説明

自動車の車体下部構造

【課題】バッテリケースが車体後側に延設された場合の後突に対するバッテリケースの保護を、大幅な部品追加を伴うことなく適切に行うこと。
【解決手段】両端を左右のリヤフレーム14に接合された第1のクロスメンバと、第1のクロスメンバより後方位置にあって両端を左右のリヤフレーム14に接合された第2のクロスメンバ26と、第1のクロスメンバの両端より各々垂下された左右の脚部材76と、両端を左右の脚部材76の下端部に固定され、リヤフロアパネルの下面側に配置されるバッテリケース90を支持する第3のクロスメンバ46とを設け、第2のクロスメンバ26と第3のクロスメンバ46とを左右のロッド82で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体下部構造に関し、特に、電気自動車やハイブリット車等、フロアパネル下方にバッテリケースを搭載する自動車の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のように大型のバッテリケース(バッテリパック)を搭載する自動車は、フロア構造として、車体前後方向に延在する左右のサイドシルと、左右のサイドシル間に配置されたフロントフロアパネルと、左右のサイドシルより車体幅方向の内側を各々車体前後方向に延在する左右のフロアフレームと、フロントフロアパネルの上側(車室内側)を車体幅方向に延在して両端を左右のフロアフレームに接合された上部クロスメンバとを有し、フロントフロアパネル下方の左右のフロアフレーム間に、つまりフロアフレームより車幅方向内側にバッテリケースを配置される。
【0003】
このようなバッテリケース配置の自動車では、側面衝突時のバッテリケースの損傷に対する保護対策として、アウトリガーをサイドシルとフロアフレーム間に配置し、側面衝突のエネルギをアウトリガーの圧潰変形によって吸収するもの(例えば、特許文献1)、更には、フロアフレームに補強部材(ブレース)を接合し、側面衝突時のフロアフレームの内倒れ防止を図ったものがある(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、樹脂製のバッテリケース内に埋設された金属製の骨格部材を、金属製の接続部材を介して金属製の車体部材に接続することにより、電気自動車の軽量化を図りながら剛性の向上を図り、電気自動車に搭載されたバッテリの耐衝突性能を高めるものがある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2891072号公報
【特許文献2】特許3132261号公報
【特許文献3】特開2008−183947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車では、バッテリの更なる大容量化の要求があり、このことに対して後輪の配置部近傍や車体後部のスペアタイヤパン近傍にまでバッテリケースを延設することが考えられる。このようにバッテリケースを車体後側に延設すると、後部衝突(後突)に対するバッテリケースの保護が行う必要が生じる。しかしながら、従来のものは、後部衝突(後突)に対するバッテリケースの保護についての対策がなされていない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリケースが車体後側に延設された場合の後突に対するバッテリケースの保護を、大幅な部品追加を伴うことなく適切に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による自動車の車体下部構造は、車体前後方向に延在する左右のリヤフレーム(14)と、左右の縁部を前記左右のリヤフレーム(14)に接合されて当該左右のリヤフレーム(14)間に延在するリヤフロアパネル(20)と、両端を前記左右のリヤフレーム(14)に接合された第1のクロスメンバ(24)と、前記第1のクロスメンバ(24)より後方位置にあって両端を前記左右のリヤフレーム(14)に接合され、後輪スペンションの左右のロアアーム(110)を支持するロアアーム取付部(26B)を有する第2のクロスメンバ(26)とを有する自動車の車体後部構造であって、前記第1のクロスメンバ(24)の両端より各々垂下された左右の脚部材(76)と、両端を前記左右の脚部材(76)の下端部に固定され、前記フロアパネルの下面側に配置されるバッテリケース(90)を支持する第3のクロスメンバ(46)と、後端を第2のクロスメンバ(26)の左右のロアアーム取付部(26B)間の車体幅方向中央部に結合され前端を前記第3のクロスメンバ(46)の車体幅方向の端部に結合されて平面視でハの字形をなす左右一対のロッド(82)とを有する。
