説明

自動車の採光装置

【課題】 第1の偏光板と第2の偏光板との間に所要の間隔を設け、かつ、車内側の第2の偏光板を脱着自在として、優れた遮熱性や遮音性を発揮できるとともに、両偏光板間を物入れとして有効利用できる自動車の採光装置の提供を図る。
【解決手段】 ルーフ部2に形成した開口部11の車外側にルーフパネル3の外側面と略同一面に設けた第1の偏光板12と、開口部11の車内側に回転可能、かつ、ルーフトリム4の車室内面と略同一面に設けた第2の偏光板13と、の間に所要の間隔Lを設け、第2の偏光板13を前記開口部11に脱着自在に取り付けることにより、車外からの熱や騒音を両偏光板12,13間に形成される空間部Sによって吸収して車室R内に侵入するを低減し、遮熱性や遮音性に優れた効果を発揮し、また、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に形成される空間部Sを他の物の収納部として有効利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重ね合わせ方向に配置されて一方が回転可能となった2枚の偏光板を介して採光する自動車の採光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の偏光板を用いて採光量を調節できるようにした自動車の採光装置としては、自動車の屋根部に形成した開口部に適用したサンルーフ装置があり、その開口部の車外側に設けた第1の偏光板に対して、開口部の車内側に設けた第2の偏光板を回転させて調光できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭60−72728号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の自動車の採光装置にあっては、第1の偏光板と第2の偏光板とを重合して配設してあり、これら両偏光板間に適宜な間隔が存在しない構造となっているため、車外からの熱や騒音が互いに接触した両偏光板を伝って車室内に導入され、遮熱性や遮音性が悪化してしまう。
【0004】
また、採光量の調節時に第2の偏光板が第1の偏光板に接触した状態で回転されるため、繰り返して採光量調節を行うことにより両偏光板の対向面に摩耗や傷が発生してしまう。
【0005】
更に、第1の偏光板および第2の偏光板は屋根部に埋め込み状態で取り付けられ、前述したように第1の偏光板と第2の偏光板とが面接触してそれらの間に空間部が設けられていないため、一方の偏光板を取り外して両偏光板間に他の物を収納する等の付加的な機能を持たせることができない。
【0006】
そこで、本発明は、第1の偏光板と第2の偏光板との間に所要の間隔を設け、かつ、車内側の第2の偏光板を脱着自在として、優れた遮熱性や遮音性を発揮できるとともに、両偏光板間を物入れとして有効利用できる自動車の採光装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、車室の外郭を形成する車外側構成部材と車内側構成部材とを貫通して形成された開口部と、この開口部の車外側に設けられた第1の偏光板と、前記開口部の車内側に回転可能に設けられた第2の偏光板と、を備え、第2の偏光板の回転角に応じて第1の偏光板と第2の偏光板とを通過する採光量が調節されるようにした自動車の採光装置であって、第2の偏光板を、第1の偏光板との間に所要の間隔をおいて配置するとともに、該第2の偏光板を前記開口部に脱着自在に取り付けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の偏光板と第2の偏光板との間に所要の間隔が設けられているので、車外からの熱や騒音は両偏光板間に形成される空間部によって吸収されて車室内に侵入するを低減し、遮熱性や遮音性に優れた効果を発揮する。
【0009】
また、第1の偏光板と第2の偏光板とが離間しているため、第2の偏光板を回転した際にも両偏光板の対向面に摩耗や傷が発生するのを防止できる。
【0010】
更に、第2の偏光板が開口部に着脱自在となっており、かつ、第1の偏光板と第2の偏光板との間に空間部が形成されるので、この空間部を物品収納部として有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1〜図4は本発明にかかる自動車の採光装置の第1実施形態を示し、図1は採光装置を設けた自動車の斜視図、図2は採光装置の分解斜視図、図3は採光装置を縦断した拡大断面図、図4は採光装置に用いられる補強部材の取り付け状態を示す要部斜視図である。
