説明

自動車の車体側部構造

【課題】フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの口開き変形を抑制又は防止することができる自動車の車体側部構造を提供する。
【解決手段】フロントピラーインナパネル20における上部接合部24と下部接合部26との間に設けられた凸ビード37に凹ビード38が形成されている。この凹ビード38はサイドアウタパネル12へ近接する方向へ向かって凹んでいる。このため、路面からの突き上げ荷重(矢印F)によりカウルトップサイドパネルが上方へ変位すると、仮想線で示されるように、凹ビード38は凹み量が増える方向へ変形し、当該凹ビード38はサイドアウタパネル12側へさらに凹むこととなる。つまり、フロントピラーインナパネル20をサイドアウタパネル12の動きに追従させることができる。これにより、口開きの変形を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体側部構造に係り、特に、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとを結合する自動車の車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の自動車の車体前部構造では、エプロンアッパメンバにおいて、上下二層の閉断面部に仕切る仕切壁が設けられている。このエプロンアッパメンバの下方の閉断面部の後端部は後方へ向けて拡大する形状を成している。そして、当該エプロンアッパメンバの後端部は縦長方形状に形成され、フロントピラーの前面と結合されている。これにより、サスペンションから作用する横方向の振動に対する剛性を強化するというものである。
【0003】
また、特許文献2に記載の自動車の車体側部構造では、フロントピラーに対するエプロンメンバやフェンダエプロンの結合部の一部が折り曲げられて補強されている。これにより、当該結合部の一部に応力集中が生じないようにするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145119号公報
【特許文献2】特開平10−218028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、フロントピラーとエプロンアッパメンバとの間でスポット溶接等による接合がなされる場合、スポット溶接の打点部において、当該打点部間の距離が離れている自動車がある。一方、サスペンションに路面からの突き上げ荷重が入力された際、エプロンアッパメンバが車両高さ方向に大きく変位し、当該エプロンアッパメンバとフロントピラーとの打点部間の距離が短くなる。このため、上記先行技術では、フロントピラーインナパネル及びサイドアウタパネルが、打点部を起点に口開き変形し、当該打点部において高い応力が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの口開き変形を抑制又は防止することができる自動車の車体側部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明の自動車の車体側部構造は、車両側部に設けられたサイドアウタパネルと、前記サイドアウタパネルの車両前部側における車両高さ方向の中央側に設けられたカウルトップサイドパネルと、前記カウルトップサイドパネルと共に前記サイドアウタパネルが接合された下部接合部と前記下方接合部の上方に位置し当該サイドアウタパネルが接合された上部接合部とを有して、前記サイドアウタパネルとの間で閉断面が構成されたフロントピラーインナパネルと、前記フロントピラーインナパネルにおける前記上部接合部と前記下部接合部との間に形成され、前記サイドアウタパネルへ近接する方向へ向かって凹む凹ビードと、を有している。
【0008】
請求項1記載の本発明の自動車の車体側部構造では、車両側部に設けられたサイドアウタパネルの車両前部側における車両高さ方向の中央側には、カウルトップサイドパネルが設けられている。また、サイドアウタパネルはフロントピラーインナパネルに接合されており、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの間で閉断面が構成されている。さらに、フロントピラーインナパネルの下部接合部では、カウルトップサイドパネルと共にサイドアウタパネルがフロントピラーインナパネルに接合され、下部接合部の上方に位置する上部接合部では、フロントピラーインナパネルにサイドアウタパネルが接合されている。
【0009】
