説明

自動車の車体構造

【課題】この発明は、フレーム構造として外部から作用する力のエネルギを分散しつつ効率良く伝達でき、高い剛性を持たせることができ、また、客室下方のフレーム構造をできるだけ拡幅し、内部空間の容積を細分化せずに増大させることを目的とする。
【解決手段】この発明は、車体の前部に左右一対設けられた前輪の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバを有し、このフロントサイドメンバに繋がり車体前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品を有する自動車の車体構造において、フロントサイドメンバは左右それぞれの後端を車体幅方向内側に対向するように延出させ、この延出させた各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車の車体構造に係り、特に、エンジンと燃料電池をともに使用することができる自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、駆動源であるガソリンエンジン(内燃機関)や燃料電池等の各部品の搭載性を考慮しながら、外部から作用する力に対する十分な強度と軽量化を図るために、様々な車体構造を採用している。
【0003】
従来の自動車の車体構造には、フロントフロアの下面側に、一対のサイドシルとセンタメンバと、これらを車幅方向に結合するセカンドクロスメンバ及びユニット構成部品のエンジン燃料タンクとで、強度剛性の高い平面略矩形の車室保護セル構造を構成し、外力の作用時に車室全体での荷重分散を効率的に行わせて車室の変形を防止するものがある。
【特許文献1】特開2000−81130号公報
【0004】
また、従来の自動車の車体構造には、車体パネルに沿って前後方向に延び且つ車体パネルを含む閉断面を形成するフロントアームやリヤフレームを備え、これら各フレームの閉断面内に各フレームに沿ってハイドロフォームにより成形したパイプ状部材を接合して、軽量化を図りつつ剛性強度を高めたものがある。
【特許文献2】特開2000−219163号公報
【0005】
また、従来の自動車の車体構造には、ペリメータフレームの左右一対の縦フレーム部の他端部に高い剛性を有するステアリングギヤユニットを車体左右方向に向けて配置し、ステアリングギヤユニットの上面又は下面を左右一対の縦フレーム部の他端部に連結することで、ステアリングギヤユニットを強度メンバとして機能させ、軽量化と高剛性との両立を図ったものがある。
【特許文献3】特開2000−225964号公報
【0006】
また、従来の自動車の車体構造には、車両に車体前後方向に延びる管部材が配設された車両の管配設構造であて、車体前後方向に延びるサイドフレームの車両外方側の車両側端部に前記管部材を配設することで、管部材を剛性部材として作用させ、車体剛性を向上したものがある。
【特許文献4】特開2001−115835号公報
【0007】
また、従来の自動車の車体構造には、車体前部の左右において前後方向に延びる一対のフロントフレームが設けられた車両の前部車体構造において、フロントフレームに両端が接続されて車幅方向に延び、かつ中央部がフロントフレーム接続部よりも前方に位置する管状のフロントエンドメンバを設けて、取り付け構造の簡略化を図りつつ形状及び剛性の自由度の向上を図り、さらに軽量化を図ったものがある。
【特許文献5】特開2002−145123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近頃の自動車には、パワーユニットとしてガソリンエンジンやディーゼルエンジン(内燃機関)、ハイブリッド型パワーユニット以外に、燃料電池を搭載したものがある。燃料電池を搭載した自動車(以下「燃料電池自動車」と記す。)を量産する際に、現行のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を搭載した自動車(以下「ガソリンエンジン自動車」と記す。)からの切り替えの過渡期では、燃料電池自動車とガソリンエンジン自動車をともに量産する時期がある。このような場合には、両者で車体(車台:プラットフォーム)を共通利用できれば、専用の車体を用いる必要がなくなり、効率的な生産が可能となる。
【0009】
その場合、ガソリンエンジン自動車では、エンジン搭載位置は現行と同じ位置と考えられる。これに対して、燃料電池自動車については、ガソリンエンジン自動車よりも搭載部品が増えるものの、各部品自体は分散配置が可能なものが多いため、外部からの衝撃や居住空間の拡大を考慮し、フロア下に燃料電池や水素源(タンクなど)を搭載し、モータおよび減速機を現行のエンジン搭載位置に置くのが合理的である。燃料電池とガソリンエンジンやディーゼルエンジンで共通の車体を用いる場合には、搭載性の違いを克服しながら、十分な強度を具備する車体構造が必要である。
【0010】
現在の車体では、外部から力が作用した時のエネルギーを吸収するサイドメンバがフロア下まで伸びており(以下「フロア下メンバ」と記す。)、外力作用時にフロア下へエネルギーを逃がす構造となっている。
【0011】
ところが、燃料電池自動車において、フロア下へ部品搭載を行う場合には、部品搭載空間を確保した上でさらにその下にフロア下メンバを配置することになるため、最低地上高を下げるか、フロア高さをさらに上にあげる必要がある。このため、最低地上高を下げた場合には、地上突起物との干渉可能性が高まる問題があり、また、フロア高さを上にあげた場合には、客室高さの減少を招く問題があり、好ましくない。
【0012】
また、フロア下へ部品搭載を行う場合には、燃料電池ユニットのメンテナンス性の観点から見ると、大型部品の載せ降ろしや部品へのアクセスの際に、フロア下メンバが邪魔になる場合があり、搭載性や保守性を阻害する問題があり、やはり、好ましくない。
