説明

自動車の車両前部構造

【課題】エンジンルーム内においてエンジンの熱から補機を保護するための補機配設スペースを大きく形成する。
【解決手段】左右一対のストラットタワー41、41のうち少なくとも一方のストラットタワー41の車幅方向内側において該ストラットタワー41との間に間隔を有した状態で車体前後方向に延設され且つ下端部が上記左右一対のフロントサイドフレーム5、5のうち該ストラットタワー41と同じ側のフロントサイドフレーム5に接合され、エンジンルームRを車幅方向外側の補機配設スペースASと車幅方向内側のエンジン配設スペースESとに分割する隔壁7と、補機配設スペースAS内に走行風を導入する走行風導入口84aを有するダクト84と、走行風導入口84aよりも車体後側に位置し且つ補機配設スペースAS内に導入された走行風を排出する第2排出口43を有する排出部42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車両前部構造に関し、特に、エンジンルームがエンジン配設スペースと補機配設スペースとに分割される車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりエンジンルーム内に車体前後方向に延びる隔壁を設けて、エンジンルームを、エンジンが配設されるエンジン配設スペースと補機が配設される補機配設スペースとに分割する自動車の車両前部構造が知られている(特許文献1又は2)。
【0003】
特許文献1に係る自動車の車両前部構造では、エンジンルーム内において車体前後方向に延びて、前端部がシュラウドパネルに接合される一方、後端部がストラットタワーと接合される隔壁を設けて、該隔壁よりも車幅方向内側のスペースをエンジン配設スペースとする一方、該隔壁よりも車幅方向外側のスペースを補機配設スペースとしている。
【0004】
また、特許文献2に係る自動車の車両前部構造では、エンジンルーム内において車体前後方向に延びて、前端部がストラットタワーと接合される一方、後端部がダッシュパネルに接合される隔壁を設けて、該隔壁よりも車幅方向内側のスペースをエンジン配設スペースとする一方、該隔壁よりも車幅方向外側のスペースを補機配設スペースとしている。
【0005】
こうして、エンジンルーム内において、補機配設スペースに配設された補機を隔壁によってエンジン配設スペースに配設されたエンジンから隔離することによって、補機をエンジンの熱から保護している。
【特許文献1】実開昭63−181531号公報
【特許文献2】実開平1−150179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エンジンルーム内に配設される補機は、該補機の機能を有効に発揮するために、エンジンの熱の影響を受けない方が好ましいものが多く、上記特許文献1又は2に係る補機配設スペースには入りきらない場合もある。特に、狭小なエンジンルームにおいては、補機配設スペースも小さくなり、この補機配設スペースを如何に大きく確保することができるかが重要となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンルーム内においてエンジンの熱から補機を保護するための補機配設スペースを大きく形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車体前部に形成されたエンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記エンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、サスペンション装置の上部を固定する左右一対のストラットタワーと、上記左右一対のストラットタワーのうち少なくとも一方のストラットタワーの車幅方向内側において該ストラットタワーとの間に間隔を有した状態で車体前後方向に延設され且つ下端部が上記左右一対のフロントサイドフレームのうち該ストラットタワーと同じ側のフロントサイドフレームに接合され、上記エンジンルームを補機が配設される車幅方向外側の補機配設スペースとエンジンが配設される車幅方向内側のエンジン配設スペースとに分割する隔壁と、上記補機配設スペースのうち上記ストラットタワーよりも車体前側部分に走行風を導入する導入口を有する走行風導入部と、上記補機配設スペース内に導入された走行風を該補機配設スペースのうち上記ストラットタワーよりも車体後側部分から排出する排出口を有する排出部とを備えているものとする。
【0009】