ここで、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの間では閉断面が構成されているため、フロントピラーインナパネル及びサイドアウタパネルの少なくとも一方が他方に対して離間する方向へ膨らんだ形状となっている。本発明では、フロントピラーインナパネルにおける上部接合部と下部接合部との間に、サイドアウタパネルへ近接する方向へ向かって凹む凹ビードが形成されている。
【0010】
カウルトップサイドパネルは、一般的に、サスペンションタワーが接合されたエプロンアッパメンバと接合されている。このため、サスペンションに路面からの突き上げ荷重が入力されると、エプロンアッパメンバを介して、カウルトップサイドパネルが上方へ変位する。これにより、凹ビードは凹み量が増える方向へ変形し、当該凹ビードはサイドアウタパネル側へさらに凹むこととなる。
【0011】
つまり、フロントピラーインナパネルに当該凹ビードを設けることで、カウルトップサイドパネルが上方へ変位しても当該フロントピラーインナパネルをサイドアウタパネルの動きに追従させることができる。これにより、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの間で生じる口開きの変形量を低減させることができ、下部接合部において発生する応力を低減させることができる。
【0012】
また、フロントピラーインナパネルに凹ビードを設けることで、フロントピラーインナパネルには略車両前後方向(L軸方向)に沿って横壁が設けられ、略車両高さ方向(H軸方向)に沿って縦壁が設けられることとなる。これにより、L軸回り及びH軸回りの曲げに対する剛性が向上する。このように、フロントピラーインナパネルにおいて、L軸回りの曲げに対する剛性が向上することで、車両前面衝突・オフセット衝突における衝突安全性も同時に向上する。また、H軸回りの曲げに対する剛性が向上することで、レーンチェンジ・旋回時における操縦安定性も同時に向上する。
【0013】
なお、ここでの「略車両高さ方向」には、車両高さ方向だけでなく車両高さ方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。また、「略車両前後方向」には、車両前後方向だけでなく車両前後方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。また、「略車両前後方向に沿って」又は「略車両高さ方向に沿って」設けられていれば良いため、横壁及び縦壁は必ずしも直線状に形成される必要はない。
【0014】
請求項2記載の本発明の自動車の車体側部構造は、請求項1に記載の自動車の車体側部構造において、前記凹ビードの車両上方側及び車両下方側の少なくとも一方に車両前後方向に沿って延在され前記サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らむ横凸ビードが形成されている。
【0015】
請求項2記載の本発明の自動車の車体側部構造では、凹ビードの車両上方側及び車両下方側の少なくとも一方に、車両前後方向に沿って延在された横凸ビードが形成されている。この横凸ビードは、サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らんでおり、凹ビードとは反対方向へ向かって膨らんでいる。このように横凸ビードを設けることで、車両前後方向に沿った突っ張り力がより強化されると共に、車両前面衝突荷重(前突荷重)が入力された際に凹ビードに作用する荷重を低減することができる。
【0016】
請求項3記載の本発明の自動車の車体側部構造は、請求項1又は2に記載の自動車の車体側部構造において、前記凹ビードの車両前方側及び車両後方側の少なくとも一方に、車両高さ方向に沿って延在され前記サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らむ縦凸ビードが形成されている。
【0017】
請求項3記載の本発明の自動車の車体側部構造では、凹ビードの車両前方側及び車両後方側の少なくとも一方に、車両前後方向に沿って延在された縦凸ビードが形成されている。この縦凸ビードは、サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らんでおり、凹ビードとは反対方向へ向かって膨らんでいる。このように縦凸ビードを設けることで、車両高さ方向に沿った突っ張り力がより強化されると共に、路面からの突き上げ荷重が入力された際に凹ビードに作用する荷重を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明の自動車の車体側部構造は、フロントピラーインナパネルとサイドアウタパネルとの口開き変形を抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明の自動車の車体側部構造は、車両前面衝突・オフセット衝突における衝突安全性をさらに向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明の自動車の車体側部構造は、レーンチェンジ・旋回時における操縦安定性をさらに向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係る自動車の車体側部構造が適用されたフロントピラー等を示す車両幅方向外側から見た側面図である。
