説明

自動車の車体前部構造

【課題】 相互に隣接して配置されるボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーを、それらの間の隙間の大きさが均一になるように精度良く固定する。
【解決手段】 ボンネットフード取付基準15f、ヘッドライト取付基準15eおよびフロントバンパー取付基準15gを有する位置決めブラケット15をフロントバルクヘッド18,20に固定したので、位置決めブラケット15のボンネットフード取付基準15f、ヘッドライト取付基準15eおよびフロントバンパー取付基準15gによりそれぞれボンネットフード、ヘッドライト13およびフロントバンパーグリル12のアッパービーム21を位置決めして固定することで、ボンネットフード、ヘッドライト13およびフロントバンパーグリル12が集合する部分で相互間の隙間の大きさを精度良く管理して外観を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体前部に少なくともボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーを組み付ける自動車の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジコアアッパに同軸ロケートピンを有するパネル位置決め治具を装着し、同軸ロケートピンを第1の位置に固定してフードを位置決めするとともに、同軸ロケートピンを第2の位置に設定してフェンダを位置決めするものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
またヘッドランプの下部に設けた上部クリップと、フロントバンパーのバンパーフェイシアの上部に設けた下部クリップとを相互に係合させることで、ヘッドランプおよびフロントバンパー間の隙間の大きさを一定に確保するものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−328864号公報
【特許文献2】特開平7−329631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1に記載されたものは、パネル位置決め治具に対して同軸ロケートピンが移動可能に設けられているため、パネル位置決め治具に対する同軸ロケートピンの位置精度が低下してしまい、その同軸ロケートピンを用いて位置決めしたフードやフェンダの位置精度も低くなってしまう可能性がある。
【0006】
また上記特許文献2に記載されたものは、ヘッドランプおよびフロントバンパーを相互に位置決めして両者間の隙間の大きさを一定に確保することは可能であるが、ヘッドランプあるいはフロントバンパーが車体に対して位置決めされていないため、ヘッドランプおよびフロントバンパーと、それらに隣接するボンネットフードとの間の隙間の大きさが不均一になって外観が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、相互に隣接して配置されるボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーを、それらの間の隙間の大きさが均一になるように精度良く固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、自動車の車体前部に少なくともボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーを組み付ける自動車の車体前部構造において、フロントバルクヘッドに、ボンネットフード取付基準、ヘッドライト取付基準およびフロントバンパー取付基準を有する位置決めブラケットを固定し、前記ボンネットフード取付基準、前記ヘッドライト取付基準および前記フロントバンパー取付基準によりそれぞれ前記ボンネットフード、前記ヘッドライトおよび前記フロントバンパーを位置決めして固定することを特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ボンネットフード取付基準、前記ヘッドライト取付基準および前記フロントバンパー取付基準は、前記位置決めブラケット上に三角形を構成するように配置されることを特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記位置決めブラケットは、前記ヘッドライト取付基準に隣接する位置にヘッドライト締結部を備えるとともに、前記フロントバンパー取付基準に隣接する位置にフロントバンパー締結部を備えることを特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。
