説明

自動車の収納部構造

【課題】 荷台の積載空間や車両外観に影響を与えることなく、小物品や長尺物品を収まりよく収納可能な収納部を増設することができる自動車の収納部構造を提供する。
【解決手段】 車室2外後部に荷台3を備え、その側方に立設された側壁31の外表面(5)が、車室側部の外表面(21)と一連の意匠面を構成している自動車において、前記側壁31の外表面が開閉可能な蓋体5で構成され、前記側壁31の内部に物品収納部6が設けられている。前記蓋体5を、開状態で水平に支持する支持手段(51、52)を備え、前記蓋体の内面を作業台(55)として利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室外後部に荷台を備えた自動車もしくは貨物自動車の収納部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室外後部に荷台を備えた貨物自動車において、荷台以外の空間を物品収納部に利用することが提案されてきた。例えば、特許文献1には、三方開き式トラックのサイドゲートの代わりに物品保管箱を設けることが開示され、特許文献2には、ピックアップトラックのサイドパネルの後輪の後方領域に物品収納箱を設けることが開示されている。
【0003】
しかし、上記特許文献1では、単に荷台の積載空間の一部が、物品保管箱に変更されただけで、実質的な積載空間の増加とはならず、むしろ、三方開き式トラックとしての利用が困難になる問題がある。一方、上記特許文献2では、収納部に充分な容量を得ることが困難であるうえ、サイドパネルの中間部分に見切りラインが生じ、車両の外観を損ねる問題があった。
【0004】
【特許文献1】実登第3062982号公報
【特許文献2】特開2005−289352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術のこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、荷台の積載空間や車両外観に影響を与えることなく、小物品や長尺物品を収まりよく収納可能な収納部を増設することができる自動車の収納部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、車室外後部に荷台を備え、前記荷台の側方に立設された側壁の外表面が、車室側部の外表面と一連の意匠面を構成している自動車の収納部構造において、前記側壁の外表面が開閉可能な蓋体で構成され、前記側壁の内部に物品収納部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動車の収納部構造は、上記のように構成されているので、車両側部の膨らみに応じた荷台側方の側壁の厚さを利用して、扁平ではあるが長大な収納スペースを捻出でき、荷台の積載空間を減少させることなく物品収納部を増設可能であり、従来、荷台への積み込みに適さなかった長尺物品や小物品を収まり良く収納できるとともに、側壁外側面全体が蓋体として開閉する構成により、側面の中間部に見切りラインが生じず、車両外観に影響を及ぼすことがない。
【0008】
本発明において、前記蓋体の下端縁が、後輪を収容するホイールハウスの頂部より下方に位置し、前記蓋体が、前記ホイールハウスに対応した切欠部を有している態様では、ホイールハウス周囲の不定型な領域を、ホイールハウスの前後あるいは上下など適宜区画して小物品や長尺物品の収納に利用でき、その場合にも、側面の中間部に見切りラインが生じず、車両外観に影響を及ぼすことがない。
【0009】
また、本発明において、前記蓋体が、その下端部に設けたヒンジ機構を介して車体側に回動可能に支持されている態様では、蓋体を下方に降下させて開くことにより、開状態で支持手段が不要であるかまたは簡素化でき、比較的大きな蓋体であっても容易に開閉して物品の出し入れを行うことができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記蓋体を、開状態で水平に支持する支持手段を備え、前記蓋体の内面を作業台として利用可能である態様では、脚部などを必要とせず、好適な高さの作業台を構成でき、しかも作業台の直ぐ上方に、物品収納部が展開されているので、収納された作業用具を用いた作業を行うのに好都合である。
【0011】
また、本発明において、前記蓋体が、前記ヒンジ機構の可動部を構成する支持アームを備え、前記支持手段が、前記支持アームおよびその回動規制部材で構成されている態様では、ホイールハウスの周囲にオーバーフェンダー部などの張出形状があっても、この張出形状と干渉せずに、蓋体の開閉や開位置における支持を行うことができ、車体デザインの自由度が高く、ピックアップトラックなど、デザインのウエイトが大きい自動車に実施するのに有利である。
【0012】
さらに、前記支持アームが、ホイールハウスに対応した切欠部に隣接して配置されている態様では、上記のような張出形状がある場合にも、蓋体を、車体側部に近接した位置で回動支持でき、支持アームの長さを必要最小限に留めることができるので、構造設計上有利であり、かつ、張出形状との干渉を一層確実に防止できる。
【0013】