【0013】
本実施形態の採光装置10は、図1に示すように自動車1のルーフ部2に設けられる場合を例にとって説明するものとし、特に本実施形態では採光装置10がルーフ部2の車両前後方向に適宜間隔をおいて2基設けられた場合を示すが、勿論、採光装置10は1基、若しくは3基以上設けることもできる。
【0014】
前記採光装置10は、図2,図3に示すように車室R(図3参照)の外郭を形成する車外側構成部材としてのルーフパネル3と車内側構成部材としてのルーフトリム4とを貫通して形成した円形の開口部11に構成されており、この開口部11の車外側(図3中上方)にルーフパネル3の外側面と略同一面となるように設けられた第1の偏光板12と、その開口部11の車内側(図3中下方)に回転可能、かつ、ルーフトリム4の車室内面と略同一面となるように設けられた第2の偏光板13と、を備えている。
【0015】
そして、第1の偏光板12から導入される光の偏光性を利用して第2の偏光板13の回転角を調節することにより、第1の偏光板12と第2の偏光板13とを通過する採光量が調節される。
【0016】
第1の偏光板12は、所定厚みをもった合成樹脂材、ガラス等で形成された円形の外側透明板12aの車室内面(図3中下面)に偏光フィルム(薄い偏光板でも可)12bを貼り合わせて形成されるとともに、第2の偏光板13は、同様にガラスや合成樹脂材等で形成された円形の内側透明板13aの車室外面(図3中上面)に偏光フィルム(薄い偏光板でも可)13bを貼り合わせて形成される。
【0017】
ここで、本発明では前記第2の偏光板13を、第1の偏光板12との間に所要の間隔Lをおいて配置するとともに、該第2の偏光板13を前記開口部11に脱着自在に取り付けてある。
【0018】
前記ルーフパネル3の内面には、車両前後方向に所定間隔をもって車幅方向に延在するハット形断面の複数のルーフボウ5が補強部材として接合されるが、前記採光装置10はこれらルーフボウ5間に形成されており、前記ルーフパネル3の前記開口部11の周縁部は、図3に示すように垂下壁3aをもって一旦下方に折曲された段差面3bが形成されている。
【0019】
図4に示すように前記段差面3bの下側には、車両前後方向の対向部分に前記ルーフボウ5にスポット溶接で接合された一対の補強ブラケット14が配置され、これら補強ブラケット14によって段差面3bが垂れ下がり変形するのが防止される。
【0020】
前記第1の偏光板12は、第2の偏光板13の外周縁方向に延設された環状壁部15aが形成された枠体15を備えている。この枠体15は、上端部に第1の偏光板12の外周縁部の上面、外周面および下面を包み込むようにして気密および液密に保持する断面コ字状の環状保持部15bが形成され、この環状保持部15bの下面15cの内周から前記環状壁部15aが垂設されている。
【0021】
また、前記枠体15は、図2に示すように径方向中央部から縦割りに2分割され、分割された前記環状保持部15b間に第1の偏光板12を嵌合して組み付けて相互に接着して一体化される。
【0022】
前記環状壁部15aは、例えばその内側面15dに光の反射を防止若しくは抑制可能なように艶消し処理を施して光の非反射壁としている。
【0023】
前記枠体15をルーフパネル3の開口部11に取り付ける際には、開口部11の上方から環状壁部15aを挿入した後、前記環状保持部15bの下面15cを前記開口部11の段差面3bの上面に気密かつ液密に接着して取り付けるようにしている。
【0024】
一方、円形に形成された第2の偏光板13は、内側透明板13aの周縁部を第1の偏光板12方向(図3中上方)に立ち上げて筒部13cが形成され、この筒部13cを前記環状壁部15aの内周に、周方向に回転可能かつ回転軸方向に移動可能に嵌合される。本実施形態では、前記筒部13cも光の非反射壁として構成される。
【0025】
前記環状壁部15aと前記筒部13cとの嵌合部分には、図2に示すように第2の偏光板13の所定回転角(略90度)の回転を許容する回転係合手段16と、この回転係合手段16の終端部から連続して第2の偏光板13を回転軸方向に着脱案内する軸方向係合手段17と、が設けられている。
【0026】
前記回転係合手段16は、環状壁部15aの中心Oに対して相互に対向する内周部分に一対配置され、これら一対の回転係合手段16は、前記中心Oを中心とする90度の角度範囲で周方向に沿って形成された周溝16aを備えている。
【0027】
