説明

自動車の車体前部構造

【課題】車両衝突時に、バンパレインフォースメントが後退した場合にシュラウドパネルに接触するまでの距離を長くして、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルや車両装備品との接触を極力回避して、シュラウドパネルや車両装備品の損傷を防止すると共に、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルを接近させて、エンジンルームを大きくできる、車体前部構造を提供する。
【解決手段】シュラウドパネル5の縦枠部13の前側に対面するバンパレインフォースメント4の後面部に凹部9を設けることにより、バンパレインフォースメント4がシュラウドパネル5の縦枠部13に接触するまでの距離が長くなり、バンパレインフォースメント4とシュラウドパネル5の縦枠部13との接触が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体前部構造に関し、特に、シュラウドパネルの縦枠部の前側に対面するバンパレインフォースメントの後面部に車体前方側に凹入し且つ縦枠部の左右幅より広幅の凹部を設けた自動車の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体前部には、車体の車幅方向の左右両側に車体前後方向に延びる1対のフロントサイドフレームが配設され、近年、これらフロントサイドフレームの前端部に車両衝突時の衝突エネルギーを吸収可能な1対のクラッシュ管が夫々連結され、これらクラッシュ管の前端部に車幅方向に延びるバンパレインフォースメントが連結されている。バンパレインフォースメントの後方側にシュラウドパネルが配設され、このシュラウドパネルにラジエータやコンデンサ等の車両装備品が取付けられている。
【0003】
従来、自動車の車体前部構造において、車両衝突時に、シュラウドパネルやシュラウドパネルに取付けられた車両装備品の損傷を防止するために、シュラウドパネルを車体前部に取付ける種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1の車体前部構造では、バンパビーム(バンパレインフォースメント)に連結された1対のクラッシュ管に1対の鋼板からなる連結部材が夫々固定され、これら連結部材にシュラウドパネルの車幅方向両端部側が連結支持されている。
【0004】
車両衝突時には、前方から衝突荷重を受けたバンパビームが後退すると同時に、そのバンパビームを介してクラッシュ管に入力された荷重によりクラッシュ管が圧縮変形して衝突エネルギーを吸収し、バンパビームが後退してシュラウドパネルに接触した場合、連結部材が屈曲変形することで、シュラウドパネル及び車両装備品を積極的に後退させる。
【特許文献1】特開2004−237787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車体前部構造では、車両衝突時に、バンパビームが後退してシュラウドパネルに接触した場合に、連結部材が屈曲変形することで、シュラウドパネル及び車両装備品を積極的に後退させるが、特に、車両の軽衝突時において、バンパビームがシュラウドパネルに接触することを回避する構造になっておらず、バンパビームがシュラウドパネルに接触してシュラウドパネルや車両装備品が損傷する可能性が高くなり、依って、ユーザーが車両衝突によるシュラウドパネルや車両装備品の修理や交換に要する負担が大きくなる虞が高い。
【0006】
一方、車両衝突時に、バンパビームが後退してもシュラウドパネルに接触することを極力回避するために、バンパビームから後方側へある程度離隔してシュラウドパネルを配設することは考えられる。しかし、その分、エンジンルームを前後方向に大きくする必要があり、ノーズ部を短くする車体前部への適用は難しい。そこで、シュラウドパネルの前後方向厚さを薄くすることも考えられなくはないが、シュラウドパネル自体の剛性が低下し、シュラウドパネルに取付ける車両装備品の支持剛性が低下する。
【0007】
