自動車の安全装置
【課題】衝突の場合にドアおよび隣接するピラーなどの自動車の隣接する構造部材の間の隙間を維持する安全装置を提供する。
【解決手段】膨張可能部材9、10が、ピラー3、4へと取り付けられ、ピラー3、4とドア2との間に元より形成されている空間11において膨脹するように構成される。膨張可能部材9,10が、衝突のエネルギーをドア2の構造体を通って放散させるうえで助けとなるほか、深刻な衝突後でもドア2を容易に開くことができる。
【解決手段】膨張可能部材9、10が、ピラー3、4へと取り付けられ、ピラー3、4とドア2との間に元より形成されている空間11において膨脹するように構成される。膨張可能部材9,10が、衝突のエネルギーをドア2の構造体を通って放散させるうえで助けとなるほか、深刻な衝突後でもドア2を容易に開くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の安全装置に関し、さらに詳しくは、衝突の場合に自動車の隣接する構造部材の間の隙間を維持するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアは、自動車の運転中は確実に閉じておくことができ、自動車が使用されないときには閉じた状態にロックしておくことができるドアの開放をもたらすために、ヒンジおよび解除可能なラッチの組み合わせを使用して好都合に取り付けられている。しかしながら、そのようなドアのヒンジおよびラッチの重要な二次的機能は、衝突時に自動車に生じると考えられる事象において、自動車の構造の全体について充分な完全性を保証することにある。事故の結果としての自動車の構造体の車室への侵入を少なくし、さらには自動車の安全ケージの形状を保持することが、車両製造者の目標である。自動車のドアは、車両の強度への貢献において重要な機能を果たしており、実際に、内側および外側のドア構造体によって、自動車の構造において衝突のエネルギーの一部を放散できるように設計されている。衝突のエネルギーが、ドアのヒンジおよびラッチを介して自動車のドアへと伝達されるが、それらの主たる機能ゆえに必要な組み立ての隙間に起因して、そのようなエネルギー伝達の水準は、典型的には比較的低い。
【0003】
また、上述の一般的形式の公知のドア構造における問題として、深刻な事故の後で、ドアのヒンジおよび/またはラッチが、ドアをもはや容易に開くことができないような程度にまで変形してしまう可能性があることを、理解できる。これは、事故車両の乗員を世話するために救急隊による車室へのアクセスが必要とされる場合に、深刻な結果につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、上述の問題に対処しようとする安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、衝突の場合に自動車の隣接する構造部材の間の隙間を維持するための安全装置であって、膨張可能部材が、自動車の1対の実質的に隣接する構造部材のうちの一方へと取り付けられて設けられ、上記1対の構造部材の間に元より形成されている空間において膨脹するように構成されていることを特徴とする装置を提供する。
【0006】
好ましくは、膨張可能部材が、上記空間へと侵入しないあらかじめ押しつぶされた形態を有している。
【0007】
有利には、上記膨張可能部材が、膨脹時に上記構造部材を互いに連結し、衝突の場合に構造部材の間の空間の実質的に完全な閉鎖を防止するように構成されている。
【0008】
好都合には、上記構造部材のうちの一方が、自動車の内部空間へのアクセスを提供するために可動であり、上記構造部材のうちの他方が、固定されている。
【0009】
有利には、上記膨張可能部材が、固定の部材へと取り付けられている。
【0010】
好都合には、上記可動の部材が、ドアであり、上記固定の部材が、ピラーである。
【0011】
あるいは、上記可動の部材が、ボンネット(ときには、フードとしても知られる)またはトランクの蓋(ときには、トランクリッドとしても知られる)である。
【0012】
好ましくは、上記膨張可能部材が、可動部材と固定部材との間の解除可能なラッチの領域に設けられている。
【0013】
有利には、膨張可能部材が、可動部材と固定部材との間のヒンジの領域に設けられている。
【0014】
好都合には、膨張可能部材に、通気穴が設けられており、該通気穴が、膨脹時に構造部材のうちの一方に当接して閉じるように配置されている。
【0015】
好ましくは、膨張可能部材が、実質的に弾性変形可能な材料で形成されたエアバッグの形態をとっている。
【0016】
あるいは、膨張可能部材が、実質的に塑性変形可能な材料で形成されたエアバッグである。
【0017】
好ましくは、膨張可能部材が、50cm3〜200cm3の間の膨脹容積を有している。
【0018】
有利には、膨張可能部材が、細長い形態である。
【0019】
好ましくは、この安全装置が、膨張可能部材を膨脹させるために、膨張可能部材に連通させて設けられた火薬式のガス発生装置をさらに備えている。
【0020】
本発明の安全装置は、2つの構造部材(最も好ましくは、ドアおよび構造ピラー)の間に元より位置している空間を実質的に満たすことによって、これら2つの構造部材を互いに連結することで、より従来の閉鎖ドア設備に係る上述の問題に対処することが、明らかになっている。この構成は、ドアのヒンジおよびラッチ機構の大きな変形を防止するだけでなく、2つの構造部材の間でのより優れたエネルギーの放散ももたらすことが、明らかになっている。
【0021】
次に、本発明をより容易に理解することができ、本発明のさらなる特徴を理解することができるよう、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】おおむね従来からの自動車のドアの取り付けを示している概略の側面図である。
【図2】おおむね図1の図に対応する図であり、1対の膨張可能部材を備える本発明による安全装置を示している。図2Aは、自動車の構造ピラーとドアとの間で初期の膨脹していない状態にある一つの膨張可能部材を示している拡大断面図である。
【図3】おおむね図2の図に対応する図であり、作動後の安全装置を示している。図3Aは、おおむね図2Aの図に対応する図であるが、膨脹した状態の膨張可能部材を示している。
【図4】本発明に従って使用するための膨張可能部材の好ましい膨脹後寸法を示す概略の斜視図である。
【図5a】膨張可能部材について、作動前の好ましい折り畳み形態を示す概略の斜視図である。
【図5b】おおむね図5aの図に対応する図であるが、膨脹した状態の膨張可能部材を示している。
