説明

自動車の車体側部構造

【課題】アッパメンバに入力された前突荷重の車体後部への伝達が、効率よく良好に行われるようにすること。
【解決手段】アッパメンバ22の内面に車体前後方向に延在するアッパメンバ用スチフナ40が取り付けられ、フロントピラー10の内面にヒンジ補強部材46が取り付けられ、フロントドア20のインナパネルに車体前後方向に延在するドアビーム部材48が取り付けられ、アッパメンバ用スチフナ40とヒンジ補強部材46とドアビーム部材48とが、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含む構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関し、特に、フロントドアを含む車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前部衝突対策をなされた自動車の車体構成には、下記のようなものが知られている。
【0003】
フロントドアのインナパネルに、車体前後方向に延在するドアビーム部材が取り付けられ、前部衝突時の衝突荷重がドアビーム部材によって車体後方へ伝達されることにより、車体側部のフロントドア開口部の変形を抑制回避するもの(例えば、特許文献1)。
【0004】
閉断面形状のフロントピラーの内面にドアヒンジスチフナが取り付けられ、ドアヒンジスチフナによってフロントピラーに対するフロントドアヒンジの取付部の補強を行い、前部衝突時の衝突荷重がフロントドアヒンジ部分よりフロントドアへ伝達されるようにしたもの(例えば、特許文献2)。
【0005】
フロントピラーより車体前方に延びるアッパメンバ(ホイールハウスアッパメンバ)がフロントピラーとの接続に加えて、ガセットプレートを用いてダシュボードアッパメンバの左右側部に接続され、アッパメンバのフロントピラー側の接続強度の向上を図ったもの(例えば、特許文献3)。
【0006】
フロントフェンダエプロンメンバのフロントピラーとの接続側に形成されたビードとフロントピラーとによってボックス断面形状部を設けることにより、フロントフェンダエプロンメンバとフロントピラーとの結合部の強度を高め、前部衝突時の衝突荷重がフロントフェンダエプロンメンバより上記結合部を経てフロントドアへ伝達されるようにしたもの(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−269591号公報
【特許文献2】特開2008−56138号公報
【特許文献3】特開2009−29202号公報
【特許文献4】特許第3776003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の前部衝突対策は、局所的な衝突荷重の伝達に関するものであり、ホイールハウスアッパメンバに入力される前突荷重を、フロントピラー、フロントドアを経由させて車体後方へ伝達すると云う一連の衝突荷重伝達を考慮したものでないため、ホイールハウスアッパメンバより車体後部への前突荷重の伝達が十分でない。
【0009】
例えば、フロントピラーの内面にドアヒンジスチフナが取り付けられたものは、フロントピラーからドアヒンジ部分を荷重伝達路としたフロントドアのドアビーム部材へ伝達が改善されても、フロントピラーへの前突荷重の入力について考慮がなく、前突荷重のフロントピラーへの伝達が十分でない。
【0010】
アッパメンバがフロントピラーとの接続に加えてガセットプレートを用いてダシュボードアッパメンバの左右側部に接続されているものは、アッパメンバのフロントピラー側の接続強度が増すものの、ガセットプレートを用いたアッパメンバとダシュボードアッパメンバとの接続部は、車体前後方向で見てフロントドアのドアビーム部材の配置位置より車体幅方向の内側に偏倚した位置にあるので、アッパメンバからドアビーム部材への前突荷重の伝達経路が屈曲したものとなり、アッパメンバからドアビーム部材への前突荷重の伝達が十分でない。
【0011】
フロントフェンダエプロンメンバのフロントピラーとの接続側に形成されたビードとフロントピラーとによってボックス断面形状部が形成されたものは、フロントフェンダエプロンメンバとフロントピラーとの結合部の強度が増すものの、ボックス断面形状部がフロントフェンダエプロンメンバとドアビーム部材との間に車体前後方向に一直線上に連続していないため、フロントフェンダエプロンメンバからドアビーム部材へのボックス断面形状部による荷重伝達経路が中断し、フロントフェンダエプロンメンバからドアビーム部材への前突荷重の伝達が十分でない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、アッパメンバとフロントピラーとの間の前突荷重伝達と、フロントピラーとドアビーム部材との間の前突荷重伝達とを関連付けて改善し、アッパメンバに入力された前突荷重の車体後部への伝達が、より一層効率よく良好に行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による車体側部構造