本発明の目的は、車両衝突時に、バンパレインフォースメントが後退した場合にシュラウドパネルに接触するまでの距離を長くして、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルや車両装備品との接触を極力回避して、シュラウドパネルや車両装備品の損傷を防止すると共に、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルを接近させて、エンジンルームを大きくすることができる、車体前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の自動車の車体前部構造は、車体の車幅方向の左右両側に配設され車体前後方向に延びる1対のフロントサイドフレーム本体と、1対のフロントサイドフレーム本体の前端部に夫々固定され且つフロントサイドフレーム本体よりも前方からの衝撃力に対する強度が弱い1対の衝撃吸収部材と、車幅方向に延び且つ1対の衝撃吸収部材の前端部に固定されたバンパレインフォースメントとを備えた自動車の車体前部構造において、バンパレインフォースメントの車体後方側に配設されたシュラウドパネルが、バンパレインフォースメントに少なくとも一部が対面する縦枠部を有し、シュラウドパネルの縦枠部が前記衝撃吸収部材の車体前後方向の途中部に固定支持されると共に、縦枠部の前側に対面するバンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ縦枠部の車幅方向の左右幅よりも広幅の第1の凹部が設けられたことを特徴とする。
【0009】
この車体前部構造では、1対のフロントサイドフレーム本体と1対の衝撃吸収部材とバンパレインフォースメントとが設けられ、1対のフロントサイドフレーム本体が車体の車幅方向の左右両側に配設されて車体の前後方向に延び、これらフロントサイドフレーム本体の前端部に1対の衝撃吸収部材が夫々固定され、これら衝撃吸収部材の前端部にバンパレインフォースメントが固定され車幅方向に延び、このバンパレインフォースメントの車体後方側にシュラウドパネルが配設されている。シュラウドパネルは少なくとも一部がバンパレインフォースメントと対面する縦枠部を有し、この縦枠部が衝撃吸収部材の車体前後方向の途中部に固定支持され、縦枠部に対面するバンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側へ凹入し且つ縦枠部の車幅方向の左右幅よりも広幅の第1の凹部が設けられている。
【0010】
車両衝突時、バンパレインフォースメントに衝撃力が入力され、その衝撃力はバンパレインフォースメントから衝撃吸収部材に入力され、バンパレインフォースメントが衝撃吸収部材を圧縮変形させて後退して、この衝撃吸収部材の圧縮変形により衝突エネルギーが吸収される。ここで、バンパレインフォースメントに第1の凹部を設けたことにより、車両衝突時に、バンパレインフォースメントが後退した場合に、その第1の凹部にシュラウドパネルの縦枠部が入り込むことが可能であるため、バンパレインフォースメントがシュラウドパネルの縦枠部に接触するまでの距離が長くなり、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルの縦枠部との接触が極力回避される。
【0011】
請求項2の自動車の車体前部構造は、請求項1の発明において、シュラウドパネルの縦枠部の近傍に前記縦枠部と車体前後方向略同位置に配設された車両装備品に対面する前記バンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ車両装備品の車幅方向の左右幅よりも広幅の第2の凹部が設けられたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の自動車の車体前部構造は、請求項2の発明において、第1,第2の凹部はバンパレインフォースメントに車幅方向に連続的に成形されたことを特徴とする。
請求項4の自動車の車体前部構造は、請求項1〜3の何れかの発明において、シュラウドパネルは左右1対の縦枠部を有し、第1の凹部は、1対の縦枠部に夫々対応してバンパレインフォースメントの左右両側部分に夫々設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の自動車の車体前部構造は、請求項1〜4の何れかの発明において、シュラウドパネルの上部が、車体本体部に固定されたことを特徴とする。
請求項6の自動車の車体前部構造は、請求項1〜5の何れかの発明において、第1,第2の凹部は、補強部材により補強されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の自動車の車体前部構造によれば、シュラウドパネルの縦枠部の前側に対面するバンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ縦枠部の車幅方向の左右幅よりも広幅の第1の凹部を設けたので、車両衝突時に、バンパレインフォースメントが後退した場合にシュラウドパネルの縦枠部に接触するまでの距離を長くして、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルの縦枠部との接触を極力回避し、シュラウドパネルやシュラウドパネルに取付けられた車両装備品の損傷を防止でき、ユーザーが車両衝突によるシュラウドパネルや車両装備品の修理や交換に要する負担を抑えることが可能になる。