【0013】
この発明は、フレーム構造として外部から作用する力のエネルギを分散しつつ効率良く伝達でき、高い剛性を持たせることができ、また、客室下方のフレーム構造をできるだけ拡幅し、内部空間の容積を細分化せずに増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、車体の前部に左右一対設けられた前輪の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバを有し、このフロントサイドメンバに繋がり車体前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品を有する自動車の車体構造において、前記フロントサイドメンバは左右それぞれの後端を車体幅方向内側に対向するように延出させ、この延出させた各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明の自動車の車体構造は、車体の前部に左右一対設けられたフロントサイドメンバの各後端を車体幅方向内側に対向するように延出させ、延出させた各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成したことにより、正面より傾斜した方向から作用する外力に対して、エネルギを分散するように伝達し、フロントサイドメンバの倒れを抑止することができる。また、この発明の自動車の車体構造は、左右個別のフロントサイドメンバを溶接する構造ではなくなるので、寸法精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の自動車の車体構造は、車体の前部に左右一対設けられたフロントサイドメンバの各後端を車体幅方向内側に対向するように延出させ、延出させた各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成したことで、正面より傾斜した方向から作用する外力によるフロントサイドメンバの倒れを抑止し、また、左右個別のフロントサイドメンバを溶接する構造とせずに、寸法精度を向上する目的を達成するものである。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0017】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。図8において、1は自動車、2は車体である。自動車1の車体2は、フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4とに、サブフレーム5、フロントパネル6、フェンダエプロンパネル7、ダッシュパネル8、フロアパネル9を取り付けて一体化し、ダッシュパネル8前側にパワーユニットルーム10を形成し、ダッシュパネル8後側に客室11を形成している。
【0018】
自動車1の車体2には、サブフレーム5とフェンダエプロンパネル7とに懸架装置12のストラット13を支持し、ストラット13下端に前輪14の車軸15を支持し、サブフレーム5に操舵装置16のステアリングギヤボックス17を取り付けている。パワーユニットルーム10には、車体2の前側から熱交換器18と走行モータ19と前記車軸15及びステアリングギヤボックス17と走行モータ用インバータ20とを搭載している。フロアパネル9下のフロア下成型品4内には、燃料電池ユニット21と燃料容器群(水素タンク群)とを搭載している。走行モータ用インバータ20と燃料電池ユニット21とは、配管22により連絡されている。
【0019】
この自動車1の車体2は、図1〜図4に示すように、車体2の前部に左右一対設けた前輪14の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバ3を有し、このフロントサイドメンバ3に繋がり車体2前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品4を有している。
【0020】
前記フロントサイドメンバ3は、客室11前に位置し、エンジンや足回り部品である懸架装置12、操舵装置16等の取付け部材としての機能を持つが、同時に、車体2に前面から外力が作用した時にエネルギーを吸収する役目も持っている。具体的には、フロントサイドメンバ3が長手方向に圧壊または曲げ変形することで、その変形エネルギーにより外部から作用するエネルギーを吸収する。
【0021】
従って、フロントサイドメンバ3は、部品取り付けのための強度・剛性が必要とされ、同時に外力作用時の大きなエネルギーをより多く吸収できる性能(エネルギー吸収性能)が必要とされる。ただし、このフロントサイドメンバ3の位置は、パワーユニットルーム10として、エンジンや走行モータ19、トランスミッション、足回り部品、前輪14等の多くの部品が収納される位置にある。このため、各部品との干渉等を避ける意味からは、この部品自体は、できる限りスペースを取らない構造とした方が良い。
【0022】
この自動車1の車体2構造は、前記フロントサイドメンバ3を、車体2の幅方向に延びる中間部23と、中間部23両端にそれぞれ繋がり前輪14の間を車体2前側に延びる一対の側部24とからなるパイプ部材とし、ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体2前側が開いた略コ字状に形成している。
【0023】
フロントサイドメンバ3は、図5〜図7に示すように、車体2後側に対応する部位の中間部23の後側上部に車体2幅方向に延びる段部25を形成し、断面形状を略L字箱形状としている。フロントサイドメンバ3は、車体2側面に対応する部位の一対の側部24の断面形状を上下に長い縦長四角箱形状とし、一対の側部24後端を車体2の幅方向内側に対向するように傾斜させて延出させ、延出させた各後端を中間部23両側に繋げて連続させたフレームメンバとして形成している。