一方、前記軸方向係合手段17は、一対の前記周溝16aのそれぞれ同一回転方向の終端16bから連続して形成され、該終端16bから一旦上方に向かって立ち上がる縦溝17aと、この縦溝17aから少し横にずれる横溝17bと、この横溝17bから下方に向かって延びて環状壁部15aの下端まで縦方向に形成された脱着用溝17cと、を備えている。
【0028】
また、環状壁部15aに前記回転係合手段16および前記軸方向係合手段17が一対形成されることと合わせて、前記筒部13cの対向した外周部には、前記周溝16aおよび前記縦溝17a、横溝17b、脱着用溝17cに移動自在に係合される一対の凸部18が形成され、この凸部18と前記周溝16aとによって前記回転係合手段16が構成されるとともに、前記凸部18と前記縦溝17a、横溝17bおよび脱着用溝17cとによって前記軸方向係合手段17が構成される。
【0029】
そして、第2の偏光板13を開口部11に装着する際には、前記凸部18を前記脱着用溝17cの下端から挿入しつつ第2の偏光板13を持上げた後、凸部18が脱着用溝17cの上端に到達した時点で該第2の偏光板13を少々回転させて凸部18を横溝17bに沿わせて横移動させ、凸部18が縦溝17aに到達した時点で第2の偏光板13から徐々に手を離すことにより、第2の偏光板13は自重で下降して凸部18が周溝16aの終端16bに位置し、この時点で第2偏光板13の取付けが完了し、この取付位置が第2の偏光板13の初期取付位置とする。
【0030】
一方、第2の偏光板13を開口部11から取外す際には、第2の偏光板13を周溝16aの終端16b方向に回転することにより、凸部18がその終端16bに突き当たって停止し、その時点で第2の偏光板13を押し上げることにより凸部18は縦溝17aを上方に移動し、次いで第2の偏光板13を更に回転することにより凸部18は横溝17bを横移動して脱着用溝17cに位置し、この状態で第2の偏光板13を手で支えた状態で下降させることにより、凸部18が脱着用溝17cから離脱して第2の偏光板13が取り外される。
【0031】
そして、第2の偏光板13は前記初期取付位置で、該第2の偏光板13の偏光方向と第1の偏光板12を通過した光の偏光方向とを一致させた状態(以下、第1の明状態と称す)か、または、第2の偏光板13の偏光方向が第1の偏光板12を通過した光の偏光方向に対して直角方向とさせた状態(以下、第1の暗状態と称す)かに設定される。
【0032】
前記初期取付位置から第2の偏光板13を前記終端16bから離れる方向に回転して、凸部18が周溝16aの他方の終端16cに位置した時点で、第2の偏光板13は前記初期取付位置から90度回転され、初期取付位置で第1の明状態である場合には第1の暗状態に設定される一方、初期取付位置で第1の暗状態である場合には第1の明状態に設定される。
【0033】
勿論、第2の偏光板13を周溝16aの両終端16b,16c間で任意の回転位置に設定することにより、第1の偏光板12と第2の偏光板13を通過した光は第1の明状態と第1の暗状態との間の明度を無段階に変化させることができ、ひいては、採光量を無段階に調節できる。
【0034】
また、図3に示すように前記第2の偏光板13の下面周縁部には、この第2の偏光板13を指先きで回転操作するための操作凹部13dが形成されていて、この第2の偏光板13の下端部周囲はルーフトリム4の開口部11の内周に嵌合される。この開口部11の内周には環状のエスカッション19が取り付けられて、該エスカッション19の内周が第2の偏光板13の外周に回転自在に接触している。
【0035】
ところで、本実施形態では第2の偏光板13が開口部11に脱着自在となり、かつ、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間には、所要の間隔Lが設けられて空間部Sが形成されており、これら第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に、密度の異なる複数の液体を混合した混合液が封入された透明ケース20を挿入できるようになっている。
【0036】
以上の構成により本実施形態の採光装置10によれば、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間には所要の間隔Lが設けられているので、車外からの熱や騒音は両偏光板12,13間に形成される空間部Sによって吸収されて車室R内に侵入するを低減し、遮熱性や遮音性に優れた効果を発揮することができる。
【0037】
また、第1の偏光板12と第2の偏光板13とが離間しているため、採光量を調節するために第2の偏光板13を回転した際にも、両偏光板12,13の対向面に摩耗や傷が発生するのを防止できる。
【0038】