上記の構成の場合、上記隔壁は、上記ストラットタワーと車幅方向内側に間隔を空けて設けることによって、該隔壁がストラットタワーに接合されている構成と比較して、該隔壁の車幅方向外側に形成される補機配設スペースを車幅方向内方に拡大することができる。こうして、補機配設スペースが拡大されることによって、多くの補機を補機配設スペース内に配設してエンジンの熱から遮熱することができる。
【0010】
さらに、これらの補機はエンジンの熱から遮熱するだけでなく、積極的に冷却することが好ましい。そこで、第1の発明では、上記走行風導入部によって補機配設スペースのうち上記ストラットタワーよりも車体前側部分に走行風が導入されると共に、排出部によって補機配設スペースのうちストラットタワーよりも車体後側部分から走行風が排出されるため、補機配設スペース内の補機を走行風で効果的に冷却することができる。このとき、上記隔壁とストラットタワーとの間には間隔が形成されているため、補機配設スペースのうちストラットタワーよりも車体前側部分とストラットタワーよりも車体後側部分との間で、該隔壁とストラットタワーとの間隔を介して走行風を流通させることができ、その結果、補機配設スペース内全体に走行風を流通させて補機を冷却することができる。すなわち、上記隔壁とストラットタワーとは、走行風が流れるだけの間隔を有していればよく、例えば、隔壁及びストラットタワーそれぞれの下部は結合しているが、上部では間隔を有している構成等、隔壁とストラットタワーとの少なくとも一部が車幅方向に間隔を有している構成であればよい。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において上記隔壁は、前端部が、上記エンジンルームの前側を区画するシュラウドパネルに接合され、後端部が、上記エンジンルームの後側を区画するダッシュパネルに接合され、上端部が、上記エンジンルームの上部を覆うボンネットとシール部材を介して当接するように構成されているものとする。
【0012】
上記の構成の場合、上記隔壁の前端部及び後端部はそれぞれ、シュラウドパネル及びダッシュパネルに接合されるため、エンジンの熱が該隔壁の前端や後端を回り込んで補機配設スペース内へ流れ込むことを防止することができる。また、上記隔壁の上端部は、上記ボンネットとシール部材を介して当接しているため、エンジンの熱が該隔壁の上端を回り込んで補機配設スペース内へ流れ込むことも防止することができる。つまり、補機配設スペースの遮熱性を向上させて、より確実に補機をエンジンの熱から保護することができる。それに加えて、上記隔壁をエンジンルーム前端部のシュラウドパネルからエンジンルーム後端部のダッシュパネルまで延設させて設けることによって、隔壁がストラットタワーとダッシュパネルとの間だけに設けられる、又は隔壁がシュラウドパネルとストラットタワーとの間だけに設けられる従来の構成と比較して、補機配設スペースを車体前後方向に拡大することができる。
【0013】
第3の発明は、車体前部に形成されたエンジンルームの前側を区画するシュラウドパネルと、上記エンジンルームの後側を区画するダッシュパネルと、上記エンジンルーム内において車体前後方向に延びて、前端部が上記シュラウドパネルに接合される一方、後端部が上記ダッシュパネルに接合され、少なくとも一部に車体前後方向に対する強度が上記ダッシュパネルよりも弱い脆弱部が形成されると共に、上記エンジンルームを補機が配設される車幅方向一側の補機配設スペースとエンジンが配設される車幅方向他側のエンジン配設スペースとに分割する隔壁とを備えているものとする。
【0014】
上記の構成の場合、上記隔壁を、エンジンルーム前端部のシュラウドパネルからエンジンルーム後端部のダッシュパネルまで延設して設けることによって、隔壁がストラットタワーとダッシュパネルとの間だけに設けられる、又は隔壁がシュラウドパネルとストラットタワーとの間だけに設けられる従来の構成と比較して、補機配設スペースを車体前後方向に大きく形成することができる。
【0015】
ここで、隔壁の後端部をダッシュパネルに接合すると、該隔壁に車体前方から衝撃力が作用したときに、該隔壁が車体後方に変位してダッシュパネルを車室側に変形させる虞がある。そこで、第3の発明では、上記隔壁に上記脆弱部を形成することによって、車両衝突時に隔壁に前方から衝撃力が加わっても、脆弱部が変形することで該衝撃力を吸収して、該隔壁の後端部がダッシュパネルに接合されているにも拘わらず、車両衝突時に該隔壁が車体後側に変位してダッシュパネルを車室内側へ変形させることを防止することができる。尚、本発明には、上記脆弱部が隔壁の全体に形成される構成も含まれる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記エンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、車体前後方向に延びて、前端部が上記シュラウドパネルに接合される一方、後端部が上記ダッシュパネルに接合される左右一対のフロントサイドフレームと、上記補機配設スペース内に走行風を導入する導入口を有する走行風導入部と、上記走行風導入口よりも車体後側に位置し且つ上記配設スペース内に導入された走行風を排出する排出口を有する排出部とをさらに備え、上記隔壁は、下端部が上記左右一対のフロントサイドフレームの何れか一方に接合されているものとする。