【図6a】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図6b】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図6c】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図7a】おおむね図6a〜図6cの図に対応する図であり、膨脹装置を膨張可能部材に対して取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図7b】おおむね図6a〜図6cの図に対応する図であり、膨脹装置を膨張可能部材に対して取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図8a】ドア枠内で初期の膨脹していない状態にある膨張可能部材を示している概略図である。
【図8b】おおむね図8aの図に対応する図であるが、膨張可能部材が、膨張可能部材に設けられた通気穴がドア構造に押し付けられる、実質的に完全に膨脹した状態で示されている。
【図9】自動車の構造体のAピラーとBピラーとの間を延びている閉じられた車両のドアを、車室内から見て示している図である。
【図10a】図9に示した構成の拡大図であり、Bピラーおよびドア構造体の後部の領域に注目している図である。
【図10b】おおむね図10aの図に対応する斜視図であるが、より後ろよりの視点からの図であり、膨張可能部材の膨脹後の構成を示している。
【図10c】おおむね図10bの図に対応する図であるが、衝突の状況における車両の構造体およびドアの変形後の構成を示している。
【図11】本発明による安全装置を備える車両の改善されたエネルギー放散特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に図1を参照すると、自動車1の構造の一部が示されており、ドア2が、自動車の構造Aピラー3と構造Bピラー4との間に、閉じた状態で示されている。ドアは、ヒンジ5によってAピラー3へと枢動可能に取り付けられ、解除可能なラッチ6によってBピラー4へと解放可能に接続されている。ヒンジ5およびラッチ6は、概略的にのみ示されている。
【0024】
図1に示されているようなおおむね従来からのドア構造を有している自動車1が衝突に巻き込まれた場合、衝突の力が、矢印7によって概略的に示されているようにヒンジ5の領域においてAピラー3とドア2との間を伝達され、矢印8によって概略的に示されているようにラッチ6の領域においてBピラー4とドア構造2との間を伝達される。理解されるとおり、これは、衝突の力が比較的小さな領域を横切って伝達されることを意味し、さらには、ヒンジおよびラッチの構成の製造公差が、初期のある程度のたわみをエネルギーの放散を伴わずに吸収した後でのみ、このような方式で衝突の力が伝達されることを意味している。
【0025】
図2は、おおむね図1の図に対応する図であるが、本発明による安全装置が取り付けられた自動車1を示しており、ヒンジ5およびラッチ6は、明瞭化のために省略されている。好ましくは膨張可能なエアバッグの形態をとる1対の膨張可能部材9、10が設けられており、そのようなエアバッグが、最初は密にパックされた構成で用意される。2つの膨張可能部材のそれぞれが、ドア2と2つのピラー3、4との間に形成されるドア枠内のそれぞれの空間内に設けられている。
【0026】
膨張可能部材9、10のそれぞれは、Aピラーとドア2との間の前側部材9に関して図2aに概略的に示したような初期形態を有している。膨張可能部材9が、Aピラーへと取り付けられ、Aピラー3とドア2との間に形成される空間11を大きく侵食することがないように密にパックされている初期の膨脹していない状態で示されている。後ろ側の膨張可能部材10も、初期状態において同様の形態を有している。
【0027】
例えば衝突センサまたは予測「衝突前」センサからの信号の受信によって安全装置が作動するとき、膨張可能部材9、10が膨脹し、前側の膨張可能部材9に関して図3aに概略的に示したような形態をとる。このように、安全装置が作動したとき、膨張可能部材9、10が、ドア2と隣接するピラー3(または、4)との間の空間11を実質的に満たすように膨脹し、あるいは少なくとも空間11を実質的に完全に横切って広がるように膨脹し、ドアを隣接するピラーに効果的に連結することを、理解できる。膨張可能部材9、10がこの方式で膨脹すると、例えば自動車の前部から加わる変形力が、Aピラー3から前側の膨張可能部材9を介してドア2の構造体へと伝達され、次いでドアの構造体を通り、後ろ側の膨張可能部材10を介してBピラー4へと伝達される。また、2つの膨張可能部材9、10が、ドアの前側および後ろ側の空間11において膨脹することで、ヒンジおよびラッチの実質的な変形が防止されるため、衝突後もドアの比較的容易な開放が保証されることを、理解できる。
【0028】
本発明を、2つの膨張可能部材(1つがドアの前側に位置し、1つがドアの後ろ側に位置する)を取り入れてなる実施形態について、図2および図3に関して概括的に説明したが、本発明の別の実施形態が、ヒンジの領域においてドアの前側に位置し、あるいはラッチの領域においてドアの後ろ側に位置するただ1つの膨張可能部材を備えてもよいことを、理解すべきである。
【0029】
図4は、従来からの自動車に設置するための上述の形式の膨張可能部材9、10についての、好ましい寸法を示す概略図である。図示の膨張可能部材は、図2および図3に示した構成のうちの後ろ側の膨張可能部材10であり、したがって自動車のドア2とBピラー4との間に形成される空間11に位置している。膨張可能部材10が、空間11内で膨脹した状態に示されており、膨張可能部材が、横方向の奥行き(d)および長手方向の幅(w)よりも大幅に大きい垂直方向の高さ(h)を有しているおおむね細長い形態を有することを、見て取ることができる。従来からの自動車への設置のために、好ましい膨張可能部材10は、0.3メートルの高さ(h)、0.03メートルの奥行き(d)、および0.01メートルの幅(w)を有しており、約90cm3の膨張可能体積をもたらしている。しかしながら、本発明の変種は、50〜200cm3、より好ましくは80〜100cm3の間の膨張可能体積を有する膨張可能部材を備えることができると想定される。理解されるとおり、SUVなどの大型の車両は、市街地向けの車などのより小型な車両に比べて、より大きな体積の膨張可能部材を必要とする傾向にある。
【0030】