【0009】
この構成によれば、左右一対のロッド(82)が第2のクロスメンバ(26)と第3のクロスメンバ(46)と協働してトラス構造を構築する。これにより、第2のクロスメンバ(26)の車体前後方向の倒れに対する強度が向上し、後突時の第2のクロスメンバ(26)の車体前方への移動が抑制される。このことにより、後突時に第2のクロスメンバ(26)が前方移動によってバッテリケース(90)の後部に当たることが回避され、後突に対するバッテリケース(90)の保護が、左右2本のロッド(82)の追加だけで、大幅な部品追加を伴うことなく適切に行われる。また、トラス構造の頂部がロアアーム取付部(26B)の近傍に位置するので、ロアアーム取付部(26B)の横方向剛性が向上する。
【0010】
本発明による自動車の車体下部構造は、好ましくは、前記ロッド(82)は、前記バッテリケース(90)の下面より下方に膨出するように折曲あるいは湾曲している。
【0011】
この構成によれば、車両が後進する際に、縁石(路面からの突起物)が、左右の後輪タイヤ間を通り抜けるバック縁石モードにおいて、ロッド(82)は、縁石がバッテリケース(90)に当接(接地)することを防止する接地ガードとしても機能する。
【0012】
本発明による自動車の車体下部構造は、好ましくは、前記左右のリヤフレーム(14)は、後輪サスペンションの左右のトレーリングアーム(114)の取付部(14A)を有し、前記第3のクロスメンバ(46)は前記トレーリングアーム(114)の取付部(14A)より後方に配置されている。
【0013】
この構成によれば、バッテリケース(90)の支持部材として作用する第3のクロスメンバ(46)をトレーリングアーム(114)の取付部より後方に配置することから、バッテリケース90をトレーリングアーム(114)の取付部(14A)より後方の後輪車軸の配置近傍にまで延長することができる。これにより、フロアパネル下の有効利用のもとに、バッテリケース(90)に収納されるバッテリパック(92)の大容量化が図られる。
【0014】
本発明による自動車の車体下部構造は、好ましくは、更に、前記第2のクロスメンバ(26)の車体幅方向中央部に当該第2のクロスメンバ(26)より下方に突出した接地ガード部材(88)が取り付けられている。
【0015】
この構成によれば、接地ガード部材(88)は、ジャッキアッププレートを兼ねていて、バック縁石モード時には、縁石がバッテリケース(90)に当接(接地)することを防止する接地ガードとしても機能する。
【0016】
本発明による自動車の車体下部構造は、好ましくは、前記第3のクロスメンバ(46)の前記脚部材(76)に対する固定と、前記ロッド(82)の前記第3のクロスメンバ(46)に対する固定がボルト等の締結具によって取り外し可能に行われている。
【0017】
この構成によれば、第3のクロスメンバ(46)とロッド(82)の取り外しによってバッテリケース(90)の取り外しを容易に行うことができる。
【0018】
本発明による自動車の車体下部構造は、好ましくは、更に、車体前後方向に延在して後端を前記左右のリヤフレーム(14)に接合された左右のサイドシル(16)と、前記左右のサイドシル(14)より車体幅方向内側を車体前後方向に延在して後端を前記左右のリヤフレーム(14)に接合された左右のフロアフレーム(12)と、前記左右のフロアフレーム(12)と前記左右のサイドシル(16)とに各々接合された左右の連結部材(64)と、両端を前記左右の連結部材(64)に固定され、前記バッテリケース(90)を支持する第4のクロスメンバ(44)とを有する。
【0019】
この構成によれば、第4のクロスメンバ(44)によってもバッテリケース(90)の支持が行われると共に、連結部材(64)がフロアフレーム(12)とサイドシル(16)とを連結しているから、車体後部の剛性が向上し、ロードノイズ性能が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による自動車の車体下部構造によれば、左右2本のロッドが第2のクロスメンバ)と第3のクロスメンバと協働してトラス構造を構築するから、第2のクロスメンバの車体前後方向の倒れに対する強度が向上し、後突時の第2のクロスメンバの車体前方への移動が抑制される。これにより、後突時に第2のクロスメンバが前方移動によってバッテリケースの後部に当たることが回避され、後突に対するバッテリケースの保護が、左右2本のロッドの追加だけで、大幅な部品追加を伴うことなく適切に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による車体下部構造を電気自動車に適用した一つの実施例の全体を示す仰瞰斜視図。