【図2】図1の要部を示す分解側面図である。
【図3】図2に示すフロントピラーインナパネルにおける、要部を拡大して示す要部拡大側面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って切断した状態を示す断面図(端面図)である。
【図5】図4に対応する比較例を示す断面図(端面図)である。
【図6】図6(A)、(B)は本実施形態の第1変形例を示しており、(A)は図3に対応する要部拡大側面図であり、(B)は(A)に示す6(B)−6(B)線に沿って切断した状態を示す断面図(端面図)である。
【図7】本実施形態の第2変形例を示す図3に対応する要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本実施形態に係る自動車の車体側部構造について、図1〜図4に従って説明する。なお、図中矢印FRは車両前方方向を示し、矢印UPは車両上方方向を示している。また、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0023】
(自動車の車体側部構造)
図1には、本実施の形態に係る自動車の車体側部構造が適用された車両前部側に位置する鋼板製のフロントピラー10、サイドアウタパネル12及びカウルトップサイドパネル14において、車両幅方向内側から見た側面図が示されている。なお、本実施の形態に係る自動車の車体側部構造において要部となる部材は、フロントピラーインナパネル20、サイドアウタパネル12及びカウルトップサイドインナパネル14Aであり、図1ではこれらの部材には互いに密度の異なるドットを入れて各部材の配置が分かるようにしている。そして、図2では、図1において要部となる部材が個々に示されている。
【0024】
図1に示されるように、カウルトップサイドパネル14はカウルトップサイドインナパネル14A及びカウルトップサイドアウタパネル14B(仮想線で示す)を含んで構成されており、カウルトップサイドインナパネル14Aはカウルトップサイドアウタパネル14Bの車両幅方向内側に配設されている。
【0025】
カウルトップサイドインナパネル14Aの断面形状は、例えば略逆L字状を成しており、車両幅方向の内側から見て略逆三角形状となるように形成されている。一方、カウルトップサイドアウタパネル14Bは断面形状が略矩形波形状を成しており、車両幅方向内側が開放されている。このカウルトップサイドアウタパネル14Bの上壁にカウルトップサイドインナパネル14Aが溶接等によって取り付けられている。
【0026】
カウルトップサイドアウタパネル14Bには、車両前後方向に沿って延在する図示しない鋼板製のエプロンアッパメンバの後端部が接合されている。このエプロンアッパメンバの車両幅方向内側には、サスペンションタワーが配置され、サスペンションタワーの上端部が溶接等によってエプロンアッパメンバに接合されている。これにより、車両のサスペンションからサスペンションタワーへ路面からの突き上げ荷重が入力されると、サスペンションタワー及びエプロンアッパメンバを介してカウルトップサイドパネル14へ当該突き上げ荷重が伝達される。
【0027】
一方、車体外側部にはサイドアウタパネル12が設けられている。このサイドアウタパネル12には、図示しないサイドドアによって開閉される開口部12Aが形成されており、略枠状を成している(ここでは、車両前部側のみが図示されている)。なお、符号16、18は、車両幅方向外側(図中奥側)へ向かって膨らむビードである。
【0028】
そして、当該サイドアウタパネル12における車両前部側の車両幅方向内側の面がフロントピラーインナパネル20に接合されることで、フロントピラー10の一部が形成されている。ここで、図2に示されるように、フロントピラーインナパネル20には車両高さ方向に沿って形成された基部28が備わっている。この基部28の上端部からは、車両上方へ向かうにつれて車両後方へ向かって傾斜する傾斜部30が延出されている。この傾斜部30の幅は基部28の幅よりも狭くなるように設定されている。
【0029】