膨張可能なエアバッグを取り入れてなる自動車用安全装置の分野の当業者であれば、上述のエアバッグが、膨脹後の全体寸法および内部の膨張可能体積の両者について、かなり小さいことを理解できる。このような小さな膨張可能部材は、自動車のドアと隣接する自動車の構造ピラーとの間の小さな空間11の領域へと膨張可能部材を収容するために必要であり、したがって膨張可能部材10の充分に迅速な膨脹を提供するために、この部材を、衝突センサまたは衝突前センサからの作動信号を受信して、適切な量の膨脹ガスを膨張可能部材10の内部体積へときわめて迅速に導くように構成された火薬式ガス発生装置に連通させることが提案される。好ましい構成においては、膨張可能部材が、センサからの適切な作動信号の受信から15ミリ秒以内に実質的に完全に膨脹しなければならず、約100barという内部の膨脹圧力が、とくに有利であることが分かっている。このレベルの圧力は、先に示した好ましい寸法のエアバッグにおいて、ドアおよびピラーの間で約90kNの荷重を伝達することが分かっている。
【0031】
次に、図5aを検討すると、当初の密にパックされた膨張可能部材9、10について、好ましい折り畳みの形態が示されている。見て取ることができるとおり、細長い膨張可能部材10が、その縦長の側面12、13の領域において、長手方向に延びる凹状の横領域を有するように、当初はジグザグに折り畳まれている。しかしながら、図5aが、説明を容易にするために、折り畳まれた膨張可能部材を、わずかに開いた形態またはわずかに引き離された形態に図示していることを、理解すべきである。膨張可能部材が最初に適切にパックされたとき、凹状の領域14、15は、膨張可能部材10の対向する2つの側面の間にぴったりと収容される。
【0032】
図5bは、おおむね膨脹後の形態を呈している状態の図5aの膨張可能部材10を示しており、この図から、部材10の膨脹時に、当初の凹状の領域14、15が外方向に吹き飛ばされて図5bに示した位置をとることを、理解できる。したがって、膨張可能部材10の好ましい形態が、当初は「ベローズ」式の形状を有しており、そのような形状が、膨脹の初期段階において、部材10の幅(w)を素早く増加させて、迅速に自動車のドア構造と隣接するピラー構造との間の連結を達成するという効果を有していることを、理解すべきである。
【0033】
理解されるとおり、ドアの構造体と隣接するピラーとの間の空間11は、サイズがきわめて限られており、したがって、図6a、図6b、および図6cに示されるとおり、初期の密にパックされた膨張可能部材10は、好ましくは、ピラーに沿って形成されて空間11に連絡する浅い凹所16に収容されるように、ピラー3、4へと取り付けられる。密にパックされた膨張可能部材10(当初は、破ることができる保護包みに保持しておくことができる)を、いくつかある方式のうちの任意の1つにて、凹所16に取り付けることができる。例えば、図6aは、適切な接着剤17の層によって凹所16内でピラー4へと接着された膨張可能部材10を示している。代案として、図6bに示されるように、パッケージ化した膨張可能部材10を、ピラー4の表面を貫いて設けられる適切な取り付け穴に収容される何本かのボルト18またはリベットなどによって、ピラー4へと固定することができる。図6cは、別の取り付けの構成を示しており、パッケージ化された膨張可能部材10が、凹所16を実質的に覆うようにピラー4へと固定された破ることができる裂けカバー19の背後に保持されている。
【0034】
上述のように、膨張可能部材10は、好ましくは小型の火薬式のガス発生装置の形態をとる膨脹装置を備える。図7aが、ガス発生装置19が自動車の構造ピラー4において凹所16の背後に取り付けられている構成を示しており、ガス発生装置19の出口部分20が、ピラー4の表面に形成された穴を通って延び、膨張可能部材10に連通している。別の構成が、図7bに示されており、膨脹装置用の小さな凹所21が、構造ピラー4に設けられ、浅い凹所16へと開いている。膨脹装置用の凹所21が、膨張可能部材10に連通するようにガス発生装置19を収容する。
【0035】
理解されるとおり、本発明の主たる機能の1つは、事故の後でも自動車のドアを比較的容易に開くことができるように保証することであるため、それぞれの膨張可能部材9、10を、事故の発生後に速やかに収縮するように構成することが好ましい。これは、それぞれの膨張可能部材に、図8aに概略的に示されているような少なくとも1つの通気穴21を設けることによって達成される。図8aは、自動車のドア2の構造体とBピラー4との間の空間11において初期の実質的に膨脹していない状態にある膨張可能部材10を、斜視図にて示している。通気穴21は、ドア2の構造体へと向くように膨張可能部材10に設けられた細長い長円形の穴の形態をとる。しかしながら、好ましい実施形態においては、通気穴21を、通気穴21を通って逃げ出す膨脹ガスを少なくすることによって部材のきわめて迅速な初期の膨脹を可能にするために、膨張可能部材10の当初の折り畳まれた形態によって、最初は覆い隠しておくことが考えられる。
【0036】
図8bは、図8aの構成を、膨張可能部材10が実質的に完全に膨脹し、隙間11を完全に横切って広がって、ドア2および隣接するピラー4を連結している状態で示している。ここで、膨張可能部材10の通気穴21が設けられている領域が、ドア構造2の後面に押し付けられていることを、見て取ることができる。このようにして、通気穴21が、ドア2の構造体に当接して実質的に閉じられ、膨脹プロセスの後期の段階において膨脹ガスが穴21を通って流出することが防止される。しかしながら、通気穴21は、ひとたび膨脹ガスによる加圧が停止し、自動車に作用する衝突力がもはや存在しなくなると、塞がれていない状態となる。これは、衝突において自動車のフレームおよびドアが圧縮される一方で、ドア2とピラー4との間の空間11は、ほとんど減少しないためである。しかしながら、衝突の後に、自動車のフレームおよびドアの構造体においてある程度の緩和が生じ、結果として、事故の完了時に隙間11がわずかに緩和し、ドア2の表面が通気穴21からわずかに離れるように動いて、部材10内の膨脹ガスを穴21を通って排出できるようにする。これにより、膨張可能部材10がわずかに収縮し、車両が停止した後に速やかにドアを開くことが可能になる。
【0037】
図9は、自動車の車内から見た自動車のAピラー3、ドア2、およびBピラー4の全体構造を示している。膨張可能部材10が設けられる凹所16が、おおむねドアのラッチ機構6の領域に形成されることを、明確に見て取ることができる。簡潔化のため、前側の膨張可能部材9は、図9においては図示されていない。
【0038】
図10aは、後の変形力をより容易に見て取ることができるようにメッシュの表記が追加されている正方形21によって特定される図9の領域の拡大図を示している。図10aは、動作前の構成を示している。
【0039】