は、閉断面形状のフロントピラー(10)と、前記フロントピラー(10)より車体前方に延在する閉断面形状のアッパメンバ(22)と、前記フロントピラー(10)の車体後方に位置するフロントドア(20)とを有する車体側部構造であって、前記アッパメンバ(22)の内面に取り付けられて車体前後方向に延在する第1の補強部材(40)と、前記フロントピラー(10)の内面に取り付けれた第2の補強部材(46)と、前記フロントドア(20)のインナパネル(20B)に取り付けられて車体前後方向に延在する第3の補強部材(48)とを有し、前記第1の補強部材(40)と前記第2の補強部材(46)と前記第3の補強部材(48)とは、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含んでいる。
【0014】
この車体側部構造によれば、アッパメンバ(22)とフロントピラー(10)とフロントドア(20)の各々に補強部材が取り付けられ、アッパメンバ(22)に取り付けられた第1の補強部材40)と、フロントピラー(10)に取り付けれた第2の補強部材(46)と、フロントドア(20)のインナパネル(20B)に取り付けられた第3の補強部材48の3者が、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含んでいるから、このオーバラップ部分によって、アッパメンバ(22)とフロントピラー(10)との間の前突荷重伝達と、フロントピラー(10)とドアビーム部材(48)との間の前突荷重伝達とが、連続直線状の荷重伝達経路をもって行われるようになり、アッパメンバ(22)に入力された前突荷重のフロントピラー(10)、ドアビーム部材(48)を経由しての車体後部への伝達が良好に行われるようになる。
【0015】
特に、前記第1の補強部材(40)と前記第2の補強部材(46)と前記第3の補強部材(48)とが、車体前後方向で見て互いにオーバラップする部分が、略水平に一直線上に存在していることにより、アッパメンバ(22)に入力された前突荷重のフロントピラー(10)、ドアビーム部材(48)を経由しての車体後部への伝達が効率よく良好に行われるようになる。
【0016】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記第1の補強部材(40)は、ハット断面形状のスチフナプレート(40)により構成され、前記アッパメンバ(22)の内面に溶接されて当該アッパメンバ(22)とで閉断面を形成する。
【0017】
この車体側部構造によれば、車体前後方向に延在する第1の補強部材(40)が、閉断面形状のアッパメンバ(22)の内部に更に閉断面を形成するから、アッパメンバ(22)の車体前後方向の耐圧荷重(剛性)が著しく向上し、フロントピラー(10)への前突荷重の伝達が良好に行われるようになる。
【0018】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記アッパメンバ(22)は、前記フロントピラー(10)との連結部の側に上方へ屈曲した屈曲部(22C)を有し、前記第1の補強部材(40)は、前記屈曲部(22C)に倣う形状をもって当該屈曲部(22C)の内面に溶接されている。
【0019】
この車体側部構造によれば、アッパメンバ(22)が前方に大きく傾斜したデザインでも、前突荷重伝達に有用な水平面を、第1の補強部材(40)に容易に形成でき、車体デザインの自由度が向上する。
【0020】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記第2の補強部材(46)は、前記フロントピラー(10)に取り付けられる前記フロントドア用のドアヒンジ(42)の取付部と整合する位置に設けられ、前記ドアヒンジ(42)の前記フロントピラー(10)に対する取付部の補強を行うドアヒンジ補強部材(46)である。
【0021】
この車体側部構造によれば、第2の補強部材(46)がドアヒンジ補強部材(46)として作用し、ドアヒンジ(42)と共働してドアヒンジ取付部のフロントピラー(10)の強度が向上し、当該部分を前突荷重伝達路とする車体後方への前突荷重の伝達が良好に行われるようになる。
【0022】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記第2の補強部材(46)は、ハット断面形状で、前記フロントピラー(10)の内面に溶接されて当該フロントピラー(10)とで閉断面を形成し、前記フロントピラー(10)の内部を上下に区切るバルクヘッド構造をなしている。
【0023】
この車体側部構造によれば、第2の補強部材(46)が、閉断面のフロントピラー(10)の内部に、更に閉断面を形成し、しかもフロントピラー(10)の内部を上下に区切るバルクヘッド構造をなしているから、フロントピラー(10)の剛性が著しく向上し、フロントドア(20)の第3の補強部材(48)への前突荷重の伝達が良好に行われるようになる。