更に、第2の偏光板13が開口部11に着脱自在となっており、かつ、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に空間部Sが形成されるので、この空間部Sを物品収納部として有効利用することができる。
【0039】
また、前記第1の偏光板12に設けた枠体15の環状壁部15aは開口部11の内周を囲繞する形で設けられるが、この環状壁部15aは光の非反射壁とされているので、第1の偏光板12を通過した光が環状壁部15aで反射するのを防止若しくは抑制することができる。従って、環状壁部15aでの光の反射により、光の偏光方向が変化して第2の偏光板13を通過してしまうのを防止できる。
【0040】
更に、前記環状壁部15aと、その内周に嵌合された第2の偏光板13の筒部13cとの嵌合部分に、第2の偏光板13の所定回転角の回転を許容する回転係合手段16と、この回転係合手段16の終端部から連続して第2の偏光板13を回転軸方向に着脱案内する軸方向係合手段17と、を設けたので、第2の偏光板13を開口部11から取外す際には、回転係合手段16に沿って第2の偏光板13を回転すると軸方向係合手段17に突き当たり、次にその軸方向係合手段17に沿って第2の偏光板13を回転軸方向に移動することになる。
【0041】
従って、第2の偏光板13の採光量を調節する方向(回転方向)と、第2の偏光板13を取外す方向(回転軸方向)とが異なるので、採光量の調節時に操作する者の意に反して突然に第2の偏光板13が離脱してしまうのを防止できる。
【0042】
また、前記回転係合手段16と前記軸方向係合手段17とが連続して形成されているので、第2の偏光板13の移動方向が回転方向と軸方向とで異なるが、一連の操作で採光量の調節と脱着とを行うことができるので、構造を簡素化することができる。
【0043】
更にまた、本実施形態では第2の偏光板13が開口部11に脱着自在となり、かつ、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に空間部Sが形成されているため、これら第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に、密度の異なる複数の液体を混合した混合液が封入された透明ケース20を挿入配置すれば、第1の偏光板12から導入された光が透明ケース20を通過して第2の偏光板13から車室R内に取り込まれ、このとき、前記透明ケース20内の混合液では密度の差で発生する屈折率の変化で光が乱反射するため、室内をランダムな方向の光で照らして室内の趣を格調高いものとすることができる。
【0044】
図5は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図5は採光装置を縦断した拡大断面図である。
【0045】
本実施形態の採光装置10Aは、図5に示すように基本的に第1実施形態の採光装置10と略同様の構成となり、第1の偏光板12の枠体15から環状壁部15aが垂設されるとともに、第2の偏光板13の周縁部から筒部13cが立ち上げられ、これら環状壁部15aと筒部13cとは、回転係合手段16および軸方向係合手段17を介して回転可能かつ回転軸方向の移動可能に嵌合されており、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に所要の間隔Lをおいて空間部Sが形成されている。
【0046】
そして、本実施形態の採光装置10Aでは、ルーフパネル3とルーフトリム4との間に位置して、前記環状壁部15aの外側に発光体としての蛍光灯21が設けられるとともに、環状壁部15aに前記蛍光灯21の光を枠体15の内方に導入する光透過手段22が設けられている。
【0047】
前記蛍光灯21は、前記環状壁部15aの外側を囲繞するリング状に形成されており、ルーフボウ5に接合した補強ブラケット14に取り付けたホルダー21aによって保持されて、ルーフパネル3とルーフトリム4との間の上下方向略中間部に位置している。また、ルーフトリム4の裏面(図中上面)には蛍光灯21に通電するためのハーネス21bが配索されている。
【0048】
そして、前記蛍光灯21から照射された光は前記光透過手段22を透過して枠体15内に導入された後、第2の偏光板13を通過して車室R内を照射することになるが、その光透過手段22は、前記枠体15が環状壁部15aを含めてアクリルやポリカーボネイト等の透明材料で形成した構成となっている。
【0049】
また、前記蛍光灯21の光は第2の偏光板13の筒部13cをも照射することになるが、この筒部13cは第1実施形態にも示したように透明材料で形成されているため、蛍光灯21の光は筒部13cを透過して第2の偏光板13を通過することになる。
