説明

自動車トンネル構造体

【課題】自動車トンネル内装用のタイルとしての光反射性能をより一層高め、且つ広範囲に拡散させることにより柔らかな光の質を作り、タイルにとって効果的な広角反射性能の照明を惹起するガラスビーズ溶着タイルを配設した自動車トンネル構造体を提供する。
【解決手段】少なくとも片面が白色の陶磁器質セラミックまたはガラスからなるタイル基板面に、複数の粒状凹凸部が設けられた自動車トンネル内装用のタイルであって、前記粒状凹凸部が低融点ガラスで溶着された球状ガラスビーズで形成されているガラスビーズ溶着タイル、または前記ガラスビーズ溶着タイルを基板上に複数枚連続して固着してなるガラスビーズ溶着タイルパネルを、自動車トンネル躯体内壁面に複数枚連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面を形成してなる自動車トンネル構造体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具や自動車ヘッドライトからの照射光を効率よく広角に拡散反射し、トンネル構内の視認性を向上させるタイルを、トンネル躯体内壁面に配設した自動車トンネル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル構造体においては、表面が平滑な白色セラミックタイルで構成されたトンネル内装板が用いられている。このようなトンネル構造体では、白色のトンネル内装板と暗色のトンネル躯体との色対比によって視線誘導の効果があったが、トンネル内空間は暗黒を避ける程度の照明効果しかないため、十分な視認性が得られなかった。
【0003】
また、このような表面が平滑な白色セラミックタイルは、積極的に光を広角に反射させる機能が付与されておらず、視線誘導に有効な性能が十分に得られなかった。更に、従来のトンネル照明は、トンネル内装板の光反射性能を生かした構造ではなく、トンネル内の照明効果を全体として考慮していなかった。
【0004】
また、表面に鋸刃状の凹凸部を有するタイル基材の凹凸部表面に、蓄光剤層とガラスビーズ層を設けその上面に釉薬を施してなる、太陽光や照明器具からの照射光を蓄光すると共に、照射光を暗闇で広範囲に、且つ高輝度に自然発光させることができる乱反射蓄光タイルが提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案の場合、タイルの蓄光剤層に蓄光された照射光が自然発光されるものであるため、輝度は低くトンネル内での十分な視認性を得るに至らなかった。
【0005】
また、トンネル内において、区画線などの標識を近紫外線で照射することにより、含有するガラスビーズが蛍光反射して視認性を向上させる目的のため、蛍光顔料を融着したガラスビーズを散布した交通標示視認方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、蛍光顔料を融着したガラスビーズを、路面の表示面に塗着させたペイント上に散布するものであり、ガラスビーズによる再帰反射による視認性はあるが、広角に拡散反射することが求められる自動車トンネル構造体に適用するには、視認性はなお十分ではなく、また、ガラスビーズはペイント上に散布されたものであるため、耐久性や経年劣化しない普遍性も十分ではない。
【0006】
また別に、トンネル内装板等に使われる再帰反射板として、不燃性基板の表面に無機系接着剤層が形成され、その接着剤層に径が300〜2000μmの球状のガラスビーズが多数個埋設されている反射板が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案の場合も、ガラスビーズによる視認性はあるが、用いられる不燃性基板と接着剤の色相については配慮されていないため、光反射性能をより一層高め、且つ広範囲に拡散させることが求められる自動車トンネル構造体に適用するには視認性は十分でなく、またガラスビーズは接着剤層に埋設されていることから、やはり耐久性や経年劣化しない普遍性も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−169679号公報
【特許文献2】特開2004−156322号公報
【特許文献3】公開実用昭和56−13112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、自動車トンネル内装用のタイルとしての光反射性能をより一層高め、且つ広範囲に拡散させることにより柔らかな光の質を作り、タイルにとって効果的な広角反射性能の照明を惹起するガラスビーズ溶着タイルを配設した自動車トンネル構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動車トンネル構造体は、少なくとも片面が白色の陶磁器質セラミックまたはガラスからなるタイル基板面に、複数の粒状凹凸部が設けられた自動車トンネル内装用のタイルであって、前記粒状凹凸部が低融点ガラスで溶着された球状ガラスビーズで形成されているガラスビーズ溶着タイル、または前記ガラスビーズ溶着タイルを基板上に複数枚連続して固着してなるガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面に複数枚連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面を形成してなる自動車トンネル構造体である。