【図2】本実施例による車体下部構造の全体を示す概略底面図。
【図3】本実施例による車体下部構造の後部を示すリヤフロア取外状態での拡大底面図。
【図4】本実施例による車体下部構造の後部を示すリヤフロア取外状態での拡大平面図。
【図5】本実施例による車体下部構造を後方から見た拡大背面図。
【図6】本実施例による車体下部構造の後部のリヤフロア取外状態での拡大俯瞰斜視図。
【図7】本実施例による車体下部構造の後部のリヤフロア取外状態での拡大仰瞰斜視図。
【図8】図3の線IIX−IIXに沿った拡大断面図。
【図9】図3の線IX−IVに沿った拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明による車体下部構造を電気自動車に適用した一つの実施例を、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の説明において、「接合」は、特にことわりがない限り、スポット溶接等の溶接による接合である。各部材は、一般鋼板製で、必要に応じて一部の部材が高張力鋼板製であってよい。「ハット形断面形状」は、溝形断面形状部を含み、溝形断面形状部の両側片に、外方に延出したフランジ片(溶接代)を有するものの横断面形状である。
【0023】
本実施例の電気自動車は、図1、図2に示されているように、下部骨格構造体として、車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム10と、車体前後方向に延在し前端を各々左右のフロントサイドフレーム10に後端に接合された左右のフロアフレーム12と、車体前後方向に延在し前端を各々左右のフロアフレーム12に後端に接合された左右のリヤフレーム14と、フロアフレーム12より車幅方向外側を車体前後方向に延在し前端を各々左右のフロントサイドフレーム10に接合され且つ後端を左右のリヤフレーム14の後端に接合された左右のサイドシル16とを有する。
【0024】
なお、フロアフレーム12とサイドシル16の上部は、図8、図9に示されているように、略同じ高さ位置にあるが、リヤフレーム14の高さ寸法がサイドシル16の高さ寸法より小さいことにより、リヤフレーム14の下部はサイドシル16の下部より高い位置にある。
【0025】
本実施例では、フロアフレーム12とリヤフレーム14とサイドシル16とによって左右のサイドメンバが左右個別に構成されている。
【0026】
左右のサイドシル16間には、左右の縁部をサイドシル16に接合された左右のサイドシル16間に延在するフロントフロアパネル18が設けられている。左右のリヤフレーム14には、左右の縁部を左右のリヤフレーム14に接合されて左右のリヤフレーム14間に延在するリヤフロアパネル20が設けられている。リヤフロアパネル20は前縁をフロントフロアパネル18の後縁に接合されてフロントフロアパネル18と車体前後方向に連続している。リヤフロアパネル20の車体後部側は、車幅方向中央に大きい凹部22Aを形成されたスペアタイヤパン22をなしている。
【0027】
リヤフレーム14は、上方開口のハット形断面形状をしており、リヤフロアパネル20の下面に接合されることにより閉じ断面形状をなす(図9参照)。サイドシル16は、側方開口のハット形断面形状をしたインナメンバ16Aとアウタメンバ16Bとの接合体(図5参照)によって構成され、閉じ断面形状をなす。
【0028】
フロントフロアパネル18及びリヤフロアパネル20の下面側には、左右のフロアフレーム12間及び左右のリヤフレーム14間の略車幅方向一杯の横幅を有する略板状のバッテリケース90が水平に配置されている。バッテリケース90は、フロントサイドフレーム10の後端近傍から車体前後方向に図示されていない後輪の車軸近傍まで車体前後方向に連続して延在している。
【0029】
バッテリケース90は、金属製のもので、内部に、Liイオン二次電池によるバッテリパック92(図8参照)や、図示されていない電池制御ユニット、DC−DCコンバータ、インバータ等を内蔵し、IPU(Intelligent Power Uuit)のアウタシェルをなしている。
【0030】
左右のリヤフレーム14には、図4に示されているように、第1リヤフロアクロスメンバ(第1のクロスメンバ)24と、第2リヤフロアクロスメンバ(第2のクロスメンバ)26の各々の両端が接合されている。