【0024】
フロントサイドメンバ3は、車体2の幅方向内側に対向するように傾斜させて延出た一対の側部24の後端近傍に、中間曲げ部26を形成している。中間曲げ部26前側の側部24には、上方に突出するように屈曲するとともに左右に蛇行するように屈曲する屈曲部27を形成している。屈曲部27前側の側部24は、直線状に前方に延びている。
【0025】
フロントサイドメンバ3には、サブフレーム5を設けている。サブフレーム5は、一対の側部24の前後方向にわたってある幅をもって取り付けられ、フロントサイドメンバ3の左右の側部24を繋いでいる。サブフレーム5は、後端をフロントサイドメンバ3の一対の側部24と後述する補強部品35との連結部分の前側近傍に位置させている。このサブフレーム5の上方位置には、ダッシュパネル8をフロントサイドメンバ3の一対の側部24から立ち上げている。
【0026】
また、前記フロア下成形品4は、客室11のフロアパネル6上の部分を囲む部品である。燃料電池を搭載した自動車1の場合は、このフロア下成形品4中に燃料電池ユニット21や燃料タンク(水素タンク)を収納する。ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を搭載した自動車1の場合には、ガソリンや軽油などの燃料タンクを収納する。
【0027】
外力が作用した場合には、客室11はできる限り変形しない方が良い。これは、そのままフロア下成形品4に収納される部品にも当てはまる。車体2には、前面や側面等の多方向から外力が作用することが考えられるが、いずれの方向からの外力作用に際しても、客室11が変形し難い特性が要求される。また、自動車1の使用においては、外力作用以外にも、路面から石などがぶつかるおそれがあるため、これらから部品を保護する役目も持っている。
【0028】
この自動車1の車体2構造は、前記フロア下成形品4を、車体幅方向に延びる中間部28と、中間部28両端にそれぞれ繋がり車体2後側に延びる一対の側部29とからなるパイプ材とし、ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体2後側が開いた略コ字状に形成している。
【0029】
フロア下成形品4は、車体2前側に対応する部位の中間部28の前側下部に車体2幅方向に延びる段部30を形成し、断面形状を前後に長い略逆L字箱形状としている。フロア下成形品4は、車体2側面に対応する部位の一対の側部29の断面形状を上下に長い縦長四角箱形状とし、一対の側部29前端を車体2の幅方向内側に対向するように延出させ、延出させた各前端を中間部28両側に繋げている。フロア下成形品4は、中間部28の上面を側部29の上面と同じ高さに位置させる一方、中間部28の下面を側部29の下面よりも高く位置させて、中間部28の下側中央に前記配管22との干渉を回避する上方に窪んだ配管逃げ部31を形成している。
【0030】
フロア下成形品4は、車体2の幅方向内側に対向するように延出させた一対の側部29の前端近傍に、中間曲げ部32を形成している。フロア下成形品4の中間曲げ部32は、フロントサイドメンバ3の中間曲げ部26よりも長く形成して、この中間曲げ部26よりも車体2外側後方に配設している。中間曲げ部32後側の側部29は、直線状に後方に延びてクロスメンバ33により左右を連結されるとともに、側面に肉抜き孔34を形成している。肉抜き孔34は、軽量化と強度とのバランスを考慮して大きさを決定する。
【0031】
前記フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4とは、一平面(フロア面)にほぼ沿うように車体2前後方向に並べて互いの中間部23と中間部28とを対向させるとともに、各中間部23・28にそれぞれ形成した段部25・30を互いに当接させて結合させている。これにより、フロントサイドメンバ3の左右それぞれ一対の側部24の後端とフロア下成形品4の左右それぞれ一対の側部29の前端とは、車体2幅方向中央位置にて互いに中間部23・28を介して連結している。
【0032】
前記車体2は、フロントサイドメンバ3の各後端およびフロア下成形品4の各前端を繋ぐ補強部品35を左右一対設けている。これら左右一対の補強部品35は、断面形状を上部が開放した略U字形状とし、ダッシュパネル8後方の近傍で、フロントサイドメンバ3の各後端およびフロア下成形品4の各前端を繋いでいる。
【0033】
この一対の補強部品35は、フロントサイドメンバ3の各後端近傍の中間曲げ部26とフロア下成形品4の各前端近傍の中間曲げ部32とを繋いでいる。左右一対の補強部品35は、前端が後端よりも車体2幅方向内側に近接位置するように配設して、前輪14後端に対して傾斜させて対向させている。前記フロア下成形品4の一対の側部29の各前端を繋ぐ中間部28を、この補強部品35の後方位置で、中間曲げ部32から車体2幅方向内側に延出するように形成している。
【0034】
これにより、左右一対の補強部品35は、フロントサイドメンバ3の中間部23両端にそれぞれ先端が繋がり、車体2前側に延びる一対の側部24から一平面にほぼ沿うように車体2後方外側に分岐して延出し、フロントサイドメンバ3の中間部23よりも長く車体2幅方向に延出されたフロア下成形品4の中間部28の一対の側部29が繋がる部分に後端を連結している。
【0035】
このように、この自動車1の車体2構造は、車体2の前部に左右一対設けられた前輪14の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバ3を有し、このフロントサイドメンバ3に繋がり車体2前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品4を有し、車体2の前部に左右一対設けられたフロントサイドメンバ3の一対の側部24の各後端を車体2幅方向内側に対向するように延出させ、延出させた側部24の各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成している。