図10bは、おおむね図10aに対応しているが、わずかにより後方の視点から図示されており、ガス発生装置19が膨張可能部材10を膨脹させるべく点火された動作の初期の段階における構成を示している。図10cは、膨張可能部材10を、Bピラー4をドア2の構造体へと連結する実質的に完全に膨脹した状態に示しており、さらに自動車の構造体を、衝突力によって変形した状態に示している。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、補強された布地材料またはエラストマー材料などの弾性変形可能な材料で製作されたエアバッグの形態の膨張可能部材10を取り入れている。そのような膨張可能なエアバッグについて好ましい形状として、実質的に円形の断面を有している細長い円筒形、細長い円錐台形の構成、または実質的に矩形の断面を有している細長いエアバッグの形態が挙げられる。しかしながら、プラスチックまたは金属などといった材料から製作される塑性変形可能なエアバッグを取り入れることができる本発明の変種も考えられることを、理解すべきである。
【0041】
本発明の安全装置を、その他の点ではおおむね従来どおりの自動車に設置することで、ドアの隙間を横切ってのエネルギーの放散が、大きく改善されることが明らかになっている。これを、力を変位に対してプロットして示している図11を検討することによって理解することができる。下方の線21が、本発明の安全装置を備えていない自動車のエネルギー放散特性を示している一方で、線22は、本発明による装置が設置された同様の車両のエネルギー放散特性を示している。見て取ることができるとおり、本発明の安全装置を取り入れてなる車両は、幅広い範囲の変位について、大幅に改善されたエネルギー放散特性を示している。
【0042】
当然ながら、この技術分野の当業者であれば容易に理解できるように、本発明を特定の実施形態をとくに参照して説明したが、現時点において請求される発明の範囲から離れることなく、さまざまな変形または変更が可能であると考えられる。例えば、本発明を、膨張可能部材が自動車の構造ピラーと隣接する可動のドアパネルとの間に設けられる特定の実施形態を参照して上述したが、本発明を、横転事故において改善されたエネルギーの放散をもたらすとともに、横転事故の場合にもドアを容易に開くことができるように、自動車の構造的な鴨居または敷居と該当可動ドアパネルとの間の空間に導入することも可能である。さらに、本発明の膨張可能部材を、自動車のボンネットまたはトランクの蓋と自動車の隣接する構造部品との間に設置することも可能である。
【0043】
明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「・・・からなる(comprises)」および「・・・からなっている(comprising)」ならびにこれらの変種は、それらが指し示す特徴、工程、または完全体が含まれていることを意味する。これらの用語を、他の特徴、工程、または構成要素の存在を排除するものと理解してはならない。
【0044】
以上の説明、以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示される特徴であって、開示の機能を実施するための手段あるいは開示の結果を得るための方法またはプロセスに関して具体的な形態で表現される特徴を、別個独立またはそのような特徴の任意の組み合わせにて、本発明を本発明の多様な形態にて実現するために適宜に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の安全装置に関し、さらに詳しくは、衝突の場合に自動車の隣接する構造部材の間の隙間を維持するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアは、自動車の運転中は確実に閉じておくことができ、自動車が使用されないときには閉じた状態にロックしておくことができるドアの開放をもたらすために、ヒンジおよび解除可能なラッチの組み合わせを使用して好都合に取り付けられている。しかしながら、そのようなドアのヒンジおよびラッチの重要な二次的機能は、衝突時に自動車に生じると考えられる事象において、自動車の構造の全体について充分な完全性を保証することにある。事故の結果としての自動車の構造体の車室への侵入を少なくし、さらには自動車の安全ケージの形状を保持することが、車両製造者の目標である。自動車のドアは、車両の強度への貢献において重要な機能を果たしており、実際に、内側および外側のドア構造体によって、自動車の構造において衝突のエネルギーの一部を放散できるように設計されている。衝突のエネルギーが、ドアのヒンジおよびラッチを介して自動車のドアへと伝達されるが、それらの主たる機能ゆえに必要な組み立ての隙間に起因して、そのようなエネルギー伝達の水準は、典型的には比較的低い。
【0003】
また、上述の一般的形式の公知のドア構造における問題として、深刻な事故の後で、ドアのヒンジおよび/またはラッチが、ドアをもはや容易に開くことができないような程度にまで変形してしまう可能性があることを、理解できる。これは、事故車両の乗員を世話するために救急隊による車室へのアクセスが必要とされる場合に、深刻な結果につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、上述の問題に対処しようとする安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、衝突の場合に自動車の隣接する構造部材の間の隙間を維持するための安全装置であって、膨張可能部材が、自動車の1対の実質的に隣接する構造部材のうちの一方へと取り付けられて設けられ、上記1対の構造部材の間に元より形成されている空間において膨脹するように構成されていることを特徴とする装置を提供する。
【0006】
好ましくは、膨張可能部材が、上記空間へと侵入しないあらかじめ押しつぶされた形態を有している。
【0007】
有利には、上記膨張可能部材が、膨脹時に上記構造部材を互いに連結し、衝突の場合に構造部材の間の空間の実質的に完全な閉鎖を防止するように構成されている。
【0008】
好都合には、上記構造部材のうちの一方が、自動車の内部空間へのアクセスを提供するために可動であり、上記構造部材のうちの他方が、固定されている。
【0009】
有利には、上記膨張可能部材が、固定の部材へと取り付けられている。
【0010】
好都合には、上記可動の部材が、ドアであり、上記固定の部材が、ピラーである。
【0011】
あるいは、上記可動の部材が、ボンネット(ときには、フードとしても知られる)またはトランクの蓋(ときには、トランクリッドとしても知られる)である。
【0012】
好ましくは、上記膨張可能部材が、可動部材と固定部材との間の解除可能なラッチの領域に設けられている。
【0013】
有利には、膨張可能部材が、可動部材と固定部材との間のヒンジの領域に設けられている。
【0014】
好都合には、膨張可能部材に、通気穴が設けられており、該通気穴が、膨脹時に構造部材のうちの一方に当接して閉じるように配置されている。