【0017】
上記の構成の場合、補機配設スペースには上記走行風導入部によって走行風が導入されると共に、該走行風導入部よりも車体後部に位置する排出部によって走行風が排出されるため、補機配設スペース内の補機を走行風で効果的に冷却することができる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、上記隔壁は、上端部が、上記エンジンルームの上部を覆うボンネットとシール部材を介して当接するように構成されているものとする。
【0019】
上記の構成の場合、上記隔壁の前端部及び後端部は、それぞれシュラウドパネル及びダッシュパネルに接合されているため、該隔壁の前端及び後端を回り込んで補機配設スペース内にエンジンの熱が入り込むことが防止されているが、さらに、隔壁の上端部をボンネットと当接させることによって、隔壁の上端から補機配設スペース内にエンジンの熱が入り込むことを防止することができる。その結果、補機配設スペースの遮熱性を向上させて、より確実に補機をエンジンの熱から保護することができる。
【0020】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、上記各フロントサイドフレームは、前端部に該フロントサイドフレームの他部よりも車体前後方向に対して強度が弱いフレーム脆弱部が形成され、上記隔壁の脆弱部は、車体前後方向において、少なくとも上記フレーム脆弱部と同じ位置に形成されているものとする。
【0021】
上記の構成の場合、車両衝突時に車体前方から衝撃力が作用すると、フロントサイドフレームは、そのフレーム脆弱部が変形して該衝撃力を吸収し、衝撃力が車体後部側へ伝達しないようにすることができる。そして、このフロントサイドフレームに接合されている隔壁も、フレーム脆弱部と車体前後方向において同じ位置に形成された脆弱部を有するため、フレーム脆弱部の変形に合わせて隔壁の脆弱部もスムーズに変形して、隔壁に作用する衝撃力を該脆弱部でより確実に吸収することができる。
【0022】
第7の発明は、第1又は第4の発明は、上記走行風導入部は、前端部が上記エンジンルームの前方に位置するフロントグリル部に開口する一方、後端部が上記補機配設スペースに開口して上記導入口を形成するダクトであるものとする。
【0023】
上記の構成の場合、上記ダクトによって走行風を確実に補機配設スペース内に導入することができる。
【0024】
第8の発明は、第1〜第7の何れか1つの発明において、上記隔壁は、車体前後方向の全領域に亘って、上端部が下端部よりも車幅方向内方に位置しているものとする。
【0025】
上記の構成の場合、上記隔壁の上部においては上記補機配設スペースが車幅方向内方に相対的に拡大され、隔壁の下部においては上記エンジン配設スペースが車幅方向外方に相対的に拡大されることになる。通常、エンジンは車体下方からエンジン配設スペース内に設置される。つまり、上記のように、隔壁の下部においてはエンジン配設スペースを車幅方向外方に相対的に拡大することによってエンジンを設置する際の作業性を向上させることができる。それに加えて、隔壁の上部においては補機配設スペースが拡大されるため、多くの補機をエンジンの熱から保護することができる。また、上記隔壁の下端部が上記フロントサイドフレームに接合される構成においては、該隔壁の下端部の車幅方向位置はフロントサイドフレームによって決まる。そこで、隔壁の上端部を下端部よりも車幅方向内方に位置させることによって、補機配設スペースを、その上部だけでも車幅方向内方に拡大することができる。
【0026】
第9の発明は、第1〜第8の何れか1つの発明において、上記隔壁は、上端部と下端部との間に車幅方向に屈曲する屈曲部を有しているものとする。
【0027】