【0036】
これにより、この自動車1の車体2構造は、正面より傾斜した方向から作用する外力に対して、エネルギを分散するように伝達し、フロントサイドメンバ3の倒れを抑止することができる。また、この自動車2の車体2構造は、左右個別のフロントサイドメンバ3を溶接する構造ではなくなるので、寸法精度を向上することができる。
【0037】
この自動車1の車体2構造は、フロントサイドメンバ3の左右それぞれの側部24の後端とフロア下成形品4の左右それぞれの側部29の前端とを車体2幅方向中央位置にて互いに中間部23、28を連結する一方、フロントサイドメンバ3の側部24の各後端およびフロア下成形品4の側部29の各前端を繋ぐ補強部品35を左右一対設け、これら左右一対の補強部品35はダッシュパネル8後方の近傍でフロントサイドメンバ3の側部24の各後端およびフロア下成形品4の側部29の各前端を繋いでいる。
【0038】
これにより、この自動車1の車体2構造は、懸架装置12、操舵装置16、走行モータ19等の艤装品が多数設けられる客室11前部付近の強度剛性を、補強部品35によって向上させることができる。
【0039】
この自動車1の車体2構造は、フロントサイドメンバ3の一対の側部24の各後端近傍に中間曲げ部26を形成するとともにフロア下成形品4の一対の側部29の各前端近傍に中間曲げ部32を形成し、フロントサイドメンバ3の中間曲げ部26とフロア下成形品4の中間曲げ部32とを繋ぐ補強部品35を左右一対設け、フロントサイドメンバ3の中間曲げ部26よりもフロア下成形品4の中間曲げ部32を車体2外側後方に配設し、左右一対の補強部品35を前輪14後端に対して傾斜させて対向させるとともに、フロア下成形品4の一対の側部29の各前端が繋がる中間部28を補強部品35の後方位置で中間曲げ部32から車体2幅方向内側に延出するように形成している。
【0040】
これにより、この自動車2の車体2構造は、正面より傾斜した方向からフロントサイドメンバ3に作用する外力のエネルギをフロア下成形品4に分散するよう伝達し、フロントサイドメンバ3の倒れを抑止することができ、前輪14後退による客室11前部の変形を補強部品35で抑制することができ、作用した外力のエネルギ、荷重を分散しつつ、フロア下成形品4へ伝達させることができる。
【0041】
前記フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4とは、パイプ材としている。これにより、この自動車2の車体2構造は、パイプ材の閉断面により剛性を上げることができ、他の車体パネル(フェンダエプロンパネル7、フロアパネル9)などと一体結合しなくとも、フレーム自体で高い剛性を確保することができる。
【0042】
前記フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4とは、ハイドロフォーム成形により形成している。これにより、この自動車2の車体2構造は、搭載部品に合わせて、各メンバ3・4の部分的な断面形状を変更でき、特に車体2の幅方向中心寄りで各種の配管22などを配設するダッシュパネル8下方の位置において、そこに対応するフレームメンバのフロントサイドメンバ3とフロア下成形品4との各中間部23・28での断面形状を最適化する形状に変形させることができる。
【0043】
前記フロア下成形品4の断面形状は、車体2側面に対応する部位の側部29は上下に長く、車体2前側に対応する部位の中間部28は前後に長い形状としている。これにより、この自動車1の車体2構造は、艤装品が多数設けられる付近の形状で、中間部28の下側において前後方向に配索する必要のある配管22などの艤装品の配設自由度を高くでき、客室11前部付近の形状を、前後に長い形状の中間部28によって前後方向について高い強度剛性を確保できる。
【0044】
この自動車2の車体2構造は、フロントサイドメンバ3の前後方向にわたって取り付けられるとともにその左右を繋ぐサブフレーム5を設け、このサブフレーム5の後端をフロントサイドメンバ3と補強部品35との連結部分の前近傍に位置させる一方、ダッシュパネル8をサブフレーム5の上方位置でフロントサイドメンバ3から立ち上げている。
【0045】
これにより、この自動車1の車体2構造は、艤装品が多数設けられる客室11前部付近の強度剛性を向上することができ、正面より傾斜した方向から作用した外力のエネルギを分散するよう伝達し、フロントサイドメンバ3の倒れを抑止することができる。
【0046】
また、この自動車1の車体2構造は、フロントサイドメンバ3を第一のフレーム、フロア下成形品4を第二のフレーム、補強部品35を第三のフレームと言い換えると、ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体2前側が開いた略コ字状をなす第一のフレーム3と、ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体後側が開いた略コ字状をなす第二のフレーム4とを設け、これら第一・第二のフレーム3・4を一平面にほぼ沿うように車体2前後方向に並べて互いの中間部23・28を対向させるとともに、各中間部23・28に一つ以上の段部25・30をそれぞれ形成して互いに当接させて結合させる一方、第一のフレーム3の中間部23両端にそれぞれ繋がり車体2前側に延びる一対の側部24から一平面にほぼ沿うように車体2後方外側に分岐して延出する一対の第三のフレーム35を設け、第二のフレーム4の中間部28両端にそれぞれ繋がり車体2後側に延びる一対の側部29を設け、第二のフレーム4の中間部28を第一のフレーム3の中間部23よりも長く車体2幅方向に延出して、第二のフレーム4の中間部28両端の一対の側部29が繋がる部分に一対の第三のフレーム35の後端を連結しているものである。