【0031】
第1リヤフロアクロスメンバ24は、シートベルト固定具(図示省略)を装着される車体側シートベルト固定用クロスメンバであり、下方開口のハット形断面形状をしていて、リヤフロアパネル20の上面に沿って車体幅方向に延在し、リヤフロアパネル20の上面に接合されることにより閉じ断面形状をなす(図9参照)。第1リヤフロアクロスメンバ24は、リヤフレーム14の前端近傍に対応する車体前後方向位置に配置され、バッテリケース90の後端より車体前側にある。換言すると、バッテリケース90は、第1リヤフロアクロスメンバ24の配置位置に対応する車体前後方向位置から車体後方まで延在している。
【0032】
第2リヤフロアクロスメンバ26は、図3〜図7に示されているように、第1リヤフロアクロスメンバ24より後方位置で、且つバッテリケース90の後端より後方位置にあって、上方開口のハット形断面形状をしていて、スペアタイヤパン22の下面に沿って車体幅方向に延在し、スペアタイヤパン22の下面に接合されることにより閉じ断面形状をなす(図5参照)。なお、第2リヤフロアクロスメンバ26の溝形内部には、第2リヤフロアクロスメンバ26の補強のために、図6に示されているように、左右各2箇所の溝形内部を前後に延在して溝形内部を区切るバルクヘッドメンバ28、30が接合されている。
【0033】
第2リヤフロアクロスメンバ26は、スペアタイヤパン22の凹部22Aの下部に位置する部分に、下方に向けて膨出した左右二つの膨出部26Aを有する。左右の膨出部26Aには、後輪サスペンションの左右のロアアーム110を支持するロアアーム取付部26Bが形成されている。ロアアーム取付部26Bは、各々、支持軸112を両持ち支持するブラケット構造をしており、車幅方向に延在するロアアーム110の一端部(内側端)を支持軸112によって車体前後方向の水平な中心軸線に回動可能に支持している。このようにして、第2リヤフロアクロスメンバ26は、後輪サスペンションのために本来必要なサスペンション取付用クロスメンバをなす。
【0034】
左右のリヤフレーム14の前端近傍の下底部には、後輪サスペンションの左右のトレーリングアーム114を支持するトレーリングアーム取付部(トレーリングアーム取付点)14Aが形成されている。トレーリングアーム取付部14Aは第1リヤフロアクロスメンバ24の配置位置に対応する車体前後方向位置により車体前方にある(図4参照)。トレーリングアーム取付部14Aは、リヤフレーム14を下面側から見て凹状になっていて、トレーリングアーム114の前端(基端)を回動可能に支持すべくリヤフレーム14の下底部に固定されたブラケット116の上側半分を収容する。
【0035】
左右のトレーリングアーム114は、各々、後端(先端)を左右のロアアーム110の他端部(外側端)に枢動可能に連結されている。左右のトレーリングアーム114の後端近傍には、各々、左右の後輪用ナックル部材(図示省略)の取付部114Aが構成されている。リヤフレーム14のトレーリングアーム取付部14Aは、第1リヤフロアクロスメンバ24の配置位置に対応する車体前後方向位置より車体前方にある(図4参照)。
【0036】
つぎに、バッテリケース90の支持構造について、図1〜図3、図7〜図9を参照して説明する。バッテリケース90は、車体前後方向の4箇所に設けられた第1下部クロスメンバ40と、第2下部クロスメンバ42と、第3下部クロスメンバ44と、第4下部クロスメンバ46とによって支持されている。なお、第1下部クロスメンバ40が最も車体前方にあり、これにより車体後方に、互いに所定の前後間隔をおいて第2〜第4下部クロスメンバ42、44、46が順に配置されている。第1〜第4下部クロスメンバ40、42、44、46は、すべて2枚のプレス形成鋼板を接合したもので、扁平な閉じ断面形状をなしている。
【0037】
第1下部クロスメンバ40は、図1、図2に示されているように、バッテリケース90の下面側を車体幅方向に横切るように水平に延在し、両端を左右のフロアフレーム12より各々垂下された箱形の脚部部材48の下端にボルト50等によって着脱可能に固定されている。第1下部クロスメンバ40は、左右のフロアフレーム12間において複数個のボルト52によってバッテリケース90の下面に固定され、バッテリケース90を下側から支持している。
【0038】
同様に、第2下部クロスメンバ42は、図1、図2に示されているように、バッテリケース90の下面側を車体幅方向に横切るように水平に延在し、両端を左右のフロアフレーム12より各々垂下された箱形の脚部部材54の下端にボルト56等によって着脱可能に固定されている。第2下部クロスメンバ42は、左右のフロアフレーム12間において複数個のボルト58によってバッテリケース90の下面に固定され、バッテリケース90を下側から支持している。
