部を支持するカウルパネル54とで構成されている。
【0031】
そして、図5に示すように、カウルフロントパネル51の端部とダッシュアッパパネル52の端部との間には、これらを前後に連結する第2連結パネル42が設けられている。第2連結パネル42は、エプロンレインフォースメント4側の端部が該レインフォースメント4に接合されている。なお、この第2連結パネル42は、ワイパー取付用として設けられているが、前後方向の補強部材としての機能も有している。
【0032】
ところで、フロントサイドフレーム5は、前述したように後部側が下方に湾曲しているが、衝撃荷重がフロントサイドフレーム5の前端部に入力されたときにこの湾曲部5aに折れが生じるのを防止する必要がある。
【0033】
そこで、本実施の形態においては、図2に示すように、フロントサイドフレーム5におけるホイールハウス6のサスペンションタワー部6aの側方部分に前端部が接続され、後ろ上りに延びて、後端部がダッシュパネル2(車体部材)におけるホイールハウス6の後方部分に接続される補助フレーム30が備えられている。
【0034】
その場合に、本実施の形態に係る車両においては、図2、図3に示すように、ダッシュパネル2の前面には、運転席の前方でかつホイールハウス6の後方において、ブレーキ装置のマスタシリンダ60が取り付けられるが、取付状態においてはマスタシリンダ60の前部がホイールハウス6のサスペンションタワー部6aに近接する。したがって、補助フレーム30の全てをホイールハウスインナパネル19のエンジンルーム13側の面に設けるのは、スペース上、困難となっている。
【0035】
そこで、本実施の形態においては、補助フレーム30を、前側部材31と後側部材32とに分割すると共に、前側部材31を、ホイールハウスインナパネル19のエンジンルーム13側の面に設け、後側部材32を、前記パネル19の反エンジンルーム13側の面に設けている
【0036】
この構造について詳しく説明すると、前側部材31は、ホイールハウスインナパネル19のエンジンルーム13側の面に沿って、マスタシリンダ60の前端に対して所定量離間した位置まで、後ろ上りに延びている。また、前側部材31は、両側部にフランジ部31a,31aを有する断面ハット状の形状とされているが、前端部及び下端部においては突出部がなくされて、フランジ部31b,31cとされている。そして、前端部(下端部)のフランジ部31bがフロントサイドフレーム5の内側部材の上面5a及び側面5bに接合され、側部のフランジ部31a,31aがフロントサイドフレーム5の内側部材の上部フランジ部5c及びホイールハウスインナパネル19の外側縦面部19bに接合され、後端部(上端部)のフランジ部31cが同縦面部19bに接合されている。
【0037】
これに対し、後側部材32は、図4にも示すように、ホイールハウスインナパネル19の反エンジンルーム13側の面に沿って、概ね後ろ上りに延びて、後端部がダッシュパネル2におけるホイールハウス6の後方部分に接続されている。
【0038】
より詳しく説明すると、後側部材32は、ホイールハウスインナパネル19の外側縦面部19bの上端から車幅方向外側に斜めに延びる傾斜面部19cの下面側に設けられる前部32aと、それよりも後方側の後部32bとで構成されており、前部32aは、両側部にフランジ部32h,32hが設けられた断面ハット状の形状とされており、これらのフランジ部32h,32hがホイールハウスインナパネル19の内側傾斜面部19cに接合されている。
【0039】
また、図6に示すように、後側部材32は、前端部が前側部材31の後端部(上端部)に重なるように設けられている。これは、前側部材31と後側部材32との連結部の強度を十分に確保することを目的としている。
【0040】
一方、図2、図、図5からわかるように、後側部材32の後部32bは、前述のように後端部がダッシュパネル2におけるホイールハウス6の後方部分に接続される一方で、サスペンションタワー部6aのトップ部6a′近傍にまで延びる拡張部32cを有している。そして、後部32bは、前部の断面ハット形状に連続するように形成された下面部32d、側面部32e、及び前面部32fと、これらの面部32d,32e,32fの周縁に設けられたフランジ部32gとを有しており、このフランジ部32が、ホイールハウスインナパネル19の外側縦面部19d、ダッシュパネル2、第1連結パネル41、ホイールハウスインナパネル19におけるサスペンションタワー部6aのトップ部6a′部分にまたがって接合されている。そして、これにより、図5に示すように、第1連結パネル41と、補助フレーム30の後側部材32の後部32bとで、ダッシュパネル2からサスペンションタワー部6aのトップ部6a′部分に渡る閉断面構造Yが形成されている。
【0041】
また、補助フレーム30の後側部材32の後部32bのフランジ部32gのうちダッシュパネル2に取り付けられる後端部部分は、ダッシュパネル2と、アッパダッシュクロスメンバ16及びガセット17のフランジ部16a,17aと共にボルト及びナットB2により共締めされている。そして、これにより、後側部材32は、ダッシュパネル2を介してアッパダッシュクロスメンバ16に連結されている。
【0042】
次に、本実施の形態に作用について説明する。
【0043】
すなわち、自動車に前突等が生じて、バンパレインフォースメント9に前方から衝撃荷重が入力されると、クラッシュボックス8が圧縮変形しつつ、フロントサイドフレーム5,5に衝撃荷重が入力される。
【0044】
その場合に、フロントサイドフレーム5は、後端部がフロアフレーム12に接続されているので、車体後部にも衝撃荷重が分散されることとなる。
【0045】
また、本実施の形態においては、フロントサイドフレーム5におけるホイールハウス6側方の部分に前端部が接続され、後ろ上りに延びて、後端部がダッシュパネル2におけるホイールハウス6後方の部分に接続される補助フレーム30が設けられているから、補助フレーム30を介して、ダッシュパネル2にも衝撃荷重が分散されることとなる。したがって、フロントサイドフレーム5に衝撃荷重が入力されたときにおける該フレーム5,5の折れ変形が、良好に抑制されることとなる。
【0046】
そして、さらに、補助フレーム30の後側部材32の後部32bが、ダッシュパネル2を介してアッパダッシュクロスメンバ16に連結されているから、フロントサイドフレーム5から補助フレーム30に入力された衝撃荷重が、アッパダッシュクロスメンバ16を介してヒンジピラー3にも分散されることとなる。したがって、衝撃荷重がより大きな場合でもフロントサイドフレーム5の折れ変形が良好に抑制されることとなる。