【0011】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、左右一対の前記位置決めブラケットが、前記フロントバルクヘッドの左右のサイドメンバにそれぞれ少なくとも上下2カ所で締結されており、前記フロントバンパーのアッパービームの車幅方向両端部が、前記左右一対の位置決めブラケットの前記フロントバンパー取付基準により位置決めされて前記フロントバンパー締結部により締結されることを特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。
【0012】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記アッパービームと前記フロントバルクヘッドのアッパーメンバとを車体前後方向に接続する左右一対の連結部材と、前記左右一対の連結部材を車幅方向に接続するホーンブラケットとを備えることを特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。
【0013】
尚、実施の形態のフロントバンパーグリル12は本発明のフロントバンパーに対応し、実施の形態のヘッドライト固定孔15dは本発明のヘッドライト締結部に対応し、実施の形態のヘッドライト位置決め孔15eは本発明のヘッドライト取付基準に対応し、実施の形態のボンネットフード位置決め孔15fは本発明のボンネットフード取付基準に対応し、実施の形態もアッパービーム位置決めピン15gは本発明のフロントバンパー取付基準に対応し、実施の形態のアッパービーム固定孔15hは本発明のフロントバンパー締結部に対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、ボンネットフード取付基準、ヘッドライト取付基準およびフロントバンパー取付基準を有する位置決めブラケットをフロントバルクヘッドに固定したので、位置決めブラケットのボンネットフード取付基準、ヘッドライト取付基準およびフロントバンパー取付基準によりそれぞれボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーを位置決めして固定することで、ボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパーが集合する部分で相互間の隙間の大きさを精度良く管理して外観を向上させることができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、ボンネットフード取付基準、ヘッドライト取付基準およびフロントバンパー取付基準を、位置決めブラケット上に三角形を構成するように配置したので、ボンネットフード、ヘッドライトおよびフロントバンパー間の隙間の大きさを更に精度良く管理して外観を向上させることができる。
【0016】
また請求項3の構成によれば、位置決めブラケットは、ヘッドライト取付基準に隣接する位置にヘッドライト締結部を備えるとともに、フロントバンパー取付基準に隣接する位置にフロントバンパー締結部を備えるので、ヘッドライト取付基準およびフロントバンパー取付基準で位置決めされたヘッドライトおよびフロントバンパーを、それらの位置決め精度を保ったまま位置決めブラケットに締結することができる。
【0017】
また請求項4の構成によれば、左右一対の位置決めブラケットをフロントバルクヘッドの左右のサイドメンバにそれぞれ少なくとも上下2カ所で締結し、フロントバンパーのアッパービームの車幅方向両端部を左右一対の位置決めブラケットのフロントバンパー取付基準により位置決めしてフロントバンパー締結部により締結するので、フロントバンパーの重量を左右一対の位置決めブラケットを介してフロントバルクヘッドの左右のサイドメンバに確実に伝達し、フロントバンパーの左右両端部が重力により垂れ下がるのを防止することができる。
【0018】
また請求項5の構成によれば、フロントバンパーのアッパービームとフロントバルクヘッドのアッパーメンバとを左右一対の連結部材で車体前後方向に接続し、左右一対の連結部材をホーンブラケットで車幅方向に接続したので、フロントバルクヘッドに対するフロントバンパーの支持強度を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動車の車体前部の斜視図。
【図2】自動車の車体前部の分解斜視図。
【図3】図2の3部拡大図。
【図4】図3に対応する分解斜視図。
【図5】図4の5要部拡大図。
【図6】図3の6方向矢視図。
【図7】図6の7部拡大図。
【図8】図7の8−8線断面図。
【図9】図7の9−9線断面図。
【図10】バルクヘッドに位置決め治具を装着した状態を示す図。
【図11】図10の11部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
