説明

自動車の歩行者保護構造

【課題】ドライバの視認性を確保しつつ、対象物が当った際のエネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図ることができる自動車の歩行者保護構造の提供を目的とする。
【解決手段】フロントウインド部材1の側部を支持するクラッシャブルフロントピラー4と、クラッシャブルフロントピラー4よりも後側に位置するメインフロントピラー5と、車両用ルーフを形成するとともにメインフロントピラー5の上端部により支持されるルーフパネル2とを有し、クラッシャブルフロントピラー4とメインフロントピラー5との間にはサイドウインド部材6が配設され、メインフロントピラー5と比較してクラッシャブルフロントピラー4が低剛性構造に形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントウインド部材(フロントウインドガラス)の側部を支持するフロントピラーを備えたような自動車の歩行者保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントピラーは車体剛性を確保する目的で高剛性に形成されるのが一般的であり、このように、フロントピラーが高剛性であると、歩行者などの対象物がフロントピラーの上部に当った場合のエネルギ吸収量を確保することができない。
そこで、対象物が当った場合のエネルギ吸収量を確保する目的で、フロントピラーを低剛性にすると、車体剛性の確保が困難となる。
上述のフロントピラーに関し、特許文献1には、フロントピラーアウタとフロントピラーレインフォースメントとの間に衝撃吸収部材を設け、対象物がフロントピラーに当った際、上記衝撃吸収材を変形させて、衝撃を吸収すべく構成したものが開示されている。
【0003】
しかしながら、この特許文献1に開示されたものは、通常のフロントピラーと比較して、衝撃吸収部材を設けた分だけ、フロントピラーが大型化するので、ドライバの視認性悪化を招く問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−163252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、フロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、上記クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーと、車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラーの上端部により支持されるルーフパネルとを有し、上記クラッシャブルフロントピラーと上記メインフロントピラーとの間にはサイドウインド部材が配設され、上記メインフロントピラーと比較して上記クラッシャブルフロントピラーが低剛性構造に形成されることで、ドライバの視認性を確保しつつ、対象物が当った際のエネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図ることができる自動車の歩行者保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による自動車の歩行者保護構造は、フロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、上記クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーと、車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラーの上端部により支持されるルーフパネルとを有し、上記クラッシャブルフロントピラーと上記メインフロントピラーとの間にはサイドウインド部材が配設され、上記メインフロントピラーと比較して上記クラッシャブルフロントピラーが低剛性構造に形成されたものである。
【0007】
上記構成によれば、クラッシャブルフロントピラーを低剛性構造と成したので、対象物が該クラッシャブルフロントピラーに当った際のエネルギ吸収量の向上を図ることができる。
また、フロントピラーをフロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、該クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーとで構成したので、後側に位置するメインフロントピラーについては剛性構造を採用することができ、これにより、車体剛性の確保を図ることができる。
要するに、ドライバの視認性を確保しつつ、エネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記クラッシャブルフロントピラーは、フロントウインド部材の側端部を支持するフロントウインドマウント部材とサイドウインド部材の前端部を支持するサイドウインドマウント部材とで構成されるウインド支持部材で構成されたものである。
上述のフロントウインドマウント部材は、合成樹脂で形成してもよく、また、サイドウインドマウント部材はゴム部材で構成してもよい。
【0009】
上記構成によれば、クラッシャブルフロントピラーは、板金製のピラーインナおよびピラーアウタから成る閉断面構造のフロントピラーとは異なり、フロントウインドマウント部材とサイドウインドマウント部材とで構成されるので、対象物がクラッシャブルフロントピラーに当った際のエネルギ吸収量のさらなる向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記クラッシャブルフロントピラーはその上端部でルーフパネルを支持しており、該クラッシャブルフロントピラー上端部とルーフパネルとの連結位置からメインフロントピラー上端部とルーフパネルとの連結位置までの構造を、上記クラッシャブルフロントピラーの後方移動が可能な脆弱構造と成したものである。
