説明

自動車の電池保護構造

【課題】側面衝突時における車体側部の変形から電池を良好に保護することができると共に、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる自動車の電池保護構造を得る。
【解決手段】自動車の電池保護構造10では、側面衝突時に、ロッカ14に対して車両幅方向内方側への衝突荷重が入力されると、クロスメンバー42の内側補強部材48には、外側補強部材46の下壁部46B(傾斜部)を介して車体上方向きの成分を含んだ荷重が伝達される。これにより、内側補強部材48には、アンダーリインフォースメント26側の端部を支点とする車体上方側への回転モーメントが作用し、クロスメンバー42が脆弱部50において車体上方側へ屈曲する。これにより、フロアパネル24が車体上方側へ変形することにより、衝撃エネルギーが分散されるため、車体幅方向内方側への車体側部12の変形量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアパネルの車体下方側に配置された電池を、側面衝突時における車体側部の変形から保護するための電池保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された電気自動車のフロア構造では、フロアパネルの側部下面にサイドメンバが取り付けられており、当該サイドメンバには、バッテリーが搭載されたバッテリーフレームが取り付けられている。また、フロアパネルの側縁に設けられたサイドシル(ロッカ)とサイドメンバとの間には、アウトリガが取り付けられており、当該アウトリガには、バッテリーフレームの外側壁に隣接する延出部が設けられている。
【0003】
上述のフロア構造では、側面衝突時におけるバッテリーフレーム外側壁の倒れをアウトリガによって抑えることによりバッテリーの損傷を抑制すると共に、サイドシルやアウトリガ等の車体側部を潰れ変形させることにより衝撃エネルギーを吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如きフロア構造では、高容量で大型のバッテリー(電池)が必要な場合や車両の幅寸法が小さい場合等には、側面衝突時における車体側部の変形量(変形ストローク)を、当該車体側部と電池との干渉を回避可能な程度に確保することが困難になる。このような場合、車体側部の強度及び剛性を増加させることにより、車体側部の変形量を低減させれば、車体側部と電池との干渉を回避し易くなるが、そのような構成では車体の質量及びコストが増加してしまう。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、側面衝突時における車体側部の変形から電池を良好に保護することができると共に、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる自動車の電池保護構造を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る自動車の電池保護構造は、車体側部に配置されたロッカと、車体幅方向外方側の端部が前記ロッカに固定されたフロアパネルと、前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルに固定され、車体の骨格の一部を構成するアンダーリインフォースメントと、前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルの車体下方側に配置された電池と、前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡され、前記ロッカに対して車体幅方向内方側への衝突荷重が入力された際に、当該衝突荷重の一部を車体上方向きの成分として前記フロアパネルにおける前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間の中間部に入力する上方荷重入力部材と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の自動車の電池保護構造では、車体側部に配置されたロッカと、当該ロッカの車体幅方向内方側に配置されたアンダーリインフォースメントとの間に、上方荷重入力部材が掛け渡されている。この上方荷重入力部材は、側面衝突時に、ロッカに対して車体幅方向内方側への衝突荷重が入力されると、当該衝突荷重の一部を車体上方向きの成分としてフロアパネルにおけるロッカとアンダーリインフォースメントとの間の中間部に入力する。これにより、フロアパネルが車体上方側へ変形することにより、衝撃エネルギーが分散されるため、車体幅方向内方側への車体側部の変形量(変形ストローク)を低減することができる。したがって、ロッカの車体幅方向内方側でフロアパネルの車体下方側に配置された電池を、車体側部の変形から良好に保護することができる。しかも、上述の上方荷重入力部材は、単にフロアパネルの車体上方側への変形を誘導するものであればよいため、軽量かつ低コストに構成することができる。したがって、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る自動車の電池保護構造は、車体側部に配置されたロッカと、車体幅方向外方側の端部が前記ロッカに固定されたフロアパネルと、前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルに固定され、車体の骨格の一部を構成するアンダーリインフォースメントと、前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルの車体下方側に配置された電池と、前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡されると共に、前記フロアパネルに接合され、前記ロッカに入力される車体幅方向内方側への衝突荷重によって車体幅方向中間部が車体上方側へ隆起するように屈曲する上方荷重入力部材と、を備えている。