しかも、シュラウドパネルをバンパレインフォースメントの車体後方側に接近させて配設できるので、エンジンルームを大きくし、ノーズ部を短くする車体前部へ適用する場合に有効になる。
【0015】
請求項2の自動車の車体前部構造によれば、シュラウドパネルの縦枠部の近傍に前記縦枠部と車体前後方向略同位置に配設された車両装備品に対面するバンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ車両装備品の車幅方向の左右幅よりも広幅の第2の凹部を設けたので、バンパレインフォースメントが後退した場合に車両装備品に接触するまでの距離を長くして、バンパレインフォースメントと車両装備品との接触を極力回避することができ、車両装備品のレイアウト性が向上する。
【0016】
請求項3の自動車の車体前部構造によれば、第1,第2の凹部はバンパレインフォースメントに車幅方向に連続的に成形したので、バンパレインフォースメントが斜め前方から衝撃力を受けて斜め後方へ後退した場合でも、この連続的に形成された第1,第2の凹部により、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルの縦枠部や車両装備品との接触を極力回避することができ、第1,第2の凹部を有するバンパレインフォースメントの構造も簡単化できる。
【0017】
請求項4の自動車の車体前部構造によれば、シュラウドパネルは左右1対の縦枠部を有し、第1の凹部を、1対の縦枠部に夫々対応してバンパレインフォースメントの左右両側部分に夫々設けたので、左右1対の第1の凹部により、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルの左右1対の縦枠部との接触を極力回避することができる。
【0018】
請求項5の自動車の車体前部構造によれば、シュラウドパネルの上部を、車体本体部に固定したので、衝撃吸収部材に加えて、シュラウドパネルの上部も車体本体部に固定されることにより、シュラウドパネルを車体前部に取付ける強度を高めことができる。また、車両衝突時に、バンパレインフォースメントとシュラウドパネルとの接触を極力回避できるので、シュラウドパネルの車体本体部への取付け部分の破損を防止することができる。
【0019】
請求項6の自動車の車体前部構造によれば、第1,第2の凹部を補強部材で補強したので、第1,第2の凹部の強度を高めると共に、バンパレインフォースメントの強度、剛性の低下を簡単な構造により防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の自動車の車体前部構造は、車体の車幅方向の左右両側に配設され車体前後方向に延びる1対のフロントサイドフレーム本体と、1対のフロントサイドフレーム本体の前端部に夫々固定され且つフロントサイドフレーム本体よりも前方からの衝撃力に対する強度が弱い1対の衝撃吸収部材と、車幅方向に延び且つ1対の衝撃吸収部材の前端部に固定されたバンパレインフォースメントとを備えている。
【実施例1】
【0021】
図1に示すように、自動車の車体前部1は、車体の車幅方向の左右両側に配設されて車体前後方向に延びる左右1対のフロントサイドフレーム本体2と、これらフロントサイドフレーム本体2の前端部に夫々固定された1対の衝撃吸収部材3と、これら衝突吸収部材3の前端部に固定されたバンパレインフォースメント4と、このバンパレインフォースメント4の車体後方側に配設されたシュラウドパネル5とを備えている。
【0022】
1対のフロントサイドフレーム本体2の先端部にフランジ部材6が夫々設けられ、1対の衝撃吸収部材3の後端部にフランジ部材7が夫々設けられ、各フランジ部材6,7同士が溶接又はボルト結合されている。また、1対の衝撃吸収部材3の前端部にフランジ部材8が夫々設けられ、各フランジ部材8がバンパレインフォースメント4に溶接又はボルト結合されている。シュラウドパネル5は、バンパレインフォースメント4の車体後方側において、1対の衝撃吸収部材3の間に鉛直姿勢で配設されて、その左右両端部側が衝撃吸収部材3とエプロンレインフォースメント19(車体本体部)に固定支持されている。
【0023】