【0047】
また、補助フレーム30の後側部材32は、後部32bがホイールハウス6のサスペンションタワー6aのトップ部6a′(サスペンション支持部)にまで拡張しているから、フロントサイドフレーム5から補助フレーム30に入力された衝撃荷重が、ダッシュパネル2とサスペンションタワー6aのトップ部6a′とに分散されることとなる。したがって、衝撃荷重がより大きな場合でもフロントサイドフレーム5の折れ変形が良好に抑制されることとなる。
【0048】
また、ダッシュパネル2とサスペンションタワー6aのトップ部6a′とを車体前後方向に連結する第1連結パネル41(連結部材)が備えられており、該第1連結パネル41と、補助フレーム30の後側部材32の後部32bとで、ダッシュパネル2からサスペンションタワー6aのトップ部6a′に渡る閉断面構造Yが構成されているから、ダッシュパネル2とサスペンションタワー6aのトップ部6a′との間の剛性が向上することとなる。したがって、この間の車体が前後に圧縮されにくくなり、その結果、この下方に位置するフロントサイドフレーム5の湾曲部が前後に圧縮されにくくなり、折れ変形が生じにくくなる。
【0049】
なお、フロントサイドフレーム5は、後部側がロアダッシュクロスメンバ14を介して、他方のフロントサイドフレーム5にも連結されているので、いずれか一方のフロントサイドフレーム5に相対的に強く衝撃荷重が入力された場合でも、他方のフロントサイドフレーム5側へも分散されるので、これによっても、フロントサイドフレーム5の折れ変形が生じにくくなる。
【0050】
そして、特に、本実施の形態においては、補助フレーム30は、前側部材31と後側部材32とに分割されていると共に、前側部材31は、ホイールハウスインナパネル19(ホイールハウスを形成するパネル)のエンジンルーム13側の面に設けられ、後側部材32は、前端部が前側部材31の後端部に重なるように前記パネル19の反エンジンルーム13側の面に設けられているから、補強フレーム30の後半部分がホイールハウス6のエンジンルーム13側に突出しない。したがって、補強フレーム30を設けたとしても、ホイールハウス6の後方に配設されるブレーキ装置のマスタシリンタ60等の機器との干渉も回避されることとなる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、アッパダッシュクロスメンバは、ダッシュパネルの後面側に設けられているが、前面側に設けられている場合においても、請求項4に記載の発明は適用可能であり、その場合、直接アッパダッシュクロスメンバに補助フレームの後側部材の後半部を接続すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車の車体前部におけるホイールハウス周辺の構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の前部車体構造を示す前方斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図3の矢印C方向でかつ斜め下方からの斜視図である。
【図5】図3のD−D断面図である。
【図6】図2のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動車
2 ダッシュパネル(車体部材)
3 ヒンジピラー
5 フロントサイドフレーム
6 ホイールハウス
6a サスペンションタワー部
6a′ トップ部(サスペンション支持部)
12 フロアフレーム
16 アッパダッシュクロスメンバ(ダッシュクロスメンバ)
17 ガセット(ダッシュクロスメンバ)
19 ホイールハウスインナパネル(ホイールハウスを形成するパネル)
30 補助フレーム
31 前側部材
32 後側部材
32a 前部
32b 後部
32c 拡張部
41 第1連結パネル(連結部材)
X 閉断面構造(ダッシュパネルとダッシュクロスメンバとで形成される閉断面構造)
Y 閉断面構造(連結部材と補強フレームとで形成される閉断面構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスの車幅方向内端側に接して車体前後方向に延び、かつ後部側が下方に湾曲して、後端部がフロアフレームに接続されるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームのホイールハウス側方部分に前端部が接続され、後ろ上りに延びて、後端部がホイールハウス後方の車体部材に接続される補助フレームとが備えられた自動車の前部車体構造であって、
前記補助フレームは、前側部材と後側部材とに分割されていると共に、
前側部材は、ホイールハウスを形成するパネルのエンジンルーム側の面に設けられ、後側部材は、前端部が前側部材の後端部に重なるように前記パネルの反エンジンルーム側の面に設けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、
前記車体部材はダッシュパネルであり、
前記補助フレームの後側部材は、後部がホイールハウスの上部に設けられたサスペンション支持部にまで拡張していることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の自動車の前部車体構造において、
前記ダッシュパネルと前記サスペンション支持部とを車体前後方向に連結する連結部材が備えられており、
該連結部材と、前記補助フレームの後側部材の後部側とで、ダッシュパネルからサスペンション支持部に渡る閉断面構造が構成されていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動車の前部車体構造において、
前記車体部材はダッシュパネルであり、
該ダッシュパネルの左右にヒンジピラーが設けられていると共に、
車幅方向に延びて前記左右のヒンジピラーを連結し、ダッシュパネルの前面または後面とで閉断面構造を構成するダッシュクロスメンバが備えられており、
前記補助フレームの後側部材の後部が、該ダッシュクロスメンバに直接またはダッシュパネルを介して連結されていることを特徴とする自動車の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83748(P2009−83748A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258211(P2007−258211)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】