説明

自動車シート

【課題】クッション・パネルの取付けを簡素化でき、部品点数を削減できてレイアウトの自由度を向上でき、がたつきや異音の発生を確実に防止できて軽量化を図り、加えて、コスト削減も可能にしてそのクッション・パネルのずれを確実に阻止できてそのクッション・パネルの安定した取付けを可能にし、さらには、そのクッション・パネルの誤組付けを防止可能にする。
【解決手段】シート・クッション11が、シート・クッション・フレーム20にシート・トラック13およびシート・リフター14を組み付けてそのシート・トラック13およびシート・リフター14を組み込み、そして、シート・クッション・パネル26が、少なくとも前後のパネル端部分27、28の何れかに樹脂クリップ30、30を固定的に取り付け、その樹脂クリップ30、30でその対応するパネル端部分27、28をそのシート・リフター14のリフト・リンク56、56、57、57の連結パイプ・シャフト58、59に取外し可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車シートに関し、詳細には、シート・トラックおよびシート・リフターが組み込まれる自動車シートのシート・クッション・パネル取付け構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パワー・シート・トラックおよびパワー・シート・リフターが組み込まれる自動車シートにおいてもシート・クッション・フレームは、フレーム・フロント、フレーム・リア、および左右のフレーム・サイドで一体的に枠組みされるメイン・クッション・フレームにクッション・パネルを取り付ける構造が採られるのが一般的である。
この種のシート・クッション・フレームでは、部品点数が削減されずレイアウトが難しくなり、そして、重量化されてコストが嵩む不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開W02009/069339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、クッション・パネルの取付けを簡素化できて部品点数を削減できてレイアウトの自由度を向上でき、がたつきや異音の発生を確実に防止できて軽量化を図り、加えて、コスト削減も可能にしてそのクッション・パネルのずれを確実に阻止できてそのクッション・パネルの安定した取付けを可能にし、さらには、そのクッション・パネルの誤組付けを防止可能にするところの自動車シートの提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の自動車シートは、シート・クッションが、シート・クッション・フレームにシート・トラックおよびシート・リフターを組み付けてそのシート・トラックおよびシート・リフターを組み込み、そして、シート・クッション・パネルが、少なくとも前後のパネル端部分の何れかに樹脂クリップを固定的に取り付け、その樹脂クリップでその対応するパネル端部分をそのシート・リフターのリフト・リンクの連結パイプ・シャフトに取外し可能に取り付ける。
【0006】
さらに、この発明の自動車シートは、その連結パイプ・シャフトが、その樹脂クリップをかみ合わせる箇所にフランジを備え、そして、そのフランジでその樹脂クリップを軸線方向にずれ防止する。
【0007】
さらには、この発明の自動車シートは、その樹脂クリップが、そのシート・クッション・パネルのその前後のパネル端部分のそれぞれに左右に適宜に離反された2箇所に配置され、フロントおよびリア連結パイプ・シャフトのそのフランジにその前後のパネル端部分の一方の樹脂クリップを外側止めさせ、また、その前後のパネル端部分の他方の樹脂クリップを内側止めさせ、そして、その内側止めのフランジ対応のその樹脂クリップの間隔を他方の樹脂クリップの間隔よりも広くする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の自動車シートでは、シート・クッション・パネルが少なくとも前後のパネル端部分の何れかに樹脂クリップを固定的に取り付け、その樹脂クリップでその対応するパ
ネル端部分をシート・リフターのリフト・リンクの連結パイプ・シャフトに取外し可能に取り付けられるので、そのシート・クッション・パネルの取付けが簡素化され、部品点数が削減されてレイアウトの自由度が向上され、がたつきや異音の発生が確実に防止されて軽量化が図られ、そして、コストも削減され、また、その連結パイプ・シャフトがフランジでその樹脂クリップを軸方向にずれ防止するので、そのシート・クッション・パネルがその連結パイプ・シャフトに安定して取り付け可能になる。
【0009】