【0050】
従って、本実施形態の採光装置10Aによれば、環状壁部15aを透明材料で形成して蛍光灯21の光を枠体15の内側に導入して、第2の偏光板13から車室R内を照射することができるので、採光装置10Aを有効利用してルームランプを構成できるので、別途にルームランプを設けるよりもコストを低減することができる。
【0051】
図6は本発明の第3実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図6は採光装置を縦断した要部拡大断面図である。
【0052】
本実施形態の採光装置10Bは、図6に示すように基本的に第1実施形態の採光装置10と略同様の構成となり、第1の偏光板12の枠体15から環状壁部15aが垂設されるとともに、第2の偏光板13の周縁部から筒部13cが立ち上げられ、これら環状壁部15aと筒部13cとは、回転係合手段16および軸方向係合手段17を介して回転可能かつ回転軸方向の移動可能に嵌合されており、第1の偏光板12と第2の偏光板13との間に所要の間隔Lをおいて空間部Sが形成されている。また、前記環状壁部15aの外周にはリング状の蛍光灯21が取り付けられている。
【0053】
そして、本実施形態の採光装置10Bでは、前記環状壁部15aに、蛍光灯21の光が第1の偏光板12を通して外部に漏出するのを防止する光漏出阻止手段23が設けられている。
【0054】
前記光漏出阻止手段23は、前記環状壁部15aの前記蛍光灯21よりも第1の偏光板12側に形成される透光低減部としての暗色材料23aによって形成される。
【0055】
即ち、本実施形態では前記蛍光灯21はルーフパネル3とルーフトリム4との間の上下方向略中間部に位置しており、一方、前記環状壁部15aの下端部もルーフパネル3とルーフトリム4との間の上下方向略中間部に位置している関係上、この環状壁部15aと共に枠体15全体を暗色材料23aによって形成してある。
【0056】
従って、本実施形態の採光装置10Bによれば、環状壁部15aを暗色材料23aで形成したので、蛍光灯21から照射される光は環状壁部15aで遮光され、筒部13cのみを透過して第2の偏光板13から車室R内に照射される。
【0057】
このように、蛍光灯21の光は環状壁部15aで遮光されることにより、蛍光灯21の光が上方に透過するのが阻止されるため、第1の偏光板12から外部に光が漏出するのを防止できる。
【0058】
図7は本発明の第4実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図7は採光装置を縦断した要部拡大断面図である。
【0059】
本実施形態の採光装置10Cにあっても、図7に示すように基本的に第1実施形態の採光装置10と略同様の構成となり、第1の偏光板12の枠体15から環状壁部15aが垂設されるが、この環状壁部15aは開口部11の車室R内側部、つまり、ルーフトリム4の開口部11にまで延設され、該環状壁部15aの下端部外周がエスカッション19の内周に回転自在に密接される。
【0060】
そして、第2の偏光板13は、内側透明板13aを円盤状に形成して、該内側透明板13aの上面に偏光フィルム(薄い偏光板でも可)13bを貼り合わせて形成されており、この内側透明板13aの外周部と前記環状壁部15aの下端部内周との間に、回転係合手段16および軸方向係合手段17が設けられて、第2の偏光板13の所定回転角(略90度)の回転が許容されるとともに、該第2の偏光板13の回転軸方向の移動が許容されて着脱案内されるようになっている。
【0061】
また、本実施形態の採光装置10Cにあっても、前記環状壁部15aに、蛍光灯21の光が第1の偏光板12を通して外部に漏出するのを防止する光漏出阻止手段23が設けられるが、本実施形態ではこの光漏出阻止手段23は、前記環状壁部15aに設けられて通過した蛍光灯21の光を第1の偏光板12に対しては遮光する第3の偏光板23bによって形成される。
【0062】
即ち、本実施形態では前記環状壁部15aを透明材料で形成し、その環状壁部15aの内周に前記第3の偏光板23bが貼り付けられるようになっている。この場合にあっても第3の偏光板23bは、偏光フィルムや可撓性を備えた薄い偏光板で形成される。
【0063】
そして、第2の偏光板13は前記初期取付位置で、該第2の偏光板13の偏光方向と第3の偏光板23bを通過した光の偏光方向とを一致させた状態(以下、第2の明状態と称す)か、または、該第2の偏光板13の偏光方向が第3の偏光板23bを通過した光の偏光方向に対して直角方向とさせた状態(以下、第2の暗状態)かに設定される。