上述の脆弱構造としては、丸孔や長孔などの開口部やスリットを設ける構造を採用してもよく、また、肉厚を薄くする構造を採用してもよい。
【0011】
上記構成によれば、車外から対象物がクラッシャブルフロントピラーに当った際、該脆弱構造によりクラッシャブルフロントピラーが後方へ確実に移動するので、衝突エネルギを吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記サイドウインド部材と上記メインフロントピラーとの取付け構造を、上記クラッシャブルフロントピラーの後方への変形に伴って上記サイドウインド部材のメインフロントピラーによる支持が解除され上記サイドウインド部材がメインフロントピラーの車外方へ移動可能な構造と成したものである。
【0013】
上記構成によれば、クラッシャブルフロントピラーの車両後方への変形に伴って、サイドウインド部材がメインフロントピラーの車外方へ移動するので、対象物の衝突時において、さらなるエネルギ吸収効率の向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、左右一対のメインフロントピラーの上端部相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面構造が設けられたものである。
【0015】
上記構成によれば、メインフロントピラーの上端部相互間を閉断面構造で連結したので、車体剛性なかんずくルーフ剛性を確保することができる。
また、メインフロントピラーはクラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置しており、閉断面構造は、この後側に位置するメインフロントピラーの上端部相互間を連結するものであるから、対象物がルーフパネル前端部に当った時、上述の閉断面構造はルーフパネル前端側の車室内方への変形を阻害しない。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、フロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、上記クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーと、車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラーの上端部により支持されるルーフパネルとを有し、上記クラッシャブルフロントピラーと上記メインフロントピラーとの間にはサイドウインド部材が配設され、上記メインフロントピラーと比較して上記クラッシャブルフロントピラーが低剛性構造に形成されているので、ドライバの視認性を確保しつつ、対象物が当った際のエネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の歩行者保護構造を備えた自動車の斜視図
【図2】図1のA‐A線矢視断面図
【図3】自動車の左側上部におけるルーフサイド部の斜視図
【図4】図3のフロントヘッダ配設部で断面して示す正面図
【図5】図1のB‐B線矢視断面図
【図6】図1のC‐C線矢視断面図
【図7】図6の部分拡大平面図
【図8】メインフロントピラー下部と車体部材との関連構造を示す斜視図
【図9】カウル部およびその周辺構造を示す側面図
【図10】図2に対応する部位のエネルギ吸収時の側面図
【図11】図5に対応する部位のエネルギ吸収時の側面図
【図12】図7に対応する部位の外部荷重入力時の平面図
【図13】フロントヘッダ接合構造の他の実施例を示す車両左側上部におけるルーフサイド部の斜視図
【図14】図13のフロントヘッダ配設部で断面して示す正面図
【図15】空調用ダクトの配設構造を示す側面図
【図16】サイドウインド部材とメインフロントピラーとの取付け構造の他の実施例を示す平面図
【図17】サイドウインド部材の支持構造の他の実施例を示す平面図
【図18】自動車の歩行者保護構造の他の実施例を示す斜視図
【図19】図18のD‐D線矢視断面図
【図20】図19のE‐E線矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
ドライバの視認性を確保しつつ、対象物が当った際のエネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図るという目的を、フロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、上記クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーと、車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラーの上端部により支持されるルーフパネルとを有し、上記クラッシャブルフロントピラーと上記メインフロントピラーとの間にはサイドウインド部材が配設され、上記メインフロントピラーと比較して上記クラッシャブルフロントピラーが低剛性構造に形成するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、自動車の歩行者保護構造を示し、図1は車両の外観斜視図、図2は図1のA‐A線矢視断面図、図3はルーフパネルおよびフロントウインド部材(フロントウインドガラス)を取外した状態で示す車両左側上部におけるルーフサイド部の斜視図、図4は図3のフロントヘッダ配設部で断面して示す正面図、図5は図1のB‐B線矢視断面図、図6は図1のC‐C線矢視断面図である。
【0020】