先ず、本明細書における前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向は、運転席に着座した乗員を基準として定義される。また本明細書におけるT面、B面およびH面は、以下のように定義される。図1に示すように、T面とは、前後方向軸に直交する面であり、例えば車体前面あるいは車体後面がこれに対応する。B面とは、左右方向軸に直交する面であり、例えば車体左側面あるいは車体右側面がこれに対応する。H面とは、上下方向軸に直交する面であり、例えば車体天井面あるいは車体床面がこれに対応する。但し、T面には、前後方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれ、B面には、左右方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれ、H面には、上下方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれるものとする。
【0022】
図1および図2に示すように、自動車の車体前部には合成樹脂製のフロントバンパーフェイス11が配置されており、フロントバンパーフェイス11の中央上面にはフロントバンパーグリル12が一体に設けられ、左右下部には一対のエアインテイク開口11a,11aが形成され.左右上部には一対のヘッドライト13,13の透明なレンズ部13a,13aが嵌合する切欠き11b,11bが形成される。エンジンルームを開閉自在に覆うボンネットフード14の前縁は、フロントバンパーグリル12の上縁および左右のヘッドライト13,13のレンズ部13a,13aの車幅方向内側の上縁に所定の隙間を有して対向する。
【0023】
このとき、図1において鎖線の円で囲んだa部では、フロントバンパーグリル12、ボンネットフード14およびヘッドライト13のレンズ部13aの三つの部材の隅部が集合するが、それらの部材間の隙間が不均一であると外観が低下するため、車体の組み立てに際してフロントバンパーグリル12、ボンネットフード14およびヘッドライト13の三つの部材を精度良く位置決めして隙間を均一化することが必要となる。
【0024】
本実施の形態では一対の位置決めブラケット15,15(図2参照)を基準にして上記位置決めが行われる。即ち、左右のフロントサイドフレーム16,16の前端に固定されるフロントバルクヘッド17は、アッパーメンバ18、ロアメンバ19および左右のサイドメンバ20,20を有して四角枠状に形成されており、アッパーメンバ18の左右両端部と左右にサイドメンバ20,20との交差部に一対の前記位置決めブラケット15,15が固定される。
【0025】
車体の組み立て時に、フロントバンパーグリル12の一部を構成するアッパービーム21の左右両端が左右の位置決めブラケット15,15に位置決めされて固定され、このアッパービーム21にフロントバンパーグリル12の上縁を固定することで、フロントバンパーグリル12が正しい位置に組み付けられる。また左右のヘッドライト13,13は左右の位置決めブラケット15,15に位置決めされて固定され、これによりヘッドライト13,13が正しい位置に組み付けられる。またボンネットフード14の前部が左右の位置決めブラケット15,15により位置決めされ、この状態でボンネットフード14の後部のヒンジ部14a,14aを枢支するヒンジブラケット22,22が車体に固定され、これによりボンネットフード14が正しい位置に組み付けられる。
【0026】
フロントバンパーグリル12のアッパービーム21の車幅方向中央部は、前後方向に延びる左右の連結部材33,33を介してフロントバルクヘッド17のアッパーメンバ18に連結されており、ホーン(不図示)を支持するホーンブラケット34が左右の連結部材33,33を相互に連結するように取り付けられる。
【0027】
図3〜図9に示すように、位置決めブラケット15は金属板をプレス成形した単一の部材から成り、H面内にある平坦な上壁部15aと、B面内にある平坦な側壁部15bとを備える。上壁部15aには前後方向に長い長孔よりなる第1取付孔15cと、車幅方向に長い長孔よりなるヘッドライト固定孔15dと、車幅方向に長い長孔よりなるヘッドライト位置決め孔15eと、丸孔よりなるボンネットフード位置決め孔15fと、上向きに突出するアッパービーム位置決めピン15gと、裏面にウエルドナット23が溶接されたアッパービーム固定孔15hとが設けられる。側壁部15bには、上下方向に離間した一対の第2、第3取付孔15i,15jが設けられる。
【0028】
位置決めブラケット15は、第1取付孔15cを貫通するボルト24およびウエルドナット25でフロントバルクヘッド17のアッパーメンバ18の上面にH面内で固定され、第2、第3取付孔15i,15jを貫通する2本のボルト26,27および2個のナット28,29でフロントバルクヘッド17のサイドメンバ20のフランジ20aにB面内で固定される。
【0029】