【0010】
本発明の自動車トンネル構造体の好ましい態様によれば、前記のタイル基板は、それ自体白色であるか、あるいは少なくとも片面が白色の釉薬および/または白色に着色されたガラスでコーティングされているものである。
【0011】
本発明の自動車トンネル構造体の好ましい態様によれば、前記の低融点ガラスは、白色に着色されたものであり、その融点は350〜700℃である。
【0012】
本発明の自動車トンネル構造体の好ましい態様によれば、前記の球状ガラスビーズは、タイル基板面に低融点ガラスの融解と凝固という状態変化を利用して溶着されており、その平均粒径は0.1〜2.0mmである。
【0013】
本発明の自動車トンネル構造体の好ましい態様によれば、前記のガラスビーズ溶着タイル壁面は、ガラスビーズ溶着タイルまたはガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面の自動車のヘッドライトが照射される高さ位置で、かつ、トンネルの長さ方向に帯状になるように連続して取り付けて形成されたものである。
【0014】
本発明の自動車トンネル構造体の好ましい態様によれば、前記のガラスビーズ溶着タイル壁面をLED光源で照射するように、照明器具が配置されてなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、自動車トンネル内装用に用いられるタイルにおいては、表面が白色のタイル基材面に複数の球状ガラスビーズで形成された粒状凹凸部を設けたから、最適に設置された照光装置および自動車ヘッドライトからの照射光を光を広角に反射し、従来のトンネル内装板に比べて視線誘導効果を一段と向上させることができる。
【0016】
また、自動車トンネル内装用に用いられるタイルは、球状ガラスビーズが、同材質の低融点ガラスによりタイル基材面に溶着で一体化されたガラスビーズ溶着タイルであるから、接着剤を用いてガラスビーズ埋設したものより、遙かに耐久性や経年劣化しない十分な普遍性と不燃性を有するものである。
【0017】
本発明の自動車トンネル構造体は、自動車トンネル内装用のタイルとして上記のガラスビーズ溶着タイルを、トンネル躯体内壁面に取り付けたから、上記のガラスビーズ溶着タイルに照射された任意の入射光がトンネル構内に一様に光を拡散し、直接光でなく細かな反射光による間接光のため柔らかい光となり運転者の目が疲れにくく、また、他走行車との距離感が掴みやすく正確な視線誘導が得られる。
【0018】
また、ガラスビーズ溶着タイルまたはガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面の自動車のヘッドライトが照射される高さ位置で、かつ、トンネルの長さ方向に帯状になるように連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面を形成し、その他のトンネル内壁を通常の白色タイルで形成することにより、自動車のヘッドライトにより照射された内壁面の回帰性反射光を効率よく効果的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを例示する側面図と部分拡大側面図である。
【図2】図2は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを例示する斜視図である。
【図3】図3は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルの光の広角反射状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルをパネル化したガラスビーズ溶着タイルパネルの斜視図である。
【図5】図5は、本発明の自動車用トンネル構造体を例示説明するための斜視図である。
【図6】図6は、本発明の他の自動車用トンネル構造体を例示説明するための斜視図である。
【図7】図7は、本発明の他の自動車用トンネル構造体を例示説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の自動車トンネル構造体は、ガラスビーズ溶着タイルまたはそのガラスビーズ溶着タイルを基板上に複数枚連続して固着してなるガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面に複数枚連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面を形成してなるものである。
【0021】