【0015】
好ましくは、膨張可能部材が、実質的に弾性変形可能な材料で形成されたエアバッグの形態をとっている。
【0016】
あるいは、膨張可能部材が、実質的に塑性変形可能な材料で形成されたエアバッグである。
【0017】
好ましくは、膨張可能部材が、50cm3〜200cm3の間の膨脹容積を有している。
【0018】
有利には、膨張可能部材が、細長い形態である。
【0019】
好ましくは、この安全装置が、膨張可能部材を膨脹させるために、膨張可能部材に連通させて設けられた火薬式のガス発生装置をさらに備えている。
【0020】
本発明の安全装置は、2つの構造部材(最も好ましくは、ドアおよび構造ピラー)の間に元より位置している空間を実質的に満たすことによって、これら2つの構造部材を互いに連結することで、より従来の閉鎖ドア設備に係る上述の問題に対処することが、明らかになっている。この構成は、ドアのヒンジおよびラッチ機構の大きな変形を防止するだけでなく、2つの構造部材の間でのより優れたエネルギーの放散ももたらすことが、明らかになっている。
【0021】
次に、本発明をより容易に理解することができ、本発明のさらなる特徴を理解することができるよう、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】おおむね従来からの自動車のドアの取り付けを示している概略の側面図である。
【図2】おおむね図1の図に対応する図であり、1対の膨張可能部材を備える本発明による安全装置を示している。図2Aは、自動車の構造ピラーとドアとの間で初期の膨脹していない状態にある一つの膨張可能部材を示している拡大断面図である。
【図3】おおむね図2の図に対応する図であり、作動後の安全装置を示している。図3Aは、おおむね図2Aの図に対応する図であるが、膨脹した状態の膨張可能部材を示している。
【図4】本発明に従って使用するための膨張可能部材の好ましい膨脹後寸法を示す概略の斜視図である。
【図5a】膨張可能部材について、作動前の好ましい折り畳み形態を示す概略の斜視図である。
【図5b】おおむね図5aの図に対応する図であるが、膨脹した状態の膨張可能部材を示している。
【図6a】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図6b】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図6c】本発明に従って使用するために膨張可能部材を自動車のドア枠に取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図7a】おおむね図6a〜図6cの図に対応する図であり、膨脹装置を膨張可能部材に対して取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図7b】おおむね図6a〜図6cの図に対応する図であり、膨脹装置を膨張可能部材に対して取り付けることができる方法の選択肢を示している。
【図8a】ドア枠内で初期の膨脹していない状態にある膨張可能部材を示している概略図である。
【図8b】おおむね図8aの図に対応する図であるが、膨張可能部材が、膨張可能部材に設けられた通気穴がドア構造に押し付けられる、実質的に完全に膨脹した状態で示されている。
【図9】自動車の構造体のAピラーとBピラーとの間を延びている閉じられた車両のドアを、車室内から見て示している図である。
【図10a】図9に示した構成の拡大図であり、Bピラーおよびドア構造体の後部の領域に注目している図である。
【図10b】おおむね図10aの図に対応する斜視図であるが、より後ろよりの視点からの図であり、膨張可能部材の膨脹後の構成を示している。
【図10c】おおむね図10bの図に対応する図であるが、衝突の状況における車両の構造体およびドアの変形後の構成を示している。
【図11】本発明による安全装置を備える車両の改善されたエネルギー放散特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に図1を参照すると、自動車1の構造の一部が示されており、ドア2が、自動車の構造Aピラー3と構造Bピラー4との間に、閉じた状態で示されている。ドアは、ヒンジ5によってAピラー3へと枢動可能に取り付けられ、解除可能なラッチ6によってBピラー4へと解放可能に接続されている。ヒンジ5およびラッチ6は、概略的にのみ示されている。
【0024】
図1に示されているようなおおむね従来からのドア構造を有している自動車1が衝突に巻き込まれた場合、衝突の力が、矢印7によって概略的に示されているようにヒンジ5の領域においてAピラー3とドア2との間を伝達され、矢印8によって概略的に示されているようにラッチ6の領域においてBピラー4とドア構造2との間を伝達される。理解されるとおり、これは、衝突の力が比較的小さな領域を横切って伝達されることを意味し、さらには、ヒンジおよびラッチの構成の製造公差が、初期のある程度のたわみをエネルギーの放散を伴わずに吸収した後でのみ、このような方式で衝突の力が伝達されることを意味している。
【0025】
図2は、おおむね図1の図に対応する図であるが、本発明による安全装置が取り付けられた自動車1を示しており、ヒンジ5およびラッチ6は、明瞭化のために省略されている。好ましくは膨張可能なエアバッグの形態をとる1対の膨張可能部材9、10が設けられており、そのようなエアバッグが、最初は密にパックされた構成で用意される。2つの膨張可能部材のそれぞれが、ドア2と2つのピラー3、4との間に形成されるドア枠内のそれぞれの空間内に設けられている。
【0026】
膨張可能部材9、10のそれぞれは、Aピラーとドア2との間の前側部材9に関して図2aに概略的に示したような初期形態を有している。膨張可能部材9が、Aピラーへと取り付けられ、Aピラー3とドア2との間に形成される空間11を大きく侵食することがないように密にパックされている初期の膨脹していない状態で示されている。後ろ側の膨張可能部材10も、初期状態において同様の形態を有している。
【0027】
例えば衝突センサまたは予測「衝突前」センサからの信号の受信によって安全装置が作動するとき、膨張可能部材9、10が膨脹し、前側の膨張可能部材9に関して図3aに概略的に示したような形態をとる。このように、安全装置が作動したとき、膨張可能部材9、10が、ドア2と隣接するピラー3(または、4)との間の空間11を実質的に満たすように膨脹し、あるいは少なくとも空間11を実質的に完全に横切って広がるように膨脹し、ドアを隣接するピラーに効果的に連結することを、理解できる。膨張可能部材9、10がこの方式で膨脹すると、例えば自動車の前部から加わる変形力が、Aピラー3から前側の膨張可能部材9を介してドア2の構造体へと伝達され、次いでドアの構造体を通り、後ろ側の膨張可能部材10を介してBピラー4へと伝達される。また、2つの膨張可能部材9、10が、ドアの前側および後ろ側の空間11において膨脹することで、ヒンジおよびラッチの実質的な変形が防止されるため、衝突後もドアの比較的容易な開放が保証されることを、理解できる。
