説明

自動車の扉体用ラッチ解除装置

【課題】ユーザが手先を汚すことなく開閉扉体をラッチ解除して開けることができる自動車の扉体用ラッチ解除装置を提供すること。
【解決手段】ラッチ解除装置1は、リアガラス等の左右両端部に配設される一対の人体近接センサ2と、バックドア等の開閉扉体10に出没可能に格納されている出没把手部3と、開閉扉体10内に回動可能に支持されたカム部材4と、ラッチ機構20を手動でラッチ解除するための手動解錠レバー5と、ラッチ機構20のストッパ部材22を駆動可能なソレノイド6等を備えている。人体近接センサ2から所定の信号が出力されると、ストッパ部材22がソレノイド6に押圧されて係脱部材21から離れることで、係脱部材21が付勢力F1で回転して止め具23に拘持されなくなるため、開閉扉体10をラッチ解除できると共に出没把手部3が開閉扉体10の後方へ突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車両後端部に設けられたバックドアやトランクリッド(以下、開閉扉体と総称する)を施錠しているラッチ機構をラッチ解除することにより、この開閉扉体が開放可能となる自動車の扉体用ラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴン型自動車の車両後端部に設けられたバックドアやセダン型自動車の車両後端部に設けられたトランクリッドは、ラッチ機構によって施錠される開閉扉体であり、開扉時にはユーザがラッチ機構をラッチ解除する必要がある。一般的に、上開きタイプのバックドアやトランクリッドのラッチ機構をラッチ解除する際には、車両後端部の下部に設けられているレバー状の手動解錠部材をユーザが操作してラッチ機構をラッチ解除した後、この手動解錠部材を把持したままユーザが開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)を持ち上げることによって、開閉扉体がヒンジ部を中心に回転して開くようになっている。
【0003】
ところで、車両後端部の下側に露出している部分は、走行中に後輪に跳ね上げられた泥水等が付着して汚れやすい。そこで、バックドアの下部に泥水等が付着して見栄えが悪くなることを防止するために、従来より、バックドアと後輪との間にマッドガードを付設するという対策や、バックドアと後輪との間にロアバックパネルの延長部分を介在させるという対策(例えば、特許文献1参照)が講じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−227636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上開きタイプのバックドアやトランクリッドをラッチ解除して開けるために車両後端部に設けられている手動解錠部材は、この開閉扉体の下部の凹所等に配置されているので、前述したように走行中に後輪に跳ね上げられた泥水等が付着して汚れやすい。こうした汚れをマッドガードや前記ロアバックパネルなどで低減させることは可能であるが、悪路等を走行した後に手動解錠部材が汚れてしまうことは避けられない。それゆえ、ユーザが車両後端部の開閉扉体を開けるために手動解錠部材を把持したときに、手指や掌に手動解錠部材の汚れが転写されてしまうことがあり、その場合、ユーザは手先が泥等で汚れたことに気付かずに衣服や食べ物に触れて被害を拡大させてしまうこともあった。また、悪路等を走行して手動解錠部材がひどく汚れていることが明らかな場合に、ユーザは開閉扉体を開ける前に予め手動解錠部材の汚れを除去しておく等の作業を強いられるため、煩雑であった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ユーザが手先を汚すことなく開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)をラッチ解除して開けることができる自動車の扉体用ラッチ解除装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の扉体用ラッチ解除装置は、バックドアまたはトランクリッドである開閉扉体がラッチ機構によって施錠可能となっている車両後端部に、人体が近接したことを検出する人体近接センサと、前記開閉扉体に格納可能かつ後方へ突出可能な出没把手部と、前記ラッチ機構および前記出没把手部に対して駆動力を付与可能な駆動手段とが備えられ、前記人体近接センサから所定の信号が出力されたとき、前記駆動手段が、前記ラッチ機構をラッチ解除状態へ移行させると共に、前記出没把手部を前記開閉扉体の後方へ突出させるようにした。