本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルは、少なくとも片面が白色の陶磁器質セラミックまたはガラスからなるタイル基板面に、複数の粒状凹凸部が設けられた自動車トンネル内装用のタイルであって、前記粒状凹凸部が低融点ガラスで溶着された球状ガラスビーズで形成されているものである。
【0022】
本発明において用いられるタイル基板は、耐火性と耐久性に優れた陶磁器質セラミックまたはガラスの素材からなり、少なくとも片面が白色である。少なくとも片面が白色のタイル基板は、それ自体白色の素材で形成されているか、あるいは少なくとも片面が白色の釉薬および/または白色に着色されたガラスでコーティングされているものが好適である。例えば、着色タイル基板の場合は、その上にエンゴーベと呼ばれる白色陶土を好ましくは200〜600g/m塗布したものが用いられる。白色のタイル基板は、光反射性能を向上させる。
【0023】
また、白色釉薬は、透明釉薬の中にジルコニアを加えて白濁させた釉薬であり、白色釉薬は、白色タイル基板の他に着色タイル基板にも好適に用いられる。白色釉薬の塗布量としては、タイル基板表面に好ましくは200〜1000g/m、より好ましくは350〜850g/m塗布し、好ましくは1200〜1400℃の温度で焼成する。
【0024】
本発明で用いられるタイル基板は、タイル素地の素になる材料として、長石やジルコンなどの粉末と粘土を、好ましくは含水率が5〜10%になるように水と混合して素地とし、この素地をタイル形状にプレス成形し、必要に応じて施釉後、好ましくは1200〜1400℃の温度で焼成することにより製造することができる。
【0025】
本発明では、タイル基板に陶磁器質のタイル基板が好適に用いられる。陶磁器質タイル基板は、好ましくは上記の含水率を5〜10%に調整した素地をプレス成形し、焼成温度は好ましくは1200〜1400℃で、硬度が高く素地が磁器質化しており、耐久性と耐凍害性に特長がある。
【0026】
また、本発明では、陶磁器質のタイル基板の他にガラス質のタイル基板が用いられる。
【0027】
本発明で用いられるガラス質のタイル基板は、材料として、シリカ、アルカリ、ライム、マグネシア、アルミナおよび酸化鉄などを主原料とし、1500〜1700℃で融解した後、900〜1100℃で成形し、徐々に冷却しながら歪みを取り除いて製造することができる。ガラス質のタイル基板の軟化点は、好ましくは720℃以上であり、好適には720〜730℃である。
【0028】
本発明で用いられるタイル基板の厚さは、好ましくは5〜15mmであり、より好ましくは8〜10mmである。また、タイル基板の大きさのうち、高さは好ましくは50〜200mmであり、より好ましくは60〜120mmであり、また幅は好ましくは100〜300mmであり、より好ましくは150〜250mmである。
【0029】
また、本発明において、前記タイル基板表面には複数の粒状凹凸部が形成されている。この粒状凹凸部は、照明器具や自動車ヘッドライトからの照射光を広角に反射し、その反射光が更に別の粒状凹凸面で複数に広角反射されることで、輝度を高める効果を有する。
【0030】
この粒状凹凸部は、前記タイル基板表面に、低融点ガラスで溶着された球状ガラスビーズで形成されている。
【0031】
本発明で用いられる球状ガラスビーズの平均粒径は、好ましくは0.1〜2.0mmであり、より好ましくは0.3〜1.2mmである。
【0032】
球状ガラスビーズの平均粒径が0.1mmより小さいと、低融点ガラスに埋まりすぎて製造が難しくなり、また平均粒径が大きすぎると、球状ガラスビーズと低融点ガラスの密着性に課題が残る。
【0033】
本発明で用いられる球状ガラスビーズの軟化点は、好ましくは700〜800℃であり、より好ましくは720〜760℃である。
【0034】
また、球状ガラスビーズの屈折率は、好ましくは1.3〜2.1であり、より好ましくは1.5〜2.0である。球状ガラスビーズの屈折率は、低すぎると視認性が悪くなり、高すぎると球状ガラスビースの製造が難しくなる。
【0035】
本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルは自動車トンネル内装壁に用いられるもので、少なくとも片面が白色のタイル基板面に、低融点ガラスで溶着された複数の球状ガラスビーズで形成された粒状凹凸部が設けられている。
【0036】
本発明で用いられる低融点ガラスの融点は、好ましくは700℃以下であり、より好ましくは350〜700℃である。本発明において、この低融点ガラスは、白色に着色されたものであることが好ましい。低融点ガラス自体を白色に着色することにより、光反射性能を更に向上させることができる。
【0037】
球状ガラスビーズの溶着は、低融点ガラスそのものを一旦加熱し融解してから常温に熱を下げるときの凝固現象を利用するものであり、溶着される球状ガラスビーズも同様のガラスであるがその融点は低融点ガラスのそれより高く、更にタイル基板の融点も高い。したがって、異なる融点であることを利用して、低融点ガラスは溶融するが球状ガラスビーズおよびタイル基板は全てが溶融してしまわず、球状ガラスビーズの形態・形状と性能を保持しながらガラス同士が一体に構成されている。