【0010】
請求項2に記載の自動車の電池保護構造では、車体側部に配置されたロッカと、当該ロッカの車体幅方向内方側に配置されたアンダーリインフォースメントとの間に、上方荷重入力部材が掛け渡されている。この上方荷重入力部材は、フロアパネルに接合されており、側面衝突時にロッカに対して車体幅方向内方側への衝突荷重が入力されると、車体幅方向中間部が車体上方側へ隆起(上昇)するように屈曲する。これにより、フロアパネルが車体上方側へ変形することにより、衝撃エネルギーが分散されるため、車体幅方向内方側への車体側部の変形量(変位量)を低減することができる。したがって、ロッカの車体幅方向内方側でフロアパネルの車体下方側に配置された電池を、車体側部の変形から良好に保護することができる。しかも、上述の上方荷重入力部材は、単にフロアパネルの車体上方側への変形を誘導するものであればよいため、軽量かつ低コストに構成することができる。したがって、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る自動車の電池保護構造は、請求項1又は請求項2に記載の自動車の電池保護構造において、前記上方荷重入力部材は、前記フロアパネルの上面側に取り付けられた車両用シートの骨格に対して平面視で重なる位置に配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の自動車の電池保護構造では、上方荷重入力部材と車両用シートの骨格とが平面視で重なっているため、上方荷重入力部材によってフロアパネルが車体上方側へ変形された際に、フロアパネルを車両用シートの骨格に当てることができる。これにより、衝撃エネルギーの吸収量を増加させることができるので、車体幅方向内方側への車体側部の変形量を低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る自動車の電池保護構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の電池保護構造において、前記上方荷重入力部材は、車体幅方向内方側へ向かうに従い上昇するように傾斜した状態で前記ロッカと前記フロアパネルとの間に掛け渡された傾斜部を有する外側補強部材と、前記外側補強部材よりも車体幅方向内方側に配置され、前記傾斜部の車体幅方向内方側の端部と前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡された内側補強部材と、を備え、前記外側補強部材と前記内側補強部材との間に脆弱部が設けられている。
【0014】
請求項4に記載の自動車の電池保護構造では、側面衝突時に、ロッカに対して車両幅方向内方側への衝突荷重が入力されると、当該衝突荷重の一部が外側補強部材の傾斜部を介して内側補強部材の車体幅方向内方側の端部に伝達される。この傾斜部は、車体幅方向内方側へ向かうに従い上昇するように傾斜しているため、傾斜部を介して内側補強部材に伝達される荷重は、車体幅方向内方向きの成分と、車体上方向きの成分とによって構成される。車体幅方向内方向きの成分は、内側補強部材の圧縮強度によって支持されるため、内側補強部材には、車体上方向きの成分によって、アンダーリインフォースメント側の端部を支点とする回転モーメントが作用する。このため、内側補強部材が前記回転モーメントによって車体上方側へ回転することにより、内側補強部材と外側補強部材との間に設けられた脆弱部において上方荷重入力部材が車体上方側へ屈曲する。これにより、フロアパネルにおける上記脆弱部と対向する部位が上方荷重入力部材と共に車体上方側へ屈曲し、当該屈曲部を頂点としてフロアパネルが車体上方側へ変形する。ここで、この発明では、上方荷重入力部材が外側補強部材と内側補強部材とに分割されているため、両者の強度及び剛性などを個別に設定することができる。したがって、上側荷重入力部材の変形モードの設定を容易に行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る自動車の電池保護構造は、請求項4に記載の自動車の電池保護構造において、前記外側補強部材は、前記ロッカ及び前記フロアパネルと共に閉断面を形成しており、前記内側補強部材は、前記フロアパネルと共に閉断面を形成している。
【0016】