【0039】
なお、脚部部材48、54の上端のフロアフレーム12に対する固定は溶接によって行われている。
【0040】
また、第1下部クロスメンバ40及び第2下部クロスメンバ42の配置位置に対応する車体前後方向位置の、左右各々のフロアフレーム12とサイドシル16との間には、アウトリガー60、62が設けられている。アウトリガー60、62は、フロアフレーム12とサイドシル16とに接合されて箱形をなしている。
【0041】
アウトリガー60、62は、フロアフレーム12やサイドシル16より低強度、低剛性で、フロアフレーム12やサイドシル16に比して脆弱に構成されており、例えば、板厚が薄い普通鋼板により構成され、所定値以上の側部衝突エネルギによって圧潰(塑性変形)する衝撃吸収部材として作用する。
【0042】
図1〜図3、図7、図8に示されているように、左右のフロアフレーム12の後端近傍と左右のサイドシル16の後端近傍との各々の間には連結部材64が設けられている。連結部材64は、溝形断面形状をしていて各縁部に設けられたフランジ片64Aによってフロアフレーム12とサイドシル16とフロントフロアパネル18の各下面に接合されて箱状をなしている。
【0043】
連結部材64は、フロアフレーム12とサイドシル16とを連結するから、車体後部の剛性が向上し、ロードノイズ性能が向上する。また、アウトリガー60、62と同様に、フロアフレーム12やサイドシル16より低強度、低剛性で、フロアフレーム12やサイドシル16に比して脆弱に構成されていてもよい。この場合には、連結部材64は、所定値以上の側部衝突エネルギによって圧潰(塑性変形)する衝撃吸収部材としても作用する。
【0044】
第3下部クロスメンバ(第4のクロスメンバ)44は、バッテリケース90の下面側を車体幅方向に横切るように水平に延在し、両端を左右の連結部材64に固定されている。第3下部クロスメンバ44の連結部材64に対する固定は、コの字形断面の取付金具66と取付金具66の内側に配置されたカラー部材68とを貫通するボルト70とナット72とによって取り外し可能に行われている。第3下部クロスメンバ44は、左右のフロアフレーム12間においてバッテリケース90の底面に溶接によって固定され、バッテリケース90を下側から支持している。
【0045】
図9に示されているように、第1リヤフロアクロスメンバ24の下面の左右両側にはリヤフロアパネル20を挟んで各々ボルト74によって左右の脚部材76の上端が着脱可能に固定されている。左右の脚部材76は、リブ76Aを有する高剛性部材であり、左右のリヤフレーム14より車体幅方向内側にあって第1リヤフロアクロスメンバ24より垂下している。
【0046】
第4下部クロスメンバ(第3のクロスメンバ)46は、バッテリケース90の下面側を車体幅方向に横切るように水平に延在し、両端を左右の脚部材76の下端にカラー80を介してボルト78、ナット79によって取り外し可能に固定されている。第4下部クロスメンバ46は、左右のフロアフレーム12間においてバッテリケース90の底面に溶接によって固定され、バッテリケース90を下側から支持している。
【0047】
このようにして、第4下部クロスメンバ46は、トレーリングアーム114のリヤフレーム14に対する取付部であるトレーリングアーム取付部14Aより後方に配置され、トレーリングアーム取付部14Aより後方においてバッテリケース90の後端側を支持している。
【0048】
第4下部クロスメンバ46は、リヤフレーム14でなく、リヤフレーム14より車体幅方向内側において、脚部材76を介して第1リヤフロアクロスメンバ24に固定されているから、トレーリングアーム114と干渉することなくトレーリングアーム取付部14Aより後方に配置することができ、トレーリングアーム取付部14Aより後方においてバッテリケース90の後端側を支持することが可能になる。このことにより、バッテリケース90をトレーリングアーム取付部14Aより後方の後輪車軸の配置近傍にまで延長することができ、フロアパネル下の有効利用のもとに、バッテリケース90に収納されるバッテリパック92の大容量化がなされる。
【0049】
上述の実施例では、第1下部クロスメンバ40、第2下部クロスメンバ42のバッテリケース90に対する固定はボルト締結で、第3下部クロスメンバ44、第4下部クロスメンバ46のバッテリケース90に対する固定は溶接になっているが、このすべてがボルト締結あるいは溶接によって行われてもよい。
