説明

自動車シート

【課題】着座時、小物入れがトリム・カバーの引張りによる開口部の過度の広がりを防止でき、そしてさらに、この小物入れに仕切りがある場合、着座時のトリム・カバーの引張りにもその仕切りの形状が保持でき、加えて、その仕切りの意図的な持上げを防止する。
【解決手段】シート・クッション・パッド13が、パッド表面16に小物入れ落とし込みポケット18を開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット18まわりに口開き防止ワイヤ19を埋め込み、そして、開口25まわりに突き出された周囲フランジ26を介してトリム・カバー14に縫い付けられた軟質樹脂製小物入れ24が、シート・クッション・パッド13のそのポケット18に落とし込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車シートに関し、詳細には、軟質樹脂製小物入れを組み込むシート・クッションの構造を、特に、その軟質樹脂製小物入れ周辺のシート・クッション構造を改良するところの自動車シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ミニ・バンでは、サード・シートのシート・クッションに小物入れを組み込み、その小物入れを缶立てやペット・ボトル立てなどに活用したり、また、袋で包装された菓子類を入れるのに活用可能にして移動を快適にする傾向にある。
その小物入れとして、たとえば軟質樹脂製のものが知られており、特に、深いトレイ状に成形されているものの場合、柔軟性がある反面、乗員がそのシート・クッションに着座すると、トリム・カバーの引張りによって開口部が過度に広げられ、また、そのトレイに仕切りがある場合、その仕切りの形状を維持するのが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2008−1267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、着座時、小物入れがトリム・カバーの引張りによる開口部の過度の広がりを防止でき、そしてさらに、この小物入れに仕切りがある場合、着座時のトリム・カバーの引張りにもその仕切りの形状が保持でき、加えて、その仕切りの意図的な持上げを防止するところの自動車シートを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の自動車シートは、シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケットまわりに口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、そのシート・クッション・パッドのそのポケットに落とし込まれる。
【0006】
また、この発明の自動車シートは、シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄り横切らせるようにしてそのポケットまわりにその仕切りワイヤ付きの口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、内部に仕切りを備え、そして、その仕切りでその仕切りワイヤをまたぐようにしてそのポケットに落とし込まれる。
【発明の効果】
【0007】
この発明の自動車シートでは、シート・クッション・パッドが、それのパッド表面に開口された小物入れ落とし込みポケットのまわりを囲む口開き防止ワイヤを埋め込んで軟質樹脂製小物入れの周囲にその口開き防止ワイヤを沿わせるので、着座時、乗員によってトリム・カバーが引っ張られてもその小物入れには開口部の過度の広がりが防止され、そしてさらに、その小物入れが仕切りを備える場合、そのシート・クッション・パッドが、その小物入れ落とし込みポケットのまわりに仕切りワイヤ付きの口開き防止ワイヤを埋め込んでその小物入れの周囲にその口開き防止ワイヤを沿わせ、そして、その付加された仕切
りワイヤにその小物入れのその仕切りを支えさせるので、着座時のトリム・カバーの引張りにもその小物入れの形状が保持され、そして、その仕切りの意図的な持上げが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ミニ・バンのサード・シートに活用されるところのこの発明の自動車シートの具体例を部分的に示した斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って示した断面図である。
【図3】口開き防止ワイヤを示した斜視図である。
【図4】軟質樹脂製小物入れを示した斜視図である。
【図5】図4の5−5線に沿って示した断面図である。
【図6】ミニ・バンのサード・シートに活用されるところのこの発明の自動車シートの別の具体例を部分的に示した斜視図である。
【図7】図6の7−7線に沿って示した断面図である。
【図8】仕切りワイヤ付きの口開き防止ワイヤを示した斜視図である。
【図9】仕切りワイヤ付きの軟質樹脂製小物入れを示した斜視図である。
【図10】図9の10−10線に沿って示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の自動車シートは、シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケットまわりに口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、そのシート・クッション・パッドのそのポケットに落とし込まれる。
【0010】
そして、その場合、そのポケットが、細長い長方形状でそのシート・クッション・パッドのそのパッド表面に前後方向に伸びて開口され、その口開き防止ワイヤが、細長い長方形枠になされ、そして、その小物入れが、軟質樹脂で細長い長方形トレイに成形されて活用されるのが望ましい。
【0011】
また、この発明の自動車シートは、シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット内に仕切りワイヤを横切らせるようにしてそのポケットまわりにその仕切りワイヤ付きの口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、内部に仕切りを備え、そして、その仕切りでその仕切りワイヤをまたぐようにしてそのポケットに落とし込まれる。