【0047】
これにより、この自動車1の車体2構造は、フレームを、フェンダエプロンパネル7やフロアパネル9等と一体化したビルトインフレームとし、いわゆるモノコックボディとしたが、モノコックボディ以外のセパレートフレームなどに適用可能である。
【0048】
次に、この自動車1の車体2構造を、燃料電池自動車に適用した例を説明する。パワーユニットとして燃料電池を搭載した自動車1の車体2は、ハイドロフォーム成形により形成されるフロントサイドメンバ3及びフロア下成形品4とこれらを繋ぐ補強部品35とを備えている。
【0049】
左右一対の補強部品35は、車体2に外力が作用した際において前輪14が後方に押し下げられて、フロントパネル6やフロントサイドメンバ3を変形させ得るような場合に、前輪14と直接接触して座屈変形することによりエネルギーを吸収する。これにより、補強部品35は、ダッシュパネル8や客室11に対応するフレームである中央のフロア下成形品4の変形を抑制することができる。
【0050】
フロントサイドメンバ3は、平面視で、中間部23と一対の側部24とにより略コ字状あるいは略U字状などのフォーク状をなし、側面視で、水平より後方がやや低くなるように略直線状に形成し、前後に延びる左右一対の側部24内側かつ下方寄りに、熱交換器18、走行モータ19、懸架装置12、走行モータ用インバータ20を前方より順に収容する。
【0051】
熱交換器18は、ラジエータとして、燃料電池ユニット21用と、補機用とを備え、それらを走行風が効率よくあたるように並べて車体2前部に配置している。なお、熱交換器18には、エアコン用のコンデンサも含まれる。
【0052】
前輪14の懸架装置12は、サブフレーム5を有し、これにロアアームや操舵装置16のステアリングギヤボックス17を載置する。サブフレーム5は、フロントサイドメンバ3の左右一対の側部24に掛け渡すように下から取り付け、一対の側部24の形状に対応する連結部分を有して、平面的に広がる主部がほぼ水平となるように前後各位置を固定する。前輪14の車軸15は、サブフレーム5の前側で、フロントサイドメンバ3の一対の側部24より下方かつサブフレーム5の上方の高さに配置する。
【0053】
サブフレーム5の上方には、前輪14の懸架装置12のストラット13が上下に配設される。ストラット13の後方近くには、ダッシュパネル8が上下に伸びるように設けられる。ダッシュパネル8から前方には、左右一対のフェンダエプロンパネル7が設けられ、フロントサイドメンバ3の一対の側部24と一体化される。また、ダッシュパネル8がフロアパネル9と繋がる付近では、フロントサイドメンバ3の一対の側部24の形状がパネル形状に沿って屈曲し屈曲部27を形成している。
【0054】
走行モータ用インバータ20は、フロントサイドメンバ3の中間部23及び一対の側部24とサブフレーム5との各部材に囲まれるように搭載されている。走行モータ用インバータ20は、その両側方を一対の側部24により、その後方を中間部23により、下方をサブフレーム5によりそれぞれ囲まれている。
【0055】
燃料電池用の配管22類は、走行モータ用インバータ20の背面と燃料電池ユニット21の前面との間をほぼ水平に繋ぐように、また、フロントサイドメンバ3の中間部23及びフロア下成型品4の中間部28の下面に沿うように、配索してある。各中間部23・28の下面は、フロア下成型品4の一対の側部29の最低高さとなる下面よりも高く位置させ、フロア下成型品4の一対の側部2の断面高さ寸法の約半分程度の位置とし、配管22を配索する配管逃げ部31を形成している。
【0056】
フロア下成型品4の一対の側部29の前後方向における中間位置には、左右に掛け渡して設けられるクロスメンバ33を備えている。クロスメンバ33は、側方から作用する荷重に対する変形防止に寄与するが、その前方に搭載する燃料電池ユニット21と、その後方の燃料容器群(水素タンク群)の間を分ける隔壁としての役割も果たすことができる。
【0057】
次に、この自動車1の車体2構造を、ガソリンエンジン(パワーユニットとしてディーゼルエンジン等を含んだ内燃機関を示し、またハイブリッド型パワーユニットを含む)自動車に適用した例を説明する。なお、ここで言うガソリンエンジンとは、ディーゼルエンジン等を含んだ内燃機関を示し、またハイブリッド型パワーユニットを含むものとする。パワーユニットとしてガソリンエンジンを搭載した自動車1の車体2は、ハイドロフォーム成形により形成されるフロントサイドメンバ3及びフロア下成形品4とこれらを繋ぐ補強部品35とを備えている。
【0058】
フロントサイドメンバ3は、平面視で、中間部23と一対の側部24とにより略コ字状あるいは略U字状などのフォーク状をなし、側面視で、水平より後方がやや低くなるように略直線状に形成し、前後に延びる左右一対の側部24内側かつ下方寄りに、熱交換器18、走行モータ19、懸架装置12、走行モータ用インバータ20を前方より順に収容する。
【0059】
熱交換器18は、ラジエータとして、パワーユニット用(補機用も含む)を備え、それらを走行風が効率よくあたるように車体2前部に配置している。現況では、パワーユニット用の熱交換器18は、燃料電池ユニット21用よりも充分小さい。熱交換器18は、エアコン用のコンデンサと重ねて搭載することができる。
【0060】
ガソリンエンジンからなるパワーユニットは、側面視で、走行モータ19のみの場合より、車体2前後方向に大きくなるので、フロントサイドメンバ3の一対の側部24前半部(とくにダッシュパネル8より前側の直線部分)を、走行モータ19のみの場合よりも長く延出して形成する。
【0061】
前輪14の懸架装置12は、サブフレーム5を有し、これにロアアームや操舵装置16ステアリングギヤボックス17を載置する。サブフレーム5は、フロントサイドメンバ3の左右一対の側部24に掛け渡すように下から取り付ける。前輪14の車軸15は、サブフレーム5の前側で、フロントサイドメンバ3の一対の側部24より下方かつサブフレーム5の上方の高さに配置する。
