説明

自動車の車体

【課題】バックドア開口の各側部を区画するリヤピラーと、該バックドア開口の下部を区画するロアバックパネルとを有する自動車の車体において、そのバックドア周辺部分の剛性を高める。
【解決手段】車幅方向Wに延び、かつロアバックパネル7よりも前方に位置していて、長手方向各端部が、各リヤピラー5にそれぞれ固定された横フレーム材25を設ける。その横フレーム材25は、内部が中空な鋼板製のパイプにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドア開口の各側部を区画するリヤピラーと、該バックドア開口の下部を区画するロアバックパネルとを有する自動車の車体に関する。
【背景技術】
【0002】
バン型車又はワゴン車などとして構成される上記形式の自動車は従来より周知である(特許文献1参照)。かかる自動車の車体後部には、バックドア開口が形成されており、自動車の走行時に、そのバックドア開口周辺の車体部分が大きな振幅で振動すると、車体とバックドアとが干渉して、その車体とバックドアに傷が付けられるおそれがある。そこで、従来より、リヤピラーとロアバックパネルをそれぞれ閉断面構造体として構成してバックドア開口周辺の車体部分の剛性を高め、自動車の走行時に、この車体部分が大きな振幅で振動することを阻止している。
【0003】
ところが、特にバックドア開口の高さが高い自動車の場合には、上述した対策だけでは、ドア開口周辺の車体部分が大きな振幅で振動することを完全に阻止することは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開平8−104258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成によって、自動車の走行時に、バックドア開口周辺の車体部分が大きな振幅で振動することを阻止できる自動車の車体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バックドア開口の各側部を区画するリヤピラーと、該バックドア開口の下部を区画するロアバックパネルとを有する自動車の車体において、車幅方向に延び、かつ前記ロアバックパネルよりも前方に位置していて、長手方向各端部が前記リヤピラーにそれぞれ固定された横フレーム材を具備することを特徴とする。
【0007】
また、上記自動車の車体において、前記ロアバックパネルに沿って延びていて、該ロアバックパネルに固定された後部フレーム材と、前後方向に延びていて、前記横フレーム材と後部フレーム材とにそれぞれ固定された縦フレーム材とを具備すると有利である。
【0008】
さらに、上記各自動車の車体において、上下方向に延びていて、上端部が前記横フレーム材に固定され、下端部がフロアパネル上に固定されたリヤフロアサイドメンバに固定された垂直フレーム材を具備していると有利である。
【0009】
また、上記各自動車の車体において、前記横フレーム材と、後部フレーム材と、縦フレーム材と、垂直フレーム材は、内部が中空な角パイプによって構成されていると有利である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バックドア開口の各側部を区画する各リヤピラーに、車幅方向に延びる横フレーム材の各端部が固定されているので、バックドア開口周辺の車体部分の剛性を効果的に高めることができ、自動車の走行時に、その車体部分が大きな振幅で振動することを阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1は自動車の一例を示す側面図であり、図2は図1に示した自動車の後方から見た背面図である。ここに例示した自動車は、その車体1の後部にバックドア2が配置され、そのバックドア2の近傍の車体部分には、リヤコンビランプ3がそれぞれ固定配置されている。
【0013】
バックドア2は、車体後部に形成されたバックドア開口を閉鎖した図1及び図2に示した閉位置と、そのバックドア開口を開放した開位置との間を、図1に矢印A,Bで示した方向に回動開閉可能に車体1に支持されている。
【0014】
図1における矢印Frは、自動車の前進方向を示し、図2における矢印Wは車幅方向を示している。さらに、図2における符号CLは、その車幅方向Wにおける車体の中心を示し、また図2における矢印RH及びLHは、自動車の前進方向に見て、その自動車の右側部分と左側部分をそれぞれ示している。これらは、他の図においても同様である。また、本明細書及び特許請求の範囲における「前」又は「後」なる文言は、自動車の前進方向Frを基準とした前後を意味する。自動車の右側部分RHと、左側部分LHは、互いに対称に構成されている。
【0015】
図3は、車体後部の右側部分RHを車内側から見た部分断面斜視図である。この図3には、図1及び図2に示したバックドア2とリヤコンビランプ3の図示は省略してある。また、図4は図3のIV−IV線拡大断面図であり、図5は図3のV−V線拡大断面図である。同様に図6は図3のVI−VI線拡大断面図である。
【0016】