【0038】
また、低融点ガラスの融点が、球状ガラスビーズおよびタイル基板の軟加点よりも低くすることにより、球状ガラスビーズおよびタイル基板の変形を防止して、タイル基板と低融点ガラスと球状ガラスビーズを溶着により一体に構成することができる。
【0039】
軟化点とは、ある温度範囲で急激に粘度が低下し、流動性を増す温度であり、融点とは、固体を熱したとき液体に変化していく温度である。
【0040】
したがって、本発明において球状ガラスビーズの溶着は、低融点ガラスは融解するが、溶着される球状ガラスビーズとタイル基板は各々の形態・形状と性能を保持する温度に加熱されて行われる。溶着温度が高すぎると、球状ガラスビーズが白濁し光反射性能が低下する。低融点ガラスの融点は、より好ましくは400〜650℃である。
【0041】
本発明において、球状ガラスビーズの溶着は次のようにして行うことができる。タイル基板の上に、液状化または軟化した低融点ガラスを、塗布厚さが、好ましくは0.05〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.6mm塗布し、その上に球状ガラスビーズを散布した後、全体を低融点ガラスの融解温度に加熱して低融点ガラスだけを融解し、冷却することによって凝固させる現象を利用して球状ガラスビーズを低融点ガラスに溶着し、同時に、タイル基板も低融点ガラスと溶着し三者が一体となる。球状ガラスビーズは、上記のように低融点ガラスを塗布したタイル基板の上に散布されるが、必要に応じて散布された球状ガラスビーズに圧力を加えて密着させることができる。
【0042】
本発明では、低融点ガラスとして、市販品のセントラル硝子株式会社の低融点ロッドガラスを用いることができる。
【0043】
本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルにおいて、球状ガラスビーズは白色のタイル基板上に、規則的または不規則的にかつ複数で多数または無数にちりばめられた状態に配置される。柔らかい反射光を作る上で効果的であるからである。ここで不規則とは、一定の規則に拘束されず、無作為にちりばめられた様子であり、無数とは、一見して数え切れない程に多い様を示す。
【0044】
また、隣接し溶着された球状ガラスビーズ同士は、平均粒径や散布の状況により、近接ないし接触していてもよいが、できるだけ相互に接触していないことが好ましい態様である。球状ガラスビーズ同士が接触すると、広角から入射する光に対し、遮蔽または干渉する性能面問題と、球状ガラスビーズの固着力の点で問題があるからである。球状ガラスビーズは、平均直径が同程度のものを用いても良く、平均直径が異なるものを用いても良い。
【0045】
配置される球状ガラスビーズは、低融点ガラスで複数溶着されるが、球状ガラスビーズの溶着密度は、好ましくは1万〜2億2千万個/mであり、より好ましくは50万〜200万個/mである。
【0046】
球状ガラスビーズは、低融点ガラスに埋め込まれた状態で溶着されているが、埋め込み量は好ましくは40〜70%であり、より好ましくは50〜65%であり、低融点ガラス表面に突出している。球状ガラスビーズの埋め込み量が浅い場合は、光が四方に拡散する割合が高くなり、低融点ガラスへの溶着による付着力が不足し、埋め込み量が深い場合は、球状ガラスビーズへの入射光量が少なくなる。
【0047】
次に、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを、図面に基いて説明する。
【0048】
図1は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを例示する側面図と、その一部を拡大した部分拡大側面図である。図2は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを例示する斜視図である。
【0049】
図1と図2のガラスビーズ溶着タイル1において、少なくとも片面が白色の陶磁器質セラミックまたはガラスからなるタイル基板2面に、低融点ガラス4で溶着された球状ガラスビーズ3からなる複数の粒状凹凸部が設けられている。
【0050】
図3は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイル1の光の広角反射状態を示す概略部分拡大断面図である。図3において、ガラスビーズ溶着タイル1の表面に照射された入射光が当たると、光は球状ガラスビーズ3内を透過し反対面の球状ガラスビーズ3内面で広角反射する。または、入射光は低融点ガラス4の面で反射し球状ガラスビーズ3内を透過して広角反射する。図3では、一方向からの入射光を示しているが、あらゆる方向からの入射光について同様に広角反射する。そのため、相乗的に向上した視線誘導効果が得られる。