【0008】
このように構成された扉体用ラッチ解除装置では、ユーザが掌等の体の一部を人体近接センサに非接触で検出させて、該センサから所定の信号が出力されると、駆動手段の駆動力がラッチ機構および出没把手部に対して付与されることにより、車両後端部の開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)がラッチ解除されて出没把手部が後方へ突出する。この出没把手部はそれまで開閉扉体に格納されているので汚れの心配がなく、ユーザは突出した出没把手部に手指を引っ掛けるなどして開閉扉体を開けることができる。したがって、開閉扉体を手動でラッチ解除するために車両後端部の下部に設けられている手動解錠部材の汚れが懸念されるときなどに、ユーザは非接触でラッチ解除して開閉扉体を手先を汚さずに簡単に開けることができる。なお、この種の手動解錠部材を車両後端部から省略した構成にすることも可能となる。
【0009】
上記の扉体用ラッチ解除装置において、人体近接センサの数は特に限定されないが、人体近接センサが車両後端部の右側と左側にそれぞれ配設されており、これら2つの人体近接センサから出力される検出信号に基づいて、駆動手段がラッチ機構および出没把手部を駆動するようにしてあると、人体をいずれか一方の人体近接センサに近接させただけでは開閉扉体がラッチ解除されないため、意図せず開閉扉体がラッチ解除されてしまうという事態が発生しにくくなって好ましい。つまり、駐停車時に開閉扉体をラッチ解除するつもりがなくても、人体をいずれか一方の人体近接センサに近接させてしまうことは十分にありうるが、左右の人体近接センサに同時または連続して人体を近接させることが偶発的に起こる可能性は低いため、扉体用ラッチ解除装置が誤動作しにくくなる。
【0010】
この場合において、2つの人体近接センサのうちの一方から複数回出力される検出信号と、他方から1回出力される検出信号とに基づいて、駆動手段がラッチ機構および出没把手部を駆動するようにしてあると、所定の信号が偶発的に人体近接センサから出力されてしまう可能性が極めて低くなるため、意図せず開閉扉体がラッチ解除されてしまうという事態が一層発生しにくくなる。
【0011】
なお、上記の扉体用ラッチ解除装置において、人体近接センサの検出方式は特に限定されないが、人体近接センサが、静電容量値の変化に基づいて人体が近接したことを検出するセンサであると、非接触で人体の近接を検出できる高性能かつ安価で軽量薄型なセンサが使用できるため好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による自動車の扉体用ラッチ解除装置では、ユーザが掌等の体の一部を近接させて人体近接センサから所定の信号が出力されると、駆動手段の駆動力がラッチ機構および出没把手部に付与されることにより、車両後端部の開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)がラッチ解除されると共に、この開閉扉体に格納されていた出没把手部が後方へ突出するようにしてある。したがって、開閉扉体を手動でラッチ解除するために車両後端部の下部に設けられている手動解錠部材の汚れが懸念されるときなどに、ユーザは非接触でラッチ解除して開閉扉体を手先を汚さずに簡単に開けることができる。それゆえ、悪路走行後などにも開閉扉体の開扉作業時に手先を汚す虞がなくなり、開閉扉体の使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す扉体用ラッチ解除装置の動作説明図である。
【図3】図1に示す扉体用ラッチ解除装置をワゴン型自動車のバックドアに配設した例を示す外観図である。
【図4】図1に示す扉体用ラッチ解除装置をセダン型自動車のトランクリッドに配設した例を示す外観図である。
【図5】本発明の第2実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置の概略構成図である。
