説明

自動車の後部車体構造

【課題】側面衝突時に、リヤピラーの室内側への進入を抑制できる自動車の後部車体構造を提供する。
【解決手段】リヤピラー14内に、シートベルトリトラクタ取付け孔20bとベルトアンカ取付け座20c,20dとを略結ぶように延び、かつインナパネル20とで閉断面cを形成する第1補強部材25を設け、該第1補強部材25を、前縁部(リヤドア開口部)14aとリインホース22とに架け渡して結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤドア開口を形成するリヤピラーと、該リヤピラーの上端部に接続されたルーフパネルと、下端部に接続されたリヤホイールハウスとを備えた自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、後部乗員をリヤシートに拘束するシートベルト装置をリヤピラーに取り付ける場合がある。例えば、特許文献1では、リヤピラー内に、上下方向に延びるよう配置された第1の補強部材と、該第1の補強部材とリヤピラーのドア開口部とルーフサイドレールとに架け渡して結合された第2の補強部材とを配置し、該第2の補強部材にベルトアンカを取り付けるようにした構造が提案されている。
【0003】
また上記シートベルト装置においては、ウェビングを通常使用状態では自由に出し入れし、車両衝突時にはロックするシートベルトリトラクタを上記リヤピラーのインナパネルに形成された取付け孔内に収容支持させる場合がある。
【特許文献1】特開2001−63622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の後部車体構造では、側面衝突時の入力の如何によっては、リヤピラーがシートベルトリトラクタの取付け孔を起点に該リヤピラーの下部が室内側に変形するおそれがあり、これに伴ってリヤドアの室内側への進入量が大きくなるという懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、側面衝突時に、リヤピラーの室内側への進入を抑制できる自動車の後部車体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、インナパネルとアウタパネルとでリヤドア開口を形成するリヤピラーと、該リヤピラーの上端部に接続されたルーフパネルと、下端部に接続されたリヤホイールハウスとを備え、上記リヤピラー内に、上記リヤホーイルハウスとルーフパネルとを連結するよう車両上下方向に延び、かつ上記インナパネルとで閉断面を形成するリインホースを配置し、該インナパネルのリインホースの前側に上下方向に所定間隔をあけてシートベルトリトラクタ取付け部とベルトアンカ取付け部とを形成した自動車の後部車体構造において、上記リヤピラー内に、上記シートベルトリトラクタ取付け部とベルトアンカ取付け部とを略結ぶように延び、かつ上記インナパネルとで閉断面を形成する第1補強部材を設け、該第1補強部材を、上記リヤドア開口部と上記リインホースとに架け渡して結合したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記第1補強部材に第2補強部材を一体的に設け、該第2補強部材を、上記ベルトアンカ取付け部に当接させるとともに、上記リヤドア開口部と上記リインホースとに架け渡して結合したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係る後部車体構造によれば、リヤピラー内に、シートベルトリトラクタ取付け部とベルトアンカ取付け部とを略結ぶように、かつリヤピラーとで閉断面を形成する第1補強部材を設け、該第1補強部材をリヤドア開口部とリインホースとに架け渡して結合したので、側面衝突時の入力に対するリヤピラーのリトラクタ取付け部の剛性を高めることができる。これにより、リヤピラーのリトラクタ取付け部を起点とした室内側への変形を抑えることができ、リヤドアの車室側への進入量を抑制することができる。
【0009】
また上記第1補強部材によりリトラクタ取付け部及びベルトアンカ取付け部の剛性を高めることができ、車両衝突時に、両取付け部に車室側への荷重が作用しても、該荷重を第1補強部材が負担することとなり、リヤピラーが車室側に変形するのを抑制できる。
【0010】
請求項2の発明では、第1補強部材に一体的に設けた第2補強部材を、ベルトアンカ取付け部に当接させるとともに、リヤドア開口部とリインホースとに架け渡して結合したので、側面衝突時の入力を第1,第2補強部材で負担することとなり、リヤピラーの室内側への進入をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態による自動車の後部車体構造を説明するための図であり、図1は後部車体の側面図、図2は図1のII-II線断面図、図3は図1のIII-III線断面図、図4は図1のIV-IV線断面図、図5は図1のV-V線断面図、図6は自動車の側面図である。