【0051】
図4は、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルをパネル化したガラスビーズ溶着タイルパネルの斜視図である。図4において、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイル1を、セメント系ボードや鋼板などの基板5上に複数枚連続して接着固着してガラスビーズ溶着タイルパネル6とすることができる。自動車トンネル内装用のガラスビーズ溶着タイルパネル6には、例えば、高さ100mm幅200mmのガラスビーズ溶着タイル1であれば、好ましくは横方向に3〜6列、高さ方向に6〜15段程度貼る。
【0052】
次に、本発明の自動車トンネル構造体における広角反射性能の効果を上げる照明方法について説明する。
【0053】
自動車トンネル構造体内上部の照明光をガラスビーズ溶着タイルに照射するだけでも、従来のトンネル内照明効果向上は可能である。しかしながら、光源とガラスビーズ溶着タイルとの距離が近いほど広角反射性能が向上するため、照明機器をガラスビーズ溶着タイル壁面の直上部(直上)から照射すると一層効果を発揮する。逆に、ガラスビーズ溶着タイル壁面の真下からの光の照射は、どちらかというと広角反射性能効果が得られ難い。それは、ガラスビーズ溶着タイル壁面の下部には走行車排気ガス等の汚染物等が堆積し易く、照明効率が低下するためである。さらに、ガラスビーズ溶着タイル壁面の真横からの光の照射は、照明機器自体が照明効果の低下を招き、照射方向によっては逆光になるため設置することは好ましくない。このように、照明機器はガラスビーズ溶着タイル壁面の直上部から照射することが効果的であり、最適な配置である。
【0054】
また、自動車トンネル構造体の内装は、走行車による振動や風圧に曝され、トンネル内の空間を有効に確保する目的から、照明機器としては小スペースが可能且つ低発熱性で耐久性のある小型軽量なLED光源が有効である。本発明の一態様において、ガラスビーズ溶着タイル壁面をLED光源で照射するように照明器具が配置される。
【0055】
LEDとは、Light Emitting Diodeのそれぞれ3つの頭文字を略したもので、電気を流すと発光する半導体の一種であり、発光ダイオードとも呼ばれている。LEDは、白熱灯や蛍光灯に比べ長寿命で、良好な視認性を有し、屋外用途に対応可能で、そして器具の小型化が容易で照明器具として自由な設計が可能であり、小電力でも点灯可能なため、省エネや環境への配慮にも貢献し、さらに熱線や紫外線をほとんど含まず、調光・点滅が自在など、いくつもの長所がある。
【0056】
このような自動車トンネル構造体の内装用のガラスビーズ溶着タイルと照明機器からなる広角反射構造は、セメント系ボードや鋼板などの基板上に、本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを複数接着し、ガラスビーズ溶着タイルパネルとすることによって、次の理由により施工が容易になる。すなわち、照明機器と広角反射面となるガラスビーズ溶着タイルパネル表面との出面寸法調整および配線設備を設置するため、トンネル内装はトンネル躯体との間に空間を設けることがあり、ガラスビーズ溶着タイルパネルを用いることにより浮かし張り施工が可能である。また、このような広角反射構造設備のメンテナンスおよびガラスビーズ溶着タイルパネルの劣化・損傷時の交換において、ガラスビーズ溶着タイルパネルは容易に対応可能である。
【0057】
さらに、トンネル躯体内壁面に直接ガラスビーズ溶着タイルを接着固定する工法は、接着性能が施工環境に大きく影響を受けることにより安定しないことがあるため、工場等で事前に接着性能が管理された自動車トンネル構造体内装用のガラスビーズ溶着タイルパネルとしそれを用いることが好ましい態様である。
【0058】
図5〜7は、本発明の自動車用トンネル構造体を例示説明するための斜視図である。図5では、ガラスビーズ溶着タイル壁面8がトンネル躯体7の内壁全面に取り付けられている。図6では、ガラスビーズ溶着タイル壁面8がトンネル躯体7の内壁の下部側に取り付けられている。図7では、ガラスビーズ溶着タイル壁面8がトンネル躯体7の内壁のほぼ中央部分の高さ位置に取り付けられている。
【0059】
図5〜7において、ガラスビーズ溶着タイル1またはガラスビーズ溶着タイルパネル6がトンネル躯体7の内壁面に複数枚連続して取り付けられてガラスビーズ溶着タイル壁面8を形成してなる自動車トンネル構造体が示されている。ガラスビーズ溶着タイル1またはガラスビーズ溶着タイルパネル6は、必要の都度複数枚使用することができる。
【0060】
自動車トンネル構造体の内装は、上記のようにガラスビーズ溶着タイルパネル6を用いて、トンネル躯体7内壁面に取り付け施工する工法が好ましいが、トンネル躯体7の内壁面にガラスビーズ溶着タイル1を直接取り付け(直貼り)する施工工法も用いられる。
【0061】
