説明

自動車の車体下部構造

【課題】
本発明は、自動車前部のエンジンルームの下方に平板状のアンダーカバーを装着する自動車の車体下部構造において、エンジンルーム内のエンジン後方空間の熱気を効果的に外部に排出することができる自動車の車体下部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
エンジン1後方位置には、上下方向に延びる筒状の排出ダクト40を設置している。この排出ダクト40は、四角筒形状の樹脂製部材で形成され、その上端開口部41を前述の排気マニホールド21に向けて開口するとともに、下端開口部42をアンダーカバー8の排出口88に向けて開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車前部のエンジンルーム下方に所謂アンダーカバーを装着する自動車の車体後部構造に関し、特に、エンジンルーム内の熱気を効果的に排出する自動車の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車前部のエンジンルームの下方に平板状の所謂アンダーカバーを装着することが知られている。このアンダーカバーは、車両下部を流れる走行風がエンジンルーム内に入り込んで走行抵抗となるのを防ぎ、空力特性を向上するために装着される。
【0003】
下記特許文献1では、こうした空力特性を向上するアンダーカバーを用いて、さらに車両中央部に設置された変速機等を冷却するため、アンバーカバーの後部に絞り部を設け、変速機等に走行風を導くものが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−330457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンルーム内は、通常、内燃機関の発熱等により極めて高温となる。このため、前述のようにエンジンルームの下方にアンダーカバーを設けると、エンジンルーム内の熱気が車外に排出されず、内燃機関の冷却性能を悪化させるおそれがある。
【0006】
よって、前述の特許文献1に記載されているように、従来は、アンバーカバーのほぼ全面に多数の小さなルーバー(開口孔)を設け、エンジンルーム内の熱気を車外に排出するように構成していた。
【0007】
しかしながら、エンジンルーム内で最も熱気が滞留するのは、走行風の影響を受けない内燃機関の車両後方側のダッシュパネルとの間の空間(以下、エンジン後方空間)であり、単にアンダーカバーにルーバーを設けても、アンダーカバー近傍の熱気が排出されるだけで、最も熱気が滞留しやすいエンジン後方空間から熱気を排出することはできず、十分な熱気排出を行うことはできなかった。
【0008】
こうした熱気滞留の問題は、特に、内燃機関横置きで後方排気のレイアウトを採用した場合に、エンジン後方空間が排気系で加熱されることから、大きな問題となる。
【0009】
そこで、本発明は、自動車前部のエンジンルームの下方に平板状のアンダーカバーを装着する自動車の車体下部構造において、エンジンルーム内のエンジン後方空間の熱気を効果的に外部に排出することができる自動車の車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車の車体下部構造は、自動車前部に設けられ、内燃機関を内部に収容するエンジンルームと、該エンジンルームの下方で水平方向に延設される平板状のアンダーカバーを含んでなる自動車の車体下部構造であって、前記内燃機関の車両後方位置に、上下方向に延びる筒状のダクト部を設け、該ダクト部の上端を発熱体に向けて開口し、該ダクト部の下端を前記アンダーカバーの車両後方の排出部に向けて開口したものである。
【0011】
上記構成によれば、内燃機関の車両後方位置、すなわち、エンジン後方位置にダクト部を設け、このダクト部とアンダーカバーの下方を流れる走行風を利用して、発熱体近傍の熱気を排出部から車外側(車両下方側)に排出することになる。
【0012】
このため、エンジン後方空間の滞留する熱気を、ダクト部を使って効果的に車外に排出することができる。
【0013】
なお、ダクト部の形状は、筒状であれば特に限定されるものではなく、角形状でも、円形状等でもよい。また、発熱体には、例えば、排気マニホールドが考えられるが、その他にも内燃機関の他の部位の発熱部や、電動モータや油圧モータ等の発熱源が含まれる。さらに、排出部も、アンダーカバー自体に開口部を設けたものや、アンダーカバー形状は変更せずそのままアンダーカバーの後方位置を排出空間としたものも含む。
