説明

自動車の車体構造

【課題】乗員のためのスペースを必要充分に確保しつつ、車体のコンパクト化・軽量化を図る。
【解決手段】車室フロア3上の車幅方向中央部付近に設置された運転席シート10の左右両側の斜め後方に、この運転席シート10の後方部を左右から挟み込むような状態で左右一対の後席シート12,12を設置し、上記車室フロア3を、その上面部の車幅方向中央付近に突設されて前後方向に延びるフロアトンネル22と、車体1の左右両側辺部に設置されたサイドシル2とこのフロアトンネル22との間に形成されたフロアサイド部20とを有する構成とし、上記運転席シート10を、上記フロアトンネル22上に設置し、上記フロアサイド部20の上面部を、その後方部であって上記後席シート12に着座した乗員の足元が載置される部分の設置高さが前方部の設置高さよりも低くなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室フロア上の車幅方向中央部付近に運転席シートが配設された自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、狭い車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室内の車幅方向中央付近、すなわち、車体の左右両側部から離れた位置に運転席シートを配設することにより、乗員(運転者)の左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された自動車の車体構造では、同乗者用の後席シートが、通常の自動車と同様に、運転席シートの後端部から所定距離後方に離れた位置に配設されているため、後席に着座した乗員のためのスペースを広く確保しようとすると、この後席シートと上記運転席シートとの間の間隔を拡大する他なく、これに応じて車体の前後長さ(全長)が長くなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、乗員のためのスペースを必要充分に確保しながら、車体のコンパクト化・軽量化を効果的に図ることのできる自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車室フロア上の車幅方向中央部付近に配設された運転席シートと、この運転席シートの左右両側の斜め後方に配設された左右一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造であって、上記左右一対の後席シートは、その前方部が側面視で上記運転席シートと部分的に重複するような位置に設置されており、上記車室フロアは、その上面部の車幅方向中央付近に突設されて前後方向に延びるフロアトンネルと、車体の左右両側辺部に設置されたサイドシルとこのフロアトンネルとの間に形成されたフロアサイド部とを有し、上記運転席シートは、上記フロアトンネル上に設置されており、上記フロアサイド部の上面部は、その後方部であって上記後席シートに着座した乗員の足元が載置される部分の設置高さが、前方部の設置高さよりも低くなるように構成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、車幅方向中央付近に配設された運転席シートの左右両側の斜め後方に、左右一対の後席シートを配設するとともに、これら左右一対の後席シートの前後方向の設置位置を、各後席シートの前方部が側面視で上記運転席シートと部分的に重複するような位置に設定したため、上記運転席シートおよび後席シートを配設するのに要する室内スペースの前後長を短くすることができ、これに応じて車体をよりコンパクト化・軽量化することができる。また、車室フロアの車幅方向中付近に突設されたフロアトンネル上に上記運転席シートを設置するとともに、このフロアトンネルとサイドシルとの間に形成されたフロアサイド部の上に、後席シートに着座した乗員の足元を載置させるようにしたため、この後席乗員の足元部の前方が上記運転席シートによって遮られてしまうことを回避して当該足元部の前後スペースをより広く確保することができる。さらには、上記後席乗員の足元が載置されるフロアサイド部の後方部の設置高さを、前方部の設置高さよりも低くしたことにより、上記後席乗員の膝の折り曲げ角度を小さくしてその着座姿勢をより安楽なものにできるという利点もある。
【0007】
上記フロアサイド部の上面部は、車体の後方側に至るほど高さが低くなる後下がりの傾斜面によって構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
このようにすれば、例えばフロアサイド部を階段状に構成することによって当該フロアサイド部の上面部の設置高さを変化させたような場合と異なり、フロアサイド部の上面部を平滑な面によって構成できるため、車室内の外観を良好に維持できる等の利点がある。しかも、後下がりに傾斜する上記フロアサイド部の上面に沿って、つま先上がりの状態で上位後席乗員の足元を載置させることができるため、この後席乗員の着座姿勢をより自然で踏ん張りの利き易い状態にすることができ、運転中の減速G等に起因した前向きの慣性力が加わるような状況下でも上記後席乗員の着座姿勢を安定した状態に維持できるという利点がある。