図5〜7において、ガラスビーズ溶着タイル壁面8の上部側には、照明用配線設備9を備えたLED光源などの照明機器10が配置されている。照明用配線設備9は、浮かし張り施工により、ガラスビーズ溶着タイルパネル6とトンネル躯体7との間に形成された空間(空隙)に配線されている。
【0062】
また、本発明においては、前記のガラスビーズ溶着タイル1または/および前記のガラスビーズ溶着タイルパネル6を、トンネル躯体7の内壁面に複数枚連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面8とし、そのガラスビーズ溶着タイル壁面8の直上部に照明機器10としてLED光源を配設し、ガラスビーズ溶着タイル壁面8の真上部から光源照射するように構成してなる自動車用トンネル構造体とすることができる。
【0063】
また、本発明の自動車トンネル構造体においては、図5のように、ガラスビーズ溶着タイル壁面8は、ガラスビーズ溶着タイル1またはガラスビーズ溶着タイルパネル6を、トンネル内壁全面に取り付けることにより形成することができる。
【0064】
また、本発明の自動車トンネル構造体において、ガラスビーズ溶着タイル壁面8は、ガラスビーズ溶着タイル1またはガラスビーズ溶着タイルパネル6を、トンネル躯体7内壁面の自動車のヘッドライトが照射される高さ位置で、かつ、トンネルの長さ方向に帯状になるように連続して部分的に取り付けて形成することができ、これは本発明において好ましい態様である。この場合、ガラスビーズ溶着タイル壁面8は、トンネル内壁に部分的に取り付けられることになるが、それ以外の他の内壁面11には、通常の白色タイルを取り付けることが好ましい。このように構成することにより、自動車のヘッドライトにより照射された内壁面の回帰性反射光を効率よく効果的に利用することができる。
【0065】
本発明のように、ガラスビーズ溶着タイル壁面8を設けた自動車用トンネル構造体によれば、任意の入射光がトンネル構内に一様に光を拡散し、直接光でなく細かな反射光による間接光のため柔らかい光となり運転者の目が疲れにくく、また、他走行車との距離感が掴みやすく正確な視線誘導が得られる。本発明で用いられるガラスビーズ溶着タイルを配設したトンネル構造体は、自動車用トンネルが対象である。
【符号の説明】
【0066】
1 ガラスビーズ溶着タイル
2 タイル基板
3 球状ガラスビーズ
4 低融点ガラス
5 基板
6 ガラスビーズ溶着タイルパネル
7 トンネル躯体
8 ガラスビーズ溶着タイル壁面
9 照明用配線設備
10 照明機器
11 他の内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面が白色の陶磁器質セラミックまたはガラスからなるタイル基板面に、複数の粒状凹凸部が設けられた自動車トンネル内装用のタイルであって、前記粒状凹凸部が低融点ガラスで溶着された球状ガラスビーズで形成されているガラスビーズ溶着タイル、または前記ガラスビーズ溶着タイルを基板上に複数枚連続して固着してなるガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面に複数枚連続して取り付けてガラスビーズ溶着タイル壁面を形成してなる自動車トンネル構造体。
【請求項2】
タイル基板が、それ自体白色であるか、あるいは少なくとも片面が白色の釉薬および/または白色に着色されたガラスでコーティングされている請求項1記載の自動車トンネル構造体。
【請求項3】
低融点ガラスが、白色に着色されたものであり、その融点が350〜700℃である請求項1または2記載の自動車トンネル構造体。
【請求項4】
球状ガラスビーズが、タイル基板面に低融点ガラスの溶融と硬化により溶着されており、その平均粒径が0.1〜2.0mmである請求項1〜3のいずれかに記載の自動車トンネル構造体。
【請求項5】
ガラスビーズ溶着タイル壁面が、ガラスビーズ溶着タイルまたはガラスビーズ溶着タイルパネルを、トンネル躯体内壁面の自動車のヘッドライトが照射される高さ位置で、かつ、トンネルの長さ方向に帯状になるように連続して取り付けて形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の自動車トンネル構造体。
【請求項6】
ガラスビーズ溶着タイル壁面をLED光源で照射するように照明器具が配置されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の自動車トンネル構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−26765(P2011−26765A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170079(P2009−170079)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(390031705)東レACE株式会社 (5)
【Fターム(参考)】