【0028】
本発明を、2つの膨張可能部材(1つがドアの前側に位置し、1つがドアの後ろ側に位置する)を取り入れてなる実施形態について、図2および図3に関して概括的に説明したが、本発明の別の実施形態が、ヒンジの領域においてドアの前側に位置し、あるいはラッチの領域においてドアの後ろ側に位置するただ1つの膨張可能部材を備えてもよいことを、理解すべきである。
【0029】
図4は、従来からの自動車に設置するための上述の形式の膨張可能部材9、10についての、好ましい寸法を示す概略図である。図示の膨張可能部材は、図2および図3に示した構成のうちの後ろ側の膨張可能部材10であり、したがって自動車のドア2とBピラー4との間に形成される空間11に位置している。膨張可能部材10が、空間11内で膨脹した状態に示されており、膨張可能部材が、横方向の奥行き(d)および長手方向の幅(w)よりも大幅に大きい垂直方向の高さ(h)を有しているおおむね細長い形態を有することを、見て取ることができる。従来からの自動車への設置のために、好ましい膨張可能部材10は、0.3メートルの高さ(h)、0.03メートルの奥行き(d)、および0.01メートルの幅(w)を有しており、約90cm3の膨張可能体積をもたらしている。しかしながら、本発明の変種は、50〜200cm3、より好ましくは80〜100cm3の間の膨張可能体積を有する膨張可能部材を備えることができると想定される。理解されるとおり、SUVなどの大型の車両は、市街地向けの車などのより小型な車両に比べて、より大きな体積の膨張可能部材を必要とする傾向にある。
【0030】
膨張可能なエアバッグを取り入れてなる自動車用安全装置の分野の当業者であれば、上述のエアバッグが、膨脹後の全体寸法および内部の膨張可能体積の両者について、かなり小さいことを理解できる。このような小さな膨張可能部材は、自動車のドアと隣接する自動車の構造ピラーとの間の小さな空間11の領域へと膨張可能部材を収容するために必要であり、したがって膨張可能部材10の充分に迅速な膨脹を提供するために、この部材を、衝突センサまたは衝突前センサからの作動信号を受信して、適切な量の膨脹ガスを膨張可能部材10の内部体積へときわめて迅速に導くように構成された火薬式ガス発生装置に連通させることが提案される。好ましい構成においては、膨張可能部材が、センサからの適切な作動信号の受信から15ミリ秒以内に実質的に完全に膨脹しなければならず、約100barという内部の膨脹圧力が、とくに有利であることが分かっている。このレベルの圧力は、先に示した好ましい寸法のエアバッグにおいて、ドアおよびピラーの間で約90kNの荷重を伝達することが分かっている。
【0031】
次に、図5aを検討すると、当初の密にパックされた膨張可能部材9、10について、好ましい折り畳みの形態が示されている。見て取ることができるとおり、細長い膨張可能部材10が、その縦長の側面12、13の領域において、長手方向に延びる凹状の横領域を有するように、当初はジグザグに折り畳まれている。しかしながら、図5aが、説明を容易にするために、折り畳まれた膨張可能部材を、わずかに開いた形態またはわずかに引き離された形態に図示していることを、理解すべきである。膨張可能部材が最初に適切にパックされたとき、凹状の領域14、15は、膨張可能部材10の対向する2つの側面の間にぴったりと収容される。
【0032】
図5bは、おおむね膨脹後の形態を呈している状態の図5aの膨張可能部材10を示しており、この図から、部材10の膨脹時に、当初の凹状の領域14、15が外方向に吹き飛ばされて図5bに示した位置をとることを、理解できる。したがって、膨張可能部材10の好ましい形態が、当初は「ベローズ」式の形状を有しており、そのような形状が、膨脹の初期段階において、部材10の幅(w)を素早く増加させて、迅速に自動車のドア構造と隣接するピラー構造との間の連結を達成するという効果を有していることを、理解すべきである。
【0033】
理解されるとおり、ドアの構造体と隣接するピラーとの間の空間11は、サイズがきわめて限られており、したがって、図6a、図6b、および図6cに示されるとおり、初期の密にパックされた膨張可能部材10は、好ましくは、ピラーに沿って形成されて空間11に連絡する浅い凹所16に収容されるように、ピラー3、4へと取り付けられる。密にパックされた膨張可能部材10(当初は、破ることができる保護包みに保持しておくことができる)を、いくつかある方式のうちの任意の1つにて、凹所16に取り付けることができる。例えば、図6aは、適切な接着剤17の層によって凹所16内でピラー4へと接着された膨張可能部材10を示している。代案として、図6bに示されるように、パッケージ化した膨張可能部材10を、ピラー4の表面を貫いて設けられる適切な取り付け穴に収容される何本かのボルト18またはリベットなどによって、ピラー4へと固定することができる。図6cは、別の取り付けの構成を示しており、パッケージ化された膨張可能部材10が、凹所16を実質的に覆うようにピラー4へと固定された破ることができる裂けカバー19の背後に保持されている。
【0034】
上述のように、膨張可能部材10は、好ましくは小型の火薬式のガス発生装置の形態をとる膨脹装置を備える。図7aが、ガス発生装置19が自動車の構造ピラー4において凹所16の背後に取り付けられている構成を示しており、ガス発生装置19の出口部分20が、ピラー4の表面に形成された穴を通って延び、膨張可能部材10に連通している。別の構成が、図7bに示されており、膨脹装置用の小さな凹所21が、構造ピラー4に設けられ、浅い凹所16へと開いている。膨脹装置用の凹所21が、膨張可能部材10に連通するようにガス発生装置19を収容する。
【0035】
理解されるとおり、本発明の主たる機能の1つは、事故の後でも自動車のドアを比較的容易に開くことができるように保証することであるため、それぞれの膨張可能部材9、10を、事故の発生後に速やかに収縮するように構成することが好ましい。これは、それぞれの膨張可能部材に、図8aに概略的に示されているような少なくとも1つの通気穴21を設けることによって達成される。図8aは、自動車のドア2の構造体とBピラー4との間の空間11において初期の実質的に膨脹していない状態にある膨張可能部材10を、斜視図にて示している。通気穴21は、ドア2の構造体へと向くように膨張可能部材10に設けられた細長い長円形の穴の形態をとる。しかしながら、好ましい実施形態においては、通気穴21を、通気穴21を通って逃げ出す膨脹ガスを少なくすることによって部材のきわめて迅速な初期の膨脹を可能にするために、膨張可能部材10の当初の折り畳まれた形態によって、最初は覆い隠しておくことが考えられる。