【図6】図5に示す扉体用ラッチ解除装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の第1実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0015】
第1実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置1は、自動車の車両後端部に設けられた開閉扉体10(バックドア10aまたはトランクリッド10b)を施錠しているラッチ機構20をラッチ解除して、この開閉扉体10が開けられるようにするためのものである。図3に示すように、ワゴン型自動車40の車両後端部には開閉扉体10としてバックドア10aが設けられており、図4に示すように、セダン型自動車50の車両後端部には開閉扉体10としてトランクリッド10bが設けられている。なお、開閉扉体10は、車体パネル30の上端部にヒンジ結合されて上下方向に回動可能となっている。
【0016】
この扉体用ラッチ解除装置1は、人体が近接したことを検出する一対の人体近接センサ2,2と、開閉扉体10に格納されて後方へ突出可能な出没把手部3と、開閉扉体10内に回動可能に支持されたカム部材4と、ラッチ機構20を手動でラッチ解除するための手動解錠レバー5と、ラッチ機構20の後述するストッパ部材22を駆動可能なソレノイド6とによって主に構成されている。カム部材4は支点部4aを中心に回動可能であり、手動解錠レバー5は支点部5aを中心に回動可能である。また、カム部材4には出没把手部3の後端部に当接するカム面4bが形成されており、カム部材4の支点部4aと出没把手部3との間にはコイルばね7が介設されている。
【0017】
一対の人体近接センサ2,2は、図3に示すようにワゴン型自動車40のリアガラス41の左右両端部や、図4に示すようにセダン型自動車50の左右のリアコンビネーションランプ51,51に配設されている。これら左右一対の人体近接センサ2,2は、静電容量値の変化に基づいて人体の近接を検出するという公知の静電容量式センサである。そして、本実施形態例では、2つの人体近接センサ2,2のうちの一方から2回出力される検出信号と、他方から1回出力される検出信号とに基づいて、ソレノイド6にオン信号A(図2参照)が通電されてプランジャが飛び出すように設定してある。
【0018】
ラッチ機構20は、支点部21aを中心に回動可能な係脱部材21と、支点部22aを中心に回動可能なストッパ部材22と、車体パネル30の下端部に固設された止め具23とを備えている。係脱部材21は図示せぬばね部材の付勢力F1によって図1の矢印方向へ回動付勢されているが、ストッパ部材22が係脱部材21の一部に当接することにより、係脱部材21の同方向への回転は阻止されている。そして、このようにストッパ部材22が係脱部材21の回転を阻止しているとき、係脱部材21は車体側の止め具23に掛止されているため、開閉扉体10が開扉不能なラッチ状態(図1参照)となっている。また、ストッパ部材22による係脱部材21の回転規制が取り除かれると、係脱部材21は付勢力F1によって回転駆動されるため、この係脱部材21が止め具23に拘持されない位置まで回転した時点で、開閉扉体10は図1の図示上方へ開扉可能なラッチ解除状態(図2参照)となる。
【0019】
扉体用ラッチ解除装置1とラッチ機構20との関係について説明すると、カム部材4は係脱部材21とワイヤー連結されており、手動解錠レバー5はストッパ部材22とワイヤー連結されている。そして、ユーザが手動解錠レバー5を把持して持ち上げるように操作すると、ストッパ部材22が支点部22aを中心に図1の時計回りに回転して係脱部材21から離れるため、係脱部材21が付勢力F1によって図1の反時計回りに回転する。その結果、係脱部材21が止め具23に拘持されなくなるため、開閉扉体10がラッチ解除された状態となり、ユーザは手動解錠レバー5を把持したまま開閉扉体10を開けることができる。なお、係脱部材21が図1の状態から図2の位置まで回転すると、それに連動してカム部材4が回転することになるが、その動作については後述する。
【0020】