上記の構成の場合、上記隔壁に上記屈曲部を形成することによって、該隔壁の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上記隔壁を上記ストラットタワーの車幅方向内側において該ストラットタワーとの間に間隔を有して設けることによって、該隔壁の車幅方向外側に形成される補機配設スペースを車幅方向内方に拡大することができ、その結果、多くの補機をこの補機配設スペースに配設することができ、エンジンの熱から保護することができる。また、この補機配設スペースには上記走行風導入部によって走行風が導入され且つ上記排出部によって走行風が排出されると共に、上記隔壁とストラットタワーとの車幅方向における間には間隔が形成されているため、この間隔を介して走行風が補機配設スペース内を流れることができ、補機配設スペース内の補機を効果的に冷却することができる。
【0029】
また、本発明によれば、上記隔壁をエンジンルーム前端部のシュラウドパネルからエンジンルーム後端部のダッシュパネルまで延ばして設けることによって、補機配設スペースを車体前後方向に拡大することができ、その結果、多くの補機をこの補機配設スペースに配設することができ、エンジンの熱から保護することができる。また、該隔壁の後端部はダッシュパネルに接合されることになるが、隔壁に上記脆弱部を設けることによって、車両衝突時に該隔壁に作用する衝撃力を脆弱部が変形することで吸収して、該隔壁が車体後側に変位してダッシュパネルを車室側へ変形させることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1、2は、本発明の実施形態に係る車両前部構造の概略を示す。符号Rは、車両前部に形成され、エンジンE及び補機類が配設されるエンジンルームを示す。このエンジンルームRは、前端部に設けられたシュラウドパネル1と、後端部に設けられたダッシュパネル2と、両側端部に設けられたフロントフェンダエプロン31、31とに囲まれて形成されている。
【0032】
上記シュラウドパネル1の上部には車幅方向に延びるシュラウドアッパメンバ11が設けられ、このシュラウドアッパメンバ11の両端はそれぞれ後述のフェンダ3の前上端部に接合されている。シュラウドパネル1には、ラジエータ(図示省略)が取り付けられる。
【0033】
上記ダッシュパネル2は、車室の前端部に設けられ、車室とエンジンルームRとを仕切るものである。このダッシュパネル2は、その上部にはカウル部21が設けられると共に、その両側端部はそれぞれ上記フロントフェンダエプロン31に接合されている。
【0034】
上記フロントフェンダエプロン31は、フロントフェンダエプロン31の車幅方向外側に位置するフェンダパネル32と共に、前輪Wを覆うフェンダ3を形成している。また、フロントフェンダエプロン31には、車幅方向内方に膨出し、上記前輪Wを収容するホイールハウス4が設けられている。また、このホイールハウス4には、前輪Wのサスペンション装置(図示省略)の上部を固定するストラットタワー41がエンジンルームR内に膨出して設けられている。各ストラットタワー41の上部には、タワーバー47(図1にのみ図示)の一端が取り付けられており、このタワーバー47の他端はダッシュパネル2に接合されている。このタワーバー47によってストラットタワー41の剛性の向上が図られている。
【0035】
これらシュラウドパネル1、ダッシュパネル2及びフロントフェンダエプロン31、31によって形成されたエンジンルームR内の車幅方向左右両側部には車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム5、5が設けられている。このフロントサイドフレーム5、5は、上記ホイールハウス4、4の車幅方向内側に位置する。そして、各フロントサイドフレーム5は、略矩形断面を有していて、前端部がシュラウドパネル1に接合されると共に、そこから車体後側に向かってダッシュパネル2まで延びている。このフロントサイドフレーム5の後端部は、ダッシュパネル2及び車室下部のフロアパネル(図示省略)に沿って車体後部まで延びているサイドフレーム59の前端部と接合されている。また、フロントサイドフレーム5の前部には、該フロントサイドフレーム5の他の部分よりも脆弱なフレーム脆弱部51が形成されている。このフレーム脆弱部51では、フロントサイドフレーム5を構成する上壁、下壁、内側壁、外側壁の各壁に、該フロントサイドフレーム5の長手方向に垂直な方向に延び且つ該フロントサイドフレーム5の内側に陥没する複数の凹部52、52、…が形成されていて、車体前方から大きな衝撃力が作用したときに、フレーム脆弱部51が車体前後方向に潰れるように変形して該衝撃力を吸収するように構成されている。
【0036】