【0014】
また、内燃機関の設置向きも、縦置き、横置き何れであってもよく、さらに、アンダーカバーの大きさ、形状も、エンジンルーム下方を全て覆うものでも、エンジンルーム下方の一部を覆うものでもあってよい。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記内燃機関をエンジンルーム内に横置き配置して、該内燃機関の車両後方側に排気管を設置し、該排気管に向けて前記ダクト部の上端を開口したものである。
【0016】
上記構成によれば、横置き内燃機関の後方排気における排気管の熱気が、ダクト部を介して車外に排出されることになる。
【0017】
このため、特に、エンジン後方空間の温度が上昇し易い、横置き後方排気の内燃機関の熱気を確実に排出することができる。
【0018】
よって、横置き後方排気の内燃機関を採用しつつも、確実にエンジン後方空間の温度上昇を防ぎ、冷却性能を向上することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記排気管の排気マニホールド近傍に触媒を配設したものである。
【0020】
上記構成によれば、触媒を排気マニホールド近傍に配置(所謂直キャタレイアウト)することで、触媒の活性化を図りつつ、その触媒近傍の熱気を、ダクト部で車外に排出することになる。
【0021】
このため、触媒による発熱により、さらにエンジン後方空間に熱気が滞留するが、その熱気を、ダクト部で確実に車外に排出することができる。
【0022】
よって、排ガス性能を高めつつも、確実にエンジン後方空間の温度上昇を防ぎ、冷却性能を向上することができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、前記排気管の排気マニホールド近傍にディーゼル・パティキュレート・フィルターを配設したものである。
【0024】
上記構成によれば、ディーゼル・パティキュレート・フィルター、所謂DPFを排気マニホールド近傍に配置することで、排ガスの浄化を図りつつも、そのDPF近傍の熱気を、ダクト部で車外に排出することになる。
【0025】
このため、DPF再生時の発熱により、さらにエンジン後方空間に熱気が滞留するが、その熱気を、ダクト部で確実に車外に排出することができる。
【0026】
よって、ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化を行いつつも、確実にエンジン後方空間の温度上昇を防ぎ、冷却性能を向上することができる。
【0027】
この発明の一実施態様においては、前記ダクト部を上端の開口面積より下端の開口面積が小さくなるように設定したものである。
【0028】
上記構成によれば、ダクト部内の断面面積が上方から下方に行くに従って絞られるため、ダクト部内の流速は上端よりも下端の方が早くなる。
【0029】
このため、ダクト部内での熱気の流れが速まり、ダクト部による車外への熱気の排出をより促進することができる。
【0030】
よって、より確実にエンジン後方空間の熱気を車外に排出することができ、冷却性能を向上することができる。
【0031】
この発明の一実施態様においては、前記アンダーカバーに、ダクト部を一体形成したものである。
【0032】
上記構成によれば、熱気を排出するダクト部がアンダーカバーと一体となって、一部品で構成されることになる。
【0033】
このため、アンダーカバーをエンジンルーム下部に装着するだけで、ダクト部も組み付けた状態にできる。
【0034】
よって、余計な組み付け作業を行なうことなく、ダクト部を容易に組み付けることができる。
【0035】
この発明の一実施態様においては、前記アンダーカバーを、徐々に後部が前部よりも低くなるように設置したものである。
【0036】
上記構成によれば、アンダーカバーと路面との距離が車両後方側に行くに従い、徐々に小さくなり、走行風が上下方向に絞られることになる。
【0037】
このため、アンダーカバーの車両後方側において走行風が速まり、排出部近傍の吸出し力を高めることができる。
【0038】
よって、さらにダクト部からの熱気の排出量を増加することができ、冷却性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0039】