【0050】
第1〜第4下部クロスメンバ40、42、44、46のフロアフレーム12、連結部材64、脚部材76に対する固定は、ボルト50、56、70、78によって着脱可能に行われているので、バッテリケース90の取り付け、取り外しがフロアパネル下方より容易に行われ得るようになる。
【0051】
図1、図2、図5、図7に示されているように、第2リヤフロアクロスメンバ26と第4下部クロスメンバ46との間には、左右2本のロッド82が架け渡されている。左右のロッド82は、各々、後端を第2リヤフロアクロスメンバ26の車体幅方向中央部にボルト84によって結合され、前端を第4下部クロスメンバ46の車体幅方向の端部にボルト86によって結合され、平面視で「ハの字形」をなす配置になっている。
【0052】
左右のロッド82の後端の第2リヤフロアクロスメンバ26に対する結合位置は、各々、2つの膨出部26A間の谷側傾斜面で、左右のロアアーム取付部26Bの車幅方向内側に隣接した位置にある。
【0053】
左右のロッド82は、各々、前端近傍部と後端近傍部とに下方に折曲した折曲部82Aを有し、この前後の折曲部82A間が、図5に示されているように、バッテリケース90の下面より下方に膨出した膨出部82Bになっている。膨出部82Bは、ロッド82の第2リヤフロアクロスメンバ26に対する取付点とロアアーム110の第2リヤフロアクロスメンバ26に対する取付点との間で後退時の縁石衝突を防止する。
【0054】
更に、左右2本のロッド82は、第2リヤフロアクロスメンバ26及び第4下部クロスメンバ46と協働してトラス構造を構築している。
【0055】
これにより、第2リヤフロアクロスメンバ26の車体前後方向の倒れに対する強度が向上し、後突時の第2リヤフロアクロスメンバ26の車体前方への移動が抑制される。このことにより、後突時に後輪サスペンションのロアアーム支持のための第2リヤフロアクロスメンバ26が前方移動によってバッテリケース90の後部に当たることが回避され、後突に対するバッテリケース90の保護が、左右2本のロッド82の追加だけで、大幅な部品追加を伴うことなく適切に行われる。
【0056】
また、左右2本のロッド82は、第2リヤフロアクロスメンバ26と第4下部クロスメンバ46とでトラス構造をなすことにより、ロアアーム取付部26Bの横方向剛性が向上する。このことにより、ロアアーム110の横方向剛性が向上し、後輪サスペンションのジオメトリの安定性が向上する。これにより、操縦安定性能が向上する。この操安性向上の効果は、左右のロッド82の後端の第2リヤフロアクロスメンバ26に対する結合位置がロアアーム取付部26Bの車幅方向内側に隣接した位置にあることにより、トラス構造の頂部がロアアーム取付部26Bの近傍に位置することになり、ロアアーム取付部26Bの横方向剛性の向上が効果的に行われ、顕著なものになる。
【0057】
後突によって許容値以上の衝突エネルギが第2リヤフロアクロスメンバ26に作用した場合には、ロッド82が折り曲がる。これにより、後突の衝突エネルギの吸収がロッド82の折り曲がりによって行われ、バッテリケース90に大きい衝突荷重が作用することが回避される。この衝突エネルギによるロッド82の折り曲がりは、折曲部82Aによって生じ易いから、折曲部82Aの折り曲がり形状によって衝突エネルギによるロッド82の折り曲がり性能を設定することができる。
【0058】
また、バッテリケース90の下方に存在するロッド82の膨出部82Bは、車両が後進する際に、縁石(路面からの突起物)が、左右の後輪タイヤ間を通り抜けるバック縁石モードにおいて、縁石がバッテリケース90に当接(接地)することを防止する接地ガードとしても機能する。
【0059】
なお、第1〜第4下部クロスメンバ40、42、44、46の更に下方には、図1に示されているように、バッテリケース90の下面全体を覆う板状のアンダカバー89がフロアフレーム12やサイドシル16に着脱可能に取り付けられている。アンダカバー89は、接地や飛び石等に対するバッテリケース90の保護を行う。
【0060】
更に、第2リヤフロアクロスメンバ26の車体幅方向中央部には、当該第2リヤフロアクロスメンバ26より下方に突出したV形横断面形状の接地ガード部材88が取り付けられている。接地ガード部材88は、ジャッキアッププレートを兼ねていて、バック縁石モード時には、縁石がバッテリケース90に当接(接地)することを防止する接地ガードとしても機能する。
【0061】