また、上記フロントサイドフレーム5、5の前端には、シュラウドパネル1を挟んで、クラッシュ管81、81が設けられている。この各クラッシュ管81は、各フロントサイドフレーム5の長手方向と同軸に延びると共に、後端部がシュラウドパネル1に接合されている。また、クラッシュ管81は、略矩形断面を有し且つ、その上面及び下面には該クラッシュ管81の長手方向に垂直な方向に延び且つ該クラッシュ管81の内方に陥没する凹部81a、81a、…が形成されていて、車体前方から大きな衝撃力が作用したときには、車体前後方向に潰れるように変形して該衝撃力を吸収する。これらクラッシュ管81、81の前端部には、車幅方向に延び且つ略C字形状断面を有するバンパレイン82が接合されている。さらに、これらクラッシュ管81、81及びバンパレイン82を覆うように、フロントバンパフェイシャ80が車体前方からシュラウドパネル1のシュラウドアッパメンバ11及びフェンダパネル32等に取り付けられる。このフロントバンパフェイシャ80の前部中央には開口グリル(フロントグリル部)83が形成されている。そして、フロントバンパフェイシャ80及びホイールハウスの前側フランジ46に下方からアンダカバー(図示省略)が取り付けられている。
【0037】
また、図3に示すように、上記エンジンルームRの上部には、該エンジンルームRを覆うボンネット6が設けられている。このボンネット6は、後端縁がカウル部21に回動自在に取り付けられると共に、側端縁及び前端縁がそれぞれフェンダ3、3及びシュラウドアッパメンバ11と当接するように構成されていて、上部のボンネットパネル61と下部のボンネットレインフォースメント62とが接合されてなる。
【0038】
そして、図1〜3に示すように、上記各フロントサイドフレーム5の上部には車体前後方向に延びる隔壁7が設けられている。この隔壁7は、下端部に設けられたフランジ71によってフロントサイドフレーム5の上面に接合されている。また、隔壁7は、その前端部がブラケット72によって上記シュラウドアッパメンバ11に接合される一方、その後端部がフランジ73、73によってダッシュパネル2に接合されている。上記隔壁7は、上記ストラットタワー41の車幅方向内側において該ストラットタワー41と離間した状態で車体前後方向に延設されている。また、隔壁7は、フロントサイドフレーム5に接合された下端部から上方に延びた後、第1屈曲部74において車幅方向内方に屈曲し、その後さらに第2屈曲部75において上方に屈曲して上方に延びている。こうして、隔壁7は、車体前後方向の全領域に亘って、上端部が下端部よりも車幅方向内方に位置している。さらに、隔壁7の上端部は、エンジンルームRの上部を覆うボンネット6に沿って車体後方から前方に向かって高さが低くなるように形成されており、この隔壁7の上端部には、隔壁7に沿って車体前後方向に延びるシール部材76が設けられている。一方、ボンネット6下面のボンネットレインフォースメント62の隔壁7、7と対応する位置には、車体前後方向に延びる補強リブ63が形成されている。そして、上記隔壁7は、シール部材76を介して、ボンネット6の補強リブ63と当接している。また、隔壁7の前部には、ダッシュパネル2よりも車体前後方向に対して脆弱な脆弱部77が形成されている。この脆弱部77は、上下方向に延び且つ車幅方向内方に陥没する複数の凹部78、78、…が形成されていて、隔壁7に車体前方から大きな衝撃力が作用したときに、脆弱部77が車体前後方向に潰れて該衝撃力を吸収するように構成されている。その結果、車体前方から隔壁7に大きな衝撃力が作用しても、脆弱部77が変形して該衝撃力を吸収するため、隔壁7が車体後方へ変位してダッシュパネル2を車室内側へ変形させることを防止することができる。また、脆弱部77は、上記フロントサイドフレーム5のフレーム脆弱部51と車体前後方向において同じ位置に形成されている。こうすることによって、車体前方から大きな衝撃力が作用したときに、フロントサイドフレーム5のフレーム脆弱部51の変形に合わせて、隔壁7の脆弱部77も変形し、フレーム脆弱部51と脆弱部77とで該衝撃力を確実に吸収することができる。
【0039】
こうして形成された左右の隔壁7、7によってエンジンルームRは、車幅方向に3つの空間に分割されている。すなわち、エンジンルームRは、左右の隔壁7、7で挟まれた車幅方向中央のエンジン配設スペースESと、エンジン配設スペースESの両側方に位置し、各隔壁7と各フロントフェンダエプロン31とに挟まれた2つの補機配設スペースAS、ASとに分割される。
【0040】
上記エンジン配設スペースESには、エンジンEが縦置きに配設されている。尚、エンジンは縦置きに限られるものではなく、横置きでも構わない。
【0041】
上記補機配設スペースAS、ASには、バッテリ91、PCM92、ABSユニット93、ブレーキマスターバック94、ウォッシャ液タンク95等の補機が配設されている。尚、図示は省略するが、その他の補機として、ラジエータリザーブタンク、ヘッドランプのバラスト、クーラレシーバタンク、ヒューズボックス、パワーステアリング用のリザーブタンク、リレーボックス等を配設してもよい。
