説明

自動車の空気清浄装置

【課題】 メンテナンスフリーで、製造コストやランニングコストを削減することができる自動車の空気清浄装置を提供する。
【解決手段】 サンシェード1は、布2と、この布2の表面に形成されたアナタース型酸化チタンの被膜3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車内に配置され、空気中の悪臭成分の除去や、殺菌を行う自動車の空気清浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の空気清浄装置として、活性炭などのフィルタに車内の悪臭成分を吸着させるものや、電気的に、例えばオゾンなどを発生させて悪臭成分の除去および殺菌を行うものが知られている。これらの空気清浄装置は、通常、車内のダッシュボードの上や、リアボードの上に配置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の自動車の空気清浄装置のうち、フィルタを用いたものは、悪臭成分を吸着させる能力が、時間の経過と共に低下するので、フィルタを定期的に交換しなければならない。このため、このフィルタの交換作業が煩わしい上に、ランニングコストがかかるという問題がある。また、電気的に悪臭成分の除去および殺菌を行う空気清浄装置の場合、電気エネルギを利用する構造であるため、装置自体が複雑な構造で、かなり高価である上に、電源が必要になるので、自動車のエンジンがかかっているとき以外には、使用できないという問題がある。
【0004】本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、メンテナンスフリーで、製造コストやランニングコストを削減することができる自動車の空気清浄装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の自動車の空気清浄装置は、車内に配置された基材と、この基材に車外からの光を受光可能に設けられた光触媒とを備える。
【0006】この自動車の空気清浄装置によれば、太陽光線が車窓を通って入射し、車内に配置された基材に設けられた光触媒まで到達したとき、太陽光線に含まれる紫外線により、光触媒が反応し、その表面において悪臭の原因である有機物を分解し、かつ殺菌を行う。このように、紫外線による光触媒の反応を利用して、脱臭や殺菌などを行うので、従来のようなフィルタ交換が不要になり、かつ自動車のエンジンがかかっていなくても、太陽光線が到達するときであれば、いつでも車内の空気が自動的に清浄化されるので、メンテナンスフリーになる。また、同様の理由により、従来のようなフィルタや電源などを必要とせず、その清浄効果も持続性が高く、かつ構成自体が簡単なので、製造コストやランニングコストを削減できる。
【0007】上記において、基材は布であり、光触媒はアナタース型酸化チタンであり、布の表面に、アナタース型酸化チタンの被膜が形成されていることが好ましい。
【0008】この自動車の空気清浄装置によれば、基材は、布製なので、アナタース型酸化チタンのゾルに浸漬する方法などにより、その表面にアナタース型酸化チタンの被膜を容易に形成することができる。これに加えて、アナタース型酸化チタンは、安価かつ入手しやすいので、空気清浄装置の製造コストを削減できる。
【0009】また、上記において、基材は布であり、光触媒はアナタース型酸化チタンであり、布の表面に、アナタース型酸化チタンの粒子が分散されていることが好ましい。
【0010】この自動車の空気清浄装置によれば、基材は、布製なので、アナタース型酸化チタンの粒子を糸に混練する方法などにより、その表面にアナタース型酸化チタンの粒子を容易に分散することができる。これに加えて、アナタース型酸化チタンは、安価かつ入手しやすいので、空気清浄装置の製造コストを削減できる。
【0011】さらに、上記において、基材は、自動車用の日除けであることが好ましい。
【0012】この自動車の空気清浄装置によれば、自動車用の日除けが、日除けとしての機能と、空気清浄装置の基材としての機能とを併せ持つので、両者を兼ねることができる。請求項2または請求項3の空気清浄装置のように、基材と光触媒が一体型の場合は、さらに日除けとは別に空気清浄装置を設ける必要がなくなるので、製造コストを削減できると共に、場所を取らなくなる。加えて、自浄作用により日除け自体にも悪臭や汚れが付きにくくなるので、常時、清潔に保つことができる。
【0013】また、上記において、基材は、吸盤を有することが好ましい。