衝撃吸収部材3は、角筒状に形成されたクラッシュ管であり、車両衝突時にバンパレインフォースメント4を介して前方から加わる衝突荷重により前後方向に圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収し、所期のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ、形状に構成されている。
【0024】
図2〜図4に示すように、シュラウドパネル5は、アッパ部10とロア部11とを有する横枠部12と左右1対の縦枠部13とから正面視にてロ状に構成され、例えば、合成樹脂材料もしくはガラス繊維等の強化部材を含む複合強化樹脂材料で一体成形されている。これら横枠部12と縦枠部13とによって開口部Kが形成され、サージタンク14、ラジエータ15やコンデンサ16等の車両装備品(図4参照)が、開口部Kに臨むように近接した状態でシュラウドパネル5に取付けられている。
【0025】
シュラウドパネル5のアッパ部10には、左右両端部側から車幅方向外側に延びた1対の腕部材17が一体的に形成されている。各フロントサイドフレーム本体2の前側部分に連結部材18が固定され、この連結部材18にエプロンレインフォースメント19の前端が固定されている。前記1対の腕部材17の先端部は1対のエプロンレインフォースメント19の上面に夫々ボルト20により固定支持され、シュラウドパネル5の左右1対の縦枠部13に1対の連結部材21が夫々固定され、1対の連結部材21が1対の衝撃吸収部材3の車体前後方向の途中部の上面に夫々ボルト22により固定支持されている。
【0026】
バンパレインフォースメント4は、1対のフロントサイドフレーム本体2間の間隔よりも長い左右長を有し、その左右両端部分が1対のフロントサイドフレーム本体2よりも左右両側へ少し張出した状態で設けられている。
【0027】
図4,図5に示すように、バンパレインフォースメント4は、車幅方向に長いバンパレインフォースメント本体23と、バンパレインフォースメント本体23の後に配置されるクロージングプレート24を有する。バンパレインフォースメント本体23は、後方が開放するように前壁25と上壁26と下壁27とを有する縦断面コ字状に形成され、上壁26と下壁27の後端部に上下方向に張出すフランジ部28,29が一体的に形成され、このフランジ部28,29にクロージングプレート24の上下両縁部が接合され閉断面が形成され、クロージングプレート24に衝撃吸収部材3のフランジ部材8が接合されている。尚、図示を省略するが、バンパレインフォースメント本体23の前側に発泡樹脂等からなる衝撃吸収体を設けてもよい。
【0028】
シュラウドパネル5の左右1対の縦枠部13の前側に対面するバンパレインフォースメント4の後面部に、車体前方側に凹入し且つ縦枠部13の車幅方向の左右幅よりも広幅の1対の凹部9(第1の凹部に相当する)が設けられている。各凹部9は、バンパレインフォースメント4(バンパレインフォースメント本体23の上壁26、下壁27、フランジ部28、29とクロージングプレート24)を後側から前側へ、例えば、バンパレインフォースメント本体23の前後方向幅の半分程凹ませて形成されている。
【0029】
各凹部9は、金属製の補強板30(補強部材)で補強され、その補強板30は、クロージングプレート24の上下幅と同じ上下幅を有し、凹部9に対応させて屈曲させた形状をなす。この補強板30は、例えば、その上下両端部分がクロージングプレート24によりスポット接合により接合され、この場合、補強板30、クロージングプレート24、バンパレインフォースメント本体23のフランジ部28,29を纏めて溶接してもよい。
【0030】
以上説明した車体前部構造の作用効果について説明する。
車両衝突時、バンパレインフォースメント4に前側から衝撃力が入力され、その衝撃力はバンパレインフォースメント4から衝撃吸収部材3に入力され、バンパレインフォースメント4が衝撃吸収部材3を圧縮変形させて後退して、この衝撃吸収部材3の圧縮変形により衝突エネルギーが吸収される。
【0031】
ここで、バンパレインフォースメント4に左右1対の凹部9を設けたことにより、車両衝突時に、バンパレインフォースメント4が後退した場合に、それら凹部9にシュラウドパネル5の1対の縦枠部13が入り込むことが可能であるため、バンパレインフォースメント4がシュラウドパネル5の縦枠部13に接触するまでの距離が長くなる。
【0032】
つまり、バンパレインフォースメント4とシュラウドパネル5の1対の縦枠部13との接触を極力回避し、車両衝突時に、シュラウドパネル5やシュラウドパネル5に取付けられた車両装備品14の損傷を防止でき、ユーザーが車両衝突によるシュラウドパネル5や車両装備品の修理や交換に要する負担を抑えることが可能になる。