【0042】
また、補機配設スペースASには、前端部、即ち、隔壁7とフロントフェンダエプロン31との間であってシュラウドアッパメンバ11の下方且つホイールハウス4の上方の位置には、ダクト84の下流端である走行風導入口84aが位置している(図2参照)。このダクト84は、上流端がフロントバンパフェイシャ80の開口グリル83に開口していて(図1参照)、そこからクラッシュ管81等を迂回しながら補機配設スペースまで延びていて、補機配設スペースAS内に走行風を導入する走行風導入部を構成する。また、ホイールハウス4の車体後側には、図4に示すように、上記ダクト84から補機配設スペースAS内に導入された走行風を排出する排出部42が設けられている。この排出部42は、ホイールハウス4に形成されて、走行風を補機配設スペースAS外に排出するための排出口としての第2排出口43と、この第2排出口43を覆うようにしてホイールハウス4に取り付けられるカバー44とからなる。このカバー44は、ホイールハウス4に沿って車体前方へ延びて、その横断面は、車体前側ほどホイールハウス4からの高さが高くなる略くさび形状をしていて、その前端部には、上記第2排出口43とずれた位置で補機配設スペースASに開口する第1排出口45が形成されている。このように形成された排出部42では、補機配設スペースAS内に導入された走行風が、カバー44の第1排出口45からカバー44内に流入し、ホイールハウス4に形成された第2排出口43から補機配設スペースAS外へ排出されていく。上記カバー44を設けると共に、該カバー44の第1排出口45を第2排出口43とずらして形成することによって、前輪Wが跳ね上げる泥や小石等の異物が補機配設スペースAS内に入り込むことを防止することができる。
【0043】
上述のように構成された補機配設スペースASは、エンジン配設スペースESと隔壁7によって遮断されているため、補機配設スペースAS内の補機91、92、…をエンジンEの熱から保護することができる。また、隔壁7の前端部がシュラウドパネル1に接合する一方、後端部をダッシュパネル2に接合し、さらに、上端部をシール部材76を介してボンネット6と当接させることによって、エンジンの熱が該隔壁の前端、後端及び上端を回り込んで補機配設スペース内へ流れ込むことを防止して遮熱性を向上させることができ、補機91、92、…をエンジンEの熱からより確実に保護することができる。
【0044】
そして、隔壁7の前端部がシュラウドパネル1に接合する一方、後端部をダッシュパネル2に接合することによって、補機配設スペースASを、車体前後方向に拡大して、エンジンルームRの前端から後端まで形成することができる。また、隔壁7をストラットタワー41の車幅方向内方において該ストラットタワー41と離間して設けることによって、補機配設スペースASを車幅方向内方に拡大することができる。こうして、補機配設スペースASを拡大することによって、より多くの補機を該補機配設スペースAS内に配設してエンジンEの熱から保護することができる。さらに、隔壁7は、フロントサイドフレーム5に取り付けられるため、その下端部の車幅方向位置はフロントサイドフレーム5の車幅方向位置によって決まるが、上記第1屈曲部74及び第2屈曲部75を設けて上端部を下端部よりも車幅方向内方に位置させることによって、補機配設スペースASを上部だけでも車幅方向内方へさらに拡大することができる。また、隔壁7は、第1屈曲部74及び第2屈曲部75を形成することによって上端部を下端部よりも車幅方向内方に位置させるだけでなく、隔壁7の剛性、特に上下方向に延びる軸回りの曲げ剛性を向上させることもできる。尚、第1屈曲部74及び第2屈曲部75は車体前後方向に延びるため、隔壁7に上方から衝撃力が作用したときには、該第1屈曲部74及び第2屈曲部75がさらに屈曲して該隔壁7が上下方向に変形しやすくなっており、ボンネット6に歩行者等が衝突したときには該ボンネット6と共に隔壁7が上下方向に変形して衝撃を吸収し、衝突安全性を向上させることができる。
【0045】
それに加えて、ダクト84により補機配設スペースASのうちストラットタワー41よりも車体前側部分に走行風を導入することによって、補機配設スペースAS内の補機91、92、…を走行風で冷却することができる。この走行風は、補機配設スペースASのうちストラットタワー41よりも車体後側部分に設けられた排出部42から排出されていくため、補機配設スペースAS内では走行風が車体前側から後側へ流れるが、上記隔壁7とストラットタワー41との車幅方向の間には間隔が形成されているため、ストラットタワー41よりも車体前方のスペースからストラットタワー41の車体後方のスペースへ該間隔を介して走行風をスムーズに流すことができ、補機配設スペースAS内全体を冷却することができる。