H面内に延びるアッパービーム21の車幅方向の端部に、位置決めブラケット15のヘッドライト位置決め孔15eと重なる長孔よりなるヘッドライト位置決め孔21aと、位置決めブラケット15のボンネットフード位置決め孔15fと重なる丸孔よりなるボンネットフード位置決め孔21bと、位置決めブラケット15のアッパービーム位置決めピン15gが嵌合可能な車幅方向に長い長孔よりなるアッパービーム位置決め孔21cと、位置決めブラケット15のアッパービーム固定孔15hと重なる丸孔よりなるアッパービーム固定孔21dとが設けられる。
【0030】
アッパービーム21は、位置決めブラケット15のアッパービーム位置決めピン15gにアッパービーム位置決め孔21cを嵌合させて位置決めされた状態で、アッパービーム固定孔21dを貫通するボルト30をウエルドナット23に螺合することで位置決めブラケット15に固定される。この状態で、アッパービーム21のヘッドライト位置決め孔21aおよびボンネットフード位置決め孔21bは、位置決めブラケット15のヘッドライト位置決め孔15eおよびボンネットフード位置決め孔15fにそれぞれ重なり合う。
【0031】
ヘッドライト13の車幅方向内側の後面から取付ブラケット13bが突出しており、H面内に配置された取付ブラケット13bの上面にヘッドライト位置決めピン13cおよびボルト孔13dが設けられる。ヘッドライト13は、ヘッドライト位置決めピン13cを位置決めブラケット15のヘッドライト位置決め孔15eおよびアッパービーム21のヘッドライト位置決め孔21aに下から上に嵌合させて位置決めされた状態で、位置決めブラケット15のヘッドライト固定孔15dを上から下に貫通して取付ブラケット13bのボルト孔13dに螺合するボルト31で位置決めブラケット15に固定される。
【0032】
図10および図11に示すように、偏平な枠状に形成されてH面内に配置される位置決め治具32は、左右両端から下向きに突出する左右一対の第1位置決めピン32a,32aと、第1位置決めピン32a,32aよりも車幅方向内側かつ前方位置から下向きに突出する左右一対の第2位置決めピン32b,32bと、第1位置決めピン32a,32aよりも車幅方向内側位置から上向きに突出する左右一対の第3位置決めピン32c,32cと、車幅方向中央部から後方に突出するカウンタウエイト32dとを備える。
【0033】
第1位置決めピン32a,32aは、フロントバルクヘッド17のアッパーメンバ18の左右両端部から車幅方向外側かつ後方に延びるアッパーメンバ延長部18a,18aの上面に形成された治具位置決め孔18b,18bに嵌合し、これにより位置決め治具32はフロントバルクヘッド17に対して位置決めされる。このとき、位置決め治具32は重力で第1位置決めピン32a,32aを中心として前部が下がろうとするが、カウンタウエイト32dで前部を持ち上げるモーメントを発生させることで、その姿勢を安定させることができる。
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0035】
先ず、図10および図11に示すように、フロントバンパーフェイス11、ヘッドライト13およびボンネットフード14を組み付ける前の車体に対し、そのフロントバルクヘッド17の左右のアッパーメンバ延長部18a,18aの治具位置決め孔18b,18bに位置決め治具32の一対の第位置決めピン32a,32aを上から下に嵌合させることで、位置決め治具32を車体に対して位置決めする。このとき、位置決め治具32に設けたカウンタウエイト32dの作用で、位置決め治具32が前下方に倒れるのを防止して作業性を高めることができる。
【0036】
続いて、ボンネットフード14の下面のスチフナ14bの左右前部に形成した一対の位置決め孔14c,14cを、位置決め治具32の一対の第3位置決めピン32c,32cに上から下に嵌合させることで、ボンネットフード14の前部を位置決め治具32に対して位置決めする。更に、フロントバルクヘッド17に仮止めした左右の位置決めブラケット15,15の上壁部15a,15aのボンネットフード位置決め孔15f,15fを、位置決め治具32の一対の第2位置決めピン32b,32bに下から上に嵌合させることで、位置決めブラケット15,15を位置決め治具32に対して位置決めする。
【0037】
続いて、左右各3本のボルト24,26,27をウエルドナット25およびナット28,29に対して本締めして位置決めブラケット15,15をフロントバルクヘッド17に締結するとともに、ボンネットフード14の後部のヒンジ部14a,14aを枢支する左右のヒンジブラケット22,22を車体に締結することで、ボンネットフード14を車体に組み付ける。このとき、位置決めブラケット15,15の第1取付孔15c,15cは前後方向に長い長孔で構成されているため、位置決めブラケット15,15の前後方向の位置ずれを効果的に吸収して精度良く位置決めすることができる。
【0038】
これにより、位置決め治具32によって左右の位置決めブラケット15,15がフロントバルクヘッド17に対して正しく位置決めされた状態で組み付けられ、かつボンネットフード14は位置決めブラケット15,15に対して位置決め治具32を介して間接的に位置決めされた状態で組み付けられる。つまり、ボンネットフード14は位置決めブラケット15,15により正しい位置に位置決めされて車体に組み付けられることになる。