【0013】
図において、1は自動車を示しており、これは車室aを構成する車体2の左,右側部にフロントドア開口2a,リヤドア開口2bを形成するとともに、後端面にバックドア開口2cを形成し、各ドア開口2a〜2cにそれぞれ該ドア開口2a〜2cを開閉するフロントドア3,リヤドア4,バックドア5を配設し、上記車室a内にフロントシート6,リヤシート7を配置した構造を有している。
【0014】
上記車体2は、ルーフパネル8の左,右側部に接続された前後方向に延びるルーフサイドレール9,9と、フロアパネル10の左,右側部に接続された前後方向に延びるロッカパネル11,11とを上下方向に延びる左,右のフロントピラー12,センタピラー13,リヤピラー14により連結した概略構造を有している。上記フロントピラー12によりフロントドア3が、上記センタピラー13によりリヤドア4がそれぞれドアヒンジ(不図示)を介して回動可能に支持されている。
【0015】
上記車体2の後部車体2′は、上記左,右のリヤピラー14と、該リヤピラー14の上端部に結合された上記左,右のルーフサイドレール9と、上記リヤピラー14の下端部に結合され、左,右の後輪15の上方を覆うホイールハウス16とを備えている。該リヤピラー14の下端部のホイールハウス16の結合部に上記ロッカパネル11の後端部が結合されている。
【0016】
上記リヤピラー14は、リヤインナパネル20とリヤアウタパネル21とを中空状をなすよう重ね合わせるとともに、該インナパネル20,アウタパネル21の前縁部14a同士及び後縁部14b同士をスポット溶接により結合した構造を有している。該前縁部14aにより上記リヤドア開口2bの後縁開口部が形成され、上記後縁部14bにより上記バックドア開口2cの左,右側縁開口部が形成されている。ここで、車両側方から見ると、リヤシート7のシートバック7aは、左,右のリヤピラー14に車幅方向に重なるように配置されている(図6参照)。
【0017】
上記ホイールハウス16は、上記リヤアウタパネル21の下縁部21aにその外縁部16dが結合され、該外縁部16dから車幅方向内側に延びるホイールアウタ16aと、該ホイールアウタ16aの内側縁部16cとともに上記インナパネル20の下縁部20aにその外縁部16eが重ね合わせて結合され、該外縁部16eから車幅方向内側下方に延びるホイールインナ16bとを有している。該ホイールインナ16bの下縁部16fに上記フロアパネル10が結合されている。
【0018】
上記ホイールインナ16bには、上記後輪15に連結されたリヤサスペンション(不図示)の上端部を支持するサスペンション支持孔16gが形成されている(図1参照)。
【0019】
上記左,右のリヤピラー14内には、上記ホイールハウス16とルーフサイドレール9とを連結するよう車両上下方向に延び、かつリヤインナパネル20に向って開口し、かつリヤアウタパネル21に近接するよう膨出形成された横断面略ハット状のリインホース22が配置されている。
【0020】
ここで、上記リインホース22の少なくとも一部を、リヤアウタパネル21の内側面に当接するよう突出形成し、両者の当接面を接着剤等により結合してもよい(図4の二点鎖線参照)。このようにした場合には、リヤアウタパネル21の張り剛性を高めることができる。
【0021】
上記リインホース22は、これの上下方向に略全長に渡って形成された前,後フランジ部22a,22bを有し、該前,後フランジ部22a,22bは、上記リヤインナパネル20に結合されている。これによりリヤインナパネル20とリインホース22とで上下方向に延びる角筒状の閉断面部bが形成されている。
【0022】
上記リインホース22の上フランジ部22cは、上記ルーフサイドレール9の後端部9aに結合され、下フランジ部22dは、上記ホイールインナ16bのサスペンション支持孔16gを囲むようにホイールアウタ16aに結合されている。これにより、後輪15からの突き上げ荷重を上記リインホース22により受けるようになっている。
【0023】
上記リヤピラー14のリヤアウタパネル21の上下方向中央部には、ドアロック取付け座21bが形成されている。このリヤアウタは21には、上記ドアロック取付け座21bに沿うように配置された横断面略L字状をなすドアロック補強部材23が結合されている。該ドアロック補強部材23により、ドアロック取付け座21bが補強され、かつ側面衝突時にリヤピラー14及びリヤドア4が室内a側に進入するのを抑制している。
【0024】
上記リヤインナパネル20のリインホース22の前側の上下方向中央部には、シートベルトリトラクタ取付け孔20bが形成されている。該リトラクタ取付孔20b内には、シートベルト装置のシートベルトリトラクタ24が車室a側に露出するよう収容され、該シートベルトリトラクタ24はリヤインナパネル20に取り付けられている。