図1において、車両前部のフロントウインド部材としてのフロントウインドガラス1の上端部を支持するルーフパネル2を設ける一方、車両前部のフロントピラー3を、前側に位置して上述のフロントウインドガラス1の側部を支持する低剛性のクラッシャブルフロントピラー4と、このクラッシャブルフロントピラー4よりも後側に位置する高剛性のメインフロントピラー5とで構成している。これら前後のフロントピラー4,5は車両の前後方向に離間配置されている。
ここで、上述のルーフパネル2は、車両用ルーフを形成すると共に、上記メインフロントピラー5の上端部により支持されるものである。
【0021】
上述のクラッシャブルフロントピラー4は、ルーフパネル2の前端部およびフロントウインドガラス1の側端部を支持するもので、該クラッシャブルフロントピラー4は、インナパネル、アウタパネルを有さない非閉断面構造で、かつ、メインフロントピラー5と比較して低剛性構造に形成されている。
上述のクラッシャブルフロントピラー4よりも車両の後方位置においてルーフパネル2を支持するメインフロントピラー5は、閉断面構造の高剛性に形成されている。
また、上述のクラッシャブルフロントピラー4と上述のメインフロントピラー5との間には、サイドウインド部材としての縦方向に細長い略三角形状のサイドウインドガラス6が配設されている。
ここで、上記クラッシャブルフロントピラー4はその上端部でルーフパネル2を支持しており、該クラッシャブルフロントピラー4上端部とルーフパネル2との連結位置からメインフロントピラー5上端部とルーフパネル2との連結位置までの構造を、上記クラッシャブルフロントピラー4の後方移動が可能な脆弱構造と成している。
上述の脆弱構造は、丸孔や長孔などの開口部やスリットを設ける構造を採用してもよく、所定部の肉厚を薄く形成する構造を採用してもよい。
【0022】
図1において、7はボンネット、8はドアサッシュ9およびドアガラス10を備えたサイドドアである。
【0023】
図2に示すように、ルーフパネル2の前端部はヘミング加工されたヘミング部2aに形成されており、このルーフパネル2の前端部でヘッダパネル11の一部を介してフロントウインドガラス1を支持している。
【0024】
ルーフパネル2前端部のフロントウインドガラス1を支持している部位αよりも所定距離後方位置βに、ルーフパネル2をその下部から支持する閉断面構造としてのフロントヘッダ12を設けている。
【0025】
上述のフロントヘッダ12は、上側に位置する断面ハット形状のフロントヘッダアッパ13と、下側に位置する断面逆ハット形状のフロントヘッダロア14とを接合固定して、車幅方向に延びる閉断面15を形成した剛性部材であって、このフロントヘッダ12は、図3、図4に示すように、車幅方向に延びて左右一対のメインフロントピラー5,5の上端部を連結するように構成している。
【0026】
つまり、図3に示すように、左右一対のメインフロントピラー5,5(但し、図面では車両左側のメインフロントピラー5のみを示すが、車両右側のメインフロントピラーは左側のそれと左右対称に形成されている)の上端相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面構造のフロントヘッダ12を、上述の後方位置βに設け、フロントウインドガラス1上端部とルーフパネル2前端部との連結位置(部位α参照)に車外から対象物が当った際、当該部位αの車室内側への変形を許容し、エネルギ吸収量の向上を図ると共に、フロントヘッダ12を閉断面構造と成すことで、ルーフ強度を確保すべく構成したものである。
また、閉断面構造のフロントヘッダ12と閉断面構造のメインフロントピラー5とを連結することで、ロールバーに相当する強度を確保するように構成している。
【0027】
図2において、フロントヘッダ12のフロントヘッダロア14下方に設けられた上述のヘッダパネル11は、フロントヘッダ12の後側接合フランジ部12aに接合固定される接合部11aと、フロントウインドガラス1の上端部を接着する接着部11b(フランジ部)と、これら両者11b,11aを前後方向に連結する連結部11cと、を一体形成したものである。
そして、上述のフロントヘッダ12の下面とヘッダパネル11の上面との間には、上述のルーフパネル2の下方への変形を許容する空間16が設けられており、これにより、上方からの荷重入力時に、フロントウインドガラス1上部およびルーフパネル2前部がより一層変形しやすくなり、エネルギ吸収量のさらなる向上を図るように構成している。
【0028】
ここで、上述のフロントヘッダ12は、図2に示すように、接着剤17を用いてルーフパネル2の下面に接着されており、ヘッダパネル11の接着部(フランジ部)には同図に示すように、接着剤18を用いてフロントウインドガラス1の上端部が接着されており、さらにルーフパネル2前端のヘミング部2aとヘッダパネル11との間は、該ヘッダパネル11側に設けたシール部材19でシールされている。
図2において、20はルーフトリム(いわゆるトップシーリング)である。
【0029】
次に、図3、図4を参照して、ルーフサイド部の構成について説明する。
上述のルーフパネル2の側端部に沿って車両の前後方向に延びるルーフサイドレール21を設けている。このルーフサイドレール21は、ルーフサイドレールアウタ22と、ルーフサイドレールレインフォースメント23と、ルーフサイドレールインナ24と、を上下の接合フランジ部21a,21bで接合固定して、車両の前後方向に延びるルーフサイド閉断面25を備えた車体剛性部材である。
【0030】
ルーフサイドレール21の上側の接合フランジ部21aの上部において、ルーフパネル2側部の段下げ部2bとルーフサイドレールアウタ22との間には、図4に示すように、凹状のモヒカンレール部(凹部)を形成し、このモヒカンレール部にはガーニッシュ26(いわゆるモヒカンモール)を配設している。