【0062】
サブフレーム5の上方には、前輪14の懸架装置12のストラット13が上下に配設される。ストラット13の後方近くには、ダッシュパネル8が上下に伸びて設けられる。ダッシュパネル8から前方には、左右一対のフェンダエプロンパネル7が設けられ、フロントサイドメンバ3の一対の側部24と一体化される。ダッシュパネル8から前方の左右一対のフェンダエプロンパネル7に囲まれた空間が、エンジンルーム(パワーユニットルーム10)であり、走行モータ19の場合と比べて、前輪14の車軸15より前側となる部分、いわゆるオーバーハングとなる長さが大きくなる。
【0063】
フロア下成型品4の一対の側部29の前後方向における中間位置には、左右に掛け渡して設けられるクロスメンバ33を備えている。フロア下成型品4の内部では、クロスメンバ33の前後にわたって配索される排気管と、クロスメンバ33の後方に収容される燃料容器(ガソリンタンク)がある。ハイブリッド用の電池やキャパシタは、クロスメンバ33の前方に搭載可能である。
【0064】
このように、この自動車の車体構造は、フレーム構造として外部から作用する力のエネルギを分散しつつ効率良く伝達でき、高い剛性を持たせることができ、また、客室下方のフレーム構造をできるだけ拡幅し、内部空間の容積を細分化せずに増大させることができ、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン(内燃機関)、ハイブリッド型パワーユニットを搭載した自動車と、燃料電池を搭載した自動車との両者で、車体を共通利用することが可能となり、効率的な生産が可能となる。
【0065】
詳述すると、この自動車1の車体2は、前側のフロントサイドメンバ3を左右一体のパイプ材によるハイドロフォーム成形品とし、フロアパネル6下の逆U字型のフロア下成形品4をパイプ材によるハイドロフォーム成形品とし、フロントサイドメンバ3をフロア下成形品4と連結した上で、さらに補強部品35により両者を連結した構造としている。
【0066】
このような構造とすることで、この自動車1の車体2構造は、前方から作用した外力のエネルギーは、車体2幅方向全面にわたって外力が作用した場合には、フロントサイドメンバ3の左右両側の側部24で受け、フロア下成形品4の中間部28による結合部分および補強部品35との連結部分の両方を通って、フロア下成形品4の左右両側の側部29に分散させることができる。また、車体2幅方向一側に偏って外力が作用した場合には、フロントサイドメンバ3の片側の側部24ヘの入力エネルギーは、片側の側部24に近い側の補強部品35とフロア下成形品4の結合部分を通して、同様に、フロア下成形品4の左右両側の側部29に分散させることができる。
【0067】
この自動車1の車体2構造は、フロントサイドメンバ3を左右一体としているため、片側の側部24へのエネルギー入力に際しても、連結部分の中間部23を介してフロア下成形品4の中間部28から反対側ヘエネルギーを流(分散)させる効果がある。さらに、この中間部23・28の連結部分は、構造的に剛性が向上しているため、つぶれにくい部分であり、客室11前部の保護にも有利となる。
【0068】
フロントサイドメンバ3は、パイプ材による成形品とすることで、完全閉断面による高剛性と、エネルギー吸収性能を両立させることができる。また、フロア下成形品4についても、パイプ材による成形品とすることで、高い剛性と強度を両立させる。両者の成形には、ハイドロフォーム成形が適している。
【0069】
補強部品35は、車体2前面から外力が作用した時にフロントサイドメンバ3の左右方向への傾きを抑制し、入力エネルギーをフロア下成形品4に流す役目を持ち、さらに、外力作用時の前輪14の後退を受け止める役目も併せ持つ。このように、この自動車1の車体2構造は、フロントサイドメンバ3に入力されるエネルギーを、補強部品35およびフロア下成形品4との結合部分を通して、フロア下成形品4へ効果的に分散させることができる。左右の補強部品35については、U字型断面(いわゆるハット型断面)形状の板金部品で良いが、パイプ材を使用することにより、さらに剛性、強度を向上することができる。
【0070】
燃料電池自動車でもガソリンエンジン自動車でも、フロアパネル9下の燃料電池ユニット21やガソリンタンクと、ダッシュパネル8前部の走行モータ19やエンジンヘのエネルギー供給や冷却水のために、配管22が必要になる。車体2下面にフレーム部材よりも下に配管22を配置することは、地上突起物との衝突による破損の可能性増大により好ましくなく、また、客室11内側への配管22の配置も、客室11の床に、ユーザには無用な突部をつけることになるため、やはり好ましくない。
【0071】
従って、車体2には、フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4との間で配管22を通すスペースを設ける必要がある。一般的には、穴を開けて配管22のスペースを設ける場合が多い。しかし、この自動車1の車体2構造では、ハイドロフォーム成形を用いることによって、フロントサイドメンバ3の中間部23との連結部分であるフロア下成型品4の中間部28下側に上方に窪んだ配管逃げ部31を形成し、その窪ませた分を前方へ張出させて、中間部28の周長(フレーム断面の周囲長)を変化させないように断面形状を変化させることで、成形性と前後方向の剛性向上を両立させている。
【0072】