さらに、この発明の自動車シートでは、その樹脂クリップが、そのシート・クッション・パネルのその前後のパネル端部分のそれぞれに左右に適宜に離反された2箇所に配置され、フロントおよびリア連結パイプ・シャフトのそのフランジにその前後のパネル端部分の一方の樹脂クリップを外側止めさせ、また、その前後のパネル端部分の他方の樹脂クリップを内側止めさせ、そして、その内側止めのフランジ対応のその樹脂クリップの間隔を他方の樹脂クリップの間隔よりも広くするので、そのシート・クッション・パネルの誤組付けが防止可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明の自動車シートの具体例をシート・フレーム状態で示した斜視図である。
【図2】そのドライバー・シートのシート・フレームを一部破断し、一部省いて示した部分分解斜視図である。
【図3】シート・クッション・パネルを縦方向に断面して示した縦断面図である。
【図4】樹脂クリップを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の自動車シートは、シート・クッションが、シート・クッション・フレームにシート・トラックおよびシート・リフターを組み付けてそのシート・トラックおよびシート・リフターを組み込み、そして、シート・クッション・パネルが、少なくとも前後のパネル端部分の何れかに樹脂クリップを固定的に取り付け、その樹脂クリップでその対応するパネル端部分をそのシート・リフターのリフト・リンクの連結パイプ・シャフトに取外し可能に取り付ける。
【0012】
そして、この発明の自動車シートは、その連結パイプ・シャフトが、その樹脂クリップをかみ合わせる箇所にフランジを備え、そして、そのフランジでその樹脂クリップを軸線方向にずれ防止する。
【0013】
そしてさらに、この発明の自動車シートは、その樹脂クリップが、そのシート・クッション・パネルのその前後のパネル端部分のそれぞれに左右に適宜に離反された2箇所に配置され、フロントおよびリア連結パイプ・シャフトのそのフランジにその前後のパネル端部分の一方の樹脂クリップを外側止めさせ、また、その前後のパネル端部分の他方の樹脂クリップを内側止めさせ、そして、その内側止めのフランジ対応のその樹脂クリップの間隔を他方の樹脂クリップの間隔よりも広くする。
【実施例1】
【0014】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の自動車シートを説明するに、図1ないし図4は、乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明の自動
車シートの具体例10をシート・フレーム状態で示し、具体的には、このドライバー・シート10は、シート・クッション11がシート・クッション・パッド(図示せず)およびシート・クッション・トリム・カバー(図示せず)を省き、シート・バック12がシート・バック・パッド(図示せず)およびシート・バック・トリム・カバー(図示せず)を省き、そして、ヘッドレスト(図示せず)が省かれてシート・フレーム状態で示されている

【0015】
このドライバー・シート10では、そのシート・クッション11が、シート・クッション・フレーム20にシート・トラック13およびシート・リフター14を組み付けてそのシート・トラック13およびシート・リフター14を組み込み、そして、シート・クッション・パネル26が、それの前後のパネル端部分27、28に複数の樹脂クリップ30、30および30、30を固定的に取り付け、その複数の樹脂クリップ30、30および30、30でその対応するパネル端部分27、28をそのシート・リフター14のフロントおよびリア・リフト・リンク56、56および57、57のフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59に取外し可能に取り付け、そして、そのシート・トラック13でその乗用車のボディ・フロアに据え付けられる。
【0016】
そのシート・クッション・フレーム20では、所定の肉厚、太さ、長さの鋼管から両端に左右の溶接アーム22、23を曲げ成形したパイプ製フレーム・フロント21と、所定の厚さの鋼板から所定の形状にプレス成形された左右の板状フレーム・サイド24、25を用い、そのパイプ製フレーム・フロント21がその左右の溶接アーム22、23でその左右の板状フレーム・サイド24、25の前端部分に溶接されて一体化され、そして、そのシート・クッション・パネル26が所定の厚さの鋼板から所定の形状にプレス成形されてその複数の樹脂クリップ30、30および30、30でそのシート・リフター14のそのフロントおよびリア連結パイプ58、59に取り外し可能に取り付けられる。
【0017】
そのシート・クッション・パネル26は、それの前後のパネル端部分27、28のそれぞれに左右の適宜の離反された2箇所に細長いだぼ穴29、29および29、29が明けられ、パネル裏面側からそのだぼ穴29、29および29、29にその樹脂クリップ30、30および30、30の爪付きだぼ33を差し込んでその樹脂クリップ30、30および30、30をその前後のパネル端部分27、28に固定的に取り付ける。
【0018】