しかも、シュラウドパネル5をバンパレインフォースメント4の車体後方側に接近させて配設できるので、エンジンルームを大きくし、ノーズ部を短くする車体前部へ適用する場合に有効になる。
【0033】
シュラウドパネル5の上部の左右1対の腕部材17を、左右のエプロンレインフォースメント19に夫々固定したので、衝撃吸収部材3に加えて、シュラウドパネル5の上部もエプロンレインフォースメント19に固定されることにより、シュラウドパネル5を車体前部1に取付ける強度を高め、車両衝突時に、バンパレインフォースメント4とシュラウドパネル5との接触を極力回避できるので、シュラウドパネル5のエプロンレインフォースメント19への取付け部分の破損を防止することができる。凹部9を補強板30で補強したので、凹部30の強度を高めると共に、バンパレインフォースメント4の強度、剛性の低下を簡単な構造により防止することができる。
【0034】
尚、実施例1の車体前部構造を次のように部分的に変更してもよい。
1]フロントサイドフレーム本体2と衝撃吸収部材3とを一体成形して構成してもよい。この場合、製作コストや組み付け性に優れたものとなる。
2]補強板30を省略してもよい。
3]バンパレインフォースメント4は、クロージングプレート24を省略した構成でもよい。
【0035】
4]図6に示すように、この車体前部1Aには、バンパレインフォースメント31と衝撃吸収部材3との取付け強度を高める為の補強部材37がバンパレインフォースメント31の後面部に接合され、その補強部材37の背面にフランジ部材8が当接されている。この補強部材37は、前記凹部9に対応する凹部32を有し、この凹部32がシュラウドパネル5の縦枠部13と対面する位置に形成されている。この場合も、バンパレインフォースメント31とシュラウドパネル5の縦枠部13の接触を回避できる。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2の車体前部構造は、実施例1の車体前部構造のバンパレインフォースメントとその凹部を変更したものであり、実施例1の車体前部構造と同じものには同一符号を付して説明する。図7に示すように、この車体前部構造では、バンパレインフォースメント4Aの後面部に、左右1対の第1の凹部9と左右1対の第2の凹部33とが夫々設けられている。第1の凹部9は実施例1の凹部9と同じ構成であり、その第1の凹部9は補強板30により補強されている。
【0037】
左右1対の第2の凹部33は、バンパレインフォースメント4Aの後面部のうち、シュラウドパネル5の左右1対の縦枠部13の近傍に縦枠部13と車体前後方向略同位置に配設された左右1対の車両装備品であるサージタンク14に対面する部位に、車体前方側に凹入し且つサージタンク14の車幅方向の左右幅よりも広幅に形成されている。
【0038】
各第2の凹部33は、第1の凹部9よりも少しだけ車幅方向内側に位置して、第1の凹部9とは分離した状態に形成され、本実施例の場合、第1の凹部9よりも左右方向長さが短いものになっている。各第2の凹部33は、凹部9と同様に、バンパレインフォースメント4Aを後側から前側へ、例えば、バンパレインフォースメント本体23の前後方向幅の半分程凹ませて形成されている。
【0039】
各第2の凹部33は、金属製の補強板35(補強部材)で補強され、その補強板35は、クロージングプレート24の上下幅と同じ上下幅を有し、第2の凹部33に対応させて屈曲させた形状をなす。この補強板35は、例えば、その上下両端部分がクロージングプレート24によりスポット接合により接合されている。
【0040】
この実施例2の車体前部構造によれば、バンパレインフォースメント4Aに左右1対の第2の凹部33を設けたことにより、車両衝突時に、バンパレインフォースメント4Aが後退した場合に、それら第2の凹部33にサージタンク14が入り込むことが可能であるため、バンパレインフォースメント4Aがサージタンク14に接触するまでの距離が長くなる。つまり、バンパレインフォースメント4Aとサージタンク14との接触を極力回避することができる。
【0041】
また、第2の凹部33を補強板35で補強したので、第2の凹部33の強度を高めると共に、バンパレインフォースメント4Aの強度、剛性の低下を簡単な構造により防止することができる。その他実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0042】
尚、実施例2の車体前部構造を次のように部分的に変更してもよい。
1]図8に示すように、バンパレインフォースメント4Bの後面部に、前記第1の凹部9と第2の凹部33を連続的に一体成形した凹部34を設けてもよい。この場合、この凹部34を共通の金属製の補強板36で補強してもよい。