【0039】
続いて、左右のヘッドライト13,13の取付ブラケット13b,13bを前方から後方に位置決めブラケット15,15に向けて挿入することで、それらのヘッドライト位置決めピン13c,13cを位置決めブラケット15,15のヘッドライト位置決め孔15e,15eおよびアッパービーム21のヘッドライト位置決め孔21a,21aに下から上に嵌合させて位置決めする。
【0040】
このとき、位置決めブラケット15,15には前後方向に延びる溝部15k,15k(図9参照)が形成されており、この溝部15k,15kを通して取付ブラケット13b,13bを挿入することで、取付ブラケット13b,13bが位置決めブラケット15,15と干渉することが防止される。また位置決めブラケット15,15のヘッドライト位置決め孔15e,15eおよびアッパービーム21のヘッドライト位置決め孔21a,21aは車幅方向の長い長孔で構成されているため、ヘッドライト13,13の車幅方向の位置ずれを効果的に吸収して精度良く位置決めすることができる。
【0041】
この状態から、位置決めブラケット15,15のヘッドライト固定孔15d,15dを上から下に貫通するボルト31,31をヘッドライト13,13の取付ブラケット13b,13bのボルト孔13d,13dに螺合することで、ヘッドライト13,13を位置決めブラケット15,15に固定する。このとき、位置決めブラケット15,15のヘッドライト固定孔15d,15dは車幅方向に長い長孔で構成されているため、ヘッドライト13,13の車幅方向の位置誤差を吸収して位置決めを効果的に行うことができる。
【0042】
尚、ヘッドライト13,13は、取付ブラケット13b,13bが位置決めブラケット15,15に固定されるだけでなく、位置決めブラケット15,15よりも車幅方向外側の複数の図示せぬ固定部が車体に固定される。
【0043】
続いて、アッパービーム21のアッパービーム位置決め孔21c,21cを位置決めブラケット15,15のアッパービーム位置決めピン15g,15gに上から下に嵌合させて位置決めした状態で、アッパービーム21のアッパービーム固定孔21d,21dおよび位置決めブラケット15,15のアッパービーム固定孔15h,15hに上から下に挿入したボルト30,30をウエルドナット23,23に螺合することで、アッパービーム21を位置決めブラケット15,15に位置決め状態で固定する。そしてアッパービーム21にフロントバンパーフェイス11のフロントバンパーグリル12を固定することで、フロントバンパーグリル12を位置決めブラケット15,15に対して正しい位置に組み付けることができる。
【0044】
このとき、アッパービーム21のアッパービーム位置決め孔21c,21cは車幅方向の長い長孔で構成されているため、アッパービーム21の車幅方向の位置ずれを効果的に吸収して精度良く位置決めすることができる。
【0045】
以上のように、ボンネットフード位置決め孔15f,15f、ヘッドライト位置決め孔15e,15eおよびアッパービーム位置決めピン15g,15gを有する位置決めブラケット15,15をフロントバルクヘッド17に位置決めした状態で固定し、ボンネットフード位置決め孔15f,15f、ヘッドライト位置決め孔15e,15eおよびアッパービーム位置決めピン15g,15gによってそれぞれボンネットフード14、ヘッドライト13,13およびアッパービーム21(つまりフロントバンパーグリル12)を位置決めした状態で組み付けるので、ボンネットフード14、ヘッドライト13,13およびフロントバンパーグリル12)が集合する部分(図1のa部)の隙間の大きさを精度良く管理して外観を向上させることができる。
【0046】
このとき、位置決めブラケット15のボンネットフード位置決め孔15f、ヘッドライト位置決め孔15eおよびアッパービーム位置決めピン15gは三角形(図5の鎖線参照)を構成するように配置されるので、ボンネットフード14、ヘッドライト13,13およびフロントバンパーグリル12間の隙間の大きさを一層精度良く管理して外観を更に向上させることができる。
【0047】
また位置決めブラケット15は、ヘッドライト位置決め孔15eに隣接する位置にヘッドライト固定孔15dを備えるので、ヘッドライト位置決め孔15eによるヘッドライト13の位置決め精度を保ったままヘッドライト13を位置決めブラケット15に固定することができる。同様に、位置決めブラケット15は、アッパービーム位置決めピン15gに隣接する位置にアッパービーム固定孔15hを備えるので、アッパービーム21(つまりフロントバンパーグリル12)の位置決め精度を保ったままアッパービーム21を位置決めブラケット15に固定することができる。
【0048】