その樹脂クリップ30は、頂面31にその爪付きだぼ33を、パネル当て面32にパネル挟みフック34をそれぞれ突き出すパイプ・クリップ形状の硬質樹脂成形品でがたつきやそのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59の回転時の異音の発生が確実に防止される。
【0019】
そのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59は、その樹脂クリップ30、30および30、30をかみ合わせる箇所にフランジ61、61および62、62を備え、そして、そのフランジ61、61および62、62でその樹脂クリップ30、30および30、30を軸線方向にずれ防止する。
この場合、そのフロント連結パイプ・シャフト58では、そのフランジ63、63はその樹脂クリップ30、30を外側止めされる間隔でシャフト外周面61にリブ状に成形され、また、そのリア連結パイプ・シャフト59では、そのフランジ64、64はその樹脂クリップ30、30を内側止めされる間隔でシャフト外周面62にリブ状に成形される。
【0020】
そのシート・バック・フレーム35は、フレーム・トップ36が所定の肉厚、太さ、長さの鋼管から曲げ成形されて両端に左右の溶接アーム37、38を備え、フレーム・ボトム39および左右のフレーム・サイド40、41が所定の厚さの鋼板から所定の形状にプレス成形され、そしてそのフレーム・トップ36、フレーム・ボトム39、左右のフレーム・サイド40、41、およびアッパ・クロス・ワイヤ42が溶接で一体的に枠組みされ、それに複数のS字スプリング・ワイヤ43、43がその左右のフレーム・サイド40、41間に上下方向に適宜の間隔を置いて並べて張られて仕上げられ、そして、パワー・リクライニング・デバイス44でそのシート・クッション・フレーム20のその左右のフレーム・サイド24、25の後端にヒンジ結合されてそのシート・クッション・フレーム2
0に前倒しおよび角度調整可能に支持される。勿論、そのパワー・リクライニング・デバイス44は、左右のリクライニング・デバイス45、46がリクライニング・インタロック・ロッド47で連結され、モーター・ギア・ボックス・アッセンブリ48でそのシート・バック21をそのシート・クッション11に前倒しおよび角度調整可能にする。
【0021】
そのシート・トラック13は、左右の固定レール49、50および左右の可動レール51、52で組み立てられてその左右の可動レール51、52がパワー・スライド調節機構53でその左右の固定レール49、50に前後に摺動可能にされる。そして、このシート・トラック13はその左右の可動レール51、52のそれぞれにフロント・ライザー54、54およびリア・ライザー55、55を溶接してそのフロント・ライザー54、54およびリア・ライザー55、55にそのシート・リフター14を取り付ける。
【0022】
そのシート・リフター14は、左右のフロント・リフト・リンク56、56、左右のリア・リフト・リンク57、57、フロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59、およびモーター・ギア・ボックス・アッセンブリ60などで構成され、そして、その左右のフロント・リフト・リンク56、56がそのシート・トラック13のそのフロント・ライザー54、54に、その左右のリア・リフト・リンク57、57がそのシート・トラック13のそのリア・ライザー55、55のそれぞれヒンジ結合されてそのドライバー・シート10を高さ調整する。
【0023】
したがって、このドライバー・シート10では、そのシート・クッション・パネル26が少なくともその前後のパネル端部分27、28の何れかにその樹脂クリップ30、30および30、30でその対応するパネル端部分27、28をそのシート・リフター14のそのフロントおよびリア・リフト・リンク56、56および57、57のそのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59に取り外し可能に取り付けられるので、そのシート・クッション・パネル26の取付け作業が簡素化され、部品点数が削減されてレイアウトの自由度が向上され、がたつきや異音の発生が確実に防止されて軽量化が図られ、そして、コストも削減され、また、そのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59がそのフランジ63、63および64、64でその樹脂クリップ30、30および30、30を軸線方向にずれ防止するので、そのシート・クッション・パネル26がそのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59に安定して取り付け可能になる。
【0024】