図3に示すように、閉位置を占めたバックドアが配置されるバックドア開口OPの各側部4は、車体後部の各側部を構成するリヤピラー5(図2も参照)によって区画され、バックドア開口OPの下部6は、車体後部の下部を構成するロアバックパネル7によって区画されている。このロアバックパネル7の後方に、図1及び図2に示したリヤバンパ8が固定配置されている。
【0017】
バックドア開口OPの側部4を区画するリヤピラー5は、図4にも示すように、ピラーインナパネル9と、このピラーインナパネル9の前端部10と後端部11とにスポット溶接によってそれぞれ固着されたピラーリインフォースメント12と、そのピラーリインフォースメント12に、同じくスポット溶接によって固着されたクォータパネル13とから構成されている。クォータパネル13は車体後側部の外板を構成しており、ピラーリインフォースメント12とクォータパネル13には、図1及び図2に示したリヤコンビランプ3が取り付けられる開口LPが形成されている。また、図5に示すように、リヤピラー5のクォータパネル13と、ピラーリインフォースメント12と、ピラーインナパネル9の下端部14は、フロアパネル15の側端部16と共に、スポット溶接によって一体に固着されている。
【0018】
図4から判るように、上述したリヤピラー5のピラーインナパネル9とピラーリインフォースメント12とによって、閉断面構造体が構成されている。
【0019】
また、図3及び図4に示すように、リヤピラー5のピラーリインフォースメント12とピラーインナパネル9との前端部10には、ルーフサイドインナパネル17の後端部がスポット溶接によって一体に固着されている。
【0020】
一方、バックドア開口OPの下部を区画するロアバックパネル7は、図3及び図6に示すように、ロアバックアウタパネル18と、ロアバックインナパネル19とから構成され、両パネル18,19の上部の合せフランジ部20は、スポット溶接によって一体に固着され、両パネル18,19の下部の合せ部21も、スポット溶接によって互いに一体に固着されている。このように、ロアバックアウタパネル18とロアバックインナパネル19とによっても、閉断面構造体が構成されている。
【0021】
上述したロアバックアウタパネル18とロアバックインナパネル19より成るロアバックパネル7の車幅方向外端部は、リヤピラー5のクォータパネル13とピラーリインフォースメント12の後端部22にスポット溶接によって一体に固着されている。また、図3に示すように、前述のフロアパネル15の後端部も、ロアバックパネル7のロアバックアウタパネル18の下部にスポット溶接によって一体に固着されている。
【0022】
さらに、図3及び図5に示すように、フロアパネル15の上面には、ハット形の横断面形状を有するリヤフロアサイドメンバ24の下端部がスポット溶接によって固着されている。このリヤフロアサイドメンバ24は車体1の前後方向に延びている。
【0023】
図3乃至図6には、車体1の右側部分RHの構成のみを示してあるが、前述のように、車体1の左側部分LHは、右側部分RHと左右対称に構成されている。
【0024】
上述のように、本例の自動車の車体は、バックドア開口OPの各側部4を区画するリヤピラー5と、そのバックドア開口OPの下部6を区画するロアバックパネル7とを備えていると共に、フロアパネル15上に固定されたリヤフロアサイドメンバ24を有している。
【0025】
以上のように、本例の車体においては、そのリヤピラー5とロアバックパネル7が閉断面構造体として構成され、しかもフロアパネル15とリヤフロアサイドメンバ24によっても閉断面構造体が構成されているので、バックドア開口周辺の車体部分の剛性を高く保つことが可能である。ところが、バックドア開口OPの高さH(図2)が特に高い自動車の場合には、上述した構成だけでは、自動車の走行時に、バックドア開口周辺の車体部分が、図2に矢印Sで示した方向に大きな振幅で振動することを完全に阻止することは困難である。車体1を構成する上述した各パネルの板厚を特に厚くして、その剛性を高めることにより、バックドア周辺の車体部分が大きな振幅で振動することを防止することは可能であるが、このように各パネルの板厚を厚くすれば、車体全体の重量が過度に大きくなり、そのコストが徒に高くなる欠点を免れない。
【0026】
そこで、本例の車体1には、図3乃至図5に示すように、車幅方向Wに延び、かつロアバックパネル7よりも前方に位置している横フレーム材25が設けられていて、この横フレーム材25の長手方向各端部が、各リヤピラー5にそれぞれ強固に固定されている。図に一例として示した横フレーム材25は、図4及び図5から判るように、内部が中空な鋼板製の角パイプにより構成され、その一方の端部に固着された鋼板製の端プレート26が、ボルト30と、そのボルト30に螺着されたナット31とによって、リヤピラー5のピラーインナパネル9に固定されている。横フレーム材25の他方の端部も、全く同様にして左側部分のリヤピラー5(図2)のピラーインナパネルに固定されている。
【0027】