また、上述のルーフサイドレール21の下側の接合フランジ部21bには、図4に示すように、シーミングウェルト27を嵌着し、このシーミングウェルト27で、サイドドア8閉時のルーフサイドレール21とドアサッシュ9との間をシールするように構成している。
【0031】
一方、図4に示すように、ドアサッシュ9側にもシーミングウェルト28を取付けて、このシーミングウェルト28で、サイドドア8閉時のルーフサイドレールアウタ22とドアサッシュ9との間をシールするように構成している。つまり、ボディ、ドア間は2つのシーミングウェルト27,28で二重にシールされるものである。
【0032】
図4に示すように、上述のフロントヘッダアッパ13の車幅方向側部は、1段目の段下げ部13aと、この1段目の段下げ部13aからさらに下方に段下げ形成された2段目の段下げ部13bとを有し、この2段目の段下げ部13bをルーフサイドレールインナ24に接合固定し、また、フロントヘッダアッパ13の1段目の段下げ部13aには、フロントヘッダロア14の車幅方向側端部の折曲げ部14aを接合固定している。
【0033】
図3に示すように、上述のヘッダパネル11はその接合部11aがフロントヘッダ12の後側接合フランジ部12aに接合固定される一方で、該ヘッダパネル11の車幅方向の端部11dは、ルーフサイドレール21と非接合構造に形成されている。つまり、ヘッダパネル11の端部11dは、ルーフサイドレール21と接合されることなく、両者11d,21間は外部荷重入力時のエネルギ吸収を図る目的で互に離間している。
【0034】
ところで、図1、図3、図6に示すように、上述のルーフサイドレール21はメインフロントピラー5と前後方向に連続している。
すなわち、図3、図6に示すように、ルーフサイドレールアウタ22はメインフロントピラーアウタ32と連続し、ルーフサイドレールレインフォースメント23はメインフロントピラーレインフォースメント33と連続し、ルーフサイドレールインナ24はメインフロントピラーインナ34と連続し、ルーフサイド閉断面25はフロントピラー閉断面35と連続している。
【0035】
同様に、ルーフサイドレール21の上下の接合フランジ部21a,21bは、メインフロントピラー5の前後の接合フランジ部5a,5bと連続している。
但し、ルーフサイドレール21の上下左右方向の幅は、メインフロントピラー5の上下左右方向の幅よりも大きく形成されている。
また、ルーフサイドレール21がメインフロントピラー5に切換る部分においては、図3に示すように、ルーフサイドレールアウタ22の一部を切欠いて切欠き部30と、ルーフサイドレールアウタ22の突出部31とが形成されている。
【0036】
図3、図5に示すように、上述の突出部31の下部は閉断面構造になっておらず、この突出部31に上方からの外部荷重が入力した時、該突出部31の下方への変形を許容するように構成している。
【0037】
図3、図6、図7に示すように、サイドウインドガラス6の後部とメインフロントピラー5との取付け構造は、上述のクラッシャブルフロントピラー4の後方への変形に伴って、サイドウインドガラス6の後部がメインフロントピラー5のメインフロントピラーアウタ32の車外方へ移動可能な構造と成っている。
【0038】
すなわち、サイドウインドガラス6はメインフロントピラー5の前側の接合フランジ部5aの車外側面に接合固定されたブラケット36と接着剤37とを介して取付けられるが、このブラケット36は、基部36aと、この基部36a前端に対してその前端が車両前方に位置する傾斜部36bと、ウインド取付け部36cとを一体形成して、平面視略コの字状に形成されており、図12に示すように、サイドウインドガラス6に図示矢印方向の外力(車両前方から後方に作用する外力)が入力された時、ブラケット36は基部36aの前端を支点として傾斜部36bが後方に変形し、この傾斜部36bの回動軌跡によりウインド取付け部36cが車外側へ変位して、サイドウインドガラス6をメインフロントピラー5におけるメインフロントピラーアウタ32の車外方へ移動可能な構造と成っており、これにより対象物の衝突時におけるさらなるエネルギ吸収効率の向上を図るように構成している。
【0039】
上述のコの字状のブラケット36は、メインフロントピラー5に沿って上下方向に延びているが、図3に示すように、メインフロントピラー5の上端まで延びることなく、該ブラケット36の上端はメインフロントピラー5の上端近傍までに設定されており、このブラケット36の上端と、上述のヘッダパネル11における接着部11b(フランジ部)の車幅方向外端部との間は、アール形状のコーナ部材38(いわゆる繋ぎ部材)で連結されている。
【0040】
ところで、上述のクラッシャブルフロントピラー4は、図6に平面図で示すように、フロントウインドガラス1の側端部を支持するフロントウインドマウント部材としての樹脂製のマウントフレーム40と、サイドウインドガラス6の前端部を支持するサイドウインドマウント部材としてのゴム製のマウントラバー41(ラバー部材)とで構成されるウインド支持部材42で構成されている。
【0041】
上述のマウントフレーム40は前側に位置する筒部40aと、後側に位置する平板部40bとを一体形成したもので、マウントラバー41にインサートされたボルト43とナット44とを用いて、上述の平板部40bにマウントラバー41が取付けられている。
また、フロントウインドガラス1の側端部は、接着剤45を用いてマウントフレーム40における筒部40aの車外側の面とマウントラバー41との間に支持されており、サイドウインドガラス6の前端部はマウントラバー41の凹溝41a内に支持されている。
【0042】
図6において、46はクラッシャブルフロントピラー4の車室内側に設けられたピラートリム、47はメインフロントピラー5の車室内側に設けられたピラートリムである。
【0043】