【0025】
上記シートベルトリトラクタ24は、ウェビング(不図示)を通常使用状態では自由に出し入れ可能としつつ常時収納方向に巻き取り、車両衝突時には上記ウェビングを移動不能にロックするものであり、これによりリヤシート7に着座した後部乗員を該リヤシート7に拘束する。
【0026】
上記リヤインナパネル20のリインホース22の前側のリトラクタ取付孔20bの上側には、前後一対のベルトアンカ取付け座20c,20dが形成されている。該前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dには、上記シートベルトリトラクタ24から巻き出したウェビングを上記リヤシート7に案内支持する前,後ベルトアンカ(不図示)が取り付けられている。該前ベルトアンカは、ウェビングをリヤシート7の外側に着座した乗員に案内し、後ベルトアンカは、ウェビングをリヤシート7の中央部に着座した乗員に案内するようになっている。
【0027】
上記リヤピラー14内には、上記リトラクタ取付孔20bと前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dとを概ね結ぶように延び、かつ上記リヤインナパネル20とで第1閉断面cを形成する第1補強部材25が配設されている。
【0028】
この第1補強部材25は、板金製のものであり、上縁から下縁にいくほど前後方向及び外側方に拡開する扇状の拡開部25aと、該拡開部25aの前,後縁からそれぞれ前方,後方に延びる前,後結合部25b,25cとを有する大略横断面略ハット状をなしている。
【0029】
上記前結合部25bは、リヤインナパネル20とリヤアウタパネル21との間を該リヤアウタパネル21に略沿って前方に段付き状に延びており、該前結合部25bの前縁部25dは、リヤピラー14の前縁部(リヤドア開口部)14aにスポット溶接により結合されている。
【0030】
上記後結合部25cの後縁部25eは、上記リインホース22の前フランジ部22aとともに、上記リヤインナパネル20にスポット溶接により結合されている。
【0031】
上記拡開部25aは、上記リトラクタ取付孔20bの略上半部を外側から覆うように形成されており、該拡開部25aとリヤインナパネル20とで囲まれた第1閉断面c内に上記シートベルトリトラクタ24が配置されている。これにより、リトラクタ取付孔20bの剛性及びシートベルトリトラクタ24の支持剛性の両方を高めている。
【0032】
上記第1補強部材25の下端部25hは、ベルトラインLと同じ高さに位置するよう延長形成されている。詳細には、前後方向に見たとき、第1補強部材25の下端部25hとベルトラインLとが重なるように配置されている。これにより第1補強部材25は、フロントドア3,リヤドア4にそれぞれ配置された各ベルトラインリインホース(不図示)を結ぶ直線上に配置されている。
【0033】
上記リヤピラー14内の第1補強部材25の上側には、該リヤピラー14の前縁部14aから後縁部14bに渡って前後方向に延び、かつリヤインナパネル20とで前後方向に複数の第2閉断面d1,d2,d3を形成する帯板状の第2補強部材26が配設されている。
【0034】
この第2補強部材26は、上記前縁部14aとリインホース22とを連結する前連結部26aと、該前連結部26aの後縁に続いて内側に屈曲して延びる後連結部26bとを有しており、上記リインホース22とリヤインナパネル20との間を通るように配置されている。
【0035】
上記第2補強部材26には、上記前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dに当接する前,後当接部26c,26dが形成されている。該後当接部26dには、上記リインホース22の前フランジ部22aが重ね合わされており、上記前,後当接部26c,26dには、ベルトアンカ支持部材27,28が固定されている。
【0036】
上記第2補強部材26の前縁部26eは、上記リヤピラー14の前縁部(リヤドア開口部)14aにスポット溶接により結合され、後縁部26fは、上記リヤピラー14の後縁部(バックドア開口部)14bにスポット溶接により結合されている。また前連結部26aはリインホース22の前,後フランジ部22a,22bに結合されている。
【0037】
上記第2補強部材26の前連結部26aの下縁部26gには、上記第1補強部材25の上縁部25gが溶接により結合されている。このようにして、第2補強部材26は、リヤピラー14の前縁部14aからリインホース22とともに後縁部14bに架け渡して結合され、上記第1補強部材25は、リヤピラー14の前縁部14aから第2補強部材26とともに上記リインホース22に架け渡して結合されている。
【0038】