フロントピラーインナパネル20の基部28における車両前部側の中央部側には、略車両前後方向に沿って延在されると共に、車両幅方向内側(図中手前側)へ向かって膨らむ横凸ビード32が形成されている。この横凸ビード32の下方側には、当該横凸ビード32と同様、略車両前後方向に沿って延在されると共に、車両幅方向内側(図中手前側)へ向かって膨らむ横凸ビード34が形成されている。
【0030】
なお、ここでの「略車両前後方向」には、車両前後方向だけでなく車両前後方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。また、横凸ビード32、34は「略車両前後方向に沿って」設けられていれば良いため、必ずしも直線状に形成される必要はない。他の横凸ビードについても、当該横凸ビード32、34と同様である。
【0031】
また、基部28における車両前部側の中央部側には、横凸ビード32と横凸ビード34の間を架け渡すように略車両高さ方向に沿って延在されると共に、車両幅方向内側(図中手前側)へ向かって膨らむ縦凸ビード35が形成されている。この縦凸ビード35の車両後方側には、当該縦凸ビード35と同様、略車両高さ方向に沿って延在されると共に、車両幅方向内側(図中手前側)へ向かって膨らむ縦凸ビード36が形成されている。
【0032】
なお、ここでの「略車両高さ方向」には、車両高さ方向だけでなく車両高さ方向に対して若干の角度を有した場合も含まれる。また、縦凸ビード35、36は、「略車両高さ方向に沿って」設けられていれば良いため、必ずしも直線状に形成される必要はない。他の縦凸ビードについても、当該縦凸ビード35、36と同様である。
【0033】
また、基部28における車両前方側の中央部には、横凸ビード32、34及び縦凸ビード35、36で囲まれた空間内に車両幅方向外側(図中奥側)へ向かって凹んだ凹ビード38が形成されている。ここで、横凸ビード32、34及び縦凸ビード35、36は、凸ビード37の一部を構成しており、当該凸ビード37に凹ビード38を設けることによって、凹ビード38の回りに横凸ビード32、34及び縦凸ビード35、36が形成されているということもできる。
【0034】
さらに補足すると、図3には、図2で示すフロントピラーインナパネル20における、凹ビード38、横凸ビード32、34及び縦凸ビード35、36が形成された部分(凸ビード37の一部)を拡大した要部拡大側面図が示されている。図3に示されるように、横凸ビード32には、当該横凸ビード32の一部を構成し略車両前後方向に沿って横壁40が形成されている。また、横凸ビード34には、当該横凸ビード34の一部を構成し略車両前後方向に沿って横壁42が形成されている。さらに、縦凸ビード35には、当該縦凸ビード35の一部を構成し略車両高さ方向に沿って縦壁44が形成されている。また、縦凸ビード36には、当該縦凸ビード36の一部を構成し略車両高さ方向に沿って縦壁45が形成されている。
【0035】
一方、凹ビード38は略四角形状を成している。また、凹ビード38は、横凸ビード32の横壁40と略平行な横壁38Aと、横凸ビード34の横壁42と略平行な横壁38Bと、縦凸ビード35の縦壁44と略平行な縦壁38Cと、縦凸ビード36の縦壁45と略平行な縦壁38Dと、を含んで構成されている。なお、ここでの「略平行」には、対向する壁同士が互いに若干の角度を有した場合も含まれる。そして、凹ビード38の横壁38A、38Bは、横凸ビード32、34の一部をそれぞれ構成し、凹ビード38の縦壁38C、38Dは、縦凸ビード35、36の一部をそれぞれ構成している。
【0036】
以上のように、本実施形態では、図2に示すサイドアウタパネル12に、車両幅方向外側(図中奥側)へ向かって膨らむビード16、18が設けられている。そして、フロントピラーインナパネル20には、車両幅方向内側(図中手前側)へ向かって膨らむ凸ビード37が設けられている。
【0037】
このため、図4に示されるように(なお、図4は図3の4−4線に沿って切断した状態を示す断面図(端面図)が実線で示されている)、フロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12とが、例えばスポット溶接によって接合された状態でフロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12との間で閉断面部22が形成される。
【0038】
そして、図4に示す上部接合部24では、フロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12とが接合され、下部接合部26では、カウルトップサイドインナパネル14A(図1参照)と共にフロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12とが接合(共打ち)されるようになっている。この上部接合部24と下部接合部26の間に、凹ビード38が設けられている。