図8はメインフロントピラー5の下部と車体部材との関連構造を示す斜視図である。
この実施例1では、上述のメインフロントピラー5は、カウル部60の車幅方向側部から上方に立上がるように形成されている。
すなわち、カウル部60を形成するダッシュアッパパネル61を設け、このダッシュアッパパネル61の車幅方向側部には、ヒンジピラーアウタ62と、ヒンジピラーレインフォースメント63と、ヒンジピラーインナ64とを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面65を備えたヒンジピラー66を設けている。
このヒンジピラー66はサイドドア8(図1参照)の前端部を枢支する車体剛性部材であって、図8に示すように、該ヒンジピラー66は上述のメインフロントピラー5と連続して形成される。
【0044】
詳しくは、ヒンジピラーアウタ62がメインフロントピラー5のメインフロントピラーアウタ32と連続し、ヒンジピラーレインフォースメント63がメインフロントピラー5のメインフロントピラーレインフォースメント33と連続し、ヒンジピラーインナ64がメインフロントピラー5のメインフロントピラーインナ34と連続し、ヒンジピラー閉断面65がフロントピラー閉断面35と連続するように形成されている。
同様に、ヒンジピラー66の前後の接合フランジ部66a,66bがメインフロントピラー5の前後の接合フランジ部5a,5bと連続するように形成されている。
但し、ヒンジピラー66の車両前後方向の長さ、および車幅方向の幅は、メインフロントピラー5の車両前後方向の長さ、および車幅方向の幅よりも大きく形成されている。
図8において、67はホイールエプロン、68はホイールエプロンレインフォースメントである。
【0045】
図9はカウル部60およびその周辺構造を示す側面図であって、上述のダッシュアッパパネル61の下部にはダッシュロアパネル69を設ける一方、ダッシュアッパパネル61の前側フランジ部には、ボンネット7との間をシールするシール部材70を嵌着し、ダッシュアッパパネル61の後側フランジ部61aにはクラッシャブルカウルフレーム71を取付けている。
このクラッシャブルカウルフレーム71は上述の後側フランジ部61aからフロントウインドガラス1の下端対応位置まで車両前方へ略水平に延びる部材であって、該クラッシャブルカウルフレーム71の前後方向中間部には、衝突エネルギを吸収する目的で脆弱部としての波状部71aが一体形成されている。
また、上述のクラッシャブルカウルフレーム71の前端部には、ボルト72、ナット73を用いて、マウントフレーム40Aが取付けられている。このマウントフレーム40Aは後側に位置する筒部40Aaと、前側に位置する平板部40Abとを一体形成した合成樹脂製のフロントウインドマウント部材であって、このマウントフレーム40Aは図6で示したマウントフレーム40と一体で形成してもよく、または別体で形成してもよい。
そして、上述のマウントフレーム40Aには,接着剤74を用いて、フロントウインドガラス1の傾斜下端部を取付けている。
【0046】
図9において、75はインストルメントパネルで、このインストルメントパネル75のフロントウインドガラス1の傾斜下部と対向する部分には、デフロスタ吹出し口76を配設し、該デフロスタ吹出し口76にはデフロスタダクト77を連通接続すると共に、このデフロスタダクト77をインストルメントパネル75とクラッシャブルカウルフレーム71との間を介して、図示しない空調ユニットに接続している。
なお、図9において、78はワイパ装置である。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0047】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
ルーフパネル2の下部において車幅方向に延びる閉断面構造のフロントヘッダ12と、車両のサイド部において前後方向に延び、かつ、閉断面構造の左右一対のルーフサイドレール21,21とを連結し、これら左右一対のルーフサイドレール21,21は、閉断面構造の左右一対のメインフロントピラー5,5と連続しているので、車体剛性の向上を図ることができ、これら各要素12,21,5によりロールバーに相当する強度を確保することができる。
【0048】
一方で、図10に示すように、フロントウインドガラス1の上端部とルーフパネル2の前端部との連結位置およびその周辺に車外から対象物が当った場合、フロントヘッダ12はルーフパネル2の前端部から後方に離間した位置に存在するので、このフロントヘッダ12よりも前側のルーフパネル2は、ヘッダパネル11およびフロントウインドガラス1を伴って車室内方向へ変形する。この場合、上述のヘッダパネル11は図10に実線で示すように前低後高状に変形する。
【0049】
各要素1,2,11,20が図10の仮想線状態(非衝突時のノーマル状態)から同図に実線で示すように変形するので、衝突エネルギを吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
【0050】
対象物がサイドウインドガラス6の上端部とルーフサイドレール21のルーフサイドレールアウタ22との連続部位のように、車幅方向の左右何れかのサイド部にオフセットして衝突した場合、ルーフサイドレールアウタ22の前端部には切欠き部30と突出部31とが形成されており、該突出部31は外部荷重の入力時に下方へ変形しやすく構成されているので、この突出部31が図11の仮想線状態(ノーマル状態)から同図に実線で示すように変形して、衝突エネルギを吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
【0051】