前記側壁の内部に、樹脂成形品で形成され収納ボードが配設され、該収納ボードに複数の物品収納用凹部または該凹部を画成する隔壁が一体成形されている態様では、小物品や長尺物品の形状に適合した収納部を安価かつ軽量に形成可能であることは勿論、収納ボードが側壁内部の補強部材や振動吸収部材として機能し、荷台に積載した荷物の衝突による側壁への衝撃を緩和する効果が得られる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る収納部構造を実施した自動車を示す後方から見た斜視図である。図において、自動車1は、運転席および助手席を有する車室2の後方に、上方が開放された荷台3を備え、車室2の前方にエンジン室4を備えたピックアップトラックであり、荷台3の側方を囲う側壁31の外表面(5)は、車室2の側部に配設されたドア21の外表面と一連の意匠面を構成している。
【0015】
荷台3上には荷物の積載空間30が形成されている。図では隠れて見えないが、積載空間30の床面(荷台3)は、後輪10のホイールアーチ(50)の頂部より下位に位置した低床タイプの荷台であり、荷台3の両側部に、後輪10を収容するためのホイールハウスの張出があるものの、地上からの物品、例えばオフロードバイクなどの積み込みが容易な仕様となっている。
【0016】
荷台3の後部には開閉可能な後部扉32(リヤゲート)が設けられ、この後部扉32は、その下端縁に設けた図示しないヒンジ機構によって、荷台3後部に回動可能に連結されるとともに、両側上部に設けた図示しないロック機構により閉位置で保持可能に構成されている。一方、積載空間30の前側は、車室2のバックパネル22によって車室2内部と仕切られ、積載空間30の両側面を画成する側壁31の上部にはロールケージ33が架設されている。
【0017】
そして上記側壁31の外表面の見切りライン(53)から上の部分は、全面的に開閉可能な蓋体5で構成され、その内部に図2に示すような物品収納部6が設けられている。図2は、車体側部の蓋体5を開放した状態を示している。蓋体5の外表面(アウターパネル)は、車体表面を構成する鋼板(パネル材)で形成され、下端縁53の中央に後輪10のホイールハウスに対応した切欠部50(ホイールアーチ)が設けられ、該切欠部50の前方および後方に隣接して突設された2つの支持アーム51、52を介して開閉可能に設けられている。
【0018】
支持アーム51、52は、図3に示すように略円弧状の第1部分56と、その先端で屈曲されて直線的に延びる第2部分57とで構成され、第1部分56の基端が蓋体5に剛接合されることによってヒンジ機構の可動部を構成しており、各支持アーム51、52の前記第2部分57の先端58が車体側(ヒンジ機構の固定部)に回動可能に連結されるとともに、第2部分57が、車体側に設けたストッパー8(回動規制部材)に当接することによって、開位置で蓋体5が略水平に支持されるように構成されている。
【0019】
なお、蓋体5の支持手段または回動規制手段として、蓋体5の上端部と側壁31側とをチェーンや二つ折れリンクなどの支持部材で連結しても良い。また、支持アーム51、52の先端の回動軸を車体側で回動可能に支持するヒンジ機構の軸受部を、上下方向に延在する長穴または溝で構成し、蓋体5を一旦上方に引き上げた後に側方に開くように構成しても良い。
【0020】
さらに、図2に示す開位置で上面となる蓋体5の内面は、平坦な樹脂製のインナーボード55で被覆されており、物品収納部6の前面下方に拡がる作業台(55)を形成している。このインナーボード55は、蓋体5の内面を保護するとともに耐水性を付与し、かつ、後述する物品収納部6に非固定状態で収容される物品に対する緩衝材としての機能を備えている。
【0021】
一方、開放された側壁31内部の物品収納部6は、全体が樹脂成形品からなる収納ボードで構成され、側壁31の内部空間に嵌入固定されている。この収納ボード(6)は、様々な大きさ形状をなす物品を分別して効率良く収納できるように、大きさ形状の異なる複数の収納部61、62、63、64に区画されており、図示例においては、各収納部(収納用凹部)61、62、63、64が収納ボード本体に一体成形されているが、複数の部材で構成されていても良い。
【0022】
図示例の各収納部61、62、63、64のうち、後上部に配設された収納部63は、小さなバラ物品の収納用に螺合開閉式の蓋を備えている。また、収納部61、62のようなボックス形状の収納部にヒンジ式の内蓋などを付設しても良い。さらに、後下部に配設された収納部64は、長尺物の収納用に細長く形成され、必要に応じてクリップやフック、ペグなどの係止具65を装着可能としている。図2では、係止具65に散水用のジェットノズル7を装着して収納する場合を示している。
【0023】
以上のように構成された自動車1は、側壁31の蓋体5を開くことにより、側壁31内部に配設された物品収納部6が利用可能となるとともに、垂直壁面に配設された物品収納部6の複数の収納部61〜64の直下に広い作業台(55)が展開され、各収納部61〜64に収納した道具類を使用して、作業台(55)上で直ちに作業可能となる。
【0024】
図示例のようなピックアップタイプの自動車1は、オフロード走行やオートキャンプ等に適したレジャービークルとして好適であり、上述のような収納部構造(5、6)を備えたことにより、例えば、調理用品を物品収納部6に収容しておけば、キャンプ用品を荷台3に積載したままの状態でも、ユーザーは蓋体5を開いて作業台(55)で調理を行うことができ有利である。
【0025】