【0036】
図8bは、図8aの構成を、膨張可能部材10が実質的に完全に膨脹し、隙間11を完全に横切って広がって、ドア2および隣接するピラー4を連結している状態で示している。ここで、膨張可能部材10の通気穴21が設けられている領域が、ドア構造2の後面に押し付けられていることを、見て取ることができる。このようにして、通気穴21が、ドア2の構造体に当接して実質的に閉じられ、膨脹プロセスの後期の段階において膨脹ガスが穴21を通って流出することが防止される。しかしながら、通気穴21は、ひとたび膨脹ガスによる加圧が停止し、自動車に作用する衝突力がもはや存在しなくなると、塞がれていない状態となる。これは、衝突において自動車のフレームおよびドアが圧縮される一方で、ドア2とピラー4との間の空間11は、ほとんど減少しないためである。しかしながら、衝突の後に、自動車のフレームおよびドアの構造体においてある程度の緩和が生じ、結果として、事故の完了時に隙間11がわずかに緩和し、ドア2の表面が通気穴21からわずかに離れるように動いて、部材10内の膨脹ガスを穴21を通って排出できるようにする。これにより、膨張可能部材10がわずかに収縮し、車両が停止した後に速やかにドアを開くことが可能になる。
【0037】
図9は、自動車の車内から見た自動車のAピラー3、ドア2、およびBピラー4の全体構造を示している。膨張可能部材10が設けられる凹所16が、おおむねドアのラッチ機構6の領域に形成されることを、明確に見て取ることができる。簡潔化のため、前側の膨張可能部材9は、図9においては図示されていない。
【0038】
図10aは、後の変形力をより容易に見て取ることができるようにメッシュの表記が追加されている正方形21によって特定される図9の領域の拡大図を示している。図10aは、動作前の構成を示している。
【0039】
図10bは、おおむね図10aに対応しているが、わずかにより後方の視点から図示されており、ガス発生装置19が膨張可能部材10を膨脹させるべく点火された動作の初期の段階における構成を示している。図10cは、膨張可能部材10を、Bピラー4をドア2の構造体へと連結する実質的に完全に膨脹した状態に示しており、さらに自動車の構造体を、衝突力によって変形した状態に示している。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、補強された布地材料またはエラストマー材料などの弾性変形可能な材料で製作されたエアバッグの形態の膨張可能部材10を取り入れている。そのような膨張可能なエアバッグについて好ましい形状として、実質的に円形の断面を有している細長い円筒形、細長い円錐台形の構成、または実質的に矩形の断面を有している細長いエアバッグの形態が挙げられる。しかしながら、プラスチックまたは金属などといった材料から製作される塑性変形可能なエアバッグを取り入れることができる本発明の変種も考えられることを、理解すべきである。
【0041】
本発明の安全装置を、その他の点ではおおむね従来どおりの自動車に設置することで、ドアの隙間を横切ってのエネルギーの放散が、大きく改善されることが明らかになっている。これを、力を変位に対してプロットして示している図11を検討することによって理解することができる。下方の線21が、本発明の安全装置を備えていない自動車のエネルギー放散特性を示している一方で、線22は、本発明による装置が設置された同様の車両のエネルギー放散特性を示している。見て取ることができるとおり、本発明の安全装置を取り入れてなる車両は、幅広い範囲の変位について、大幅に改善されたエネルギー放散特性を示している。
【0042】
当然ながら、この技術分野の当業者であれば容易に理解できるように、本発明を特定の実施形態をとくに参照して説明したが、現時点において請求される発明の範囲から離れることなく、さまざまな変形または変更が可能であると考えられる。例えば、本発明を、膨張可能部材が自動車の構造ピラーと隣接する可動のドアパネルとの間に設けられる特定の実施形態を参照して上述したが、本発明を、横転事故において改善されたエネルギーの放散をもたらすとともに、横転事故の場合にもドアを容易に開くことができるように、自動車の構造的な鴨居または敷居と該当可動ドアパネルとの間の空間に導入することも可能である。さらに、本発明の膨張可能部材を、自動車のボンネットまたはトランクの蓋と自動車の隣接する構造部品との間に設置することも可能である。
【0043】
明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「・・・からなる(comprises)」および「・・・からなっている(comprising)」ならびにこれらの変種は、それらが指し示す特徴、工程、または完全体が含まれていることを意味する。これらの用語を、他の特徴、工程、または構成要素の存在を排除するものと理解してはならない。
【0044】
以上の説明、以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示される特徴であって、開示の機能を実施するための手段あるいは開示の結果を得るための方法またはプロセスに関して具体的な形態で表現される特徴を、別個独立またはそのような特徴の任意の組み合わせにて、本発明を本発明の多様な形態にて実現するために適宜に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突の場合に自動車の隣接する構造部材(2、4)の間の隙間を維持するための安全装置であって、
膨張可能部材(10)が、自動車の1対の実質的に隣接する構造部材(2、4)のうちの一方(4)へと取り付けられて設けられ、前記1対の構造部材(2、4)の間に元より形成されている空間(11)において膨脹するように構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記膨張可能部材(10)が、前記空間(11)へと侵入しない衝突前形態を有している、請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記膨張可能部材(10)が、膨脹時に前記構造部材(14)を互いに連結し、衝突の場合に構造部材の間の空間(11)の実質的に完全な閉鎖を防止するように構成されている、請求項1または2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記構造部材のうちの一方(2)が、自動車の内部空間へのアクセスを提供するために可動であり、前記構造部材のうちの他方(4)が、固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記膨張可能部材(10)が、固定の部材(4)へと取り付けられている、請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