以上、本発明を、その好適形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
例えば、リヤフレーム14がサイドシル16あるいはフロアフレーム12と一体構成であってもよい。フロアフレーム12がリヤフレーム14と接合されておらず、フロアフレーム12の後端が左右のサイドシル16あるいはリヤフレーム14を接続するフロアクロスメンバに接合されたものでもよい。また、フロアフレーム12やリヤフレーム14やサイドシル16は、それぞれ複数個の構成部材を接合してなるものであってもよい。ロッド82は、湾曲によってバッテリケースの下面より下方に膨出していもよい。第1〜第4下部クロスメンバ40、42、44、46のサイドメンバに対する固定は、ボルト50、56、70、78によらずに、クリップ等、他の着脱可能な締結具によって、取り外し可能に行ってもよい。
【0063】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 フロントサイドフレーム
12 フロアフレーム
14 リヤフレーム
16 サイドシル
18 フロントフロアパネル
20 リヤフロアパネル
22 スペアタイヤパン
24 第1リヤフロアクロスメンバ(第1のクロスメンバ)
26 第2リヤフロアクロスメンバ(第2のクロスメンバ)
26A 膨出部
40 第1下部クロスメンバ
42 第2下部クロスメンバ
44 第3下部クロスメンバ(第4のクロスメンバ)
46 第4下部クロスメンバ(第3のクロスメンバ)
64 連結部材
76 脚部材
82 ロッド
82A 折曲部
82B 膨出部
88 接地ガード部材
90 バッテリケース
110 ロアアーム
114 トレーリングアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在する左右のリヤフレームと、左右の縁部を前記左右のリヤフレームに接合されて当該左右のリヤフレーム間に延在するリヤフロアパネルと、両端を前記左右のリヤフレームに接合された第1のクロスメンバと、前記第1のクロスメンバより後方位置にあって両端を前記左右のリヤフレームに接合され、後輪スペンションの左右のロアアームを支持するロアアーム取付部を具備した第2のクロスメンバとを有する自動車の車体後部構造であって、前記第1のクロスメンバの両端より各々垂下された左右の脚部材と、両端を前記左右の脚部材の下端部に固定され、前記フロアパネルの下面側に配置されるバッテリケースを支持する第3のクロスメンバと、後端を第2のクロスメンバの左右のロアアーム取付部(26B)間の車体幅方向中央部に結合され前端を前記第3のクロスメンバの車体幅方向の端部に結合されて平面視でハの字形をなす左右一対のロッドと、
を有する自動車の車体下部構造。
【請求項2】
前記ロッドは、前記バッテリケースの下面より下方に膨出するように折曲あるいは湾曲している請求項1に記載の自動車の車体下部構造。
【請求項3】
前記左右のリヤフレームは、後輪サスペンションの左右のトレーリングアームの取付部を有し、前記第3のクロスメンバは前記トレーリングアームの取付部より後方に配置されている請求項1または2に記載の自動車の車体下部構造。
【請求項4】
前記第2のクロスメンバの車体幅方向中央部に当該第2のクロスメンバより下方に突出した接地ガード部材が取り付けられている請求項1から3の何れか一項に記載の自動車の車体下部構造。
【請求項5】
前記第3のクロスメンバの前記脚部材に対する固定と、前記ロッドの前記第3のクロスメンバに対する固定が締結具によって取り外し可能に行われている請求項1から4の何れか一項に記載の自動車の車体下部構造。
【請求項6】
更に、
車体前後方向に延在して後端を前記左右のリヤフレームに接合された左右のサイドシルと、
前記左右のサイドシルより車体幅方向内側を車体前後方向に延在して後端を前記左右のリヤフレームに接合された左右のフロアフレームと、
前記左右のフロアフレームと前記左右のサイドシルとに各々接合された左右の連結部材と、
両端を前記左右の連結部材に固定され、前記バッテリケースを支持する第4のクロスメンバと、
を有する請求項1から5の何れか一項に記載の自動車の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103635(P2013−103635A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249541(P2011−249541)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】