【0024】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記第3の補強部材(48)は、S字横断面形状のドアビーム部材(48)により構成され、前記フロントドア(20)の前後方向幅一杯に亘って略水平に延在している。
【0025】
この車体側部構造によれば、フロントドア(20)の車幅方向の幅が広くても、第3の補強部材であるドアビーム部材(48)のS字横断面の図心(G)を、車体前後方向で見て、車幅方向で、フロントピラー(10)との荷重伝達経路と一致させることができ、フロントドア(20)の第3の補強部材(48)への前突荷重の伝達が良好に行われることを確保できる。
【0026】
本発明による車体側部構造は、好ましい一つの実施例として、前記第1補強部材(40)と第2補強部材(46)は、各々、水平面部分(40C、46D)を有し、これら水平面部(40C、46D)と前記ドアビーム部材(48)のS字横断面の図心(G)とが、車体前後方向で見て、互いにオーバラップしている。
【0027】
この車体側部構造によれば、アッパメンバ(22)の第1補強部材(40)の水平面部(40C)とフロントピラー(10)の第2補強部材(46)の水平面部(46D)の高さが一致し、さらに、これら水平面部(40C、46D)とドアビーム部材(48)の図心(G)の高さが一致し、アッパメンバ(22)よりフロントピラー(10)を経てフロントドア(20)のドアビーム部材(48)に至る連続直線状の荷重伝達経路が水平に形成されるから、フロントドア(20)のドアビーム部材(48)への前突荷重の伝達が良好に行われる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による車体側部構造によれば、アッパメンバに取り付けられた第1の補強部材と、フロントピラーに取り付けれた第2の補強部材と、フロントドアのインナパネルに取り付けられた第3の補強部材(ドアビーム部材)の3者が、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含んでいるから、アッパメンバに入力された前突荷重のフロントピラー、第3の補強部材を経由しての車体後部への伝達が良好に行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による車両の車体側部構造の一つの実施例を示す斜視図。
【図2】本実施例による車体側部構造の側面図。
【図3】本実施例による車体側部構造の要部の分解斜視図。
【図4】図1のA部分の拡大断面図。
【図5】図1のB部分の拡大断面図。
【図6】図1のC部分の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明による車両の車体側部構造の一つの実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
【0031】
まず、図1、図2を参照して車体側部構造の概要について説明する。なお、車体側部構造は左右対称であるから、ここでは、車体正面から見て左側の構成について説明する。
【0032】
図1、図2に示されているように、フロントピラー10とルーフレール12とセンタピラー14とサイドシル16とにより、フロントドア20のためのドア開口18が画定されている。
【0033】
フロントピラー10の前面部にはフロントピラー10より車体前方に延びるアッパメンバ(ホイールハウスアッパメンバ)22の基端部が溶接等によって接続されている。アッパメンバ22の先端部にはロアメンバ(ホイールハウスロアメンバ)24が接続されている。ロアメンバ24の先端部はフロントサイドフレーム26の先端部と連結されている。この連結部にはバルクベッドサイドメンバ28が接続されている。アッパメンバ22とフロントサイドフレーム26との間には、当該両者を接続するように、ホイールハウスを兼ねたダンパハウジング29が取り付けられている。
【0034】
つぎに、本発明の関係する車体構成の詳細を、図1〜図6を参照して説明する。アッパメンバ22は、図3、図4に示されているように、アウタアッパメンバ22Aとインナアッパメンバ22Bとの接合体により構成され、閉断面形状をなしている。なお、本実施例では、アッパメンバ22は、車体前側でインナアッパメンバ22Bと結合されるダッシュボードサイドメンバ30とインナアッパメンバ22Bとアウタアッパメンバ22Aとにより閉断面形状をなしている。
【0035】
ダッシュボードサイドメンバ30は、上端部をフロントウィンドシールドガラス支持パネル32の左右端部に接続され、下端部をアッパダッシュパネル34とロアアッパダッシュパネル36の左右端部に接続されている。ダッシュボードサイドメンバ30の内面にはハット断面形状のダッシュボードサイドメンバ用スチフナ38が溶接により固定されている。
【0036】
アウタアッパメンバ22Bに内面にはハット断面形状のアッパメンバ用スチフナ(第1の補強部材)40が取り付けられている。アッパメンバ用スチフナ40は、フロントピラー10との接続部より車体前方に延在しており、上下の溶接片40A、40Bをもってアウタアッパメンバ22Bに内面に溶接され、アウタアッパメンバ22Bとで閉断面を形成している。そして、アッパメンバ用スチフナ40は、車体前後方向に略水平に延在する水平面部40Cを含んでいる。