前記可動の部材が、ドア(2)であり、前記固定の部材が、ピラー(4)である、請求項4または5に記載の安全装置。
【請求項7】
前記可動の部材(2)が、ボンネットまたはトランクの蓋である、請求項4または5に記載の安全装置。
【請求項8】
前記膨張可能部材(10)が、可動部材(2)と固定部材(4)との間の解除可能なラッチ(6)の領域に設けられている、請求項4〜7のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項9】
前記膨張可能部材(10)が、可動部材(2)と固定部材(4)との間のヒンジ(5)の領域に設けられている、請求項4〜8のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項10】
膨張可能部材(10)に、通気穴(21)が設けられており、該通気穴(21)が、膨脹時に構造部材のうちの一方(2)に当接して閉じるように配置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項11】
前記膨張可能部材(10)が、実質的に弾性変形可能な材料で形成されたエアバッグの形態をとっている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項12】
前記膨張可能部材(10)が、実質的に塑性変形可能な材料で形成されたエアバッグである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項13】
膨張可能部材(10)が、50cm3〜200cm3の間の膨脹容積を有している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項14】
膨張可能部材(10)が、細長い形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項15】
膨張可能部材(10)を膨脹させるために、膨張可能部材に連通させて設けられた火薬式のガス発生装置(19)をさらに備えている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項1】
衝突の場合に自動車の隣接する構造部材(2、4)の間の隙間を維持するための安全装置であって、
膨張可能部材(10)が、自動車の1対の実質的に隣接する構造部材(2、4)のうちの一方(4)へと取り付けられて設けられ、前記1対の構造部材(2、4)の間に元より形成されている空間(11)において膨脹するように構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記膨張可能部材(10)が、前記空間(11)へと侵入しない衝突前形態を有している、請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記膨張可能部材(10)が、膨脹時に前記構造部材(14)を互いに連結し、衝突の場合に構造部材の間の空間(11)の実質的に完全な閉鎖を防止するように構成されている、請求項1または2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記構造部材のうちの一方(2)が、自動車の内部空間へのアクセスを提供するために可動であり、前記構造部材のうちの他方(4)が、固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記膨張可能部材(10)が、固定の部材(4)へと取り付けられている、請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
前記可動の部材が、ドア(2)であり、前記固定の部材が、ピラー(4)である、請求項4または5に記載の安全装置。
【請求項7】
前記可動の部材(2)が、ボンネットまたはトランクの蓋である、請求項4または5に記載の安全装置。
【請求項8】
前記膨張可能部材(10)が、可動部材(2)と固定部材(4)との間の解除可能なラッチ(6)の領域に設けられている、請求項4〜7のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項9】
前記膨張可能部材(10)が、可動部材(2)と固定部材(4)との間のヒンジ(5)の領域に設けられている、請求項4〜8のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項10】
膨張可能部材(10)に、通気穴(21)が設けられており、該通気穴(21)が、膨脹時に構造部材のうちの一方(2)に当接して閉じるように配置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項11】
前記膨張可能部材(10)が、実質的に弾性変形可能な材料で形成されたエアバッグの形態をとっている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項12】
前記膨張可能部材(10)が、実質的に塑性変形可能な材料で形成されたエアバッグである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項13】
膨張可能部材(10)が、50cm3〜200cm3の間の膨脹容積を有している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項14】
膨張可能部材(10)が、細長い形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項15】
膨張可能部材(10)を膨脹させるために、膨張可能部材に連通させて設けられた火薬式のガス発生装置(19)をさらに備えている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【公開番号】特開2009−286390(P2009−286390A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−116534(P2009−116534)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116534(P2009−116534)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】
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