【0043】
この構造によれば、バンパレインフォースメント4Bが斜め前方から衝撃力を受けて斜め後方へ後退した場合でも、連続的に一体形成された凹部34により、バンパレインフォースメント4Bとシュラウドパネル5の縦枠部13やサージタンク14との接触を極力回避することができ、凹部34を有するバンパレインフォースメント4Bの構造も簡単化でき、補強板36も一部材でよいので構造を簡単化でき、製作コスト面で有利である。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例1,2に開示した事項以外の種々の変更を付加した形態で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1の車体前部の平面図である。
【図2】車体前部の正面図である。
【図3】車体前部の斜視図である。
【図4】車体前部の要部断面図(車体前部右側)である。
【図5】バンパレインフォースメントの斜視図である。
【図6】変形例に係る車体前部の要部断面図(車体前部右側)である。
【図7】実施例2の車体前部の要部断面図(車体前部右側)である。
【図8】変形例に係る車体前部の要部断面図(車体前部右側)である。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B 車体前部
2 フロントサイドフレーム本体
3 衝撃吸収部材
4,4A,4B バンパレインフォースメント
5 シュラウドパネル
9,32 第1の凹部
13 縦枠部
14,15,16 車両装備品
19 エプロンレインフォースメント
30,35,36 補強板
33 第2の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向の左右両側に配設され車体前後方向に延びる1対のフロントサイドフレーム本体と、1対のフロントサイドフレーム本体の前端部に夫々固定され且つフロントサイドフレーム本体よりも前方からの衝撃力に対する強度が弱い1対の衝撃吸収部材と、車幅方向に延び且つ1対の衝撃吸収部材の前端部に固定されたバンパレインフォースメントとを備えた自動車の車体前部構造において、
前記バンパレインフォースメントの車体後方側に配設されたシュラウドパネルが、前記バンパレインフォースメントに少なくとも一部が対面する縦枠部を有し、
前記シュラウドパネルの縦枠部が前記衝撃吸収部材の車体前後方向の途中部に固定支持されると共に、前記縦枠部の前側に対面するバンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ前記縦枠部の車幅方向の左右幅よりも広幅の第1の凹部が設けられたことを特徴とする自動車の車体前部構造。
【請求項2】
前記シュラウドパネルの縦枠部の近傍に前記縦枠部と車体前後方向略同位置に配設された車両装備品に対面する前記バンパレインフォースメントの後面部に、車体前方側に凹入し且つ前記車両装備品の車幅方向の左右幅よりも広幅の第2の凹部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項3】
前記第1,第2の凹部は前記バンパレインフォースメントに車幅方向に連続的に成形されたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項4】
前記シュラウドパネルは左右1対の縦枠部を有し、前記第1の凹部は、前記1対の縦枠部に夫々対応して前記バンパレインフォースメントの左右両側部分に夫々設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車の車体前部構造。
【請求項5】
前記シュラウドパネルの上部が、車体本体部に固定されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車の車体前部構造。
【請求項6】
前記第1,第2の凹部は、補強部材により補強されたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の自動車の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−38961(P2007−38961A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227668(P2005−227668)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】