【0009】
上記フロアサイド部の上面部は、車体側面の乗降口を通じて車室内に乗り込もうとする乗員が足を載置する位置に凹部を有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
このように、車体側面の乗降口を通じて車室内に乗り込もうとする乗員の足を、フロアサイド部の上面部に設けられた凹部内に踏み込ませるようにした場合には、乗員が車室内に乗り込む際の足場の高さを低く抑えることができるため、乗員の車室内への乗り込み動作をより円滑化することができる。すなわち、車室内に乗り込もうとする乗員は車体のルーフ部に頭をぶつけないように身をかがめる必要があるが、上記のような凹部の存在により当該乗り込み時の足場の高さが低くなっていれば、その分だけ身をかがめる量が小さい値で済み、乗員はより円滑に車室内に乗り込むことができるようになる。
【0011】
上記フロアトンネルは、車体の後方側に至るほど幅寸法が小さくなるように形成されており、上記左右一対の後席シートは、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように配設されていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように、フロアトンネルの平面形状を、その幅寸法が車体の後方側に至るほど小さくなるように形成した場合には、後席乗員の足元が載置される上記フロアサイド部の後方部の幅寸法(後席乗員の足元部の横方向スペース)が当該フロアトンネルによって大きく狭められてしまうことを有効に回避しつつ、幅寸法が相対的に大きくなるフロアトンネルの前方部の上に、上記運転席シートに着座した乗員の足元スペースを広く確保することができるという利点がある。さらには、前面が車幅方向の斜め外側を向くように上記後席シートを配設したことにより、この後席シートに着座した乗員が、上記のような後窄まりの平面形状を有するフロアトンネルの上面部と上記フロアサイド部との間の段差部(すなわちフロアトンネルの側壁面部)と略平行に足を配置できるようになるため、当該後席乗員の足元に上記段差部が近接してしまうことを有効に回避することができ、後席乗員の足元スペースを略左右均等に確保できるという利点がある。
【0013】
上記フロアサイド部とフロアトンネルの上面部との間の段差部は、断面視で車幅方向外側の斜め下方に延びるとともにその傾斜角度が車体の前方側に至るほど小さくなるように形成されていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このようにすれば、フロアサイド部とフロアトンネルの上面部との間に形成された段差部の前方部、すなわち、当該段差部のうち運転席シートに乗り込もうとする乗員によって跨がれる部分を、傾斜角度の小さい緩やかな傾斜面によって構成することができ、運転席シートへの乗降性を効果的に向上させることができる。一方、上記段差部の後方部の傾斜角度を大きくする(鉛直に近づける)ことにより、後席乗員の足元が載置されるフロアサイド部の後方部の幅寸法が上記段差部の傾斜によって大きく狭められてしまうことを有効に回避できるため、後席乗員の足元スペースをより広く確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の自動車の車体構造によれば、乗員のためのスペースを必要充分に確保しながら、車体のコンパクト化・軽量化を効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造を示している。この自動車の車体構造は、車体1の室内(車室内)の床面部分を構成する車室フロア3と、この車室フロア3上の車幅方向中央付近に配設された運転席シート10と、この運転席シート10の左右両側の斜め後方に配設された左右一対の後席シート12,12と、上記運転席シート10や後席シート12への乗り込み口(乗降口)として車体1の左右両側部に形成された側面開口部5,5と、この側面開口部5,5を開閉するためのドアであって前端部が車体1に枢着されたヒンジ式のサイドドア14,14とを有している。上記運転席シート10の前方側にはステアリングホイール32が設置されており、このステアリングホイール32は、車室内の前端部に設置されたインストルメントパネル30の車幅方向中央部分から後方に延びるように設置されている。
【0018】
上記車室フロア3は、図4および図5に示すように、その上面部の車幅方向中央付近に突設されて前後方向に延びるフロアトンネル22と、車体1の左右両側辺部に設置されたサイドシル2,2とこのフロアトンネル22との間であってフロアトンネル22の上面部よりも低い位置に設置された左右一対のフロアサイド部20,20と、これらフロアトンネル22およびフロアサイド部20の後方側に設置された略平坦面からなるフロア後方部24とを有している。このフロア後方部24は、上記フロアサイド部20の後端部よりも高い位置に設置されており、上記フロアサイド部20の後端部から上方に立ち上がる段差部25を介して、上記フロアサイド部20およびフロアトンネル22とつながっている。なお、このフロア後方部24の下方側に形成された空間内には、燃料タンク36が設置されている。