この発明によれば、内燃機関の車両後方位置、すなわち、エンジン後方位置にダクト部を設け、このダクト部とアンダーカバーの下方を流れる走行風を利用して、発熱体近傍の熱気を排出部から車外側(車両下方側)に排出することになる。
【0040】
このため、エンジン後方空間の滞留する熱気を、ダクト部を使って効果的に車外に排出することができる。
【0041】
よって、自動車前部のエンジンルームの下方に平板状のアンダーカバーを装着する自動車の車体下部構造において、エンジンルーム内のエンジン後方空間の熱気を効果的に外部に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第一実施形態)
まず、図1〜図4により、第一実施形態について説明する。図1は本発明の自動車の車体下部構造が採用された自動車前部の概略断面図、図2は自動車前部の底面図、図3はエンジンルーム内の後面図、図4は排出ダクト及び排気マニホールド等を示したエンジンルーム内の後方斜視図である。
【0043】
図1に示すように、本実施形態の自動車Vの前部には、内部に内燃機関たるエンジン1を設置したエンジンルームEを設けている。このエンジンルームEは、車両前方側をフロントグリル2、フロントバンパー3、及びシュラウドパネル4によって、車両後方側を上下方向に延びるダッシュパネル5及びカウルパネル6によって、それぞれ仕切られている。
【0044】
また、上方を水平方向に延びるボンネット7、下方を同様に水平方向に延びるアンダーカバー8によって、それぞれ仕切られている。さらに、図3に示すように、エンジンルームEの側方は、前輪Fを覆うホイールハウス9とホイールエプロン10によって仕切られている。
【0045】
エンジンルームE内に設置されるエンジン1は、クランク軸(図示せず)を車幅方向に向けて配置される、所謂横置きエンジンであり、一般的なI型4気筒のディーゼルエンジンである。また、エンジン1の一側方には、直列位置に変速機11が配置され(図3参照)、この変速機11とエンジン1によって、エンジンルームE内の車両前後方向の空間Ea,Eb(図1参照)が車幅方向で仕切られている。
【0046】
エンジン1の吸排気系は、図1に示すように、車両前方側に吸気マニホールド12やサージタンク13を備えた吸気系を配置して、車両後方側に排気マニホールド21やNOxを低減する触媒22、さらにはディーゼルエンジンの排ガスの煤を濾過するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)23を備えた排気系を配置した、所謂前方吸気後方排気レイアウトを採用している。
【0047】
このうち、排気マニホールド21の上方には、ダッシュパネル5側への熱害を防止するため、遮熱カバー21aを設けている。また、触媒22とDPF23の下流側には、エンジン1の排ガスを車両後部の排気サイレンサー(図示せず)へ導く排気管24を連結している。
【0048】
アンダーカバー8は、図2に示すように、エンジンルームEの下方全域を覆うように、前部81が車幅方向に長い長方形状で形成され、後部82がフロントサスクロスメンバ31の前端部形状に沿った異形の五角形形状に形成された樹脂製の平板部材で構成している。
【0049】
このアンダーカバー8は、前端部及び両側端部を、フロントバンパー3の下端部と側部プレート14の内端部に、複数のビス83…を介して固定することで、エンジンルームEの下方で強固に取り付けられている。
【0050】
このように、エンジンルームEの下方に、平板状のアンダーカバー8を装着することで、車両走行時に、車両下方に流れ込む走行風(図1で矢印に示す)がエンジンルームE内に入り込むのを防ぐことができるため、走行風が走行抵抗にならず空力特性を向上することができる。
【0051】
このアンダーカバー8の中央部には、図2に示すように、車両前方側から三角形状に隆起して車両後方側に開口するルーバー84…(開口孔)を複数形成している。このルーバー84は、エンジンルームE内の空気を外部に排出するために設けており、具体的には、前述のフロントグリル等からエンジンルームE内に入り込んだ走行風等を、自動車下部の外方に排出するために設けている(図1参照)。
【0052】
このルーバー84…があることで、走行風をエンジンルームEの下方に排出するといったことに加え、エンジンルームE内のエンジン前方空間Eaの熱気を外部に排出することも行える。すなわち、アンダーカバー8を取り付けたことで、エンジンルームE内には、エンジン1の発熱で熱気が滞留しやすくなるが、ルーバー84…があることにより、エンジンルームEのエンジン前方空間Eaやエンジン下方空間Ecの熱気を外部に排出しているのである。