さらに、本例の車体には、図3及び図6に示すように、ロアバックパネル7に沿って延びていて、そのロアバックパネル7に固定された後部フレーム材27と、前後方向に延びていて、上述の横フレーム材25と後部フレーム材27とにそれぞれ固定された縦フレーム材28が設けられている。本例の後部フレーム材27と縦フレーム材28も、鋼板製の角パイプより成り、かかる後部フレーム材27と縦フレーム材28は、図3の符号29で示す部分において溶接によって一体に固着されている。また後部フレーム材27の角パイプには、図6に示したようにフランジ32が一体に固着され、そのフランジ32がボルト33と、これに螺着されたナット34とによって、ロアバックパネル7のロアバックインナパネル19に固定されている。さらに、縦フレーム材28の前部は、ボルト35と、これに螺着されたナット40とによって、横フレーム材25に固定されている。
【0028】
さらに、本例の車体1には、図3及び図5に示すように、上下方向に延びる垂直フレーム材36が設けられており、その垂直フレーム材36の上端部が上述の横フレーム材25に固定され、その垂直フレーム材36の下端部は、フロアパネル15上に固定された前述のリヤフロアサイドメンバ24に固定されている。図に一例として示した垂直フレーム材36も、内部が中空な鋼板製の角パイプにより構成され、その上端部が横フレーム材25に溶接によって一体化され、該角パイプの下部に固着された端プレート37が、ボルト38と、これに螺着されたナット39とによってリヤフロアサイドメンバ24に固定されている。
【0029】
図3乃至図6には示していない車体の左側部分にも、上述した縦フレーム材28と垂直フレーム材36と同じく構成されたフレーム材がそれぞれ設けられている。
【0030】
上述のように、本例の車体1には、左右のリヤピラー5に架け渡されて、その各ピラー5に固着された横フレーム材25が設けられているので、バックドア開口周辺の車体部分の剛性を効果的に高めることができ、その車体部分が、自動車の走行時に、図2に矢印Sで示した方向に大きな振幅で振動することを阻止できる。しかも、本例の車体1は、ロアバックパネル7に固定されていて、縦フレーム材28を介して、横フレーム材25に固定連結された後部フレーム材27を有しているので、バックドア2を閉じたときにロアバックパネル7に大きな衝撃力が加えられても、そのロアバックパネル7が大きな振幅で振動することを阻止できる。さらに、横フレーム材25は、垂直フレーム材36を介して、高剛材部材であるリヤフロアサイドメンバ24に固定連結されているので、バックドア開口周辺の車体部分の剛性をより一層高めることができ、その車体部分が大きな振幅で振動することをより効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】自動車の側面図である。
【図2】図1に示した自動車を、その後方より見た背面図である。
【図3】車体後部の右側部分を車室内側から見た斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】図3のV−V線拡大断面図である。
【図6】図3のVI−VI線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車体
4 側部
5 リヤピラー
6 下部
7 ロアバックパネル
15 フロアパネル
24 リヤフロアサイドメンバ
25 横フレーム材
27 後部フレーム材
28 縦フレーム材
36 垂直フレーム材
OP バックドア開口
W 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドア開口の各側部を区画するリヤピラーと、該バックドア開口の下部を区画するロアバックパネルとを有する自動車の車体において、車幅方向に延び、かつ前記ロアバックパネルよりも前方に位置していて、長手方向各端部が前記リヤピラーにそれぞれ固定された横フレーム材を具備することを特徴とする自動車の車体。
【請求項2】
前記ロアバックパネルに沿って延びていて、該ロアバックパネルに固定された後部フレーム材と、前後方向に延びていて、前記横フレーム材と後部フレーム材とにそれぞれ固定された縦フレーム材とを具備する請求項1に記載の自動車の車体。
【請求項3】
上下方向に延びていて、上端部が前記横フレーム材に固定され、下端部がフロアパネル上に固定されたリヤフロアサイドメンバに固定された垂直フレーム材を具備する請求項1又は2に記載の自動車の車体。
【請求項4】
前記横フレーム材と、後部フレーム材と、縦フレーム材と、垂直フレーム材は、内部が中空な角パイプによって構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の自動車の車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−64500(P2010−64500A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229653(P2008−229653)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】