【0046】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、上記隔壁7はエンジンルームR内において左右2つ設けられているが、これに限られるものではなく、いずれか一方のみとしてもよい。隔壁7が、左右のどちらか一方に設けられている場合は、エンジンルームRの車幅方向中心が位置する側のスペースをエンジン配設スペースとする一方、他側を補機配設スペースとする。また、上記隔壁7は、前端部がシュラウドパネル1に接合される一方、後端部がダッシュパネル2に接合されているが、必ずしもシュラウドパネル1又はダッシュパネル2まで延設されている必要はない。すなわち、少なくともストラットタワー41の車幅方向内方において該ストラットタワー41の近傍まで延設されていればよく、こうすることによって、補機配設スペースASのうちストラットタワー41よりも前側の空間に導入された走行風を隔壁7とストラットタワー41との間の間隔を介してストラットタワー41よりも後側の空間へ流通させることができ、補機配設スペースAS内全体に走行風を流通させ補機を冷却することができる。
【0048】
また、上記隔壁7は、ストラットタワー41の車幅方向内方において、上下方向の全領域に亘って該ストラットタワー41と間隔を有しているが、該隔壁7のうち下部、例えば第1屈曲部74よりも下側の部分はストラットタワー41と結合し、上部は該ストラットタワー41と車幅方向に間隔を有するように構成してもよい。かかる構成であっても、隔壁7の上部はストラットタワー41よりも車幅方向内方に位置するため、補機配設スペースASを車幅方向内方に拡大することができると共に、該隔壁7上部とストラットタワー41との間の間隔を介して補機配設スペースASの車体前側部分から車体後側部分へ走行風を流通させることができる。
【0049】
さらに、上記脆弱部77は、車体前後方向において、少なくとも上記フロントサイドフレーム5のフレーム脆弱部51と同じ位置に形成されていればよく、隔壁7の車体前後方向に亘って全体に形成されていてもよい。
【0050】
また、上記脆弱部77及びフレーム脆弱部51は、それぞれ凹部78、78、…及び凹部52、52、…を設けることによって脆弱に形成しているが、脆弱に形成する構成としては、その部分のみを剛性の低い部材で構成する、薄肉に形成する、又は開口を設ける等、剛性を低下させる種々の構成を採用することができる。
【0051】
尚、上記隔壁7は脆弱部77によって車体前後方向に脆弱に形成されているが、これに限らず、上下方向についても脆弱に形成してもよい。こうすることによって、ボンネット6に歩行者が衝突する場合等においてボンネット6と共に隔壁7が下方に変形し易くなり、衝突安全性上好ましい。脆弱に形成する構成としては、上述の脆弱部77と同様に種々の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の車両前部構造の概略を示す斜視図である。
【図2】自動車の車両前部構造の概略を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】ホイールハウスを車体斜め後方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
E エンジン
R エンジンルーム
ES エンジン配設スペース
AS 補機配設スペース
1 シュラウドパネル
2 ダッシュパネル
41 ストラットタワー
42 排出部
43 第2排出口(排出口)
5 フロントサイドフレーム
51 フレーム脆弱部
6 ボンネット
7 隔壁
74 第1屈曲部(屈曲部)
75 第2屈曲部(屈曲部)
76 シール部材
77 脆弱部
83 開口グリル(フロントグリル部)
84 ダクト(走行風導入部)
84a 走行風導入口(導入口)
91 バッテリ(補機)
92 PCM(補機)
93 ABSユニット(補機)
94 ブレーキマスターバック(補機)
95 ウォッシャ液タンク(補機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に形成されたエンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、
上記エンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、サスペンション装置の上部を固定する左右一対のストラットタワーと、