請求項5に記載の自動車の電池保護構造では、フロアパネルに固定された外側補強部材及び内側補強部材が、上述の如く閉断面を形成している。これにより、外側補強部材及び内側補強部材に要求される強度及び剛性を良好に確保しつつ、上方荷重入力部材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る自動車の電池保護構造では、側面衝突時における車体側部の変形から電池を良好に保護することができると共に、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の電池保護構造を車体前方側から見た状態で示す縦断面図である。
【図2】同フロア構造における衝突荷重の入力経路を説明するための縦断面図である。
【図3】同フロア構造において車体側部が車体幅方向内方側へ変形した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態の比較例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る自動車の電池保護構造の一実施形態について説明する。なお、各図中矢印UPは車両上方を示し、矢印INは車両幅方向内方を示している。
【0020】
図1には、本実施形態に係る自動車の電池保護構造10が車体前方側から見た縦断面図にて示されている。この自動車は、例えば、電気自動車、ガソリンハイブリッド車、燃料電池ハイブリッド車等のようにバッテリー(電池)30が搭載された自動車であり、本実施形態における自動車の電池保護構造10は、このような自動車に適用される構造である。
【0021】
図1に示されるように、自動車の車体側部12には、車体前後方向に沿って延在する閉断面構造の車体骨格部材であるロッカ14が配設されている。ロッカ14は、アウタパネル16と、当該アウタパネル16の車体幅方向内側に配置されたインナパネル18と、両者の間に配置されたリインフォースメント20と、によって構成されている。
【0022】
ロッカ14の車体幅方向内方側には、車室22の床部を構成するフロアパネル24が配置されている。フロアパネル24は、車体幅方向外方側の端部が、前記インナパネル18の上面における車体幅方向内方側の端部にスポット溶接等により結合(固定)されている。
【0023】
また、ロッカ14の車体幅方向内方側でフロアパネル24の下方側には、アンダーリインフォースメント26が設けられている。アンダーリインフォースメント26は、自動車の車体幅方向中央側において車体前後方向を長手方向として配置されており、車体前後方向から見た断面形状が逆ハット形状に形成されている。アンダーリインフォースメント26の上端フランジ部26Aは、スポット溶接等によりフロアパネル24の下面に結合(固定)されている。このアンダーリインフォースメント26とロッカ14とは、後述するクロスメンバー42を含む複数のクロスメンバーによって車体幅方向に連結されており、これらのクロスメンバー等と共に車体の骨格の一部を構成している。
【0024】
アンダーリインフォースメント26よりも車体幅方向内方側には、フロアパネル24と共に車室22の床部を構成するフロアトンネル28が設けられている。フロアトンネル28は、車体前後方向から見た断面形状が車体下方側へ開口したハット形状に形成されており、下端フランジ部28Aがアンダーリインフォースメント26における車体幅方向内方側の上端フランジ部26Aの下面に結合されている。なお、本実施形態に係る自動車の電池保護構造10は、フロアトンネル28を介した左右両側で対照に形成されているため、図1〜図3では、車体左方側の図示を省略してある。
【0025】
また、ロッカ14の車体幅方向内方側でフロアパネル24の車体下方側には、バッテリー30が配設されている。このバッテリー30は、高さ寸法が小さい長方体状に形成されており、車体幅方向中央側に車体前後方向を長手方向として配置されている。このバッテリー30は、図示しないバッテリーフレームを介して車体の骨格(ロッカ14等)に固定(支持)された図示しない外装部材の内側に収容されている。
【0026】
一方、フロアパネル24の車体上方側で車室22内の前部(前列)には、車両用シート(ここではフロントシート)32が配設されている。車両用シート32は、シートクッションの骨格部材であるシートクッションフレーム34を備えている。このシートクッションフレーム34は、車体幅方向に対向した左右一対のサイドフレーム36と、左右のサイドフレーム36の後端部同士を車体幅方向に連結したリヤフレーム38と、左右のサイドフレーム36の前端部同士を車体幅方向に連結したフロントフレーム(図示省略)とを備えている。左右のサイドフレーム36は、左右一対のシート脚部40を介してフロアパネル24に連結されている。
【0027】
車両用シート32の車体下方側には、上方荷重入力部材としてのクロスメンバー42が配置されている。このクロスメンバー42は、平面視において前記リヤフレーム38と重なる位置(リヤフレーム38の車体下方)に配置されている。このクロスメンバー42は、外側補強部材46と、当該外側補強部材46よりも車体幅方向内側に配置された内側補強部材48と、によって構成されている。なお、本実施形態では、外側補強部材46及び内側補強部材48は、何れもフロアパネル24よりも板厚が厚い板金材料によって形成されている。
【0028】
外側補強部材46は、フロアパネル24の下面側でロッカ14に隣接して配置されており、車体幅方向を長手方向として配置されている。この外側補強部材46は、車体幅方向から見た断面形状が逆ハット形状に形成されており、前後一対の側壁部46Aと、これらの側壁部46Aの下端部を車体前後方向に連結した下壁部46B(傾斜部)とを備えている。なお、図1〜図3では、車体前方側の側壁部46Aの図示を省略してある。
【0029】
前後の側壁部46Aは、車体前後方向から見て三角形状に形成されており、上端部に設けられたフランジ部46Cがフロアパネル24の下面にスポット溶接等により結合されている。また、前後の側壁部46Aの車体幅方向外方側の端部には、インナパネル18の車体幅方向内方側の端面にスポット溶接等により結合されたフランジ部46Dが設けられている。
【0030】
下壁部46Bは、車体幅方向内方側へ向かうに従い上昇するように傾斜した状態で配置されている。この下壁部46Bの長さ寸法bは、前述した車両用シート32のリヤフレーム38とフロアパネル24との間の距離aよりも長く設定されている(b>a)。
【0031】
この下壁部46Bの車体幅方向外方側の端部には、車体幅方向外方側へ突出したフランジ部46Eが設けられている。このフランジ部46Eは、インナパネル18の下面における車体幅方向内方側の端部にスポット溶接等により結合されている。また、下壁部46Bの車体幅方向内方側の端部には、車体幅方向内方側へ突出したフランジ部46Fが設けられている。このフランジ部46Fは、フロアパネル24の下面におけるロッカ14とアンダーリインフォースメント26との間の中央部付近にスポット溶接等により結合されている。これにより、下壁部46Bは、ロッカ14とフロアパネル24との間に斜めに掛け渡されており、外側補強部材46は、ロッカ14及びフロアパネル24と共に閉断面を形成している。
【0032】
一方、内側補強部材48は、外側補強部材46とアンダーリインフォースメント26との間において車体幅方向を長手方向として配置されている。この内側補強部材48は、車体幅方向から見た断面形状がハット形状に形成されており、前後一対の側壁部48Aと、これらの側壁部48Aの上端部を車体前後方向に連結した上壁部48Bとを備えている。なお、図1〜図3では、車体前方側の側壁部48Aの図示を省略してある。
【0033】
前後の側壁部48Aは、車体前後方向から見て高さ寸法が小さい台形状に形成されており、下端部に設けられたフランジ部48Cがフロアパネル24の上面にスポット溶接等により結合されている。
【0034】
上壁部48Bは、車体幅方向中間部がフロアパネル24と平行に配置されており、車体幅方向両端部がフロアパネル24に接近するように傾斜している。上壁部48Bの車体幅方向内方側の端部には、車体幅方向内方側へ突出したフランジ部48Eが設けられている。このフランジ部48Eは、アンダーリインフォースメント26における車体幅方向外方側の上端フランジ部26Aの車体上方に配置されており、当該上端フランジ部26Aとの間にフロアパネル24を挟んだ状態で上端フランジ部26A及びフロアパネル24にスポット溶接等により結合されている。つまり、フランジ部48Eとフロアパネル24と上端フランジ部26Aとが三枚重ねの状態で結合されている。
【0035】
また、上壁部48Bの車体幅方向外方側の端部には、車体幅方向外方側へ突出したフランジ部48Fが設けられている。このフランジ部48Fは、外側補強部材46のフランジ部46Fの車体上方に配置されており、当該フランジ部46Fとの間にフロアパネル24を挟んだ状態でフランジ部46F及びフロアパネル24にスポット溶接等により結合されている。この結合部においても、フランジ部48Fとフロアパネル24とフランジ部46Fとが三枚重ねの状態で結合されている。以上により、内側補強部材48は、フロアパネル24と共に閉断面を形成している。また、フランジ部48Fとフロアパネル24とフランジ部46Fとの結合部は、外側補強部材46及び内側補強部材48がフロアパネル24と共に閉断面を形成した部位よりも脆弱な脆弱部50とされている。この脆弱部50は、前述したバッテリー30における車体幅方向端部の車体上方に配置されている。
【0036】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
上記構成の自動車の電池保護構造10では、図2に示されるように、側面衝突によってロッカ14に対し車体幅方向内方側への衝突荷重Fが入力されると、当該衝突荷重Fの一部が外側補強部材46の下壁部46Bを介して内側補強部材48の車体幅方向内側端部に伝達される。この下壁部46Bは、車体幅方向内方側へ向かうに従い上昇するように傾斜しているため、下壁部46Bを介して内側補強部材48に伝達される荷重fは、図2に示されるように、車体上方向きの成分f1と、車体幅方向内方向きの成分f2とによって構成される。
【0038】
ここで、車体幅方向内方向きの成分f2は、内側補強部材48の圧縮強度によって支持されるため、内側補強部材48には、車体上方向きの成分f1によって、アンダーリインフォースメント26側の端部を支点Cとする回転モーメントが作用する。このため、クロスメンバー42は、内側補強部材48が前記回転モーメントによって車体上方側へ回転することにより、車体幅方向中間部が隆起(上昇)するように内側補強部材48と外側補強部材46との間に設けられた脆弱部50において屈曲する。これにより、フロアパネル24における上記脆弱部50と対向する部位がクロスメンバー42と共に車体上方側へ屈曲し、当該屈曲部を頂点としてフロアパネル24が車体上方側へ変形する(図2の回転軌跡Tに沿った回転モードでフロアパネル24が変形する)。
【0039】
すなわち、上述のクロスメンバー42は、ロッカ14に対して入力される車体幅方向内方側への衝突荷重Fの一部を車体上方向きの成分f1としてフロアパネル24におけるロッカ14とアンダーリインフォースメント26との間の中間部に入力すると共に、車体幅方向中間部に設けられた脆弱部50において屈曲することにより、フロアパネル24と一体で車体上方側へ変形する。このように、フロアパネル24が車体上方側へ変形することにより、側面衝突の衝撃エネルギーが分散されるため、車体幅方向内方側への車体側部12の変形量(変形ストローク)を低減することができる。これにより、ロッカ14の車体幅方向内方側でフロアパネル24の車体下方側に配置されたバッテリー30を、車体側部12の変形から良好に保護することができる。その結果、バッテリー30のバッテリー容量を増加するが可能になる。
【0040】
つまり、図4に示される比較例100のように、クロスメンバー42が省略されている場合には、側面衝突時の衝突荷重Fによって車体側部12が車体幅方向内側へ大きく変形(侵入)してくる。このため、バッテリー30を保護するためには、車体側部12とバッテリー30との干渉を回避可能な程度に、バッテリー30の大きさを小さくする等の対応策が必要となる。しかしながら、バッテリー30の大きさを小さくした場合には、バッテリー容量が小さくなるため、自動車の後続距離が短くなってしまう。なお、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、車体側部12の強度及び剛性を増加させることも考えられるが、その場合、車体の質量及びコストが増加してしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態では、前述したように車体側部12の変形量(変形ストローク)を低減することができるので、バッテリー30の大きさを大きくすることが可能になり、バッテリー容量を十分に確保することができる。なお、図4には、本実施形態に係るバッテリー30が一点鎖線により示されている。しかも、上述のクロスメンバー42は、単にフロアパネル24の車体上方側への変形を誘導するものであればよいため、軽量かつ低コストに構成することができる。したがって、車体の質量及びコストが増加することを抑制できる。
【0042】
さらに、本実施形態では、上述のクロスメンバー42は、車両用シート32におけるシートクッションフレーム34の構成部材であるリヤフレーム38に対して、平面視で重なる位置に配置されている。このため、クロスメンバー42によってフロアパネル24が車体上方側へ変形された際に、フロアパネル24をリヤフレーム38(シートクッションフレーム34)に干渉させることができる。これにより、内側補強部材48の回転を抑制する荷重が作用するため、衝撃エネルギーの吸収量を増加させることができる。したがって、車体幅方向内方側への車体側部12の変形ストロークを効果的に低減することができる。しかも、本実施形態では、外側補強部材46の下壁部46Bの長さ寸法bが、リヤフレーム38とフロアパネル24との間の距離aよりも長く設定されている(b>a)ため、フロアパネル24を良好にシートクッションフレーム34に干渉させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、クロスメンバー42が外側補強部材46と内側補強部材48とに分割されているため、両者の強度及び剛性などを個別に設定することができる。したがって、クロスメンバー42の変形モードの設定を容易に行うことができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、外側補強部材46が、ロッカ14及びフロアパネル24と共に閉断面を形成しており、内側補強部材48が、フロアパネル24と共に閉断面を形成している。これにより、外側補強部材46及び内側補強部材48に要求される強度及び剛性を良好に確保しつつ、クロスメンバー42の軽量化を図ることができる。
【0045】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、外側補強部材46がロッカ14及びフロアパネル24と共に閉断面を形成し、内側補強部材48がフロアパネル24と共に閉断面を形成した構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、外側補強部材及び内側補強部材の形状は適宜変更することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、内側補強部材48がフロアパネル24の上面側に配置された構成にしたが、請求項1〜請求項5に係る発明はこれに限らず、内側補強部材がフロアパネルの下面側に配置された構成にしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、上方荷重入力部材としてのクロスメンバー42が、外側補強部材46及び内側補強部材48とに分割された構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、外側補強部材と内側補強部材とが一体に形成された構成にしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、上方荷重入力部材としてのクロスメンバー42が、車両用シート32(フロントシート)のリヤフレーム38(骨格)に対して平面視で重なる位置に配置された構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、上側荷重入力部材の配置は適宜変更することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、クロスメンバー42(上方荷重入力部材)は、ロッカ14に入力される車体幅方向内方側への衝突荷重Fによって、車体幅方向中間部が車体上方側へ隆起するように脆弱部50において屈曲する構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、上方荷重入力部材は、ロッカに対して車体幅方向内方側への衝突荷重が入力された際に、当該衝突荷重の一部を車体上方向きの成分としてフロアパネルにおけるロッカとアンダーリインフォースメントとの間の中間部に入力するものであればよい。
【0050】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10 自動車の電池保護構造
12 車体側部
14 ロッカ
24 フロアパネル
26 アンダーリインフォースメント
30 バッテリー(電池)
32 車両用シート
34 シートクッションフレーム(骨格)
42 クロスメンバー(上方荷重入力部材)
46 外側補強部材
48 内側補強部材
50 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に配置されたロッカと、
車体幅方向外方側の端部が前記ロッカに固定されたフロアパネルと、
前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルに固定され、車体の骨格の一部を構成するアンダーリインフォースメントと、
前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルの車体下方側に配置された電池と、
前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡され、前記ロッカに対して車体幅方向内方側への衝突荷重が入力された際に、当該衝突荷重の一部を車体上方向きの成分として前記フロアパネルにおける前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間の中間部に入力する上方荷重入力部材と、
を備えた自動車の電池保護構造。
【請求項2】
車体側部に配置されたロッカと、
車体幅方向外方側の端部が前記ロッカに固定されたフロアパネルと、
前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルに固定され、車体の骨格の一部を構成するアンダーリインフォースメントと、
前記ロッカの車体幅方向内方側で前記フロアパネルの車体下方側に配置された電池と、
前記ロッカと前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡されると共に、前記フロアパネルに接合され、前記ロッカに入力される車体幅方向内方側への衝突荷重によって車体幅方向中間部が車体上方側へ隆起するように屈曲する上方荷重入力部材と、
を備えた自動車の電池保護構造。
【請求項3】
前記上方荷重入力部材は、前記フロアパネルの上面側に取り付けられた車両用シートの骨格に対して平面視で重なる位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載の自動車の電池保護構造。
【請求項4】
前記上方荷重入力部材は、
車体幅方向内方側へ向かうに従い上昇するように傾斜した状態で前記ロッカと前記フロアパネルとの間に掛け渡された傾斜部を有する外側補強部材と、
前記外側補強部材よりも車体幅方向内方側に配置され、前記傾斜部の車体幅方向内方側の端部と前記アンダーリインフォースメントとの間に掛け渡された内側補強部材と、
を備え、前記外側補強部材と前記内側補強部材との間に脆弱部が設けられている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の自動車の電池保護構造。
【請求項5】
前記外側補強部材は、前記ロッカ及び前記フロアパネルと共に閉断面を形成しており、前記内側補強部材は、前記フロアパネルと共に閉断面を形成している請求項4に記載の自動車の電池保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28191(P2013−28191A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163511(P2011−163511)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】