【0019】
上記フロアトンネル22は、図2および図5に示すように、車体1の後方側に至るほど幅寸法が小さくなる平面視で後窄まりの形状に形成されている。一方、これに対応して、上記フロアサイド部20は、車体1の後方側に至るほど幅寸法が大きくなる平面視で後拡がりの形状に形成されている。そして、これらフロアトンネル22およびフロアサイド部20の上面部には、図7に示すように、上記運転席シート10および後席シート12に着座した乗員の足元が載置されるようになっている。すなわち、上記フロアトンネル22の前方部に、上記運転席シート10に着座した乗員の足元が載置され、上記フロアサイド部20の後方部に、上記後席シート12に着座した乗員の足元が載置されるようになっている。
【0020】
上記フロアサイド部20の上面部には、図2〜図5等に示される凹部40が設けられている。この凹部40は、車体1の側面部に形成された上記側面開口部5を通じて車室内に乗り込もうとする乗員が足を載置し易い位置に設けられており、当該乗員の足をまずこの凹部40内に踏み込ませることにより、乗員が車室内に乗り込む際の足場の高さを低く抑える役割を果たすように構成されている。
【0021】
また、上記フロアサイド部20は、図4に示すように、ダッシュパネル7の下端部から後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びるように設置されている。これに対し、上記フロアトンネル22の上面部は、車体1の前後方向に亘って略水平に延びるように設置されている。このため、フロアトンネル22の側壁面部の高さ、すなわち、フロアトンネル22の上面部とフロアサイド部20との間に形成された段差部21の高さは、車体1の前方側に至るほど低く、後方側に至るほど高くなるように形成されている。
【0022】
この段差部21は、図6に示すように、断面視で車幅方向外側の斜め下方に延びるように設置されている。この図6において、図6(b)は図6(a)のI−I線に沿った断面図、図6(c)はその後方側のII−II線に沿った断面図、図6(d)はそのさらに後方側のIII−III線に沿った断面図である。これら図6(b)〜(d)の断面図を見れば明らかなように、上記段差部21は、その傾斜角度が車体1の前方側に至るほど小さく、後方側に至るほど大きくなるように形成されている。
【0023】
上記運転席シート10は、図2および図4に示すように、シートクッション101とシートバック102とを有しており、このうちのシートクッション101の下面部に設けられたブラケット101aを介して上記フロアトンネル22の上面部に固定されている。一方、上記左右一対の後席シート12,12は、シートクッション121とシートバック122とをそれぞれ有しており、このうちのシートクッション121の下面部に設けられたブラケット121aを介して上記フロア後方部24の上面部に固定されている。そして、これら左右一対の後席シート12,12は、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように平面視で逆ハ字状に配設されるとともに、上記運転席シート10の後方部を左右から挟み込むような状態、すなわち、各後席シート12,12(のシートクッション121)の前方部が側面視で上記運転席シート10と部分的に重複するような状態で設置されている。また、後席シート12は、図2に示すように、後窄まりに形成された車室後端部の内壁面に突設される後輪用ホイールハウスの張り出し部34を避けるような状態で配設されている。
【0024】
以上説明したように、上記構成によれば、車幅方向中央付近に配設された運転席シート10の左右両側の斜め後方に、左右一対の後席シート12,12を配設するとともに、これら左右一対の後席シート12,12の前後方向の設置位置を、各後席シート12,12の前方部が側面視で上記運転席シート10と部分的に重複するような位置に設定したため、上記運転席シート10および後席シート12を配設するのに要する室内スペースの前後長を短くすることができ、これに応じて車体1をよりコンパクト化・軽量化することができる。また、車室フロア3の車幅方向中付近に突設されたフロアトンネル22上に上記運転席シート10を設置するとともに、このフロアトンネル22とサイドシル2との間に形成されたフロアサイド部20の上に、後席シート12に着座した乗員の足元を載置させるようにしたため、この後席乗員の足元部の前方が上記運転席シート10によって遮られてしまうことを回避して当該足元部の前後スペースをより広く確保することができる。
【0025】