【0014】この自動車の空気清浄装置によれば、吸盤を平らな部位に吸着させることにより、基材を簡単かつ確実に固定できるので、取り付け場所の自由度が増す。例えば、フロントやリアの窓ガラスに基材を固定することにより、サンバイザーやサンシェードとして利用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る自動車の空気清浄装置について説明する。本実施形態では、空気清浄装置がサンシェードを兼用しており、図1は、自動車用の空気清浄装置兼サンシェード(以下、サンシェードという)1を示している。同図に示すように、サンシェード1は、平面形状が矩形で、断面形状が鋸刃状に形成され、これらの形状をある程度保持することが可能な剛性を有している。このサンシェード1は、通常、日除けとして、自動車のダッシュボードやリアボード(いずれも図示せず)の上に置かれ、フロントウインドウやリアウインドウ(いずれも図示せず)を通って車内に入射する太陽光線を遮り、ハンドル(図示せず)の過熱や、車内温度の上昇をできるだけ防ぐようにするものである。
【0016】また、このサンシェード1は、合成繊維製または天然繊維製の布(基材)2の表面に、光触媒としてのアナタース型酸化チタンの被膜3を形成したものであり、この被膜3は、アナタース型酸化チタンのゾル(図示せず)に布2を浸漬(dipping)することにより被覆されている。このアナタース型酸化チタンは、安価で、入手が容易であり、加えて、紫外線が入射されたとき、光触媒として反応する紫外線の波長の範囲が広いという特徴を有する。
【0017】図2は、この被膜3が、光触媒として車内の空気を清浄化する作用を模式的に示したものである。同図に示すように、太陽(または蛍光燈)4を光源として、紫外線5が、アナタース型酸化チタンの被膜3に照射された場合、この紫外線5のエネルギを吸収した被膜3の表面に、電子6と正孔(hole)7が発生する。これらが悪臭成分の分子と反応することにより、被膜3の表面付近の悪臭成分(例えば、有機物)8が分解されて無臭成分8aに変化し、車内の空気が清浄化される。また、同様のメカニズムにより、空気中の細菌(図示せず)が殺菌され、車内の空気が清浄化される(この光触媒が空気を清浄化する作用は、現在の学説では、紫外線エネルギを起因とする光触媒の反応により、空気中の水分が分解されて水酸基が発生し、この水酸基が悪臭成分を分解し、かつ細菌を殺菌するものであるといわれている)。
【0018】以上のように構成されたサンシェード1を製作する場合、合成繊維製または天然繊維製の布2を、図1に示すような形状に加工する。このとき、布2として、この加工された形状をある程度、保持することが可能な剛性を備えたものを用いる。次に、この布2をアナタース型酸化チタンのゾルに所定時間、浸漬した後、引き上げて乾燥させる。これにより、表面にアナタース型酸化チタンの被膜3が形成されたサンシェード1を、製作することができる。このサンシェード1では、上述したように、アナタース型酸化チタンが、安価で入手が容易であり、加えて浸漬法によりその表面に被膜3を容易に形成できるので、製作コストを削減することができる。
【0019】このように製作されたサンシェード1を使用する場合、まず、サンシェード1を、駐車中の自動車のダッシュボードやリアボードの上に置く。太陽が出ており、遮るものがない場合、太陽光線が車窓を通って入射し、サンシェード1の表面まで到達する。このとき、サンシェード1は、日除けとして太陽光線を遮断すると共に、その表面のアナタース型酸化チタンの被膜3が、太陽光線に含まれる紫外線5のエネルギを吸収する。これにより、被膜3の表面に電子6と正孔7が発生し、被膜3の表面付近において、悪臭成分8が無臭成分8aに分解され、かつ、殺菌も行なわれる。また、このアナタース型酸化チタンは、紫外線が入射されたとき、光触媒として反応する紫外線の波長の範囲が広いので、空気を清浄化する能力が高くなる。
【0020】このように、本実施形態のサンシェード1によれば、紫外線5による光触媒の反応を利用しているので、従来のようなフィルタ交換が不要になり、メンテナンスフリーになる。同様に、自動車のエンジンがかかっていなくても、太陽光線(紫外線)が到達するときであれば、いつでも車内の空気を自動的に清浄にできるので、メンテナンスフリーになる。また、従来のようなフィルタや電源などを必要とせず、その清浄効果も持続性があり、構成自体も簡単かつ安価であり、製作も容易であるので、製造コストやランニングコストを削減できる。さらに、サンシェード1が日除けとしての機能と、空気清浄装置としての機能とを、兼ね備えるので、製造コストを削減できると共に、場所を取らなくなる。特に、サンシェード1や空気清浄装置は、通常、ダッシュボードやリアボードなどの狭いスペースに配置されるので、この狭いスペースを有効に利用できる。加えて、自浄作用により、サンシェード1自体にも、悪臭や汚れが付きにくくなるので、常時、清潔に保つことができる。