上記左右一対のストラットタワーのうち少なくとも一方のストラットタワーの車幅方向内側において該ストラットタワーとの間に間隔を有した状態で車体前後方向に延設され且つ下端部が上記左右一対のフロントサイドフレームのうち該ストラットタワーと同じ側のフロントサイドフレームに接合され、上記エンジンルームを補機が配設される車幅方向外側の補機配設スペースとエンジンが配設される車幅方向内側のエンジン配設スペースとに分割する隔壁と、
上記補機配設スペースのうち上記ストラットタワーよりも車体前側部分に走行風を導入する導入口を有する走行風導入部と、
上記補機配設スペース内に導入された走行風を該補機配設スペースのうち上記ストラットタワーよりも車体後側部分から排出する排出口を有する排出部とを備えていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の車両前部構造において、
上記隔壁は、
前端部が、上記エンジンルームの前側を区画するシュラウドパネルに接合され、
後端部が、上記エンジンルームの後側を区画するダッシュパネルに接合され、
上端部が、上記エンジンルームの上部を覆うボンネットとシール部材を介して当接するように構成されていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項3】
車体前部に形成されたエンジンルームの前側を区画するシュラウドパネルと、
上記エンジンルームの後側を区画するダッシュパネルと、
上記エンジンルーム内において車体前後方向に延びて、前端部が上記シュラウドパネルに接合される一方、後端部が上記ダッシュパネルに接合され、少なくとも一部に車体前後方向に対する強度が上記ダッシュパネルよりも弱い脆弱部が形成されると共に、上記エンジンルームを補機が配設される車幅方向一側の補機配設スペースとエンジンが配設される車幅方向他側のエンジン配設スペースとに分割する隔壁とを備えていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項4】
請求項3に記載の自動車の車両前部構造において、
上記エンジンルーム内の車幅方向両側に設けられ、車体前後方向に延びて、前端部が上記シュラウドパネルに接合される一方、後端部が上記ダッシュパネルに接合される左右一対のフロントサイドフレームと、
上記補機配設スペース内に走行風を導入する導入口を有する走行風導入部と、
上記走行風導入口よりも車体後側に位置し且つ上記配設スペース内に導入された走行風を排出する排出口を有する排出部とをさらに備え、
上記隔壁は、下端部が上記左右一対のフロントサイドフレームの何れか一方に接合されていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車の車両前部構造において、
上記隔壁は、上端部が、上記エンジンルームの上部を覆うボンネットとシール部材を介して当接するように構成されていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動車の車両前部構造において、
上記各フロントサイドフレームは、前端部に該フロントサイドフレームの他部よりも車体前後方向に対して強度が弱いフレーム脆弱部が形成され、
上記隔壁の脆弱部は、車体前後方向において、少なくとも上記フレーム脆弱部と同じ位置に形成されていることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の自動車の車両前部構造において、
上記走行風導入部は、前端部が上記エンジンルームの前方に位置するフロントグリル部に開口する一方、後端部が上記補機配設スペースに開口して上記導入口を形成するダクトであることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の自動車の車両前部構造において、
上記隔壁は、車体前後方向の全領域に亘って、上端部が下端部よりも車幅方向内方に位置していることを特徴とする自動車の車両前部構造。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載の自動車の車両前部構造において、
上記隔壁は、上端部と下端部との間に車幅方向に屈曲する屈曲部を有していることを特徴とする自動車の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−69732(P2007−69732A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258715(P2005−258715)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】