前述したように、一対の人体近接センサ2,2からの検出信号に基づいてソレノイド6にオン信号Aが通電されると、図2に示すように、ソレノイド6のプランジャが飛び出してラッチ機構20のストッパ部材22を加圧駆動する。その結果、ストッパ部材22が支点部22aを中心に図1の時計回りに回転して係脱部材21から離れるため、ユーザが手動解錠レバー5を操作した場合と同様に、係脱部材21が付勢力F1によって回転して止め具23に拘持されなくなり、開閉扉体10はラッチ解除される。また、かかる係脱部材21の回転に連動して、カム部材4が支点部4aを中心に図1の反時計回りに回転するため、出没把手部3がカム部材4のカム面4bに押圧されて開閉扉体10のスリット部11から外方(後方)へ突出する。その際、スリット部11を覆っている蓋状体12は出没把手部3によって押し上げられ、出没把手部3が外方へ突出するのに伴ってコイルばね7は伸長する。したがって、ユーザは突出した出没把手部3に手指を引っ掛けるなどして開閉扉体10を開けることができる。なお、蓋状体12は出没把手部3の前後進を阻害しないように取り付けられており、出没把手部3がスリット部11の内方(前方)へ引き込まれると、蓋状体12は自重によって図1に示す閉鎖姿勢に自動復帰する。
【0021】
次に、扉体用ラッチ解除装置1の動作について詳しく説明する。ユーザは開閉扉体10を開ける際にラッチ解除する必要があるが、開閉扉体10のラッチ解除は、手動解錠レバー5を手動操作して行えるだけでなく、人体近接センサ2,2を利用して非接触で行うこともできる。すなわち、悪路等を走行した後には手動解錠レバー5に泥水等の汚れが付着している可能性が高いため、汚れの付着した手動解錠レバー5を手動操作して開閉扉体10を開けようとすると、ユーザの手先が汚れてしまうことになる。このような場合、ユーザは車両後端部の設けられた左右一対の人体近接センサ2,2に人体の一部(掌等)を近接させることによって、非接触で開閉扉体10をラッチ解除することができる。
【0022】
すなわち、ユーザが2つの人体近接センサ2,2のうちの一方に手先を近接させた後、他方のセンサ2に別の手先を1回近接させ、さらに前記一方のセンサ2に再び手先を近接させると、ソレノイド6にオン信号A(図1参照)が通電されてプランジャが飛び出すため、ラッチ機構20のストッパ部材22がプランジャに加圧駆動されて係脱部材21から離れる。その結果、係脱部材21が付勢力F1によって回転して止め具23に拘持されなくなるため、開閉扉体10がラッチ解除されると共に、係脱部材21に連動してカム部材4が回転するため、開閉扉体10内に格納されていた出没把手部3が後方へ突出する(図2参照)。したがって、ユーザは汚れの心配のない出没把手部3に手指を引っ掛けるなどして、この開閉扉体10を簡単に開けることができる。
【0023】
なお、手動解錠レバー5が汚れていないことが明らかなときには、ユーザは手動解錠レバー5を手動操作して開閉扉体10をラッチ解除してもよい。つまり、ユーザが手動解錠レバー5を把持して図2の位置まで持ち上げると、ストッパ部材22が回転して係脱部材21から離れるため、係脱部材21が付勢力F1によって回転して止め具23に拘持されなくなり、開閉扉体10はラッチ解除される。したがって、ユーザは汚れていない手動解錠レバー5を把持したまま開閉扉体10を開けることができる。
【0024】
また、開扉した開閉扉体10を閉めると、開閉扉体10と共に下降する係脱部材21が止め具23に当接した後、止め具23に係合しながら図2の時計回りに回転駆動されるため、この係脱部材21が自動的にストッパ部材22に掛止されて図1の状態に戻る。
【0025】
以上説明したように、本実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置1においては、ユーザが掌等の体の一部を人体近接センサ2,2に非接触で検出させて、両センサ2,2から所定の信号が出力されると、ストッパ部材22がソレノイド6に駆動されて係脱部材21から離れることにより、この係脱部材21が付勢力F1で回転して止め具23に拘持されなくなるため、車両後端部の開閉扉体10(バックドア10aやトランクリッド10b)をラッチ解除できると共に、出没把手部3が開閉扉体10の後方へ突出するようになっている。すなわち、ユーザは人体近接センサ2,2に手先等を近接させれば、開閉扉体10をラッチ解除して出没把手部3を露出させることが可能となるため、手動解錠レバー5の汚れが懸念されるとき(例えば悪路走行後)などに、開閉扉体10内に格納されていて汚れの心配がない出没把手部3に手指を引っ掛けて、開閉扉体10を手先を汚さずに簡単に開けることができる。なお、この扉体用ラッチ解除装置1は手動解錠レバー5を車両後端部から省略した構成にすることも可能である。