【0053】
また、このアンダーカバー8は、図1に示すように、車両前方側から前段部85、中段部86、後段部87という三つの段部を有し、前段部85から後段部87に向かい徐々に高さ方向位置が低くなるように設定している(図1でL1>L2>L3)。
【0054】
このように、高さ方向位置を徐々に低くなることで、アンダーカバー8下方を流れる走行風を絞ることになり、車両後方側に行くに従い増速させることができる。
【0055】
このアンダーカバー8の後部82には、図2に示すように、後述の排出ダクト40から排出される熱気を外部に排出する排出口88を形成している。具体的には、後部82の車幅方向中央部分を車両後方側端から矩形形状に切り欠いて、排出ダクト40のみを下方から視認できるように構成している。
【0056】
アンダーカバー8の車両後方には、前輪Fのサスペンションを支持するフロントサスクロスメンバ31を設けている。前述のように、このフロントサスクロスメンバ31の前端部形状に略一致するようにアンダーカバー8の後部82を形成していることから、アンダーカバー8の後部82をフロントサスクロスメンバ31の前端部に当接させることにより(図2参照)、フロントサスクロスメンバ31も、アンダーカバー8と同様に、エンジンルームEと車外を仕切る部材として機能させることができる。
【0057】
なお、フロントサスクロスメンバ31の両側位置には、前輪Fのサスペンションの一部であるロアアーム32,32を取り付けている。
【0058】
前述の排出口88の上方であるエンジン1後方位置には、上下方向に延びる筒状の排出ダクト40を設置している。この排出ダクト40は、四角筒形状の樹脂製部材で形成され、その上端開口部41を前述の排気マニホールド21に向けて開口するとともに、下端開口部42を前述のアンダーカバー8の排出口88に向けて開口している。
【0059】
このため、この排出ダクト40では、車両走行時に、アンダーカバー8の下方に流れる走行風を利用して、空気を下方に引き込む空気流を発生させることができる。よって、排気マニホールド21で熱せられた熱気を、この排出ダクト40を通じて、外部に排出することができる(図1の矢印参照)。
【0060】
また、この排出ダクト40は、上方から下方に行くに従い、容積断面を徐々に減少するように構成している(図1でs1>s2)。
【0061】
このため、排出ダクト40内を流れる熱気の流速も、下側に行くほど速まることになり、熱気の排出がより促進される。
【0062】
この排出ダクト40は、図1や図4に示すように、フロントサスクロスメンバ31の前端部に取り付けブラケット43を介して、強固に取り付けられ、エンジン振動等により容易に離脱しないように構成している。
【0063】
このように、排出ダクト40をエンジン1後方位置に、それも排気マニホールド21に向けて上端開口部41を開口していることから、発熱源である排気マニホールド21からの熱気を迅速にエンジンルームEの外部に排出することができる。
【0064】
このため、エンジン後方空間Ebの熱気の滞留を防ぐことができ、エンジン1の冷却性能の悪化や、ダッシュパネル5の温度上昇等のいわゆるエンジンルームEの熱害を防ぐことができる。
【0065】
特に、エンジン1を横置き配置で後方排気とした本実施形態のようなレイアウトでは、エンジン後方空間Ebに車両前方から走行風を導くことが困難であり、また発熱源である排気マニホールド21も存在するため、こうした排出ダクト40の熱気吸出し効果を顕著に得ることができる。
【0066】
以上のように、本実施形態の自動車の車体下部構造では、エンジン1の車両後方位置に、上下方向に延びる筒状の排出ダクト40を設け、その排出ダクト40の上端開口部41を排気マニホールド21に向けて開口し、排出ダクト40の下端開口部42をアンダーカバー8の車両後方の排出口88に向けて開口したことから、排出ダクト40とアンダーカバー8の下方を流れる走行風を利用して、排気マニホールド21近傍の熱気を排出口88から車外側(車両下方側)に排出することになる。
【0067】
このため、エンジン後方空間Ebに滞留する熱気を、排出ダクト40を使って効果的に車外に排出することができる。
【0068】