本実施形態によれば、リヤピラー14内に、シートベルトリトラクタ取付孔20bと前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dとを大略結ぶように、かつリヤインナパネル20とで閉断面bを形成する第1補強部材25を配設し、該第1補強部材25をリヤピラー14の前縁部14aとリインホース22とに架け渡して結合したので、側面衝突時の入力に対するリヤピラー14のリトラクタ取付孔20bの剛性を高めることができる。これにより、リヤピラー14のリトラクタ取付孔20bを起点とした室内a側への変形を抑えることができ、ひいてはリヤドア4の車室a側への進入量を抑制することができる。
【0039】
また上記第1補強部材25によりリトラクタ取付孔20b及び前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dの剛性を高めることができ、車両衝突時に、ベルトアンカに車室a側への荷重が作用しても、該荷重を第1補強部材25が負担することとなり、リヤピラー14が車室側に変形するのを抑制できる。
【0040】
本実施形態では、第1補強部材25に一体的に結合した第2補強部材26を、前,後ベルトアンカ取付け座20c,20dに当接させるとともに、リヤピラー14の前縁部14aとリインホース22を介在させて後縁部14bとに架け渡して結合したので、側面衝突時の入力を第1,第2補強部材25,26で負担することとなり、リヤピラー14の室内a側への進入をより確実に抑制することができる。
【0041】
上記第1補強部材25の下端部25hを、ベルトラインLと同じ高さに位置するよう延長形成したので、前面衝突時の入力をフロントドア3,リヤドア4に配設された各ベルトラインリインホースを介して第1補強部材25に効率良く伝達することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、第1,第2補強部材25,26を別々に形成し、両補強部材25,26を溶接により一体的に結合したが、本発明では、第1,第2補強部材25,26をプレス成形により一体形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態による自動車の後部車体の側面図である。
【図2】上記後部車体の断面図(図1のII-II線断面図)である。
【図3】上記後部車体の断面図(図1のIII-III線断面図)である。
【図4】上記後部車体の断面図(図1のIV-IV線断面図)である。
【図5】上記後部車体の断面図(図1のV-V線断面図)である。
【図6】上記自動車の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車
2′ 後部車体
2b リヤドア開口
8 ルーフパネル
9 ルーフサイドレール
14 リヤピラー
14a 前縁部(リヤドア開口部)
14b 後縁部(バックドア開口部)
16 ホイールハウス
20 リヤインナパネル
20b シートベルトリトラクタ取付孔
20c,20d ベルトアンカ取付け座
21 リヤアウタパネル
22 リインホース
25 第1補強部材
26 第2補強部材
c 閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとでリヤドア開口を形成するリヤピラーと、該リヤピラーの上端部に接続されたルーフパネルと、下端部に接続されたホイールハウスとを備え、上記リヤピラー内に、上記リヤホーイルハウスとルーフパネルとを連結するよう車両上下方向に延び、かつ上記インナパネルとで閉断面を形成するリインホースを配置し、該インナパネルのリインホースの前側に上下方向に所定間隔をあけてシートベルトリトラクタ取付け部とベルトアンカ取付け部とを形成した自動車の後部車体構造において、
上記リヤピラー内に、上記シートベルトリトラクタ取付け部とベルトアンカ取付け部とを略結ぶように延び、かつ上記インナパネルとで閉断面を形成する第1補強部材を設け、
該第1補強部材を、上記リヤドア開口部と上記リインホースとに架け渡して結合したことを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
請求項1において、上記第1補強部材に第2補強部材を一体的に設け、該第2補強部材を、上記ベルトアンカ取付け部に当接させるとともに、上記リヤドア開口部と上記リインホースとに架け渡して結合したことを特徴とする自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−238885(P2008−238885A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79986(P2007−79986)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】