【0037】
本実施例では、アッパメンバ22は、フロントピラー10との連結部の側に上方へ屈曲した屈曲部22C(図2参照)を有している。アッパメンバ用スチフナ40の上側の溶接片40Aは屈曲部22Cに倣う形状をもって屈曲部22Cの内面に溶接されている。
【0038】
これにより、アッパメンバ22が前方に大きく傾斜したデザインでも、前突荷重伝達に有用な水平面部40Cをアッパメンバ用スチフナ40に容易に形成でき、車体デザインの自由度が向上する。
【0039】
なお、図示されていないが、ロアメンバ24も、アッパメンバ22と同様に、アウタロアメンバとインナロアメンバとの接合体により構成され、閉断面形状をなしている。
【0040】
フロントピラー10は、図5に示されているように、アウタピラーパネル10Aとインナピラーパネル10Bとの接合体により構成され、閉断面形状をなしている。アウタピラーパネル10Aの外面には、図1〜図3に示されているように、フロントドア用の上部ドアヒンジ42と下部ドアヒンジ44とが取り付けられている。上部ドアヒンジ42、下部ドアヒンジ44は、フロントドア10をアウタピラーパネル10Aに開閉可能に取り付けている。
【0041】
フロントピラー10内にはドアヒンジ補強部材(第2の補強部材)46が取り付けられている。ドアヒンジ補強部材46は上部ドアヒンジ42と整合する位置に設けられ、上部ドアヒンジ42のフロントピラー10に対する取付部の補強を行う。
【0042】
詳細には、ドアヒンジ補強部材46は、ハット断面形状で、上下の溶接片46A、46Bと、上下の水平片(水平面部)46D、46Eによって上下の溶接片46A、46Bに接続された頂片46Cとを折曲形成され、上下の溶接片46A、46Bをインナピラーパネル10Bの内面に溶接され、頂片46Cをアウタピラーパネル10Aの内面に、溶接、あるいは上部ドアヒンジ42をアウタピラーパネル10Aに固定するためのボルト等の締結具(図示省略)によって固定されている。
【0043】
これにより、ドアヒンジ補強部材46は、インナピラーパネル10Bとで閉断面を形成し、しかも、上下の水平片46D、46Eによってフロントピラー10の内部を上下に区切るバルクヘッド構造をなしている。
【0044】
フロントドア20は、図6に示されているように、アウタドアパネル20Aとインナドアパネル20Bとの接合体により構成されている。インナドアパネル20Bには、図1、図2に示されているように、当該ドアパネルの上縁に沿って車体前後方向に延在するドアビーム部材(第3の補強部材)48が取り付けられている。
【0045】
ドアビーム部材48は、S字の横断面形状をしており、インナドアパネル20Bの車体前後方向の幅一杯に略水平に延在し、上下の溶接片48A、48Bをインナドアパネル20Bの内面に溶接され、下側の溝形部48Cとインナドアパネル20Bとで閉断面を形成している。
【0046】
なお、アウタドアパネル20Aの内面には、側部衝突対策用のドアビーム部材50、52が取り付けられている(図1、図2参照)。
【0047】
本発明において、重要なことは、アッパメンバ用スチフナ40とドアヒンジ補強部材46とドアビーム部材48とが、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含んでおり、更には、この3者がオーバラップする部分は、略水平に一直線上に存在していることである。
【0048】
このオーバラップ部分によって、アッパメンバ22とフロントピラー10との間の前突荷重の伝達と、フロントピラー10とドアビーム部材48との間の前突荷重の伝達とが、連続直線状の荷重伝達経路をもって行われるようになる。これにより、アッパメンバ22に入力された前突荷重のフロントピラー10、ドアビーム部材48を経由しての車体後部への伝達が良好に行われるようになる。
【0049】
特に、このオーバラップする部分が、略水平に一直線上に存在していることにより、アッパメンバ22に入力された前突荷重のフロントピラー10、ドアビーム部材48を経由しての車体後部への伝達が、曲げモーメントを生じることなく、効率よく良好に行われるようになる。
【0050】
本実施例では、前突荷重伝達に有用なアッパメンバ用スチフナ40の水平面部40Cとドアヒンジ補強部材46の上側の水平片46Dの高さが一致し、さらに、これらとドアビーム部材48のS字横断面の図心Gの高さが一致している。
【0051】
これにより、アッパメンバ22よりフロントピラー10を経てドアビーム部材48に至る連続直線状の水平に荷重伝達経路が形成されるから、アッパメンバ22に入力された前突荷重のフロントピラー10、ドアビーム部材48を経由しての車体後部への伝達が、より一層、効率よく良好に行われるようになる。
【0052】