よって、自動車前部のエンジンルームEの下方に平板状のアンダーカバー8を装着する自動車Vの車体下部構造において、エンジンルームE内のエンジン後方空間Ebの熱気を効果的にエンジンルームEの外部に排出することができる。
【0069】
また、この実施形態では、エンジン1を横置きで後方排気レイアウトとして、排出ダクト40の上端開口部41を排気マニホールド21を向くように配置していることから、横置きエンジンの後方排気における排気マニホールド21近傍の熱気が、排出ダクト40を介して車外に排出されることになる。
【0070】
このため、特に、エンジン後方空間Ebの温度が上昇し易い、横置き後方排気のエンジン1であっても、確実に熱気を排出することができる。
【0071】
よって、横置き後方排気のエンジン1のエンジン後方空間Ebの温度上昇を防ぎ、エンジン1の冷却性能を向上することができる。
【0072】
また、この実施形態では、排気マニホールド21近傍に触媒22を配設(所謂直キャタレイアウト)したことで、触媒22の活性化を図りつつも、その触媒22近傍の熱気を、排出ダクト40で車外に排出することになる。
【0073】
このため、触媒22による発熱により、さらにエンジン後方空間Ebに熱気が滞留する場合であっても、その熱気を、排出ダクト40で確実に車外に排出することができる。
【0074】
よって、排ガス性能を高めつつも、確実にエンジン後方空間Ebの温度上昇を防ぎ、エンジン1の冷却性能を向上することができる。
【0075】
また、この実施形態では、排気マニホールド21近傍にDPF23を配設したことで、ディーゼルエンジンの排ガスの浄化を図りつつも、そのDPF23近傍の熱気を、排出ダクト40で車外に排出することになる。
【0076】
このため、DPF23再生時の発熱により、さらにエンジン後方空間Ebに熱気が滞留する場合であっても、その熱気を、排出ダクト40で確実に車外に排出することができる。
【0077】
よって、ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化を行いつつも、確実にエンジン後方空間Ebの温度上昇を防ぎ、エンジン1の冷却性能を向上することができる。
【0078】
また、この実施形態では、排出ダクト40を、上端開口部41の開口面積より下端開口部42の開口面積が小さくなるように設定したため(s1>s2)、排出ダクト40内の断面面積が上方から下方に行くに従って絞られ、排出ダクト40内の流速が上端よりも下端側が早くなるように構成している。
【0079】
よって、排出ダクト40内での熱気の流れが速まり、排出ダクト40による車外への熱気の排出をより促進することができ、より確実にエンジン後方空間Ebの熱気を車外に排出することができ、エンジン1の冷却性能を向上することができる。
【0080】
また、この実施形態では、アンダーカバー8を、徐々に後段部87が前段部85よりも低くなるように設置したことで、アンダーカバー8と路面との距離が車両後方側に行くに従い、徐々に小さくなり(L1>L2>L3)、走行風が上下方向で絞られることになる。
【0081】
よって、アンダーカバー8の車両後方側において走行風が増速されることになり、排出口88近傍の吸出し力を高めることができ、さらに排出ダクト40からの熱気の排出量を増加でき、エンジン1の冷却性能を向上することができる。
【0082】
(第二実施形態)
次に、図5、図6により、第二実施形態について説明する。図5は第二実施形態の自動車前部の概略断面図、図6は第二実施形態のアンダーカバーの単品斜視図である。なお、図示しない構造については、前述の第一実施形態と同様であり、また、図示した構造についても、第一実施形態と同様の構造については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
本実施形態は、図6に示すように、前述の第一実施形態の排出ダクト40を、アンダーカバー108に一体形成して、排出ダクト部140として構成したものである。すなわち、アンダーカバー108の後端部中央に上方に筒状に延びる四角錐状の排出ダクト部140を形成して、第一実施形態の排出ダクト40同等に、エンジンルームEのエンジン後方空間Ebの熱気を車外に排出するように構成したものである。
【0084】
なお、図6は、アンダーカバー108自体を簡略化して記載しており、ルーバー84…や段部85〜87については記載していないが、図5に示すようにそれぞれ有する。
【0085】