【0039】
(自動車の車体側部構造の作用・効果)
次に、本実施の形態に係る自動車の車体側部構造の作用・効果について説明する。
【0040】
図1に示されるカウルトップサイドパネル14は、一般的に、サスペンションタワー(図示省略)が接合されたエプロンアッパメンバ(図示省略)と接合されている。一方、図4に示されるように、フロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12とが接合された状態で、フロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12との間で閉断面部22が形成されている。
【0041】
このため、フロントピラーインナパネル20の上部接合部24と下部接合部26との間の距離が離れている場合、路面からの突き上げ荷重(矢印F)がサスペンションに入力されると、エプロンアッパメンバが車両高さ方向に沿って大きく上方へ変位する。これにより、エプロンアッパメンバに接合されたカウルトップサイドパネル14(図1参照)が上方へ変位し下部接合部26と上部接合部24との距離が短くなる(仮想線で示す)。
【0042】
図5には本実施形態に係る自動車の車体側部構造が適用されていないフロントピラーインナパネル100が実線で示されている。当該フロントピラーインナパネル100を用いた場合、路面からの突き上げ荷重(矢印F)によりカウルトップサイドパネル14が上方へ変位すると、仮想線で示されるように、当該フロントピラーインナパネル100とサイドアウタパネル12との間で離間距離が広がる。つまり、下部接合部26を起点として口開き変形する。これにより、下部接合部26において、フロントピラーインナパネル100がサイドアウタパネル12から剥離する方向へ向かう高い応力が発生することとなる。
【0043】
しかし、本実施形態では、図4に実線で示されるように、フロントピラーインナパネル20における上部接合部24と下部接合部26との間には、車両幅方向内側へ膨らむ凸ビード37が設けられており、当該凸ビード37に凹ビード38が形成されている。この凹ビード38は車両幅方向外側へ膨らみ、サイドアウタパネル12へ近接する方向へ向かって凹んでいる。このため、路面からの突き上げ荷重(矢印F)によりカウルトップサイドパネル14(図1参照)が上方へ変位すると、仮想線で示されるように、凹ビード38は凹み量が増える方向へ変形し、当該凹ビード38はサイドアウタパネル12側へさらに凹むこととなる。
【0044】
つまり、フロントピラーインナパネル20に凹ビード38を設けることで、当該カウルトップサイドパネル14が上方へ変位しても当該フロントピラーインナパネル20をサイドアウタパネル12の動きに追従させることができる。これにより、口開きの変形を低減させることができ、下部接合部26において発生する応力を低減させることができる。なお、凹ビード38の形状と突き上げ荷重(矢印F)の大きさによっては、口開き変形が防止される場合もある。
【0045】
また、図3に示されるように、本実施形態では、フロントピラーインナパネル20に設けられた凸ビード37に略四角形状の凹ビード38が設けられている。これにより、フロントピラーインナパネル20の凹ビード38の回りには、略車両前後方向(L軸方向)に沿って横凸ビード32、34が設けられ、略車両高さ方向(H軸方向)に沿って縦凸ビード35、36が設けられる。
【0046】
このように、凹ビード38の回りに横凸ビード32、34が設けられることで、フロントピラーインナパネル20において、L軸方向に沿って突っ張り力がより強化されると共に、車両前面衝突荷重(前突荷重)が入力された際に凹ビード38に作用する荷重を低減することができる。これにより、車両前面衝突・オフセット衝突における衝突安全性も同時に向上する。また、凹ビード38の回りに縦凸ビード35、36が設けられることで、フロントピラーインナパネル20において、H軸方向に沿って突っ張り力がより強化されると共に、路面からの突き上げ荷重(矢印F)が入力された際に凹ビード38に作用する荷重を低減することができる。これにより、レーンチェンジ・旋回時における操縦安定性も同時に向上する。
【0047】
(上記実施形態の補足説明)
なお、ここでは凹ビード38回りに横凸ビード32及び横凸ビード34が形成されているが、横凸ビード32又は横凸ビード34のみが形成されても良い。縦凸ビード35、36も横凸ビード32、34と同様である。また、凹ビード38回りに横凸ビード又は縦凸ビードのみが形成されても良い。
【0048】