フロア下成型品4の中間部28の連結部分は、断面形状を前後に長く上下に短い扁平な四角形状に変化させて形成することで、前後方向の剛性と強度を向上させ、外力作用時の荷重に対して有利な形状にするとともに、断面中心を上下にずらすことで下面の下方に配管22を通す配管逃げ部31も設けることができ、両者を両立させる形状としている。連結部分以外の部分では、概略正方形断面にし、ねじりや上下方向の剛性を加味した形状とすることも可能であるし、縦に長い長方形断面として、上下方向荷重(静的)の引き上げや、床下搭載部品の保護にあてることも可能である。その場合には、車体2幅方向のスペース効率をより高くすることができる。また、ハイドロフォーム成形で形成する場合には、この断面の変化を3次元的に連続して行うことが可能であり、接合部にありがちな応力集中箇所を作らないですむという副次的効果もある。
【0073】
フロントサイドメンバ3とフロア下成形品4との結合は、MIG(Metal Inert Gas)/MAG(Metal Active Gas)溶接やレーザ溶接のような片側から行う連続溶接法が適当である。ただし、剛性や強度等の機能を阻害しない範囲であれば、穴を開けることでスポット溶接、リベット、カシメ接合等色々な接合方法を採用することができる。この結合部分の形状は、曲げやねじり方向を考慮して、図7に示すように、フロントサイドメンバ3の中間部23とフロア下成形品4の中間部28とにそれぞれ段差25・30を設けた略L字型断面形にするのが好ましい。このような形状の場合には、単純な四角形同士を接合する場合に比較して、車体2上下方向の曲げ(図4の矢印方向)や車体2のねじり(図2の矢印方向)に対して、より強い構造とすることができ、また、組立時に位置決めを行いやすいという効果がある。当接面が単純平面でなくなり、面にそってずれにくく、接触面積を広くすることができる。
【0074】
ガソリンエンジン自動車(なお、ここで言うガソリンエンジンとは、ディーゼルエンジンなどを含む内燃機関を示し、ハイブリッド型パワーユニットも含む)と、燃料電池自動車とでは、客室11前のフロント部分のパワーユニットルーム10(フロントサイドメンバ3に囲まれた領域)に搭載する機器が異なり、ガソリンエンジン自動車では大きく、燃料電池自動車では小さい。特に、燃料電池自動車において、フロアパネル9下に燃料電池ユニット21を搭載する場合には、走行モータ19と変速機のみをパワーユニットルーム10に搭載するため、ガソリンエンジンよりも体積的には小さくなる。従って、燃料電池自動車では、ガソリンエンジン自動車よりもフロント部分のパワーユニットルーム10を小さくすることができ、客室11の拡大に充てることができる。その場合には、フロントサイドメンバ3も小さく作る必要があり、燃料電池自動車とガソリンエンジン車で長さの異なるフロントサイドメンバ3を作る必要がある。
【0075】
一般的な板金部品であれば、別部品として金型を変える必要があるが、ハイドロフォーム成形を用いた場合には、同じ金型を利用して共通の部品としながら、機器の占有寸法に合わせて、端部の長さを変更することが容易である。具体的には、長さを変える部分の断面形状を一定にしておけば、素管の長さを変えるのみで、長さ違い品を成形できる。また、燃料電池自動車とガソリンエンジン車で車両重量が異なる場合が考えられるが、その場合には吸収するエネルギー量が異なってくるため、その調整を板厚等で行うことになる。ハイドロフォーム成形の場合には、同じ形状で異なる板厚の部品を製造するにも、パンチのみを変えることで可能であり、板厚にあわせて金型をいくつも用意するというデメリットを回避できる。同様の効果は、フロア下成形品4でも得ることができる。
【0076】
フロア下成形品4については、フロアパネル9下の部品搭載性を向上させるには、できる限り部品形状に合わせた曲面を形成する方が有利である。例えば、燃料電池の水素タンクの水素取り出し口周辺部分のみを口金形状に合わせて逃がしたり、部品間の配線や水素・空気(酸素)の配管スペースにあわせて、断面形状を変化させることで、成形品の外寸法を変えることなく、有効な搭載寸法(内部寸法)を得ることが可能である。このためには、3次元的に形状を変化させられるハイドロフォーム成形は、非常に有利である。さらに、フロアパネル9下には、燃料電池ユニット21や水素タンクといった、外力作用時に特に保護したい部品が集約される。これらを外力から保護するためには、フロア下成形品4に非常に高い剛性と強度を付与する必要がある。ハイドロフォーム成形では、完全閉断面のパイプ材を材料に用いるために、もともと剛性が高いというメリットがあり、さらにハイドロフォーム成形時に導入される加工歪によって、材料を高強度化するという副次的効果も得られる。
【0077】
フロア下成形品4は、保護する部品の高さ(厚み)に合わせるのが適当であるが、その場合には高さが高くなり、重量も重くなりがちである。その場合、必要な剛性を確保したレベルで、軽量化穴の肉抜き孔34を開けることが可能である。フロア下成形品4は、この軽量化穴の肉抜き孔34を、スポット溶接が可能なように開ける(例えば、長軸部分に一定間隔で規則的に設ける。)ことで、生産性の高いスポット溶接が使用できるようになる。また、剛性が必要な部分は、アーク溶接やレーザ溶接、プラズマ溶接、といった連続溶接法を用いれば、さらに剛性を向上させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明の自動車の車体構造は、フレーム構造として外部から作用する力のエネルギを分散しつつ効率良く伝達でき、高い剛性を持たせることができ、また、客室下方のフレーム構造をできるだけ拡幅し、内部空間の容積を細分化せずに増大させることができ、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン(内燃機関)、ハイブリッド型パワーユニットを搭載した自動車と、燃料電池を搭載した自動車との両者で、車体を共通利用することが可能となり、効率的な生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例を示す車体の平面図である。
【図2】前上方からの車体の斜視図である。