【0021】次に、本発明の別の実施形態に係る自動車の空気清浄装置について、図3を参照しながら説明する。同図に示すように、この空気清浄装置10は、図示しない基材が矩形の平板形状を有し、その表面全体が布11で覆われている。この布11は、アナタース型酸化チタンの粒子を分散し、混練した糸で織りあげられており、その表面に太陽光線が到達したとき、前記の実施形態と同様に、空気清浄装置としての機能を果たすようになっている。また、この空気清浄装置10の裏面には、例えば合成ゴム製の吸盤12が固定されており、金属や合成樹脂およびガラスなどの平面に吸着可能になっている。
【0022】このように構成されているので、空気清浄装置10は、吸盤12を平らな部位に吸着させることにより、車内の所望の位置に確実に固定することができ、取り付け場所の自由度が増す。例えば、窓ガラスに固定した場合、空気清浄装置としての機能の他に、サンシェードやサンバイザーとしての機能も兼ね備える。
【0023】なお、上記実施形態においては、光触媒としてアナタース型酸化チタンを用いたが、これに限らず、これに酸化亜鉛や白金および酸化ケイ素を添加したものなど、光触媒としての機能を有するものであればよい。また、基材として布を用いたが、これに限らず、樹脂シート、紙、金属板、木材など、光触媒を受光可能に設けることができるものであればよい。さらに、光触媒を基材に設ける方法として、布を溶液に浸漬させる方法や、粒子を糸に混練させる方法を用いたが、これに限らず、光触媒の微粒子の塗布、ゾルーゲル法による膜形成、スパッタリング法、CVD法、溶射法、スプレー熱分解法など、光触媒を基材に設けることができるものであればよい。
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明の自動車の空気清浄装置によれば、メンテナンスフリーで、製造コストやランニングコストを削減できる。また、装置自体を常時、清潔に保つことができる。さらに、サンシェードやサンバイザーとして兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車の空気清浄装置の一部を破断した斜視図である。
【図2】光触媒が悪臭成分を除去する動作を示す模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る自動車の空気清浄装置を示す(a)正面図と、(b)側面図である。
【符号の説明】
1 サンシェード(日除け、自動車の空気清浄装置)
2 布(基材)
3 アナタース型酸化チタンの被膜(光触媒)
10 自動車の空気清浄装置
12 吸盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車内に配置された基材と、この基材に車外からの光を受光可能に設けられた光触媒とを備えることを特徴とする自動車の空気清浄装置。
【請求項2】 前記基材は布であり、前記光触媒はアナタース型酸化チタンであり、前記布の表面に、当該アナタース型酸化チタンの被膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の空気清浄装置。
【請求項3】 前記基材は布であり、前記光触媒はアナタース型酸化チタンであり、前記布の表面に、当該アナタース型酸化チタンの粒子が分散されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の空気清浄装置。
【請求項4】 前記基材は、当該自動車用の日除けであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の自動車の空気清浄装置。
【請求項5】 前記基材は、吸盤を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動車の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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