対象物が図1,図6に示すクラッシャブルフロントピラー4の上部に当った際、このクラッシャブルフロントピラー4は非閉断面構造かつ低剛性に構成されているので、衝突エネルギを適切に吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
上述の対象物とクラッシャブルフロントピラー4との衝突により、該クラッシャブルフロントピラー4の後方への変形に伴って、図12に示すように、サイドウインドガラス6に対して車両前方から後方に作用する外力が付勢されると、図12に示すブラケット36の傾斜部36bの回動軌跡によりウインド取付け部36cが車外側へ変位し、サイドウインドガラス6のメインフロントピラー5による支持が解除され上記サイドウインドガラス6がメインフロントピラー5のメインフロントピラーアウタ32の車外方へ移動するので、対象物の衝突時におけるさらなるエネルギ吸収効率の向上を図ることができる。
【0052】
このように、図1〜図12で示した実施例1の自動車の歩行者保護構造は、フロントウインドガラス1の側部を支持するクラッシャブルフロントピラー4と、上記クラッシャブルフロントピラー4よりも後側に位置するメインフロントピラー5と、車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラー5の上端部により支持されるルーフパネル2とを有し、上記クラッシャブルフロントピラー4と上記メインフロントピラー5との間にはサイドウインドガラス6が配設され、上記メインフロントピラー5と比較して上記クラッシャブルフロントピラー4が低剛性構造に形成されたものである(図1参照)。
【0053】
この構成によれば、クラッシャブルフロントピラー4を低剛性構造と成したので、対象物が該クラッシャブルフロントピラー4に当った際のエネルギ吸収量の向上を図ることができる。
また、フロントピラー3をフロントウインドガラス1の側部を支持するクラッシャブルフロントピラー4と、該クラッシャブルフロントピラー4よりも後側に位置するメインフロントピラー5とで構成したので、後側に位置するメインフロントピラー5については剛性構造を採用することができ、これにより、車体剛性の確保を図ることができる。
要するに、ドライバの視認性を確保しつつ、エネルギ吸収量の向上と、車体剛性の確保との両立を図ることができる。
また、上記クラッシャブルフロントピラー4は、フロントウインドガラス1の側端部を支持するフロントウインドマウント部材(マウントフレーム40参照)とサイドウインドガラス6の前端部を支持するサイドウインドマウント部材(マウントラバー41参照)とで構成されるウインド支持部材42で構成されたものである(図6参照)。
【0054】
この実施例においては、上述のフロントウインドマウント部材(マウントフレーム40)は、合成樹脂で形成されており、また、サイドウインドマウント部材(マウントラバー41参照)はゴム部材で構成されているが、クラッシャブルフロントピラー4を低剛性に形成するものであれば、これらの材質に限定されるものではない。
【0055】
この構成によれば、クラッシャブルフロントピラー4は、板金製のピラーインナおよびピラーアウタから成る閉断面構造のフロントピラーとは異なり、フロントウインドマウント部材(マウントフレーム40)とサイドウインドマウント部材(マウントラバー41)とで構成されるので、対象物がクラッシャブルフロントピラー4に当った際のエネルギ吸収量のさらなる向上を図ることができる。
加えて、クラッシャブルフロントピラー4はその上端部でルーフパネル2を支持しており、該クラッシャブルフロントピラー4上端部とルーフパネル2との連結位置からメインフロントピラー5上端部とルーフパネル2との連結位置までの構造を、クラッシャブルフロントピラー4の後方移動が可能な脆弱構造と成したものである。
この構成によれば、車外から対象物がクラッシャブルフロントピラー4やその周辺に当った際、脆弱構造によりクラッシャブルフロントピラー4が後方へ移動するので、衝突エネルギを吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
さらに、上記サイドウインドガラス6と上記メインフロントピラー5との取付け構造を、上記クラッシャブルフロントピラー4の後方への変形に伴って上記サイドウインドガラス6のメインフロントピラー5による支持が解除され上記サイドウインドガラス6がメインフロントピラー5の車外方へ移動可能な構造と成したものである(図7,図12参照)。
【0056】
この構成によれば、クラッシャブルフロントピラー4の車両後方への変形に伴って、サイドウインドガラス6がメインフロントピラー5の車外方(詳しくは、メインフロントピラー5におけるメインフロントピラーアウタ32の車幅方向外方)へ移動するので、対象物の衝突時において、さらなるエネルギ吸収効率の向上を図ることができる。
加えて、左右一対のメインフロントピラー5,5の上端部相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面構造(フロントヘッダ12)が設けられたものである(図3参照)。
【0057】
この構成によれば、メインフロントピラー5,5の上端部相互間を閉断面構造としてのフロントヘッダ12で連結したので、車体剛性なかんずくルーフ剛性を確保することができる。
また、メインフロントピラー5,5はクラッシャブルフロントピラー4,4よりも後側に位置しており、フロントヘッダ12は、この後側に位置するメインフロントピラー5,5の上端相互間を連結するものであるから、対象物がルーフパネル2の前端部に当った時、上述のフロントヘッダ12はルーフパネル2前端側の車室内方への変形を阻害しない。
【0058】
図13、図14は、フロントヘッダ12とルーフサイドレール21との接合構造の他の実施例を示し、図14に示すように、フロントヘッダアッパ13の車幅方向の端部13cを、ルーフサイドレール21の上側の接合フランジ部21aの下面に接合固定すると共に、フロントヘッダロア14の車幅方向端部に位置する折曲げ部14aを、ルーフサイドレールインナ24に接合固定したものである。