また、ここでは凹ビード38回りの横凸ビード32、34及び縦凸ビード35、36について説明したが、フロントピラーインナパネル20には、これ以外にも凸ビード37内には横凸ビード及び縦凸ビードは形成されており、当該横凸ビード及び縦凸ビードによっても横凸ビード32、34又は縦凸ビード35、36と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、フロントピラーインナパネル20とサイドアウタパネル12との接合について、一例としてスポット溶接を挙げて説明したが、スポット溶接以外の溶接接合やボルト接合等においても本発明は適用可能である。また、フロントピラーインナパネル20の形状について、上記実施形態による形状に限定されない。
【0050】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、図4に示されるように、凹ビード38の形状において、凹ビード38の底部となる段部が1つとなっているが、図6(A)、(B)に示されるように、凹ビード46に2つの段部46A、46Bが形成されても良い。なお、図6(A)は、図3に対応して図示された変形例であり、図6(B)は図6(A)で示す6(B)−6(B)線に沿って切断した状態を示す断面図(端面図)である。
【0051】
これによると、図6(B)に示されるように、フロントピラーインナパネル48をサイドアウタパネル12側へさらに近接させることができる。このため、路面からの突き上げ荷重(矢印F)によりカウルトップサイドパネル14(図1参照)が上方へ変位すると、フロントピラーインナパネル48を当該サイドアウタパネル12の動きにさらに追従させることができる。つまり、口開きの変形をさらに低減させることができる。
【0052】
一方、図7に示されるように、フロントピラーインナパネル50における車両前部の中央には、車両幅方向内側(図面手前側)から車両幅方向外側へ向かって折り曲げられたフランジ部52が形成されている。このフランジ部52の稜線は車両高さ方向に沿って形成されており、当該フランジ部52に掛かるようにして凹ビード54が形成されるようにしても良い。
【0053】
ここで、凹ビード54を設けることで、当該凹ビード54を構成する横壁54A、54B設けられることとなるが、この横壁54A、54Bがフランジ部52と繋がる。このため、フロントピラーインナパネル20において、略車両前後方向(L軸方向)に沿って突っ張り力がより強化され、L軸回りの曲げに対する剛性がさらに向上する。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 フロントピラー
12 サイドアウタパネル
14A カウルトップサイドインナパネル(カウルトップサイドアウタパネル)
14 カウルトップサイドパネル
20 フロントピラーインナパネル
22 閉断面部
24 上部接合部
26 下部接合部
32 横凸ビード
34 横凸ビード
35 縦凸ビード
36 縦凸ビード
37 凸ビード
38 凹ビード
46 凹ビード
48 フロントピラーインナパネル
50 フロントピラーインナパネル
54 凹ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部に設けられたサイドアウタパネルと、
前記サイドアウタパネルの車両前部側における車両高さ方向の中央側に設けられたカウルトップサイドパネルと、
前記カウルトップサイドパネルと共に前記サイドアウタパネルが接合された下部接合部と、前記下方接合部の上方に位置し当該サイドアウタパネルが接合された上部接合部と、を有して、前記サイドアウタパネルとの間で閉断面が構成されたフロントピラーインナパネルと、
前記フロントピラーインナパネルにおける前記上部接合部と前記下部接合部との間に形成され、前記サイドアウタパネルへ近接する方向へ向かって凹む凹ビードと、
を有する自動車の車体側部構造。
【請求項2】
前記凹ビードの車両上方側及び車両下方側の少なくとも一方に車両前後方向に沿って延在され前記サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らむ横凸ビードが形成されている請求項1に記載の自動車の車体側部構造。
【請求項3】
前記凹ビードの車両前方側及び車両後方側の少なくとも一方に車両高さ方向に沿って延在され前記サイドアウタパネルから離間する方向へ向かって膨らむ縦凸ビードが形成されている請求項1又は2に記載の自動車の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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