【0012】
そして、この場合では、そのポケットが、細長い長方形状でそのシート・クッション・パッドのそのパッド表面に前後方向に伸びて開口され、その口開き防止ワイヤが、細長い長方形枠になされ、そして、長手方向の適宜の位置でその長方形枠の両側間にその仕切りワイヤを渡して結合し、そして、その小物入れが、軟質樹脂で細長い長方形トレイに成形されて活用されるのが望ましい。特に、その小物入れが、内部に突き出されて折り返し曲げされた底壁でその仕切りになされるのが望ましい。
【実施例1】
【0013】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の自動車シートを説明するに、図1ないし図5は、ミニ・バンのサード・シートに活用されるところのこの発明の自動
車シートの具体例10を示し、そして、このサード・シート10では、軟質樹脂製小物入れ24を組み込むシート・クッション11の構造、より具体的には、その軟質樹脂製小物入れ24周辺のシート・クッション構造が改良されている。
【0014】
そのシート・クッション11は、シート・クッション・フレーム12にシート・クッション・パッド13を組み付け、それにトリム・カバー14を被せ、そして、多数のフック23でそのトリム・カバー14の端末をそのシート・クッション・フレーム12に固定的に止めて仕上げられる。そして、このシート・クッション11では、着座面15のたとえば外側部分であって車両に対するインナ側に、その軟質樹脂製小物入れ24が組み込まれる。
【0015】
そのシート・クッション・パッド13は、型において発泡性樹脂液から発泡成形され、そして、その発泡成形の際に、そのシート・クッション11のその着座面15の外側部分に対応してパッド表面16の外側部分に小物入れ落とし込みポケット18を開口させ、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット18のまわりに口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、パッド裏面17に副資材20を一体化させるところの発泡成形品に仕上げられる。そして、このシート・クッション・パッド13では、そのポケット18が細長い長方形状でそのパッド表面16のその外側部分に前後方向に伸びて開口され、また、その口開き防止ワイヤ19が所定の太さのワイヤ材からそのポケット18のまわりを囲む大きさに曲げ加工されて細長い長方形枠に作られている。
【0016】
その小物入れ24は、縫製可能な軟質樹脂、たとえばエラストマーなどの軟質樹脂から細長い長方形トレイに成形されて開口25のまわりに周囲フランジ26を突き出し、そして、予めその周囲フランジ26でそのトリム・カバー14の小物入れ開口21の開口縁22に縫い付けられてそのトリム・カバー14がそのシート・クッション・パッド13に被せられる際にそのシート・クッション・パッド13のそのパッド表面16に開口されるその小物入れ落とし込みポケット18に落とし込まれる。
【0017】
したがって、このシート・クッション11では、そのシート・クッション・パッド13がそれのパッド表面16に開口されたその小物入れ落とし込みポケット18のまわりを囲むその口開き防止ワイヤ19を埋め込んでそのポケット18に落とし込まれたその軟質樹脂製小物入れ24の周囲にその口開き防止ワイヤ19を沿わせるので、乗員がそのシート・クッション11に着座されてそのトリム・カバー14がその乗員の着座によって引っ張られてもその軟質樹脂製小物入れ24はそれの開口部25に過度の広がりが防止され、そして、外観が保たれて使い易くなる。
【実施例2】
【0018】
図6ないし図10は、ミニ・バンのサード・シートに活用されるところのこの発明の自動車シートの別の具体例30を示し、そして、このサード・シート30では、仕切り付きの軟質樹脂製小物入れ46を組み込むシート・クッション31の構造、より具体的には、その軟質樹脂製小物入れ46周辺のシート・クッション構造が改良されている。
【0019】
そのシート・クッション31は、シート・クッション・フレーム32にシート・クッション・パッド33を組み付け、それにトリム・カバー34を被せ、そして、多数のフック45でそのトリム・カバー34の端末をそのシート・クッション・フレーム32に固定的に止めて仕上げられる。そして、このシート・クッション31では、着座面35のたとえば外側部分であって車両に対するインナ側に、その仕切り付き軟質樹脂製小物入れ46が組み込まれる。
【0020】
そのシート・クッション・パッド33は、型において発泡性樹脂液から発泡成形され、そして、その発泡成形の際に、そのシート・クッション31のその着座面35の外側部分に対応してパッド表面36の外側部分に小物入れ落とし込みポケット38を開口させ、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット38内に仕切りワイヤ41を横切らせてそのポケ
ット38のまわりにその仕切りワイヤ41付きの口開き防止ワイヤ39を埋め込み、そして、パッド裏面37に副資材42を一体化させるところの発泡成形品に仕上げられる。そして、このシート・クッション・パッド33では、そのポケット38が細長い長方形状でそのパッド表面36のその外側部分に前後方向に伸びて開口され、また、その口開き防止ワイヤ39が所定の太さのワイヤ材からそのポケット38のまわりを囲む大きさに曲げ加工されて細長い長方形枠40に仕切りワイヤ41を付加させて作られる。その仕切りワイヤ41はその長方形枠40に用いられるワイヤ材から所定の長さに切断され、そして、長手方向の適宜の位置でその長方形枠40の両側間に渡されて両ワイヤ端で溶接されてその長方形枠40に一体的に結合される。勿論、その長手方向の適宜の位置はその軟質樹脂製小物入れ46のその仕切り52に対応する位置である。
【0021】