【図3】前下方からの車体の斜視図である。
【図4】車体の側面図である。
【図5】図1のV−V線による断面図である。
【図6】図5の矢印VI部位の拡大斜視図である。
【図7】図6の矢視VIIによる拡大断面図である。
【図8】自動車前部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 自動車
2 車体
3 フロントサイドメンバ
4 フロア下成形品
5 サブフレーム
6 フロントパネル
7 フェンダエプロンパネル
8 ダッシュパネル
9 フロアパネル
10 パワーユニットルーム
11 客室
12 懸架装置
13 ストラット
14 前輪
15 車軸
16 操舵装置
17 ステアリングギヤボックス
18 熱交換器
19 走行モータ
20 走行モータ用インバータ
21 燃料電池ユニット
22 配管
23 中間部
24 側部
25 段部
26 中間曲げ部
27 屈曲部
28 中間部
29 側部
30 段部
31 配管逃げ部
32 中間曲げ部
33 クロスメンバ
34 肉抜き孔
35 補強部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に左右一対設けられた前輪の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバを有し、このフロントサイドメンバに繋がり車体前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品を有する自動車の車体構造において、前記フロントサイドメンバは左右それぞれの後端を車体幅方向内側に対向するように延出させ、この延出させた各後端を繋げて連続させたフレームメンバとして形成したことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
車体の前部に左右一対設けられた前輪の間を通って左右一対設けられ、かつ略水平に延びるフロントサイドメンバを有し、このフロントサイドメンバに繋がり車体前後方向に延びる左右一対のフロア下成形品を有する自動車の車体構造において、前記フロントサイドメンバの左右それぞれの後端と前記フロア下成形品の左右それぞれの前端とを車体幅方向中央位置にて互いに連結する一方、前記フロントサイドメンバの各後端および前記フロア下成形品の各前端を繋ぐ補強部品を左右一対設け、これら左右一対の補強部品はダッシュパネル後方の近傍で前記フロントサイドメンバの各後端および前記フロア下成形品の各前端を繋ぐことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
前記フロントサイドメンバの各後端近傍に中間曲げ部を形成するとともに前記フロア下成形品の各前端近傍に中間曲げ部を形成し、前記フロントサイドメンバの中間曲げ部と前記フロア下成形品の中間曲げ部とを繋ぐ補強部品を左右一対設け、前記フロントサイドメンバの中間曲げ部よりも前記フロア下成形品の中間曲げ部を車体外側後方に配設し、前記左右一対の補強部品を前輪後端に対して傾斜させて対向させるとともに、前記フロア下成形品の各前端が繋がる中間部を前記補強部品の後方位置で中間曲げ部から車体幅方向内側に延出するように形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記フロントサイドメンバと前記フロア下成形品とはパイプ材とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項5】
前記フロントサイドメンバと前記フロア下成形品とはハイドロフォーム成形により形成することを特徴とする請求項4に記載の自動車の車体構造。
【請求項6】
前記フロア下成形品の断面形状は、車体側面に対応する部位は上下に長く、車体前側に対応する部位は前後に長い形状とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項7】
前記フロントサイドメンバの前後方向にわたって取り付けられるとともにその左右を繋ぐサブフレームを設け、このサブフレームの後端を前記フロントサイドメンバと前記補強部品との連結部分の前近傍に位置させる一方、前記ダッシュパネルを前記サブフレームの上方位置で前記フロントサイドメンバから立ち上げたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の自動車の車体構造。
【請求項8】
ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体前側が開いた略コ字状をなす第一のフレームと、ハイドロフォーム成形により内部空間が連続して平面視で車体後側が開いた略コ字状をなす第二のフレームとを設け、これら第一・第二のフレームを一平面にほぼ沿うように車体前後方向に並べて互いの中間部を対向させるとともに、各中間部に一つ以上の段部をそれぞれ形成して互いに当接させて結合させる一方、前記第一のフレームの中間部両端にそれぞれ繋がり車体前側に延びる一対の側部から一平面にほぼ沿うように車体後方外側に分岐して延出する一対の第三のフレームを設け、前記第二のフレームの中間部両端にそれぞれ繋がり車体後側に延びる一対の側部を設け、前記第二のフレームの中間部を前記第一のフレームの中間部よりも長く車体幅方向に延出して、前記第二のフレームの中間部両端の前記一対の側部が繋がる部分に前記一対の第三のフレームの後端を連結したことを特徴とする自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−62568(P2007−62568A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251520(P2005−251520)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】