特に、物品収納部6が作業台(55)の奥側の壁面に配置されているため、ユーザーは作業に必要な道具を物品収納部6から容易に取り出し、かつ容易に元の位置に戻すことができ、キャンプ以外にも、オフロード競技等のサービスカーや、各種メンテナンスカーとしての利用においても、高い作業性と利便性を提供できる。
【0026】
また、物品収納部6全体が樹脂製の収納ボードで構成されることにより、小物品や長尺物品の形状に適合した収納部を安価かつ軽量に形成可能であることは勿論、収納ボード(6)が側壁31内部の補強部材や振動吸収部材として機能し、自動車1の走行中の振動による収納物品の振動や騒音が吸収され、収納物品への衝撃を緩和することができ、かつ、荷台3に積載した荷物の衝突による側壁31への衝撃を緩和する効果も得られる。
【0027】
さらに、荷台3の側方の車体外表面全体が蓋体5で構成されているため、車体側面の中間部分に見切りラインが生じず、車体の外観を損なうことが無い。換言すれば、蓋体5を閉じた状態では、このような物品収納部6を備えた車両であると見知できず、一般的な同種の自動車の外観を有している。
【0028】
また、図示例のように、蓋体5が、支持アーム51、52を介して、車体側面から離間した状態で開閉される構成により、ホイールアーチ(50)部に沿った張出形状(オーバーフェンダー)を有する場合にも、車体と干渉せずに蓋体5を開閉することができ、特に、支持アーム51、52が、ホイールアーチ(50)の前方および後方に隣接して配置されることで、この位置の蓋体5の位置精度を確保する上で有利である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、本発明を、2ドア仕様のシングルキャブタイプのピックアップトラックに実施する場合を示したが、車室内に2列の座席を備えた4ドア仕様のダブルキャブタイプのピックアップトラックとして実施することもでき、その場合、蓋体(5)が、ホイールアーチ(50)の中途から後方に設けられていても良い。さらに、本発明は、車体前部にエンジン室を備えたピックアップトラック以外に、車室の下部にエンジンを搭載したキャブオーバータイプのトラックとして実施することもできる。また、リヤゲートの無い貨物自動車、レッカー車など各種作業車両に実施することもできる。
【0031】
また、蓋体5は、ホイールアーチ(50)以上の部分に配設することもでき、その場合、例えば、サイドモールに沿って蓋体下端の見切りラインを設定することもできる。また、左右いずれか一方の側壁31のみに蓋体5および物品収納部6を設定することもでき、その場合にも、蓋体5の中間に見切りラインが存在しないので、車両外観が左右非対称となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る収納部構造を実施した自動車を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る収納部構造を実施した自動車の収納部を展開した状態を示す斜視図である。
【図3】図2のAーA断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 自動車
2 車室
3 荷台
4 エンジン室
5 蓋体
6 物品収納部
8 ストッパー(回動規制部材)
10 後輪
30 積載空間
31 側壁
50 切欠部(ホイールアーチ)
51、52 支持アーム
53 下端縁(見切りライン)
55 インナーボード(作業台)
61、62、63、64 収納部(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外後部に荷台を備え、前記荷台の側方に立設された側壁の外表面が、車室側部の外表面と一連の意匠面を構成している自動車の収納部構造において、前記側壁の外表面が開閉可能な蓋体で構成され、前記側壁の内部に物品収納部が設けられていることを特徴とする自動車の収納部構造。
【請求項2】
前記蓋体の下端縁が、後輪を収容するホイールハウスの頂部より下方に位置し、前記蓋体が、前記ホイールハウスに対応した切欠部を有していることを特徴とする請求項1に記載の自動車の収納部構造。
【請求項3】
前記蓋体が、その下端部に設けたヒンジ機構を介して車体側に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の収納部構造。
【請求項4】
前記蓋体を、開状態で水平に支持する支持手段を備え、前記蓋体の内面を作業台として利用可能であることを特徴とする請求項3に記載の自動車の収納部構造。
【請求項5】
前記蓋体が、前記ヒンジ機構の可動部を構成する支持アームを備え、前記支持手段が、前記支持アームおよびその回動規制部材で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車の収納部構造。
【請求項6】
前記支持アームが、前記切欠部に隣接して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の自動車の収納部構造。
【請求項7】
前記側壁の内部に、樹脂成形品で形成され収納ボードが配設され、該収納ボードに複数の物品収納用凹部または該凹部を画成する隔壁が一体成形されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車の収納部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate