説明

自動車の操作レバー配設構造

【課題】本発明は、インストルメントパネルの下方に配置される自動車の操作レバーの配設構造において、操作レバーをドアヒンジピラーに設置した場合でも、操作レバーの取付け構造をできるだけ簡略化することができ、また、生産コストの増加も防ぐことができる自動車の操作レバー配設構造を提供することを目的とする。
【解決手段】インパネ1の下部には、一部下方に突出するように取付け延長部30を形成している。そして、この取付け延長部30の車室内方側には、この取付け延長部30を覆うように、ヒンジピラートリム50を、車体前方側から車体後方側にかけて設置している。そして、この取付け延長部30にボンネットオープナー10を取付けている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の操作レバーの配設構造に、特に、インストルメントパネルの下方に配置される自動車の操作レバーの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室前部に設置されるインストルメントパネル(以下、「インパネ」とする。)の下部には、ボンネットオープナーやフューエルオープナー、さらには、トランクオープナー等の開閉体の操作レバーを設置することが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
このように、インパネ下部に開閉体の操作レバーを設置することで、車両走行中の誤操作を防止しつつ、乗員が着座したままでの操作を可能として、安全性を確保しつつ利便性を高めている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−224128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした開閉体の操作レバーをインパネ下部に取付けた場合には、乗員の脚部との干渉が考えられる。そこで、インパネ下部ではなく、インパネ側方下部に位置するドアヒンジピラー部分に、操作レバーを設置することが考えられる。
【0006】
しかし、ドアヒンジピラー部分に単に操作レバーを設置すると、操作レバーのための取付けブラケット等を新たに設定する必要が生じ、操作レバーの取付け構造が複雑化するという問題がある。また、新たに取付けブラケット等を設定することで生産コストが増加するという問題も生じる。
【0007】
そこで、本発明は、インストルメントパネルの下方に配置される自動車の操作レバーの配設構造において、操作レバーをドアヒンジピラーに設置した場合でも、操作レバーの取付け構造をできるだけ簡略化することができ、また、生産コストの増加も防ぐことができる自動車の操作レバー配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の自動車の操作レバー配設構造は、開閉体の操作レバーをインストルメントパネルの下部側方のドアヒンジピラーに配設する自動車の操作レバー配設構造であって、前記インストルメントパネルの下部側部に、下方へ延びて前記操作レバーを取り付ける樹脂製の取付け延長部を形成して、前記操作レバーの周囲及び取付け延長部を覆って、上端がインストルメントパネルに連続的に繋がるヒンジピラートリムを備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、インパネに操作レバーを取り付ける樹脂製の取付け延長部を形成し、その取付け延長部を覆うヒンジピラートリムを備えることで、操作レバーをドアヒンジピラー部分に配設しつつも、インパネに一体成形した取付け延長部で操作レバーの取付け座を構成することができる。
このため、操作レバーを取付けるための取付けブラケットを新たに設けることなく、インパネに取付け延長部を一体成形することで、インパネを利用して操作レバーをドアヒンジピラー部分に設置することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、前記取付け延長部を、前記ドアヒンジピラーに取り付けた金属製の支持ブラケットに固定したものである。
上記構成によれば、取付け延長部は、金属製の支持ブラケットを利用してドアヒンジピラーに固定されることになる。
このため、樹脂製の取付け延長部の取付け剛性を、金属製の支持ブラケットを利用して高めることができる。
よって、樹脂製のインパネの取付け延長部で、操作レバーを取付けたとしても、操作レバーの取付け剛性を高めることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記操作レバーを第一操作レバーとして設定し、該第一操作レバーの下方に第二操作レバーを設置して、該第二操作レバーを、金属製の取付けブラケットで前記ドアヒンジピラーに固定したものである。
上記構成によれば、第一操作レバーは、樹脂製の取付け延長部を利用して取り付け、第二操作レバーは、金属製の取付けブラケットを利用して取り付けることになる。
このため、上方の第一操作レバーについては、新たな取付けブラケットを設定することなくドアヒンジピラー部分に設置しつつ、下方の第二操作レバーについては、取付け剛性を高めてドアヒンジピラー部分に設置することができる。
よって、上下方向に複数の操作レバーを設置するにあたり、新たな取付けブラケットを複数設定することなく、取付け剛性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記第一操作レバーを、第二操作レバーより操作頻度の少ないものに設定したものである。
上記構成によれば、使用頻度に応じて各操作レバーの取付け構造を変更することにより、各操作レバーは、取付け構造の簡略化を図りつつ、使用頻度に応じた取付け剛性を得ることができる。
すなわち、使用頻度の少ない第一操作レバーでは、さほど取付け剛性が要求されないため、インパネの取付け延長部を利用して取付け構造の簡略化を図りつつ、使用頻度の多い第二操作レバーでは、取付け剛性が要求されるため、金属製の取付けブラケットを利用して取付けることで、取付け剛性を得ることができるのである。
よって、各操作レバーの操作頻度に対応して適切な取付け剛性を確保しつつ、取付け構造の簡略化を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記第二操作レバーを取り付ける金属製の取付けブラケットに、前記支持ブラケットを一体的に設けたものである。
上記構成によれば、第二操作レバーを取り付ける金属製の取付けブラケットで、第一操作レバーの取付け延長部を、支持することになる。
このため、第二操作レバーの取付けブラケットを利用して支持ブラケットの大型化を抑制しつつ、第一操作レバーの取付け剛性を高めることができる。
よって、支持ブラケットの簡略化を図りつつも、第一操作レバーの取付け剛性を高めることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記ヒンジピラートリムに前記操作レバーを露出させる開口部を形成すると共に、前記取付け延長部に操作レバーの背面側を覆うように意匠面部を形成したものである。
上記構成によれば、ヒンジピラートリムに大きな開口部を設けたとしても、操作レバーの背面側を取付け延長部の意匠面部で覆うことで、操作レバーの背面側の意匠性を向上することができる。
よって、ヒンジピラートリムに大きな開口部を設けたとしても、操作レバーの背面側にドアヒンジピラー等の金属部材が露出するのを防いで、操作レバー周辺の見栄えを向上できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記操作レバーの前記取付け延長部への取り付け固定を、爪嵌合で行うものである。
上記構成によれば、操作レバーの取付け延長部への取り付け固定を、樹脂部材同士で行なう爪嵌合で行なうことになる。
よって、従来、インパネに爪嵌合によって取り付けていた操作レバーを、そのまま、ドアヒンジピラー側に配設する操作レバーに転用することができるため、より生産コストを高めることなく、操作レバーをドアヒンジピラー部分に配置できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記第一操作レバーをボンネットの操作レバーとして設定して、前記第二操作レバーをドアヒンジピラーよりも車体後方側の開閉体の操作レバーとして設定したものである。
上記構成によれば、上方の第一操作レバーをボンネットの操作レバーとして、下方の操作レバーを車体後方側の開閉体の操作レバーとして設定することにより、車体前方のボンネット側から配索されるケーブルと、車体後方の開閉体側から配索されるケーブルとが、ドアヒンジピラー部分で交差することがないため、各ケーブルの配索を容易に行なうことができる。
よって、各操作レバーのケーブルの配索レイアウト性を高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記第一操作レバーと第二操作レバーの回動操作方向を異ならせたものである。
上記構成によれば、第一操作レバーの回動操作方向と、第二操作レバーの回動操作方向とが異なるため、各操作レバーの取付け部分への操作力の伝達方向を異ならせることができる。
よって、取付け剛性の異なる2つの操作レバーに対して、適切に荷重伝達を行なうことができる。
また、乗員の足元に設置される操作レバーを、いわゆる「めくら操作」する場合でも、2つの操作レバーの操作方向が異なることで、各操作レバーの誤操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、操作レバーを取付けるための取付けブラケットを新たに設けることなく、インパネに取付け延長部を一体成形することで、インパネを利用して操作レバーをドアヒンジピラー部分に設置することができる。
よって、インストルメントパネルの下方に配置される自動車の操作レバーの配設構造において、操作レバーをドアヒンジピラーに設置した場合でも、操作レバーの取付け構造をできるだけ簡略化することができ、また、生産コストの増加も防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0020】
図1は操作レバーを設置したインパネ下部側方の全体斜視図、図2はヒンジピラートリムを取り外した状態のドアヒンジピラー部の斜視図、図3はインパネに形成した取付け延長部の斜視図、図4は取付けブラケット等の斜視図、図5は取付け延長部(一点鎖線)を取付けブラケットに重ね合わせた斜視図である。
【0021】
図1に示すように、操作レバー10,20は、乗員の脚部との干渉を避けるため、運転席のインパネ1下部側方のドアヒンジピラー部2に設置している。具体的には、操作レバー10,20は、インパネ1下部側方で上下方向に延びるドアヒンジピラー部2に上下二つ設置しており、上部の操作レバー10がボンネットオープナーで、下部の操作レバー20がフューエルオープナーである。
【0022】
ドアヒンジピラー部2の周囲には、その上方側に車室前部で車幅方向に広がるインパネ1を設置して、ドアヒンジピラー部2の車体後方側には、フロントドア開口3を形成して、その下方には、車体前後方向に広がるフロアパネル4を設けている。
【0023】
このうち、インパネ1は、上方側にいくにしたがって車室内方側(車体後方側)に膨出するように形成している。これにより、インパネ1下方では乗員の足元空間FSを広く確保しつつ、インパネ1上方ではステアリングホイール5や、メータパネル6等を支持している。そして、これによりデザイン上の見栄えを向上している。
【0024】
そして、本実施形態では、インパネ1の側部下部に下方に延びるように一体成形した取付け延長部30(図2参照)を設けて、この取付け延長部30にボンネットオープナー10を取付けている。
これにより、ボンネットオープナー10の取付け構造の簡略化を図っている。
【0025】
一方、フューエルオープナー20は、車体部材であるドアヒンジビラー7に締結固定した金属製の取付けブラケット40を介して、ドアヒンジピラー7に取付けている。これにより、フューエルオープナー20の取付け剛性を高めている。
【0026】
このようにして、ドアヒンジピラー部2に、ボンネットオープナー10とフューエルオープナー20が、上下方向にそれぞれ位置するように設置している。
【0027】
ボンネットオープナー10が取付けられる取付け延長部30は、図3に示すように、樹脂製のインパネ1のパネル体に一体形成した樹脂製部材で形成しており、略L字断面を有する略矩形片部で構成している。
【0028】
この取付け延長部30は、前部に略車幅方向に延びる前壁部31と、側部に略車体前後方向に延びる側壁部32とを備えている。また、その上下位置には、両者を繋ぐ略三角形状の上部壁33と下部壁34とを備えている。
【0029】
前壁部31は、中央位置にボンネット(図示せず)側から(車体前方側から)配索されるボンネット用操作ケーブルBCを挿通保持するケーブル挿通切欠部35を形成している。また、ケーブル挿通切欠部35の下方には、後述する支持ブラケット43に締結固定される固定穴36を穿設している。
【0030】
側壁部32は、前壁部31から車体後方側に延びるように設けており、後述するボンネットオープナー10のベース体11(図6参照)をいわゆる爪嵌合で係止するための係止穴37,38を、前後に2つ形成している。そして、その表面には段形状の係合段部39を形成している。
【0031】
上部壁33と下部壁34は、側壁部32と前壁部31の上端部同士、及び側壁部32と前壁部31の下端部同士を、それぞれ繋ぐように設けている。このように、上部壁33と下部壁34を設けることにより、取付け延長部30の車室内側面30Aを窪んだような形状としている。
【0032】
取付けブラケット40は、図4に示すように、二つの脚部41a,41bを有するブラケット本体41と、このブラケット本体41に締結固定されるレバー台座42と、このブラケット本体41の上部に接合固定される支持ブラケット43とを備える。
【0033】
ブラケット本体41は、比較的厚みのある金属製のプレート部材をプレス成形によって形成しており、上下方向に離間してドアヒンジピラー7(図2参照)に締結固定される二つの脚部41a,41bと、この二つの脚部41a,41bの間で車幅方向内方側に折曲げられた基部41cとを備える。
【0034】
このように、上下方向に大きく離間した二つの脚部41a,41bで、ドアヒンジピラー7に締結固定することで、ブラケット本体41は、取付けスパンを大きくでき、ドアヒンジピラー7への取付け剛性を高めることができる。
【0035】
レバー台座42は、上下方向に延びるプレス成形した略ハット状部材で構成している。このレバー台座42は、ブラケット本体41の基部41cに対して、上部と下部で締結ボルトSとナットNによって締結固定される。
そして、レバー台座42の中央部には、フューエルオープナー20(図2参照)のレバー本体21を、軸支ピン44を介して軸支している。この軸支ピン44によって、レバー本体21が車体前後方向に延びる下部回動軸LC廻りに回転するように構成している。
【0036】
また、このレバー本体21の上部21aには、略矩形プレート状の樹脂製の操作ノブ22を接合している。さらに、レバー本体21の下部21bには、フューエルリッド(図示せず)側から(下方側から)配索されるリッド用操作ケーブルRCの先端RC1を差込み固定している。
【0037】
また、レバー本体21の下方には、レバー台座42に形成した受け部42aとの間にコイルスプリング45を介装している。このコイルスプリング45は、レバー本体21を、下部回動軸LC廻りに、リッド用操作ケーブルRCを引き上げる方向(上方)へ回動するように付勢している。
【0038】
支持ブラケット43は、ブラケット本体41の上部脚部41aに接合固定されており、断面略L字状の金属製のプレート片によって構成している。
【0039】
この支持ブラケット43には、車幅方向内方側に折り曲げた支持部43aを設けており、この支持部43aに、着脱自在に挿通するネジ部材46を設けている。このネジ部材46で取付け延長部30を支持部43aに締結固定することで、取付け延長部30を確実に支持するように構成している。
【0040】
このように構成した取付け延長部30と取付けブラケット40は、車体側に組付けた状態で、図5に示すような位置関係となる。
【0041】
すなわち、インパネ1の取付け延長部30が上方側に位置して、取付けブラケット40が下方側に位置するように設置して、支持ブラケット43の支持部43aで、取付け延長部30の前壁部31をネジ部材46で締結固定することで、一体のブラケットとなるように構成している。
【0042】
このようなブラケット等30,40…の位置関係となることで、上下方向でボンネットオープナー10とフューエルオープナー20を取付けることができる。
次に、図6〜図9で、各部の詳細構造について、さらに説明する。図6は車室内方側からみたインパネ下方のドアヒンジピラー部の側面図、図7は図6のA−A線矢視断面図、図8は図6のB−B線矢視断面図、図9は図6のC−C線矢視断面図である。
【0043】
図6に示すように、インパネ1側部の下部に、下方に突出するように取付け延長部30を形成している。そして、この取付け延長部30の車室内方側には、取付け延長部30を覆うように、ヒンジピラートリム50を、車体前方側から車体後方側にかけて設置している。
【0044】
このため、ヒンジピラートリム50の上端ライン51とインパネ1との間には、取付け延長部30が位置するため、「隙」が生じることなく、車室内の見栄えを向上している。
【0045】
また、ヒンジピラートリム50には、ボンネットオープナー10を露出させるため、矩形の開口穴52を形成している。これにより、ヒンジピラートリム50で取付け延長部30を覆っても、ボンネットオープナー10は、操作性が確保される。
そして、この開口穴52は、組付け誤差で位置ズレがあった場合でも、ボンネットオープナー10が完全に露出するように、いわゆる「バカ穴」形状としている。
【0046】
もっとも、こうしたバカ穴形状とすることで、ボンネットオープナー10の周囲が車室内に露出しやすくなる。そこで、本実施形態では、取付け延長部30の車室内側面30Aを前述のように窪ませ、この車室内側面30Aを意匠面として利用することで、ボンネットオープナー10の周囲にドアヒンジピラー7の金属面が露出しないように構成している。
【0047】
ヒンジピラートリム50は、前側に設けた取付け凹部53で、取付けキャップ54を介してダッシュパネル60に固定される。具体的には、図9に示すように、ダッシュパネル60に接合した固定ブラケット61にスタッドボルト62を固設して、このスタッドボルト62に、ヒンジピラートリム50の取付け凹部53を挿通して、取付けキャップ54で抜け止め固定することで、ヒンジピラートリム50を、ダッシュパネル60に固定している。
また、ヒンジピラートリム50の後部は、ドアヒンジピラー7の後端部に装着固定されたシーミングウェルト63によって、ドアヒンジピラー7に圧着固定される。
【0048】
こうして、ヒンジピラートリム50は、ドアヒンジピラー7の車室内方側に設置され、ドアヒンジピラー7の車室内での露出を防いでいる。
【0049】
なお、図9において、71はドアヒンジピラーインナであり、72はドアヒンジピラーアウタであり、73はピラーレインであり、また、64はフロアカーペットである。
【0050】
ボンネットオープナー10は、図6に示すように、略L字状のベース体11と、略プレート状のレバー本体12とを備えている。このベース体11、レバー本体12は、共に、樹脂製部材で成形している。
【0051】
ベース体11は、前壁部11aと側壁部11bと水平面部11cを備えており、前壁部11aには、ボンネット用操作ケーブルBCを係止固定する切欠き保持部11dを形成しており、側壁部11bには、図7、図8に示すように、取付け延長部30に係合させるため、複数の係合爪部11fと係合段部11eを形成している。また、水平面部11cの後端には、レバー本体21の回動支点となる軸支穴11gを形成している。
【0052】
レバー本体12は、その後端部にベース体11の軸支穴11gに嵌合する軸支ボス部13を形成している。また、背面側(車体前方側)には、ボンネット用操作ケーブルBCの先端BC1を差込み固定するケーブル固定部14を設けている。
【0053】
このベース体11とレバー本体12は、軸支ボス部13を軸支穴部11gに回動自在に嵌合することにより、ボンネットオープナー10のユニット体として構成している。
【0054】
こうしてユニット体として構成したベース体11とレバー本体12は、ベース体11の側壁部に形成した係合爪部11fと係合段部11eによって、取付け延長部30に対して、いわゆる「爪嵌合」によって固定している。
【0055】
この「爪嵌合」は、図7、図8に示すように、ベース体11に形成した複数の係合爪部11fを、取付け延長部30に形成した係止穴37,38に差し込み、取付け延長部30の側壁部32を挟持させて、さらに、係合段部11fを係止穴37,38に係合させることで、ベース体11を取付け延長部30に嵌合固定して行なう。
こうした爪嵌合による固定構造によると、ボルト・ナットの締結手段のように工具を必要としないため、組付け作業を簡略化することができる。
【0056】
もっとも、爪嵌合の固定構造は、ある程度の板厚が必要であり、且つ、係合爪部11fの弾性変形等の差込み嵌合によって行なうため、樹脂製部材同士でなければ行うことができない。本実施形態では、ボンネットオープナー10のベース体11も、取付け延長部30もいずれも樹脂製部材であるため、爪嵌合によって容易にボンネットオープナー10を取付けることができる。
【0057】
また、ボンネットオープナー10のレバー本体12の回動軸は、図2に示すように、上部回動軸UCとして、略上下方向に延びるように設定している。このため、ボンネットオープナー10のレバー本体12は、図7に示すように、車幅方向内方側を経由して車体後方側に回動操作することになる。
これに対して、フューエルオープナー20のレバー本体21は、下部回動軸LCが車両前後方向に延びるように設定されているため、図2に示すように、車幅方向外方側から内方側に倒れるように回動操作することになる。
このように、本実施形態では、フューエルオープナー20とボンネットオープナー10の回動操作方向が異なるように設定している。
【0058】
これは、二つの操作レバー10,20がそれぞれ異なる開閉体の操作レバーであるため、乗員がいわゆる「めくら操作」した場合に、操作レバーを誤操作しないようにするためである。
【0059】
また、各取付け部分に対する操作荷重の入力方向についても、ボンネットオープナー10の場合には、支持ブラケット43によって、適切に車体前後方向に作用する操作荷重を支持できるのに対して、フューエルオープナー20の場合は、上下方向に配置されたブラケット本体41で、適切に上下方向に作用する操作荷重を支持することができる。
このため、各操作レバー10,20の入力方向に対する支持剛性も、適切に高めることができ、各操作レバー10,20の支持剛性も高めることができる。
【0060】
さらに、各ケーブルBC,RCの配索方向に対しても、適切に操作レバー10,20の操作力の伝達を行なうことができ、各ケーブルBC,RCに操作力を適切に伝達することができる。
すなわち、車体前方側から配索されるボンネット用操作ケーブルBCに対しては、車体前後方向の操作力を伝達しやすく、下方側から配索されるリッド用操作ケーブルRCに対しては、上下方向の操作力を伝達しやすくできる。
【0061】
また、この各ケーブルBC,RCの配索に対しては、図2に示すように、ボンネットオープナー10を上方に設置して、フューエルオープナー20を下方に設置しているため、配索レイアウトを容易にしている。
すなわち、ボンネット用操作ケーブルBCは車体前方側から配索され、リッド用操作ケーブルRCは車体後方側から配索されて途中で上方側に向くように配索されるため、仮に、ボンネットオープナー10を下方に設置した場合には、ボンネット用操作ケーブルBCを避けるように、リッド用操作ケーブルRCを配索する必要が生じて、ケーブルBC,RCのレイアウトスペースを大きく確保する必要がある。
しかし、本実施形態では、ボンネットオープナー10を上方に設置して、フューエルオープナー20を下方に設置しているため、ケーブルBC,RC同士を避けるように配索する必要がないため、こうした問題を解消することができる。
【0062】
次に、このように構成された本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態では、インパネ1の下部側部に、下方へ延びてボンネットオープナー10を取り付ける樹脂製の取付け延長部30を形成して、このボンネットオープナー10の周囲及び取付け延長部30を覆って、上端がインパネ1に連続的に繋がるヒンジピラートリム50を備えている。
【0063】
これにより、ボンネットオープナー10をドアヒンジピラー7部分に配設しつつも、インパネ1に一体成形した取付け延長部30でボンネットオープナー10の取付け座を構成することができる。
このため、ボンネットオープナー10を取付けるための取付けブラケットを新たに設けることなく、インパネ1に一体成形した取付け延長部30を利用して、ボンネットオープナー10をドアヒンジピラー7部分に設置することができる。
よって、インパネ1の下方に配置される自動車の操作レバーの配設構造において、ボンネットオープナー10をドアヒンジピラー7側に設置した場合でも、ボンネットオープナー10の取付け構造をできるだけ簡略化することができ、また、生産コストの増加も防ぐことができる。
【0064】
また、ヒンジピラートリム50が取付け延長部30を覆っているため、インパネ1とヒンジピラートリム50との間には、車室内方側から見て「隙」が生じることがないため、取付け延長部30を利用して見栄えも向上することができる。
【0065】
また、この実施形態では、取付け延長部30を、ドアヒンジピラー7に取り付けた金属製の支持ブラケット43に固定している。
これにより、取付け延長部30は、金属製の支持ブラケット43を利用してドアヒンジピラー7に固定されることになる。
このため、樹脂製の取付け延長部30の取付け剛性を、金属製の支持ブラケット43を利用して高めることができる。
よって、樹脂製のインパネ1の取付け延長部30で、ボンネットオープナー10を取付けたとしても、ボンネットオープナー10の取付け剛性を高めることができる。
【0066】
また、この実施形態では、ボンネットオープナー10の下方に、フューエルオープナー20を設置して、このフューエルオープナー20を、金属製の取付けブラケット40でドアヒンジピラー7に固定している。
これにより、ボンネットオープナー10については、新たな取付けブラケットを設定することなくドアヒンジピラー7部分に設置しつつ、フューエルオープナー20については、取付け剛性を高めてドアヒンジピラー7部分に設置することができる。
よって、上下方向に複数の操作レバー10,20を設置するにあたり、新たな取付けブラケットを複数設定することなく、取付け剛性を確保することができる。
【0067】
また、この実施形態では、使用頻度の少ないボンネットオープナー10を、取付け延長部30で取付け、使用頻度の多いフューエルオープナー20を、取付けブラケットで取付けている。
これにより、各操作レバー10,20は、取付け構造の簡略化を図りつつ、使用頻度に応じた取付け剛性を得ることができる。
すなわち、使用頻度の少ないボンネットオープナー10では、さほど取付け剛性が要求されないため、インパネ10の取付け延長部30を利用して取付け構造の簡略化を図りつつ、使用頻度の多いフューエルオープナー20では、取付け剛性が要求されるため、金属製の取付けブラケット40を利用して取付けることで、取付け剛性を得ることができるのである。
よって、各操作レバー10,20の操作頻度に対応して適切な取付け剛性を確保しつつ、取付け構造の簡略化を図ることができる。
【0068】
また、この実施形態では、フューエルオープナー20を取り付ける金属製の取付けブラケット40に、支持ブラケット43を一体的に設けている。
これにより、フューエルオープナー20を取り付ける金属製の取付けブラケット40で、ボンネットオープナー10の取付け延長部30を支持することになる。
このため、フューエルオープナー20の取付けブラケット40を利用して支持ブラケット43の大型化を抑制しつつ、ボンネットオープナー10の取付け剛性を高めることができる。
よって、支持ブラケット43の簡略化を図りつつも、ボンネットオープナー10の取付け剛性を高めることができる。
【0069】
また、この実施形態では、ヒンジピラートリム50にボンネットオープナー10を露出させる開口穴52を形成すると共に、取付け延長部30の車室内側面30Aを、ボンネットオープナー10の背面側を覆う意匠面として利用している。
これにより、ヒンジピラートリム50に大きな開口穴52を設けたとしても、ボンネットオープナー10の背面側を取付け延長部30で覆うことで、ボンネットオープナー10の背面側の意匠性を向上することができる。
よって、ヒンジピラートリム50に大きな開口穴52を設けたとしても、ボンネットオープナー10の背面側にドアヒンジピラー7が露出するのを防いで、ボンネットオープナー10周辺の見栄えを向上できる。
【0070】
また、この実施形態では、ボンネットオープナー10の取付け延長部30への取り付け固定を、爪嵌合で行っている。
これにより、従来、インパネ1に爪嵌合によって取り付けていたボンネットオープナー10を、そのまま、ドアヒンジピラー7側に配設するボンネットオープナー10に転用することができる
よって、生産コストを高めることなく、ボンネットオープナー10をドアヒンジピラー7側に配置することができる。
【0071】
また、この実施形態では、ボンネットオープナー10を上方に設置して、フューエルオープナー20を下方に設置している。
これにより、車体前方のボンネット側から配索されるボンネット用操作ケーブルBCと、車体後方のフューエルリッドオープナーから配索されるリッド用操作ケーブルRCとが、ドアヒンジピラー部2で交差することがないため、各ケーブルBC,RCの配索を容易に行なうことができる。
よって、各操作レバー10,20の操作ケーブルの配索レイアウト性を高めることができる。
【0072】
また、この実施形態では、ボンネットオープナー10とフューエルオープナー20の回動操作方向を異ならせている。
これにより、ボンネットオープナー10の回動操作方向(前後方向)と、フューエルオープナー20の回動操作方向(上下方向)とが異なるため、各操作レバー10,20の取付け部分への操作力の伝達方向を異ならせることができる。
よって、取付け剛性の異なる2つの操作レバー10,20に対して、適切に荷重伝達を行なうことができる。
また、乗員の足元に設置される操作レバー10,20を、いわゆる「めくら操作」する場合でも、各操作レバー10,20の操作方向が異なることで、各操作レバーの誤操作を防止することができる。
【0073】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の操作レバー、第一操作レバーは、実施形態のボンネットオープナー10に対応し、
以下、同様に、
第二操作レバーは、フェラーリッドオープナー20に対応し、
開口部は、開口穴52に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる自動車の操作レバー配設構造に適用する実施形態を含むものである。
特に、操作レバーについては、この実施形態のものに限定されず、例えば、トランクリッドやバックドア等を開放操作するトランクオープナーや、その他の開閉体の操作レバーであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態の操作レバーを設置したインパネ下部側方の全体斜視図。
【図2】ヒンジピラートリムを取り外した状態のドアヒンジピラー部の斜視図。
【図3】インパネに形成した取付け延長部の斜視図。
【図4】取付けブラケット等の斜視図。
【図5】取付け延長部(一点鎖線)を取付けブラケットに重ね合わせた斜視図。
【図6】車室内方側からみたインパネ下方のドアヒンジピラー部の側面図。
【図7】図6のA−A線矢視断面図。
【図8】図6のB−B線矢視断面図。
【図9】図6のC−C線矢視断面図。
【符号の説明】
【0075】
1…インパネ(インストルメントパネル)
2…ドアヒンジピラー部
7…ドアヒンジピラー
10…ボンネットオープナー
20…フューエルオープナー
30…取付け延長部
40…取付けブラケット
43…支持ブラケット
50…ヒンジピラートリム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体の操作レバーをインストルメントパネルの下部側方のドアヒンジピラーに配設する自動車の操作レバー配設構造であって、
前記インストルメントパネルの下部側部に、下方へ延びて前記操作レバーを取り付ける樹脂製の取付け延長部を形成して、
前記操作レバーの周囲及び取付け延長部を覆って、上端がインストルメントパネルに連続的に繋がるヒンジピラートリムを備えた
自動車の操作レバー配設構造。
【請求項2】
前記取付け延長部を、前記ドアヒンジピラーに取り付けた金属製の支持ブラケットに固定した
請求項1記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項3】
前記操作レバーを第一操作レバーとして設定し、
該第一操作レバーの下方に第二操作レバーを設置して、
該第二操作レバーを、金属製の取付けブラケットで前記ドアヒンジピラーに固定した
請求項1又は2記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項4】
前記第一操作レバーを、第二操作レバーより操作頻度の少ないものに設定した
請求項3記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項5】
前記第二操作レバーを取り付ける金属製の取付けブラケットに、前記支持ブラケットを一体的に設けた
請求項3記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項6】
前記ヒンジピラートリムに前記操作レバーを露出させる開口部を形成すると共に、
前記取付け延長部に操作レバーの背面側を覆うように意匠面部を形成した
請求項1〜5いずれか記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項7】
前記操作レバーの前記取付け延長部への取り付け固定を、爪嵌合で行う
請求項1〜6いずれか記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項8】
前記第一操作レバーをボンネットの操作レバーとして設定して、
前記第二操作レバーをドアヒンジピラーよりも車体後方側の開閉体の操作レバーとして設定した
請求項3〜5いずれか記載の自動車の操作レバー配設構造。
【請求項9】
前記第一操作レバーと第二操作レバーの回動操作方向を異ならせた
請求項3〜6いずれか記載の自動車の操作レバー配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−23416(P2009−23416A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186460(P2007−186460)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】