特に、上記構成では、車体1の後方側に至るほど高さが低くなる後下がりの傾斜状態で上記フロアサイド部20を設置したため、後席乗員の足元が載置されるフロアサイド部20の後方部の設置高さを低くすることができ、その結果図9に示すように、後席乗員の膝の折り曲げ角度Eを相対的に小さくして当該乗員の着座姿勢をより安楽なものにすることができる。しかも、後下がりに傾斜する上記フロアサイド部20の上面に沿って、つま先上がりの状態で上位後席乗員の足元を載置させることができるため、この後席乗員の着座姿勢をより自然で踏ん張りの利き易い状態にすることができ、運転中の減速G等に起因した前向きの慣性力が加わるような状況下でも上記後席乗員の着座姿勢を安定した状態に維持できるという利点がある。
【0026】
また、上記実施形態のように、フロアサイド部20の上面部に凹部40を設け、車体1の側面部に形成された側面開口部5を通じて車室内に乗り込もうとする乗員の足をまずこの凹部40内に踏み込ませるようにした場合には、乗員が車室内に乗り込む際の足場の高さを低く抑えることができるため、乗員の車室内への乗り込み動作をより円滑化することができる。すなわち、車室内に乗り込もうとする乗員は車体1のルーフ部に頭をぶつけないように身をかがめる必要があるが、上記のような凹部40の存在により当該乗り込み時の足場の高さが低くなっていれば、その分だけ身をかがめる量が小さい値で済み、乗員はより円滑に車室内に乗り込むことができるようになる。また、この凹部40がフロアサイド部20上への適正な踏み込み位置を示す目印となるため、車室内への乗り込み時に乗員は常に適正な位置に足を踏み入れることができ、その足を基点とした自然な体勢で奥側の運転席シート10等へ移動することができるようになる。
【0027】
また、上記実施形態のように、幅寸法が車体1の後方側に至るほど小さくなるようにフロアトンネル22の平面形状を形成した場合には、後席シート12に着座した乗員の足元スペースが上記フロアトンネル22によって大きく狭められてしまうことを有効に回避しつつ、運転席シート10に着座した乗員の足元スペースをより広く確保することができる。すなわち、フロアトンネル22を平面視で後窄まりの形状に形成し、これに応じてフロアサイド部20を平面視で後拡がりの形状に形成したことにより、図7に示すように、前席(運転席)乗員の足元スペースとなるフロアトンネル22の前方部の幅寸法Aと、後席乗員の足元スペースとなるフロアサイド部20の後方部の幅寸法Bとを、ともに大きく確保することができる。また、上記フロアトンネル22の前方部が拡幅していることにより、このフロアトンネル22の下方に配置される排気管等のレイアウトの自由度が増すという利点もある。
【0028】
また、上記実施形態のように、左右一対の後席シート12,12を、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように配設した場合には、図7に示すように、この後席シート12に着座した乗員が、平面視で後窄まりに形成された上記フロアトンネル22の側壁面部(すなわち段差部21)と略平行に足を配置できるようになるため、当該後席乗員の足元に上記段差部21が近接してしまうことを有効に回避することができ、後席乗員の足元スペースを略左右均等に確保できるという利点がある。
【0029】
さらには、後席シート12を上記のような方向に配設することにより、例えば後輪用ホイールハウスの張り出し部34のような障害物が車室後端部に存在するために後席シート12の後方部の設置スペースが制限されるような状況下においても、この後席シート12のシート幅を比較的広く確保しながら、上記障害物を避けた状態で当該後席シート12を問題なく設置することができる。すなわち、図8に示すように、後席シート12を真っ直ぐ前方に向けて配設した場合には(図中の二点鎖線参照)、後方側にある上記ホイールハウスの張り出し部34(および前方側にある運転席シート10の後端部)を避けた状態において比較的小さい幅寸法Dしかシート幅を確保できないのに対し、上記のように後席シート12を車幅方向外側の斜め前方を向けて配設した場合には、シート幅として上記幅寸法Dよりも相対的に大きい幅寸法Cを確保することができるのである。
【0030】
また、図6に示したように、上記フロアトンネル22の側壁面部からなる段差部21を断面視で車幅方向外側の斜め下方に延びるように設置するとともに、その傾斜角度を車体1の前方側に至るほど小さくするようにした場合には、乗員が運転席シート10への乗り込み時に跨ぐ必要のある上記段差部21の前方部を、傾斜角度の小さい緩やかな傾斜面によって構成することができ、運転席シート10への乗降性を効果的に向上させることができる。一方、上記段差部21の後方部の傾斜角度を大きくする(鉛直に近づける)ことにより、後席乗員の足元が載置されるフロアサイド部20の後方部の幅寸法(図7のB寸法)が上記段差部21の傾斜によって大きく狭められてしまうことを有効に回避できるため、後席乗員の足元スペースをより広く確保することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、後席シート12に着座した乗員の足元が載置されるフロアサイド部20の後方部の設置高さを低くするために、このフロアサイド部20を後下がりの傾斜状態で設置するようにしたが、例えばフロアサイド部20を階段状に形成することによってこのフロアサイド部20の後方部の設置高さを下げるようにしてもよい。ただしこのような構成よりも、フロアサイド部20の上面を平滑な傾斜面とした上記実施形態の方が、フロア部の外観を良好に維持できる点や、つま先上がりの安定した姿勢で後席乗員を着座させることができる点で有利である。