【0064】
つまり、前記初期取付位置から第2の偏光板13を前記終端16bから離れる方向に回転して、凸部18が周溝16aの他方の終端16cに位置した時点で、第2の偏光板13は前記初期位置から90度回転され、初期取付位置が第2の明状態である場合には第2の暗状態に設定される一方、初期取付位置で第2の暗状態である場合には第2の明状態に設定される。
【0065】
このとき、第2の偏光板13の前記第1の明状態と第2の明状態とは同一の位置であり、第1の暗状態と第2の暗状態とも同一の位置に設定される。
【0066】
従って、本実施形態の採光装置10Cによれば、環状壁部15aに第3の偏光板23bを設けて、通過した蛍光灯21の光が第1の偏光板12に対しては遮光されるので、第1の偏光板12から外部に光が漏出するのを防止できる。
【0067】
また、第2の偏光板13を周溝16aの両終端16b,16c間で任意の回転位置に設定することにより、第3の偏光板23bと第2の偏光板13を通過した蛍光灯21の光は第2の明状態と第2の暗状態との間の明度を無段階に変化させることができ、ひいては、車室R内の照射量を無段階に調節できる。
【0068】
つまり、本実施形態では、車室外から入射されて第1の偏光板12と第2の偏光板13を通過した光と、蛍光灯21から入射されて第3の偏光板23bと第2の偏光板13とを通過した光と、の両方を調光することができるため、例えば、昼は太陽光を調光できるとともに、夜はルームランプを調光できる。
【0069】
図8は本発明の第5実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図8は採光装置を縦断した要部拡大断面図である。
【0070】
本実施形態の採光装置10Dは、図8に示すように基本的に第4実施形態の採光装置10Cと略同様の構成となり、第1の偏光板12の枠体15から垂設された環状壁部15aの下端部は、ルーフトリム4の開口部11にまで延設されてエスカッション19の内周に回転自在に密接されており、かつ、円盤状に形成された第2の偏光板13の外周部と前記環状壁部15aの下端部内周との間に、回転係合手段16および軸方向係合手段17が設けられる。
【0071】
そして、本実施形態の採光装置10Dにあっても、前記環状壁部15aに光漏出阻止手段23が設けられるが、本実施形態ではこの光漏出阻止手段23は、前記環状壁部15aを透光低減材で形成するとともに、該環状壁部15aに形成されて第2の偏光板13方向に傾斜する傾斜スリット23cによって構成されている。
【0072】
前記傾斜スリット23cは、枠体15の中心に向かって第2の偏光板13の方向(図中下方)に傾斜されており、また、該傾斜スリット23cは環状壁部15aの上部から下部に亘って複数形成されるとともに、周方向には適宜間隔をもって複数箇所で連結されるようになっている。
【0073】
従って、本実施形態の採光装置10Dによれば、蛍光灯21の光は環状壁部15aに形成した傾斜スリット23cを通ったもののみが第2の偏光板13に到達し、そして、この第2の偏光板13を通過して車室R内を照射することになり、前記傾斜スリット23cを通過しない光、つまり、斜め上方となる第1の偏光板12方向の光は、環状壁部15aを形成した透光低減材によって遮光されるため、第1の偏光板12から外部に光が漏出するのを防止できる。
【0074】
ところで、本発明にかかる自動車の採光装置は前記第1〜第5実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ、例えば、採光装置はルーフに形成されたものに限ることなく、通常の窓部、若しくは、その他の車室の外郭を形成する部分に設けることができる。
【0075】
また、発光体は蛍光灯21に限ることなく、その他の照明器、例えばLED(発光ダイオード)や電球などであっても良い。
【0076】
更に、軸方向係合手段17は、本実施形態では縦溝17a、横溝17b、脱着用溝17cによって略コ字状に形成したが、これに限ることなく回転係合手段16を移動した凸部18を一旦停止させることができる回転軸方向に延びる溝を備えた形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態における採光装置を設けた自動車の斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態における採光装置の分解斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態における採光装置を縦断した拡大断面図。