その小物入れ46は、縫製可能な軟質樹脂、たとえばエラストマーなどの軟質樹脂から仕切り付き細長い長方形トレイに成形されて内部に仕切り52を備え、そして、開口50のまわりに周囲フランジ51を突き出し、そして、予めその周囲フランジ51でそのトリム・カバー34の小物入れ開口43の開口縁44に縫い付けられてそのトリム・カバー34がそのシート・クッション・パッド33に被せられる際にその仕切り51にその仕切りワイヤ41をまたがせてそのシート・クッション・パッド33のそのパッド表面36に開口されるその小物入れ落とし込みポケット38に落とし込まれる。勿論、その小物入れ46は、両端壁47、47に平行で内部に突き出されて折り返し曲げされた底壁47でその仕切り52をなし、それによって両側壁48、48が切り欠かれてその仕切り52がその口開き防止ワイヤ39のその仕切りワイヤ41にまたがり易くされる。
【0022】
したがって、このシート・クッション31では、そのシート・クッション・パッド33が、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット38内にその仕切りワイヤ41を横切らせてそのポケット38のまわりにその口開き防止ワイヤ39を埋め込んでその小物入れ46の周囲にその口開き防止ワイヤ39を沿わせるので、乗員がそのシート・クッション31に着座されてそのトリム・カバー34がその乗員の着座によって引っ張られてもその軟質樹脂製小物入れ46はそれの開口部50に過度の広がりが防止され、そして、外観が保たれて使い易くなり、加えて、この軟質樹脂製小物入れ46では、その仕切り52がその仕切りワイヤ41をまたいでその仕切りワイヤ41に支えられるので、その仕切り52の形状が保持され、そして、その仕切り52の意図的な持上げが防止される。
【0023】
なお、上記各実施例において、シート・クッションにおける軟質樹脂製小物入れの配設位置を、車両に対するインナ側にとって具体化しているが、これに限定されず、たとえばシート・クッションの、車両に対するアウタ側に、この軟質樹脂製小物入れを配設してもよい。
また、上記各実施例においては、自動車シートとしてミニ・バンのサード・シートを具体例に挙げているが、これに限定されず、他の種類の自動車の各種シートにこの発明は応用できる。
【0024】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上述から理解されるように、この発明の自動車シートは、シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの
位置でそのポケットまわりに口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、軟質樹脂製小物入れが、開口まわりに周囲フランジを突き出し、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、シート・クッション・パッドのそのポケットに落とし込まれるので、この発明の自動車シートでは、着座時、乗員によってトリム・カバーが引っ張られてもその軟質樹脂製小物入れはそれの開口部に過度の広がりが防止され、そして、外観が保たれて使い易くなり、その結果、自動車にとって非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0026】
10 サード・シート
11 シート・クッション
12 シート・クッション・フレーム
13 シート・クッション・パッド
14 トリム・カバー
15 着座面
16 パッド表面
17 パッド裏面
18 小物入れ落とし込みポケット
19 口開き防止ワイヤ
20 副資材
21 小物入れ開口
22 開口縁
23 フック
24 軟質樹脂製小物入れ
25 開口/開口部
26 周囲フランジ
30 サード・シート
31 シート・クッション
32 シート・クッション・フレーム
33 シート・クッション・パッド
34 トリム・カバー
35 着座面
36 パッド表面
37 パッド裏面
38 小物入れ落とし込みポケット
39 口開き防止ワイヤ
40 長方形枠
41 仕切りワイヤ
42 副資材
43 小物入れ開口
44 開口縁
45 フック
46 軟質樹脂製小物入れ
47 底壁
48 側壁
49 端壁
50 開口/開口部
51 周囲フランジ
52 仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケットまわりに口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、シート・クッション・パッドのそのポケットに落とし込まれるところの自動車シート。
【請求項2】
そのポケットが、細長い長方形状でそのシート・クッション・パッドのそのパッド表面のその外側部分に前後方向に伸びて開口され、その口開き防止ワイヤが、細長い長方形枠になされ、そして、その小物入れが、軟質樹脂で細長い長方形トレイに成形される請求項1に記載の自動車シート。
【請求項3】
シート・クッション・パッドが、パッド表面に小物入れ落とし込みポケットを開口し、そして、そのパッド表面寄りの位置でそのポケット内に仕切りワイヤを横切らせるようにしてそのポケットまわりにその仕切りワイヤ付きの口開き防止ワイヤを埋め込み、そして、開口まわりに突き出された周囲フランジを介してトリム・カバーに縫い付けられた軟質樹脂製小物入れが、内部に仕切りを備え、そして、その仕切りでその仕切りワイヤをまたぐようにしてそのポケットに落とし込まれるところの自動車シート。
【請求項4】
そのポケットが、細長い長方形状でそのシート・クッション・パッドのそのパッド表面のその外側部分に前後方向に伸びて開口され、その口開き防止ワイヤが、細長い長方形枠になされ、そして、長手方向の適宜の位置でその長方形枠の両側間にその仕切りワイヤを渡して結合し、そして、その小物入れが、軟質樹脂で細長い長方形トレイに成形される請求項3に記載の自動車シート。
【請求項5】
その小物入れが、内部に突き出されて折り返し曲げされた底壁でその仕切りになす請求項3および4の何れかに記載の自動車シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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