【0032】
また、フロアトンネル22の側壁面部からなる段差部21の傾斜角度を、上記とは逆に、車体1の前方側に至るほど大きく、後方側に至るほど小さくするようにしてもよい。このようにした場合には、前席(運転席)乗員の足元が載置されるフロアトンネル22の前方部においてその上面部の幅(前席乗員の足元スペース)をより広く確保できるとともに、後席乗員の足元スペースを規制する上記段差部21の後方部を緩やかな傾斜面によって構成することにより、当該段差部21が後席乗員に与える圧迫感を効果的に低減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造の全体構成を示す図である。
【図2】車室内の状況を示す平面図である。
【図3】車体の側面開口部周辺の斜視図である。
【図4】車室内の状況を示す側面図である。
【図5】車室フロアの形状を示す斜視図である。
【図6】車室フロアのフロアトンネルの詳細形状を説明するための図であり、(a)は車室フロアの平面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図、(c)は(a)のII−II線に沿った断面図、(b)は(a)のIII−III線に沿った断面図である。
【図7】運転席シートおよび後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【図8】後席シートの配設方向とシート幅の関係について説明するための図である。
【図9】後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
1 車体
2 サイドシル
3 車室フロア
5 側面開口部(乗降口)
10 運転席シート
12 後席シート
20 フロアサイド部
21 段差部
22 フロアトンネル
40 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室フロア上の車幅方向中央部付近に配設された運転席シートと、この運転席シートの左右両側の斜め後方に配設された左右一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造であって、
上記左右一対の後席シートは、その前方部が側面視で上記運転席シートと部分的に重複するような位置に設置されており、
上記車室フロアは、その上面部の車幅方向中央付近に突設されて前後方向に延びるフロアトンネルと、車体の左右両側辺部に設置されたサイドシルとこのフロアトンネルとの間に形成されたフロアサイド部とを有し、
上記運転席シートは、上記フロアトンネル上に設置されており、
上記フロアサイド部の上面部は、その後方部であって上記後席シートに着座した乗員の足元が載置される部分の設置高さが、前方部の設置高さよりも低くなるように構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の車体構造において、
上記フロアサイド部の上面部は、車体の後方側に至るほど高さが低くなる後下がりの傾斜面によって構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車の車体構造において、
上記フロアサイド部の上面部は、車体側面の乗降口を通じて車室内に乗り込もうとする乗員が足を載置する位置に凹部を有することを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の車体構造において、
上記フロアトンネルは、車体の後方側に至るほど幅寸法が小さくなるように形成されており、
上記左右一対の後席シートは、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように配設されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車の車体構造において、
上記フロアサイド部とフロアトンネルの上面部との間の段差部は、断面視で車幅方向外側の斜め下方に延びるとともにその傾斜角度が車体の前方側に至るほど小さくなるように形成されていることを特徴とする自動車の車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−245851(P2007−245851A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70499(P2006−70499)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】