このように、排出ダクト部140をアンダーカバー108に一体形成することで、第一実施形態のように、別途、排出ダクトをフロントサスクロスメンバに取り付けなくてもよいため、排出ダクト等の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0086】
また、サービス作業の際も、アンダーカバー108を取り外すだけで、排出ダクトも取り外すことができるため、サービス作業性も向上することができる。
【0087】
加えて、アンダーカバーの開口部も、図5に示すように、排出ダクト部140の下端開口部142だけを下部に露出させるだけでよいため、敢えて形成する必要がなくなる。よって、アンダーカバー108の密閉性が高まり、自動車の空力特性を向上することができる。
【0088】
以上、本実施形態によると、アンダーカバー108に、排出ダクト部140を一体形成したことで、一部品で構成されることになる。
【0089】
よって、アンダーカバー108をエンジンルームEの下方に装着するだけで、排出ダクト部140も組み付けた状態にでき、余計な組み付け作業を行なうことなく、排出ダクト部140を容易に組み付けることができる。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0090】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の内燃機関は、エンジン1に対応し、
以下、同様に、
ダクト部は、排出ダクト40、排出ダクト部140に対応し、
発熱体は、排気マニホールド21に対応し、
排出部は、排出口88に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる自動車の車体下部構造に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第一実施形態の自動車前部の概略断面図。
【図2】自動車前部の底面図。
【図3】エンジンルーム内の後方斜視図。
【図4】排出ダクト及び排気マニホールド等を示したエンジンルーム内の後方斜視図。
【図5】第二実施形態の自動車前部の概略断面図。
【図6】第二実施形態のアンダーカバーの単品斜視図。
【符号の説明】
【0092】
E…エンジンルーム
1…エンジン(内燃機関)
8…アンダーカバー
21…排気マニホールド(発熱体)
22…触媒
23…DPF
40…排出ダクト(ダクト部)
88…排出口(排出部)
108…アンダーカバー
140…排出ダクト部(ダクト部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車前部に設けられ、内燃機関を内部に収容するエンジンルームと、該エンジンルームの下方で水平方向に延設される平板状のアンダーカバーを含んでなる自動車の車体下部構造であって、
前記内燃機関の車両後方位置に、上下方向に延びる筒状のダクト部を設け、
該ダクト部の上端を発熱体に向けて開口し、
該ダクト部の下端を前記アンダーカバーの車両後方の排出部に向けて開口した
自動車の車体下部構造。
【請求項2】
前記内燃機関をエンジンルーム内に横置き配置して、
該内燃機関の車両後方側に排気管を設置し、
該排気管に向けて前記ダクト部の上端を開口した
請求項1記載の自動車の車体下部構造。
【請求項3】
前記排気管の排気マニホールド近傍に、触媒を配設した
請求項2記載の自動車の車体下部構造。
【請求項4】
前記排気管の排気マニホールド近傍に、ディーゼル・パティキュレート・フィルターを配設した
請求項2又は3記載の自動車の車体下部構造。
【請求項5】
前記ダクト部を、上端の開口面積より下端の開口面積が小さくなるように設定した
請求項1〜4記載の自動車の車体下部構造。
【請求項6】
前記アンダーカバーに、ダクト部を一体形成した
請求項1〜5記載の自動車の車体下部構造。
【請求項7】
前記アンダーカバーを、徐々に後部が前部よりも低くなるように設置した
請求項1〜6記載の自動車の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38838(P2007−38838A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225154(P2005−225154)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】