【0059】
このように構成すると、図3、図4で示した先の実施例に対してフロントヘッダ12の閉断面15の拡大を図ることができるので、車体剛性なかんずくルーフ剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0060】
図13、図14で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図13、図14において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
図15は、空調用ダクトの配設構造を示し、ルーフパネル2の前端部でヘッダパネル11の一部を介してフロントウインドガラス1を支持する部位αと、ルーフパネル2のフロントヘッダ12配設部位(後方位置β参照)との間において、ルーフパネル2と該ルーフパネル2よりも下側に位置するヘッダパネル11との間に、その余剰スペースを有効利用して、空調用のダクト48を配設したものである。
【0062】
この空調用のダクト48はルーフパネル2とヘッダパネル11との間を、車幅方向に延びると共に、車幅方向の左右何れかの端部は、メインフロントピラー5におけるメインフロントピラーインナ34とピラートリム47との空間部(図6参照)に沿って上下方向に延び、インストルメントパネル75(図9参照)の下部位置から再び車幅方向に延びて、インパネ下部中央に設けられた空調ユニット(図示せず)に接続される。
【0063】
図15に示すように、上述の空調用ダクト48には吹出し口48aを、車幅方向に離間させて複数設けると共に、ヘッダパネル11の対応部にも吹出し口11eを、車幅方向に離間させて複数設けている。
このように、図15に示す実施例においては、上記ルーフパネル2前端部でフロントウインドガラス1を支持する部位αと、ルーフパネル2のフロントヘッダ12配設部位との間におけるルーフパネル2と、該ルーフパネル2より下側に位置するヘッダパネル11との間に、空調用のダクト48が配設されたものである(図15参照)。
【0064】
この構成によれば、ルーフパネル2前端部のフロントウインドガラス1支持部と、ルーフパネル2のフロントヘッダ12配設部との間のスペースを有効利用して空調用のダクト48を配設することができる。
【0065】
図16はサイドウインドガラス6とメインフロントピラー5との取付け構造の他の実施例を示し、図7で示した実施例においては、平面視コの字状のブラケット36を用いたが、図16に示すこの実施例では、平面視Z字状のブラケット36を用いたものである。
すなわち、このブラケット36は、メインフロントピラー5の前側の接合フランジ部5aの車外側面に接合固定される基部36dと、この基部36d後端に対してその前端が車両前方に、かつ外方に位置する傾斜部36eと、ウインド取付け部36fとを一体形成して、平面視略Z字状に形成されている。
このように構成しても、クラッシャブルフロントピラー4の後方への変形に伴って、サイドウインドガラス6のメインフロントピラー5による支持が解除され上記サイドウインドガラス6の後部がメインフロントピラーアウタ32の車外方へ移動可能となるので、対象物の衝突時におけるエネルギ吸収効率のさらなる向上を図ることができる。
【0066】
図16で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、図7の実施例と同様であるから、図16において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0067】
図17はサイドウインドガラス6後端部の支持構造の他の実施例を示し、ボルト79がインサートされたゴム製のマウントラバー80を設け、上述のボルト79をナット81でメインフロントピラー5の前側の接合フランジ部5aに締結することにより、該マウントラバー80をメインフロントピラー5に取付け、このマウントラバー80の車両前側に形成した凹溝80aにサイドウインドガラス6の後端部を嵌着固定したものである。
このように構成しても、サイドウインドガラス6を適切に支持することができる。なお、該サイドウインドガラス6の前側の支持構造については、図6のそれと同様であるから、図17において、図6と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例2】
【0068】
図18〜図20は自動車の歩行者保護構造の他の実施例を示すものである。
先の実施例1においては、メインフロントピラー5はカウル部から立上がるように形成したが、この実施例2においては、メインフロントピラー5がヒンジピラー66からフロントヘッダ12の車幅方向外端部に向けて立上がるように構成したものである。
【0069】
上述のヒンジピラー66は、図20にも示すように、ヒンジピラーインナ64と、ヒンジピラーレインフォースメント63と、ヒンジピラーアウタ62とを接合固定して、上下方向に延びるヒンジピラー閉断面65を備えた車体剛性部材であって、このヒンジピラー66におけるヒンジピラーインナ64にメインフロントピラー5下部の取付け部5c,5dを、ボルト82、ナット83等の取付け部材を用いて、連結固定している。
該メインフロントピラー5は、ハイドロフォーム加工部材その他のパイプ部材(閉断面部材)から形成されており、左右一対のメインフロントピラー5,5相互間には、閉断面を有するパイプ部材製のフロントヘッダ12が車幅方向に延びるように接合固定されている。
このメインフロントピラー5は、図19に示すようにルーフサイド部に沿ってドア開口部の上側後端部まで延びる延長部51を一体形成しており、左右一対の延長部51,51の後端部相互間には、閉断面を有するパイプ部材製のルーフヘッダ52が車幅方向に延びるように接合固定されている。