さらに、このドライバー・シート10では、その樹脂クリップ30、30および30、30がそのシート・クッション・パネル26のその前後のパネル端部分27、28のそれぞれに左右に適宜に離反された2箇所に配置され、そのフロントおよびリア連結パイプ・シャフト58、59のそのフランジ63、63および64、64にその前後のパネル端部分27、28の一方27の樹脂クリップ30、30を外側止めさせ、また、その前後のパネル端部分27、28の他方28の樹脂クリップ30、30を内側止めさせ、そして、その内側止めフランジ対応のその樹脂クリップ30、30の間隔を他方の樹脂クリップ30、30の間隔よりも広くすることによってそのシート・クッション・パネル26の誤組付けが防止可能になってそのシート・クッション・パネル26の組付け作業が簡単で容易になって時間短縮される。
【0025】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述から理解されるように、この発明の自動車シートは、シート・クッションが、シート・クッション・フレームにシート・トラックおよびシート・リフターを組み付けてそのシート・トラックおよびシート・リフターを組み込み、そして、シート・クッション・パネルが、少なくとも前後のパネル端部分の何れかに樹脂クリップを固定的に取り付け、その樹脂クリップでその対応するパネル端部分をそのシート・リフターのリフト・リンクの連結パイプ・シャフトに取外し可能に取り付けるので、この発明の自動車シートでは、そのシート・クッション・パネルの取付けが簡素化され、部品点数が削減されてレイアウトの自由度が向上され、がたつきや異音の発生が確実に防止されて軽量化が図られ、そして、コストも削減され、また、その連結パイプ・シャフトがフランジでその樹脂クリップを軸方向にずれ防止するので、そのシート・クッション・パネルがその連結パイプ・シャフトに安定して取り付け可能になり、その結果、シート・リフターを組み込む自動車シートにとって非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0027】
10 ドライバー・シート
11 シート・クッション
12 シート・バック
13 シート・トラック
14 シート・リフター
20 シート・クッション・フレーム
21 パイプ製フレーム・フロント
22 左の溶接アーム
23 右の溶接アーム
24 左の板状フレーム・サイド
25 右の板状フレーム・サイド
26 シート・クッション・パネル
27 前のパネル端部分
28 後のパネル端部分
29 細長いだぼ穴
30 樹脂クリップ
31 頂面
32 パネル当て面
33 爪付きだぼ
34 パネル挟みフック
35 シート・バック・フレーム
36 フレーム・トップ
37 左の溶接アーム
38 右の溶接アーム
39 フレーム・ボトム
40 左のフレーム・サイド
41 右のフレーム・サイド
42 アッパー・クロス・ワイヤ
43 S字スプリング・ワイヤ
44 パワー・リクライニング・デバイス
45 左のリクライニング・デバイス
46 右のリクライニング・デバイス
47 リクライニング・インタロック・ロッド
48 モーター・ギア・ボックス・アッセンブリ
49 左の固定レール
50 右の固定レール
51 左の可動レール
52 右の可動レール
53 パワー・スライド調節機構
54 フロント・ライザー
55 リア・ライザー
56 フロント・リフト・リンク
57 リア・リフト・リンク
58 フロント連結パイプ・シャフト
59 リア連結パイプ・シャフト
60 モーター・ギア・ボックス・アッセンブリ
61 シャフト外周面
62 シャフト外周面
63 フランジ
64 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート・クッションが、シート・クッション・フレームにシート・トラックおよびシート・リフターを組み付けてそのシート・トラックおよびシート・リフターを組み込み、そして、シート・クッション・パネルが、少なくとも前後のパネル端部分の何れかに樹脂クリップを固定的に取り付け、その樹脂クリップでその対応するパネル端部分をそのシート・リフターのリフト・リンクの連結パイプ・シャフトに取外し可能に取り付けるところの自動車シート。
【請求項2】
その連結パイプ・シャフトが、その樹脂クリップをかみ合わせる箇所にフランジを備え、そして、そのフランジでその樹脂クリップを軸線方向にずれ防止する請求項1に記載の自動車シート。
【請求項3】
その樹脂クリップが、そのシート・クッション・パネルのその前後のパネル端部分のそれぞれに左右に適宜に離反された2箇所に配置され、フロントおよびリア連結パイプ・シャフトのそのフランジにその前後のパネル端部分の一方の樹脂クリップを外側止めさせ、また、その前後のパネル端部分の他方の樹脂クリップを内側止めさせ、そして、その内側止めのフランジ対応のその樹脂クリップの間隔を他方の樹脂クリップの間隔よりも広くする請求項2に記載の自動車シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−107557(P2013−107557A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255609(P2011−255609)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】