また左右一対の位置決めブラケット15,15をフロントバルクヘッド17の左右のサイドメンバ20,20にそれぞれ上下2本のボルト26,27で締結し、フロントバンパーグリル12のアッパービーム21の車幅方向両端部を左右一対の位置決めブラケット15,15により位置決めして固定するので、フロントバンパーグリル12の重量を左右一対の位置決めブラケット15,15を介してフロントバルクヘッド17の左右のサイドメンバ20,20に確実に伝達し、フロントバンパーグリル12の左右両端部が重力により垂れ下がるのを防止することができる。
【0049】
またフロントバンパーグリル12のアッパービーム21とフロントバルクヘッド17のアッパーメンバ18とを左右一対の連結部材33,33で車体前後方向に接続し、ホーンブラケット34で左右一対の連結部材33,33を車幅方向に接続したので、連結部材33,33およびホーンブラケット34でアッパービーム21を補強してフロントバルクヘッド17に対するフロントバンパーグリル12の支持強度を更に高めることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0051】
例えば、実施の形態ではボンネットフード14を位置決めブラケット15,15に対して位置決め治具32を介して間接的に位置決めしているが、ボンネットフード14に設けた位置決めピンを位置決めブラケット15,15のボンネットフード位置決め孔15f,15fに嵌合させる等の手段により、ボンネットフード14を位置決めブラケット15,15に対して直接的に位置決めしても良い。
【符号の説明】
【0052】
12 フロントバンパーグリル(フロントバンパー)
13 ヘッドライト
14 ボンネットフード
15 位置決めブラケット
15d ヘッドライト固定孔(ヘッドライト締結部)
15e ヘッドライト位置決め孔(ヘッドライト取付基準)
15f ボンネットフード位置決め孔(ボンネットフード取付基準)
15g アッパービーム位置決めピン(フロントバンパー取付基準)
15h アッパービーム固定孔(フロントバンパー締結部)
17 フロントバルクヘッド
18 アッパーメンバ
20 サイドメンバ
21 アッパービーム
33 連結部材
34 ホーンブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体前部に少なくともボンネットフード(14)、ヘッドライト(13)およびフロントバンパー(12)を組み付ける自動車の車体前部構造において、
フロントバルクヘッド(17)に、ボンネットフード取付基準(15f)、ヘッドライト取付基準(15e)およびフロントバンパー取付基準(15g)を有する位置決めブラケット(15)を固定し、前記ボンネットフード取付基準(15f)、前記ヘッドライト取付基準(15e)および前記フロントバンパー取付基準(15g)によりそれぞれ前記ボンネットフード(14)、前記ヘッドライト(13)および前記フロントバンパー(12)を位置決めして固定することを特徴とする自動車の車体前部構造。
【請求項2】
前記ボンネットフード取付基準(15f)、前記ヘッドライト取付基準(15e)および前記フロントバンパー取付基準(15g)は、前記位置決めブラケット(15)上に三角形を構成するように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項3】
前記位置決めブラケット(15)は、前記ヘッドライト取付基準(15e)に隣接する位置にヘッドライト締結部(15d)を備えるとともに、前記フロントバンパー取付基準(15g)に隣接する位置にフロントバンパー締結部(15h)を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項4】
左右一対の前記位置決めブラケット(15)が、前記フロントバルクヘッド(17)の左右のサイドメンバ(20)にそれぞれ少なくとも上下2カ所で締結されており、前記フロントバンパー(12)のアッパービーム(21)の車幅方向両端部が、前記左右一対の位置決めブラケット(15)の前記フロントバンパー取付基準(15g)により位置決めされて前記フロントバンパー締結部(15h)により締結されることを特徴とする、請求項3に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項5】
前記アッパービーム(21)と前記フロントバルクヘッド(17)のアッパーメンバ(18)とを車体前後方向に接続する左右一対の連結部材(33)と、前記左右一対の連結部材(33)を車幅方向に接続するホーンブラケット(34)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の自動車の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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