【0026】
また、この扉体用ラッチ解除装置1では、車両後端部の右側と左側にそれぞれ人体近接センサ2が配設されており、これら2つの人体近接センサ2,2から所定の信号が出力されたときだけ、ソレノイド6がストッパ部材22を駆動するようにしてあり、人体をいずれか一方の人体近接センサ2に近接させただけでは、開閉扉体10がラッチ解除されないようにしてある。つまり、駐停車時に開閉扉体10をラッチ解除するつもりのない人が車両後端部に近付く場合など、意に反して人体をいずれか一方の人体近接センサ2に近接させてしまうことは十分にありうるが、左右の人体近接センサ2,2に同時または連続して人体を近接させることが偶発的に起こる可能性は低いため、意図せず開閉扉体10がラッチ解除されてしまうという誤動作が起こりにくくなっている。
【0027】
なお、開閉扉体10のラッチ解除ならびに出没把手部3の突出を指令する所定の信号は、人体近接センサ2,2から偶発的に出力される可能性が低ければ任意に設定可能であるが、両センサ2,2に対してユーザが複雑な近接動作を要求されることは好ましくない。その点、上記した第1実施形態例では、2つの人体近接センサ2,2のうちの一方から2回出力される検出信号と、他方から1回出力される検出信号とに基づいて、ソレノイド6がストッパ部材22を駆動するようにしてあるため、前記所定の信号が偶発的に人体近接センサから出力されてしまう可能性は極めて低く、しかも両センサ2,2に対するユーザの近接動作も単純で操作性が良好である。
【0028】
また、人体近接センサ2の検出方式は特に限定されるわけではないが、上記した第1実施形態例のように、人体近接センサ2が静電容量値の変化に基づいて人体の近接を検出する静電容量式センサであると、非接触で人体の近接を検出できる高性能かつ安価で軽量薄型なセンサが使用できるため好ましい。
【0029】
次に、図5と図6を参照しながら、本発明の第2実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置について説明する。なお、これらの図において、第1実施形態例の説明に用いた図1〜図4と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は適宜省略する。
【0030】
第2実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置15は、リアガラス等の左右両端部に配設される図示せぬ一対の人体近接センサと、開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)10に格納されて後方へ突出可能な出没把手部3と、開閉扉体10内で支点部9aを中心に回動可能で後端部に出没把手部3が一体化されている作動部材9と、この作動部材9を駆動して回転させるソレノイド6と、ラッチ機構20を手動でラッチ解除するための手動解錠レバー5とによって主に構成されている。この扉体用ラッチ解除装置15は、一対の人体近接センサから所定の信号が出力されると、ソレノイド6にオン信号Aが通電されてプランジャ6aが飛び出し、このプランジャ6aによって作動部材9が加圧駆動されるようになっている。
【0031】
ラッチ機構20は、車体パネル30の下端部に固設された止め具23と、支点部24aを中心に回動して止め具23に係脱可能な係脱部材24とを備えており、係脱部材24は図示せぬばね部材の付勢力F2によって図5の矢印方向へ回動付勢されている。そして、係脱部材24が止め具23に掛止されているとき、開閉扉体10は開扉不能なラッチ状態(図5参照)となっており、係脱部材24を止め具23から外れる位置まで回転させることにより、開閉扉体10は開扉可能なラッチ解除状態(図6参照)となる。
【0032】
扉体用ラッチ解除装置15とラッチ機構20との関係について説明すると、作動部材9はその駆動端部9bを係脱部材24の上端部に対向させてあり、手動解錠レバー5は可撓性のワイヤ8を介して係脱部材24の下端部と連結されている。そして、ソレノイド6にオン信号Aが通電されてプランジャ6aが飛び出すと、このプランジャ6aに押圧された作動部材9が図5の反時計回りに回転するため、作動部材9の駆動端部9bが係脱部材24を押圧してこれを図5の時計回りに回転させる。その結果、図6に示すように、係脱部材24の下端部が止め具23から外れてワイヤ8が緩むため、手動解錠レバー5を動作させることなく開閉扉体10がラッチ解除された状態となる。また、こうして作動部材9が図5の反時計回りに回転すると、出没把手部3が開閉扉体10のスリット部11から蓋状体12を押し上げて外方(後方)へ突出するため、ユーザは出没把手部3に手指を引っ掛けるなどして開閉扉体10を開けることができる。