また、アッパメンバ用スチフナ40の水平面部40Cは、両側に車体前後方向に延在する折曲稜線a、bを、ドアヒンジ補強部材46の水平片46Dも、両側に車体前後方向に延在する折曲稜線c、dを有するので、これら水平面部40C、水平片46Dの車体前後方向の耐圧強度は相当高い。
【0053】
これにより、アッパメンバ用スチフナ40の水平面部40Cとドアヒンジ補強部材46の上側の水平片46Dによる車体後部への前突荷重伝達が、高い耐圧強度の状態で、効率よく良好に行われるようになる。
【0054】
また、ドアビーム部材48がS字横断面形状のものであることにより、フロントドア20の車幅方向の幅が広くても、ドアビーム部材48のS字横断面の図心Gを、車体前後方向で見て、車幅方向で、フロントピラー10との荷重伝達経路と一致させることができ、ドアビーム部材48への前突荷重の伝達が良好に行われることを確保できる。
【0055】
上述の前突荷重伝達において、アッパメンバ用スチフナ40、ドアヒンジ補強部材46は、閉断面のアッパメンバ22、フロントピラー10、インナドアパネル20Bの各々において内部に更に閉断面を形成するから、フロントピラー10、インナドアパネル20Bの車体前後方向の耐圧荷重(剛性)が著しく向上し、これらが前突荷重によって変形することなく、ドアビーム部材48への前突荷重の伝達が良好に行われる。
【0056】
特に、ドアヒンジ補強部材46は、フロントピラー10の内部を上下に区切るバルクヘッド構造をなしているから、フロントピラー10の強度、剛性を大幅に向上させる。
【符号の説明】
【0057】
10 フロントピラー
12 ルーフレール
14 センタピラー
16 サイドシル
18 ドア開口
20 フロントドア
22 アッパメンバ
40 アッパメンバ用スチフナ(第1の補強部材)
42 上部ドアヒンジ
44 下部ドアヒンジ
46 ドアヒンジ補強部材(第2の補強部材)
48 ドアビーム部材(第3の補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面形状のフロントピラーと、前記フロントピラーより車体前方に延びる閉断面形状のアッパメンバと、前記フロントピラーの車体後方に位置するフロントドアとを有する車体側部構造であって、
前記アッパメンバの内面に取り付けられて車体前後方向に延在する第1の補強部材と、
前記フロントピラーの内面に取り付けれた第2の補強部材と、
前記フロントドアのインナパネルに取り付けられて車体前後方向に延在する第3の補強部材とを有し、
前記第1の補強部材と前記第2の補強部材と前記第3の補強部材とは、車体前後方向で見て、互いにオーバラップする部分を含んでいる車体側部構造。
【請求項2】
前記第1の補強部材と前記第2の補強部材と前記第3の補強部材とが、車体前後方向で見て互いにオーバラップする部分は、略水平に一直線上に存在している請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記第1の補強部材は、ハット断面形状のスチフナプレートにより構成され、前記アッパメンバの内面に溶接されて当該アッパメンバとで閉断面を形成する請求項1または2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記アッパメンバは、前記フロントピラーとの連結部の側に上方へ屈曲した屈曲部を有し、前記第1の補強部材は、前記屈曲部に倣う形状をもって当該屈曲部の内面に溶接されている請求項1から3の何れか一項に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記第2の補強部材は、前記フロントピラーに取り付けられる前記フロントドア用のドアヒンジの取付部と整合する位置に設けられ、前記ドアヒンジの前記フロントピラーに対する取付部の補強を行うドアヒンジ補強部材である請求項1から4の何れか一項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記第2の補強部材は、ハット断面形状で、前記フロントピラーの内面に溶接されて当該フロントピラーとで閉断面を形成し、前記フロントピラーの内部を上下に区切るバルクヘッド構造をなしている請求項1から5の何れか一項に記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記第3の補強部材は、S字横断面形状のドアビーム部材であって、前記フロントドアの前後方向幅一杯に亘って略水平に延在している請求項1から6の何れか一項に記載の車体側部構造。
【請求項8】
前記第1補強部材と第2補強部材は、各々、水平面部分を有し、これら水平面部と前記ドアビーム部材のS字横断面の図心とが、車体前後方向で見て、互いにオーバラップしている請求項7に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194903(P2011−194903A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60490(P2010−60490)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】