【図4】本発明の第1実施形態における採光装置に用いられる補強部材の取り付け状態を示す要部斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態における採光装置を縦断した拡大断面図。
【図6】本発明の第3実施形態における採光装置を縦断した要部拡大断面図。
【図7】本発明の第4実施形態における採光装置を縦断した要部拡大断面図。
【図8】本発明の第5実施形態における採光装置を縦断した要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0078】
1 自動車
2 ルーフ部
3 ルーフパネル(車外側構成部材)
4 ルーフトリム(車内側構成部材)
10,10A,10B,10C,10D 採光装置
11 開口部
12 第1の偏光板
13 第2の偏光板
13c 筒部
15 枠体
15a 環状壁部
15b 環状壁部の内側面
16 回転係合手段
17 軸方向係合手段
20 透明ケース
21 蛍光灯(発光体)
22 光透過手段
23 光漏出阻止手段
23a 暗色材料
23b 第3の偏光板
23c 傾斜スリット
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の外郭を形成する車外側構成部材と車内側構成部材とを貫通して形成された開口部と、この開口部の車外側に設けられた第1の偏光板と、前記開口部の車内側に回転可能に設けられた第2の偏光板と、を備え、第2の偏光板の回転角に応じて第1の偏光板と第2の偏光板とを通過する採光量が調節されるようにした自動車の採光装置であって、
第2の偏光板を、第1の偏光板との間に所要の間隔をおいて配置するとともに、該第2の偏光板を前記開口部に脱着自在に取り付けたことを特徴とする自動車の採光装置。
【請求項2】
第1の偏光板は、第2の偏光板の外周縁方向に延設された環状壁部を有する枠体を備え、該環状壁部を光の反射を防止若しくは抑制可能な光非反射壁としたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の採光装置。
【請求項3】
第2の偏光板は、前記環状壁部に対して周方向に回転可能かつ回転軸方向に移動可能に嵌合され、この嵌合部分に、第2の偏光板の所定回転角の回転を許容する回転係合手段と、この回転係合手段の終端部から連続して第2の偏光板を回転軸方向に着脱案内する軸方向係合手段と、を設けたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の採光装置。
【請求項4】
車外側構成部材と車内側構成部材との間に位置して前記環状壁部の外側に発光体を設けるとともに、該環状壁部に前記発光体の光を枠体の内方に導入する光透過手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車の採光装置。
【請求項5】
環状壁部に、発光体の光が第1の偏光板を通して外部に漏出するのを防止する光漏出阻止手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の自動車の採光装置。
【請求項6】
光漏出阻止手段は、前記環状壁部の前記発光体よりも第1の偏光板側に形成された透光低減部であることを特徴とする請求項5に記載の自動車の採光装置。
【請求項7】
光漏出阻止手段は、前記環状壁部に設けられて通過した発光体の光を第1の偏光板に対しては遮光する第3の偏光板であることを特徴とする請求項5に記載の自動車の採光装置。
【請求項8】
光漏出阻止手段は、前記環状壁部を透光低減材で形成するとともに、該環状壁部に形成されて第2の偏光板方向に傾斜する傾斜スリットであることを特徴とする請求項5に記載の自動車の採光装置。
【請求項9】
第1の偏光板と第2の偏光板との間に、密度の異なる複数の液体を混合した混合液が封入された透明ケースを挿入したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の自動車の採光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−94294(P2008−94294A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279755(P2006−279755)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】