【0033】
また、ユーザが手動解錠レバー5を把持して図6の2点鎖線位置まで持ち上げることによっても、係脱部材24の下端部が止め具23から外れるため、開閉扉体10はラッチ解除される。したがって、ユーザは手動解錠レバー5を把持したまま開閉扉体10を開けることができる。ただし、この場合、係脱部材24が図5の時計回り方向へ回転しても作動部材9は回転せず、係脱部材24の上端部が作動部材9の駆動端部9bから離れるだけであるため、出没把手部3は開閉扉体10内に格納された状態を維持する。
【0034】
以上説明したように、第2実施形態例に係る扉体用ラッチ解除装置15では、ソレノイド6のプランジャ6aに押圧される作動部材9の変位に伴って、開閉扉体10がラッチ解除されると共に出没把手部3が後方へ突出するようにしてあるが、この作動部材9は手動解錠レバー5によっては駆動されないため、ユーザが手動解錠レバー5を手動操作してラッチ解除する際に、出没把手部3は開閉扉体10内に格納されたままとなる。つまり、ユーザが手動操作でラッチ解除したときには手動解錠レバー5を把持したまま開閉扉体10を開けることができ、その場合に出没把手部3を突出させることに特別な意味はないため、本実施形態例のように必要時だけ出没把手部3を突出させる構成にしてあれば、ユーザに違和感を与えずに済む。
【符号の説明】
【0035】
1,15 扉体用ラッチ解除装置
2 人体近接センサ
3 出没把手部
4 カム部材
5 手動解錠レバー(手動解錠部材)
6 ソレノイド(駆動手段)
6a プランジャ
9 作動部材(駆動手段)
10 開閉扉体(バックドアまたはトランクリッド)
12 蓋状体
20 ラッチ機構
21,24 係脱部材
22 ストッパ部材
23 止め具
30 車体パネル
41 リアガラス
51 リアコンビネーションランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアまたはトランクリッドである開閉扉体がラッチ機構によって施錠可能となっている車両後端部に、人体が近接したことを検出する人体近接センサと、前記開閉扉体に格納可能かつ後方へ突出可能な出没把手部と、前記ラッチ機構および前記出没把手部に対して駆動力を付与可能な駆動手段とが備えられ、
前記人体近接センサから所定の信号が出力されたとき、前記駆動手段が、前記ラッチ機構をラッチ解除状態へ移行させると共に、前記出没把手部を前記開閉扉体の後方へ突出させることを特徴とする自動車の扉体用ラッチ解除装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記人体近接センサが車両後端部の右側と左側にそれぞれ配設されており、これら2つの人体近接センサから出力される検出信号に基づいて、前記駆動手段が前記ラッチ機構および前記出没把手部を駆動することを特徴とする自動車の扉体用ラッチ解除装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記2つの人体近接センサのうちの一方から複数回出力される検出信号と、他方から1回出力される検出信号とに基づいて、前記駆動手段が前記ラッチ機構および前記出没把手部を駆動することを特徴とする自動車の扉体用ラッチ解除装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記人体近接センサが、静電容量値の変化に基づいて人体が近接したことを検出するセンサであることを特徴とする自動車の扉体用ラッチ解除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57181(P2013−57181A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195106(P2011−195106)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】