ここで、上述のフロントヘッダ12およびルーフヘッダ52は接着剤17,53を用いてルーフパネル2に接着固定されている。
【0070】
ルーフパネル2の前端は実施例1のヘミング部2aと異なり、図19に示すように、側面視L字状の段下げ部2cに形成されており、この段下げ部2cのウインド部材接合面に接着剤18を用いてフロントウインドガラス1の上端部が接着固定されている。
またルーフパネル2の下面において、段下げ部2cとフロントヘッダ12との間、並びに、フロントヘッダ12とルーフヘッダ52との間には、車幅方向に延びるルーフレイン54,55がそれぞれ接着固定されている。
しかも、クラッシャブルフロントピラー4の上端とルーフパネル2との連結位置(部位α参照)から、メインフロントピラー5上端とルーフパネル2との連結位置(後方位置β参照)まで、つまり、図19に示す領域Lの範囲内の構造を、上述のクラッシャブルフロントピラー4の後方移動が可能な脆弱構造と成している。
【0071】
この脆弱構造は、クラッシャブルフロントピラー4を構成する樹脂製のマウントフレーム40(図6参照)に対して、少なくとも1つの長孔や丸孔またはスリットを形成すること、あるいは、部分的に肉厚を薄くすることで達成することができる。
なお、図19において、84はステアリングホイールであり、また、図20において、85はヒンジピラートリム、86はヒンジブラケット、87はフロントフェンダである。
【0072】
このように、図18〜図20に示す実施例2においては、クラッシャブルフロントピラー4はその上端部でルーフパネル2を支持しており、該クラッシャブルフロントピラー4上端部とルーフパネル2との連結位置からメインフロントピラー5上端部とルーフパネル2との連結位置までの構造(図15に示す領域Lの範囲内の構造)を、クラッシャブルフロントピラー4の後方移動が可能な脆弱構造と成したものである。
この構成によれば、車外から対象物がクラッシャブルフロントピラー4やその周辺に当った際、脆弱構造によりクラッシャブルフロントピラー4が後方へ移動するので、衝突エネルギを吸収し、そのエネルギ吸収量の向上を図って、歩行者保護性能を確保することができる。
【0073】
図18〜図20で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1とほぼ同様であるから、図18〜図20において前図と同一の部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントウインド部材は、実施例のフロントウインドガラス1に対応し、
以下同様に、
サイドウインド部材は、サイドウインドガラス6に対応し、
フロントウインドマウント部材は、マウントフレーム40に対応し、
サイドウインドマウント部材は、マウントラバー41に対応し、
閉断面構造は、フロントヘッダ12に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明はフロントウインド部材およびルーフパネルを支持するフロントピラーを備えた自動車の歩行者保護構造について有用である。
【符号の説明】
【0076】
1…フロントウインドガラス(フロントウインド部材)
2…ルーフパネル
3…フロントピラー
4…クラッシャブルフロントピラー
5…メインフロントピラー
6…サイドウインドガラス(サイドウインド部材)
12…フロントヘッダ(閉断面構造)
40…マウントフレーム(フロントウインドマウント部材)
41…マウントラバー(サイドウインドマウント部材)
42…ウインド支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインド部材の側部を支持するクラッシャブルフロントピラーと、
上記クラッシャブルフロントピラーよりも後側に位置するメインフロントピラーと、
車両用ルーフを形成するとともに上記メインフロントピラーの上端部により支持されるルーフパネルとを有し、
上記クラッシャブルフロントピラーと上記メインフロントピラーとの間にはサイドウインド部材が配設され、
上記メインフロントピラーと比較して上記クラッシャブルフロントピラーが低剛性構造に形成された
自動車の歩行者保護構造。
【請求項2】
上記クラッシャブルフロントピラーは、フロントウインド部材の側端部を支持するフロントウインドマウント部材とサイドウインド部材の前端部を支持するサイドウインドマウント部材とで構成されるウインド支持部材で構成された
請求項1記載の自動車の歩行者保護構造。
【請求項3】
上記クラッシャブルフロントピラーはその上端部でルーフパネルを支持しており、該クラッシャブルフロントピラー上端部とルーフパネルとの連結位置からメインフロントピラー上端部とルーフパネルとの連結位置までの構造を、上記クラッシャブルフロントピラーの後方移動が可能な脆弱構造と成した
請求項1または2に記載の自動車の歩行者保護構造。
【請求項4】
上記サイドウインド部材と上記メインフロントピラーとの取付け構造を、上記クラッシャブルフロントピラーの後方への変形に伴って上記サイドウインド部材のメインフロントピラーによる支持が解除され上記サイドウインド部材がメインフロントピラーの車外方へ移動可能な構造と成した
請求項2または3に記載の自動車の歩行者保護構造。
【請求項5】
左右一対のメインフロントピラーの上端部相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面構造が設けられた
請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車の歩行者保護構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate